JP5048253B2 - 多孔質構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質構造体に関し、更に詳しくは、耐久性に優れ、更に酸化触媒及び有機合成触媒として優れた機能を発揮する多孔質構造体に関する。
金属をセラミックス等の多孔質基体に担持して触媒体として用いる場合、通常、担持された金属は多孔質基体表面上で粒子状となり触媒としての機能を果たしている。このような金属の担持方法としては種々の方法が開示されているが、通常、担持されて粒子状となった金属は、粒径が1nm以上であり、金属格子構造を有するものである(例えば、特許文献1〜4参照)。
上述のような、多孔質基体表面に、粒径1nm以上で金属格子構造を有する金属粒子が存在する触媒体は、高温下で使用した場合、次第に触媒活性が低下するという問題があった。
特開2004−018361号公報 特開2005−187266号公報 特開2005−246177号公報 特開平2−290258号公報
上記触媒活性の低下は、金属原子が粒径1nm以上の粒子として存在するため、高温下で使用した場合に金属の蒸散・再凝集が起こりやすく、結果として粒径が大きくなるために生じるものである。このため、金属には、より蒸散・再凝集し難い性質が求められる。しかし、触媒金属の性能を向上させるためには、触媒金属の粒径を小さくする必要があるのに対し、粒径の小さい金属は、蒸気圧が低いため蒸散・再凝集し易く、触媒金属の性能向上と同時に、蒸散・再凝集し難い性質を実現することは困難であった。そのため、基体表面又は基体内部に、金属をより安定に定着させ、金属が蒸散・再凝集し難い触媒体の開発が望まれていた。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れ、更に酸化触媒及び有機合成触媒として優れた機能を発揮する多孔質構造体を提供することを特徴とする。
上記課題を達成するため、本発明によって以下の多孔質構造体が提供される。
[1] 二酸化珪素を主成分とする3次元網目構造の多孔質骨格に鉄が含有されてなる多孔質構造体であって、前記多孔質骨格の気孔径が50nm以下であり、前記鉄が、0.1〜質量%含有され、粒子径1nm以上の粒子状の前記鉄の含有率が、鉄全体の5%以下である多孔質構造体。
[2] 透過電子顕微鏡(TEM)観察により、粒子径1nm以上の前記粒子状の鉄が観測されない[1]に記載の多孔質構造体。
[3] エックス線回折(XRD)測定による前記鉄由来のシグナル強度が、非結晶質二酸化珪素由来のシグナル強度に対し1/10以下である[1]又は[2]に記載の多孔質構造体。
[4] エックス線回折(XRD)測定による前記鉄由来のシグナル強度が、検出限界以下である[3]に記載の多孔質構造体。
[5] アルコキシシランを含有するゲル化材料のゲル化物を凍結乾燥させて得られた[1]〜[4]のいずれかに記載の多孔質構造体。
[6] 前記ゲル化物を凍結乾燥させたものを更に熱処理して得られた[5]に記載の多孔質構造体。
[7] 触媒体として使用する[1]〜[6]のいずれかに記載の多孔質構造体。
[8] 吸着剤として使用する[1]〜[6]のいずれかに記載の多孔質構造体。
本発明の多孔質構造体によれば、二酸化珪素を主成分とし気孔径50nm以下の3次元網目構造の多孔質骨格に、0.1〜質量%の鉄が含有され、透過電子顕微鏡(TEM)により観察される粒子径1nm以上の前記鉄の粒子が、鉄全体の5%以下であるため、耐久性に優れ、更に酸化触媒及び有機合成触媒として優れた機能を発揮することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
