JP2005022896A - 異元素担持シリカゲル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)細孔容積が0.3〜1.6ml/g、(b)比表面積が200〜900m2/g、(c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満、(d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の40%以上、(e)周期表の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる群に属する有用異元素の含有率が0.1%以上、(f)前記有用異元素の単体及び/又は化合物がシリカゲル表面に粒状物として担持又は保持され、(g)上記粒状物の粒径がDmax×2.5以下となるようにする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性や耐水性等に優れた新規な異元素担持シリカゲルに関する。
【0002】
【従来の技術】
シリカゲルは、古くから乾燥剤として広く用いられてきたが、最近ではその用途が触媒担体,分離剤,吸着剤等へと広がっており、こうした用途の広がりに応じて、シリカゲルの性能に対する要求も多様化している。シリカゲルの性能は、シリカゲルの表面積、細孔径、細孔容積、細孔径分布等の物性によって決定されるが、これらの物性はシリカゲルの製造条件によって大きく影響される。
【0003】
シリカゲルの製造方法として、最も一般的には、ケイ酸ソーダ等のケイ酸アルカリ塩を鉱酸で加水分解し、得られるシリカヒドロゾルをゲル化して乾燥する方法が用いられているが、シリカゲルの性能を改良するために、この製造方法の詳細につき多くの提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸との反応により生成したシリカヒドロゾルをゲル化し、これをpH2.5以下の酸溶液で処理し、水洗後、緩衝作用を有する水溶液中でpH4−9に調整して水熱処理することにより、細孔分布の狭いシリカゲルを製造する方法が提案されている。また、特許文献2では、シリカヒドロゲルの乾燥を回分式流動乾燥、次いで水熱処理する方法が提案されている。
【0005】
これらの製造方法によれば、得られるシリカゲルの性能には確かに変化が認められ、よりシャープな細孔分布を有するシリカゲルが製造できる。しかし、得られるシリカゲルの細孔容積、比表面積及び平均細孔径を十分に変化させるまでには至らず、耐熱性や耐水性も充分ではないため、所望の物性範囲のシリカゲルを得る方法としては不十分である。
【0006】
また、前者の方法でケイ酸アルカリ塩を原料として得られるシリカゲルには、通常、原料に由来するナトリウム,カルシウム,マグネシウム等の不純物が相当量含まれている。シリカゲル中の不純物の存在は、その総含有量がたとえ数百ppm程度の微量であっても、シリカゲルの性能に大きな影響を与える。例えば、1)これらの不純物の存在が、高温下ではシリカゲルの結晶化を促進する、2)これらの不純物の存在が、水存在下ではシリカゲルの水熱反応を促進して、細孔径や細孔容積の拡大,比表面積の低下,細孔分布の拡大をもたらす、3)これらの不純物は焼結温度を低下させるので、これらの不純物を含むシリカゲルを加熱すると、比表面積の低下が促進される、等の影響が挙げられる。そして、かかる影響は、アルカリ金属やアルカリ土類金属に属する元素を含む不純物において、特にその傾向が強い。
【0007】
これに対して、不純物の極めて少ない高純度のシリカゲルを製造する方法としては、珪酸アルカリ塩を中和して得されたゲルを精製する方法や、シリコンアルコキシドを加水分解する方法が知られており、特に後者の方法は、シリコンアルコキシドを蒸留等により精製することができるため、比較的容易に高純度のシリカゲルを得ることが可能である。しかしながら、シリコンアルコキシドからゾル−ゲル法により得られるシリカゲルは、一般に平均細孔径が小さく、かつ細孔分布も広い。また、このシリカゲルに水熱処理を施しても、目立った性能の改良は殆ど報告されていない。
【0008】
一方、非特許文献1には、電気的に中性のgemini界面活性剤とシリカの前駆体との水素結合からなる超分子構造を形成した後、gemini界面活性剤を除去することによって、耐熱性(1000℃)及び耐水性(100℃で150時間以上)を備えたメソポーラスのモレキュラーシーブを製造することが記載されている。これは、有機テンプレートを用いて細孔を形成する、いわゆるミセルテンプレートシリカの一種であって、上述の各従来技術と比較しても、非常にシャープな細孔分布を持つシリカゲルを製造することができる。しかしながら、この製造方法では、得られるシリカゲルの耐水性が充分なものでなく、且つ製造工程が複雑で生産性が悪い、という課題があった。
【0009】
ところで、特定の異元素を単体及び/又はその化合物として担持させることによって各種機能を付与したシリカゲルは、各種触媒、抗菌剤、高機能吸着剤、分離剤等として有用である。こうした異元素担持シリカゲルの製造に係る従来技術は幾つか知られているが、▲1▼従来の水ガラス系シリカゲルに各種金属や触媒活性物質を担持させる技術(特許文献1(抗菌剤)、特許文献2(オレフィン水和触媒)、特許文献3(オレフィン重合触媒)等)や、▲2▼テンプレートを使用し、細孔制御したミセルテンプレートシリカに各種元素を後担持させ、機能性を付与する技術(特許文献4、特許文献5)等が挙げられる。
【0010】
しかしながら、上述の従来技術のうち、▲1▼の技術においては、製造コストが安価で済むものの、得られるシリカゲル中に存在する不純物が概して多くなってしまう上に、細孔径20nm以下の充分に細孔制御された高純度のシリカゲル担体が現在のところ存在しない、という課題を有する。さらに、▲2▼の技術においては、得られるシリカゲルの細孔分布がシャープであるが、有機テンプレートが高価であるために製造コストが高く、製造工程が複雑なために不要な不純物金属が混入しやすい、という課題がある。加えて、細孔壁が非常に薄いので、構造的な強度が弱く、物性変化を起こし易い上に、生産性の悪さも課題となっている。
