JP5049489B2 - β−N−アセチルグルコサミニダーゼ阻害活性を有する化合物 - Google Patents
β−N−アセチルグルコサミニダーゼ阻害活性を有する化合物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5049489B2 JP5049489B2 JP2005364111A JP2005364111A JP5049489B2 JP 5049489 B2 JP5049489 B2 JP 5049489B2 JP 2005364111 A JP2005364111 A JP 2005364111A JP 2005364111 A JP2005364111 A JP 2005364111A JP 5049489 B2 JP5049489 B2 JP 5049489B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- formula
- active substance
- compound
- glcnacase
- acetylglucosaminidase
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
- PHEWNIBCGGVQLG-UHFFFAOYSA-N CCC(C(O)=C)OC(C(CO)N(C)C)OC=C=C Chemical compound CCC(C(O)=C)OC(C(CO)N(C)C)OC=C=C PHEWNIBCGGVQLG-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
- 0 CCCC[C@](C)(*(C1C(CC)OC2O[C@@](CC)(C(C(CC)O)OC(*)(CO)NC(C)=O)C3CC3)C1C2NC(C)=*)OC(C(C1O)N(C)C)OC(CC)C1O Chemical compound CCCC[C@](C)(*(C1C(CC)OC2O[C@@](CC)(C(C(CC)O)OC(*)(CO)NC(C)=O)C3CC3)C1C2NC(C)=*)OC(C(C1O)N(C)C)OC(CC)C1O 0.000 description 1
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02A—TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
- Y02A40/00—Adaptation technologies in agriculture, forestry, livestock or agroalimentary production
- Y02A40/90—Adaptation technologies in agriculture, forestry, livestock or agroalimentary production in food processing or handling, e.g. food conservation
Landscapes
- Food Preservation Except Freezing, Refrigeration, And Drying (AREA)
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
- Saccharide Compounds (AREA)
- Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
Description
上記2種の酵素に対する阻害作用物質がいくつか報告されているが、昆虫以外の生物種由来の酵素に対しても阻害するため、特異性がないと報告されてきた。
Pharmacol. Ther., 76, 287−218, (1997)
で示される4種類の化合物を4種類の混合物として単離することに成功した。また、式Iで示される化合物を重メタノール処理後、還元することによって、式(II−1)
および
式(II−2)
で示される化合物の製造に成功するとともに、これらの化合物が昆虫のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼに対して特異的に優れた阻害作用を有することを知見した。本発明者らはまたこれらの化合物が人畜に対して低毒または無毒であることを見出した。
(1)式I
または、式II
で示される化合物、
(2)式I
または、式II
で示される化合物を含有する殺虫性または殺菌性組成物、
(3)農薬用または園芸用であることを特徴とする、上記(2)に記載の組成物、
(4)食品添加剤用であることを特徴とする、上記(2)に記載の組成物、
(5)上記(1)に記載の化合物を含有することを特徴とする食品、および