本発明の多孔質構造体は、二酸化珪素を主成分とする3次元網目構造の多孔質骨格に鉄が含有されてなる多孔質構造体であって、上記多孔質骨格の気孔径が50nm以下であり、上記鉄が、0.1〜質量%含有され、粒子径1nm以上の粒子状の上記鉄の含有率が、鉄全体の5%以下である。このように、多孔質骨格に所定量の鉄が含有されていながら、粒径1nm以上の粒子の含有率が低いため、本発明の多孔質構造体を触媒体、吸着剤等として高温下で使用しても、鉄の蒸散・再凝集が起こり難く、粒径が大きくなることもない。そのため、本発明の多孔質構造体を触媒体、吸着剤等として使用した場合には、耐久性に優れたものとなる。
(1)多孔質構造体:
(1−1)多孔質骨格;
本発明の多孔質構造体は、二酸化珪素を主成分とする3次元網目構造の多孔質骨格に鉄が含有され、上記多孔質骨格の気孔径が50nm以下である。二酸化珪素を主成分とするということは、多孔質骨格中に二酸化珪素が60質量%以上含有されることを意味する。多孔質骨格中の二酸化珪素の含有率は、80〜99.5質量%が好ましく、95〜97.5質量%が更に好ましい。二酸化珪素以外の副成分としては、第二の金属酸化物成分としてアルミナやジルコニア等を挙げることができる。また、二酸化珪素を主成分とする3次元網目構造の多孔質骨格は、二酸化珪素が多方向へ数珠状に結合し、3次元網目構造を形成し、二酸化珪素を有する骨格部分と、骨格部分の間に形成される空間(孔)部分とを有する構造である。例えば、アルコキシシランと水とがゲル化反応し、凍結乾燥して得られるクリオゲルのような構造体が挙げられる。また、本発明の多孔質構造体において、3次元網目構造というときは、セラミック粒子や金属粒子等の粗大な骨材粒子が焼結等により結合されて形成されるような多孔体構造ではなく、二酸化珪素のゾル粒子が数珠状につながり、きわめて微細な3次元の網目が形成され、その二酸化珪素による網目により気孔が形成されているような構造をいう。
上記多孔質骨格の気孔径は50nm以下であり、1〜50nmであることが好ましく、2〜10nmであることが更に好ましい。気孔径が50nm以下というときは、最大気孔径が50nm以下であること、すなわち、50nm以下の範囲で気孔径分布が形成されていることを示す。そして、気孔径が1〜50nmというときは、最大気孔径が50nm以下であり最小気孔径が1nm以上であること、すなわち、1〜50nmの範囲で気孔径が分布していることを示す。50nmより大きいと、比表面積が小な多孔体となり、また反応ガスに対する吸着力が低下する問題がある。また、気孔径分布は、窒素吸着等温線を日本ベル社製BELSORP−miniにてサンプル温度77Kで測定し、得られた吸着等温線をBJH法にて解析することによって得た。サンプルは加熱式前処理装置BELPREP−flowにて、窒素雰囲気下110℃にて2時間処理したものを用いた。
(1−2)多孔質骨格に含有される鉄;
本発明の多孔質構造体は、二酸化珪素を主成分とする多孔質骨格に鉄が含有されるものである。ここで、多孔質骨格に鉄が含有されているというときは、鉄原子が多孔質骨格の内部及び/又は表面部に存在している状態をいう。例えば、鉄原子が金属構造を形成して粒子となり、その粒子が多孔質骨格内及び/又は多孔質骨格表面に分散している状態や、鉄原子が金属構造を形成せずに、多孔質骨格と化学的に結合し、多孔質骨格内に原子及び/又はイオン状の鉄が分散している状態等を挙げることができる。多孔質骨格の表面部分には、上記鉄原子が露出した状態であることが、触媒活性を向上させる点で好ましい。
本発明の多孔質構造体に含有される鉄は、多孔質構造体全体に対して0.1〜20質量%であり、0.5〜20質量%であることが好ましく、2.5〜5質量%であることが更に好ましい。20質量%より多いと、粒子径1nm以上となる鉄原子が多くなり、金属量に対する触媒性能比が悪化することがあり、0.1質量%より少ないと酸化触媒又は有機合成触媒として十分に機能し難くなることがある。多孔質構造体中の鉄の含有率は、エネルギー分散型エックス線元素分析(EDS)測定により得ることができる。