【0011】
【非特許文献1】
Kim et al., Ultrastable Mesostructured Silica Vesicles Science, 282, p1302 (1998)
【特許文献1】
特開昭62−113713号公報
【特許文献2】
特開平9−30809号公報
【特許文献3】
特開平5−155725号公報
【特許文献4】
特開平7−330642号公報
【特許文献5】
特開平11−269213号公報
【特許文献6】
特開平5−254827号公報
【特許文献7】
特開平10−296088号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
以上の背景から、目的とする異元素の純度が高く、生産性に優れ、細孔径が制御されており、シャープな細孔分布を示し、且つ物性安定性にも優れた、すなわち各種特性をバランスよく満たした異元素担持シリカゲルが望まれていた。
【0013】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、細孔容積及び比表面積が大きいだけでなく、細孔分布が狭く、有用な担持元素を所望量含有できるとともに、且つ耐熱性、耐水性、物性安定性(熱安定性等)などにも優れた、新規な異元素担持シリカゲルを提供することに存する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の方法によって製造された異元素担持シリカゲルが、各種特性をバランスよく満たしており、上記課題を効果的に解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明の要旨は、(a)細孔容積が0.3〜1.6ml/gであり、(b)比表面積が200〜900m2/gであり、(c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、(d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の40%以上であり、(e)周期表の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる群に属する元素のうち、少なくとも一種類の元素の含有量が0.1%以上であり、(f)上記の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる群に属する元素の単体及び/又は化合物のうち少なくとも一部がシリカゲル表面に粒状物として担持又は保持されており、且つ、(g)上記粒状物の粒径が、Dmax×2.5以下であることを特徴とする、異元素担持シリカゲルに関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明の異元素担持シリカゲルは、細孔容積及び比表面積が通常のものより大きい範囲にあることを、特徴の一つとする。具体的に、細孔容積の値は、通常0.3〜1.6ml/gの範囲、好ましくは0.4〜1.5ml/gの範囲、更に好ましくは0.5〜1.3ml/gの範囲に、また、比表面積の値は、通常200〜900m2/gの範囲、好ましくは200〜800m2/gの範囲、更に好ましくは200〜700m2/gの範囲に存在する。これらの細孔容積及び比表面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
【0017】
また、本発明の異元素担持シリカゲルは、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線から、E. P. Barrett, L. G. Joyner, P. H. Haklenda, J. Amer. Chem. Soc., vol. 73, 373 (1951) に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線、即ち、細孔直径d(nm)に対して微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd);Vは窒素ガス吸着容積)をプロットした図上での最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、下限は特に制限はないが、好ましくは2nm以上である。このことは、本発明の異元素担持シリカゲルが有する細孔の最頻直径(Dmax)が、通常のシリカゲルに比べてより小さい範囲に存在することを意味する。
【0018】
更に、本発明の異元素担持シリカゲルは、上記の最頻直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の通常40%以上、好ましくは50%以上である点においても特徴づけられる。また、上記の最頻直径(Dmax)の値を中心として±20%の範囲にある細孔の総容積は、全細孔容積の通常90%以下である。このことは、本発明の異元素担持シリカゲルが有する細孔の直径が、最頻直径(Dmax)付近の細孔で揃っていることを意味する。
【0019】
かかる特徴に関連して、本発明の異元素担持シリカゲルは、上記のBJH法により算出された最頻直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が、通常2〜20ml/g、特に3〜12ml/gであることが好ましい(なお、上式において、dは細孔直径(nm)であり、Vは窒素ガス吸着容積である)。微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が前記範囲に含まれるものは、最頻直径(Dmax)の付近に揃っている細孔の絶対量が極めて多いものと言える。
【0020】
