JP5053943B2 - アルカリ電池用正極活物質およびその製造方法 - Google Patents

アルカリ電池用正極活物質およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はアルカリ水溶液を電解液に用いた一次電池に適する正極活物質およびその製造方法に関する。
従来よりアルカリ水溶液を電解液に用いた小型電池(例えばボタン型電池)として、酸化銀電池が普及している。酸化銀電池は、正極活物質として酸化銀、負極活物質として亜鉛、電解液としてアルカリ水溶液例えばKOHやNaOHの水溶液を用いて構成される。酸化銀は高い放電容量を有するが、絶縁体に近い抵抗値を示すことから、電池の正極を構成する場合には黒鉛等の導電物質と共に使用されるのが通常である。
特許文献1〜3には、銀とニッケルの複合酸化物であるAgNiO2を電池の正極材料として使用することをが開示されている。例えば特許文献1には硝酸銀と硝酸ニッケルを当モル(モル比=1/1)で反応させてAgNiO2を合成する手法が示され、このAgNiO2を正極材料とした電池では平坦な放電電圧曲線が得られることが記載されている。また、AgNiO2は導電性が高いので導電補助材を混合することなく大容量の電池を作製することができると教示されている。特許文献2にはAgNiO2の合成反応を最適化する手法が開示されており、それによって得られるAgNiO2を正極材料とすると放電特性の安定した電池が得られることが記載されている。特許文献3には正極容器に酸化銀または二酸化マンガンをAgNiO2と混合して装填したボタン型電池が記載されている。
特許文献4には銀、ニッケル、銅、ビスマスの複合酸化物が記載がされている。特許文献5には銀比率の少ない銀とニッケルの複合酸化物が示されており、酸化銀と比較して導電性が高く、かつ銀含量が少なく安価に製造できる正極活物質が記載されている。特許文献6には銀とコバルトの複合酸化物が記載されている。
特開昭57−849号公報 特開平10−188975号公報 米国特許出願公開第2002/0127469号明細書 特開2006−185649号公報 特開2006−286234号公報 特開2000−299103号公報
前記の文献等に記載されたAgNiO2は導電性を呈することから、酸化銀の代替として電池の正極材料に利用できるものと考えられる。しかし、現状の酸化銀電池の正極には、正極活物質として酸化銀が使用され、導電材として適量の黒鉛やAgNiO2が補助的に使用されるのが通常である。AgNiO2を正極活物質とする電池は工業的に普及するに至っていない。
その理由のひとつに、正極活物質として酸化銀を使用せずAgNiO2を使用して一次電池を構成した場合、放電末期で正極活物質中に絶縁性の水酸化ニッケルが生成することによって電池の内部抵抗が上昇し、電圧降下が生じることが挙げられる。電池は使用される用途により、さまざまな条件で放電されるが、特に高負荷(高電流)で放電される場合には電極内部の抵抗が上昇することによって電圧降下が大きくなる。通常、電子機器はあらかじめ定められた電圧以上で駆動する設計となっており、電圧降下により放電電圧が設定値を下回ると機器の正常な作動は保証されず、その機器にとってその電池の寿命は終わったことに等しくなる。正極活物質としてAgNiO2を使用した場合には、電池内部の抵抗上昇に起因する電池の電圧降下が、電池容量がまだ残っている段階で発生し、結果として電池寿命が短くなってしまうという欠点があった。
少量のAgNiO2を正極活物質の添加材として用いる場合には、上記の問題はあまり顕在化しない。しかし、AgNiO2自体に正極活物質としての機能を委ねる電極構成を採用すると、水酸化ニッケルの生成に伴う電極抵抗の低下が無視できなくなり、導電性のAgNiO2を利用することによる長所が、実際の使用において活かしきれないのが現状である。