本発明の多孔質構造体に含有される鉄は、粒子径1nm以上の粒子状の鉄の含有率が鉄全体の5%以下であり、1%以下であることが好ましい。そして、透過電子顕微鏡(TEM)観察により、粒子径1nm以上の粒子状の鉄が観測されないことが更に好ましい。粒子径1nm以上の粒子状の鉄の含有率が鉄全体の5%を超えると、金属量に対する触媒性能比が悪化する。また、透過電子顕微鏡(TEM)観察により、粒子径1nm以上の粒子状の鉄が観測されない状態であれば、高温下で使用しても、鉄の蒸散・再凝集を特に抑制することができるため、粒子状の鉄が発生しないか、又は粒子状の鉄が存在してもその鉄の粒径が大きくならないため、触媒活性の低下の防止効果が特に大きい。また、粒子径1nm以上の粒子状の鉄が存在する場合でも、その粒径の上限は、100nm以下であることが好ましく、20nm以下であることが更に好ましい。上記鉄の粒子径の測定は、いずれも透過電子顕微鏡(TEM)観察により行い、数平均値である。ここで、透過電子顕微鏡(TEM)観察を行うときの条件としては、使用する透過電子顕微鏡(TEM)は、日本電子(株)製JEM−2010であり、測定条件は加速電圧200kVである。
本発明の多孔質構造体に含有される鉄は、エックス線回折(XRD)測定によるシグナル強度が、非結晶質二酸化珪素由来のシグナル強度に対し1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることが更に好ましく、検出限界以下であることが特に好ましい。XRD測定によるシグナル強度が非結晶質二酸化珪素由来のシグナル強度に対し1/10より大きいと、鉄原子が大きな金属構造を形成していることになり、高温下で使用した場合に、鉄の蒸散・再凝集が起こり易く、粒径が大きくなることがある。また、XRD測定によるシグナル強度が検出限界以下であると、鉄原子が金属格子構造をほぼ形成していないことになる。これにより、高温下で使用しても、鉄の蒸散・再凝集を特に抑制することができるため、粒子状の鉄が発生しないか、又は粒子状の鉄が存在してもその鉄の粒径が大きくならないため、触媒活性の低下の防止効果が特に大きい。ここで、エックス線回折測定における検出限界というときは、エックス線回折装置株式会社リガク製 RINT−2550で測定したときの検出限界又は、この装置と同程度の解像度有するエックス線回折装置で測定したときの検出限界をいう。
(2)多孔質構造体の製造方法:
本発明の多孔質構造体は、アルコキシシランを含有するゲル化材料のゲル化物を凍結乾燥することにより得ることができる。このような方法により得られた多孔質構造体は、ゲル化物を凍結乾燥させて得ることより、クライオゲル(クリオゲル)と称されることがある。また、得られた、ゲル化物を凍結乾燥させたものを、更に熱処理したものを本発明の多孔質構造体としてもよい。本発明の多孔質構造体の製造方法は、主として、ゲル化工程、乾燥工程及び熱処理工程を有する製造方法であることが好ましい。以下、本発明の多孔質構造体の製造方法を、(2−1)ゲル化工程、(2−2)乾燥工程、(2−3)熱処理工程に分けて説明する。
(2−1)ゲル化工程;
ゲル化工程では、まず、尿素、鉄源である有機酸鉄(例えば、酢酸鉄、乳酸鉄)、及び二酸化珪素(シリカ)源であるアルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS))を溶媒である水に溶解し、ゲル化材料を得ることが好ましい。鉄源としては、酢酸鉄が好ましく、シリカ源としてはテトラメトキシシランが好ましい。また、鉄源として、アセチルアセトナト鉄(III)等を使用してもよい。また、ゲル化材料には、添加物として、さらに、ポリエチレングリコール(PEG)等を含有させてもよい。
