JP5052899B2 - 遺伝子発現法 - Google Patents

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Description

発明の背景
発明の分野
本願は、遺伝子発現法に関する。
発明の背景
シャペロンとして知られるタンパク質種は、Hartl (1996, Nature, 381, 571-580)によれば、別のタンパク質の不安定な立体配座異性体と結合して安定化させ、そして、結合と遊離の制御により、in vivoでのその適切な運命、すなわち、フォールディング、オリゴマーアセンブリ、特定の細胞内コンパートメントへの輸送、または分解による除去を助長するタンパク質として定義されている。
BiP(酵母におけるGRP78、Ig重鎖結合タンパク質およびKar2pとしても知られる)は、hsp70ファミリーの豊富な約70kDaのシャペロンであり、小胞体(ER)に常在し、とりわけ、分泌系の輸送を助け、タンパク質を折りたたむ働きをする。
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は、タンパク質の翻訳後プロセシングの際にジスルフィド結合の形成の触媒に関与する、ERに常在するシャペロンタンパク質である。
天然タンパク質および外来タンパク質の双方の分泌の研究から、ERからゴルジ体への輸送が律速段階であることが示されている。BiPと正常タンパク質の一時的会合、およびこれよりも安定な突然変異型またはミスフォールド型のタンパク質との相互作用を示す証拠がある。結果として、BiPは、フォールディング前駆体を可溶化し、さらには、折りたたみも組み立てもされていないタンパク質の輸送を防ぐという二重の役割を果たす可能性がある。Robinson and Wittrup, 1995, Biotechnol. Prog. 11, 171-177では、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるBiP(Kar2p)およびPDIタンパク質レベルに対する外来タンパク質の分泌の影響が調べられており、外来分泌タンパク質の長期にわたる構成的発現が、ウエスタン分析では検出できないレベルにまで可溶性BiPおよびPDIを低下させることが見出されている。異種タンパク質分泌の結果としてのERシャペロンおよびフォールダーゼレベルの低下は、酵母発現/分泌系を改良するために重要な意味を持っている。
シャペロンの発現は、折り畳み異常タンパク質応答(UPR)をはじめとするいくつかのメカニズムによって調節される。
組換え技術を用いると、複数のPDI遺伝子コピーにより、宿主細胞におけるPDIタンパク質レベルが増加することが示されている(Farquhar et al, 1991, Gene, 108, 81-89)。
PDIをコードしている遺伝子と異種ジスルフィド結合タンパク質をコードしている遺伝子の同時発現は、最初に、1993年12月23日公開のWO93/25676において、異種タンパク質の産生を高める手段として示された。WO93/25676には、アンチスタシンとtick抗凝固タンパク質の組換え発現がPDIとの同時発現により増強可能であることが報告されている。
この戦略は、他のタンパク質種の組換え発現を増強するためにも用いられている。
Robinson et al, 1994, Bio/Technology, 12, 381-384には、サッカロミセス・セレビシエにおける付加的組換えPDI遺伝子コピーを用いて、ヒト血小板由来増殖因子(PDGF)Bホモ二量体の組換え発現を10倍増強でき、また、シゾサッカロミセス・ポムベ(Schizosacharomyces pombe)の酸性ホスファターゼの組換え発現を4倍増強できたことが報告されている。
Hayano et al, 1995, FEBS Letters, 377, 505-511には、酵母におけるヒトリゾチームとPDIの同時発現について記載されている。機能的リゾチームの産生および分泌に30〜60%前後の増強が見られた。
Shusta et al, 1998, Nature Biotechnology, 16, 773-777には、宿主細胞内でPDIを過剰発現させることにより、サッカロミセス・セレビシエにおける単鎖抗体断片(scFv)の組換え発現を2〜8倍増強できたことが報告されている。
Bao & Fukuhara, 2001, Gene, 272, 103-110には、酵母PDI遺伝子の付加的組換えコピー(KlPDI1)との同時発現により、酵母クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)における組換えヒト血清アルブミン(rHSA)の発現および分泌を15倍以上増強できたことが報告されている。
PDI遺伝子と異種タンパク質の遺伝子を含む同時形質転換酵母を作出するために、WO93/25676には、この2つの遺伝子を染色体に組み込むことができるか;1つを染色体に組み込み、もう1つをプラスミド上に存在させることができるか;各遺伝子を異なるプラスミドに導入することができるか;または両遺伝子を同じプラスミドに導入することができることが教示されている。WO93/25676には、染色体に組み込まれたPDI遺伝子の付加的コピーを有する酵母のプラスミドpKH4α2からのアンチスタシンの発現(実施例16および17);YEp24(Botstein et al, 1979, Gene, 8, 17-24)と呼ばれるマルチコピー酵母シャトルベクター上に存在している付加的なPDI遺伝子コピーを有するベクターK991からのアンチスタシンの発現(実施例20);およびそれぞれGAL10およびGAL1プロモーターの制御下、酵母シャトルベクターpC1/1(Rosenberg et al, 1984, Nature, 312, 77-80)からのアンチスタシンとPDI遺伝子の双方の発現が例示されている。実際に、Robinson and Wittrup, 1995(前掲)ではまた、エリスロポエチンを発現させるためにGAL1l−GAL10遺伝子間領域が用いられ、異種タンパク質の分泌のための生産酵母株は、厳格な抑制および誘導プロモーターを用いて構築すべきであり、そうでなければ、大規模な発酵槽をいっぱいにするのに必要な多世代の細胞増殖の後には、持続的分泌の負の影響(すなわち、検出可能なBiPおよびPDIの低下)が優勢になる、と結論づけられている。
当技術分野の次なる研究では、組換えタンパク質生産を最大とするための鍵は導入遺伝子の染色体組込みであると認識された。
Robinson et al, 1994(前掲)では、付加的な染色体組込み型のPDI遺伝子コピーを用いることにより、PDGFおよびS.ポムベ(S. pombe)酸性ホスファターゼの発現の増強が認められた。Robinsonは、マルチコピー2μm発現ベクターを用いてPDIタンパク質レベルを増強させる試みが異種タンパク質分泌に悪影響を及ぼしたことを報告している。
Hayano et al, 1995(前掲)には、ヒトリゾチームおよびPDIの遺伝子を、酵母の、各々別個の線状化組込みベクター上へ導入することにより、染色体組込みがもたらされることが記載されている。
Shusta et al, 1998, Nature Biotechnology, 16, 773-777には、サッカロミセス・セレビシエにおける単鎖抗体断片(scFv)の組換え発現が記載されている。Shustaは、酵母系において、宿主染色体への導入遺伝子の組込みとエピソーム発現ベクターの使用との間の選択が分泌に大きな影響を及ぼし得ることを報告しており、Parekh & Wittrup, 1997, Biotechnol. Prog., 13, 117-122によれば、δ組込みベクターを用いた宿主染色体へのscFv遺伝子の安定組込みは、2μm系発現プラスミドを使用するよりも優れていた。Parelkh & Wittrup(前掲)は、これまでに、ウシ膵臓トリプシンインヒビター(BPTI)の発現が、2μm系発現プラスミドよりも、δ組込みベクターを用いることにより大幅に増強されたことを教示している。この2μm系発現プラスミドは、異種分泌タンパク質の産生に関しては逆効果であるとされていた。
Bao & Fukuhara, 2001(前掲)には、「KlPDI1遺伝子は、rHSA発現カセットを有するマルチコピーベクターへ直接導入可能であると初めて考えられた。しかし、このような構築物は酵母の増殖とプラスミドの安定性に著しい影響を及ぼすことが分かった。これにより、マルチコピーベクター上のKlPDI1遺伝子がK.ラクチス細胞の増殖に有害なであったという我々のこれまでの知見が確認された(Bao et al, 2000)」と報告されている。 Bao et al, 2000, Yeast, 16, 329-341には、Bao & Fukuharaの前述の頁に述べたように、KlPDI1遺伝子をK.ラクチスのマルチコピープラスミドpKan707に導入したこと、そして、このプラスミドの存在がこの株に低い増殖をもたらしたことが報告されている。Bao et alは、KlPDI1遺伝子の過剰発現がK.ラクチス細胞に有毒であったと結論づけている。これらのBao et alにおける初期の知見に鑑み、Bao & Fukuuharaは、宿主染色体上にKlPDI1の1回の重複を導入することを選択した。
こういったことを背景に、本発明者らは、驚くべきことに、先行技術による示唆に反して、シャペロンタンパク質および異種タンパク質の遺伝子を酵母の2μm系マルチコピープラスミド上で同時発現させると、異種タンパク質の産生が実質的に高まることを実証した。
本発明の第一の態様によれば、異種タンパク質を製造する方法が提供され、該方法は、
(a)シャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている遺伝子と、異種タンパク質をコードしている遺伝子とを含む2μm系プラスミドを含んでなる宿主細胞を準備すること;
(b)該宿主細胞を、培養培地中、シャペロンタンパク質をコードしている遺伝子と、異種タンパク質をコードしている遺伝子の発現を可能とする条件下で培養すること;
(c)発現した異種タンパク質を培養培地から精製すること;および
(d)所望により、精製されたタンパク質を凍結乾燥すること
を含んでなる。
一つの実施態様では、工程(c)において、発現した異種タンパク質を商業上許容されるレベルの純度または医薬上許容されるレベルの純度にまで精製する。
好ましくは、この方法は、精製された異種タンパク質を担体または希釈剤、例えば、医薬上許容される担体または希釈剤とともに製剤化する工程、および、所望により、製剤化されたタンパク質を単位投与形で提供する工程をさらに含んでなる。
本発明の第二の態様によれば、真菌(好ましくは、酵母)または脊椎動物の異種タンパク質をコードしている遺伝子とシャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている遺伝子とを同じ2μm系プラスミド上に提供することにより、前記異種タンパク質の生産を増強するための発現ベクターとしての、2μm系プラスミドの使用が提供される。
本発明の第三の態様によれば、シャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている遺伝子と異種タンパク質をコードしている遺伝子とを含んでなる2μm系プラスミド(このプラスミドが2μmプラスミドに基づく場合には、それは非組込みベクターである)が提供される。
本発明の第四の態様によれば、上記で定義したプラスミドを含んでなる宿主細胞が提供される。
本発明は、組換え改変型の2μm系プラスミドに関する。
発芽酵母のある近縁種は天然の環状二本鎖DNAプラスミドを含むことが示されている。これらのプラスミドは2μm系プラスミドと総称され、チゴサッカロミセス・ルクシー(Zygosaccharomyces rouxii)(以前はチゴサッカロミセス・ビスポルス(Zygosaccharomyces bisporus) として分類されていた)由来のpSR1、pSB3およびpSB4、チゴサッカロミセス・バイリー(Zygosaccharomyces bailii)由来のプラスミドpSB1およびpSB2、チゴサッカロミセス・フェルメンタチ(Zygosaccharomyces fermentati)由来のプラスミドpSM1、クルイベロミセス・ドロソフィラルム(Kluyveromyces drosphilarum)由来のプラスミドpKD1、ピキア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens)由来の命名されていないプラスミド(以下「pPM1」)、ならびにサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の2μmプラスミドおよび変異体(例えば、Scp1、Scp2およびScp3)が挙げられる(Volkert, et al., 1989, Microbiological Reviews, 53, 299; Murray et al., 1988, J. Mol. Biol. 200, 601; Painting, et al., 1984, J. Applied Bacteriology, 56, 331)。
1つのプラスミドファミリーとして、これらの分子は、一般にプラスミドの反対側に2つの逆方向反復を有し、6kbp前後(4757〜6615bpの範囲)の類似の大きさ、3つのオープンリーディングフレーム(そのうちの1つは部位特異的レコンビナーゼ(FLP)をコードしている)、および逆方向反復の1つの末端付近に位置する、複製起点(ori)としても知られる自立複製配列(ARS)を有するという一連の共通の特徴を持っている(Futcher, 1988, Yeast, 4, 27; Murray et al., 前掲およびToh-e et al., 1986, Basic Life Sci. 40, 425)。はっきりとしたDNA配列の相同性は認められないが、それらの共有の分子構造およびオープンリーディングフレームの機能の保存はこれらのファミリーメンバー間の一般的な先祖伝来の連関を証明している。
上記の天然2μm系プラスミドはいずれも本発明において使用可能であるが、本発明は天然2μm系プラスミドの使用に限定されない。本発明の目的によれば、2μm系プラスミドは下記の通りとされる。
2μm系プラスミドは環状二本鎖DNAプラスミドである。これは一般に、組換え挿入された配列を除いて、3,000〜10,000bp、好ましくは4,500〜7,000bpといった小さなものである。
2μm系プラスミドは一般に、少なくとも3つのオープンリーディングフレーム(「ORF」)を含み、その各々はマルチコピープラスミドとしての2μm系プラスミドの安定な維持において機能を持つタンパク質をコードしている。この3つのORFによりコードされているタンパク質は、FLP、REP1およびREP2と呼ばれている。2μm系プラスミドは、FLP、REP1およびREP2をコードする3つ総てのORFを含んでない場合には、不足しているタンパク質をコードするORFが、別のプラスミド上か、または染色体組込みによりトランスで提供されなければならない。
「FLP」タンパク質は、FLPにより認識される逆方向反復配列の間での部位特異的組換えを触媒することができるタンパク質である。これらの逆方向反復配列はFLP組換え標的(FRT)部位と呼ばれ、各々、一般に、さらに大きな逆方向反復の一部として存在する(下記参照)。好ましいFLPタンパク質は、プラスミドpSR1、pSB1、pSB2、pSB3、pSB4、pSM1、pKD1、pPM1、および、例えば、Volkert et al(前掲)、Murray et al(前掲)およびPainting et al(前掲)に記載の2μmプラスミドの1つによりコードされているFLPタンパク質の配列を含んでいる。これらのFLPタンパク質の変異体および断片もまた本発明に含まれる。「断片」および「変異体」は、同じFRT配列の間の部位特異的組換えを触媒する天然タンパク質の能力を保持するものである。このような変異体および断片は通常、プラスミドpSR1、pSB1、pSB2、pSB3、pSM1、pKD1および2μmプラスミドの1つによりコードされているFLPタンパク質と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する。異なるFLPタンパク質は異なるFRT配列特異性を有する可能性がある。典型的なFRT部位は逆方向反復配列によりフランキングされたコアヌクレオチド配列を含み得る。2μmプラスミドでは、FRTコア配列は8ヌクレオチド長であり、フランキングしている逆方向反復配列は13ヌクレオチド長である(Volkert et al, 前掲)。しかしながら、所定のFLPタンパク質により認識されるFRT部位は、2μmプラスミドFRT部位とは異なるものであり得る。
REP1およびREP2は、細胞分裂の際のプラスミドコピーの分割に関与するタンパク質であり、また、FLP発現の調節にも役割を果たし得る。異なる2μm系プラスミドに由来するREP1タンパク質間で著しい配列の多様性が見られたが、異なる2μm系プラスミドに由来するREP2タンパク質間では、アライメントが可能な配列はない。好ましいREP1およびREP2タンパク質は、プラスミドpSR1、pSB1、pSB2、pSB3、pSB4、pSM1、pKD1、pPM1、および、例えば、Volkert et al(前掲)、Murray et al(前掲)およびPinting et al(前掲)に記載の2μmプラスミドの1つによりコードされているREP1およびREP2タンパク質の配列を含む。また、これらのREP1およびREP2タンパク質の変異体および断片も本発明に含まれる。REP1およびREP2の「断片」および「変異体」は、天然ORFの代わりにプラスミドによってコードされている場合、好適な酵母集団内でプラスミドの安定なマルチコピー維持を実質的に妨げないものである。このようなREP1およびREP2の変異体および断片は通常、プラスミドpSR1、pSB1、pSB2、pSB3、pSB4、pSM1、pKD1、pPM1および2μmプラスミドの1つによりコードされているREP1およびREP2タンパク質と、それぞれ、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する。
プラスミド上のORFによりコードされているREP1およびREP2タンパク質は適合するものでなければならない。REP1およびREP2タンパク質は、pSR1、pSB1、pSB2、pSB3、pSB4、pSM1、pKD1、pPM1および2μmプラスミドなど、同じ天然の2μm系プラスミドによりコードされているREP1およびREP2タンパク質、またはその変異体もしくは断片の配列を有するのが好ましい。
2μm系プラスミドは、一般に2つの逆方向反復配列を含む。これらの逆方向反復は、それらが各々FRT部位(上記参照)を含んでいる限り、どんな大きさであってもよい。これらの逆方向反復は 一般に相同性が高い。それらは50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上の配列同一性を持ち得る。好ましい実施態様では、それらは同一である。一般に、これらの逆方向反復は各々200〜1000bpの長さである。好ましい逆方向反復配列は、各々、200〜300bp、300〜400bp、400〜500bp、500〜600bp、600〜700bp、700〜800bp、800〜900bp、または900〜1000bpの長さを持ち得る。特に好ましい逆方向反復は、プラスミドpSR1(959bp)、pSB1(675bp)、pSB2(477bp)、pSB3(391bp)、pSM1(352bp)、pKD1(346bp)、2μmプラスミド(599bp)、pSB4およびpPM1のものである。
逆方向反復の配列は可変である。しかしながら、各逆方向反復のFRT部位の配列は、プラスミドによりコードされているFLPタンパク質の特異性と適合し、それにより、コードされているFLPタンパク質がプラスミドの逆方向反復配列間の部位特異的組換えを触媒する働きをすることができるものでなければならない。逆方向反復配列の組換え(つまり、FLPタンパク質が、そのプラスミドでFRT部位を認識する能力)は、当技術分野で公知の方法によって判定することができる。例えば、FLPの発現に有利な条件下の酵母細胞内のプラスミドを、プラスミドのある領域の別の領域に対する方向の変化によってもたらされる該プラスミドの制限プロフィールの変化に関してアッセイすることができる。制限プロフィールの変化の検出は、そのFLPタンパク質がプラスミドのFRT部位を認識できること、従って、各逆方向反復のFRT部位がプラスミドによりコードされているFLPタンパク質の特異性と適合することを示す。
特に好ましい実施態様では、FRT部位をはじめとする、逆方向反復配列は、pSR1、pSB1、pSB2、pSB3、pSB4、pSM1、pKD1、pPM1または2μmプラスミドなどの、FLPタンパク質をコードするORFと同じ2μm系プラスミドに由来するものである。
これらの逆方向反復は一般に、逆方向反復間に定義された2領域(例えば、2μmプラスミドのULおよびUSとして定義されるもの)が、導入遺伝子などの外から導入される配列を除いてほぼ同じ大きさとなるように2μm系プラスミド内に配置する。例えば、この2領域の一方は、他方の領域の長さの少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、100%までに相当する長さであり得る。
2μm系プラスミドは、一般に、FLPをコードするORFと一方の逆方向反復(次の段落で述べる他の逆方向反復と区別するために、本明細書では「IR1」と呼ぶ)とを、例えば2μmプラスミドに見られるような介在コード配列なしで、FLP ORFの遠位末端にIR1が来るように並列して含む。ここで「遠位末端」とは、プロモーターが転写を開始する末端とは反対側のFLP ORF末端を意味する。好ましい実施態様では、FLP ORFの遠位末端はIR1と重複する。
2μm系プラスミドは、一般に、REP2をコードするORFと他方の逆方向反復(前の段落で述べたIR1と区別するために、本明細書では「IR2」と呼ぶ)とを、例えば2μmプラスミドに見られるような介在コード配列なしで、REP2 ORFの遠位末端にIR2が来るように並列して含む。ここで「遠位末端」とは、プロモーターがその転写を開始する末端とは反対側のREP2 ORF末端を意味する。
一つの実施態様では、このREP2およびFLPをコードするORFは、2μm系プラスミドの逆方向反復間で定義された2領域のうち同じ領域に存在してもよく、この領域は大きい方の領域であっても小さい方の領域であってもよい(2領域の大きさが不等である場合)。
一つの実施態様では、このREP2およびFLPをコードするORFは互いに異なるプロモーターから転写され得る。
一般に、2μm系プラスミドの逆方向反復間に定義された領域(例えば、2μmプラスミドのULおよびUSとして定義されるもの)は、マルチコピープラスミドとして2μm系プラスミドの安定な維持において機能を果たすタンパク質をコードする多くとも2つの内因性遺伝子を含み得る。よって、好ましい実施態様では、逆方向反復に定義されたプラスミドの一方の領域は、内因性コード配列として、多くともFLPとREP2;FLPとREP1;またはREP1とREP2をコードするORFを含み得る。
2μm系プラスミドは、一般に、複製起点(自立複製配列「ARS」としても知られる)を含み、これは一般に双方向性である。適当なARS配列のいずれが存在してもよい。酵母染色体複製起点に典型的なコンセンサス配列が適当であり得る(Broach et al, 1982, Cold Spning Harbor Symp. Quant. Biol., 47, 1165-1174; Williamson, Yeast, 1985, 1, 1-14)。好ましいARSとしては、pSR1、pSB1、pSB2,pSB3、pSB4、pSM1、pKD1、pPM1および2μmプラスミドから単離されたものが挙げられる。
よって、好ましい2μm系プラスミドは、FLP、REP1およびREP2をコードしているORF、2つの逆方向反復配列(各々、コードされているFLPタンパク質に適合するFRT部位を含む逆方向反復)、およびARS配列を含み得る。好ましくは、FRT部位は、コードされているFLPタンパク質の配列と同じ2μm系プラスミドに由来するものとされる。より好ましくは、コードされているREP1およびREP2タンパク質の配列は、互いに同じ2μm系プラスミドに由来するものとされる。さらに好ましくは、FRT部位は、コードされているFLP、REP1およびREP2タンパク質の配列と同じ2μm系プラスミドに由来するものとされる。さらに好ましくは、FLP、REP1およびREP2をコードしているORFの配列ならびに逆方向反復の配列(FRT部位を含む)は同じ2μm系プラスミドに由来するものとされる。さらに好ましくは、ARS部位は、FLP、REP1およびREP2のORFの1以上のもの、ならびに逆方向反復の配列(FRT部位を含む)と同じ2μm系プラスミドに由来するものとされる。
「〜に由来する」とは、それらが由来する配列と同一の配列を有する配列を含む。しかしながら、上記で定義したように、その変異体および断片も含まれる。例えば、2μmプラスミドのFLP遺伝子に由来する配列を有するFLP遺伝子は、改変型プロモーターまたは天然遺伝子のものに匹敵する他の調節配列を有してもよい。
それに加えて、またはその代わりに、2μmプラスミドのFLP遺伝子に由来する配列を有するFLP遺伝子は、天然遺伝子と同じタンパク質をコードし得るか、または改変FLPタンパク質をコードし得るオープンリーディングフレーム内に、改変されたヌクレオチド配列を有していてもよい。同じ考え方が、特定の供給源に由来する配列を有する2μm系プラスミド上の他の配列にも当てはまる。
場合によっては、2μm系プラスミドは、Volkert et al(前掲)に記載のような2μmプラスミドのSTB領域(REPSとしても知られる)に相当する領域を含み得る。本発明による2μm系プラスミドにおけるこのSTB領域は、2以上の、例えば、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のタンデム反復配列を含み得る。あるいは、タンデム反復配列は存在しなくてもよい。これらのタンデム反復はどんな大きさでもよく、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100bpまたはそれ以上の長さである。2μmプラスミドのSTB領域におけるタンデム反復は62bpの長さである。タンデム反復の配列は必ずしも同じでなくてもよい。若干の配列バリエーションは許容される。REP1およびREP2 ORFのいずれかまたは双方と同じプラスミド由来のSTB領域を選択するのが好ましい場合がある。STB領域はシス作用エレメントであると考えられ、好ましくは転写されない。
場合によっては、2μm系プラスミドは、マルチコピープラスミドとしての2μm系プラスミドの安定な維持において機能を果たすタンパク質をコードする付加的ORFを含んでもよい。この付加的タンパク質はRAFまたはDと呼ばれる。RAFまたはD遺伝子をコードするORFは、例えば、2μmプラスミドおよびpSM1に見られる。よって、RAFまたはD ORFは、2μmプラスミドまたはpSM1によりコードされているRAFまたはD遺伝子ORFのタンパク質産物、またはその変異体および断片をコードするのに好適な配列を含み得る。よって、2μmプラスミドまたはpSM1のRAFまたはD遺伝子のタンパク質産物の変異体および断片もまた本発明に含まれる。2μmプラスミドまたはpSM1のRAFまたはD遺伝子のタンパク質産物の「断片」および「変異体」は、天然ORFの代わりに2μmプラスミドまたはpSM1によりコードされていても、好適な酵母集団内でのプラスミドの安定なマルチコピー維持を妨げないものである。このような変異体および断片は、通常、2μmプラスミドまたはpSM1によりコードされているRAFまたはD遺伝子ORFのタンパク質産物と少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%またはそれ以上の相同性を有する。
天然2μm系プラスミドが好ましいこともある。天然2μm系プラスミドは、上記で定義した特徴を有するいずれのプラスミドであってもよく、このプラスミドは酵母に天然に存在することが分かっており、すなわち、異種配列を含むよう組換え改変されていない。好ましくは、天然2μm系プラスミドは、チゴサッカロミセス・ルクシーから得られるようなpSR1(受託番号X02398)、pSB3(受託番号X02608)またはpSB4、双方ともチゴサッカロミセス・バイリーから得られるようなpSB1またはpSB2(受託番号NC_002055またはM18274)、チゴサッカロミセス・フェルメンタチから得られるようなpSM1(受託番号NC_002054)、クルイベロミセス・ドロソフィラルムから得られるようなpKD1(受託番号X03961)、ピキア・メンブラネファシエンス由来のpPM1、または最も好ましくは、サッカロミセス・セレビシエから得られるような2μmプラスミド(受託番号NC_001398またはJ01347)から選択される。この段落の受託番号はNCBI寄託物を参照したものである。
2μmプラスミド(図1)は、ほとんどのサッカロミセス・セレビシエ株に半数性ゲノム当たり60〜100コピーで内在する6,318bpの二本鎖DNAプラスミドである。この2μmプラスミドは、2つの599bp逆方向反復配列によって隔てられたスモールユニーク(US)領域とラージユニーク(UL)領域を含む。この逆方向反復配列の部位特異的組換えの結果、in vivoにおいてこのプラスミドのA型およびB型の間で相互変換が生じる(Volkert & Broach, 1986, Cell, 46, 541)。2μmのこの2つの形態は、それらのユニーク領域の相対的方向だけが異なる。
サッカロミセス・セレビシエからクローニングした2μmプラスミド(Scp1としても知られる)のDNA配列決定から6,318bpの大きさが得られたが(Hartley and Donelson, 1980, Nature, 286, 860)、STBとして知られる領域における、それぞれ125bpおよび220bpの小さな欠失の結果として、他の若干小さい2μmの変異体Scp2およびScp3が存在することが知られている(Cameron et al., 1977, Nucl. Acids Res., 4, 1429; Kikuchi, 1983, Cell, 35, 487およびLivingston & Hahne, 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76, 3727)。世界中の天然サッカロミセス株の80%についてのある研究では、2μmと相同なDNAを含んでいた(サザンブロット解析による)(Hollenberg, 1982, Current Topics in Microbiology and Immunobiology, 96, 119)。さらにまた、S.セレビシエおよびS.カルルスベルゲネシスに見られる天然の2μmプラスミド集団内にはバリエーション(遺伝多型)が存在し、NCBI配列(受託番号NC_001398)がその一例である。
2μmプラスミドは核局在性を有し、高レベルの有糸分裂安定性を示す(Mead et al, 1986, Molecular & General Genetics, 205, 417)。2μmプラスミドの遺伝安定性はプラスミドによりコードされているコピー数の増幅および分割機構に起因するものであり、これはキメラベクターの開発の際に簡単に損なわれる(Futcher & Cox, 1984, J. Bacteriol., 157, 283; Bachmair & Ruis, 1984, Monatshefte fur Chemie, 115, 1229)。2μmプラスミドを含む酵母株は[cir]として知られ、一方、2μmプラスミドを含まない酵母株は[cir]として知られる。