また、本発明の異元素担持シリカゲルは、以上の細孔構造の特徴に加えて、その三次元構造を見るに、非結晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことが好ましい。このことは、本発明の異元素担持シリカゲルをX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。なお、本明細書において非結晶質ではないシリカゲルとは、X線回折パターンで6オングストローム(Å Units d−spacing)を越えた位置に、少なくとも一つの結晶構造のピークを示すものを指す。非結晶質のシリカゲルは、結晶性のシリカゲルに較べて、極めて生産性に優れている。
【0021】
本発明の異元素担持シリカゲルは、更に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する元素(不純物元素)の合計の含有率の値が、特に限定される訳ではないが、低く抑えられ、高純度であることが好ましい。具体的には、通常300ppm以下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは30ppm以下の範囲が好適である。このように、金属不純物の含有率を低く抑え、その影響を少なくすることによって、本発明の異元素担持シリカゲルは高い耐熱性や耐水性などの優れた性質をより一層発現できるようになる。
【0022】
上述してきた各種特徴に加えて、本発明の異元素担持シリカゲルは、有用な元素群である周期表の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる群(有用異元素群)に属する元素のうち、少なくとも一種の元素(目的異元素)の含有率が通常0.1%以上、好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.5%以上、特に好ましくは1%以上であることを特徴とする。具体的に、目的異元素とは、本発明の異元素担持シリカゲルに含有される、有用異元素群に属する元素種のうち、含有率の多いものから順に、通常4種、好ましくは3種、更に好ましくは2種、特に好ましくは1種を指すこととする。ここで、目的異元素が2種以上の場合には、これらの元素が合計で0.1%以上含有されていれば良い。但し、2種以上の目的異元素がある場合でも、そのうち少なくとも1種の目的異元素の含有率が、通常0.2%以上、好ましくは0.5%以上、特に好ましくは1%以上であることが好ましい。
【0023】
これらの目的異元素の存在状態は、基本的にはその元素の単体及び/又は化合物として、シリカゲル表面に粒状物の形態で担持又は保持されていることを特徴とする。その粒状物は、具体的には、シリカゲル表面に添着、付着していても、又はその一部がシリカゲル細孔壁内に浸透していても良い。また、このような目的異元素の単体及び/又は化合物の粒状物の少なくとも一部が、直接又は酸素を介して珪素原子と結合していてもよい。更に、これらの目的異元素の原子価は何れの値をとっても良く、他の元素又は化合物と結びついた形で存在していても良い。
【0024】
シリカゲル表面に担持又は保持されたこれらの目的異元素の単体及び/又は化合物が粒状の形状を有する様子は、透過型電子顕微鏡を用いることによって観察できる。粒状物の粒径は、シリカゲル細孔径の制約を受けるため、一定の大きさ以下となるが、本発明の異元素担持シリカゲルに担持又は保持させた場合、この上限値は通常は最頻直径(Dmax)の2.5倍以下である。すなわち、シリカゲルの細孔径には分布幅があり、本発明の異元素担持シリカゲルの取り得る最大の細孔径は概ねDmax×2.5で定義される値となるので、細孔内に担持又は保持される粒状物の粒径の最大値もこの値以下となる。また、下限値は担持元素の種類、量、処理方法等に応じて様々な値を取るが、一般に1nm以上である。
【0025】
目的異元素の単体及び/又は化合物が細孔内で粒状に存在すると、その単体及び/又は化合物がナノスケールに微粒化されることになる。ナノスケールの微粒子は様々な有利な特徴を有しているため、目的異元素の存在状態として好ましい。例えば、一般に知られている性質として、目的異元素の単体及び/又は化合物が微粒子として形成されると、大きな表面を有することになる。こうした性質は、目的異元素の単体及び/又は化合物の表面物性を利用する用途では、利用効率が非常に高くなるため大変好ましい。また、これも一般に知られている性質として、目的異元素の単体及び/又は化合物の粒子のサイズを小さくしていった場合に、ある閾値を超えると量子効果が発現することがある。こうした性質を利用して、例えば金属、半導体、絶縁体等の接触面で電流が流れるトンネル効果(ジョセフソン効果)などの、新しい物性を材料に与えることが可能になる。このように、ナノスケールの微粒子を利用する技術は産業上非常に重要なので、ナノスケールの粒子が細孔内に形成された本発明の異元素担持シリカゲルは大変好ましい。
【0026】
以上説明してきた物性を有する本発明の異元素担持シリカゲルは、細孔制御のための水熱処理の前にシリカヒドロゲルを熟成しないという点を除けば、その製造方法は実質的に制限されるべきではない。
【0027】
また、本発明の異元素担持シリカゲルは、細孔制御後の高純度シリカゲルに目的異元素を担持させる方法により製造できる。この場合、まず、シリカゲル細孔中に目的異元素の単体及び/又はその化合物を導入する。その方法としては、例えば、触媒調整法としてよく知られている含浸法<吸着(absorption)法,ポアフィリング(pore−filling)法,“incipient wetness”法,蒸発乾固(evaporation to dryness)法,スプレー(spray)法等>、沈殿法<共沈(coprecipitation)法、沈着(precipitation)法,混練(kneading)法等>、イオン交換(ion exchange)法などの公知の方法の何れを用いても良い。具体的には、シリカゲルを目的異元素の硝酸塩の水溶液中に浸漬し、攪拌した後にそのシリカゲルを濾過、乾燥する方法が挙げられる。その際、目的異元素の硝酸塩の替わりに塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩やアルコキシド類等を用いても良い。又、濾過をせず、加熱することにより水分を蒸発させても良い。この他、機械的混合(メカノケミカル)法や、蒸着法(化学蒸着法、スパッタリング法)等の方法により目的異元素を導入しても良い。