ゲル化材料中の尿素の含有率は、1〜15質量%であることが好ましく、6〜12質量%であることが更に好ましい。15質量%より多いと溶媒中へ溶解しないことがあり、1質量%より少ないと二酸化珪素ゲルの骨格形成が不十分となることがある。また、ゲル化材料中の、鉄(鉄原子)と、アルコキシシランを二酸化珪素換算したときの質量(含有されるアルコキシシランから生成する二酸化珪素の質量)との合計質量に対する、鉄の質量比率(鉄/(鉄+二酸化珪素))が、0.1〜20質量%であることが好ましく、2.5〜5質量%であることが更に好ましい。鉄の質量比率が0.1質量%より小さいと多孔質構造体の触媒機能が低下することがあり、20質量%より大きいと粒子径1nm以上となる鉄原子が多くなり、金属量に対する触媒性能比が悪化することがある。尚、多孔質骨格にアルミナ、ジルコニア等を含有させる場合には、上記「鉄の質量比率」は、鉄、二酸化珪素、アルミナ及びジルコニア等の合計質量に対する鉄の質量比率(鉄/(鉄+二酸化珪素+アルミナ+ジルコニア等))となる。また、ゲル化材料中のアルコキシシランと水の質量合計に対するアルコキシシランの質量比率は、TMOSを用いた場合15〜50質量%であることが好ましく、35〜40質量%であることが更に好ましい。50質量%より多いと、TMOSのゲル化が完了しないことがあり、15質量%より少ないと、水分量が多くなり、ゲル化材料をゲル化するときに、ゲル体積が増えることになるため、ゲルのネットワーク構造が疎になり、強度が発現し難くなることがある。
次に、上記ゲル化材料を加熱してゲル化反応を行い、ゲル化物を得る。加熱温度は、30〜90℃が好ましく、45〜55℃が更に好ましい。30℃より低いとゲル化反応が進行し難いことがあり、90℃より高いと加熱が不均一となり、ゲル化が不均一に進行することがある。本発明の多孔質構造体の製造方法においては、TMOSのようなシリカ源を加水分解することにより二酸化珪素をナノ粒子として発生させ、二酸化珪素粒子間の結合と二酸化珪素の析出により微細なネットワークを形成させ、ゲル化させる。ここで、ゲル化反応は、TMOSと水との反応であり、TMOSの2分子間を結合するものである。そして、TMOS間の結合反応(ゲル化反応)が液相で進行し、結合を繰り返すことで、図1(a)に示すように、中間過程としてシリカナノ粒子(ゾル)10を生じる。このシリカナノ粒子(ゾル)10は、図1(b)に示すように、数・サイズ共に成長し続け、ネットワーク状に結合し、図1(c)に示すゲル骨格構造(多孔質骨格構造)20を形成する。ゲル化時間は、水の量が少ないほど、また、鉄源の量が少ないほど早い傾向がある。ここで、図1(a)〜図1(c)は、本発明の多孔質構造体を製造する方法における、ゲル化工程(ゲル化過程)を模式的に示す図であり、図1(a)は、シリカナノ粒子(ゾル)の分散状態を示す模式図であり、図1(b)は、シリカナノ粒子(ゾル)がネットワーク状に結合する状態を示す模式図であり、図1(c)は、ゲル骨格構造を示す模式図である。
(2−2)乾燥工程
乾燥工程では、上記ゲル化工程で得られたゲル化物(湿潤ゲル)を冷却、凍結し、凍結確認後、更に凍結状態において減圧し、減圧(真空)下で1〜3日保持し、凍結乾燥する。これにより本発明の多孔質構造体を得ることができる。ゲル化物を凍結乾燥させるときには、冷却温度を−80℃以下、且つ真空度を10Pa以下とすることが好ましい。冷却温度が−80℃を超過する場合、湿潤ゲルの凍結乾燥が不完全となり、乾燥収縮による微構造の破壊が発生することがあるためである。また、ゲル化物(湿潤ゲル)の初期冷却には、フリーザーを用いてもよいが、ドライアイス−エタノールや液体窒素等の冷媒で、できるだけ瞬間冷却することが、凍結時間の短縮及びゲル化物(湿潤ゲル)の凍結時における構造破壊を抑制することができるため好ましい。また、真空度は、真空に近いほど好ましい。乾燥完了時の真空度が10Paを超過していると、凍結乾燥が完了しておらず、乾燥機から取り出した後に乾燥収縮による微構造の破壊が発生することがある。通常乾燥では、ゲル化過程で形成した微細なネットワークが乾燥時の表面張力により破壊されてしまう。これを防止するため、本製造方法では、凍結乾燥法を用いることにより、表面張力による構造破壊抑止し、微細なネットワークを維持したままで乾燥ゲル(クリオゲル)である多孔質構造体を得ることができる。