本発明はこのような現状に鑑み、AgNiO2と同等以上の放電容量を有し、かつ放電末期における抵抗増大がAgNiO2よりも大幅に抑制される新規な導電物質からなる正極活物質を提供しようというものである。
上記目的は、銀、ニッケル、コバルトを成分として持ち、銀、ニッケル、コバルトおよび酸素の合計に占める銀、ニッケル、コバルトの合計が75〜90質量%である組成の酸化物からなるアルカリ電池用正極活物質によって達成される。前記酸化物は、銀、ニッケル、コバルト、酸素の割合が組成式AgxNiyCoz2、ただし0.5≦x/(y+z)≦1.9、0<z/(y+z)<1で表されるものが適している。
記酸化物は、X線回折パターンにおいてAgNiO2結晶に対応する回折ピークを有する。「AgNiO2結晶に対応する回折ピークを有する」とは、少なくともAgNiO2結晶のX線回折パターンにおける「最も回折強度の高いピーク(CuKα線で2θ=36.5°付近のピーク)」および「2番目に回折強度の高いピーク(CuKα線で2θ=29°付近のピーク)」に対応する回折ピークがそれぞれ観測され、AgNiO2結晶と空間群が共通することに矛盾が生じないX線回折パターンを呈することをいう。
このような酸化物からなる正極活物質として、本発明では特に、粉末粒子に吸着している炭酸成分の量がCO2換算で2質量%以下であるものが提供される。炭酸成分は、次式、
CO2 + H2O ⇔ H2CO3
の平衡反応に伴って存在するCO2、CO3 2-、およびHCO3 -であるが、ここでは、これらの吸着量をCO2に換算したときの質量%で表す。具体的には後述の測定方法によって検出される炭酸ガス(CO2)の質量%で評価できる。すなわち、粉末粒子に吸着している炭酸成分の量は、炭酸ガスを放出させる前の粉末の質量(炭酸成分を含む質量)を100%としたときの、放出炭酸ガスの質量%を意味する。
また、当該活物質の粉末を大気中160℃で3時間乾燥させたときの乾燥減量が5%以下となる性質を有するものが好適な対象となる。ここで、乾燥減量は160℃×3時間の熱処理に供する前後の粉末試料の質量から以下の式により求めることができる。
乾燥減量(%)=〔(V1−V2)/V1〕×100
1:熱処理前の試料質量
2:熱処理後の試料質量
本発明で提供される正極活物質は、単位質量あたりの放電容量が例えば150mAh/g以上である。
また本発明では上記正極活物質の製造方法として、銀塩(1価)、ニッケル塩、コバルト塩を、酸化剤およびアルカリ共存下の、銀の酸化を伴う環境の水溶液中で反応させることにより、銀、ニッケル、コバルトおよび酸素で構成される酸化物を合成する工程を有する製造方法が提供される。
特に、予めAgOを用意し、これをニッケル塩およびコバルト塩と反応させることによって上記酸化物を構成する手法が有効である。すなわち、水溶媒中において、当該液中に懸濁しているAgOと、当該液中に溶解しているニッケル塩およびコバルト塩とを撹拌混合することにより、銀、ニッケル、コバルトおよび酸素で構成される酸化物を合成する工程を有する正極活物質の製造方法が好適な対象となる。このAgOは、例えば、1価の銀塩が溶解してる水溶液中で、酸化剤とアルカリを作用させることにより合成することができる。
本発明で規定される銀、ニッケル、コバルトの複合酸化物からなる正極活物質は、AgNiO2からなる正極活物質で問題となっていた放電末期の導電性低下が大幅に抑制される。このため、実際の使用において、電池容量を多分に残したまま寿命が尽きるといった不合理な問題が回避される。また、従来の酸化銀電池に対しては、本発明の正極活物質自体が導電性を有することからら導電補助材を混合する必要がなくなるというメリットがある。十分に大きい放電容量を有する点や、平坦な放電電圧曲線が得られる点でも本発明の正極活物質は実用的であり、これまでの酸化銀電池と同じ小型のままで電池性能を向上させることができる。したがって本発明は、酸化銀電池等の代替として使用可能な新規な小型電池の普及に寄与するものである。