(6)上記(1)に記載の化合物を産生し得る微生物を培養し、その培養物から上記(1)に記載の化合物を取得することを特徴とする、上記(1)に記載の化合物の製造方法
に関する。
上記式中、X−で表される対アニオンは、アニオンであればどのようなものでもよく、特に限定されないが、具体的には例えば、ハロゲン、水酸基、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオン、重硫酸イオン、シュウ酸イオン、酢酸イオン、蟻酸イオンなどの有機または無機のアニオンが挙げられ、好ましくは炭酸水素イオンである。
式Iで表される4種類の化合物はそれぞれ異性体であり、式(I−1)と(I−2)および式(I−3)と(I−4)は、還元末端の一位がアノマー(α,β)の関係にある。また、式(I−1)と(I−3)および式(I−2)と(I−4)は、還元末端のニ位がエピマーの関係であり、式(I−1)と(I−2)はグルコサミン型、式(I−3)と(I−4)はマンノサミン型になっている。これら4種類のいずれかの異性体およびその任意の混合物はすべて本発明に属するものとする。
上記微生物の培養は、自体公知の方法に従って行われる。培養に使用される培地は、例えば炭素源、窒素源、無機塩等を含む通常の栄養培地を用いて培養を行うことができる。炭素源としては、例えばグルコース、廃糖蜜等を用いることができるが、上記Streptomyces anulatus NBRC13369株を培養する場合には、炭素源としてキチン、好ましくはコロイド状のキチンを加えることが好ましい。窒素源としては、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等をそれぞれ単独もしくは混合して用いることができる。また、無機塩として、例えばリン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム等を使用することができる。この他にも必要に応じて、寒天、アミノ酸、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸、ビオチン、チアミン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に適宜添加することもできるが、上記Streptomyces anulatus NBRC13369株を培養する場合には、富栄養培地では式Iで示される化合物を生産しないこともあるので、適宜培地を選択する必要がある。
培養後、培養液をろ過または遠心分離によって、菌体と培養ろ液を分別する。
得られたろ液を例えば、クロマトグラフィーまたは溶媒抽出などの精製手段に付する。精製手段は、公知の手段であってよく、例えば、活性炭カラムクロマトグラフィー、陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、Sephadex LH−20カラムクロマトグラフィー、Aspipak ES 502Cカラムクロマトグラフィーなどが好ましい例として挙げられる。クロマトグラフィーによって得られる全画分を、生物活性を指標としてスクリーニングする。生物活性としては、GlcNAcase酵素阻害試験による酵素阻害率を指標とする。例えば、そのような酵素阻害試験として、(A)ハスモンヨトウ蛹GlcNAcase阻害試験、(B)子牛腎臓GlcNAcase阻害試験、(C)ヒト胎盤GlcNAcase阻害試験および (D) Aspergillus oryzae GlcNAcase阻害試験が挙げられる。例えば(A)試験に陽性である画分は脱皮する昆虫の成育を阻害する化合物が含まれていることを意味し、そのような阻害作用を示す化合物は脱皮する害虫昆虫の駆除剤として有用である。その他の(B)および(C)試験に陰性である画分は、人畜のGlcNAcaseに対して無害であることを示す。(D)試験に陽性である画分は、芝草の病原菌に抗菌作用を示すことを意味する。したがって、(A)または(D)試験に陽性であり、かつ(B)および(C)試験に陰性である画分は、有害昆虫または有害菌に対して殺虫または殺菌作用を示し、有益動物に安全である化合物を含み得ることを意味するから、このような化合物を含む画分を集める。
式Iの化合物の還元は、自体公知の方法により行われ得る。例えば、白金触媒、パラジウム触媒などを触媒として用いる接触還元、例えば水素化ホウ素ナトリウム(SBH)、チオ硫酸ナトリウムなどの還元剤を使用する還元など常套の還元手段が便宜に採用され得る。
補助剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングルコール、縮合リン酸塩等が挙げられる。
本発明の農園芸用製剤は、上記の成分を混合することにより製造される。これらの製剤は、適宜な濃度に希釈して散布されるか、又は、直接施用される。
酵素阻害試験方法
(イ)ハスモンヨトウ蛹GlcNAcase阻害試験法