2μmプラスミドのUS領域はREP2およびFLP遺伝子を含み、UL領域はREP1およびD(RAFとしても知られる)遺伝子、STB遺伝子座および複製起点を含む(Broach & Hicks, 1980, Cell, 21, 501; Sutton & Broach, 1985, Mol. Cell. Biol., 5, 2770)。Flpレコンビナーゼは、逆方向反復内のFRT部位(Flp認識標的)と結合し、部位特異的組換えを媒介するが、これはin vivoにおける天然プラスミド増幅とプラスミドコピー数の制御に不可欠なものである(Senecoff et al, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 82, 7270; Jayaram, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S. A., 82, 5875)。2μm系プラスミドのコピー数は、Flpレコンビナーゼ活性の変化によって有意に影響を受け得る(Sleep et al, 2001, Yeast, 18, 403; Rose & Broach, 1990, Methods Enzymol., 185, 234)。Rep1およびRep2タンパク質はプラスミドの分離を媒介するが、それらの作用様式は明らかでない(Sengupta et al, 2001, J. Bacteriol., 183, 2306)。それらはまた、FLP遺伝子の転写を抑制する(Reynolds et al, 1987, Mol. Cell. Biol., 7, 3566)。
2μmプラスミドのFLPおよびREP2遺伝子は互いに異なるプロモーターから転写され、それらの間で介在配列は明らかに定義されていない。FLPおよびREP2転写物は両者とも、それらの翻訳終結コドンの後のそれぞれ24bpおよび178bpにおいて、逆方向反復配列内の同じ配列モチーフで終わる(Sutton & Broach, 1985, Mol. Cell. Biol., 5, 2770)。
FLPの場合、C末端コード配列もまた逆方向反復配列内にある。さらに、この2つの逆方向反復配列は599bpにわたって高度に保存されており、この特徴はin vivoにおいて効率的なプラスミド複製および増幅に有利であると考えられるが、in vitro部位特異的組換えに不可欠なのはFRT部位(65bp未満)のみである(Senecoff et al, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82, 7270; Jayaram, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82, 5875; Meyer-Leon et al, 1984, Cold Spring Harbor Symposia On Quantitative Biology, 49, 797)。Flpの重要な触媒残基はアルギニン−308とチロシン−343(必須)であり、鎖の切断はヒスチジン−309およびヒスチジン−345により容易となる(Prasad et al, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 84, 2189; Chen et al, 1992, Cell, 69, 647; Grainge et al, 2001, J MoL BioL, 314, 717)。
Rep2については2つの機能的ドメインが報告されている。残基15〜58はRep1結合ドメインを形成し、残基59〜296は自己会合およびSTB結合領域を含む(Sengupta et al, 2001, J. Bacteriol., 183, 2306)。
2μmプラスミドの必須の機能的領域の多くを欠損しているが、機能的なシスエレメントARSおよびSTBを保持している2μmのキメラまたは欠失の大きな変異誘導体は、細胞分裂時に母細胞と娘細胞との間で有効な分割ができない。このようなプラスミドは、これらの機能が、例えば宿主内に機能的2μmプラスミドを提供することによりトランスで提供されれば有効に分割しうる(いわゆる、[cir]宿主)。
目的の遺伝子はこれまで、2μmプラスミドのUL領域に挿入されてきた。例えば、EP0286424のプラスミドpSAC3U1、および図2に示す、β−ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性のため)、LEU2選択マーカーおよびオリゴヌクレオチドリンカー(最後の2つのものは2μm様非組込みベクターpSAC3(EP0286424参照)のUL領域内のユニークなSnaBI部位に挿入されている)を含むプラスミドを参照。酵母に形質転換した後、図2に示すプラスミドから、XbaI部位間の、アンピシリン耐性遺伝子を含む大腸菌DNAが欠失される。このことはChinery & Hinchliffe, 1989, Curr. Genet, 16, 21およびEP0286424に記載されており、これらのタイプのベクターは「非組込みベクター」と呼ばれる。リンカー内のNotI部位でさらなるポリヌクレオチド挿入を行うこともできる(Sleep et al, 1991, Biotechnology (NY), 9,183)。
2μmプラスミドにおける別の挿入部位も当技術分野で公知であり、Rose & Broach (1990, Methods Enzymol., 185, 234-279)に記載されているもの、例えば、FLPのEcoRIにおける挿入を用いるプラスミドpCV19、pCV20、CVneo;DのEcoRIを挿入部位として用いるプラスミドpCV21、pGT41およびpYE;DのPstIを挿入部位として用いるプラスミドpHKB52;DのPstIおよびDのEcoRIにおける挿入を用いるプラスミドpJDB248;DのPstIおよびFLPのEcoRIを挿入部位として用いるプラスミドpJDB219;プラスミドG18;FLPのClaIにおける挿入を用いるプラスミドpAB18;プラスミドpGT39およびpA3;DのPstIを挿入部位として用いるプラスミドpYT11、pYT14およびpYT11−LEU;ならびにFLPのEcoRIを挿入部位として用いるプラスミドPTY39が挙げられる。
他の2μmプラスミドとしては、pSAC3、pSAC3U1、pSAC3U2、pSAC300、pSAC310、pSAC3C1、pSAC3PL1、pSAC3SL4、およびpSAC3SC1が挙げられ、EP0286424およびChinery & Hinchliffe (1989, Curr, Genet., 16, 21-25)に記載されており、これにはまた適当な2μm挿入部位としてPstI、EagIまたはSnaBIが記載されている。2μmプラスミドとしては、さらに、pAYE255、pAYE316、pAYE443、pAYE522(Kerry-Williams et al, 1998, Yeast, 14, 161-169)、pDB2244(WO00/44772)およびpAYE329(Sleep et al, 2001, Yeast, 18, 403-421)が挙げられる。
1つの好ましい実施態様では、1以上の遺伝子が、2μm系プラスミドのARS配列の前後の非転写領域内へ挿入される。例えば、S.セレビシエから得られる2μmプラスミドでは、このARS配列前後の非転写領域はD遺伝子の末端からARS配列の開始部にまで及ぶ。SnaBI(配列ARSの複製起点付近)への挿入はChinery & Hinchliffe, 1989, Curr. Genet., 16, 21-25に記載されている。当業者ならば、Chinery & Hinchliffeにより記載されている非転写領域内のSnaBI部位付近の位置にも遺伝子挿入を行えることが分かるであろう。
もう1つの好ましい実施態様では、2μm系プラスミド内のREP2およびFLP遺伝子は各々、それらに隣接する逆方向反復を有し、2μm系プラスミドの、REP2遺伝子またはFLP遺伝子のいずれかの最後の機能的コドンの1つ後の塩基と、該遺伝子に隣接する逆方向反復内のFRT部位の1つ前の塩基との間の領域に1以上の遺伝子が挿入される。REP2遺伝子またはFLP遺伝子のいずれかの最後の機能的コドンとは、そのコドンを停止コドンで置換すると、プラスミドのマルチコピー安定性に許容されない低下が起こるという遺伝子のプロモーターから最下流にある遺伝子のオープンリーディングフレームのコドンである。従って、ポリヌクレオチド配列挿入、欠失または置換による、いずれかの遺伝子の最後の機能的コドンの下流にあるいずれかの点でのREP2またはFLP遺伝子の分断は、プラスミドのマルチコピー安定性に許容されない低下をもたらすことはない。
例えば、2μmプラスミドのREP2遺伝子はコドン59の後で分断可能であり、2μmプラスミドのFLP遺伝子はコドン344の後で分断可能であり、各々、プラスミドのマルチコピー安定性を低下させない。他の2μm系プラスミド内の等価遺伝子の最後の機能的コドンは、通常、FLPまたはREP2遺伝子のいずれかにおいてプラスミド突然変異を作出した後、本明細書に示されている試験により、そのプラスミドがマルチコピー安定性を保持しているかどうかを判定することで判定することができる。
プラスミドがマルチコピー安定性を保持しているかどうかは、Chinery & Hinchliffe (1989, Cuir. Genet., 16, 21-25)で定義されるような試験を用いて判定することができる。Chinery & Hinchliffe (1989, Curr. Geneet., 16, 21-25)で定義されている非選択培地(YPD、YEPDとも呼ばれる)で増殖しない酵母には、他の非選択培地を用いてもよい。プラスミドの安定性は、所定の世代数の後の、選択マーカーに対して原栄養性を残している細胞のパーセンテージとして定義することができる。世代数は好ましくは、pSAC35またはpSAC310などの対照プラスミドとの違いを示すのに十分なものであるか、またはこのような対照プラスミドに匹敵する安定性を示すのに十分なものである。世代数は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100またはそれ以上であってよい。世代数は多いほうが好ましい。許容されるプラスミド安定性は1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または実質的に100%とすることができる。パーセンテージが高いほうが好ましい。当業者ならば、プラスミドが非選択培地で増殖させた際に100%に満たない安定性を有するとしても、選択培地で培養する場合には有用であることが分かるであろう。例えば実施例に記載されているプラスミドpDB2711は、実施例1に従って安定性を判定した場合には10%に過ぎなかったが、選択増殖条件下での振盪フラスコ培養では組換えトランスフェリン生産性に15倍の増強をもたらす。
従って、REP2遺伝子の最後の機能的コドンの1つ後の塩基と該遺伝子に隣接する逆方向反復内のFRT部位の1つ前の塩基との間、より好ましくは逆方向反復の最初の塩基とFRT部位の1つ前の塩基との間、さらに好ましくはREP2遺伝子の翻訳終結コドンの後、FRT部位の1つ前の塩基までの位置で1以上の遺伝子挿入を行うことができる。
それに加えて、またはその代わりに、FLP遺伝子の最後の機能的コドンの1つ後の塩基と該遺伝子に隣接する逆方向反復内のFRT部位の1つ前の塩基との間、好ましくは逆方向反復の最初の塩基とFRT部位の1つ前の塩基との間、より好ましくはFLPコード配列の末端の1つ後の塩基とFRT部位の1つ前の塩基との間、例えば、FLPコード配列の終末端の1つ後の塩基で1以上の遺伝子挿入を行うことができる。
1つの好ましい実施態様では、2μm系プラスミドがS.セレビシエの2μmプラスミドに基づく場合、それは当技術分野で公知のような(例えば、その内容が引用することにより本明細書の一部とされるEP286424参照)非組込みベクターである。非組込みベクターは、組換えによる欠失を意図したDNA配列、3つの2μmFRT部位(その1対の部位が正方向であり、他の2対が逆方向である)および目的のDNA配列(大腸菌複製起点および細菌選択マーカーなど)を含む2μmプラスミドベクターであってよく、消失を意図するこの配列は、正方向の上記部位の間に位置する。
従って、この欠失される配列は、選択マーカーDNA配列を含むことができる。
好ましい非組込みベクターは、(i)細菌宿主内でのベクターの増殖に必要な細菌プラスミドDNA配列;(ii)余分な2μmFRT部位;および酵母の形質転換のための選択マーカーDNA配列をさらに有する完全な2μmプラスミドを含み、2μmプラスミドの2つの逆方向反復配列の1つにある制限部位、例えばXbaIに、上記細菌プラスミドDNA配列が存在し、余分なFRT部位が作出され、この余分なFRT部位は上記の反復配列の1つの内在的FRT部位に対して正方向にあり、この細菌プラスミドDNA配列は、余分なFRT部位と上記の反復配列の1つの内在的FRT部位の間に挟み込まれている。好ましい非組込みベクターでは、細菌プラスミドDNA配列は総て上記のように挟み込まれている。特に好ましい2μmプラスミドベクターは、実質的に、EP286424に示されているようなpSAC3の配置を有している。
本明細書において「非組込みベクター」はまた、その内容が引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第6,451,559号に定義されているようなプラスミドを含む。従って、非組込みベクターは、非酵母ポリペプチドをコードしているDNA配列以外に、細菌(特に、大腸菌)複製起点を含まない、またはより好ましくは、細菌(特に、大腸菌)配列を含まない2μmベクターであってよく、好ましくは、非酵母ポリペプチドをコードしているDNA配列以外の、該ベクター中の総てのDNAは酵母由来のDNAである。
本明細書において「シャペロン」とは、別のタンパク質の不安定な立体配座異性体と結合して安定化させ、そして、結合と遊離の制御により、in vivoでのその適切な運命、すなわち、フォールディング、オリゴマーアセンブリ、特定の細胞内コンパートメントへの輸送、または分解による除去を助長する。よって、シャペロンはまた、タンパク質フォールディングに関与するか、またはシャペロン活性を有するか、または折り畳み異常タンパク質応答に関与するタンパク質でもある。この種のシャペロンタンパク質は当技術分野で公知であり、例えば、スタンフォードゲノムデータベース(SGD)、http:://db.yeastgenome.org)において公知となっている。好ましいシャペロンは真核生物シャペロンであり、特に好ましいシャペロンは酵母シャペロンであり、AHA1、CCT2、CCT3、CCT4、CCT5、CCT6、CCT7、CCT8、CNS1、CPR3、CPR6、ERO1、EUG1、FMO1、HCH1、HSP10、HSP12、HSP104、HSP26、HSP30、HSP42、HSP60、HSP78、HSP82、JEM1、MDJ1、MDJ2、MPD1、MPD2、PDI1、PFD1、ABC1、APJ1、ATP11、ATP12、BTT1、CDC37、CPR7、HSC82、KAR2、LHS1、MGE1、MRS11、NOB1、ECM10、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSC1、SSE2、SIL1、SLS1、ORM1、ORM2、PER1、PTC2、PSE1、UB14およびHAC1または末端切断型イントロンレスHAC1(Valkonen et al. 2003, Applied Environ. Micro. 69, 2065)が挙げられる。
本発明の実施において有用なシャペロンとしては次のものが挙げられる。
・熱ショックタンパク質、例えば、hsp70ファミリータンパク質のメンバーであるタンパク質(Kar2p、SSAおよびSSBタンパク質、例えば、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSB1およびSSB2タンパク質によりコードされているタンパク質を含む)、HSP90ファミリーのメンバーであるタンパク質、またはHSP40ファミリーのメンバーであるタンパク質もしくはそれらの調節に関与するタンパク質(例えば、Sillp)(DNA−JおよびDNA−J様タンパク質(例えば、Jem1p、Mdj2pを含む)。
・カリオフェリン/インポーチンファミリータンパク質のメンバーであるタンパク質、例えば、カリオフェリン/インポーチンタンパク質のαまたはBファミリー、例えば、PSE1によりコードされているカリオフェリンβタンパク質。
・Hjelmqvist et al, 2002, Genome Biology, 3(6), research0027.1-0027.16が記載しているORMDLファミリーのメンバーであるタンパク質、例えばOrm2p。
・小胞体または分泌経路の他所、例えばゴルジ体に本来存在するタンパク質。例えば、小胞体(ER)の管腔、特にPDIなどの分泌細胞で本来働くタンパク質。
・ERに固定されているトランスメンブランタンパク質であるタンパク質、例えば、Hjelmqvist et al, 2002, 前掲が記載しているORMDLファミリーのメンバー(例えば、Orm2p)。
・サイトゾルで働くタンパク質、例えば、hsp70タンパク質(SSAおよびSSBタンパク質、例えば、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSB1およびSSB2タンパク質産物を含む)。
・核、核エンベロープおよび/または細胞質で働くタンパク質、例えば、Pse1p。
・細胞の生存力に必須のタンパク質、例えば、PDIまたは必須カリオフェリンタンパク質、例えば、Pse1p。
・スルヒドリル酸化またはジスルフィド結合の形成、切断または異性化に関与するタンパク質、または特に分離タンパク質および細胞表面タンパク質の生合成中にタンパク質のチオール:ジスルフィド交換反応を触媒するタンパク質、例えば、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(例えば、Pdi1p、Mpd1p)、ホモログ(例えば、Eug1p)および/または関連タンパク質(例えば、Mpd2p、Fmo1p、Ero1p)。
・タンパク質合成、アセンブリまたはフォールディングに関与するタンパク質、例えば、PDIおよびSsa1p。
・成熟タンパク質よりも折り畳まれていないタンパク質に優先的または排他的に結合するタンパク質、例えば、hsp70タンパク質(SSAおよびSSBタンパク質、例えば、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSB1およびSSB2によりコードされているタンパク質)。
・サイトゾルにおいて前駆体タンパク質の凝集を防ぐタンパク質、例えば、hsp70タンパク質(SSAおよびSSBタンパク質、例えば、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSB1およびSSB2によりコードされているタンパク質)。
・損傷したタンパク質に結合して安定化させるタンパク質、例えば、Ssa1p。
・折り畳み異常タンパク質応答に関与するか、または折り畳み異常タンパク質応答を誘導する薬剤(例えば、ツニカマイシンおよびジチオトレイトール)に対する耐性の増強をもたらすタンパク質、例えば、Hjelmqvist et al, 2002, 前掲が記載しているORMDLファミリーの(例えば、Orm2p)またはストレス応答に関与する(例えば、Ubi4p)。
・コシャペロンであるタンパク質、ならびに/または タンパク質フォールディングおよび/もしくは折り畳み異常タンパク質応答に間接的に関与するタンパク質(例えば、hsp104p、Mdj1p)。
・巨大分子の核−細胞質間輸送に関与するタンパク質、例えば、Pse1p。
・核局在配列と核輸出配列を認識し、核膜孔複合体と相互作用することにより、核膜を通過する巨大分子の輸送を媒介するタンパク質、例えば、Pse1p。
・EP0746611およびHillson et al, 1984, Methods Enzymol., 107, 281-292に記載されているようなスクランブルリボヌクレアーゼのDNAに対してリボヌクレアーゼ活性を復活させ得るタンパク質、例えば、PDI。
・酸性pI(例えば、4.0〜4.5)を有するタンパク質、例えば、PDI;
・Hsp70ファミリーのメンバーであり、好ましくは、N末端ATP結合ドメインとC末端ペプチド結合ドメインを有するタンパク質、例えば、Ssa1p。
・ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼであるタンパク質(例えば、Cpr3p、Cpr6p)。
・既知シャペロンのホモログであるタンパク質(例えば、Hsp10p)。
・ミトコンドリアシャペロンであるタンパク質(例えば、Cpr3p)。
・細胞質または核シャペロンであるタンパク質(例えば、Cns1p)。
・膜結合シャペロンであるタンパク質(例えば、Orm2p、Fmo1p)。
・シャペロンアクチベーター活性またはシャペロンレギュレーター活性を有するタンパク質(例えば、Aha1p、Hac1p、Hch1p)。
・未熟型のタンパク質と一時的に結合して適切なフォールディング輸送、および/または分泌誘導するタンパク質、例えば、小胞体への効率的な輸送に必要なタンパク質(例えば、Lhs1p)またはそれらの細胞内の作用部位に必要なタンパク質(例えば、PseIp)。
・タンパク質複合体アセンブリおよび/またはリボソームアセンブリに関与するタンパク質(例えば、Atp11p、PseIp、Nob1p)。
・シャペロニンT複合体のタンパク質(例えば、Cct2p)。または
・プレフォールディング複合体のタンパク質(例えば、Pfd1p)。
好ましいシャペロンは、小胞体(ER)の管腔内でジスルフィド結合の形成を触媒することのできる等価物を有するタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)またはその断片もしくは変異体である。「PDI」とは、EP0746611およびHillson et al, 1984, Methods Enzymol., 107, 281-292に記載されているようなスクランブルリボヌクレアーゼのRNAに対するリボヌクレアーゼ活性を復活させる能力を有するいずれのタンパク質も含む。
PDIは、一般にチオール:ジスルフィド交換反応を触媒する酵素であり、分泌細胞のE.R.管腔の主要な常在タンパク質成分である。一連の証拠は、それが分泌タンパク質の生合成において役割を果たすことを示唆し(Freedman, 1984, Trends Biochem. Sci., 9, 438-41)、これはin situにおける直接的架橋研究によっても裏付けられている(Roth and Pierce, 1987, Biochemistry, 26,4179-82)。PDIが欠損しているミクロソーム膜が同時翻訳タンパク質のジスルフィド形成に特異的な欠陥を示すという知見(Bulleid and Freedman, 1988, Nature, 335, 649-51)は、この酵素が、分泌タンパク質および細胞表面タンパク質の生合成の際に本来のジスルフィド結合形成の触媒として働くことを意味する。この役割はin vitroにおいてこの酵素の触媒特性に関して知られているものと一致し、チオール:ジスルフィド交換反応を触媒し、正味のタンパク質ジスルフィド、切断または異性化をもたらし、また、一般に、多様な還元型の折り畳まれていないタンパク質基質におけるタンパク質フォールディングおよび本来のジスルフィド結合の形成を触媒することができる(Freedman et al., 1989, Biochem. Soc. Symp., 55, 167-192)。また、PDIは、イソメラーゼ活性を欠いた変異型PDIがタンパク質フォールディングを加速させるので、シャペロンとしても働く(Hayano et al, 1995, FEBS Letters, 377, 505-511)。最近、ジスルフィドの異性化ではなく、スルヒドリルの酸化がS.セレビシエにおいてタンパク質ジスルフィドイソメラーゼの主要な機能であることが報告された(Solovyov et al., 2004, J. Biol. Chem., 279 (33) 34095-34100)。酵素のDNAおよびアミノ酸配列はいくつかの種では既知であり(Scherens et al, 1991, Yeast, 7, 185-193; Farquhar et al, 1991, Gene, 108, 81-89;EP074661;EP0293793;EP0509841)、哺乳類肝臓から均一となるまで精製された酵素の作用機序に関する情報が増えつつある(Creighton et al, 1980, J Mol. Biol., 142, 43-62; Freedman et al, 1988, Biochem. Soc. Trans., 16, 96-9; Gilbert, 1989, Biochemistry, 28, 7298-7305; Lundstrom and Holmgren, 1990, J. Biol. Chem., 265, 9114-9120; Hawkins and Freedman, 1990, Biochem. J., 275, 335-339)。これまでに細胞においてタンパク質フォールディング、アセンブリおよび輸送のメディエーターとして含められている多くのタンパク質因子(Rothman, 1989, Cell, 59, 591-601)のうち、PDIは十分適宜された触媒活性を有する。
宿主における内在性PDI遺伝子の欠失または不活性化の結果、生存力のない宿主が生じる。言い換えれば、この内在性PDI遺伝子は「必須」遺伝子である。
PDIは哺乳類組織から容易に単離され、この均一な酵素は、特徴的な酸性PI(4.0〜4.5)を伴うホモ二量体(2×57kD)である(Hillson et al, 1984, Meyhods Enzymol., 107, 281-292)。また、この酵素はコムギおよび藻類クラミドモナス・レインハルジー(Chlamydomonas reinhardii)(Kaska et al, 1990, Biochem. J., 268, 63-68)、ラット(Edman et al, 1985, Nature, 317, 267-270)、ウシ(Yamauchi et al, 1987, Biochem. Biophys. Res. Comm., 146, 1485-1492)、ヒト(Pihlajaniemi et al, 1987, EMBO J., 6, 643-9)、酵母(Scherens et al, 前掲; Farquhar et al, 前掲)および雛鳥(Parkkonen et al, 1988, Biochem. J., 256, 1005-1011)からも精製されている。これらの脊椎動物種由来のタンパク質は高度の配列保存性を示し、総てラットPDI配列で最初に示された全体的な特徴を示す(Edman et al., 1985, 前掲)。
好ましいPDI配列としては、ヒト由来のものおよびS.セレビシエなどの酵母種由来のものが挙げられる。
酵母タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ前駆体PDI1は、Genbank受託番号CAA42373またはBAA00723として見出すことができる。それは次の522アミノ酸の配列を有する。
Figure 0005052899
別の酵母タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ配列はGenbank受託番号CAA38402として見出すことができる。それは次の530アミノ酸の配列を有する。
Figure 0005052899
これらの配列の次のアライメント(第一の配列としてGenbank受託番号CAA42373またはBAA00723、第二の配列としてGenbank受託番号CAA38402)は、これらの2つの配列間の違いは、114番の1つのアミノ酸の違い(太字で強調)であり、Genbank受託番号CAA38402で定義された配列は、506〜513番に付加的アミノ酸EADAEAEAを含む。
Figure 0005052899
上記のPDI配列の変異体および断片、ならびに他の天然PDI配列の変異体も本発明に含まれる。PDIに関して「変異体」とは、1以上の位置においてアミノ酸挿入、欠失または置換(保存的または非保存的)を持ったタンパク質を意味し、ただしここで、このような変化は、基本的特性、例えば、酵素活性(典型的活性および比活性)、あるpH範囲における熱安定性(pH安定性)が有意に変化していないタンパク質を生じる。これに関して「有意」とは、当業者が、その変異体の特性が異なり得るが、元のタンパク質と比べて明瞭ではないなととする場合を意味する。
「保存的置換」とは、Val、Ile、Leu、Ala、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Gly、Ala;Lys、Arg、His;およびPhe、Tyr、Tipなどの組合せを意図する。好ましい保存的置換としては、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrが挙げられる。
「変異体」は、一般に、それが由来するポリペプチドと少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%の配列同一性を有する。
2つのポリペプチド間の配列同一性%は、後述のように、好適なコンピュータープログラムを用いて判定することができる。このような変異体は天然のものであっても、当業者に周知のようなタンパク質工学および部位特異的突然変異誘発を用いて作出されたものであってもよい。
PDIに関して「断片」とは、1以上の位置に欠失が存在しているタンパク質を意味する。よって、断片は完全成熟PDIタンパク質の全配列の多くて5、10、20、30、40または50%、一般に60%まで、より一般には70%まで、好ましくは80%まで、より好ましくは90%まで、さらに好ましくは95%まで、さらに好ましくは99%までを含み得る。PDIタンパク質の特に好ましい断片は目的タンパク質の1以上のドメイン全体を含む。
PDIの断片または変異体は、宿主細胞において組換え発現させた場合に、S.セレビシエなどの宿主細胞において内因的にコードされているPDI遺伝子の欠失を補うことができるタンパク質であってもよく、例えば、別の生物、例えば、別の酵母もしくは他の真菌、または別の真核生物、例えば、ヒトもしくは他の脊椎動物、または動物により、あるいは植物によりコードされているホモログのようなPDIの天然ホモログであってもよい。
別の好ましいシャペロンとしては、SSA1、または同等のシャペロン様活性を有するその断片または変異体がある。SSA1は、YG100としても知られ、S.セレビシエゲノムの第I染色体上にあり、1.93kbpの大きさである。
公開されているSSA1のタンパク質配列の1つは次の通りである。
Figure 0005052899
公開されているSSA1のコード配列は次の通りであるが、この配列は、同一のタンパク質産物をコードする別のヌクレオチド配列を得るための縮重置換により改変することができると考えられる。
Figure 0005052899
Figure 0005052899
タンパク質Ssa1pはHsp70ファミリーのタンパク質に属し、サイトゾルに常在している。Hsp70はいくつかのシャペロン活性を遂行する能力を持ち;タンパク質の合成、アセンブリおよびフォールディングを助け;種々の細胞内の場所へにポリペプチドの輸送およびタンパク質凝集塊の溶解を媒介する(Becker & Craig, 1994, Eur.J: Biochem. 219, 11-23)。Hsp70遺伝子は高度に保存され、N末端ATP結合ドメインとC末端ペプチド結合ドメインを有する。Hsp70タンパク質は、主として折り畳まれていないタンパク質のペプチド主鎖と相互作用する。hsp70タンパク質による結合およびペプチドの放出はATP依存的なプロセスであり、hsp70のコンホメーション変化を伴う(Becker & Craig, 1994, 前掲)。
サイトゾルhsp70タンパク質は、特に、タンパク質の合成、フォールディングおよび分泌に関与する(Becker & Craig, 1994, 前掲)。S.セレビシエでは、サイトゾルhsp70タンパク質は、機能的に互いに異なるSSA(SSA1〜4)とSSB(SSB1および2)の2つの群に分けられている。SSAファミリーは、その群のタンパク質の少なくとも1つが細胞の生存力を維持するために活性でなければならないという意味で必須である(Becker & Craig, 1994, 前掲)。サイトゾルhsp70タンパク質は、好ましくは、フォールディングされていない、非成熟タンパク質と結合する。このことは、それらが、サイトゾルにおいて巨大分子複合体へと組み立てられるまで、それらを非フォールディング状態に維持し、かつ/または種々のオルガネラへのそれらの輸送を促進することにより、前駆体タンパク質の凝集を防ぐということを示唆している(Becker & Craig, 1994, 前掲)。SSAタンパク質は特に、小胞体およびミトコンドリアへ輸送するための前駆体の翻訳後生合成および維持に関与する(Kim et al., 1998, Proe. Natl. Acad. Sci. USA. 95, 12860-12865; Ngosuwan et al., 2003, J. Biol. Chem. 278(9), 7034-7042)。Ssa1pは損傷を受けたタンパク質に結合し、それらを部分的非フォールディング型で安定化させ、再フォールディングまたは分解を生じさせることが示されている(Becker & Craig, 1994, 前掲; Glover & Lindquist, 1998, Cell. 94, 73-82)。