(2−3)熱処理工程
上記乾燥工程において得られた乾燥ゲルを、更に熱処理して本発明の多孔質構造体としてもよい。熱処理工程では、鉄源として投入した有機酸鉄を加熱により自己分解させ、鉄(酸化物を含む)に還元する。還元温度は、鉄合物の自己分解温度(例えば、酢酸鉄では200〜400℃)以上の温度を必要とするため、通常、大気雰囲気下、500℃、1時間で処理を行う。また、熱処理直後では、鉄表面が部分的に酸化鉄になっているため、水素還元処理を施し、完全な鉄に還元することにより、触媒活性のより高い多孔質構造体(Fe/SiOクリオゲル)を得ることができる。
上記、本発明の多孔質構造体の製造方法は、例えば臨界点以上の高温・高圧を用いる超臨界乾燥を行わないため、安全性に優れているとともに、低温・低圧下での凍結乾燥を採用することにより、超臨界乾燥よりも省エネであり、且つ湿潤ゲルの液相中の水をアルコールで置換することなくそのまま乾燥(凍結乾燥)することができるため、工程や設備の簡略化が可能であるため、コストを大幅に削減することができる。
上述の方法で得られる本発明の多孔質構造体は、高表面積、高気孔率及び高耐熱性を有するだけでなく、耐水性であり、且つ水との接触で構造破壊を起こさない多孔質構造体(クリオゲル)である。
本発明の多孔質構造体は、触媒体として使用し、臭気成分を燃焼除去する酸化触媒や、アセトン等を合成する有機合成触媒として使用することが好ましい。本発明の多孔質構造体は、耐久性に優れた触媒体として使用することが可能である。
また、本発明の多孔質構造体は、燃料用途の各種ガス類やアルデヒド類などのVOCを吸着するための、吸着剤として使用することが好ましい。本発明の多孔質構造体は、耐久性に優れた吸着剤として使用することが可能である。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
脱イオン水22mlと、尿素12g、ポリエチレングリコール(PEG)1gを混合し、溶液が透明になるまで撹拌した。次に、酢酸鉄(和光純薬社製)を、0.48g混合し、溶液が茶透明になるまで撹拌した。その後、密封した状態で、0℃の水冷バスにて15分間撹拌冷却し、原料溶液1を得た。
テトラメトキシシラン(TMOS)(信越化学社製)15.2gを密封した状態で、5℃の水冷バスにて15分間撹拌冷却し、原料溶液2を得た。
上記原料溶液1と原料溶液2とを混合し、密封した状態で、0℃の水冷バスにて60分間撹拌し、ゲル化材料を得た。
得られたゲル化材料を、50℃の湯バスにて1時間加熱し、50℃のオーブンにて23時間保持し、その後、室温まで冷却し、ゲル化物を得た。
得られたゲル化物の密封を解き、液相を捨てた後に、乾燥を防ぐためにビニール袋に封入し、ゲル化物(湿潤ゲル)を粉砕し、液体窒素に漬け冷凍する。その後、ビニール袋から凍結ゲル化物を取り出し、真空凍結乾燥機に投入し、凍結乾燥を行い、多孔質構造体を得た。真空凍結乾燥の条件は、チラー部温度;−80℃、96時間乾燥させた。乾燥完了時の圧力は10Pa以下であった。真空凍結乾燥機としては、東京理化器機株式会社製、商品名;FDU−810を使用した。凍結乾燥機に接続する真空ポンプにはULVAC社製、GCD−051Xを使用した。
上記多孔質構造体を、焼成炉を使用して500℃で熱処理し、熱処理を施した最終的な多孔質構造体(Fe/SiOクリオゲル触媒)を得た。熱処理条件は、昇温速度;100℃/Hr、温度;500℃、保持時間;10時間、雰囲気;空気開放雰囲気とした。焼成炉としては、増田理化工業株式会社社製、商品名;NMF−215Bを使用した。
(比較例1)
酢酸鉄(和光純薬社製)を脱イオン水3mlに対し0.48g混合し、溶液が茶透明になるまで撹拌した。更に、球状シリカ粉末(扶桑化学株式会社製、商品名;クオートロンSP−03B)6.0gを添加、混合した。得られた溶液を、液体窒素に漬けて凍結させ、真空凍結乾燥機に投入し、凍結乾燥を行った。真空凍結乾燥の条件は、上記実施例1における、真空凍結乾燥の条件と同様とした。