【0028】
以上の操作により細孔内に目的異元素を導入した後、必要に応じて200〜400℃で焼成することにより、目的異元素とシリカゲルとの間の架橋反応を促進させることができる。また、必要であれば、目的異元素を担持させた後に酸化や還元等の化学処理を行ない、目的異元素の化学状態を変化させても良い。
【0029】
目的異元素は、シリコンアルコキシドを加水分解し、熟成すること無しに水熱処理して得られたシリカゲルに、上記の方法で担持させることができるが、その形態、化合物の種類、化合物の量は、目的異元素が機能性を発現する範囲であれば特に限定されず、これらの目的異元素の単体、水溶性の塩、溶媒可溶性の塩、錯体化合物、加水分解性の化合物等の何れであってもよい。また、高純度な異元素担持シリカゲルを得る観点から、目的異元素の化合物も高純度なものを用いることが好ましい。また、担体となる高純度シリカゲルに対して前処理を行なってもよい。例えば、担体となるシリカゲルの原料であるシリコンアルコキシド等に由来する炭素分が含まれている場合には、必要に応じて、通常400〜600℃で焼成除去してもよい。さらに、表面状態をコントロールするために、最高900℃の温度で焼成してもよい。
【0030】
なお、本発明の目的異元素の選択対象となる、周期表の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる元素群(有用異元素群)に属する元素の例として、具体的には、13族はB,Al,Ga,In,Tl、14族はC,Si,Ge,Sn,Pb、15族はN,P,As,Sb,Bi、そして遷移金属はSc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,ランタノイド類,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg,アクチノイド類,Rf,DB,Sg、Bh,Hs,Mt等が挙げられる。中でも、B,Al,Ga,In,Tl,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Bi,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,ランタノイド類,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg,アクチノイド類などが、各種用途において活性が高く有用である点から好ましく、特にこれらの元素の単体及び/又は化合物を粒状に形成することが好ましい。
【0031】
これらの元素のうち、特に固体酸触媒・固体塩基触媒用途としてはB,Al,Ga,In,Tl,Fe,Ti,P,W,Mo,Zn等が、水素化触媒・脱水素触媒用途としては、W,Mo,Tc,Re,Ru,Os,Rh,Ir,Pd,Pt,Ag,Au、Ni,Cu等が、酸化還元触媒用途としてはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Ge,Pb等が、光触媒用途としてはTi,Zn,W,Sn,Cd等が、重合触媒用途としてはTi,Zr,Cr,Fe,Ge,Sb,Bi,V,Mo,W,Mn,Co,Cu,Sc,Nb等が好ましい。
【0032】
これらの触媒(特に固体酸触媒・固体塩基触媒)用途に異元素含有シリカゲルを使用する場合、細孔径が制御されておらず細孔分布が広いものや、不純物元素(特にアルカリ金属やアルカリ土類金属)の含有量が高いものを使用すると、触媒活性が悪く、寿命も短い。これに対して、本発明の異元素含有シリカゲルは、細孔径が制御されていて細孔分布が狭く、さらに不純物元素の含有量も低いので、これらの触媒用途に使用した場合に優れた触媒活性を得ることができ、且つ長寿命であるので、好適に使用することができる。
【0033】
勿論、13族,14族及び15族並びに遷移金属に属する元素の用途は、上述したものに限定されるわけではなく、その他にも抗菌剤用途(Ti,Ag,Cu,Zn等)、耐水性向上(安定性付与)用途(Zr,Ti等)、蛍光体用途(希土類、ランタノイド類)など、各種の用途が挙げられるのは言うまでも無い。
【0034】
本発明の異元素担持シリカゲルの原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリまたはテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられるが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマーである。以上のシリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し得るので、高純度の異元素担持シリカゲルの原料として好適である。シリコンアルコキシド中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する不純物元素(金属不純物)の総含有量は、通常好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。これらのいわば金属不純物の含有率は、一般的なシリカゲル中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定できる。
【0035】
シリコンアルコキシドの加水分解は、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2〜50モル、好ましくは3〜20モル、特に好ましくは4〜10モルの水を用いて行なう。この工程の途中において、任意の方法により目的異元素の単体又は化合物を添加することによって、シリコンアルコキシドの加水分解により、目的異元素をドープしたシリカのヒドロゲルとアルコールとが生成する。この加水分解反応は、通常、室温から100℃程度であるが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で行なうことも可能である。また、加水分解時には必要に応じて、水と相溶性のあるアルコール類等の溶媒を添加してもよい。具体的には、炭素数1〜3の低級アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロルブ、エチルセロルブ、メチルエチルケトン、その他の水と任意に混合できる有機溶媒を任意に用いることができるが、中でも強い酸性や塩基性を示さないものが、均一なシリカヒドロゲルを生成できる理由から好ましい。