Demolder et al, 1994, J. Biotechnol., 32, 179-189は、酵母におけるSSA1の過剰発現が、ヒトインターフェロン−βをコードしている組換え染色体に組込み型遺伝子の発現の増強をもたらしたことを報告している。SSA1およびヒトインターフェロン−βが同じプラスミド上の組換え遺伝子によりコードされていた場合に異種遺伝子発現の増強が達成できるという示唆はない。実際に、酵母におけるシャペロンの過剰発現の分野でのより最近の発展を鑑みれば(例えば、Robinson et al, 1994, 前掲; Hayano et al, 1995, 前掲; Shusta et al, 1998, 前掲; Parekh & Wittrup, 1997, 前掲; Bao & Fukuhara, 2001, 前掲;およびBao et al, 2000, 前掲)、当業者は、異種タンパク質の発現レベルを増強させるために、2μm系プラスミドからSSA1を発現させる気には全くならなかったであろうし、2μm系プラスミドからのSSA1および異種タンパク質の双方を発現させることはなおのことである。
SSA1の変異体および断片も本発明含まれる。SSA1に関して「変異体」とは、アミノ酸挿入、欠失または置換(保存的または非保存的)を有している1以上の位置以外に関しては天然SSA1の配列を有するタンパク質を意味する(ただし、このような変化は、塩基の特性、例えば、酵素活性(典型的活性および比活性)、熱安定性、あるpH範囲における活性(pH安定性)が有意に変化していないタンパク質をもたらす)。これに関して「有意に」とは、当業者が、その変異体の特性が異なり得るが、元のタンパク質と比べて不明瞭なものではないとする場合を意味する。
「保存的置換」とは、Val、Ile、Leu、Ala、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Gly、Ala;Lys、Arg、His;およびPhe、Tyr、Trpなどの組合せを意図する。好ましい保存的置換としては、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrが挙げられる。
SSA1の「変異体」は、一般に、天然SSA1の配列と少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくはなくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%の配列同一性を有する。
2つのポリペプチド間の配列同一性%は、後述のように、好適なコンピュータープログラムを用いて判定することができる。このような変異体は天然のものであっても、当業者に周知のようなタンパク質工学および部位特異的突然変異誘発の方法を用いて作出されたものであってもよい。
SSA1に関して「断片」とは、欠失が存在している1以上の位置以外は天然SSA1の配列を有するタンパク質を意味する。よって、断片は完全成熟SSA1タンパク質の全配列の多くて5、10、20、30、40または50%、一般に60%まで、より一般には70%まで、好ましくは80%まで、より好ましくは90%まで、さらに好ましくは95%まで、さらに好ましくは99%までを含み得る。SSA1タンパク質の特に好ましい断片は目的タンパク質の1以上のドメイン全体を含む。
SSA1の断片または変異体は、S.セレビシエなどの宿主細胞において組換え発現させた場合に宿主細胞において内因的にコードされているSSA1遺伝子(またはそのホモログ)の欠失を補うことができるタンパク質であってもよく、例えば、別の生物、例えば、別の酵母もしくは他の真菌、または別の真核生物、例えば、ヒトもしくは他の脊椎動物、または動物により、あるいは植物によりコードされているホモログのようなSSA1の天然ホモログであってもよい。
別の好ましいシャペロンとしては、PSE1または同等のシャペロン様活性を有するその断片もしくは変異体がある。
PSEIはKAP121としても知られ、第XIII染色体上にある必須遺伝子である。
公開されているタンパク質pse1pのタンパク質配列は次の通りである。
Figure 0005052899
Figure 0005052899
公開されているPSE1のコード配列は次の通りであるが、この配列は、同一のタンパク質産物をコードする別のヌクレオチド配列を得るための縮重置換により改変することができると考えられる。
Figure 0005052899
Figure 0005052899
PSE1遺伝子は3.25kbpの大きさである。Pse1pは巨大分子の核−細胞質間輸送に関与する(Seedorf & Silver, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 94, 8590-8595)。このプロセスは、核エンベロープに埋め込まれた核膜孔複合体(NPC)を介して起こり、ヌクレオポリンからなる(Ryan & Wente, 2000, Curr. Opin. Cell Biol. 12, 361-371)。タンパク質は、核輸入、核局在配列(NLS)および輸出、核輸出配列(NES)に必要な情報を含む特異的配列を有する(Pemberton et al., 1998, Cunr. Opin. Cell Biol. 10, 392-399)。Pse1pは一タンパク質群のカリオフェリン/インポルチンであり、αおよびβファミリーに分類されている。カリオフェリンは 、NLSおよびNESを認識し、NPCと相互作用することで、核膜を通過する巨大分子の輸送を媒介する可溶性輸送因子である。(Seedorf & Silver, 1997, 前掲; Pemberton et al., 1998, 前掲; Ryan & Wente, 2000, 前掲)。核孔を経た輸送は、小GTP結合タンパク質Ranによって触媒されるGTP加水分解により駆動される(Seedorf & Silver, 1997, 前掲)。Pse1Pはカリオフェリンβと同定されている。S.セレビシエでは14のカリオフェリンβタンパク質が同定されているが、そのうち4つのみが必須である。これはおそらく、複数のカリオフェリンが単一の巨大分子の輸送を媒介する可能性があるためである(Isoyama et al., 2001, J. Biol. Chem. 276(24), 21863-21869)。Pse1pは核の核エンベロープおよび細胞質のある範囲に局在する。このことは、このタンパク質がその輸送機能の一部として核内外を移動することを示唆している(Seedorf & Silver, 1997, 前掲)。Pse1pは転写因子(Isoyama et al., 2001, 前掲; Ueta et al., 2003, J. Biol. Chem. 278(50), 50120-50127)、ヒストン(Mosammaparast et al., 2002, J. Biol. Chem. 277(1), 862-868)、およびリボソームへのアセンブリ前のリボゾームタンパク質(Pemberton et al., 1998, 前掲)の核輸入に関与している。また、それは核からmRNAの輸出を媒介する。カリオフェリンはRNA結合タンパク質に見られる異なるNESを認識し、それと結合し、それが核から輸出される前にRNAをコーティングする(Seedorf & Silver, 1997, Pemberton et al., 1998, 前掲)。
巨大分子の核−細胞質間輸送は、細胞周期の適切な進行に必須なので、pse1pなどの核輸送因子は細胞増殖の新規な候補標的である(Seedorf & Silver, 1997, 前掲)。
S.セレビシエにおけるPse1p(タンパク質分泌エンハンサー)の過剰発現もまた、生物活性タンパク質のレパートリーの内因的タンパク質分泌レベルを増強することが示されている(Chow et al., 1992; J. Cell. Sci. 101(3), 709-719)。PSE1および異種タンパク質が双方とも同じプラスミド上の組換え遺伝子によりコードされていた場合に異種遺伝子発現の増強が達成できるという示唆はない。実際に、酵母におけるシャペロンの過剰発現におけるより最近の発展を鑑みれば(例えば、Robinson et al, 1994, 前掲; Hayano et al, 1995, 前掲; Shusta et al, 1998, 前掲; Parekh & Wittrup, 1997, 前掲; Bao & Fukuhara, 2001, 前掲;およびBao et al, 2000, 前掲)、当業者は、異種タンパク質の発現レベルを増強させるために、2μm系プラスミドからPSE1を過剰発現させることは全く試みなかったであろうし、2μm系プラスミドからのPSE1および異種タンパク質の双方を発現させることはなおのことである。
PSE1の変異体および断片も本発明に含まれる。PSE1に関して「変異体」とは、アミノ酸挿入、欠失または置換(保存的または非保存的)を有している1以上の位置以外に関しては天然PSE1の配列を有するタンパク質を意味する(ただし、このような変化は、塩基の特性、例えば、酵素活性(典型的活性および比活性)、熱安定性、あるpH範囲における活性(pH安定性)が有意に変化していないタンパク質をもたらす)。これに関して「有意に」とは、当業者が、その変異体の特性が異なり得るが、元のタンパク質と比べて不明瞭なものではないとする場合を意味する。
「保存的置換」とは、Val、Ile、Leu、Ala、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Gly、Ala;Lys、Arg、His;およびPhe、Tyr、Trpなどの組合せを意図する。好ましい保存的置換としては、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrが挙げられる。
PSE1の「変異体」は、一般に、天然PSE1の配列と少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくはなくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%の配列同一性を有する。
2つのポリペプチド間の配列同一性%は、後述のように、好適なコンピュータープログラムを用いて判定することができる。このような変異体は天然のものであっても、当業者に周知のようなタンパク質工学および部位特異的突然変異誘発の方法を用いて作出されたものであってもよい。
PSE1に関して「断片」とは、欠失が存在している1以上の位置以外は天然PSE1の配列を有するタンパク質を意味する。よって、断片は完全成熟PSE1タンパク質の全配列の多くて5、10、20、30、40または50%、一般に60%まで、より一般には70%まで、好ましくは80%まで、より好ましくは90%まで、さらに好ましくは95%まで、さらに好ましくは99%までを含み得る。PSE1タンパク質の特に好ましい断片は目的タンパク質の1以上のドメイン全体を含む。
PSE1の断片または変異体は、S.セレビシエなどの宿主細胞において組換え発現させた場合に宿主細胞において内因的なPSE1遺伝子の欠失を補うことができるタンパク質であってもよく、例えば、別の生物、例えば、別の酵母もしくは他の真菌、または別の真核生物、例えば、ヒトもしくは他の脊椎動物、または動物により、あるいは植物によりコードされているホモログのようなPSE1の天然ホモログであってもよい。
別の好ましいシャペロンとしては、ORM2または同等のシャペロン様活性を有するその断片もしくは変異体がある。
ORM2はYLR350Wとしても知られ、S.セレビシエゲノムの第XII染色体上にあり(828729〜829379番)、酵母タンパク質Orm1pと類似性を有する進化的に保存されているタンパク質をコードしている。Hjelmqvist et al, 2002, Genome Biology, 3(6), research 0027.1-0027.16は、ORM2が3つのヒト遺伝子(ORMDL1、ORMDL2およびORMDL3)ならびに微胞子虫、植物、ショウジョウバエ(Drosophila)、尾索類および脊椎動物におけるホモログを含む遺伝子ファミリーに属することを報告している。ORMDL遺伝子は、タンパク質小胞体(ER)において固定されているトランスメンブランタンパク質をコードしていることが報告されている。
タンパク質Orm2pは折り畳み異常タンパク質応答を誘導する薬剤に対する耐性に必要とされる。Hjelmqvist et al, 2002(前掲)は、2つのS.セレビシエORMDLホモログ(ORM1およびORM2)の二重ノックアウトが増殖速度の低下ならびにツニカマイシンおよびジチオトレイトールに対するより大きな感受性をもたらすことを報告している。
公開されているOrm2p配列の1つは次の通りである。
Figure 0005052899
上記のタンパク質はS.セレビシエにおいて以下のコードヌクレオチドによりコードされているが、この配列は、同一のタンパク質産物をコードする別のヌクレオチド配列を得るための縮重置換により改変することができると考えられる。
Figure 0005052899
Figure 0005052899
ORM2の変異体および断片も本発明含まれる。ORM2に関して「変異体」とは、アミノ酸挿入、欠失または置換(保存的または非保存的)を有している1以上の位置以外に関しては天然ORM2の配列を有するタンパク質を意味する(ただし、このような変化は、塩基の特性、例えば、酵素活性(典型的活性および比活性)、熱安定性、あるpH範囲における活性(pH安定性)が有意に変化していないタンパク質をもたらす)。これに関して「有意に」とは、当業者が、その変異体の特性が異なり得るが、元のタンパク質と比べて不明瞭なものではないとする場合を意味する。
「保存的置換」とは、Val、Ile、Leu、Ala、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Gly、Ala;Lys、Arg、His;およびPhe、Tyr、Trpなどの組合せを意図する。好ましい保存的置換としては、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrが挙げられる。
ORM2の「変異体」は、一般に、天然ORM2の配列と少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくはなくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%の配列同一性を有する。
2つのポリペプチド間の配列同一性%は、後述のように、好適なコンピュータープログラムを用いて判定することができる。このような変異体は天然のものであっても、当業者に周知のようなタンパク質工学および部位特異的突然変異誘発の方法を用いて作出されたものであってもよい。
ORM2に関して「断片」とは、欠失が存在している1以上の位置以外は天然ORM2の配列を有するタンパク質を意味する。よって、断片は完全成熟ORM2タンパク質の全配列の多くて5、10、20、30、40または50%、一般に60%まで、より一般には70%まで、好ましくは80%まで、より好ましくは90%まで、さらに好ましくは95%まで、さらに好ましくは99%までを含み得る。ORM2タンパク質の特に好ましい断片は目的タンパク質の1以上のドメイン全体を含む。
ORM2の断片または変異体は、S.セレビシエなどの宿主細胞において組換え発現させた場合に宿主細胞において内因的なORM2遺伝子の欠失を補うことができるタンパク質であってもよく、例えば、別の生物、例えば、別の酵母もしくは他の真菌、または別の真核生物、例えば、ヒトもしくは他の脊椎動物、または動物により、あるいは植物によりコードされているホモログのようなORM2の天然ホモログであってもよい。
シャペロンの配列を含むタンパク質をコードしている遺伝子は、異種タンパク質をコードしている遺伝子に関して、ORFと調節領域の組合せを特に強調して後述するような様式で形成することができる。
本明細書において「タンパク質」とは、天然および非天然のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドのあらゆるものを含む。「異種タンパク質」は、2μm系プラスミドにより天然にはコードされていないタンパク質であり、「非2μm系プラスミドタンパク質」と呼ぶこともできる。便宜上、「異種タンパク質」および「非2μm系プラスミドタンパク質」は、本願を通じて同義で用いる。よって、好ましくは、異種タンパク質は、Z.ルクシーから得られるようなpSR1、pSB3またはpSB4;双方ともZ.バイリーから得られるようなpSB1またはpSB2;Z.フェルメンタチから得られるようなpSM1;K.ドロソフィラルムから得られるようなpKD1;P.メンブラネファシエンスから得られるようなpPM1;およびS.セレビシエから得られるような2μmプラスミドのいずれか1つによりコードされているFLP、REP1、REP2、またはaRAF/Dタンパク質ではない。
異種タンパク質をコードしている遺伝子は、異種タンパク質をコードしているポリヌクレオチド配列(一般に、ある生物の標準的なコドン使用に従う)を含み、これはオープンリーディングフレーム(「ORF」)と呼ばれる。この遺伝子は、オープンリーディングフレームをコードしてないポリヌクレオチド配列(「非コード領域」と呼ばれる)もいくらかさらに含んでもよい。
その遺伝子中の非コード領域は、ORFに作動可能なように連結された1以上の調節配列を含んでよく、これにより、オープンリーディングフレームの転写および/またはその結果生じた転写物の翻訳が可能となる。
「調節配列」とは、それが作動可能なように連結されたオープンリーディングフレームの発現(すなわち、転写および/または翻訳)を調節する(すなわち、促進する、または低下させる)配列を意味する。調節領域は一般に、プロモーター、ターミネーター、リボソーム結合部位などを含む。当業者ならば、調節領域の選択が意図する発現系によって異なることが分かるであろう。例えば、プロモーターは構成型であっても誘導型であってもよく、細胞種または組織種特異的であっても非特異的であってもよい。
好適な調節領域は5bp、10bp、15bp、20bp、25bp、30bp、35bp、40bp、45bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp,100bp、120bp、140bp、160bp、180bp、200bp、220bp、240bp、260bp、280bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、750bp、800bp、850bp、900bp、950bp,1000bp、1100bp、1200bp、1300bp、1400bp、1500bpまたはそれ以上の長さであり得る。
当業者ならば、シャペロン、例えばPDIをコードしている遺伝子が非コード領域および/または調節領域をさらに含み得ることが分かるであろう。このような非コード領域および調節領域は、シャペロンORFに本来会合している天然非コード領域および/または調節領域に限定されるものではない。
発現系がサッカロミセス・セレビシエなどの酵母である場合、S.セレビシエの好適なプロモーターとしては、PGK1遺伝子、GAL1またはGAL10遺伝子、TEF1、TEF2、PYK1、PMA1、CYC1、PHO5、TRP1、4DH1、ADH2、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、グルコキナーゼ、α−接合因子フェロモン、a−接合因子フェロモン、PRB1プロモーター、PRA1プロモーター、GPD1プロモーター、および5’調節領域の部分と他のプロモーターの5’調節領域の部分との、または上流活性化部位とのハイブリッドを含むハイブリッドプロモーター(例えば、EP−A−258067のプロモーター)と会合するものが挙げられる。
好適な転写終結シグナルは当技術分野で周知のものである。宿主細胞が真核生物である場合、転写終結シグナルは好ましくは、転写終結およびポリアデニル化に適切なシグナルを含む真核生物遺伝子の3’フランキング配列に由来するものである。好適な3’フランキング配列は、例えば、用いる発現制御配列に本来会合している遺伝子のものであってよく、すなわち、そのプロモーターに相当し得る。あるいは、それらは異なってもよい。その場合、宿主が酵母、好ましくは、S.セレビシエであれば、S.セレビシエADH1、ADH2、CYC1、またはPGK1遺伝子の終結シグナルが好ましい。
2μm遺伝子などの隣接する遺伝子への転写の読み過ごしを防ぐためには、シャペロンPDI1のものなど、異種遺伝子のプロモーターおよびオープンリーディングフレームは転写終結配列がフランキングしていて、転写終結配列がプロモーターおよびオープンリーディングフレームの上流および下流の双方に配置されていることが有利であり得る(また、その逆の場合もある)。
一つの実施態様では、サッカロミセス・セレビシエなどの酵母において有利な調節配列としては、EP431880で教示されているような酵母プロモーター(例えば、サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーター);および転写ターミネーター、好ましくは、EP60057で教示されているようなサッカロミセスADH1由来のターミネーターが挙げられる。好ましくは、このベクターは少なくとも2つの翻訳終結コドンを組み込んでいる。
翻訳の読み過ごしを最小限とし、ひいては、延長した非天然融合タンパク質の生産を避けるためには、非コード領域には、UAA、UAGまたはUGAなどの翻訳停止コドンをコードしている1を超えるDNA配列を組み込むことが有利であり得る。翻訳停止コドンUAAが好ましい。
「作動可能なように連結される」とは、その意味の範囲内に、調節配列が、その調節領域が意図した様式でORFに作用を発揮できるORFとの関係を形成するように遺伝子の非コード領域内に配置されることを含む。このように、ORFに「作動可能なように連結されたる」調節領域は、その調節領域が、調節配列に適合した条件下、意図した様式でORFの転写および/または翻訳に影響を及ぼし得るように配置される。
1つの好ましい実施態様では、この異種タンパク質は分泌される。この場合、例えば天然HSA分泌リーダーの大部分を、WO90/01063に教示されているようなS.セレビシエα−接合因子分泌リーダーの小部分とともに含む分泌リーダー配列をコードしている配列をオープンリーディングフレームに含められる。
あるいは、この異種タンパク質は細胞内のものであってもよい。
もう1つの好ましい実施態様では、この異種タンパク質は真核生物タンパク質の配列、またはその断片もしくは変異体を含む。好適な真核生物としては、真菌、植物および動物が揚げられる。1つの好ましい実施態様では、この異種タンパク質は真菌タンパク質、例えば、酵母タンパク質である。もう1つの好ましい実施態様では、この異種タンパク質は動物タンパク質である。動物の例としては、脊椎動物および無脊椎動物が挙げられる。脊椎動物の例としては、哺乳類、例えば、ヒトおよび非ヒト哺乳類が挙げられる。
従って、この異種タンパク質は、酵母タンパク質の配列を含んでいてもよい。それは、例えば、2μm系プラスミドが由来する同じ宿主からの酵母タンパク質の配列を含んでもよい。当業者ならば、本発明の第一、第二または第三の態様の方法、使用またはプラスミドが、1を超える異種タンパク質、1を超えるシャペロン、または1を超える異種タンパク質と1を超えるシャペロンをコードしているDNA配列を含んでもよいことが分かるであろう。
もう1つの好ましい実施態様では、この異種タンパク質は、アルブミン、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば、血液凝固因子)、アンチスタシン、tick抗凝固ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンギオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンに基づく分子またはいずれかの断片(例えば、Small Modular ImmunoPharmaceutical(商標)(「SMIP」)またはdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFvまたはscFv断片)、Kunitzドメインタンパク質(例えば、WO03/066824に記載のもの、アルブミン融合物を含む、または含まないもの)、インターフェロン、インターロイキン、IL10、IL11、IL2、インターフェロンα種および亜種、インターフェロンβ種および亜種、インターフェロンγ種および亜種、レプチン、CNTF、CNTFAX15、IL1−受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)およびEPO模倣体、トロンボポエチン(TPO)およびTPO模倣体、プロサプチド、シアノビリン−N,5−ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIV gp41、HIV gp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルディン、血小板由来増殖因子、副甲状腺ホルモン、プロインスリン、インスリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、インスリン様増殖因子、カルシトニン、成長ホルモン、トランスフォーミング増殖因子β、腫瘍壊死因子、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、FGF、プレ型および活性型双方の凝固因子(限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ウィルブランド因子、αアンチトリプシン、プラスミノーゲンアクチベーター、因子VII、因子VIII、因子IX、因子Xおよび因子XIIIを含む)、神経増殖因子、LACI、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターαトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、Cタンパク質、Sタンパク質、または前記のいずれかの変異体もしくは断片の配列を含んでもよい。
上記のタンパク質に関して「変異体」とは、1以上の位置においてアミノ酸挿入、欠失または置換(保存的または非保存的)を持ったタンパク質を意味し、ここで、このような変化は、基本的特性、例えば、酵素活性または受容体結合(典型的活性および比活性)、熱安定性、あるpH範囲における活性(pH安定性)が有意に変化していないタンパク質を生じる。これに関して「有意に」とは、当業者が、その変異体の特性が異なり得るが、元のタンパク質と比べて不明瞭なものではないとする場合を意味する。
「保存的置換」とは、Val、Ile、Leu、Ala、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Gly、Ala;Lys、Arg、His;およびPhe、Tyr、Trpなどの組合せを意図する。好ましい保存的置換としては、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrが挙げられる。
「変異体」は、一般に、それが由来するポリペプチドと少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは少なくとも99.5%の配列同一性を有する。
2つのポリペプチド間の配列同一性%は、例えば、ウィスコンシン州立大学Genetic Computing GroupのGAPプログラムなどの好適なコンピュータープログラムを用いて判定することができ、同一性%は、配列が最適にアラインされたポリペプチドに関して算出されると考えられる。
あるいは、アライメントは、Clustal Wプログラム(Thompson et al., (1994) Nucleic Acids Res., 22(22), 4673-80)を用いて行ってもよい。これらのパラメーターは次の通ようなものであり得る。
・FASTペアワイズ・アライメント・パラメーター:K−タップル(ワード)サイズ;1、ウィンドウサイズ;5、ギャップ・ペナルティー;3、トップダイアゴナル数;5。スコアリング法;x%。
・マルチプル・アライメント・パラメーター:ギャップ・オープン・ペナルティー;10、ギャップ・エクステンション・ペナルティー;0.05。
・スコアリング・マトリックス:BLOSUM。
このような変異体は天然のものであっても、当技術分野で周知のようなタンパク質工学および部位特異的突然変異誘発の方法を用いて作出されたものであってもよい。
上記のタンパク質に関して「断片」とは、1以上の位置に欠失を有するタンパク質を意味する。よって、断片は完全成熟ポリペプチドの全配列の多くて5、10、20、30、40または50%を含み得る。一般に、断片は、目的の完全タンパク質の全配列の60%まで、より一般には70%まで、好ましくは80%まで、より好ましくは90%まで、さらに好ましくは95%まで、さらに好ましくは99%までを含む。目的タンパク質の特定の好ましい断片は、目的タンパク質の1以上のドメイン全体を含む。
特に好ましい一つの実施態様では、この異種タンパク質はアルブミンの配列またはその変異体もしくは断片を含む。
「アルブミン」とは、いずれの供給源から得られるアルブミンタンパク質配列を含むタンパク質も含む。一般に、この供給源は哺乳類である。1つの好ましい実施態様では、血清アルブミンはヒト血清アルブミン(「HSA」)である。「ヒト血清アルブミン」とは、ヒトにおいて天然に存在するアミノ酸配列を有する血清アルブミンおよびその変異体という意味を含む。好ましくは、このアルブミンはWO90/13653またはその変異体に開示されているアミノ酸配列を有する。このHSAコード配列は、ヒト遺伝子に対応するcDNAを単離するための既知の方法によって得ることができる、例えば、EP73646およびEP286424にも開示されている。
もう1つの好ましい実施態様では、「アルブミン」は、ウシ血清アルブミンの配列を含む。「ウシ血清アルブミン」としては、例えば、Swissprot受託番号P02769から取得されるような、ウシに天然に存在するアミノ酸配列および下記に定義するようなその変異体を有する血清アルブミンという意味を含む。「ウシ血清アルブミン」とは、また、以下に定義するような全長ウシ血清アルブミンの断片またはその変異体という意味も含む。
もう1つの好ましい実施態様では、アルブミンは、イヌ(例えば、Swissprot受託番号P49822参照)、ブタ(例えば、Swissprot受託番号P08835参照)、ヤギ(例えば、Sigmaから製品番号A2514またはA4164として入手できる)、シチメンチョウ(例えば、Swissprot受託番号073860参照)、ヒヒ(例えば、Sigmaから製品番号A1516として入手できる)、ネコ(例えば、Swissprot受託番号P49064参照)、ニワトリ(例えば、Swissprot受託番号P19121参照)、オボアルブミン(例えば、ニワトリアルブミン)(例えば、Swissprot受託番号P01012参照)、ロバ(例えば、Swissprot受託番号P39090参照)、モルモット(例えば、Sigmaから製品番号A3060、A2639、O5483またはA6539として入手できる)、ハムスター(例えば、Sigmaから製品番号A5409として入手できる)、ウマ(例えば、Swissprot受託番号P35747参照)、アカゲザル(例えば、Swissprot受託番号Q28522参照)、マウス(例えば、Swissprot受託番号O89020参照)、ハト(例えば、Khan et al, 2002, Int. J. Biol. Macromol., 30(3-4), 171-8により定義されている)、ウサギ(例えば、Swissprot受託番号P49065参照)、ラット(例えば、Swissprot受託番号P36953参照)およびヒツジ(例えば、Swissprot受託番号P14639参照)由来の血清アルブミンの1つに由来するアルブミン配列を含み、下記に定義するようなその変異体および断片を含む。