最初に、ハスモンヨトウ蛹GlcNAcas酵素溶液を、”K.Kawazu,S.Ohnishi, H.Kanzaki and A.Kobayashi: Z.Naturforsch.51c,738−742(1996)”に記載の方法に従って調製した。具体的には次の通りである。
ハスモンヨトウ蛹50gを、0.01%フェニルチオウレア(PTU)を含む14.3mMクエン酸/リン酸/ホウ酸緩衝液(pH7.0)50mL中で摩砕し、ろ過した。ろ液を20,000g、4℃で30分間遠心分離し、その上清をさらに100,000g、4℃で60分間超遠心分離した。その上清に硫酸アンモニウムを60%飽和となるように徐々に添加し、4℃で1時間撹拌した。その液を20,000g、4℃で15分間遠心分離し、その上清を4℃で透析した。この際の透析外液は0.01%PTUを含む14.3mMクエン酸/リン酸/ホウ酸緩衝液(pH7.0)2Lであった。その透析内液をさらに上記と同じ条件で透析し、得られた透析内液を20,000g、4℃で15分間遠心分離し、その上清をハスモンヨトウ蛹GlcNAcas酵素溶液とした。
また、緩衝液として、643mMクエン酸/リン酸/ホウ酸緩衝液(pH6.0) 24μL、基質として、5mM p−ニトロフェニル N−アセチル−β−D−グルコサミニド水溶液16μL、試験試料水溶液として80μL、あるいは対照区として試験試料を含まない水を含む溶液80μLを加えた混合液に、上記の通りハスモンヨトウ蛹より調製したGlcNAcase酵素溶液の14.3mMクエン酸/リン酸/ホウ酸緩衝液(pH6.0)希釈溶液を40μL添加し、よく撹拌後、37℃、60分間反応させた。反応終了後、1.3M水酸化ナトリウム水溶液100μLを添加し、よく撹拌後、直ちに分光光度計により415nmにおける吸光度(a)を測定した。同時に、試験試料を含まない対照区の吸光度(b)を測定した。ここで、対照区へのGlcNAcase酵素溶液の添加量は415nmにおける吸光度(b)が0.500となるような量とした。GlcNAcase阻害率(%)は、[1−(a)/(b)]×100により計算した。
(イ)の方法に準じて、緩衝液および酵素溶液を以下のように変更した。即ち、GlcNAcase酵素溶液としてbovine kidney 由来β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(SIGMA社)を、緩衝液として0.025%のBSAと250mMのNaClを含む250mMクエン酸緩衝液(pH5.0)を用いた。他の条件は(イ)に同じである。
(イ)の方法に準じて、緩衝液および酵素溶液を以下のように変更した。即ち、GlcNAcase酵素溶液としてヒト胎盤由来β-N−アセチルグルコサミニダーゼ(SIGMA社)を、緩衝液として0.025%のBSAと250mMのNaClを含む250mMクエン酸緩衝液(pH4.3)を用いた。他の条件は(イ)に同じである。
(イ)の方法に準じて、緩衝液および酵素溶液を以下のように変更した。即ち、GlcNAcase酵素溶液としてPenicillium oxalicum由来β-N−アセチルヘキソサミニダーゼ(生化学工業社)を、緩衝液として250mMクエン酸緩衝液(pH4.5)を用いた。他の条件は(イ)に同じである。
(イ)の方法に準じて、緩衝液および酵素溶液を以下のように変更した。即ち、GlcNAcase酵素溶液としてAspergillus oryzae由来β-N−アセチルヘキソサミニダーゼ(SIGMA社)を、緩衝液として0.025%のBSAと250mMのNaClを含む250mMクエン酸緩衝液(pH5.0)を用いた。他の条件は(イ)に同じである。
(イ)の方法に準じて、緩衝液および酵素溶液を以下のように変更した。即ち、GlcNAcase酵素溶液としてJack bean由来β-N−アセチルグルコサミニダーゼ(SIGMA社)を、緩衝液として、0.025%のBSAと250mMのNaClを含む250mMクエン酸緩衝液(pH5.0)を用いた。他の条件は(イ)に同じである。
スクリーニング
糸状菌916菌株、放線菌39菌株を任意に集め、適宜の培地、培養条件にて培養し、その培養物(培養ろ液、または、培養物の有機溶媒抽出物;有機溶媒としてアセトン/メタノール混合溶媒(1:1、v/v)またはn−ブタノールを使用)を、酵素阻害試験に供した。一次スクリーニングとして、昆虫ハスモンヨトウ蛹由来のGlcNAcaseを阻害する試料を選抜した。次に、これらの活性試料を、ほ乳類である子牛腎臓由来β-N−acetylglucosaminidase(GlcNAcase)阻害試験に供し、本酵素を阻害しない試料を選抜した。このようなスクリーニング系により、昆虫のGlcNAcaseを特異的に阻害する活性菌株、Streptomyces anulatus NBRC13369株(研究用に購入した株)を見出した。
活性物質の発酵生産