【0036】
結晶構造を有するシリカゲルは、水中熱安定性に乏しくなる傾向にあり、ゲル中に細孔を形成するのに用いられる界面活性剤等のテンプレートの存在下でシリコンアルコキシドを加水分解すると、ゲルは容易に結晶構造を含むものとなる。従って、本発明においては、界面活性剤等のテンプレートの非存在下で、すなわち、これらがテンプレートとしての機能を発揮するほどの量は存在しない条件下で加水分解するのが好ましい。
【0037】
反応時間は、反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。なお、反応系に触媒として、酸、アルカリ、塩類などを添加することで加水分解を促進させることができる。しかしながら、かかる添加物の使用は、後述するように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明の異元素担持シリカゲルの製造においてはあまり好ましくない。
【0038】
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリケートが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。本発明の異元素担持シリカゲルを製造するためには、上記の加水分解により生成したシリカのヒドロゲルの硬さが上昇しないように、シリカヒドロゲルを実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうことが重要である。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカのヒドロゲルが生成するが、このヒドロゲルを安定した熟成、あるいは乾燥させ、更にこれに水熱処理を施し、最終的に細孔特性の制御されたシリカゲルとする従来の方法では、本発明で規定する物性範囲のシリカゲルを製造することができない。
【0039】
上記にある、加水分解により生成したシリカのヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行うということは、シリカのヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の、水熱処理に供するようにするということを意味する。シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を添加すること、または該加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させるため好ましくない。また、加水分解後の後処理における水洗、乾燥、放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけるべきではない。
【0040】
ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する手段としては、後述の実施例に示すような方法で測定したヒドロゲルの硬度を参考にすることができる。即ち、破壊応力が、通常6MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲のシリカゲルを得ることができる。
【0041】
この水熱処理の条件としては、水の状態が液体、気体のいずれでもよく、溶媒や他の気体によって希釈されていてもよいが、好ましくは液体の水が使われる。シリカのヒドロゲルに対して、通常0.1〜10重量倍、好ましくは0.5〜5重量倍、特に好ましくは1〜3重量倍の水を加えてスラリー状とし、通常40〜250℃、好ましくは50〜200℃の温度で、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜10時間実施される。水熱処理に使用される水には低級アルコール類、メタノール、エタノール、プロパノールや、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、その他の有機溶媒などが含まれてもよい。また、メンブランリアクターなどを作る目的で、シリカゲルを膜状あるいは層状に粒子、基板、あるいは管などの基体上に形成させた材料の場合にも、この水熱処理方法は適用される。なお、加水分解反応の反応器を用い、続けて温度条件変更により水熱処理を行なうことも可能であるが、加水分解反応とその後の水熱処理では最適条件が通常は異なっているため、この方法で本発明の異元素担持シリカゲルを得ることは一般的には難しい。
【0042】
以上の水熱処理条件において温度を高くすると、得られるシリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなる傾向がある。水熱処理温度としては、100〜200℃の範囲であることが好ましい。また、処理時間とともに、得られるシリカゲルの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択する必要があるが、水熱処理は、シリカゲルの物性を変化させる目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
【0043】
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると、本発明の異元素担持シリカゲルを得ることが困難となる。例えば、水熱処理の温度が高すぎると、シリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなりすぎ、また、細孔分布も広がる。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカゲルは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなる傾向がある。