アルブミンの天然変異型としては多くのものが知られている。その多くはPeters (1996, All About Albumin: Biochemistry, Genetics and Medical Applications, Academic Press, Inc., SanDiego, California, p. 170-181)に記載されている。上記で定義したような変異体はこれらの天然変異体の1つであり得る。
「変異体アルブミン」とは、1以上の位置においてアミノ酸挿入、欠失または置換(保存的または非保存的)を持ったアルブミンタンパク質を意味し、ただしここで、このような変化は、基本的特性、例えば、酵素活性(典型的活性および比活性、例えば、ビリルビンとの結合)、浸透圧(膠質浸透圧、コロイド浸透圧)、あるpH範囲における挙動(pH安定性)が有意に変化していないアルブミンタンパク質を生じる。これに関して「有意に」とは、当業者が、その変異体の特性が異なり得るが、元のタンパク質と比べて不明瞭なものではないとする場合を意味する。
「保存的置換」とは、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn,Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの組合せを意図する。このような変異体は、引用することにより本明細書の一部とされるStevensに対して1981年11月24日に発行された米国特許第4,302,386号に開示されているような部位特異的突然変異誘発によるなど、当技術分野で周知の技術によって作出することができる。
一般に、アルブミン変異体は、天然アルブミンと40%を超える、通常には少なくとも50%、より一般には少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%またはそれ以上の配列同一性を有する。2つのポリペプチド間の配列同一性%は好適なコンピュータープログラム、例えば、ウィスコンシン州立大学Genetic Computing GroupのGAPプログラムを用いて判定することができ、同一性%は、その配列が最適にアラインされたポリペプチドに関して算出されると考えられる。あるいは、このアライメントはClustal Wプログラム(Thompson et al., 1994)を用いて行うこともできる。用いるパラメーターは次の通りである。
FASTペアワイズ・アライメント・パラメーター:K−タップル(ワード)サイズ;1、ウィンドウサイズ;5、ギャップ・ペナルティー;3、トップダイアゴナル数;5。スコアリング法;x%。マルチプル・アライメント・パラメーター:ギャップ・オープン・ペナルティー;10、ギャップ・エクステンション・ペナルティー;0.05。スコアリング・マトリックス:BLOSUM。
上記で用いる「断片」とは、少なくとも1つの基本特性、例えば、結合活性(典型的活性および比活性、例えば、ビリルビンに対する結合)、浸透圧(膠質浸透圧、コロイド浸透圧)、あるpH範囲における挙動(pH安定性)が有意に変化していない限り、全長アルブミンのいずれの断片またはその変異体も含む。これに関して「有意に」とは、当業者が、その変異体の特性が異なり得るが、元のタンパク質と比べて不明瞭なものではないとする場合を意味する。断片は一般に少なくとも50アミノ酸の長さである。断片はアルブミンの少なくとも1つのサブドメイン全体を含み得る。HSAのドメインは組換えタンパク質として発現されている(Dockal, M. et al., 1999, J. Biol. Chem., 274, 29303-29310)、ここでは、ドメインIはアミノ酸1〜197からなると定義され、ドメインIIはアミノ酸189〜385からなると定義され、組成物IIIはアミノ酸381〜585からなると定義されている。ドメインIとIIの間、およびドメインIIの間に存在するα−ヘリックス構造の延長部(h10−h1)のためにドメインの部分的重複が存在する(Peters, 1996, 前掲, 表2〜4)。HSAはまた、6つのサブドメイン(サブドメインIA、IB、IIA、IIB、IIIAおよびIIIB)を含む。サブドメインIAはアミノ酸6〜105を含み、サブドメインIBはアミノ酸120〜177を含み、サブドメインIIAはアミノ酸200〜291を含み、サブドメインIIBはアミノ酸316〜369を含み、サブドメインIIIAはアミノ酸392〜491を含み、サブドメインIIIBはアミノ酸512−583を含む。断片は上記で定義したような1以上のドメインもしくはサブドメインの全体もしくは一部、またはそれらのドメインおよび/もしくはサブドメインの任意の組合せを含み得る。
別の特に好ましい実施態様では、異種タンパク質はトランスフェリンまたはその変異体もしくはその断片の配列を含む。本明細書において「トランスフェリン」とは、トランスフェリンファミリーの総てのメンバー(Testa, Proteins of iron metabolism, CRC Press, 2002; Harris & Aisen, Iron carriers and iron proteins, Vol. 5, Physical Bioinorganic Chemistry, VCH, 1991)およびそれらの誘導体、例えば、トランスフェリン、変異株トランスフェリン(Mason et al, 1993, Biochemistry, 32, 5472; Mason et al, 1998, Biochem. J., 330(1), 35)、末端切断型トランスフェリン、トランスフェリンローブ(Mason et al, 1996, Protein Expr. Purif, 8, 119; Mason et al, 1991, Protein Expr. Purif., 2, 214)、ラクトフェリン、変異型ラクトフェリン、末端切断型ラクトフェリン、ラクトフェリンローブまたは上記のいずれかのものと他のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質との融合物を含む(Shin et al, 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, 2820; Ali et al, 1999, J Biol. Chem., 274, 24066; Mason et al, 2002, Biochemistry, 41, 9448)。
トランスフェリンはヒトトランスフェリンであってもよい。本発明では、「ヒトトランスフェリン」は、ヒト由来のトランスフェリンと識別できない、またはその変異体もしくは断片である材料を表すのに用いる。「変異体」には、挿入、欠失および置換(保存的または非保存的)を含み、ここで、このような変化はトランスフェリンの有用なリガンド結合または免疫原性を実質的に変化させない。
トランスフェリンの突然変異体も本発明に含まれる。このような突然変異体は免疫原性を変化させ得る。例えば、トランスフェリン突然変異体はグリコシル化の改変(例えば、低下)を示し得る。トランスフェリン分子のN結合グリコシル化パターンは、N、XまたはS/Tの位置のいずれか、または総てで、N−X−S/Tなどのアミノ酸グリコシル化コンセンサス配列を付加/除去することによって改変することができる。トランスフェリン突然変異体は、金属イオンおよび/またはトランスフェリン受容体などの他のタンパク質とのそれらの自然結合を変化させ得る。この様式で改変されたトランスフェリン突然変異体の例を下記に挙げる。
本発明者らは、また、ヒトトランスフェリンまたはヒトトランスフェリン類似体の天然多型変異体も含む。一般に、ヒトトランスフェリンの変異体または断片は少なくとも5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、30重量%、40重量%または50重量%(好ましくは少なくとも80重量%、90重量%または95重量%)のヒトトランスフェリンのリガンド結合活性(例えば、鉄結合活性)を有する。トランスフェリンまたは試験サンプルの鉄結合活性は、それらの鉄不含状態および完全に鉄が付加した状態のタンパク質の470nm:280nm吸光度比によって分光光度的に測定することができる。特に断りのない限り、試薬は鉄不含でなければならない。鉄は、0.1Mクエン酸塩、0.1M酢酸塩、10mM EDTA pH4.5に対する透析によってトランスフェリンまたは試験サンプルから除去することができる。タンパク質は、100mM HEPES、10mM NaHCO pH8.0中、約20mg/mLでなければならない。280nmでの吸光度が分光光度的に正確に測定できるように水に希釈したアポトランスフェリン(Calbiochem, CN Biosciences, Nottingham, UK)の470nm:280nm吸光度比を測定する(0%鉄結合)。2mLの1M NaOHに191mgのニトロ三酢酸を溶解した後、2mLの0.5M塩化鉄(III)を加えることで、20mM鉄−ニトリロトリアセテート(FeNTA)溶液を作製する。脱イオン水で50mLに希釈する。新しく作製した20mM FeNTAの十分な過剰量を加えた後、100mM HEPES、10mM NaHCO pH8.0に対してホロトランスフェリン調製物を完全に透析して残留するFeNTAを除去することで、アポトランスフェリンに完全に鉄を付加し(100%鉄結合)、その後、470nm:280nmの吸光度比を測定する。この手順を、試験サンプルを用いて繰り返し、まず、鉄フリーとしなければならず、最終比を対照と比べる。
その上、上記のいずれかのものを含む単一もしくは複数の異種融合物;またはアルブミン、トランスフェリンもしくは免疫グロビンまたはこれらのいずれかの変異体もしくは断片との単一もしくは複数の異種融合物が使用できる。このような融合物としては、WO01/79271で例示されるような、アルブミンN末端融合物、アルブミンC末端融合物およびコ−N末端およびC末端アルブミン融合物、ならびにトランスフェリンN末端融合物、トランスフェリンC末端融合物、およびコ−N末端およびC末端トランスフェリン融合物が挙げられる。
トランスフェリン融合物の例は、米国特許出願US2003/0221201およびUS2003/0226155、Shin, et al., 1995, Proc Natl Acad Sci U S A, 92, 2820, Ali, et al., 1999, J Biol Chem, 274, 24066, Mason, et al., 2002, Biochemistry, 41, 9448に示されており、これらの内容は引用することにより本明細書の一部とする。
当業者ならば、また、本発明とともに用いるオープンリーディングフレームとして、他のいずれかの遺伝子もしくは変異体、または一部もしくはいずれかのオープンリーディングフレームが利用可能であることも分かるであろう。例えば、このオープンリーディングフレームは、天然タンパク質(チモーゲンを含む)、または天然タンパク質の変異体もしくは断片(例えば、一ドメインであってもよい);または完全に合成されたタンパク質;または種々のタンパク質(天然または合成)単一もしくは複数の融合物であるいずれかの配列を含むタンパク質をコードし得る。このようなタンパク質は、限定されるものではないが、WO01/79258、WO01/79271、WO01/79442、WO01/79443、WO01/79444およびWO01/79480に示されているリスト、またはその変異体もしくは断片から入手することができ、これらの開示内容は引用することにより本明細書の一部とされる。これらの特許出願はアルブミンの融合相手に関してタンパク質のリストを示しているが、本発明はそれに限定されるものでなく、本発明の目的では、そこに挙げられているタンパク質のいずれのものを単独で供してもよいし、あるいはまた、アルブミン、免疫グロブリンのFc領域、トランスフェリン、ラクトフェリンもしくは他のいずれかのタンパク質、または上記のうちいずれかの断片もしくは変異体の融合相手として、目的ポリペプチドとして供してもよい。
この異種タンパク質は治療上活性なタンパク質であってもよい。言い換えれば、それはヒトなどの個体において認識される医療効果を有し得る。当技術分野では、多くの異なる種類の治療上活性なタンパク質が周知である。
この異種タンパク質は酵母において分泌を引き起こすのに有効なリーダー配列を含んでいてもよい。
宿主細胞からタンパク質を分泌させるため、多くの天然または人工ポリペプチドシグナル配列(分泌プレ領域とも呼ばれる)が使用または開発されている。このシグナル配列は、細胞から周辺の培地へ、あるいはある場合には、原形質周辺空間へタンパク質を輸出する細胞機構に未完成タンパク質を向ける。このシグナル配列は、必ずというわけではないが、通常、一次翻訳産物のN末端に位置し、必ずというわけではないが、通常、分泌過程でそのタンパク質を切断して「成熟」タンパク質とする。
ある種のタンパク質の場合、シグナル配列の除去後、最初に分泌されるものは、「プロ」配列と呼ばれる、そのN末端における付加的アミノ酸を含み、この中間的なものは「プロタンパク質」と呼ばれる。これらのプロ配列は、最終的なタンパク質を折りたたみ、機能的となるよう助け、通常、その後に切断されると考えられる。他の場合では、このプロ領域は、単に、酵素がプレ−プロ領域を切断するための切断部位を提供し、別の機能を持つことは知られていない。
プロ配列は細胞からのタンパク質の分泌の際か、または細胞から周辺培地または原形質周辺空間への輸出の後かのいずれかに除去され得る。
タンパク質の分泌を命令するポリペプチド配列は、それらがシグナル(すなわち、プレ)配列に似ていようがプレプロ分泌配列に似ていようが、リーダー配列と呼ばれる。タンパク質の分泌は、翻訳、移動および翻訳後プロセシングを含む動的プロセスであり、これらの段階の1以上は、必ずしも別の段階が開始または完了する前に完了しない場合がある。
酵母サッカロミセス・セレビシエ、チゴサッカロミセス種、クルイベロミセス・ラクチスおよびピキア・パストリスなどの真核生物種におけるタンパク質の生産では、既知のリーダー配列としては、S.セレビシエ酸性ホスファターゼタンパク質(Pho5p)(EP366400参照)、インベルターゼタンパク質(Suc2p)(Smith et al. (1985) Science, 229, 1219-1224参照)および熱ショックタンパク質−150(Hsp150p)(WO95/33833参照)由来のものが挙げられる。さらに、S.セレビシエ接合因子α−1タンパク質(MFα−1)由来、ならびにヒトリゾチームおよびヒト血清アルブミン(HSA)タンパク質由来のリーダー配列が使用されており、ヒトアルブミン分泌のためには後者のものが特に使用されているが、他を排除するものではない。WO90/01063は、MFα−1とHSAリーダー配列の融合を記載しており、これはMFα−1リーダー配列を使用するよりも、混入するヒトアルブミン断片の生産を有利に減じる。改変型リーダー配列も本願の実施例で開示され、読者はこれらのリーダー配列がトランスフェリン以外のタンパク質とともに使用できることが分かるであろう。さらに、天然トランスフェリンリーダー配列を用いて、トランスフェリンおよび他の異種タンパク質の分泌を指示してもよい。
シャペロンがタンパク質ジスルフィドイソメラーゼであれば、好ましくは、この異種タンパク質は成熟型のジスルフィド結合を含む。このジスルフィド結合は分子内および/または分子間に存在し得る。
異種タンパク質は商業上有用なタンパク質であってもよい。数種の異種により発現されるタンパク質は、細胞の活動に有益な作用をもたらすために、それらが発現される細胞と相互作用させようとするものである。これらのタンパク質はそれら自体、商業上有用なものではない。商業上有用なタンパク質は、それらが発現される細胞のex vivoでの有用性を有するタンパク質である。しかしながらやはり、当業者ならば、商業上有用なタンパク質もまた、それを異種タンパク質として発現する宿主細胞に対して生物学的作用を有し得るが、その作用はそこでタンパク質を発現するための主な理由または唯一の理由ではないことが分かるであろう。
一つの実施態様では、異種タンパク質がβ−ラクタマーゼでないことが好ましい。もう1つの実施態様では、異種タンパク質がアンチスタシンでないことが好ましい。しかしながら、これらのタンパク質の中に、本発明による2μm系プラスミドに由来しているβ−ラクタマーゼまたはアンチスタシンのいずれかをコードする遺伝子以外に、本発明による2μm系プラスミド上に存在するものはないこと、および単に、異種タンパク質をコードしている遺伝子は、β「−ラクタマーゼおよび/またはアンチスタシン以外のタンパク質をコードすることが分かるであろう。
プラスミドは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2001, 3rd edition(それらの内容は引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されているものなど当技術分野で周知の技術を用いて、シャペロンをコードしている遺伝子を挿入し、さらに異種タンパク質をコードしている遺伝子を挿入することで、当技術分野で公知の2μm系プラスミドを改変することにより作製することができる。例えば、このような方法の1つは、付着末端による連結を含む。適合する付着末端は、好適な制限酵素により、挿入用のDNA断片およびプラスミド上に作製することができる。これらの末端は相補的塩基対の形成によってすぐにアニーリングし、残ったニックはDNAリガーゼの作用によって閉じることができる。
別の方法では、合成二本鎖オリゴヌクレオチドリンカーおよびアダプターを用いる。平滑末端を有するDNA断片は、凸部3’末端を除去し、凹部3’末端を埋めるバクテリオファージT4 DNAポリメラーゼまたは大腸菌DNAポリメラーゼIによって作製される。所定の制限酵素に対する認識配列を含む合成リンカーおよび平滑末端化二本鎖DNAは、T4 DNAリガーゼにより平滑末端化DNA断片に連結することができる。次に、それらを適当な制限酵素で消化して付着末端を作出し、適合する末端を有する発現ベクターに連結する。アダプターはまた、連結に用いられる平滑末端を1つ含むが、予め作製された付着末端も有する、化学的に合成されたDNA断片でもある。あるいは、DNA断片は、1以上の合成二本鎖オリゴヌクレオチド(場合によって、付着末端を含んでもよい)の存在下または不在下でDNAリガーゼの作用によりともに連結することができる。
多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーが、Sigma-Genosys Ltd, London Road, Pampisford, Cambridge, United Kingdomをはじめとする多くの供給者から市販されている。
2μm系プラスミドにおける適当な挿入部位としては、限定されるものではないが、上述のものが挙げられる。
本発明によれば、上記のようなプラスミドを含む宿主細胞も提供される。宿主細胞はいずれの細胞種でもよい。細菌および酵母の宿主細胞が好ましい。細菌宿主細胞は、クローニング目的で有用であり得る。酵母宿主細胞は、プラスミドに存在する遺伝子の発現に有用であり得る。
一つの実施態様では、宿主細胞は、サッカロミセス属、クルイベロミセス属、またはピキア属のメンバー、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、クルイベロミセス・ラクチス、ピキア・パストリスおよびピキア・メンブラネファシエンスなどの酵母細胞であり、あるいは、チゴサッカロミセス・ルクシー、チゴサッカロミセス・バイリー、チゴサッカロミセス・フェルメンタチ、またはクルイベロミセス・ドロソフィラルムが好ましい。
宿主細胞種は用いるプラスミド種との適合性に関して選択すればよい。1つの酵母種から得られたプラスミドは、他の酵母種で維持可能である(Irie et al, 1991, Gene, 108(1), 139-144; Irie et al, 1991, Mol. Gen. Genet., 225(2), 257-265)。例えば、チゴサッカロミセス・ルクシー由来のpSR1は、サッカロミセス・セレビシエで維持可能である。好ましくは、この宿主細胞は用いる2μm系プラスミドと適合する(次のプラスミドについて詳しくは下記を参照)。例えば、プラスミドがpSR1、pSB3またはpSB4に基づく場合、好適な酵母細胞はチゴサッカロミセス・ルクシーであり、プラスミドがpSB1またはpSB2に基づく場合、好適な酵母細胞はチゴサッカロミセス・バイリーであり、プラスミドがpSM1に基づく場合、好適な酵母細胞はチゴサッカロミセス・フェルメンタチであり、プラスミドがpKD1に基づく場合、好適な酵母細胞はクルイベロミセス・ドロソフィラルムであり、プラスミドがpPM1に基づく場合、好適な酵母細胞はピキア・メンブラネファシエンスであり、プラスミドが2μmプラスミドに基づく場合、好適な酵母細胞はサッカロミセス・セレビシエまたはサッカロミセス・カルルスベルゲネシスである。プラスミドが2μmプラスミドに基づき、酵母細胞がサッカロミセス・セレビシエであるのが特に好ましい。
本発明による2μm系プラスミドは、それが天然プラスミドに由来する配列を有する遺伝子FLP、REP1およびREP2の1つ、2つまたは好ましくは3つを含んでいるならば、天然プラスミドに基づくと言える。
例えば、遺伝子コード配列の分断により、タンパク質のO−グリコシル化に関与する1以上のタンパク質マンノシルトランスフェラーゼに欠損のある酵母を用いることが特に有利であり得る。
組換え発現したタンパク質は、生産宿主細胞により望ましくない翻訳後修飾を受けることがある。例えば、アルブミンタンパク質配列はN結合型グリコシル化の部位を含まず、自然状態でO結合型グリコシル化により修飾されるとの報告はない。しかしながら、多くの酵母種で産生される組換えヒトアルブミン(「rHA」)は、一般にマンノースを巻き込むO結合型グリコシル化により修飾可能であることが判明した。マンノシル化されたアルブミンはレクチンコンカナバリンAと結合し得る。酵母により産生されたマンノシル化アルブミンの量は、1以上のPMT遺伝子を欠いた酵母株を用いて減少させることができる(WO94/04687)。これを達成する最も便宜な方法は、そのゲノムに、Pmtタンパク質のうちの1つを低レベルでしか産生しないような欠陥を有する酵母を作出することである。例えば、Pmtタンパク質をわずかしか、または全く産生しないような、コード配列または調節領域における(またはPMT遺伝子の1つの発現を調節する別の遺伝子における)欠失、挿入または転位があり得る。あるいは、この酵母は、抗Pmt抗体などの抗Pmt剤を産生するように形質転換させることもできる。
S.セレビシエ以外の酵母を用いる場合、例えば、ピキア・パストリスまたはクルイベロミセス・ラクチスにおいて、S.セレビシエのPMT遺伝子に相当する1以上の遺伝子を分断することも有益である。S.セレビシエから単離されたPMT1(または他のいずれかのPMT遺伝子)の配列を、他の真菌種における同等の酵素活性をコードしている遺伝子の同定または分断に用いてもよい。クルイベロミセス・ラクチスのPMT1ホモログのクローニングはWO94/04687に記載されている。
酵母は、それぞれWO95/33833およびWO95/23857に教示されているように、HSP150および/またはYAP3遺伝子の欠失を有していることが有利である。
上記で定義したプラスミドは標準的な技術によって宿主に導入することができる。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al (1972) Proc. Natl. Acad Sci. USA 69, 2110およびSambrook et al (2001) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY参照。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al (1986) Methods In Yeast Genetics, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NYに記載されている。Beggs (1978) Nature 275, 104-109の方法も有用である。S.セレビシエの形質転換方法は一般に、EP251744、EP258067およびWO90/01063で教示されている(これらは総て、引用することにより本明細書の一部とされる)。脊椎動物細胞に関しては、このような細胞の形質転換に有用な試薬、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE−デキストランまたはリポソーム製剤がStratagene Cloning SystemsまたはLife Technologies Inc., Gaithersburg, MD 20877, USAから入手できる。
細胞の形質転換にはまた、エレクトロポレーションも有用であり、エレクトロポレーションは酵母細胞、細菌細胞および脊椎動物細胞を形質転換するためのものとして当技術分野で周知のものである。エレクトロポレーションによる酵母の形質転換法は、Becker & Guarente (1990) Methods Eszymol. 194, 182に開示されている。
一般に、プラスミドは、総ての宿主を形質転換するわけではないので、形質転換宿主細胞を選択する必要がある。よって、プラスミドは、限定されるものではないが、細菌選択マーカーおよび/または酵母選択マーカーをはじめとする選択マーカーを含み得る。典型的な細菌選択マーカーはβ−ラクタマーゼ遺伝子であるが、その他多くのものが当技術分野で公知である。典型的な好適な酵母選択マーカーとしては、LEU2、TRP1、HIS3、HIS4、URA3、URA5、SFA1、ADE2、MET15、LYS5、LYS2、ILV2、FBA1、PSE1、PDI1およびPGK1が挙げられる。当業者ならば、pgk1酵母株のPGK1で実証されているように(Piper and Curran, 1990, Curr. Genet. 17, 119)、プラスミド上に機能的遺伝子が提供されている場合には、その染色体欠失または不活性化が生存力のない宿主を作り出すいずれかの遺伝子、いわゆる必須遺伝子を選択マーカーとして使用できることが分かるであろう。好適な必須遺伝子はStanfordゲノムデータベース(SGD)、http:://db.yeastgenome.orgに見出せる。欠失または不活性化した際に栄養(生合成)要求とならない必須遺伝子産物(例えば、PDI1、PSE1、PGK1またはFBA1)は、プラスミドの不在下で、特定の選択条件下で細胞を培養する必要があるという不都合なく、プラスミドの安定性の増強を達成するためにその遺伝子産物を産生できない宿主細胞のプラスミドにおいて、選択マーカーとして使用できる。「栄養(生合成)要求性」とは、増殖培地に対する添加または改変によって補償できる欠陥を含む。よって、本発明において好ましい「必須マーカー遺伝子」は、宿主細胞で欠失または不活性化した際に、増殖培地に対する添加または改変によっては補償できない欠陥をもたらすものである。
さらに、本発明の第一、第二または第三の態様のいずれか1つに従うプラスミドは、1を超える選択マーカーを含み得る。
1つの選択技術としては、形質転換細胞において選択形質をコードしているDNA配列マーカーを必要な制御エレメントとともに発現ベクターに組み込むことを含む。これらのマーカーとしては、真核細胞培養に関してはジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418またはネオマイシン耐性、および大腸菌およびその他の細菌の培養に関してはテトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリン(すなわち、β−ラクタマーゼ)耐性遺伝子が挙げられる。あるいは、このような選択形質の遺伝子は、目的の宿主細胞と同時形質転換するのに用いる別のベクター上にあってもよい。
首尾よく形質転換した細胞を同定する別法としては、本発明によるプラスミドの導入から得られた細胞を増殖させ、場合によって、組換えポリペプチド(すなわち、プラスミド上のポリヌクレオチド配列によりコードされており、かつ、そのポリペプチドがその宿主により自然には産生されないという意味で、宿主細胞にとっては異種であるポリペプチド)を発現させる。細胞を採集し、溶解し、Southern (1975) J Mol. Biol. 98, 503またはBerent et al (1985) Biotech. 3, 208が記載しているものなどの方法、または当技術分野で一般的なDNAおよびRNA分析の他の方法を用い、DNAまたはRNA内容物を組換え配列が存在しているかどうか調べることができる。あるいは、形質転換細胞の培養物の上清中のポリペプチドの存在を、抗体を用いて検出することもできる。
組換えDNAの存在に関して直接アッセイすることに加え、形質転換の成功は、組換えDNAがタンパク質の発現を命令し得る場合は、周知の免疫学的方法により確認することができる。例えば、発現ベクターで首尾よく形質転換した細胞は、適当な抗原性を示すタンパク質を産生する。形質転換されたと考えられる細胞のサンプルを採集し、好適な抗体を用いてそのタンパク質に関してアッセイする。
このように、形質転換宿主細胞それら自体に加え、本発明はまた、栄養培地中でのこれらの細胞の培養、好ましくは、モノクローナル(クローン的均一)培養、またはモノクローナル培養由来の培養も意図する。あるいは、形質転換細胞は、工業上/商業上または医薬上有用な産物であり得、さらなる精製なしに使用することもでき、あるいは、培養培地から精製し、所望により、それらの意図する工業上/商業上または医薬上の使用に適当な様式で担体または希釈剤とともに製剤化し、また、所望により、その使用に適した様式でパッケージングおよび提供することができる。例えば、全細胞を埋植するか、または細胞培養物を工程、作物またはその他の目的の標的上/中へ直接噴霧するのに使用できる。同様に、酵母細胞などの全細胞を、フラグランス、フレーバーおよび医薬など、極めて多様な適用でカプセルとして使用することもできる。
次に、形質転換宿主細胞を十分な時間、当業者に公知であり、また、本明細書に開示されている技術の点から適当な条件下で培養し、そのプラスミドによりコードされているシャペロンおよび異種タンパク質を発現させることができる。
培養培地は非選択性であっても、またはプラスミドの維持に対して選択圧をかけてもよい。
このようにして生産された異種タンパク質は細胞内に存在するか、または分泌される場合には、培養培地中および/または宿主細胞の原形質周辺の空間に存在し得る。
「発現した異種タンパク質を培養宿主細胞または培養培地から精製する」工程は、所望により、細胞の固定化、細胞の分離および/または細胞の破砕を含むが、細胞の固定化、分離および/または破砕の工程とは異なる、少なくとも1つの他の精製工程を常に含む。
細胞の固定化技術、例えば、アルギン酸カルシウムビーズを用いて細胞を封入することなどは当技術分野で周知のものである。同様に、細胞分離技術、例えば、遠心分離、濾過(例えば、クロスフロー濾過、流動床クロマトグラフィーなど)も当技術分野で周知のものである。同様に、細胞破砕法、例えば、ビーズミリング、音波処理、酵素処理なども当技術分野で周知のものである。
少なくとも1つの他の精製工程は、当技術分野で公知のタンパク質精製に好適な他のいずれの工程であってもよい。例えば、組換え発現したアルブミンの回収のための精製技術はWO92/04367(マトリックス由来色素の除去)、EP464590(酵母由来着色物質の除去)、EP319067(アルカリ沈殿とそれに続く、親油相に対するアルブミンの適用)、ならびにWO96/37515、米国特許第5728553号およびWO00/44772(完全精製工程を記載)に開示されており、これらは総て、引用することにより本明細書の一部とされる。
アルブミン以外のタンパク質は、培養培地から、そのようなタンパク質を精製するのに有用であることが分かっているいずれかの技術によって精製することができる。
好適な方法としては、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿法、酸または溶媒抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、濃縮、希釈、pH調整、ダイアフィルトレーション、限外濾過、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)、逆相HPLC、伝導性調整などが挙げられる。