得られた真空凍結乾燥物を500℃で熱処理し、粉末を得た。熱処理条件は、上記実施例1における、熱処理条件と同様とした。得られた粉末を、500℃で水素雰囲気下にて更に熱処理し、触媒体(Fe/SiO含浸法触媒)を得た。熱処理条件は、500℃保持時間を2時間とした以外は、上記熱処理条件と同様とした。
得られた実施例1の多孔質構造体及び比較例1の触媒体について、以下に示す、透過電子顕微鏡(TEM)観察、エネルギー分散型エックス線元素分析(EDS)測定、エックス線回折(XRD)測定、気孔径測定、及びメタン酸化触媒能評価を行った。
(透過電子顕微鏡(TEM)観察)
実施例1の多孔質構造体及び比較例1の触媒体を、下記条件によりTEM観察した結果(写真)を図2(実施例1)、及び図3(比較例1)に示す。図2に示すように、実施例1の多孔質構造体100は、二酸化珪素を主成分とする骨格部分31と空間(孔)部分32とを有するが、骨格部分31の表面には鉄の粒子を確認することができない。これに対し、図3に示す比較例1の触媒体101は、二酸化珪素粒子33の表面に鉄粒子34を確認することができる。
透過電子顕微鏡(TEM)観察条件:
測定装置;日本電子(株)社製、JEM−2010
測定条件;加速電圧200kV
サンプル調製;乳鉢にて試料を粉砕し、蒸留水にて希釈、超音波分散処理後、メッシュに採取した。メッシュは1日自然乾燥した。
(エネルギー分散型エックス線元素分析(EDS)測定)
実施例1の多孔質構造体及び比較例1の触媒体を、下記条件によりEDS測定した結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の多孔質構造体にも、比較例1の触媒体にも、同程度の質量割合で鉄が含有されていることがわかる。尚、表1において、アルミニウムは観察用グリッドに含まれる物質であるため検出されたものである。
エネルギー分散型エックス線元素分析(EDS)測定条件:
測定装置;NORAN INSTRUMENTS 社製、VANTAGE
測定条件;ビーム径 20〜30nm
サンプル調製;乳鉢にて試料を粉砕し、蒸留水にて希釈、超音波分散処理後、メッシュに採取した。メッシュは1日自然乾燥した。
(エックス線回折(XRD)測定)
実施例1の多孔質構造体及び比較例1の触媒体を、下記条件によりXRD測定した結果を図4に示す。図4に示すように、実施例1の多孔質構造体には、鉄に由来するシグナル(ピーク)が得られず、検出限界以下であることがわかる。これに対し、比較例1の触媒体には、鉄に由来するシグナル(α−Fe)が表れていることがわかる。尚、15°<2θ<30°に存在するブロードなピークは非結晶質二酸化珪素に由来するものである。比較例1の触媒体のXRD測定において、鉄由来のシグナル強度は、非結晶質二酸化珪素由来のシグナル強度の0.50〜0.53倍であった。また、図4において、縦軸は強度(a.u.)を示し、横軸は、2θ(°)を示す。
エックス線回折(XRD)測定条件:
測定装置:株式会社リガク社製 RINT−2550
測定条件:X線発生条件 40kV,200mA
測定範囲:3<2θ<70
サンプル調整及び測定:粉体測定
(気孔径測定)
実施例1の多孔質構造体及び比較例1の触媒体の気孔径(最大気孔径)を、下記条件により気孔径分布を測定することにより得た。結果を表1に示す。気孔径分布は、窒素吸着等温線を下記条件で測定し、得られた吸着等温線をBJH法にて解析することによって得た。サンプルは加熱式前処理装置BELPREP−flowにて、窒素雰囲気下110℃にて2時間処理したものを用いた。得られた気孔径分布より最大気孔径を特定した。
窒素吸着等温線測定条件:
測定装置;日本ベル社製、BELSORP−mini
測定(サンプル)温度;77K
(メタン酸化触媒能評価)