AgNiO2はデラフォサイト型酸化物の1つである。デラフォサイト型酸化物は、組成式ABO2で表される金属元素A、Bと酸素Oとが、−A−O−B−O−の交互充填層を形成した結晶構造を有しているとされる。発明者は検討の結果、AgNiO2のNiサイトの一部をCoで置換した化合物において、正極活物質として使用したときの放電末期の導電性低下を顕著に抑制できるものが得られることを発見した。また、Agと(Ni+Co)のモル比が1/1である場合に限らず、組成式AgxNiyCoz2で表される特定組成範囲の化合物において、同様の改善効果が呈するものが得られることを発見した。以下、本明細書では組成式AgxNiyCoz2で表される化合物を「Ag−Ni−Co酸化物」と呼ぶことがある。Agと(Ni+Co)のモル比が1/1を外れるAg−Ni−Co酸化物はデラフォサイト型酸化物と呼ぶことができるのかどうか定かではないが、X線回折によれば、放電末期の導電性低下が顕著に改善されるAg−Ni−Co酸化物は、Agと(Ni+Co)のモル比にかかわらず、いずれもAgNiO2結晶に対応する回折ピークを有するものであることが確認された。
コバルトを構成元素として含有する特定組成範囲のAg−Ni−Co酸化物が、正極活物質として放電末期の導電性低下を顕著に抑止するメカニズムについては、現時点で必ずしも明確ではないが、放電中に生成するニッケル水酸化物が、導電性を有する形態のニッケル水酸化物(おそらくコバルトを含有するニッケル水酸化物)となるのではないかと推察される。
本発明で対象となる酸化物は、銀、ニッケル、コバルトおよび酸素で構成され、金属元素成分の合計が75〜90質量%、残部が酸素および不可避的不純物である組成を有するものが好適な対象となる。この組成範囲のものにおいて、AgNiO2結晶に対応する回折ピークを有するコバルト含有結晶が実現され、正極活物質として放電末期の導電性低下を顕著に抑止する効果が得られる。
この酸化物を組成式AgxNiyCoz2で表現した場合、0.5≦x/(y+z)≦1.9、かつ0<z/(y+z)<1で表される酸化物が好適な対象となる。
Coの含有量は非常に僅かであっても、放電末期の導電性低下は急激に改善される。また、Ag含有量に関しては、x/(y+z)が0.5を下回るとCo含有による効果が十分に発揮されにくくなる。一方、x/(y+z)が1.9を超えると酸化物自体の導電性が不十分となりやすい。
発明者の詳細な検討の結果、x/(y+z)が概ね0.8〜1.9の範囲ではCo含有による放電末期の導電性低下抑制効果はCo含有量が低いところから顕著に現れる。この場合、Co含有量はz/(y+z)が例えば0.05以上となるように確保することが好ましく、0.2以上がより好ましい。z/(y+z)の上限は例えば0.95程度に設定することができ、0.8以下に管理しても構わない。
一方、x/(y+z)が概ね0.5〜0.8未満の範囲ではCo含有量を増大させることが放電末期の導電性低下を抑制する上で特に効果的である。この場合、Co含有量はz/(y+z)が例えば0.2以上となるように確保することが好ましく、0.4以上とすることがより好ましい。z/(y+z)の上限は上記と同様、例えば0.95程度に設定することができ、0.8以下に管理しても構わない。
正極活物質として使用するAg−Ni−Co酸化物の粉末は、その粉末に吸着して存在している炭酸成分の量ができるだけ少ない状態であることが望まれる。炭酸成分の存在量が多いと、電池を構成した後、CO2がアルカリ電解液中に溶け出し、貯蔵特性に悪影響を及ぼす恐れがある。種々検討の結果、後述の方法で測定されるCO2量が2質量%以下であることが望ましく、1%以下であることがより好ましい。