一つの実施態様では、上述の技術のうちいずれか1以上を用い、このようにして単離されたタンパク質を商業上または工業上許容されるレベルの純度にまでさらに精製してもよい。商業上または工業上許容されるレベルの純度に、本発明者らは、少なくとも0.01g.L−1、0.02g.L−1、0.03g.L−1、0.04g.L−1、0.05g.L−1、0.06g.L−1、0.07g.L−1、0.08g.L−1、0.09g.L−1、0.1g.L−1、0.2g.L−1、0.3g.L−1、0.4g.L−1、0.5g.L−1、0.6g.L−1、0.7g.L−1、0.8g.L−1、0.9g.L−1、1g.L−1、2g.L−1、3g.L−1、4g.L−1、5g.L−1、6g.L−1、7g.L−1、8g.L−1、9g.L−1、10g.L−1、15g.L−1、20g.L−1、25g.L−1、30g.L−1、40g.L−1、50g.L−1、60g.L−1、70g.L−1、70g.L−1、90g.L−1、100g.L−1、150g.L−1、200g.L−1、250g.L−1、300g.L−1、350g.L−1、400g.L−1、500g.L−1、600g.L−1、700g.L−1、800g.L−1、900g.L−1、1000g.L−1、またはそれ以上の濃度でのタンパク質の提供を含める。
この異種タンパク質は医薬上許容されるレベルの純度を達成するために精製されるのが好ましい。タンパク質は、パイロジェンフリーであり、そのタンパク質の活性に関連のない医学的作用を引き起こさずに医薬上有効な量で投与可能であるならば、医薬上許容されるレベルの純度を有する。
得られた異種タンパク質は、その既知の有用性のいずれを目的に使用してもよく、アルブミンの場合には、火傷、ショックおよび血液損失を処置するための患者へのi.v.投与、培養培地への補給、および他のタンパク質処方物における賦形剤としての使用が挙げられる。
本発明によるプロセスによって得られた治療上有用な異種タンパク質は単独で投与することもできるが、1以上の許容される担体または希釈剤とともに医薬製剤として提供することが好ましい。担体または希釈剤は、目的タンパク質と適合し、かつ、そのレシピエントに害がないという意味において「許容」されるものでなければならない。一般に、担体または希釈剤は、無菌かつパイロジェンフリーの水または生理食塩水である。
所望により、製剤化されたタンパク質を錠剤、カプセル剤、注射溶液などのような形態で単位投与形にて提供する。
本発明のさらなる実施態様は、PDIおよびトランスフェリンに基づくタンパク質の配列を含むタンパク質を組換え的にコードしている宿主細胞を提供する。「トランスフェリンに基づくタンパク質」とは、トランスフェリンまたはトランスフェリンファミリーの他のいずれかのメンバー(例えば、ラクトフェリン)、その変異体もしくは断片、または上記の種類を含むトランスフェリン、その変異体もしくは断片を含む融合タンパク質を意味する。よって、本発明はまた、トランスフェリンに基づくタンパク質の発現を増強するための組換えPDI遺伝子の使用も提供する。
このPDI遺伝子は、上記の2μm系プラスミドなどのプラスミド上に提供してもよい。あるいは、PDI遺伝子は、染色体に組み込んでもよい。好ましい実施態様では、PDI遺伝子は内因的にコードされているPDI遺伝子の遺伝子座において、好ましくは内因的PDI遺伝子の発現を妨害することなく、染色体に組み込まれる。これに関して、「内因的PDI遺伝子の発現を妨害することなく」とは、組込みの結果として内因的PDI遺伝子からのタンパク質産生のいくらかの低下が許容されるものである(好ましくは、低下がない)ことを意味し、内因的PDI遺伝子と組み込まれたPDI遺伝子からの発現を合わせた作用の結果としての、改変宿主細胞におけるPDIタンパク質産生の総レベルが、組込み前の宿主細胞によるPDIタンパク質産生レベルよりも高くなっている。
トランスフェリンに基づくタンパク質をコードしている遺伝子は、上記の2μm系プラスミドなどのプラスミド上に提供してもよいし、または、内因的にコードされているPDI遺伝子の遺伝子座などに、好ましくは、内因的PDI遺伝子の発現を妨害することなく、染色体に組み込んでもよい。
一つの実施態様では、PDI遺伝子は染色体に組み込まれ、トランスフェリンに基づくタンパク質をコードしている遺伝子はプラスミド上に提供される。もう1つの実施態様では、PDI遺伝子はプラスミド上に提供され、トランスフェリンに基づくタンパク質をコードしている遺伝子は染色体に組み込まれる。さらに別の実施態様では、PDI遺伝子とトランスフェリンに基づくタンパク質をコードしている遺伝子の双方が染色体に組み込まれる。さらに別の実施態様では、PDI遺伝子とトランスフェリンに基づくタンパク質をコードしている遺伝子の双方がプラスミド上に提供される。
上述のように、Bao et al, 2000, Yeast, 16, 329-341は、K.ラクチス PDI遺伝子KlPDI1の過剰発現はK.ラクチス細胞に有害であったことを報告している。こういったことを背景に、本発明者らは、驚くことに、Bao et alが報告している悪影響なく、PDIおよび他のシャペロンを過剰発現させることができるだけでなく、同じ細胞で2つの異なるシャペロンを組換え的に過剰発現させることができ、毒性というよりむしろ、いずれかのシャペロンの個々の発現により得られるレベルよりも高いレベルまで異種タンパク質の発現を高めることができる。これは予期されたことではなかった。これに対し、Bao et alの教示に照らせば、2つのシャペロンの過剰発現は一方の過剰発現よりもいっそう毒性が高いと思われるところである。さらに、本発明による初期の知見に照らせば、単一のシャペロンとの同時発現によって得られる異種タンパク質発現の増強は、用いる細胞系に可能な最大レベルであると予測された。従って、2つの異なるシャペロンと異種タンパク質との同時発現により、異種タンパク質発現のいっそうさらなる増強を得ることができるとの知見は特に驚くべきことである。
よって、本発明の第五の態様によれば、異種タンパク質を製造する方法が提供され、該方法は、第一のシャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている第一の組換え遺伝子、第二のシャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている第二の組換え遺伝子、および異種タンパク質をコードしている第三の組換え遺伝子を含む宿主細胞(上記のものなど)を準備すること(なお、この第一のシャペロンと第二のシャペロンは異なっている);その宿主細胞を、培養培地中、第一、第二および第三の遺伝子の発現を可能とする条件下で培養すること;および、所望により、発現した異種タンパク質を培養宿主細胞または培養培地から精製すること;さらには、所望により、精製されたタンパク質を凍結乾燥することを含んでなる。
この方法は、精製された異種タンパク質を担体または希釈剤ともに製剤化し、所望により、このようにして製剤化されたタンパク質を上述のような方法にて単位投与形で提供する工程をさらに含んでもよい。
「組換え遺伝子」とは、「独立した」発現可能な配列として独立して作動し、コードされているタンパク質を産生する核酸配列、あるいはまた、標的タンパク質の高い発現を生じさせるように宿主内で内在配列と一緒に作動する、導入された(例えば、内在配列とは異なる核酸配列を産生するように内在配列に組み込むことによる)核酸配列を含む。
第一および第二のシャペロンは上述のようなシャペロンであってよく、同じ宿主細胞で同時発現させた際に異種タンパク質の発現の増強に相加作用をもたらすシャペロンの組合せである。「相加作用」とは、宿主細胞における異種タンパク質の発現レベルが、同じ系の(i)第一の組換え遺伝子を、第二の組換え遺伝子の発現の不在下で、第三の組換え遺伝子と同時発現させる場合、および(ii)第二の組換え遺伝子を、第一の組換え遺伝子の発現の不在下で、第三の組換え遺伝子と同時発現させる場合と比べ、第一および第二の組換え遺伝子を第三の組換え遺伝子と同時発現させるほうが高いという意味を含む。
1つの好ましいシャペロンは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼである。別の好ましいシャペロンはORM2またはその断片もしくは変異体である。特に好ましい実施態様では、第一および第二のシャペロンはタンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびORM2またはその断片もしくは変異体である。
第一、第二および第三の組換え遺伝子は各々独立に宿主細胞内のプラスミド(例えば、上述のような2μm系プラスミド)上に存在してもよいし、あるいは、宿主細胞のゲノム内の染色体に組み込んでもよい。プラスミドと染色体に組み込まれる第一、第二および第三の組換え遺伝子のいずれの組合せを用いてもよいと考えられる。例えば、第一、第二および第三の組換え遺伝子は各々独立にプラスミド上に存在してもよく、これは同じプラスミドであっても異なるプラスミドであってもよい。あるいは、第一の組換え遺伝子がプラスミド上に存在し、第二および第三の組換え遺伝子が宿主細胞のゲノム内の染色体に組み込まれてもよい。あるいは、第一および第二の組換え遺伝子がプラスミド上に存在し、第三の組換え遺伝子が宿主細胞のゲノム内の染色体に組み込まれてもよい。あるいは、第一および第三の組換え遺伝子がプラスミド上に存在し、第二の組換え遺伝子が宿主細胞のゲノム内の染色体に組み込まれてもよい。あるいは、第一および第二の組換え遺伝子が宿主細胞のゲノム内の染色体に組み込まれ、第三の組換え遺伝子がプラスミド上に存在してもよい。あるいは、第一、第二および第三の 組換え遺伝子が各々独立に宿主細胞のゲノム内の染色体に組み込まれてもよい。
特に好ましいプラスミド、本発明の上述の態様に関して上記で定義されたものである。従って、本発明はまた、異なるシャペロンをコードしている2つの異なる遺伝子(第一および第二の組換え遺伝子)を含む上記で定義したようなプラスミドも提供する。1つの好ましい実施態様では、このプラスミドは、上記のような異種タンパク質などの異種タンパク質(第三の組換え遺伝子)をコードしている遺伝子をさらに含み得る。
本発明の第六の態様では、本発明の上述の態様に関して上記で定義された異種タンパク質などの異種タンパク質を製造する方法が提供され、該方法は、ORM2の配列またはその変異体を含むタンパク質をコードしている第一の組換え遺伝子と、異種タンパク質をコードしている第二の組換え遺伝子とを含む宿主細胞を準備すること;その宿主細胞を、培養培地中、第一および第二の遺伝子の発現を可能とする条件下で培養すること;発現した異種タンパク質を培養宿主細胞または培養培地から精製すること;および、所望により、精製されたタンパク質を凍結乾燥すること;および、所望により、精製された異種タンパク質を担体または希釈剤とともに製剤化すること;および、所望により、製剤化されたタンパク質を単位投与形で提供することを含んでなる。
上述の様式では、宿主細胞は、ORM2に代わるシャペロンの配列またはその変異体を含むタンパク質をコードしているさらなる組換え遺伝子をさらに含んでもよい。
第一および第二の組換え遺伝子のいずれか、または双方はプラスミドから、好ましくは同じプラスミドから発現させることができる。また、ORM2に代わるシャペロンの配列またはその変異体を含むタンパク質をコードしているさらなる組換え遺伝子も、プラスミドから、好ましくは第一および第二の組換え遺伝子の一方または双方と同じプラスミドから発現させることができる。このプラスミドは、2μmプラスミドなどの2μm系プラスミドであり得る。
本発明の第七の態様によれば、宿主細胞内での核酸配列および組換え遺伝子の同時発現により、宿主細胞の組換え遺伝子によりコードされている異種タンパク質の、宿主細胞における生産を高めることを目的とした、タンパク質ORM2またはその変異体をコードしている核酸配列の使用も提供される。核酸配列および異種タンパク質をコードしている組換え遺伝子のいずれか一方または双方を宿主細胞内のプラスミド、好ましくは同じプラスミドから発現させてもよい。上述の様式では、宿主細胞は、ORM2に代わるシャペロンまたはその変異体をコードしている組換え遺伝子をさらに含んでもよく、これは宿主細胞内のプラスミド、好ましくは前記核酸配列および異種タンパク質をコードしている組換え遺伝子のいずれか一方または双方と同じプラスミド上に位置していてよい。好適なプラスミドとしては、上述のような2μmプラスミドなどの2μm系プラスミドが挙げられる。
本発明の第八の態様によれば、異種タンパク質をコードしている組換え遺伝子とORM2またはその変異体をコードしている遺伝子を同じプラスミド上に提供することによって異種タンパク質の生産を高めることを目的とした、発現ベクターとしてのプラスミドの使用も提供される。このプラスミドは、上述の様式においてORM2に代わるシャペロンまたはその変異体をコードしている遺伝子をさらに含み得る。好適なプラスミドとしては、上述のような2μmプラスミドなどの2μm系プラスミドが挙げられる。
よって、本発明の第九の態様によれば、上述のように、タンパク質ORM2またはその変異体もしくは断片をコードしている第一の遺伝子と異種タンパク質をコードしている第二の遺伝子を含むプラスミド、好ましくは発現プラスミド、も提供される。このプラスミドは、ORM2に代わるシャペロンまたはその変異体をコードしている第三の遺伝子をさらに含んでもよい。好ましい実施態様では、この第三の遺伝子は、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼの配列を含むタンパク質をコードしている。
発明者らはまた、PDIのような「必須」シャペロンの配列を含むタンパク質をコードしているプラスミド保持遺伝子が、プラスミドの不在下ではシャペロンを産生しない宿主細胞内でプラスミドを安定維持するのに使用でき、同時に、宿主細胞内の組換え遺伝子によりコードされている異種タンパク質の発現を高めるということも実証した。この系は、使用者が、プラスミドが保持する必要のある組換え遺伝子の数を最小限とできることから有利である。例えば、典型的な先行技術のプラスミドは、宿主細胞培養工程中にプラスミドの安定維持を可能とするマーカー遺伝子(上記のものなど)を有する。このようなマーカー遺伝子は、目的の作用を達成するのに必要ないずれかのさらなる遺伝子に加えて、プラスミド上に保持される必要がある。しかしながら、外因的DNA配列を組み込むプラスミドの能力には限りがあるので、目的の効果を達成するために必要な配列挿入の数を最小限とすることが有利である。さらに、いくつかのマーカー遺伝子(栄養要求性マーカー遺伝子など)は、そのマーカー遺伝子の効果を得るために、培養工程を特定の条件下で行う必要がある。このような特定条件は細胞増殖またはタンパク質産生にとっては最適なものでない場合もあり、あるいは非効率もしくは過度に費用のかかる増殖系が必要な場合もある。
異種遺伝子発現を増強する目的で、本発明者らは、宿主細胞での異種タンパク質の産生の増強と、プラスミドの不在下ではシャペロンを産生できない細胞内にプラスミドが存在する場合にそのプラスミド上の選択マーカーの役割という二重の目的で、「必須」シャペロンの配列を含むタンパク質を組換え的にコードしている遺伝子を使用できることを見出した。この系には、プラスミドに保持する必要のある組換え遺伝子の数を最小限とするという利点がある。この系にはまた、プラスミド安定性が失われることなく、いずれの特定のマーカー遺伝子にも適合させる必要のない条件下で宿主細胞を培養することができるという利点がある。例えば、この系を用いて作製した宿主細胞は富栄養培地で培養することができ、これは栄養要求性マーカー遺伝子にそれらの効果を与えるべく一般的に用いられる最小培地よりも経済的であると考えられる。
よって、本発明の第十の態様によれば、プラスミドを含む宿主細胞が提供され、このプラスミドは、このプラスミドの不在下では宿主細胞がシャペロンを産生できない必須シャペロンをコードしている遺伝子を含んでなる。好ましくは、プラスミドの不在下では、宿主細胞は生存力を有さない。この宿主細胞は、本発明の上述の態様に関して上記したものなどの異種タンパク質をコードしている組換え遺伝子をさらに含んでもよい。
本発明の第十一の態様によれば、単独の選択マーカーとして、必須シャペロンをコードしている遺伝子を含むプラスミドも提供される。このプラスミドは、異種タンパク質をコードしている遺伝子をさらに含んでいてもよい。このプラスミドは2μm系プラスミドであってもよい。
本発明の第十二の態様によれば、プラスミドを含む宿主細胞を準備する工程(このプラスミドは、そのプラスミドの不在下では宿主細胞がシャペロンを産生できない、必須シャペロンをコードしている遺伝子を含み、この宿主細胞は異種タンパク質をコードしている組換え遺伝子さらに含んでもよい);その宿主細胞を、培養培地中、必須シャペロンおよび異種タンパク質の発現を可能とする条件下で培養する工程;および、所望により、発現した異種タンパク質を培養宿主細胞または培養培地から精製する工程;および、所望により、精製されたタンパク質をさらに凍結乾燥する工程を含んでなる、異種タンパク質の生産方法も提供される。
この方法は、精製された異種タンパク質を担体または希釈剤とともに製剤化する工程、および、所望により、製剤化されたタンパク質を上述の様式で単位投与形で提供する工程をさらに含んでもよい。好ましい一つの実施態様では、この方法は、宿主細胞を富栄養培地などの非選択培地で培養することを含む。
本発明者らは、また、驚くべきことに、異なるPDI遺伝子が、特定の培養条件下で異なる量で異種タンパク質の発現を高める能力を有していることを見出した。特に、実施例8で述べるように、本発明者らは、SKQ2n PDI1遺伝子が、宿主細胞を最小培地で培養した際に、S288c PDI1遺伝子よりも高い異種タンパク質発現をもたらすことを示した。
SKQ2n PDI1遺伝子とS288c PDI1遺伝子のコードされているタンパク質の唯一の違いは、SKQ2nが506〜513番(上記に示すGenbank受託番号CAA38402に関して定義されている位置)に付加的なアミノ酸EADAEAEAを含むことである。
用いた遺伝子間の違いは図94に示される配列アラインメントで示され、次のように要約することができる。
・SKQ2nのプロモーターは、一連の14回の「TA」反復を含むが、S288のプロモーターは12回の「TA」反復しか含まない。
・Ser41は、SKQ2nではTCTによりコードされているが、S288cではTCCによりコードされている。
・Glu44は、SKQ2nではGAAによりコードされているが、S288cではGAGによりコードされている。
・Leu262は、SKQ2nではTTGによりコードされているが、S288cではTTAによりコードされている。
・Asp514は、SKQ2nではGACによりコードされているが、S288cでは類似体Asp506がGATによりコードされている。
・SKQ2nのターミネーター配列は一連の8個の連続する「A」塩基を含むが、S288cのターミネーター配列は一連の7個の連続する「A」塩基を含み、SKQ2n遺伝子の1880番に相当する位置に「A」塩基を含まない。
・SKQ2nのターミネーター配列は1919番に「C」を有するが、S288cのターミネーター配列は相当する位置に「T」を有する。
宿主細胞を最小培地で培養した際に異種タンパク質発現において観察される増強を達成するためには、選択されたPDI遺伝子に、SKQ2n遺伝子の上記特徴のいずれか、または総てを含めることが有利である。
よって、第十三の態様によれば、宿主細胞を最小培地で培養した際に、宿主細胞内のヌクレオチド配列の発現により、宿主細胞内で異種タンパク質の発現を高めるのに用いるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼをコードしているヌクレオチド配列も提供され、このタンパク質ジスルフィドイソメラーゼをコードしているヌクレオチド配列は、次の特徴のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする。
・ヌクレオチド配列は、PDIプロモーターまたはその機能的変異体の配列を有するプロモーターを含み、一連の14回の「TA」反復を含む;または
・コードされているタンパク質ジスルフィドイソメラーゼはアミノ酸EADAEAEAまたはその保存的に置換された変異体を、一般には、Genbank受託番号CAA38402に関して定義されている506〜513番に含む;または
・コードされているタンパク質ジスルフィドイソメラーゼの残基Ser41はコドンTCTによりコードされている;
・コードされているタンパク質ジスルフィドイソメラーゼの残基Glu44はコドンGAAによりコードされている;
・コードされているタンパク質ジスルフィドイソメラーゼの残基Leu262はコドンTTGによりコードされている;または
・コードされているタンパク質ジスルフィドイソメラーゼの残基Asp514はコドンGACによりコードされている;または
・そのヌクレオチド配列は天然PDIターミネーターまたはその機能的変異体の配列を有するターミネーター配列を含み、いずれかは1919番に一連の8個の連続する「A」塩基および/または塩基「C」を含む(天然SKQ2nターミネーター配列の1919番に関して定義されている通り)。
本発明の第十四の態様によれば、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼをコードしている組換え遺伝子を含み、かつ、上記定義の核酸配列の配列を有する宿主細胞を準備する工程(この宿主細胞は異種タンパク質をコードしている組換え遺伝子をさらに含む);この宿主細胞を、最小培養培地中、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼと異種タンパク質の発現を可能とする条件下で培養する工程;および、所望により、発現した異種タンパク質を培養宿主細胞または培養培地から精製する工程;さらに、所望により、精製されたタンパク質を凍結乾燥する工程;さらには、所望により、精製された異種タンパク質を担体または希釈剤とともに製剤化する工程;および、所望により、製剤化されたタンパク質を上述の様式にて単位投与形で提供する工程を含んでなる、異種タンパク質の製造方法も提供される。
PDIおよび異種タンパク質をコードしている遺伝子は、本発明の他の実施態様に関して上記した様式で提供することができる。
本発明者らはまた、本発明の他の実施態様に従う組換え提供されるシャペロンの作用が、そのシャペロンの発現レベルを制御するプロモーターを改変することにより調整できることも見出した。驚くことに、本発明者らは、いくつかの場合で、短いプロモーターが異種タンパク質発現の増強をもたらすことを見出した。特定の理論に縛られるものではないが、本発明者らは、これがすでに高レベルで異種タンパク質を発現する宿主細胞における組換えシャペロンの発現が、細胞にそれら自体、異種により発現されるタンパク質を過負荷させ、それにより異種タンパク質の生産に全体的な増強がほとんど、または全く達成されないためであると考えている。このような場合、組換えシャペロン遺伝子を末端切断型プロモーターとともに提供すると有益な場合がある。
よって、本発明の第十五の態様によれば、宿主細胞(上記で定義したようなもの)内でのポリヌクレオチド配列の発現により、宿主細胞内での異種タンパク質(上記のようなもの)の発現を高めるために用いる、シャペロン(上記のようなもの)をコードしているコード配列に作動可能なように連結されたプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(上記で定義したプラスミドなど)が提供され、ここで、このプロモーターは、そのコード配列がその天然プロモーターに作動可能なように連結されていた場合に達成されるであろうものから改変されている、例えば、それより高い、または低いシャペロン発現レベルを果たすことを特徴とする。
本発明の第十六の態様によれば、シャペロンをコードしているコード配列に作動可能なように連結されたプロモーター(このプロモーターは、そのコード配列がその天然プロモーターに作動可能なように連結されていた場合に達成されるであろうものよりも低いレベルのシャペロン発現を果たすことを特徴とする)の配列を含む組換え遺伝子を含み、かつ、異種タンパク質をコードしている組換え遺伝子をさらに含む宿主細胞を準備する工程;その宿主細胞をシャペロンおよび異種タンパク質の発現を可能とする条件下で培養する工程;および、所望により、発現した異種タンパク質を培養宿主細胞または培養培地から精製する工程;さらに、所望により、精製されたタンパク質を凍結乾燥する工程;さらに、所望により、精製された異種タンパク質を担体または希釈剤とともに製剤化する工程;および、所望により、製剤化されたタンパク質を上述の様式にて単位投与形で提供する工程を含んでなる、異種タンパク質の製造方法も提供される。
本明細書に記載の実施例から明らかなように、組換え発現したPDIとトランスフェリンに基づくタンパク質の組合せは、驚くほど高いレベルのトランスフェリン発現をもたらす。例えば、染色体にコードされている組換えPDI遺伝子を含む系におけるトランスフェリン発現は2倍の増強をもたらした(染色体にコードされている組換えPDI遺伝子を含まない対照と比較)。この増強は、組換えトランスフェリン遺伝子の代わりにヒトアルブミンをコードしている組換え遺伝子を含む同等の系よりも5倍高かった。
宿主は原核細胞(例えば、大腸菌などの細菌細胞)または真核細胞など、いずれの細胞種でもよい。好ましい真核細胞としては、酵母細胞などの真菌細胞、および哺乳類細胞が挙げられる。酵母細胞の例は上記で述べられている。哺乳類細胞の例としては、ヒト細胞が挙げられる。
上記のような宿主細胞を培養して組換えトランスフェリンに基づくタンパク質を生産することができる。このようにして生産されたトランスフェリンに基づくタンパク質を培養物から単離し、例えば、当技術分野で公知であり、かつ/または上記で示したような技術を用い、好ましくは、医薬上許容されるレベルの純度にまで精製することができる。精製されたトランスフェリンに基づくタンパク質は、医薬上許容される担体または希釈剤とともに製剤化してもよく、単位投与形で提供してもよい。
以下、本発明を非限定的な実施例および図面を参照して例示する。
S.セレビシエ由来の組換えヒトトランスフェリン突然変異体(N413Q、N611Q)の分泌を例示するため、2つのタイプの発現カセットが用いられてきた。1つのタイプは改変型HSA(プレ)/MFα1(プロ)リーダー配列(「改変型融合リーダー配列」と呼称)を用いたものである。もう1つのタイプの発現カセットは改変型HSA(プレ)リーダー配列を用いたものである。
「改変型融合リーダー」の24個のアミノ酸は、MKWVFIVSILFLFSSAYSRSLDKRである。
改変型HSA(プレ)リーダー配列の18個のアミノ酸配列は、MKWVFIVSILFLFSSAYSである。
これら2つのカセットを用いたトランスフェリン(N413Q,N611Q)の発現が、S.セレビシエPDI遺伝子、PDI1の付加的コピーを含む、および含まない2μm発現ベクターを用い、S.セレビシエで研究されてきた。
実施例1
発現プラスミドの構築
オリゴヌクレオチドCF86とCF87(下記参照)の0.5mM溶液をアニーリングすることによって作製した52bpのリンカーを2μmプラスミドpSAC35のUS領域の、599bp逆方向反復内のXcmI部位に導入した。逆方向反復と重複するため、一方のXcmI部位はREP2翻訳終結コドンの後で51bpを切断し、他方のXcmI部位はFLPコード配列の末端の前で127bpを切断する(図3参照)。このDNAリンカーは、pSAC35には存在しない制限部位をコードしているコア領域「SnaBI−PacI−FseI/SfiI−SmaI−SnaBI」を含んでいた。
Figure 0005052899
プラスミドpSAC35をXcmIで部分的に消化し、線状11kb断片を0.7%(w/v)アガロースゲルから単離し、CF86/CF87 XcMIリンカー(原液、10−1および10−2希釈)と連結し、大腸菌DH5αに形質転換した。アンピシリン耐性形質転換体を選択し、SmaI消化により線状化可能なプラスミドの存在に関してスクリーニングした。制限酵素分析により、REP2の後のXcmI部位にリンカーがクローニングされているpDB2688(図4)が確認された。オリゴヌクレオチドプライマーCF88、CF98およびCF99(表1)を用いたDNAシーケンシングにより、挿入が適正なリンカー配列を含んでいることが確認された。
Figure 0005052899
この酵母株を、改良型の酢酸リチウム法(Sigma酵母形質転換キット、YEAST−1、プロトコール2; (Ito et al, 1983, J. Bacteriol., 153, 163; Elble, 1992, Biotechniques, 13, 18))を用いて形質転換し、ロイシン原栄養性とした。BMMD寒天プレート上で形質転換体を選択し、その後、BMMD寒天プレート上に貼付した。10mL BMMD振盪フラスコ培養(24時間、30℃、200rpm)から、同量の無菌40%(w/v)トレハロースを添加することで低温保存トレハロース原液を調製した。
YEPDおよびBMMDの組成は、Sleep et al., 2002, Yeast 18, 403により記載されている。YEPSおよびBMMSの組成は、単独の初期炭素源として2%(w/v)グルコースの代わりに2%(w/v)スクロースを用いること以外はYEPDおよびBMMDと同じであった。
S.セレビシエ PDI1遺伝子をpDB2688のXcmIリンカーにクローニングした。このPDI1遺伝子(図5)を、PDI1遺伝子を含む大きなS.セレビシエゲノムSKQ2nDNA断片(米国特許第6,291,205号に記載され、また、Crouzet & Tuite, 1987, Mol. Gen. Genet., 210, 581-583およびFarquhar et al, 1991, 前掲にもクローンC7として記載されているプラスミドpMA3a:C7において提供されているもの)(これは、YIplac211(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)にクローニングされたものであり、PDI1遺伝子の3’非翻訳領域内のユニークなBsu36I部位に挿入されたSacI制限部位を含む合成DNAリンカーを有していた)に由来の1.9kb SacI−SpeI断片にクローニングした。この1.9kb SacI−SpeI断片をT4 DNAポリメラーゼで処理してSpeI 5’−オーバーハングを埋め、SacI 3’−オーバーハングを除去した。このPDI1断片は、翻訳開始コドンの上流に212bpのPDI1プロモーターと、翻訳終結コドンの下流に148bpを含んでいた。これを、SmaI線状化/ウシ腸管アルカリ性ホスファターゼで処理したpDB2688に連結し、REP2と同じ方向で転写されるPDI1遺伝子を有するプラスミドpDB2690(図6)を作出した。S.セレビシエ株をpDB2690で形質転換してロイシン原栄養性とした。
次に、ヒトトランスフェリン突然変異体(N413Q,N611Q)の発現カセットをpDB2690のNotI部位にクローニングし、pDB2711(図7)を作出した。このpDB2711中の発現カセットはS.セレビシエPRB1プロモーター、HSA/MFα融合リーダー配列(EP387319; Sleep et al, 1990, Biotechnology (N.Y.), 8, 42)、その後にヒトトランスフェリン突然変異体(N413Q,N611Q)のコード配列とS.セレビシエ ADH1ターミネーターを含んでいる。プラスミドpDB2536は、同じ発現カセットをpSAC35のNotI部位に挿入することにより構築した。
pDB2536およびpDB2711で用いた「改変型融合リーダー」配列は、改変型HSA−プレ配列とMFαl−プロ配列を含んでいる。用いた代わりのリーダー配列は、MFα1−プロ配列の6つの残基を除去することにより改変型融合リーダー配列から得た改変型HSA−プレ配列であった。
pDB2515(図8)の改変型融合リーダー配列を、MFα1−プロ領域の6つの残基(RSLDKR)のコード配列を欠失させるように、オリゴヌクレオチドCF154およびCF155で突然変異させた。これは、StratageneのQuickChange(商標)部位特異的突然変異誘発キットの取扱説明書に従って行った。pDB2515は、PspOMI部位とHindIII部位の間に連結されたpDB2529(下記参照)の2940bp NotI−HindIII(部分的)DNA断片を含んでいる大腸菌クローニングベクターpGEM−7Z(−)(Promega)である。
Figure 0005052899