実施例1の多孔質構造体及び比較例1の触媒体を、下記方法によりメタン酸化触媒能評価を行った。結果を図5に示す。図5に示すように、実施例1の多孔質構造体のメタン酸化触媒能が、特に400〜700℃の範囲において、比較例1の触媒体のメタン酸化触媒能より優れていることがわかる。
メタン酸化触媒能評価方法:
メタンと擬似大気(窒素:80体積%、酸素:20体積%)とを、体積比がメタン:擬似大気=1:99となるように混合し、得られた混合気体を触媒(多孔質構造体)0.1gへ、SV=1500で通流した。SV値とは、1立方メートルの触媒(多孔質構造体)ユニット容量に対し、毎時流れるガスの体積を立方メートル単位で示した値である。SV=処理ガス流量(mN/h)/触媒体積(m)。触媒に通流した後の排出ガスをガスクロマトグラフィーにて解析し、メタン燃焼率((排出ガスに含有されるメタン体積/混合気体に含有されるメタン体積)×100(%))を得た。
ガスクロマトグラフィー測定条件:
ガスクロマトグラフィー測定装置;島津製作所製、GC−4A 及び クロマトパック CC−R7A
TCD部;P.Q. MS−5A S.Q.カラムを70℃にて使用し、インジェクタ部30℃、ディテクタ部100℃に保温。
FID部;DC−200カラムを70℃にて使用し、インジェクタ部30℃、ディテクタ部100度に保温。
本発明は、耐久性に優れ、更に酸化触媒及び有機合成触媒として優れた機能を発揮する多孔質構造体として利用することができる。
本発明の多孔質構造体を製造する方法における、ゲル化工程(ゲル化過程)を模式的に示す図であり、図1(a)は、シリカナノ粒子(ゾル)の分散状態を示す模式図であり、図1(b)は、シリカナノ粒子(ゾル)がネットワーク状に結合する状態を示す模式図であり、図1(c)は、ゲル骨格構造を示す模式図である。 実施例1の多孔質構造体の、透過電子顕微鏡写真である。 比較例1の触媒体の、透過電子顕微鏡写真である。 実施例1の多孔質構造体及び比較例1の触媒体の、エックス線回折(XRD)測定結果を示すグラフである。 実施例1の多孔質構造体及び比較例1の触媒体の、メタン酸化触媒能評価結果を示すグラフである。
符号の説明
10:シリカナノ粒子、20:ゲル骨格構造、31:骨格部分、32:空間(孔)部分、33:二酸化珪素粒子、34:鉄粒子、100:多孔質構造体、101:触媒体。

Claims (8)

  1. 二酸化珪素を主成分とする3次元網目構造の多孔質骨格に鉄が含有されてなる多孔質構造体であって、
    前記多孔質骨格の気孔径が50nm以下であり、
    前記鉄が、0.1〜質量%含有され、粒子径1nm以上の粒子状の前記鉄の含有率が、鉄全体の5%以下である多孔質構造体。
  2. 透過電子顕微鏡(TEM)観察により、粒子径1nm以上の前記粒子状の鉄が観測されない請求項1に記載の多孔質構造体。
  3. エックス線回折(XRD)測定による前記鉄由来のシグナル強度が、非結晶質二酸化珪素由来のシグナル強度に対し1/10以下である請求項1又は2に記載の多孔質構造体。
  4. エックス線回折(XRD)測定による前記鉄由来のシグナル強度が、検出限界以下である請求項3に記載の多孔質構造体。
  5. アルコキシシランを含有するゲル化材料のゲル化物を凍結乾燥させて得られた請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質構造体。
  6. 前記ゲル化物を凍結乾燥させたものを更に熱処理して得られた請求項5に記載の多孔質構造体。
  7. 触媒体として使用する請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質構造体。
  8. 吸着剤として使用する請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質構造体。
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