また、Ag−Ni−Co酸化物の粉末中には水分や、未反応の水酸化物あるいはオキシ水酸化物ができるだけ含まれていないことが望ましい。これらの存在量が多いと単位質量当たりの放電容量の低下を招く要因となる。水分、水酸化物、オキシ水酸化物を含有するAg−Ni−Co酸化物の粉末を100℃を超える高温に加熱すると、これらの成分は水分として蒸発していく。発明者の検討によれば、正極活物質として使用するAg−Ni−Co酸化物は、その粉末を大気中160℃で3時間乾燥させたときの乾燥減量が5%以下となるような、水分、水酸化物、オキシ水酸化物の存在量が少ないものであることが好ましい。1%以下であることが特に好ましい。
正極活物質の単位質量あたりの放電容量はできるだけ大きいことが望まれるが、酸化銀電池の代替用途を考慮すると、Ag−Ni−Co酸化物の単位質量あたりの放電容量が150mAh/g以上であることが望まれ、200mAh/g以上のものが特に好適な対象となる。
本発明の正極活物質に使用するAg−Ni−Co酸化物は、基本的には「Agの無機酸塩」、「Niの無機塩」および「Coの無機塩」を酸化性のアルカリ水溶液中で反応させる製造方法よって合成することができる。すなわち、銀塩(1価)、ニッケル塩、コバルト塩を、酸化剤およびアルカリ共存下の、銀の酸化を伴う環境の水溶液中で反応させることにより、銀、ニッケル、コバルトおよび酸素で構成される上記の酸化物を合成することができる。反応に使用する銀塩(1価)、ニッケル塩、コバルト塩の量比を調整することによって、組成式AgxNiyCoz2で表される酸化物のx/(y+z)の値およびz/(y+z)の値を上述の所定範囲にコントロールすることができる。
この酸化物を合成する好ましい手法として、まずAgOを合成し、次いでAgOと、ニッケル塩およびコバルト塩とを反応させてAg−Ni−Co酸化物を得る手法を採用することができる。このような2段階反応によると、より結晶性の高いAg−Ni−Co酸化物を得ることができる。また、水酸化物(特に水酸化ニッケル)の存在量を低減する上でも効果的である。この手法を用いた本発明の正極活物質の製造方法として、以下に示す(1)〜(4)の一連の工程を例示することができる。
(1)Ag(1価)の無機酸塩水溶液に、酸化剤およびアルカリを作用させてAgOを合成する。Ag(1価)の無機酸塩としては硫酸塩あるいは硝酸塩が使用できる。酸化剤はAg+を酸化させてAgOを得るために必要なものであり、過硫酸ソーダ、過硫酸カリウム等が使用できる。酸化剤の使用量は、1価の銀の全量を2価に酸化させるに足る当量の1.0倍以上とすることが望ましい。反応に際しては、例えばAg(1価)の無機酸塩を溶解させた水溶液と、酸化剤を溶解させた水溶液を用意し、これらを混合しながら撹拌する。アルカリの合計添加量はAgOの合成反応に伴って生成する酸の量と当量以上とする。アルカリ添加時期はAgO合成反応開始前であってもかまわないし、AgO合成反応進行中に少しずつ添加してもかまわない。反応温度は25℃以上、好ましくは40℃以上とし、撹拌を概ね30分以上継続することによりAgOを合成することができる。撹拌を1時間以上継続することがより好ましい。なお、未反応のAg+が多少残存してる状態でこの工程を終了しても構わない。
(2)上記反応後のAgO懸濁液と、ニッケル塩およびコバルト塩を反応させてAg−Ni−Co酸化物を合成する。ニッケル塩としては例えば硝酸ニッケルが適用でき、コバルト塩としては例えば硝酸コバルトが適用できる。AgO懸濁液中に残存する未反応のAg+を酸化させるために、更に酸化剤を追投入しても構わない。ニッケル塩とコバルト塩は予め所定量を水に溶解させておき、その水溶液を撹拌状態のAgO懸濁液に添加していけばよい。混合する銀とニッケルとコバルトのモル比を調整することによってAgxNiyCoz2で表される酸化物のx/(y+z)の値およびz/(y+z)の値を上述の所定範囲にコントロールすることができる。反応温度は25℃以上、好ましくは40℃以上とし、撹拌を概ね1時間以上継続することによりAg−Ni−Co酸化物を合成することができる。撹拌を2時間以上継続することがより好ましい。