コンピテント大腸菌DH5α細胞を突然変異プラスミドで形質転換し、アンピシリン耐性コロニーを選択した。これらのコロニー由来のプラスミドDNAを、EcoRIとBglIIでの二重消化によりスクリーニングした。次に、改変型HSA−プレリーダーに関して適正なDNA配列であるかどうかを、pDB2921(図9)の、リーダー配列の各側で、AflII部位とBamHI部位の間の386bpの領域にわたって確認した。この386bpのAflII−BamHI断片を単離し、BamHIでの部分的消化とAflIIおよびウシ腸管アルカリ性ホスファターゼでの完全消化によって作製したpDB2529(図10)の6,081bp AflII−BamHI断片と連結した。pDB2529は、ユニークなNotI部位にクローニングされたpDB2536のトランスフェリン発現カセットを含んでいる大腸菌クローニングベクターpBST(+)(Sleep et al, 2001, Yeast, 18, 403-441)である。これによりpDB2928(図11)が得られ、これを、連結産物で形質転換したアンピシリン耐性大腸菌DH5α細胞から単離した。
3,256bpのNotI発現カセットをpDB2928から単離した。これはPRB1プロモーター、改変型HSA−プレリーダー配列のコード領域、その後にトランスフェリン(N413Q,N611Q)、およびADH1ターミネーターを含んでいた。これを2μm系ベクターpSAC35とpDB2690のNotI部位に連結し、発現プラスミドpDB2929、pDB2930、pDB2931およびpDB2932(図12〜15)を作製した。pDB2929およびpDB2931においては、トランスフェリン(N413Q,N611Q)配列はLEU2と同じ向きで転写されるが、pDB2930およびpDB2932では、転写は逆向きである。
実施例2
トランスフェリンの発現
S.セレビシエ対照株を総てのトランスフェリン(N413Q,N611Q)発現プラスミドで形質転換してロイシン原栄養性とし、低温保存原株を調製した。
株を、50mL三角フラスコ中、200rpmで振盪した10mL BMMD培養中、30℃で4日間増殖した。培養上清中に分泌した組換えトランスフェリンの力価をロケット免疫電気泳動(RIEは、Weeke, B., 1976,”Rocket immunoelectrophoresis”In N. H. Azelsen, J. KrollおよびB. Weeke [eds.], A manual of quantitative immunoelectrophoresis. Methods and applications. Universitetsforlaget, Oslo, Norwayに記載されている)、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)(表2)、およびコロイドクーマシーブルー染色液で染色する非還元SDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)によって比較した。S.セレビシエPDI1が過剰発現した際に分泌された組換えトランスフェリンの増強は10倍を超えるものと推定された。
Figure 0005052899
RIE分析は、PDI1の付加的コピーの存在下でのトランスフェリン分泌の増強がおよそ15倍であることを示している(図16)。RIE分析によれば、改変型HSA−プレリーダー配列に関する増強は、改変型融合リーダー配列の場合よりも若干大きいと思われた(図17)。
RP−HPLC分析によれば、トランスフェリン分泌の増強は、改変型融合リーダー配列では18倍、そして、改変型HSA−プレリーダー配列では15倍であることが示された(表2)。
図18は、付加的なPDI1発現を伴う、および伴わないS.セレビシエ株によって分泌された組換えトランスフェリンのSDS−PAGE比較を示す。
トランスフェリン発現を測定するためのRP−HPLC法
カラム:50×4.6mm Phenomenex Jupiter C4 300Å、5μmカラム温度:45℃
流速:1mL.分−1
ピーク検出:214nmでのUV吸光度
HPLC移動相 A:0.1%TFA、5%アセトニトリル
HPLC移動相 B:0.1%TFA、95%アセトニトリル
勾配:0〜3分 30%B
3〜13分 30〜55%Bの直線勾配
13〜14分 55%B
14〜15分 55〜30%Bの直線勾配
15〜20分 30%B
注入:通常サンプル100μLであるが、任意の容量を注入可能
標準曲線:示された結果に用いた0.1〜10μgのヒトトランスフェリン注入に対するピーク面積の標準曲線は10μgまで直線であった。
y=530888.x+10526.7
(式中、y=ピーク面積、かつ、x=μg量)(r
):0.999953(ここで、相関係数=r)
実施例3
PDIの染色体過剰発現
プラスミドpDB2506からの組換えグリコシル化トランスフェリン発現とプラスミドpDB2536からの組換え非グリコシル化トランスフェリン(N413Q,N611Q)の分泌を検討するため、S.セレビシエ株Aを選択した。株Aは次のような特徴を有する。
・染色体組込み型の付加的PDI1遺伝子が宿主のPDI1染色体の位置に組み込まれている。
・UPA3遺伝子、およびアンピシリン耐性遺伝子を含んだ細菌DNA配列もまた、S.セレビシエゲノムの、上記遺伝子の挿入部位に組み込まれている。
対照株には上記の挿入はない。
対照株[cir]および株A[cir]をpDB2506(組換えトランスフェリン)、pDB2536(組換え非グリコシル化トランスフェリン(N413Q,N611Q))またはpSAC35(対照)で形質転換してロイシン原栄養性とした。形質転換体をBMMD−寒天上で選択した。
BMMD振盪フラスコ培養物中のトランスフェリン分泌の相対的レベルを、ロケット免疫電気泳動(RIE)により株/プラスミドの組合せに関して調べた。図19は、両株と、もグリコシル化および非グリコシル化組換えトランスフェリンの双方を培養上清へ分泌したことを示している。
株A[pDB2506]および株A[pDB2536]から分泌されたグリコシル化および非グリコシル化トランスフェリンの双方のレベルはそれぞれ、対照株から分泌されたレベルよりも高いことが分かった。ゆえに、少なくとも振盪フラスコ培養では、株Aにおいて宿主ゲノムのPDI1遺伝子座に組み込まれたPDI1はトランスフェリン分泌を促進した。
さらに、対照株[pDB2536]と株A[pDB2536]の間で見られたトランスフェリン分泌の増強は、RIEによれば、少なくとも100%の増強であることが分かった。これに対し、対照株[pDB2305]と株A[pDB2305]の間のrHAモノマー分泌の増強はおよそ20%であった(データは示されていない)よって、株AにおけるPDI1の付加的コピーによるトランスフェリン分泌の増強は、17個のジスルフィド結合を有するrHAに比べ、トランスフェリンが19個のジスルフィド結合を持っていることを考慮すれば、驚くほど大きかった。PDI1遺伝子の付加的コピーは、S.セレビシエからの、トランスフェリンファミリー、およびそれらの誘導体に由来するタンパク質の分泌に特に有益であり得る。
株A[pDB2536]および株A[pDB2506]から分泌されたトランスフェリンのレベルを、BMMDおよびYEPD中で増殖させた形質転換体に対して、RIEにより比較した(図20)。結果は、BMMD(2〜5mg.L−1血清トランスフェリン相当)に比べ、YEPD(10〜20mg.L−1血清トランスフェリン相当)中で増殖させることにより、非グリコシル化組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)およびグリコシル化組換えトランスフェリンの双方の力価2倍を超える増強が達成されたことを示した。このYEPD中で見られたグリコシル化および非グリコシル化トランスフェリン力価双方の増強は、両トランスフェリン発現プラスミドが、非選択的増殖条件下で、YEPD中での増殖から通常得られると予測される高いバイオマスを高いグリコシル化および非グリコシル化トランスフェリン生産性へと解釈可能とするに十分安定であったことを示唆した。
BMMD振盪フラスコ培養で増殖させた場合の株A[pDB2536]から分泌された非グリコシル化トランスフェリン(N413Q,N611Q)および株A[pDB2506]から分泌されたグリコシル化トランスフェリンのSDS−PAGE分析を図21に示す。株A[pDB2536]サンプルは、株A[pSAC35]対照に比べて付加的なタンパク質バンドを明らかに示した。この余分なバンドは、対照株[pDB2536]から分泌された組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)の予測された位置に移動した。株A[pDB2506]の培養上清は、トランスフェリンの予測された位置に拡散したタンパク質バンドを含むことが分かった。このことは、分泌した組換えトランスフェリンが、おそらくはAsp413および/またはAsp611における過剰なマンノシル化のために不均質であることを示唆した。
実施例4
S.セレビシエ株Aからのトランスフェリン分泌と、pDB2711を含むS.セレビシエ対照株からのトランスフェリン分泌との比較
プラスミドpDB2711は上記の通りである。プラスミドpDB2712(図22)もまた、pDB2711と逆向きにNotIカセットを用いて作製した。
対照株S.セレビシエ[cir]をpDB2711およびpDB2712で形質転換させてロイシン原栄養性とした。形質転換体をBMMD寒天上で選択し、対照株[pDB2711]の低温保存トレハロース原株を調製した。
対照株[pDB2711]、対照株[pDB2712]、株A[pDB2536]、対照株[pDB2536]およびもう1つの対照株[pDB2536]による組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)の分泌を、BMMDおよびYEPD振盪フラスコ培養の双方で比較した。RIEは、PDI1の染色体コピーを2つ有する株A[pDB2536]、およびPDI1遺伝子の染色体コピーを1つ有する対照株[pDB2536]に比べ、多数のエピソームPDI1コピーを有する対照株[pDB2711]から、組換えトランスフェリン分泌における有意な増強が達成されたことを示した(図23)。対照株[pDB2711]および対照株[pDB2712]は、同等レベルのrTf(N413Q,N611Q)を培養培地中に分泌することが分かった。BMMDおよびYEPD培地の双方において、対照株[pDB2711]形質転換体と対照株[pDB2712]形質転換体の間で分泌のレベルは比較的一致していたが、このことは、プラスミド安定性が非選択条件下であっても高レベルトランスフェリン分泌にとって十分なものであったことを示唆している。これは、PDI1のマルチコピー2μmプラスミドへの導入が宿主に有害であることが示された組換えPDGF−BBおよびHSAに関するこれまでの公開データとは対照的である。
Figure 0005052899
BMMD振盪フラスコ培養において対照株[pDB2711]、対照株[pDB2712]、株A[pDB2536]、対照株[pDB2536]およびもう1つの対照株[pDB2536]から分泌されたトランスフェリンの還元SDS−PAGE分析を図24に示す。これによれば、対照株[pDB2711]および対照株[pDB2712]由来の総てのサンプルにおいて、トランスフェリン(N413Q,N611Q)の予測される位置に豊富なタンパク質バンドが示される。種々の株からのトランスフェリン(N413Q,N611Q)バンドの相対的染色強度は株A[pDB2536]は対照株[pDB2536]およびもう1つの対照株[pDB2536]よりも多く生産したが、対照株[pDB2711]および対照株[pDB2712]からの分泌にいっそう劇的な増強が見られたことを示唆した。見られた高い組換えトランスフェリン分泌には、これらの株の高いPDI1コピー数が伴っていた。このことは、Pdi1pレベルは対照株、株Aおよびもう1つの対照株のトランスフェリン分泌を制限していること、および高いPDI1コピー数が高いトランスフェリン分泌の一因であることを示唆した。高いPDI1コピー数はPDI1の定常状態の発現レベルを高め、従って、Pdi1p活性の量を高め得る。これをPDI1遺伝子のコピー数を高めずに達成することができる別法がいくつかあり、例えば、定常状態のPDI1 mRNAレベルを、いわゆる高効率プロモーターの使用によって転写速度を高めるか、またはPDI1 mRNAのクリアランス速度を引き下げるかのいずれかによって高めることができる。あるいは、タンパク質工学を用いて、Pdi1pタンパク質の比活性またはターンオーバー数を高めることもできる。
高細胞密度発酵において、対照株[pDB2711]組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)の生産は、GP−HPLC分析とSDS−PAGE分析により、およそ3g.L−1であると測定された(表3)。この生産レベルは、対照株、もう1つの対照株またはpDB2536を含む株Aよりも数倍高いものである。さらに、ヒトでの治療用途のタンパク質の生産に関しては、対照株[pDB2711]などの発現系は、細菌のDNA配列を含まないので、株Aを用いるものより有利である。
結論
マルチコピー発現プラスミド(pDB2536)からの組換えトランスフェリンの分泌を、酵母ゲノムに組み込まれたPDI1遺伝子の付加的コピーを含むS.セレビシエ株で検討した。また、PDI1遺伝子がマルチコピーエピソームトランスフェリン発現プラスミド(pDB2711)に挿入されたマルチコピー発現プラスミドで形質転換したS.セレビシエにおいてもトランスフェリン分泌を検討した。
ゲノムの内在するPDI1遺伝子座にPDI1遺伝子の付加的コピーが組み込まれたS.セレビシエ株は、1コピーのPDI1しか含まない株と比べ、高いレベルで組換えトランスフェリンおよび非グリコシル化組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)を分泌した。pDB2711を用いると、PDI1コピー数にさらなる上昇が達せられた。pDB2711で形質転換した株の高細胞密度発酵では、SDS−PAGEおよびGP−HPLC分析で測定した場合、組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)はおよそ3g.L−1で分泌された。従って、PDI1遺伝子のコピー数が多いと、S.セレビシエから分泌される組換えトランスフェリンの量に多大な増加がもたらされた。
次のような結論が導き出される。
1.pDB2536(非グリコシル化トランスフェリン(N413Q,N611Q))およびpDB2506(グリコシル化トランスフェリン)からの組換えトランスフェリン発現の振盪フラスコ分析では、S.セレビシエ株の株Aは、対照株よりも高いレベルの両組換えトランスフェリンを培養上清中に分泌した。これはPDI1遺伝子座に組み込まれたPDI1の余分なコピーのためであった。
2.マルチコピー発現プラスミド上にPDI1遺伝子を含んだ対照株[pDB2711]は、株A[pDB2536]に比べ、振盪フラスコ培養および高細胞密度発酵の双方で、組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)分泌に数倍高い分泌をもたらした。3.S.セレビシエなどの酵母においてPDI1コピー数の増加は、トランスフェリンファミリー由来のものなど、異種タンパク質の生産の際に有利である。
4.PDI1遺伝子の付加的コピーをを含むpSAC35系プラスミドは、トランスフェリンファミリー由来のタンパク質、およびそれらの誘導体、例えば、融合物、突然変異体、ドメインおよび末端切断型の生産に利点を有する。
実施例5
2μm様プラスミドへのPDI1遺伝子の挿入は、種々の異なるS.セレビシエ株からの組換えトランスフェリンの分泌を増強した
S.セレビシエ株JRY188 cir(National Collection of Yeast Cultures)およびMT302/28B cir(Finnis et al., 1993, Eur. J. Biochem., 212, 201-210)を、天然2μmプラスミドを、Rose and Broach (1990, Meth. Enzymol., 185, 234-279)に記載のように、ガラクトースにより誘導されるYep351−GAL−FLP1からのFLPの過剰発現により矯正し、それぞれS.セレビシエ株JRY188 cirおよびMT302/28B cirを作出した。
S.セレビシエ株JRY188 cir、MT302/28B cir、S150−2B cir(Cashmore et al., 1986, Mol. Gen. Genet., 203, 154-162)、CB11−63 cir(Zealey et al., 1988, Mol. Gen. Genet., 211, 155-159)を総てpDB2931(図14)およびpDB2929(図12)で形質転換してロイシン原栄養性とした。形質転換体を、適宜添加を行った、ロイシンを含まない最小培地上で選択した。各株の形質転換体を50mL振盪フラスコ内の10mL YEPD中に接種し、回転振盪機にて30℃、200rpmで4日間インキュベートした。培養上清を採取し、組換えトランスフェリン力価をロケット免疫電気泳動によって比較した(図26)。これらの結果は、総ての酵母株からの上清中のトランスフェリン力価が、2μmプラスミド内にPDI1が存在している場合(pDB2929)のほうが、存在してない場合(pDB2931)よりも高かったことを示した。
実施例6
同じ2μm様プラスミド上に種々のPDI1遺伝子と種々の異種タンパク質の発現カセットを含む発現ベクターの構築
PDI1遺伝子のPCR増幅およびYIplac211へのクローニング
S.セレビシエS288cおよびS.セレビシエSKQ2n由来のPDI1遺伝子をPCR増幅し、プロモーター配列を含む5’非翻訳領域の長さが様々に異なるDNA断片を作製した。YIplac211(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)のEcoRIおよびBamHI部位へのPCR産物のクローニングが可能となるようにPCRプライマーを設計した。後のクローニングを容易にするため、付加的な制限エンドヌクレアーゼ部位もPCRプライマーに組み込んだ。表4に構築されたプラスミドを記載し、表5にPDI1遺伝子を増幅するために用いたPCRプライマー配列を示す。これらのYIplac211系プラスミド内のPDI1プロモーターの長さの違いは表4に記載されている。
オリゴヌクレオチドプライマーDS248およびDS250(表5)を用いて、S.セレビシエS288cゲノムDNA由来のPDI1遺伝子をPCR増幅した後、そのPCR産物をEcoRIおよびBamHIで消化し、そのおよそ1.98kbの断片を、EcoRIおよびBamHIで切断したYIplac211(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)にクローニングすることによりpDB2939(図27)を作出した。pDB2939のDNAシーケンシングにより、表5において太字で示されているDS248配列内からの「G」の欠失を確認した。PDI1遺伝子のシーケンシングに用いたオリゴヌクレオチドプライマーを表6に示すが、これらは公開されているS288c PDI1遺伝子配列(PDI1/YCL043C、第III染色体上の座標50221〜48653+1000塩基対の上流配列および1000塩基対の下流配列(http://www.yeastgenome.org/Genebank Accession number NC001135))から設計したものである。
Figure 0005052899
Figure 0005052899
Figure 0005052899
Figure 0005052899
同様に、プラスミドpDB2941(図28)およびpDB2942(図29)も表4および5に記載されているPCRプライマーを用い、それぞれおよそ1.90kbおよび1.85kbのEcoRI−BamHI断片をYIplac211にクローニングすることにより構築した。pDB2941およびpDB2942内のPDI1遺伝子に関して適正なDNA配列を確認した。
このS.セレビシエSKQ2n PDI1遺伝子配列を、クローンC7(Crouzet & Tuite, 1987, 前掲; Farquhar et al., 1991, 前掲)としても知られるpMA3a:C7(米国特許第6,291,205号)由来のPDI1遺伝子を含むプラスミドDNAからPCR増幅した。SKQ2n PDI1遺伝子を、オリゴヌクレオチドプライマーDS248およびDS250(表4および5)を用いて増幅した。およそ2.01kbのPCR産物をEcoRIおよびBamHIで消化し、EcoRIおよびBamHIで切断したYIplac211(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)に連結し、プラスミドpDB2943(図30)を作出した。このSKQ2n PDI1配列の5’末端は、EcoRI、SacI、SnaBI、PacI、FseI、SfiIおよびSmaI部位を含めるべく延長した平滑末端SpeI部位と類似しており、3’末端はSmaI、SnaBIおよびBamHI部位を含めるべく延長した平滑末端Bsu36I部位と類似する部位までにわたる。このPDI1プロモーターの長さはおよそ210bpである。このPDI1断片に関して、表6に示されているオリゴヌクレオチドプライマーを用いて全DNA配列を決定した。これにより、S.セレビシエ株SKQ2n(NCBI受託番号CAA38402)のPDIタンパク質のコード配列が存在するが、114番にセリン残基を有する(これまでに公開されているようなアルギニン残基ではない)ことが確認された。pDB2939におけるS.セレビシエS288c配列と同様に、pDB2943も、表5において太字で示されているDS248配列内から「G」が欠失していた。
同様に、プラスミドpDB2963(図31)およびpDB2945(図32)も表4および5に記載されているPCRプライマーを用い、それぞれおよそ1.94kbおよび1.87kbのEcoRI−BamHI断片をYIplac211にクローニングすることにより構築した。114番のアミノ酸にセリンコドンを有するpDB2963およびpDB2945内のPDI1遺伝子に関して、予測されたDNA配列を確認した。
REP2の後のXcmI部位に種々のPDI1遺伝子が挿入されたpSAC35系rHA発現プラスミドの構築
rHAを種々のPDI1遺伝子と同時発現させるためのpSAC35系プラスミドを構築した(表7)。
Figure 0005052899
まず、pDB2243(図33、WO00/44772に記載)由来のrHA発現カセットを2,992bpのNotI断片上で単離し、次にこれをpDB2688(図4)のNotI部位にクローニングしてpDB2693(図34)を作出した。pDB2693をSnaBIで消化し、ウシ腸管アルカリ性ホスファターゼで処理し、pDB2943、pDB2963、pDB2945、pDB2939、pDB2941およびpDB2942由来のPDI1遺伝子を含むSnaBI断片と連結した。これによりプラスミドpDB2976〜pDB2987(図35〜46)を作出した。REP2と同じ方向に転写されるPDI1を「方向A」で示し、REP2と逆向きに転写されるPDI1を「方向B」で示した(表7)。
REP2の後のXcmI部位に種々のPDI1遺伝子が挿入されたpSAC35系トランスフェリン発現プラスミドの構築
組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)を種々のPDI1遺伝子と同時発現させるためのpSAC35系プラスミドを構築した(表8)。
Figure 0005052899
これを達成するために、まず、rHA発現のためのNotI発現カセットを、NotI消化およびベクター骨格の環化によってpDB2976、pDB2978、およびpDB2980から欠失させた。これにより、表9に示されるようなプラスミドpDB3081(図47)、pDB3083(図48)およびpDB3084(図49)を作出した。
Figure 0005052899
pDB2928(図11)由来の3,256bpのNotI断片を、トランスフェリン遺伝子からの転写がLEU2と同じ方向となるように、pDB3081、pDB3083およびpDB3084のNotI部位にクローニングした。これにより、表8に示されるようなプラスミドpDB3085(図50)、pDB3086(図51)およびpDB3087(図52)を作出した。
実施例7
2μm様プラスミドにおけるPDI1遺伝子の挿入および至適化は、種々の異なるS.セレビシエ株による組換えヒト血清アルブミンの分泌を増強した
S.セレビシエ株JRY188 cir、MT302/28B cir、S150−2B cir、CB11−63 cir(総て上記)、AH22 cir(Mead et al., 1986, Mol. Gen. Genet., 205, 417-421)およびDS569 cir(Sleep et al., 1991, Bio/Technology, 9, 183-187)を、改良型の酢酸リチウム法(Sigma酵母形質転換キット、YEAST−1、プロトコール2; (Ito et al, 1983, J. Bacteriol., 153, 163; Elble, 1992, Biotechniques, 13, 18))を用い、pDB2244(WO00/44772)、pDB2976(図35)、pDB2978(図37)またはpDB2980(図39)のいずれかで形質転換し、ロイシン原栄養性とした。形質転換体を、適宜添加を行ったBMMD寒天プレート上で選択した後、適宜添加を行ったBMMD寒天プレートに貼付した。
各株の形質転換体を50mL振盪フラスコ中、10mLのYEPDに接種し、回転振盪機にて30℃、200rpmで4日間インキュベートした。培養上清を採取し、組換えアルブミン力価をロケット免疫電気泳動により比較した(図53および54)。これらの結果は、総ての酵母株からの培養上清中のアルブミン力価が、2μmプラスミド内にPDI1が存在している場合のほうが、存在してない場合(pDB2931)よりも高かったことを示した。プラスミド上にPDI1が存在していない場合の培養上清のアルブミン力価は、発現宿主としてどの酵母株を選択したかということによるが、試験したほとんどの例では、2μmプラスミド内に長いプロモーター(〜210bp)を有するPDI1が存在した場合(pDB2976)に発現の最大増強が見られた。PDI1プロモーターを、例えば調節部位を削除するように短くすることで改変すると、その改善の制御に影響があった。高rHA産生株として知られるある酵母株(DS569)では、最適な発現のために短いプロモーターのほうが好ましかった。
実施例8
2μm系プラスミド上で同時発現させた場合、種々のPDI1遺伝子が組換えトランスフェリンの分泌を増強した
長いプロモーター(〜210bp)を有するS.セレビシエSKQ2n PDI1遺伝子、および長い、中間、および短いプロモーター(それぞれ〜210bp、〜140bpおよび〜80bp)を有するS.セレビシエS288c PDI1の同時発現を伴う場合の、組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)の分泌を検討した。
これまでの実施例(例えば、実施例2)で用いたものと同じ対照株をpDB2931(PDI1を持たない陰性対照プラスミド)およびpDB2929、pDB3085、pDB3086およびpDB3087(表8)で形質転換してロイシン原栄養性とした。形質転換体をBMMD寒天プレート上で選択し、分析のために5個のコロニーを選択した。株を10mL BMMDおよび10mL YEPD振盪フラスコ培養中、30℃、200rpmで4日間増殖させ、ロケット免疫電気泳動(RIE)による分析のため、培養上清を採取した。
図55は、最小培地(BMMD)において、長いプロモーターを有するS.セレビシエSKQ2n PDI1遺伝子が最高のrTF(N413Q,N611Q)力価をもたらしたことを示す。S.セレビシエS288c PDI1遺伝子は、低いrTF(N413Q,N611Q)力価をもたらし、これは、PDI1プロモーター長を短くするとさらに低下した。
図56は、富栄養培地(YEPD)においては、長いプロモーターを有する、S.セレビシエSKQ2n PDI1およびS.セレビシエS288c PDI1遺伝子は同等のrTF(N413Q,N611Q)産生レベルを示した。また、S.セレビシエS288c PDI1遺伝子のプロモーター長を短くするほど、rTF(N413Q,N611Q)の生産レベルは低くなった。
実施例9
2μm系プラスミド上のPDI1は、組換えアルブミン融合物の分泌を増強した
組換えアルブミン融合物の発現に対する、長いプロモーター(〜210bp)を有するS.セレビシエSKQ2n PDI1遺伝子の同時発現の影響を検討した。
NotI N末端エンドスタチン−アルブミン発現カセット(pDB2556)の構築はこれまでに記載されている(WO03/066085)。適当な酵母ベクター配列を、EP−A−286424で全般的に開示され、Sleep, D., etal., 1991, Bio/Technology, 9, 183-187に記載されている「非組込み」プラスミドpSAC35により提供した。3.54kbの NotI N末端エンドスタチン−アルブミン発現カセットをpDB2556から単離し、精製し、NotIで消化した上にウシ腸管ホスファターゼで処理したpSAC35に連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB3099を作出した(図57)。適当な酵母PDI1ベクター配列を、「非組込み」プラスミドpDB2690(図6)により提供した。3.54kbのNotI N末端エンドスタチン−アルブミン発現カセットをpDB2556から単離し、精製し、NotIで消化した上にウシ腸管ホスファターゼで処理したpDB2690に連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB3100を作出した(図58)。
NotI N末端アンギオスタチン−アルブミン発現カセット(pDB2556)の構築は、pSAC35系酵母発現ベクターpDB2765(図59)の構築と同様、これまでに記載されている(WO03/066085)。3.77kbのNotI N末端アンギオスタチン−アルブミン発現カセットをpDB2556から単離し、精製し、適当な酵母PDI1発現ベクターpDB2690をNotIで消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理したものに連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB3107を作出した(図60)。
NotI N末端Kringle5−(GGS)GG−アルブミン発現カセット(pDB2771)の構築は、pSAC35系酵母発現ベクターpDB2773(図61)の構築と同様、これまでに記載されている(WO03/066085)。3.27kbのNotI N末端Kringle5−(GGS)GG−アルブミン発現カセットをpDB2771から単離し、精製し、適当な酵母PDI1発現ベクターpDB2690をNotIで消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理したものに連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB3104を作出した(図62)。
NotI N末端DX−890−(GGS)GG−アルブミン発現カセット(pDB2683)の構築はこれまでに記載されている(WO03/066824)。適当な酵母ベクター配列を、「非組込み」プラスミドpSAC35により提供した。3.20kbのNotI N末端DX−890−(GGS)GG−アルブミン発現カセットをpDB2683から単離し、精製し、pSAC35をNotIで消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理したものに連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB3101を作出した(図63)。適当な酵母PDI1ベクター配列を、「非組込み」プラスミドpDB2690(図6)により提供した。3.20kbのNotI N末端DX−890−(GGS)GG−アルブミン発現カセットをpDB2683から単離し、精製し、pDB2690をNotIで消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理したものに連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB3102を作出した(図64)。