【0044】
なお、水熱処理をアンモニア水中で行なうと、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、純水中で処理する場合と比較して、最終的に得られるシリカゲルは一般に疎水性となるが、通常30〜250℃、好ましくは40〜200℃という比較的高温で水熱処理すると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001〜10%、特に好ましくは0.005〜5%である。
【0045】
水熱処理されたシリカヒドロゲルは、通常40〜200℃、好ましくは60〜180℃で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧下でも減圧下でも乾燥することができる。更に、必要に応じて粉砕、分級した後、前述の方法を実施して細孔内に目的異元素を導入することで、最終的に目的としていた本発明の異元素担持シリカゲルを得る。なお、前述したように、必要に応じて、架橋反応促進のための焼成や酸化還元等の化学処理等の後処理を施しても良い。
【0046】
本発明の異元素担持シリカゲルは、従来からのシリカゲルの用途の他、いかなる用途においても利用することができる。このうち従来の用途としては、以下のようなものが挙げられる。
【0047】
例えば、産業用設備で製品の製造及び処理に用いられる用途分野においては、各種触媒及び触媒担体(酸塩基触媒、酸化チタン等の担持による光触媒、貴金属触媒等)、廃水・廃油処理剤、臭気処理剤、ガス分離剤、工業用乾燥剤、バイオリアクター、バイオセパレーター、メンブランリアクター等の用途が挙げられる。建材用途では、調湿剤、防音・吸音材、耐火物、断熱材等の用途が挙げられる。また、空調分野の用途では、デシカント空調機用調湿剤、ヒートポンプ用蓄熱剤等が挙げられる。塗料・インク用途分野においては、艶消し剤、粘度調整剤、色度調整剤、沈降防止剤、消泡剤、インク裏抜け防止剤、スタンピングホイル用、壁紙用等の用途が挙げられる。樹脂用添加剤用途分野においては、フィルム用アンチブロッキング剤(ポリオレフィンフィルム等)、プレートアウト防止剤、シリコーン樹脂用補強剤、ゴム用補強剤(タイヤ用・一般ゴム用等)、流動性改良材、パウダー状樹脂の固結防止剤、印刷適性改良剤、合成皮革やコーティングフィルム用の艶消し剤、接着剤・粘着テープ用充填剤、透光性調整剤、防眩性調整剤、多孔性ポリマーシート用フィラー等の用途が挙げられる。また、製紙用途分野においては、感熱紙用フィラー(カス付着防止剤等)、インクジェット紙画像向上用フィラー(インク吸収剤等)、ジアゾ感光紙用フィラー(感光濃度向上剤等)、トレーシングペーパー用筆記性改良剤、コート紙用フィラー(筆記性、インク吸収性、アンチブロッキング性改良剤等)、静電記録用フィラー等の用途が挙げられる。食品用途分野においては、ビール用濾過助剤、醤油・清酒・ワイン等発酵製品のおり下げ剤、各種発酵飲料の安定化剤(混濁因子タンパクや酵母の除去等)、食品添加剤、粉末食品の固結防止剤等の用途が挙げられる。医農薬分野においては、薬品等の打錠助剤、粉砕助剤、分散・医薬用担体(分散・徐放・デリバリー性改善等)、農薬用担体(油状農薬キャリア・水和分散性改善、徐放・デリバリー性改善等)、医薬用添加剤(固結防止剤・粉粒性改良剤等)・農薬用添加剤(固結防止剤・沈降防止剤等)等が挙げられる。分離材料分野では、クロマトグラフィー用充填剤、分離剤、フラーレン分離剤、吸着剤(タンパク質・色素・臭等)、脱湿剤等の用途が挙げられる。農業用分野では、飼料用添加剤、肥料用添加剤が挙げられる。さらにその他の用途として、生活関連分野では、調湿剤、乾燥剤、化粧品添加剤、抗菌剤、消臭・脱臭・芳香剤、洗剤用添加剤(界面活性剤粉末化等)、研磨剤(歯磨き用等)、粉末消火剤(粉粒性改良剤・固結防止剤等)、消泡剤、バッテリーセパレーター等が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、特に制御された細孔特性が要求されるとともに、長期にわたって物性変化の少ないことが要求され、且つ、特定の有用異元素の単体及び/又は化合物の担持による機能付与が要求される分野において、具体的には、例えば各種触媒、抗菌剤、高機能吸着剤、分離剤、充填剤等として、本発明の異元素担持シリカゲルは好適に用いることができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0050】
(1)シリカのヒドロゲルの硬度測定:
5Lセパラブルフラスコ中でシリコンアルコキシドと6モル倍の水を反応させ、反応液の温度が反応により生成するアルコールの沸点に達した後に、反応液をフラスコより抜き取り、抜き出した反応液を50ccのガラス製スクリュー管に一定量(液深で20mm程度)移し、密栓して実質的に一定温度にコントロールされた水浴に保持し、熟成時間の経過と共に破壊強度をデジタルフォースゲージ(株式会社エイ・アンド・ディー社製、型式:AD−4935)にて測定した。該測定器にはプローブ(ステンレス製直径5mmの丸棒)が装着されており、ヒドロゲル中にゆっくりと押し込まれることにより、容器中に保持されたヒドロゲルを圧縮破壊する。ヒドロゲルが圧縮されて破壊される迄の間に示される最大の応力値をもって破壊応力とした。
【0051】
測定結果を図1に示した。図1は、シリカヒドロゲルの熟成時間の常用対数を横軸に、破壊応力を縦軸にプロットしたものである。図1より、熟成時間の経過とともに破壊応力が大きくなること、熟成速度が温度に依存していることがわかる。
【0052】
(2)異元素担持シリカゲルの分析方法:
2−1)細孔容積、比表面積:
カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線を測定し、細孔容積、比表面積を求めた。具体的には細孔容積は相対圧P/P0=0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P0=0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。また、BJH法で細孔分布曲線及び最頻直径(Dmax)における微分細孔容積を求めた。測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
【0053】
2−2)粉末X線回折:
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKαを線源として測定を行なった。発散スリット1deg、散乱スリット1deg、受光スリット0.15mmとした。
【0054】
2−3)目的異元素及び金属不純物の含有量:
試料2.5gにフッ酸を加えて加熱し、乾涸させたのち、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いてICP発光分析を行なった。なお、ナトリウム及びカリウムはフレーム炎光法で分析した。
【0055】
2−4)透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による観察:
試料を乳鉢で一分間軽く粉砕し、エタノール中で超音波分散させ、マイクログリッド上に滴下、自然乾燥させた。これを日立H−9000UHR型透過型電子顕微鏡により、300kV,絞り4,80万倍の条件でTEM写真撮影した。得られた写真上で、担持された粒状物の長径の平均値を求め、これを粒状物の粒径とした。
【0056】
(3)異元素担持シリカゲルの製造、評価:
・実施例1:
(担体シリカゲルの調製)
ガラス製で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある5Lセパラブルフラスコ(ジャケット付き)に、純水1000gを仕込んだ。80rpmで撹拌しながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分間かけて仕込んだ。水/テトラメトキシシランのモル比は約6である。セパラブルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き撹拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で、撹拌を停止した。引き続き約0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して生成したゾルをゲル化させた。その後、速やかにゲルを取り出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のウェットゲル(シリカヒドロゲル)を得た。このヒドロゲル450gと純水450gを1Lのガラス製オートクレーブに仕込み、150℃、3時間の条件で水熱処理を実施した。所定時間水熱処理した後、No.5A濾紙で濾過し、濾滓を水洗することなく100℃で恒量となるまで減圧乾燥した。得られたシリカゲル(実施例1の担体シリカゲル)の諸物性を下の表1に示す。
【0057】
(触媒前駆体の調製)
1.67gの塩化パラジウムを100ml三角フラスコに測り取り、25%のアンモニア水27mlにて加熱溶解後、室温に戻し、これを使用アンモニア水で60mlにメスアップした。これを塩化パラジウム水溶液とする。上記担体シリカゲル50gを回転ドラム上に設置して、上記塩化パラジウム水溶液60ml(これは、担体に対するパラジウム金属の量が、2.0重量%となるような量である)を、回転しているドラム上の担体に対して噴霧した。続いて、この粉体をドラムより取り出し、80℃にて乾燥した。
【0058】
(触媒前駆体のアルカリ処理)
かかる触媒前駆体を回転ドラム上に設置し、2%アンモニア水60mlを同様に噴霧した。アルカリ水溶液の容積は、担体の細孔容積と同量である。更に、かかる触媒を純水で洗浄し、触媒上の塩素イオンを除去した。純水で触媒を分散したところ、静置した際の上澄み液は透明であり、パラジウムは溶出されなかった。
【0059】
(還元処理)
上記方法で得た触媒20gを水素気流下、200℃、水素流量57l/Hrの条件で5時間処理した。得られた触媒を水洗した後、80℃にて真空乾燥した。これにより、目的異元素として2.0重量%のパラジウムをシリカに担持させた触媒(異元素担持シリカゲル)を得た。得られた異元素担持シリカゲル(実施例1の異元素担持シリカゲル)の諸物性を下の表2に示す。
【0060】
粉末X線回折図によれば、2θ≦5degの範囲において、周期的構造によるピークは認められなかった。金属含有率を分析すると、目的異元素であるパラジウムが2.0重量%であったのに対して、不純物元素であるナトリウムが0.2ppm、カリウムが0.1ppm、カルシウムが0.1ppmで、その他の金属元素は検出されなかった。また、担持粒子の粒径は均一で、何れもDmax×2.5以下であり、粗大な粒子は無かった。従って、実施例1の異元素担持シリカゲルはパラジウムを高分散に担持し、反応活性の高い水素化触媒として使用することができる。
【0061】
・比較例1:
富士シリシア化学製触媒担体用シリカゲル CARIACT G−6 を担体とした他は、実施例1と同様の条件により実験を行なって、目的異元素としてパラジウムを担持させたシリカゲルを得た。使用した上述の担体用シリカゲル(比較例1の担体シリカゲル)の諸物性を下の表1に、得られた異元素担持シリカゲル(比較例1の異元素担持シリカゲル)の諸物性を下の表2に示す。粉末X線回折図によれば、2θ≦5degの範囲において、周期的構造によるピークは認められなかった。金属含有率を分析すると、目的異元素であるパラジウムが2.0重量%であったのに対して、不純物元素であるアルミニウムが14ppm、ナトリウムが165ppm、カリウムが20ppm、カルシウムが162ppm、マグネシウムが33ppm、チタンが259ppm、鉄が25ppm、クロムが4ppmと、目的異元素以外の不純物元素を多く含んでいた。また、担持粒子の大きさにはややばらつきがあり、Dmax×2.5を上回る粗大な粒子が認められた。