全ての培地は、使用前に120℃、20分間の滅菌操作を行った。
(i)菌株保存培地
菌株保存培地として、L−Asparagine 1g、Glycerol 10g、 K2HPO41g、蒸留水1L、FeSO4・7H2O 0.001g、MnCl2・4H2O 0.001g、ZnSO4・7H2O 0.001g、寒天20gからなる培地を用いた。なお、滅菌前の培地はpH7.2に調整した。
(ii)発酵生産
Streptomyces anulatus NBRC13369株保存スラントの一白金耳を、glucose10g、NZ Amine typeA 2.0g(和光純薬工業株式会社製)、yeast extract 1.0 g(ナカライ社製)、beaf
extract 1.0g(DIFCO社製)、蒸留水1Lよりなる液体培地10mL(pH7.0)に接種し、28℃、300strokes/minにて二日間往復振盪培養し、種培養とした。次いで、生産培地として、コロイダルキチン5.0g、NZ Amine typeA 2.0g(和光純薬工業株式会社製)、yeast extract 1.0g(ナカライ社製)、beaf extract 1.0g(DIFCO社製)、蒸留水1Lからなる培地を1L坂口フラスコに300mLずつ分注し、前記種培地全量を添加し、28℃、123strokes/minの条件下で14日間培養した。培養終了後、培養液6.9Lをろ過し、菌体と培養ろ液に分別した。
活性物質の単離
(i)活性炭カラム
前記培養ろ液のうち5.5Lを、カラムクロマトグラフ用活性炭素(ナカライ社製)のカラム(6.5×33cm)に供し、1.1Lの脱塩水で洗浄後、0.01%のHClを含む30%アセトン2.5Lで有効成分を溶出し、阻害活性を示す画分を減圧濃縮してアセトンを留去し、1.4Lの水溶液を得た。この水溶液の一部を凍結乾燥したところ、この水溶液中の粗活性物質の総重量は4.7gと算出された(茶褐色吸湿性)。
(ii)陽イオン交換カラムおよび活性炭カラム(脱塩)
上記粗活性物質が溶解した水溶液全量(1.4L)を、Amberlite CG−50(H+型)のカラム(6.5×31cm)に供し、2Lの脱塩水で洗浄後、0.1MのNaCl水溶液で有効成分を溶出し、阻害活性を示す画分を合一した。この合一画分を、カラムクロマトグラフ用活性炭素(ナカライ社製)のカラム(3.4×11cm)に供し、400mLの脱塩水で洗浄後、0.01%のHClを含む30%アセトン500mLで有効成分を溶出し、阻害活性を示す画分を減圧濃縮してアセトンを留去し、75mLの水溶液を得た。この水溶液全量を凍結乾燥し、茶褐色吸湿性の粗活性物質215mgを得た。
(iii)Sephadex LH−20カラム
上記粗活性物質全量(215mg)を、少量のメタノールに溶解し、あらかじめメタノールで平衡化したSephadex LH−20(ファルマシア社製)のカラム(1.0×50cm)に供し、メタノールで展開して阻害活性を示す画分を濃縮乾固し、茶褐色吸湿性の粗活性物質97.8mgを得た。
(iv)Asahipak ES 502C HPLC
上記粗活性物質全量(97.8mg)を860mLの水に溶解し、12回に分けて以下のカラムクロマトグラフィーに供した。即ち、あらかじめ7.5mM炭酸アンモニウム水溶液で平衡化した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用カラム(Shodex社製、Asahipak ES 502C 7C、7.6×100mm、流速0.8mL/ min)に、上記水溶液約70μLを供し、7.5mM炭酸アンモニウム水溶液で有効成分を溶出し、阻害活性を示す画分を凍結乾燥に供する事で、純粋な活性物質を白色粉末として40mg(分子式:C33H59O20N4、分子量:831 FAB−MS(positive)m/z 831 (M)+)得た。この化合物を、以下活性物質Aと称する。
活性物質Aの構造解析
活性物質Aは、式(I−1)、式(I−2)、式(I−3)、および式(I−4)で示され、n=2である少なくとも4種類の異性体の平衡混合物である。以下に、構造解析に関する情報を示す。
(i)活性物質Aの糖組成分析
活性物質A(20μg)をメタノール分解に供し、その分解産物をN−アセチル化後、TMS誘導体化した。これをGC−FID分析に供したところ、1分子の活性物質Aから、約2分子のGlcNAc(N−アセチルグルコサミン)が検出された。よって、活性物質Aの構成糖として、GlcNAcの存在が明らかとなった。
(ii)活性物質Aの還元末端分析(ピリジルアミノ化)
活性物質Aを還元的ピリジルアミノ化(PA化)反応に供し、還元末端をPA化したPA化活性物質Aを調製した。これを酸加水分解し、N−アセチル化後、順相HPLC、逆相HPLC分析に供した。その結果、PA−GlcNAcが同定された。よって、活性物質Aの還元末端の糖残基をGlcNAcと同定した。
(iii)活性物質AのNMR分析