NotI N末端DPI−14−(GGS)GG−アルブミン発現カセット(pDB2666)の構築は、pSAC35系酵母発現ベクターpDB2679(図65)の構築と同様、これまでに記載されている(WO03/066824)。
3.21kbのNotI N末端DPI−14−(GGS)GG−アルブミン発現カセットをpDB2666から単離し、精製し、適当な酵母PDI1発現ベクターpDB2690をNotIで消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理したものに連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB3103を作出した(図66)。
ヒトゲノムDNAから、標準的な条件を使用し、エキソン1およびエキソン2としてそれぞれ次のプライマーを用いた2エキソンの増幅によりCNTFをクローニングした。
Figure 0005052899
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両断片を標準的な条件下で連結し、その後、プライマー5’−CTCGGTACCCAGCTGACTTGTTTCCTGG−3’および5’−CTCTCTAGAAGCAAGGAAGAGAGAAGGGAC−3’を用い、PCRにより再び増幅し、ベクターpCR4(Invitrogen)にクローニングした。Axokine(商標)(Lambert et al, 2001, PNAS, 98, 4652-4657に開示)を作製するため、部位特異的突然変異誘発を用いてC17A(TGT→GCT)およびQ63R(CAG→AGA)突然変異を導入した。DNAシーケンシングもまた、WO2004/015113に記載のようなサイレントT→C置換V85V(GTT→GTC)の存在を明らかにした。
このAxokine(商標)cDNAを一本鎖オリゴヌクレオチドMH33およびMH36を用いてPCRにより増幅し、およそ0.58kbpのPCR断片を作出した。
Figure 0005052899
これは50mL反応液中、FastStart Taq DNAポリメラーゼ(Roche)を用いて行い、95℃で4分のインキュベーションにより開始し、その後、25サイクルのPCR(95℃30秒、55℃30秒、72℃60秒)を行った。10mLのサンプルにおいて、臭化エチジウムで染色した1%アガロースゲルでの電気泳動の後、、予測された大きさのPCR産物が見られた。残りのPCR産物をQIAquick PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、BamHIおよびBglIIで完全に消化した。およその予測された大きさのDNAを、臭化エチジウム染色1%(w/v)アガロースゲルから切り出し、精製した。
プラスミドpDB2573Xは、好適な転写プロモーターおよびターミネーターを、好適な分泌リーダー配列、およびヒトアルブミンのN末端と融合した(GGS)GGペプチドリンカーの部分をコードしているDNA配列とともに提供した。pDB2573Xsの構築はこれまでに記載されている(WO03/066824)。
0.57kbのBamHIおよびBglII消化PCR産物を、BamHI、BglIIおよびウシ腸管アルカリ性ホスファターゼで消化したpDB2573Xと連結し、プラスミドpDB2617(図95)を作出し、このPCR作製断片および隣接する配列に関して、オリゴヌクレオチドプライマーCF84、CF85、PRBおよびDS229を用い、適正なDNA配列を確認した。
Figure 0005052899
Figure 0005052899
プラスミドpDB2617をNdeIおよびNotIで消化し、Axokine(商標)−(GGS)GG−アルブミン分泌のための3.586kbのNotI発現カセットをアガロースゲルから精製した。
適当な酵母ベクター配列を、「非組込み」プラスミドpSAC35により提供した。3.586kbのNotI N末端Axokine(商標)−(GGS)GG−アルブミン発現カセットをpDB2617から単離し、精製、pSAC35をNotIで消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理したものに連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB2618を作出した(図96)。適当な酵母PDI1ベクター配列を、「非組込み」プラスミドpDB2690(図6)により提供した。3.586kbのNotI N末端Axokine(商標)−(GGS)GG−アルブミン発現カセットをpDB2617から単離し、精製し、pDB2690をNotIで消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理したものに連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB3106を作出した(図68)。
ヒトIL10cDNA(NCBI受託番号(NM_000572)を、一本鎖オリゴヌクレオチドCF68およびCF69を用い、PCR増幅した。
Figure 0005052899
Figure 0005052899
0.43kbのDNA断片をBamHIで完全に消化し、BglIIで部分的に消化し、0.42kbのBglII−BamHI DNA断片を単離した。
プラスミドpDB2573Xは、好適な転写プロモーターおよびターミネーターを、好適な分泌リーダー配列、およびヒトアルブミンのN末端と融合した(GGS)GGペプチドリンカーの部分をコードしているDNA配列とともに提供した。pDB2573Xの構築はこれまでに記載されている(WO03/066824)。
プラスミドpDB2573XをBglIIおよびBamHIで完全に消化し、6.21kbのDNA断片を単離し、ウシ腸管ホスファターゼで処理した後、0.42kbのBglII/BamHI N末端 IL10 cDNAと連結し、pDB2620(図69)を作出した。適当な酵母ベクター配列を、「非組込み」プラスミドpSAC35により提供した。3.51kbのNotI N末端IL10−(GGS)GG−アルブミン発現カセットをpDB2620から単離し、精製し、pSAC35をNotIで消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理したものに連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB2621を作出した(図70)。適当な酵母PDI1ベクター配列を、「非組込み」プラスミドpDB2690(図6)により提供した。3.51kbのNotI N末端IL10−(GGS)GG−アルブミン発現カセットをpDB2620から単離し、精製し、pDB2690をNotIで消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理したものに連結し、LEU2選択マーカーと同じ方向でNotI発現カセットを含むプラスミドpDB3105を作出した(図71)。
これまでの実施例で用いたものと同じ対照酵母株を、改良型酢酸リチウム法(Sigma酵母形質転換キット、YEAST−1、プロトコール2; (Ito et al, 1983, J. Bacteriol., 153, 163; Elble, 1992, Biotechniques, 13, 18))を用いて形質転換し、ロイシン原栄養性とした。形質転換体をBMMD寒天プレート上で選択し、その後、BMMD寒天プレート上に貼付した。 10mLのBMMD振盪フラスコ培養(24時間、30℃、200rpm)から低温保存トレハロース原液を調製した。
各株の形質転換体を50mL振盪フラスコ内の10mL BMMD中に接種し、回転振盪機にて30℃、200rpmで4日間インキュベートした。培養上清を採取し、組換えアルブミン融合物力価をロケット免疫電気泳動によって比較した(図72)。これらの結果は、酵母株からの培養上清中のアルブミン融合物力価が、2μmプラスミド内にPDI1が存在している場合のほうが、存在してない場合よりも高かったことを示した。
ロケット免疫電気泳動により検出された、このアルブミン融合物の発現の増強を、さらにSDS−PAGE分析によって研究した。種々のアルブミン融合物を発現するYBX7のBMMD振盪フラスコ培養を回転振盪機にて30℃、200rpmで4日間増殖させた。培養上清のサンプルをSDS−PAGEにより分析した(図73)。研究下のアルブミン融合物の予測される大きさを有するタンパク質バンドには、存在量の増加が見られた。
実施例10
2μm系プラスミド上でのS.セレビシエ ORM2と組換えトランスフェリンの同時発現
S.セレビシエS288c由来のORM2遺伝子を、UL領域内のNotII部位にrTf(N413Q,N611Q)の発現カセットを含むpSAC35系プラスミド上のREP2の後のXcmI部位にクローニングした。
pDB2928(図11)由来のrTf(N413Q,N611Q)発現カセットを含む3,256bpのNotI断片をpDB2688(図4)のNotI部位に挿入することにより、プラスミドpDB2965(図74)を構築した。pDB2688をNotI消化により線状化し、アルカリ性ホスファターゼで処理した。pDB2928由来のrTf発現カセットをpDB2688のNotI部位にクローニングし、LEU2と同じ方向で転写されるトランスフェリン遺伝子を有するpDB2965を作出した。
ORM2遺伝子をSセレビシエS288cゲノムDNAから、Expand High Fidelity PLUS PCR System (Roche)を用い、オリゴヌクレオチドプライマーGS11およびGS12(表10)を用いてPCR増幅した。
Figure 0005052899
ベクターpDB2965のXcmI部位のリンカーにクローニングするため、フォワードプライマーの5’末端にSnaBIおよびPacI制限認識部位を、そして、リバースプライマーの5’末端にSnaBIおよびFseI制限認識部位を組込むようにプライマーを設計した。PCRは次の条件下で行った:200μM dNTPミックス、2.5UのExpand HiFi酵素ブレンド、1×Expand HiFi反応バッファー、0.8μgゲノムDNA;94℃2分を1サイクル、94℃30秒、55℃30秒、72℃3分を30サイクル、および72℃7分を1サイクル。各プライマー0.4μMを用いた。必要な1,195bpのPCR産物およびpDB2965ベクターをPacIおよびFseIで消化し、ともに連結し、コンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。アンピシリン耐性形質転換体を選択した。ORM2含有構築物をアンピシリン耐性クローンから単離したプラスミドDNAの制限酵素分析により確認した。4つのプラスミドクローンpDB3090、pDB3091、pDB3092およびpBD3093を作製したが、それらは総て、制限分析の際に予測されたDNA断片パターンを持っていた(図75)。
トランスフェリンおよびORM2遺伝子を2μm系プラスミドから同時発現させた場合のトランスフェリン分泌に対する影響を検討するため、S.セレビシエ対照株および株A(実施例3に記載の通り)を選択した。対照株および株Aを、プラスミドpDB3090、pDB3092およびpBD3093、ならびにORM2を含まないrTf(N413Q,N611Q)発現カセットを含む対照プラスミドpDB2931(図14)で形質転換してロイシン原栄養性とした。形質転換体をBMMD寒天上で選択し、その後の分析のためBMMD寒天に貼付した。
トランスフェリン分泌に対するORM2同時発現の影響を検討するため、10mL選択(BMMD)および非選択(YEPD)液体培地にORM2/トランスフェリン同時発現プラスミドを含む株を接種した。次に、この振盪フラスコ培養物を30℃で振盪しながら(200rpm)4日間、インキュベートした。トランスフェリン分泌の相対的レベルをロケットゲル免疫電気泳動(RIE)により測定した(図76)。
対照株[pDB3090]および対照株[pDB3092]から分泌されたトランスフェリンのレベルは、BMMDおよびYEPSの両培地とも、対照株[pDB2931]から得られたレベルよりも高かった。同様に、株A[pDB3090]および株A[pDB3093]の双方から分泌されたトランスフェリンのレベル、BMMDおよびYEPSの両培地とも、株A[pDB2931]から得られたレベルよりも高かった。総ての株Aの形質転換体からのトランスフェリン分泌は、同じ培地で増殖させた対照株の形質転換体の場合よりも高かった。株Aはゲノム内にPDI1の付加的コピーを含み、これがトランスフェリン分泌を増強した。従って、株Aにおいては、ORM2とPDI1の発現の増強がトランスフェリンの分泌に累積作用を有していた。
実施例11
2μm系プラスミド上でのS.セレビシエPSEIとトランスフェリンの同時発現
S.セレビシエS288cからのPSE1遺伝子を、UL領域内のNotI部位にrTf(N413Q、N611Q)の発現カセットを含むpSAC35系プラスミド上のREP2の後のXcmI部位にクローニングした。
3.25kpの野生型PSE1遺伝子を、S.セレビシエS288cゲノムDNAから、Expand High Fidelity PCR Kit (Roche)を用い、オリゴヌクレオチドプライマーCED009およびCED010(表10)を用いてPCR増幅した。ベクターpUC19へのクローニングを容易にするため、5’末端にBamHI制限認識部位を組込むようプライマーを設計した。PCRは次の条件下で行った:94℃2分を1サイクル、94℃15秒、45℃30秒、68℃4分30秒を10サイクル;94℃15秒、45℃30秒、68℃4分30秒(1サイクルごとに5秒延長)を20サイクル;および68℃10分を1サイクル。必要なPCR産物をBamHIで消化した後、BamHIで消化した上にアルカリ性ホスファターゼで処理したpUC19に連結し、構築物pDB2848(図77)を作出した。pDB2848のシーケンシングにより、増幅された配列は、第XIII染色体上の座標892220〜888951+1000塩基対の上流配列および1000塩基対の下流配列(サッカロミセスゲノムデータベースhttp://www.yeastgenome.org/)のPSE1/YMR308C由来の配列と比較した場合に、S.セレビシエS288c PSE1に関して予測された通りであったことを確認された。次に、PSE1遺伝子をBamHI消化によりpDB2848から切り出し、得られた4,096bpの断片をフェノール:クロロホルム抽出し、エタノール沈殿させ、DNAポリメラーゼクレノウ断片で処理して5’−オーバーハングを埋めた。プラスミドpDB2965(図74)をSnaBI消化により線状化し、アルカリ性ホスファターゼで処理した。この線状化pDB2965ベクターとPSE1挿入部を連結し、コンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。アンピシリン耐性形質転換体を選択した。これらのアンピシリン耐性クローンから単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、プラスミドpDB3097(図78)およびpDB3098(図79)がPSE1遺伝子を含んでいることが確認された。pDB3097においては、PSE1遺伝子はREP2と同じ方向で転写されるが、pDB3097においては、PSE1遺伝子はREP2と逆の方向で転写される。
S.セレビシエ対照株を、プラスミドpDB3097およびpBD3098、ならびにPSE1を含まないrTf(N413Q,N611Q)発現カセットを含む対照プラスミドpDB2931(図14)で形質転換してロイシン原栄養性とした。形質転換体をBMMD寒天上で選択し、その後の分析のためBMMD寒天に貼付した。
トランスフェリン分泌に対するPSE1発現の影響を検討するため、10mLの選択(BMMD)液体培地が入ったフラスコにPSE1/トランスフェリン同時発現プラスミドを含む株を接種した。次に、この振盪フラスコ培養物を30℃で振盪しながら(200rpm)4日間インキュベートした。トランスフェリン分泌の相対的レベルをロケットゲル免疫電気泳動(RIE)により測定した(図80)。
対照株[pDB3097]および対照株[pDB3098]から分泌されたトランスフェリンのレベルは、BMMD培地において、対照株[pDB2931]から得られたレベルより高かった。従って、2μm系プラスミドからのPSE1の発現はS.セレビシエからのトランスフェリン分泌を増強した。トランスフェリン分泌はpDB3097およびpDB3098において、REP2遺伝子に対していずれかの方向で転写されるPSE1遺伝子によって向上した。
実施例12
2μm系プラスミド上でのS.セレビシエSSA1と組換えトランスフェリンの同時発現
S.セレビシエS288c由来のSSA1遺伝子を、UL領域内のNotI部位にrTf(N413Q,N611Q)のための発現カセットを含むpSAC35系プラスミド上のREP2の後のXcmI部位にクローニングした。
1.93kbのSSA1遺伝子をS.セレビシエS288cゲノムDNAから、Expand High Fidelity PCR Kit (Roche)を用い、オリゴヌクレオチドプライマーCED037およびCED038(表10)を用いてPCR増幅した。ベクターpUC19へのクローニングを容易にするため、5’末端にSphI制限認識部位を組込むようプライマーを設計した。PCRは次の条件下で行った:94℃10分を1サイクル、94℃1分、55℃1分、72℃5分を35サイクル;および72℃10分を1サイクル。必要なPCR産物をSphIで消化した後、SphIで消化した上にアルカリ性ホスファターゼで処理したpUC19に連結し、構築物pDB2850(図81)を作出した。pDB2850のシーケンシングにより、サッカロミセスゲノムデータベース(http://www.yeastgenome.org/)で公開されている第I染色体上の座標141433〜139505+1000塩基対の上流配列および1000塩基対の下流配列のS.セレビシエS288c SSA1/YAL005Cの予測された配列が確認された。
SSA1遺伝子をSphI消化によりpDB2850から切り出し、得られた2,748bpの断片をフェノール:クロロホルム抽出し、エタノール沈殿させ、T4 DNAポリメラーゼで処理して3’−オーバーハングを除去した。プラスミドpDB2965をSnaBI消化により線状化し、アルカリ性ホスファターゼで処理した。この線状化pDB2965ベクターとSSA1挿入部を連結し、コンピテント大腸菌DH5α細胞に形質転換した。アンピシリン耐性形質転換体を選択した。これらのアンピシリン耐性クローンから単離されたプラスミドDNAの制限酵素分析により、SSA1構築物pDB3094(図82)およびpDB3095(図83)が確認された。pDB3094においては、SSA1遺伝子はREP2と同じ方向で転写されるが、pDB3095においては、SSA1遺伝子はREP2と逆の方向で転写される。
S.セレビシエ対照株を、プラスミドpDB3094およびpBD3095、ならびにSSA1を含まないrTf(N413Q,N611Q)発現カセットを含む対照プラスミドpDB2931(図14)で形質転換してロイシン原栄養性とした。形質転換体をBMMD寒天上で選択し、その後の分析のためBMMD寒天に貼付した。
トランスフェリン分泌に対するSSA1発現の影響を検討するため、10mLの選択(BMMD)液体培地が入ったフラスコにSSA1/トランスフェリン同時発現プラスミドを含む株を接種した。これらの振盪フラスコ培養物を30℃で振盪しながら(200rpm)4日間インキュベートした。トランスフェリン分泌の相対的レベルをロケットゲル免疫電気泳動(RIE)により測定した(図84)。
対照株[pDB3095]から分泌されたトランスフェリンのレベルは、BMMD培地において、対照株[pDB2931]および対照株[pDB3094]から得られたレベルより高かった。従って、2μm系プラスミドからSSA1の発現はS.セレビシエからのトランスフェリン分泌を増強した。トランスフェリン分泌はpDB3094において、REP2遺伝子に対して逆方向で転写されるSSA1遺伝子によって向上した。
実施例13
PDI1遺伝子分断を2μm系プラスミド上のPDI1遺伝子と組み合わせると組換えアルブミンの分泌およびプラスミドの安定性を高めた
表11に挙げられている一本鎖オリゴヌクレオチドDNAプライマーは、酵母PDI1コード領域の上流の領域と酵母PDI1コード領域の下流の別の領域を増幅するように設計されたものである。
Figure 0005052899
プライマーDS299およびDS300は、ゲノムDNA由来のS288cを鋳型として用いて、PDI1の5’領域をPCR増幅し、プライマーDS301およびDS302は、PDI1の3’領域を増幅した。PCR条件は次の通りとした:1μL S288c鋳型DNA(0.01ng/μL、0.1ng/μL、1ng/μL、10ng/μLおよび100ng/μL)、5μL 10×バッファー(Fast Start Taq+Mg, (Roche))、1μL 10mM dNTP、5μL 各プライマー(2μM)、0.4μL Fast Start TaqをHOで50μLとした。PCRはPerkin−Elmer Thermal Cycler 9700を用いて行った。条件は、変性95℃で4分[HOLD]、その後、[CYCLE]変性95℃で30秒、アニーリング45℃で30秒、伸張72℃で45秒の20サイクルの後、[HOLD]72℃10分、その後、[HOLD]4℃とした。0.22kbpのPDI1 5’PCR産物はNotIおよびHindIIIで切断し、0.341kbpのPDI1 3’PCR産物はHindIIIおよびPstIで切断した。
プラスミドpMCS5(Hoheisel, 1994, Biotechniques 17, 456-460)(図85)をHindIIIで完全に消化し、T4 DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端化し、再連結してpDB2964(図86)を作出した。
プラスミドpDB2964をHindIII消化し、ウシ腸管ホスファターゼで処理し、NotIおよびHindIIIで消化した0.2kbpのPDI1 5’PCR産物ならびにHindIIIおよびPstIで消化した0.34kbpのPDI1 3’PCR産物と連結してpDB3069(図87)を作出し、これを、フォワードおよびリバース万能プライマーならびにDNAシーケンシングプライマーDS303、DS304、DS305およびDS306(表11)を用いて配列決定した。
プライマーDS234およびDS235(表12)を用いて、YIplac204(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)から、PCR産物の各末端にHindIII制限部位を組み込んだ改変TRP1マーカー遺伝子を増幅した。PCR条件は次の通りとした:1μL 鋳型YIplac204(0.01ng/μL、0.1ng/μL、1ng/μL、10ng/μLおよび100ng/μL)、5μL 10×バッファー(Fast Start Taq+Mg, (Roche))、1μL 10mM dNTP、5μL 各プライマー(2μM)、0.4μL Fast Start TaqをHOで50μLとした。PCRはPerkin−Elmer Thermal Cycler 9600を用いて行った。条件は、変性95℃で4分[HOLD]、その後、[CYCLE]変性95℃で30秒、アニーリング45℃で45秒、伸張72℃で90秒の20サイクルの後、[HOLD]72℃10分、その後、[HOLD]4℃とした。0.86kbpのPCR産物をHindIIIで消化し、pMCS5のHindIII部位にクローニングし、pDB2778(図88)を作出した。制限酵素消化と、万能フォワードおよびリバースプライマーならびにDS236、DS237、DS238およびDS239(表12)を用いたシーケンシグにより、改変されたTRP1遺伝子の配列が適正であったことを確認した。
Figure 0005052899
0.86kbpのTRP1遺伝子をpDB2778から、HindIII消化により単離し、pDB3069のHindIII部位へクローニングしてpDB3078(図89)およびpDB3079(図90)を作出した。1.41kbのpdi1::TRP1分断DNA断片をpDB3078またはpDB3079から、NotI/PstI消化により単離した。
TPP1欠失(trp1Δ)を組み込んだ酵母株は、ひと度trp1Δが作出されたならばゲノム内にTRP1マーカー遺伝子(pDB2778)との相同性が残らないように、従って、将来のTRP1を含む構築物とTRP1遺伝子座との間の相同組換えが起こらないように構築されたはずであった。選択された宿主株のゲノムから天然TRP1配列の全体的な除去を達成するため、組込みベクターYIplac204(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)上に存在するTRPIマーカー遺伝子の外側のTRP1遺伝子の5’UTRおよび3’UTRの領域を増幅するようにオリゴヌクレオチドを設計した。このYIplac204 TRP1マーカー遺伝子は、内部HindIII、PstIおよびXaI部位が部位特異的突然変異誘発により除去されているという点で天然/染色体TRP1遺伝子とは異なる(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)。YIplac204改変型TRP1マーカー遺伝子を1.453kbpの平滑末端化ゲノム断片EcoRI断片から構築し、これはTRP1遺伝子と102bpのみのTRP1プロモーターを含んでいた(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)。これは比較的短いプロモーター配列であったが、trp1栄養要求性突然変異を補償するには明らかに十分なものであった(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)。5’〜TRP1 ORFの開始部までの102bpに存在する、EcoRI部位の上流のDNA配列のみを用いて5’TEP1 UTRを作出した。機能的に改変されたTRP1マーカーの3’末端の外側にある限り3’UTRの選択はあまり重要でなく、翻訳停止コドンの85bp下流となるように選択した。
PCR増幅の際に制限酵素部位が、その後のクローニング工程で用いられるPCR産物の末端に付加されるように、TRP1遺伝子の5’UTRおよび3’UTR領域を増幅するために一本鎖オリゴヌクレオチドDNAプライマーを設計および構築した。S288cゲノムDNAを鋳型として用い、プライマーDS230およびDS231(表12)はPCRによりTRP1の5’領域を増幅し、プライマーDS232およびDS233(表12)はTRP1の3’領域を増幅した。PCR条件は次の通りとした:1μL鋳型S288cゲノムDNA(0.01ng/μL、0.1ng/μL、1ng/μL、10ng/μLおよび100ng/μL)、5μL 10×バッファー(Fast Start Taq+Mg, (Roche))、1μL 10mM dNTP、5μL 各プライマー(2μM)、0.4μL Fast Start TaqをHOで50μLとした。PCRはPerkin−Elmer Thermal Cycler 9600を用いて行った。条件は、変性95℃で4分[HOLD]、その後、[CYCLE]変性95℃で30秒、アニーリング45℃で45秒、伸張72℃で90秒の20サイクルの後、[HOLD]72℃10分、その後、[HOLD]4℃とした。
この0.19kbpのTRP1 5’UTR PCR産物をEcoRIおよびHindIIIで切断し、0.2kbpのTRP1 3’UTR PCR産物はBamHIおよびHindIIIで切断し、BamHI/EcoRIで線状化したpAYE505に連結し、プラスミドpDB2777(図91)を作出した。pAYE505の構築についてはWO95/33833に記載されている。プラスミド骨格およびクローニングされた挿入部の配列からプライミングするように設計されたフォワードおよびリバースプライマーを用いたDNAシーケンシングにより、両場合において、クローニングされたTRP1遺伝子の5’および3’UTR配列が予測されるDNA配列を持っていたことを確認した。プラスミドpDB2777は、TRP1の5’および3’UTRに由来する配列の融合物を含んでなるTRP1分断断片を含んでいた。この0.383kbpのTRP1分断断片を、EcoRIでの完全消化により、pDB2777から切り出した。
酵母株DXY1(Kerry-Williams et al., 1998, Yeast, 14, 161-169)を、改良型の酢酸リチウム法(Sigma酵母形質転換キット、YEAST−1、プロトコール2; (Ito et al, 1983, J. Bacteriol., 153, 163; Elble, 1992, Biotechniques, 13, 18))を用い、アルブミン発現プラスミドpDB2244で形質転換してロイシン原栄養性とし、酵母株DXY1[pDB2244]を作出した。このアルブミン発現プラスミドpDB2244の構築についてはWO00/44772に記載されている。形質転換体をBMMD寒天プレート上で選択した後、BMMD寒天プレート上に貼付した。10mL BMMD振盪フラスコ培養(24時間、30℃、200rpm)から低温保存トレハロース原液を調製した。
DXY1[pDB2244]を、Toyn et al., (2000 Yeast 16, 553-560)が記載しているように、対選択トリプトファン類似体、5−フルオロアントラニル酸(5−FAA)を配合した栄養寒天を用い、pDB2777由来の0.383kbpのEcoRI TRP1分断DNA断片で形質転換し、トリプトファン独立栄養性とした。5−FAAの有毒作用に耐性のあるコロニーを採取し、もう一度5−FAAプレートに線条接種し、それらが本当に5−FAA耐性であることを確認し、バックグラウンド増殖から選択した。次に、増殖させたコロニーをBMMDおよびBMMD+トリプトファン上に再貼付し、どれがトリプトファン栄養要求株であるか確認した。
次に、トリプトファン栄養要求株であることが示されたコロニーを、どの単離物がtrp1であるかを確認すべく、YCplac22(Gietz & Sugino, 1988, Gene, 74, 527-534)での形質転換によるさらなる分析のために選択した。
TRP1遺伝子座にわたるPCR増幅を用い、trp表現型がこの領域の欠損によるものであったことを確認した。5−FAA耐性であって、トリプトファンを添加しない最小培地では増殖できないことが確認された単離物からゲノムDNAを調製した。ゲノムTRP1遺伝子座の、プライマーCED005およびCED006(表12)を用いたPCR増幅を次のようにして行った:1μL鋳型ゲノムDNA、5μL 10×バッファー(Fast Start Taq+Mg, (Roche))、1μL 10mM dNTP、5μL 各プライマー(2μM)、0.4μL Fast Start TaqをHOで50μLとした。PCRはPerkin−Elmer Thermal Cycler 9600を用いて行った。条件は、変性94℃で10分[HOLD]、その後、[CYCLE]変性94℃で30秒、アニーリング55℃で30秒、伸張72℃で120秒の40サイクルの後、[HOLD]72℃10分、その後、[HOLD]4℃とした。野生型TRP1遺伝子座のPCR増幅では、1.34kbpの大きさのPCR産物が生じたが、欠失TRP1領域にわたる増幅では、0.50kbp小さい0.84kbpのPCR産物が生じた。PCR分析により、DXY1由来trp株(DXY1 trp1Δ[pDB2244])が予測された欠失を有することを確認した。
Sleep et al., (1991, Bio/Technology, 9, 183-187)が記載しているように、この酵母株DXY1 trp1Δ[pDB2244]の発現プラスミドpDB2244は回復した。DXY1 trp1Δ cirを、改良型の酢酸リチウム法(Sigma酵母形質転換キット、YEAST−1、プロトコール2; (Ito et al, 1983, J. Bacteriol., 153, 163; Elble, 1992, Biotechniques, 13, 18))を用い、pDB2244、pDB2976、pDB2977、pDB2978、pDB2979、pDB2980またはpDB2981のいずれかで再形質転換し、ロイシン原栄養性とした。トリプトファンを添加したBMMD寒天プレート上で形質転換体を選択した後、トリプトファンを添加したBMMD寒天プレート上に貼付した。トリプトファンを添加した10mL BMMD振盪フラスコ培養(24時間、30℃、200rpm)から低温保存トレハロース原液を調製した。