(3)合成されたAg−Ni−Co酸化物の沈殿物を回収し、洗浄する。フィルタープレス、遠心分離、デカントなどの固液分離法が適用でき、洗浄溶媒は純水が最も好ましい。
(4)洗浄後のAg−Ni−Co酸化物を乾燥させ、粉末を得る。乾燥は脱CO2ガス雰囲気(CO2を除去した空気、不活性ガス等)中、または真空中で行うことが望ましい。大気雰囲気ではCO2を吸収して炭酸成分の吸着量が多くなりやすく、好ましくない。
以下の各例にしたがって試料粉末を作製し、その試料粉末の特性、それを用いて作製した正極活物質シートの抵抗率、およびその正極活物質シートを用いて作製した電池の放電容量を測定した。その測定方法について先ず説明する。
〔X線回折〕
試料粉末について、株式会社リガク製のX線回折装置を用いて、X線源:CuKα、管電圧:50kV、電流:100mAの条件でX線回折パターンを測定した。
〔CO2量〕
試料粉末に吸着している炭酸成分の量を、JIS R9101(1986)に準ずる方法でCO2を測定することによって評価した。器具は筒井理化学製、AGK式筒井精密定量器を用いた。原理は、試料粉末を硫酸酸性中で煮沸すると、試料粉末に吸着している炭酸成分が炭酸ガス化し排出される。排出された炭酸ガス(CO2)を、予め硫酸滴定で濃度の分かっている、塩化バリウムと水酸化ナトリウムの混合溶液に吸収させる。吸収された炭酸ガスは塩化バリウムと反応し、炭酸バリウムとして沈殿固定される。その溶液を硫酸で滴定すれば、上記液中に吸収されたCO2量を算出することができる。
〔乾燥減量〕
試料粉末10gを秤量瓶に計量する。秤量瓶は予め160℃で3時間以上加熱して乾燥させ、デジケーター内で冷却させたものを使用する。秤量瓶の乾燥質量は予め計測しておく。試料粉末を秤量瓶ごと大気中160℃で3時間加熱した後、デジケーター内で常温まで冷却する。この熱処理前後の試料粉末の質量から、以下の式で乾燥減量を求める。
乾燥減量(%)=〔(V1−V2)/V1〕×100
1:熱処理前の試料質量
2:熱処理後の試料質量
〔電池の放電容量〕
試料粉末1.8gとPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)0.2gを混合し、乳鉢等で練って団子状の混合物を作成した。これを圧延機に通すとシート状になる。「シートを2つ折りにし、再び圧延機に通す」という操作を3〜5回程度繰り返すことによって厚さ0.3mmの均一なシートを得た。このシートから直径15mm(面積1.77cm2)の円形シートをポンチにより打ち抜いた。この円形シート中には試料粉末が100mg程度含まれる。
上記の円形シートをステンレス鋼板からなる集電体に圧着することにより正極を作製した。また、参照極と負極は金属亜鉛板からなるものを用意した。これらの電極を用いて3電極セルを構成した。電解液としては40%KOHを50mL使用した。
このようにして構成した各電池について、放電電流0.04mAの定電流放電を行い、電池電圧が0.9Vに達したときの放電容量(mAh/g)を求め、これによって電池特性を評価した。この実験では十分に低レートの放電を行っており、正極材料のほぼ100%の容量を取り出すことができていると考えられる。
〔正極活物質シートの抵抗率〕
集電体に貼り付ける前の上記円形シート(放電前)、および上記放電実験後に集電体から剥がした円形シート(放電後)について、それぞれ4探針法にて表面の抵抗率を測定した。抵抗測定装置は、三菱化学株式会社製「ロレスタHP」を使用した。
以下、各例での試料粉末作製方法および実験結果を説明する。なお、表1中には公称組成を示しているが、以下に示す手順で作製された試料粉末の分析組成は、公称組成とほぼ一致することが別途詳細な実験により確かめられている。