【0062】
・シリカゲルの水中熱安定性試験:
実施例1及び比較例1の異元素担持シリカゲル試料各々20gに、純水を加えて40重量%のスラリーを各々調製した。容積60mlのステンレススチール製のミクロボンベに、上記で調製したスラリー約40mlを各々入れて密封し、200±1℃のオイルバス中に3時間浸漬した。ミクロボンベからスラリーの一部を抜出し、濾過により粉体を回収した。濾滓は100℃で5時間真空乾燥した。この試料について比表面積を測定した結果を下の表2に示す。実施例1の異元素担持シリカゲルは比較例1の異元素担持シリカゲルと比較して比表面積の減少が少なく、より安定していると判断される。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【発明の効果】
本発明の新規な異元素担持シリカゲルは、従来からの異元素担持シリカゲルと比較して、細孔分布が狭く、有用な元素を所望量担持させることができるとともに、且つ耐熱性、耐水性、物性安定性(熱安定性等)などにも優れている。また、担体シリカのシャープな細孔分布によって、担持粒子が均一且つ高分散に細孔表面に保持されており、従来のシリカゲルよりも高い活性を発現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリカのヒドロゲルを35℃、45℃及び55℃の各温度で熟成させた場合の各熟成時間とその際のヒドロゲルの破壊応力との関係を示す図である。
Claims (14)
- (a)細孔容積が0.3〜1.6ml/gであり、
(b)比表面積が200〜900m2/gであり、
(c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、
(d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の40%以上であり、
(e)周期表の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる群に属する元素のうち、少なくとも一種類の元素の含有率が0.1%以上であり、
(f)上記の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる群に属する元素の単体及び/又は化合物のうち少なくとも一部が、シリカゲル表面に粒状物として担持又は保持されており、且つ、
(g)上記粒状物の粒径が、Dmax×2.5以下である
ことを特徴とする、異元素担持シリカゲル。 - 上記粒状物の粒径が、1nm以上である
ことを特徴とする、請求項1記載の異元素担持シリカゲル。 - 上記粒状物の少なくとも一部が、直接又は酸素を介して珪素原子と結合している
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の異元素担持シリカゲル。 - 非晶質である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の異元素担持シリカゲル。 - アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群に属する元素の総含有率が、300ppm以下である
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の異元素担持シリカゲル。 - 上記の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる群に属する元素のうち、少なくとも一種類の元素の含有率が0.2%以上である
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の異元素担持シリカゲル。 - 細孔容積が0.4〜1.5ml/gである
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の異元素担持シリカゲル。 - 比表面積が200〜800m2/gである
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の異元素担持シリカゲル。 - 細孔の最頻直径(Dmax)が2nm以上である
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の異元素担持シリカゲル。 - 直径がDmax±20%以内の細孔の総容積が、全細孔の総容積の50%以上である
ことを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の異元素担持シリカゲル。 - アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群に属する元素の含有率が、100ppm以下である
ことを特徴とする、請求項5記載の異元素担持シリカゲル。 - 上記のアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群に属する元素の含有率が、50ppm以下である
ことを特徴とする、請求項11記載の異元素担持シリカゲル。 - 最頻直径(Dmax)における微分細孔容積が、2〜20ml/gである
ことを特徴とする、請求項1〜12の何れか一項に記載の異元素担持シリカゲル。 - シリコンアルコキシドを加水分解する工程を経て製造される
ことを特徴とする、請求項1〜13の何れか一項に記載の異元素担持シリカゲル。
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WO2024117228A1 (ja) * | 2022-11-30 | 2024-06-06 | 日産化学株式会社 | 遷移金属ドープシリカゾル及びその製造方法 |
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-
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