酵母株DXY1 trp1Δ [pDB2976]、DXY1 trp1Δ [pDB2977]、DXY1 trp1Δ [pDB3078]、DXY1 trp1Δ [pDB3079]、DXY1 trp1Δ [pDB2980]またはDXY1 trp1Δ [pDB2981]を、改良型の酢酸リチウム法(Sigma酵母形質転換キット、YEAST−1、プロトコール2; (Ito et al, 1983, J. Bacteriol., 153, 163; Elble, 1992, Biotechniques, 13, 18))を用い、pDB3078からNotI/PstI消化により単離した1.41kb pdi1::TRP1分断DNA断片で形質転換し、トリプトファン原栄養性とした。BMMD寒天プレート上で形質転換体を選択した後、BMMD寒天プレートに貼付した。
各株6個の形質転換体を、50mL振盪フラスコ中、10mLのYEPDに接種し、回転振盪機にて30℃、200rpmで4日間インキュベートした。培養上清および細胞バイオマスを採集した。これらのトリプトファン原栄養株およびDXY1 [pDB2244]からゲノムDNAを調製した(Lee, 1992, Biotechniques, 12, 677)。プライマーDS236およびDS303(表11および12)を用いたゲノムPDI1遺伝子座のPCR増幅は次のようにして行った:1μL鋳型ゲノムDNA、5μL 10×バッファー(Fast Start Taq+Mg, (Roche))、1μL 10mM dNTP、5μL 各プライマー(2μM)、0.4μL Fast Start TaqをHOで50μLとした。PCRはPerkin−Elmer Thermal Cycler 9700を用いて行った。条件は、変性94℃で4分[HOLD]、その後、[CYCLE]変性94℃で30秒、アニーリング50℃で30秒、伸張72℃で60秒の30サイクルの後、[HOLD]72℃10分、その後、[HOLD]4℃とした。野生型PDI1遺伝子座のPCR増幅ではPCR産物は生じなかったが、欠失PDI1領域にわたる増幅では、0.65kbpのPCR産物が生じた。PCR分析により、試験した36の可能性のあるpdi1::TRP1株の総てが予測されたdpdi1::TRP1欠失を持っていたことを確認した。
これらの組換えアルブミンの力価をロケット免疫電気泳動により比較した(図92)。各群の中で、DXY1 trp1Δ [pDB2976]、DXY1 trp1Δ [pDB2978]、DXY1 trp1Δ [pDB2980]、DXY1 trp1Δ [pDB2977]およびDXY1 trp1Δ [pDB2979]の6つのpdi1::TRP1分断物は総て、極めて類似したrHA生産性を有していた。DXY1 trp1Δ [pDB2981]の6つのpdi1::TRP1分断物だけがrHA発現力価に変動を示した。図92に示したこれら6つのpdi1::TRP1分断物をYEPD寒天上に拡げ、単一コロニーを単離し、その後、BMMD寒天上に再貼付した。
3つの、単一細胞由来単離物DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2976]、DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2978]、DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2980]、DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2977]、DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2979]およびDXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2981]を、DXY1 [pDB2244]、DXY1 [pDB2976]、DXY1 [pDB2978]、DXY1 [pDB2980]、DXY1 [pDB2977]、DXY1 [pDB2979]およびDXY1 [pDB2981]とともに、50mL振盪フラスコ中、10mLのYEPDに接種し、回転振盪機にて30℃、200rpmで4日間インキュベートした。培養上清を採取し、組換えアルブミン力価をロケット免疫電気泳動により比較した(図93)。図93で示されている13の野生型PDI1およびpdi1::TRP1分断物をYEPD寒天上に拡げ、単一コロニーを単離した。次に、各株から100の単一細胞由来コロニーをBMMD寒天または組換えアルブミンの発現を検出するためのヤギ抗HSA抗体(Sleep et al., 1991, Bio/Technology, 9, 183-187)を含むYEPD寒天上に再貼付し、各コロニーのLeu+/rHA+、Leu+/rHA−、Leu−/rHA+またはLeu−/rHA−の表現型をスコアリングした(表13)。
Figure 0005052899
これらのデータは、染色体にコードされているPDIを持たない宿主株においてプラスミドに対する選択マーカーとしてPDI1遺伝子を用いる場合には、この例の富栄養培地などの非選択培地であってもプラスミドの保持が高まることを示す。
種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 プラスミド挿入部位を示す。 種々のプラスミドマップを示す。 PDIコード配列を含むDNA断片の制限地図を示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 PDI1の過剰発現を伴う組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)分泌の増強のロケット免疫電気泳動(RIE)測定結果を示す。低温保存酵母原株を10mL BMMD振盪フラスコ培養にて4日間増殖させ、上清を5μL/ウェルで添加した。ヤギポリクローナル抗トランスフェリン(ヒト)抗血清(Calbiochem)を、40μL/ロケット免疫電気泳動ゲル(50mL)で用いた。A=対照株[pSAC35]、フラスコ2本;B=対照株[pDB2536]、フラスコ2本;C=対照株[pDB2711]、原液〜40倍希釈水溶液;D=対照株[pDB2931]、フラスコ2本;E=対照株[pDB2929]、原液〜40倍希釈水溶液。 PDI1の過剰発現を伴う、および伴わない組換えトランスフェリン(N413Q,N611Q)分泌のRIE分析の結果を示す。低温保存酵母原株を10mL BMMD振盪フラスコ培養にて4日間増殖させ、上清を5μL/ウェルで添加した。各株の個々の2つの培養物からの上清からなる二反復の添加とした。ヤギポリクローナル抗トランスフェリン(ヒト)抗血清(Calbiochem)を、40μL/ロケット免疫電気泳動ゲル(50mL)で用いた。A=対照株[pSAC35];B=対照株[pDB2536];C=対照株[pDB2711];D=対照株[pDB2931];E=対照株[pDB2929]。 PDI1過剰発現を伴う、および伴わない組換えトランスフェリン分泌のSDS−PAGE分析の結果を示す。BMMD振盪フラスコ培養物を4日間増殖させ、10μLの上清をGelcode(登録商標)Blue試薬(Pierce)を用いた非還元SDS−PAGE(4〜12% NuPAGE(登録商標)、MOPSバッファー、InVitrogen)で分析した。SeeBlue Plus2マーカー(InVitrogen)。1=pDB2536;2=pDB2536;3=pDB2711;4=pDB2711;5=pDB2931;6=pDB2931;7=pDB2929;8=pDB2929;9=pSAC35対照。 PDI1の付加的組込みコピーを有するS.セレビシエ株からの組換えトランスフェリン分泌のRIE分析を示す。5日目のBMMD振盪フラスコ培養上清を5mL/ウェルで添加した。株は、1)pSAC35(陰性対照);2)pDB2536(組換え非グリコシル化トランスフェリン(N413Q,N611Q))または3)pDB2506(このトランスフェリンORFが413番と611番のN→Q突然変異を含まないトランスフェリンをコードしていること以外はプラスミドpDB2536と同じ、すなわち、組換えグリコシル化トランスフェリン)を含んでいた。各ウェルには個々の形質転換体に由来するサンプルを含んだ。標品はヒト血漿ホロ−トランスフェリン(Calbiochem)100、50、20、10、5および2mg.L−1とした。 振盪フラスコ培養で増殖させた株A[pDB2536]および株A[pDB2506]からの組換えトランスフェリン分泌のRIE分析を示す。5日目のBMMDまたはYEPD振盪フラスコ培養上清を5mL/ウェルで二反復として添加した。 振盪フラスコ培養で増殖させた株A[pDB2536]および株A[pDB2506]からの組換えトランスフェリン分泌のSDS−PAGE分析を示す。培養物をBMMD中で5日間増殖させ、上清30mLを、GelCode Blue試薬(Pierce)で染色したSDS−PAGE(4〜12%NuPAGE(商標)、MOPSバッファー、InVitrogen)で分析した。1)株A[pDB2536]形質転換体1;2)株A[pDB2536]形質転換体2;3)株A[pSAC35]対照;4)株A[pDB2506]形質転換体1;5)SeeBlue Plus2プロテインスタンダード(およその分子量のみ)。 種々のプラスミドマップを示す。 PDI1コピー数の異なるS.セレビシエ株から分泌された組換えトランスフェリンのRIEを示す。3日目のBMMD振盪フラスコ培養上清を5mL/ウェルで添加した。ヤギポリクローナル抗トランスフェリン(ヒト)抗血清(Calbiochem)を30mL/ロケット免疫電気泳動ゲル(50mL)で用いた。(A)S.セレビシエ対照株[pDB2711]または[pDB2712]からの上清;(B)株A[pDB2536]からの上清;(C)対照株[pDB2536]からの上清。 PDI1コピー数の異なるS.セレビシエ株から分泌された組換えトランスフェリンのSDS−PAGE分析を示す。4〜12%NuPAGE還元ゲルを、1レーン当たり30mLの3日目BMMD振盪フラスコ培養上清とともに添加した後、MOPSバッファー(InVitrogen)で泳動させる;(レーン1)対照株[pDB2536]からの上清;(レーン2)株A[pDB2536]からの上清;(レーン3〜6)対照株[pDB2711]または[pDB2712]からの上清;(レーン7)分子量マーカー(SeeBlue Plus2、InVitrogen)。 種々のプラスミドマップを示す。 付加的なPDI1遺伝子の同時発現を伴う、および伴わない種々のS.セレビシエ株から分泌された組換えトランスフェリンのRIEを示す。10mL YEPD振盪フラスコに酵母を接種し、30℃で4日間インキュベートした。ロケット免疫電気泳動ゲルの1ウェル当たり5μL培養上清を添加した。血漿Tf標準濃度はμg/mLである。20μLヤギ抗Tf/50mLアガロース。プレシピンをクーマシーブルーで染色した。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々の長さのプロモーターを有するPDI1遺伝子と同時発現させた場合の種々のS.セレビシエ株におけるrHA発現のRIE分析を示す。10mL YEPD振盪フラスコに酵母を接種し、30℃で4日間インキュベートした。ロケット免疫電気泳動ゲルの1ウェル当たり4μL培養上清を添加した。rHA標準濃度はμg/mLである。400μLヤギ抗HA(Sigma製品A−1151を水5mLに再懸濁)50mLアガロース。プレシピンをクーマシーブルーで染色した。 種々の長さのプロモーターを有するPDI1遺伝子と同時発現させた場合の種々のS.セレビシエ株におけるrHA発現のRIE分析を示す。10mL YEPD振盪フラスコに酵母を接種し、30℃で4日間インキュベートした。ロケット免疫電気泳動ゲルの1ウェル当たり4μL培養上清を添加した。rHA標準濃度はμg/mLである。400μLヤギ抗HA(Sigma製品A−1151を水5mLに再懸濁)50mLアガロース。プレシピンをクーマシーブルーで染色した。 種々のPDI1構築物と同時発現させた場合のrTF発現のRIE分析を示す。10mL BMMD振盪フラスコに酵母を接種し、30℃で4日間インキュベートした。25μLのヤギ抗Tf/50mLを含んだロケット免疫電気泳動ゲルの1ウェル当たり5μL培養上清を添加した。血漿Tf標準濃度はμg/mLである。プレシピンをクーマシーブルーで染色した。 種々のPDI1構築物と同時発現させた場合のrTF発現のRIE分析を示す。10mL YEPD振盪フラスコに酵母を接種し、30℃で4日間インキュベートした。25μLのヤギ抗Tf/50mLを含んだロケット免疫電気泳動ゲルの1ウェル当たり5μL培養上清を添加した。血漿Tf標準濃度はμg/mLである。プレシピンをクーマシーブルーで染色した。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 組換えPDI1と同時発現させた場合、およびさせない場合のrHA融合タンパク質のRIE分析を示す。10mL BMMD振盪フラスコに、アルブミン融合発現プラスミドで形質転換したYBX7を接種し、30℃で4日間インキュベートした。ロケット免疫電気泳動ゲルの1ウェル当たり4μL培養上清を添加した。rHA標準濃度はμg/mLである。200μLヤギ抗HA(Sigma製品A−1151を水5mLに再懸濁)/50mLアガロース。プレシピンをクーマシーブルーで染色した。 発現プラスミド上にPDI1が存在する場合、および存在しない場合の組換えアルブミン融合物の分泌のSDS−PAGE分析を示す。10mL BMMD振盪フラスコに酵母を接種し、30℃、200rpmで4日間インキュベートした。30μL上清を、GelCode(登録商標)Blue試薬(Pierce)を用いた非還元SDS−PAGE(4〜12%NuPAGE(登録商標)、MESバッファー、InVitrogen)で分析した。1=SeeBlue Plus2マーカー(InVitrogen);2=1μg rHA;3=アンギオスタチン−rHA;4=アンギオスタチン−rHA+PDI1;5=エンドスタチン−rHA;6=エンドスタチン−rHA+PDI1;7=DX−890−(GGS)GG−rHA;8=DX−890−(GGS)GG−rHA+PDI1;9=DPI−14−(GGS)GG−rHA;10=DPI−14−(GGS)GG−rHA+PDI1;11=Axokine(商標)(CNTFAx15)−(GGS)GG−rHA(Lambert et al, 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 4652-4657);12=Axokine(商標)(CNTFAx15)−(GGS)GG−rHA+PDI1。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 2μm系プラスミドからのORM2同時発現を伴うS.セレビシエからのトランスフェリン分泌の増強を示すRIE分析を示す。4日目の振盪フラスコ培養上清を5μL/ウェルで添加した。標品はヒト血漿ホロ−トランスフェリン(Calbiochem)25、20、15、10、5μg/mlとし、5μl/ウェルを添加した。ヤギポリクローナル抗トランスフェリン(ヒト)抗血清(Calbiochem)を20μl/ロケット免疫電気泳動ゲル(50ml)で用いた。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 2μm系プラスミドからのPSE1同時発現を伴うS.セレビシエからのトランスフェリン分泌の増強を示すRIE分析を示す。4日目の振盪フラスコ培養上清を5μL/ウェルで添加した。標品はヒト血漿ホロ−トランスフェリン(Calbiochem)25、20、15、10、5μg/mlとし、5μl/ウェルを添加した。ヤギポリクローナル抗トランスフェリン(ヒト)抗血清(Calbiochem)を20μl/ロケット免疫電気泳動ゲル(50ml)で用いた。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 2μm系プラスミドからのSSA1同時発現を伴うS.セレビシエからのトランスフェリン分泌の増強を示すRIE分析を示す。4日目の振盪フラスコ培養上清を5μL/ウェルで添加した。標品はヒト血漿ホロ−トランスフェリン(Calbiochem)25、20、15、10、5μg/mlとし、5μl/ウェルを添加した。ヤギポリクローナル抗トランスフェリン(ヒト)抗血清(Calbiochem)を20μl/ロケット免疫電気泳動ゲル(50ml)で用いた。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 RIEの結果を示す。10mL YEPD振盪フラスコに、pDB3078から単離した1.41kbのNotI/PstI pdi1::TRP1分断DNA断片で形質転換してトリプトファン原栄養性としたDXY1 trp1Δ [pDB2976]、DXY1 trp1Δ [pDB2977]、DXY1 trp1Δ [pDB2978]、DXY1 trp1Δ [pDB2979]、DXY1 trp1Δ [pDB2980]またはDXY1 trp1Δ [pDB2981]を接種した。形質転換体を30℃、200rpmで4日間増殖させた。ロケット免疫電気泳動ゲルの1ウェル当たり4μLの培養上清を添加した。rHA標準濃度はμg/mLである。700μLヤギ抗HA(Sigma製品A−1151を水5mLに再懸濁)/50mLアガロース。プレシピンをクーマシーブルーで染色した。さらなる分析のために選択した単離物を()で示す。 RIEの結果を示す。10mL YEPD振盪フラスコに、DXY1 [pDB2244]、DXY1 [pDB2976]、DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2976]、DXY1 [pDB2978]、DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2978]、DXY1 [pDB2980]、DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2980]、DXY1 [pDB2977]、DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2977]、DXY1 [pDB2979] DXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2979]、DXY1 [pDB2981]およびDXY1 trp1Δ pdi1::TRP1 [pDB2981]を接種し、30℃、200rpmで4日間増殖させた。ロケット免疫電気泳動ゲルの1ウェル当たり4μLの培養上清を添加した。rHA標準濃度はμg/mLである。800μLヤギ抗HA(Sigma製品A−1151を水5mLに再懸濁)/50mLアガロース。プレシピンをクーマシーブルーで染色した。さらなる分析のために選択した単離物を()で示す。 実施例6に記載されているように長いプロモーターを有するSKQ2nおよびS288cの遺伝子配列の配列アラインメントを示す。 種々のプラスミドマップを示す。 種々のプラスミドマップを示す。

Claims (28)

  1. 非2μm系プラスミドタンパク質を製造する方法であって、
    (a)シャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている遺伝子と、非2μm系プラスミドタンパク質をコードしている遺伝子とを含む2μm系プラスミドを含んでなる宿主細胞を準備すること、
    (b)該宿主細胞を、培養培地中、シャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている遺伝子と、非2μm系プラスミドタンパク質をコードしている遺伝子の同時発現を可能とする条件下で培養すること、および
    (c)発現した非2μm系プラスミドタンパク質を培養宿主細胞または培養培地から精製すること
    を含んでなる、方法。
  2. 真菌もしくは酵母または脊椎動物の非2μm系プラスミドタンパク質をコードしている遺伝子とシャペロンタンパク質をコードしている遺伝子とを同じ2μm系プラスミド上に提供することにより、前記非2μm系プラスミドタンパク質の生産を増強するための発現ベクターとしての、2μm系プラスミドの使用。
  3. シャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている遺伝子と非2μm系プラスミドタンパク質をコードしている遺伝子とを含んでなる2μm系プラスミドであって、このプラスミドが2μmプラスミドに基づく場合には、非組込みベクターである、プラスミド。
  4. シャペロンが、AHA1、CCT2、CCT3、CCT4、CCT5、CCT6、CCT7、CCT8、CNS1、CPR3、CPR6、EPS1、ERO1、EUG1、FMO1、HCH1、HSP10、HSP12、HSP104、HSP26、HSP30、HSP42、HSP60、HSP78、HSP82、JEM1、MDJ1、MDJ2、MPD1、MPD2、PDI1、PFD1、ABC1、APJ1、ATP11、ATP12、BTT1、CDC37、CPR7、HSC82、KAR2、LHS1、MGE1、MRS11、NOB1、ECM10、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSC1、SSE2、SIL1、SLS1、UBI4、ORM1、ORM2、PER1、PTC2、PSE1およびHAC1または末端切断型イントロンレスHAC1のいずれか1つによりコードされているタンパク質の配列を含むものである、請求項3に記載のプラスミド。
  5. シャペロンがタンパク質ジスルフィドイソメラーゼであるか、またはPSE1、ORM2もしくはSSA1によりコードされているタンパク質またはその変異体もしくは断片の配列を含むものであり、該変異体もしくは断片が元のタンパク質と同じ機能を有するものであり、該変異体が元のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するものである、請求項3または4に記載のプラスミド。
  6. 宿主細胞が、前記プラスミドによりコードされている第一のシャペロンとは異なるシャペロンをコードしている第二の組換え遺伝子も発現する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記2つのシャペロンがタンパク質ジスルフィドイソメラーゼとORM2である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記非2μm系プラスミドタンパク質が、アルブミン、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質、血液凝固因子、アンチスタシン、tick抗凝固ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンギオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンに基づく分子またはいずれかの断片、dAb、Fab’断片、F(ab’)、scAb、scFvもしくはscFv断片、Kunitzドメインタンパク質、インターフェロン、インターロイキン、IL10、IL11、IL2、インターフェロンα種および亜種、インターフェロンβ種および亜種、インターフェロンγ種および亜種、レプチン、CNTF、CNTFAX15(Axokin(商標))、IL1−受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)およびEPO模倣体、トロンボポエチン(TPO)およびTPO模倣体、プロサプチド、シアノビリン−N,5−ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIVgp41、HIVgp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルディン、血小板由来増殖因子、副甲状腺ホルモン、プロインスリン、インスリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、インスリン様増殖因子、カルシトニン、成長ホルモン、トランスフォーミング増殖因子β、腫瘍壊死因子、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、FGF、プレ型および活性型双方の凝固因子(プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ウィルブランド因子、αアンチトリプシン、プラスミノーゲンアクチベーター、因子VII、因子VIII、因子IX、因子Xおよび因子XIIIを含む)、神経増殖因子、LACI、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターαトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、Cタンパク質、Sタンパク質、または上記のいずれかの変異体もしくは断片から選択される配列を含むものであり、該変異体が元のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するものである、請求項3〜5のいずれか一項に記載のプラスミド。
  9. 非2μm系プラスミドタンパク質が、融合タンパク質を含むものである、請求項3〜5および8のいずれか一項に記載のプラスミド。
  10. 前記融合タンパク質が、アルブミンもしくはトランスフェリンファミリーメンバーまたはいずれかの変異体もしくは断片が別のタンパク質配列と直接的または間接的に融合された融合タンパク質であり、該変異体が元のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するものである、請求項9に記載のプラスミド。
  11. 請求項3〜5および8〜10のいずれか一項で定義されたプラスミドを含んでなる、宿主細胞。
  12. プラスミドによりコードされているシャペロンが必須遺伝子である、請求項11に記載の宿主細胞。
  13. 非2μm系プラスミドタンパク質を製造する方法であって、
    (a)第一のシャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている第一の組換え遺伝子、第二のシャペロンタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている第二の組換え遺伝子、および非2μm系プラスミドタンパク質をコードしている第三の組換え遺伝子を含む宿主細胞であって、第一のシャペロンと第二のシャペロンが異なるものである、宿主細胞を準備すること、および
    (b)該宿主細胞を、培養培地中、第一、第二および第三の遺伝子の発現を可能とする条件下で培養すること
    を含んでなる、方法。
  14. 第一および第二のシャペロンが、AHA1、CCT2、CCT3、CCT4、CCT5、CCT6、CCT7、CCT8、CNS1、CPR3、CPR6、EPS1、ERO1、EUG1、FMO1、HCH1、HSP10、HSP12、HSP104、HSP26、HSP30、HSP42、HSP60、HSP78、HSP82、JEM1、MDJ1、MDJ2、MPD1、MPD2、PDI1、PFD1、ABC1、APJ1、ATP11、ATP12、BTT1、CDC37、CPR7、HSC82、KAR2、LHS1、MGE1、MRS11、NOB1、ECM10、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSC1、SSE2、SIL1、SLS1、UBI4、ORM1、ORM2、PER1、PTC2、PSE1およびHAC1または末端切断型イントロンレスHAC1のいずれか1つによりコードされているタンパク質の配列を含むものである、請求項13に記載の方法。
  15. 第一または第二のシャペロンの少なくとも1つが、プラスミド上の遺伝子によりコードされており、該プラスミドが請求項1〜12のいずれか一項で定義されたプラスミドである、請求項13または14に記載の方法。
  16. タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)の配列を含むタンパク質をコードしている第一の組換え遺伝子と、トランスフェリンに基づくタンパク質の配列を含むタンパク質をコードしている第二の組換え遺伝子とを含んでなる、宿主細胞。
  17. トランスフェリンに基づくタンパク質の発現を増強するための、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)の配列を含むタンパク質をコードしている組換え遺伝子の使用。
  18. 非2μm系プラスミドタンパク質を製造する方法であって、
    (a)ORM2またはその変異体もしくは断片(この変異体または断片はORM2と同じ機能を有するものであり、該変異体は元のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するものである)の配列を含むタンパク質をコードしている第一の組換え遺伝子と、非2μm系プラスミドタンパク質をコードしている第二の組換え遺伝子とを含む宿主細胞を準備すること、および
    (b)該宿主細胞を、培養培地中、第一および第二の遺伝子の発現を可能とする条件下で培養すること
    を含んでなる、方法。
  19. ORM2またはその変異体もしくは断片(この変異体もしくは断片は元のタンパク質と同じ機能を有するものであり、該変異体は元のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するものである)の配列を含むタンパク質をコードしている第一の組換え遺伝子と、非2μm系プラスミドタンパク質をコードしている第二の組換え遺伝子とを含んでなる、宿主細胞。
  20. 宿主細胞中における非2μm系プラスミドタンパク質の発現を増強するための、ORM2またはその変異体もしくは断片(この変異体もしくは断片は元のタンパク質と同じ機能を有するものであり、該変異体は元のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するものである)の配列を含むタンパク質をコードしている組換え遺伝子の使用。
  21. ORM2またはその変異体もしくは断片(この変異体もしくは断片は元のタンパク質と同じ機能を有するものであり、該変異体は元のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するものである)の配列を含むタンパク質をコードしている第一の組換え遺伝子と、非2μm系プラスミドタンパク質をコードしている第二の組換え遺伝子とを含んでなる、プラスミド。
  22. トランスフェリンの配列および酵母において分泌を引き起こすのに有効なリーダー配列を含んでなる異種タンパク質であって、該リーダー配列がインベルターゼタンパク質由来のリーダー配列の配列を有するものである、異種タンパク質。
  23. 前記トランスフェリン配列が、ヒトトランスフェリン配列またはその変異体もしくは断片であり、該変異体が元のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するものである、請求項22に記載の異種タンパク質。
  24. 前記トランスフェリン配列が、グリコシル化の改変を有するトランスフェリン変異体であり、該変異体が元のタンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するものである、請求項22または23に記載の異種タンパク質。
  25. 前記トランスフェリン配列が、グリコシル化の低下を有するトランスフェリン変異体である、請求項24に記載の異種タンパク質。
  26. 前記トランスフェリン配列が、配列N−X−SまたはN−X−Tを有するアミノ酸グリコシル化コンセンサス配列の付加または除去によって変異している、請求項24または25に記載の異種タンパク質。
  27. 請求項22〜26のいずれか一項に記載の異種タンパク質をコードする、遺伝子。
  28. 真核生物種宿主細胞において請求項27に記載の遺伝子を発現させることを含んでなる、トランスフェリンタンパク質を製造する方法。
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