《従来例》
従来一般的な酸化銀電池の例として、正極活物質にDOWAエレクトロニクス(株)製電池用酸化銀PSタイプを用い、正極の導電補助材に黒鉛を用いた酸化銀電池を構成して、表1の一部の項目について測定した結果を表1中に示す。
《比較例1》
5L(リットル)ビーカーに、純水2.0L、NaOH(和光純薬工業株式会社製、特級)9mol(360g)、および過硫酸ソーダ(三菱ガス化学株式会社製)1mol(238.1g)を投入し、液温を50℃に調整した。この液を撹拌しながら、銀1.00molに相当する硝酸銀水溶液1L(硝酸銀169.89g含有)を30分かけて投入し、その後50℃に維持して1時間撹拌を継続し、AgOの懸濁液を得た。
この懸濁液を撹拌しながら、ニッケル1.00molに相当する硝酸ニッケル6水和物(和光純薬工業株式会社製、特級)290.8gが溶解している水溶液1Lを30分かけて投入し、その後50℃に維持して4時間撹拌を継続して、反応を終了した。反応スラリーを濾紙で濾過し、黒色ケーキを得た。このケーキを純水で十分に洗浄したあと、真空中100℃で24時間かけて乾燥した。この乾燥品を乳鉢で解砕し、得られた黒色粉末を試料粉末とした。
試料粉末のX線回折パターンを図1中に示す。この粉末はAgNiO2であることが確認された。前記の各実験結果を表1中に示す。
《実施例1》
5L(リットル)ビーカーに、純水2.0L、NaOH(和光純薬工業株式会社製、特級)9mol(360g)、および過硫酸ソーダ(三菱ガス化学株式会社製)1mol(238.1g)を投入し、液温を50℃に調整した。この液を撹拌しながら、銀1.05molに相当する硝酸銀水溶液1L(硝酸銀178.38g含有)を30分かけて投入し、その後50℃に維持して1時間撹拌を継続して、AgOの懸濁液を得た。
この懸濁液を撹拌しながら、ニッケル0.95molに相当する硝酸ニッケル6水和物(和光純薬工業株式会社製、特級)276.26gと、コバルト0.05molに相当する硝酸コバルト6水和物(和光純薬工業株式会社製、特級)14.54gが溶解している混合水溶液1Lを30分かけて投入し、その後50℃に維持して4時間撹拌を継続し、次いで、この液に前記の過硫酸ソーダ1mol(238.1g)を追投入し、その後50℃に維持して12時間撹拌を継続して、反応を終了した。反応スラリーを濾紙で濾過し、黒色ケーキを得た。このケーキを純水で十分に洗浄したあと、真空中100℃で24時間かけて乾燥した。この乾燥品を乳鉢で解砕し、得られた黒色粉末を試料粉末とした。
試料粉末のX線回折パターンを図1中に例示する。また、前記各実験結果を表1中に示す。
《実施例2〜6》
Ag、Ni、Coのモル比x:y:zがそれぞれ表1に示される値になるように、硝酸銀、硝酸ニッケル6水和物、硝酸コバルト6水和物の配合比を変化させたこと以外、実施例1と同様の手法で試料粉末を合成した。
実施例2〜4の試料粉末のX線回折パターンを図1中に例示する。また、前記各実験結果を表1中に示す。
《実施例7》
5L(リットル)ビーカーに、純水2.0L、NaOH(和光純薬工業株式会社製、特級)9mol(360g)、および過硫酸ソーダ(三菱ガス化学株式会社製)1mol(238.1g)を投入し、液温を50℃に調整した。この液を撹拌しながら、ニッケル0.5molに相当する硝酸ニッケル6水和物(和光純薬工業株式会社製、特級)145.4gおよびコバルト0.5molに相当する硝酸コバルト6水和物(和光純薬工業株式会社製、特級)145.5gが溶解している混合水溶液1Lを30分かけて投入し、その後50℃に維持して1時間撹拌を継続した。次いで、銀1.00molに相当する硝酸銀水溶液1L(硝酸銀169.89g含有)を30分かけて投入し、その後50℃に維持して4時間撹拌を継続して、反応を終了した。反応スラリーを濾紙で濾過し、黒色ケーキを得た。このケーキを純水で十分に洗浄したあと、真空中100℃で24時間かけて乾燥した。この乾燥品を乳鉢で解砕し、得られた黒色粉末を試料粉末とした。