36mgの活性物質Aを750μlのCD3OD(Dは重水素)に溶解し、30℃、 2日間のNMR分析に供したが、与えるスペクトルが非常に複雑であり、以下の情報が得られたのみであった。
(1) 3つのN−アセチル基が存在する。
(2) アノメリックプロトンが4種類存在することから考えて、重合度4のオリゴ糖である。
興味深いことに、本実験終了後の活性物質AをFAB−MS分析に供したところ、その分子量はm/z 832 [M]+ と観測された。つまり、分子量が1増加した。NMR測定溶媒にCD3ODを用いている事実から考えて、活性物質Aの一つのプロトンが重水素で置換されている可能性が強く示唆された。
次に、活性物質Aが還元性のオリゴ糖である事実から、これをSBH還元に供し、対応するアルジトール体を調製して、構造解析を進めた。なお、以降の構造解析実験には、重水素化された活性物質A(分子量832)を用いている。
活性物質Aアルジトール体の調製
5.18mgの活性物質AをSBH還元に供し、その反応物を活性炭カラムにて粗精製後、陽イオン交換HPLC、グラファイトカーボンHPLCにて順次精製したところ、対応するアルジトール体と考えられる2種類の化合物、活性物質A−1−ol(0.86mg)、および、活性物質A−2−ol(2.88mg)が得られた。つまり、活性物質Aは2種類の還元体を与える。よって、インタクトな活性物質Aは少なくとも4種類の異性体の平衡混合物であり、この平衡が還元反応により止まり、2種類の還元物を与えたものであると考えられる。
40μgの活性物質A−1−ol、40μgの活性物質A−2−olをそれぞれメタノール分解に供し、その分解産物をN−アセチル化後、TMS化し、これをGC−FID分析に供した。その結果、活性物質A−1−olからは、GlcNAc(N−アセチルグルコサミン)およびManNAc(N−アセチルマンノサミン)アルジトールが2:1の比率で検出された。一方、活性物質A−2−olからは、GlcNAcおよびManNAcアルジトールが1:1の比率で検出された。よって、これらの2種類のアルジトール体は、還元末端由来のアルジトール部分の構造が異なっている事実が判明した。さらに、検出されたGlcNAcの比率がこれらの2種類のアルジトール間において異なる事実から考えて、グリコシド結合の安定性も異なる可能性が強く示唆された。
これら2種類のアルジトール体のうち、量的に多い活性物質A−2−olをLR−FAB MS、HR−FAB MS分析に供し、以下の結果を得た。
活性物質A−2−ol;LR−FAB MS m/z 834 [M]+,HR−FAB MS calcd for C33H60D1O20N4 [M]+ 834.3942,found 834.3962
つまり、活性物質Aの1重水素置換体のアルジトール体に一致する分子量および組成式が得られた。
次に、活性物質A−2−olのNMR解析を行った。
活性物質A−2−ol、2mgをCD3OD、D2O中にて各種NMR測定に供し、以下の構造式を得た。
次に、量的に少ない活性物質A−1−ol、0.7mgをD2O中にて各種NMR測定に供し、以下の構造式
つまり、活性物質A−1−olは、N−triMe−glucosamineにGlcNAc−(β1,4)−GlcNAc−(β1,4)−ManNAcがα−1−4結合した化合物の還元体であり、さらに、そのManNAcアルジトール部分の2位のメチンプロトンは重水素で置換されている事実が判明した。
(1)N−triMe−glucosamine残基を含むオリゴ糖として、天然から初めて単離された化合物である。
(2)異常糖部分であるN−triMe−glucosamine自体が、これまでに天然から報告された例はない。
(3)還元末端のN−acetylglucosamine部分が自然条件下で異性化し得ることを実証した初めての例である。
活性物質Aの酵素阻害活性
重水素置換が生じていない、インタクトな活性物質Aを用いて、各種生物種由来GlcNAcaseに対する酵素阻害活性の有無を判定した。対照化合物として放線菌Streptomyce amakusaensisが生産するnagstatinを用いた。酵素阻害試験方法は試験例1の方法と同じである。
表4に測定結果を示す。表4から明らかなように、活性物質Aは昆虫、糸状菌由来のGlcNAcaseを特異的に阻害するのに対し、既知のGlcNAcase阻害剤であるnagstatinは、昆虫、糸状菌、ほ乳類、植物由来のGlcNAcaseを広く阻害する傾向を示した。このような狭い阻害特異性をしめすGlcNAcase阻害剤はこれまでに報告がないため、活性物質Aは、その構造、生理活性の両面で新規化合物であるといえる。
Claims (6)
- 農薬用または園芸用であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