前記各実験結果を表1中に示す。
Figure 0005053943
各実施例で得られた試料粉末はAgNiO2結晶に対応する回折ピークを有するものであることが確認された。またAgNiO2結晶と異なるピークも出ていないことから、得られた各Ag−Ni−Co酸化物の粉末は異相の混在が観測されない単相の粉末であると考えられる。
表1からわかるように、各実施例で得られたAg−Ni−Co酸化物からなる本発明の正極活物質を用いた電池では、前記従来例の酸化銀電池および比較例1のAgNiO2を正極活物質に用いた電池と同等の優れた放電容量を有することが確認された。また、放電後の正極活物質の抵抗率は比較例1のAgNiO2を用いた電池に比べ大幅に低くなり、放電末期の導電性が顕著に改善されることが確認された。また、Ag、Ni、Coの組成によって放電末期の導電性低下抑制効果をコントロールすることができることが確かめられた。
特に実施例1〜6では、銀塩をニッケル塩およびコバルト塩より先に投入して、先ずAgOを合成する2段階工程としたことにより、実施例7と比較して試料粉末中に存在する水酸化物の量が低減されたものと考えられ、乾燥減量の非常に少ない粉末が得られた。
AgNiO2結晶(比較例1)および実施例1〜4で得られたAg−Ni−Co酸化物のX線回折パターン。

Claims (8)

  1. 銀、ニッケル、コバルトを成分として持ち、銀、ニッケル、コバルトおよび酸素の合計に占める銀、ニッケル、コバルトの合計が75〜90質量%である組成を有し、X線回折パターンにおいてAgNiO2結晶に対応する回折ピークを有する酸化物からなるアルカリ電池用正極活物質。
  2. 前記酸化物は、銀、ニッケル、コバルト、酸素の割合が組成式AgxNiyCoz2、ただし0.5≦x/(y+z)≦1.9、0<z/(y+z)<1で表されるものである請求項1に記載のアルカリ電池用正極活物質。
  3. 粉末粒子に吸着している炭酸成分の量がCO2換算で2質量%以下である請求項1または2に記載のアルカリ電池用正極活物質。
  4. 当該活物質の粉末を大気中160℃で3時間乾燥させたときの乾燥減量が5%以下となる性質を有する請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ電池用正極活物質。
  5. 質量あたりの放電容量が150mAh/g以上である請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ電池用正極活物質。
  6. 銀塩(1価)、ニッケル塩、コバルト塩を、酸化剤およびアルカリ共存下の、銀の酸化を伴う環境の水溶液中で反応させることにより、銀、ニッケル、コバルトおよび酸素で構成される酸化物を合成する工程を有する請求項1〜5のいずれかに記載のアルカリ電池用正極活物質の製造方法。
  7. 水溶媒中において、当該液中に懸濁しているAgOと、当該液中に溶解しているニッケル塩およびコバルト塩とを撹拌混合することにより、銀、ニッケル、コバルトおよび酸素で構成される酸化物を合成する工程を有する請求項1〜5のいずれかに記載のアルカリ電池用正極活物質の製造方法。
  8. 1価の銀塩が溶解してる水溶液中で、酸化剤とアルカリを作用させることによりAgOを合成する工程、そのAgOが懸濁している液と、ニッケル塩およびコバルト塩の水溶液とを撹拌混合することにより、銀、ニッケル、コバルトおよび酸素で構成される酸化物を合成する工程を有する請求項1〜5のいずれかに記載のアルカリ電池用正極活物質の製造方法。
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