- 食品添加剤用であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
- 請求項1に記載の化合物を含有することを特徴とする食品。
- 請求項1に記載の化合物を含有することを特徴とする昆虫のβ−N−アセチルグルコサミニダーゼ阻害剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005364111A JP5049489B2 (ja) | 2005-12-16 | 2005-12-16 | β−N−アセチルグルコサミニダーゼ阻害活性を有する化合物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005364111A JP5049489B2 (ja) | 2005-12-16 | 2005-12-16 | β−N−アセチルグルコサミニダーゼ阻害活性を有する化合物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007161690A JP2007161690A (ja) | 2007-06-28 |
JP5049489B2 true JP5049489B2 (ja) | 2012-10-17 |
Family
ID=38244995
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005364111A Expired - Fee Related JP5049489B2 (ja) | 2005-12-16 | 2005-12-16 | β−N−アセチルグルコサミニダーゼ阻害活性を有する化合物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5049489B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105277649A (zh) * | 2015-11-11 | 2016-01-27 | 湖南农业大学 | 一种快速检测茶树中茶氨酸和谷氨酰胺水解酶活力的方法 |
Family Cites Families (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA1320165C (en) * | 1987-08-06 | 1993-07-13 | Microlife Technics, Inc. | Process for producing novel yeast and mold inhibiting products |
US4877615A (en) * | 1988-09-23 | 1989-10-31 | Microlife Technics, Inc. | Antifungal product |
EP0562003B2 (en) * | 1990-12-10 | 2015-04-01 | Danisco US Inc. | Improved saccharification of cellulose by cloning and amplification of the beta-glucosidase gene of trichoderma reesei |
JPH0791141B2 (ja) * | 1990-12-11 | 1995-10-04 | コープケミカル株式会社 | 土壌病害防除資材及びこれを用いた土壌病害防除方法 |
JP2526358B2 (ja) * | 1992-07-15 | 1996-08-21 | コープケミカル株式会社 | 土壌病害防除資材 |
JP4153584B2 (ja) * | 1998-04-13 | 2008-09-24 | 住友金属鉱山株式会社 | 抗菌剤とその製造方法及び抗菌処理方法 |
JP2003040711A (ja) * | 2001-07-25 | 2003-02-13 | Sumitomo Chem Co Ltd | 抗菌剤 |
WO2005102059A1 (ja) * | 2004-04-23 | 2005-11-03 | Asahi Breweries, Ltd. | 植物糸状菌病防除剤、植物糸状菌病の防除方法および肥料 |
-
2005
- 2005-12-16 JP JP2005364111A patent/JP5049489B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2007161690A (ja) | 2007-06-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
AU607166B2 (en) | Agents for combating pests and plant treatment agents | |
Rabea et al. | Insecticidal and fungicidal activity of new synthesized chitosan derivatives | |
TW294672B (ja) | ||
TWI251465B (en) | A novel strain of streptomyces for controlling plant diseases | |
CN103889464B (zh) | 具有壬酸的抗微生物制剂 | |
JPH0539207A (ja) | 植物有害生物防除剤 | |
MARQUES et al. | Antimicrobial and insecticidal activities of cashew tree gum exudate | |
KR20190054871A (ko) | 트레베지아 팔마타(Trevesia palmata) 추출물, 이의 분획물 또는 이로부터 분리한 화합물을 유효성분으로 함유하는 식물병 방제용 조성물 및 상기 조성물을 사용한 식물병 방제 방법 | |
JPH032876B2 (ja) | ||
KR101802911B1 (ko) | 코지산을 유효성분으로 함유하는 뿌리혹선충 방제용 조성물 및 이의 용도 | |
US4714614A (en) | Process for inducing suppressiveness to fusarium vascular wilt diseases | |
JP5049489B2 (ja) | β−N−アセチルグルコサミニダーゼ阻害活性を有する化合物 | |
KR20190050037A (ko) | 치마 버섯 균주 배양 추출물을 함유하는 항균성 조성물 및 이의 제조 방법 | |
JP2664464B2 (ja) | アイツリン―aを用いるアフラトキシン汚染の防除方法 | |
JP4636623B2 (ja) | N−アセチルグルコサミニダーゼ阻害活性を有する化合物 | |
US4868203A (en) | Bacterial substance and pharmaceutical composition thereof | |
ApSimon et al. | Mycotoxins from Fusarium species: detection, determination and variety | |
EL-Ashmony | Biological and chemical control of sunflower basal stem rot caused by Sclerotium rolfsii | |
US20140128257A1 (en) | Pesticidal compositions comprising 4,5-dihydroxyindan-1-one | |
JPH06276892A (ja) | 昆虫寄生性線虫の増殖用培地 | |
JP2683799B2 (ja) | 昆虫寄生性線虫増殖用培地 | |
KR20240020308A (ko) | 살선충 활성을 갖는 신규한 버크홀데리아 속 균주 및 이의 용도 | |
JPS6340197B2 (ja) | ||
DE3607287A1 (de) | Verfahren zur herstellung von borrelidin und seine verwendung zur schaedlingsbekaempfung | |
JPH0248234B2 (ja) | Koseibutsushitsunoseizoho |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080701 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20090422 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20111018 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20111125 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20120321 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120412 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20120710 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20120723 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150727 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |