JP5044275B2 - 抗菌性プレコートアルミニウム合金板 - Google Patents
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例えば、パネルの多孔質部又は、空隙部に抗菌剤等の機能性物質を充填し、パネルの片面あるいは両面に機能性物質よりも小さな細孔を有する通気性カバーを配置させる技術が報告されている(特許文献1)。
また、有機系抗菌剤成分を主鎖又は側鎖に結合した高分子物質、該無機系物質に混合または結合させた親水性物質、及び硬化剤を含有する組成物の3層よりなる層を金属板表面に積層し硬化させる技術が報告されている(特許文献3)。
また、熱交換器用フィン用親水性塗膜に、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩と、ポリスチレンスルフォン酸またはその塩からなる共重合体、及び抗菌・防かび剤を含有させる技術が報告されている(特許文献7)。
しかしながら、これらの従来技術は、焼付けの際に抗菌剤が変質するという問題や、焼付け後の抗菌効果の持続性に劣るという問題があった。
少なくとも一方の上記プレコート層は、有機樹脂よりなるベース樹脂中に、粒径が1〜50μmの多孔性の有機物質よりなるマイクロビーズに抗菌剤を含浸させてなる抗菌マイクロビーズを含有してなり、
該抗菌マイクロビーズの含有量は、上記プレコート層全体の乾燥重量を100重量%として、0.5〜5重量%であり、
かつ、上記プレコート層の膜厚は、1〜50μmであることを特徴とする抗菌性プレコートアルミニウム合金板にある(請求項1)。
マイクロビーズは、多孔質の球状物質であり、有機物質である。有機物質としては、例えば、後述する実施例に示す多孔性のポリエステル等が挙げられる。
上記抗菌剤としては、抗菌性のある天然抽出物、有機系化合物、無機系化合物であればいずれも適用することができる。
上記天然抽出物としては、例えば、キチン、キトサン、ワサビ抽出物、カラシ抽出物、ヒノキチオール、及び茶抽出物等が挙げられる。
また、上記有機系化合物としては、例えば、有機アンモニウム塩系化合物及び有機ホスホニウム塩系化合物等が挙げられる。
上記抗菌マイクロビーズの含有量が0.5重量%未満の場合には、抗菌力が不足するという問題があり、上記含有量が5重量%を超える場合には、塗膜の加工性及び耐食性が低下するという問題がある。
上記プレコート層の膜厚が1μm未満の場合には、抗菌マイクロビーズが脱落しやすく塗膜の耐食性が低下しやすいという問題があり、上記膜厚が50μmを超える場合には、膜形成が困難になるという問題がある。
この場合には、抗菌剤を含浸したマイクロビーズの混合・分散が容易で、かつアルミニウム合金板への塗装性、及び塗装焼付後の成形加工に耐えうる展伸性を得ることができる。
また、上記ベース板にラノリン及びカルナウバ等のインナーワックスを添加してもよい。この場合には、成形加工性が更に向上する。
この場合には、上記基板と上記プレコート層との間の塗膜密着性を向上させることができる。
上記化成皮膜としては、例えば、リン酸クロメート、クロム酸クロメート等のクロメート処理、クロム化合物以外のリン酸チタンやリン酸ジルコニウム、リン酸モリブデン、リン酸亜鉛等によるノンクロメート処理などの化学皮膜処理、いわゆる化成処理により得られる皮膜が採用される。
この場合には、塗料を硬化することによりプレコート層を容易に形成することができる。また、抗菌剤の種類によっては、抗菌剤をビーズ内に残すことができる。
処理温度が200°未満の場合には、焼付けが足りず、塗料の硬化が不足するという問題があり、処理温度が250°を超える場合には、抗菌剤の分解や、抗菌剤が揮発するという問題がある。
また、塗布方法としては、例えば、ロールコート、スプレー塗装、刷毛塗り、及びバーコート等の常法が挙げられる。
本例は、本発明の抗菌性プレコートアルミニウム合金板にかかる実施例について、図1及び図2を用いて説明する。
本例の抗菌性プレコートアルミニウム合金板1は、図1に示すように、アルミニウム合金板よりなる基板2と、該基板の両面に形成したプレコート層3とよりなる。
上記プレコート層3は、有機樹脂よりなるベース樹脂31中に、図2に示す粒径が1〜50μmの多孔性のマイクロビーズ321の細孔322に抗菌剤323を含浸させてなる抗菌マイクロビーズ32を含有してなる。
以下、これを詳説する。
上記基板2としては、JIS A 1050−H24、厚み0.5mmのアルミニウム板を準備した。
また、抗菌マイクロビーズ32は、ポリエステルからなる多孔性のマイクロビーズ321、上記抗菌剤323としてヒノキチオールを含浸させたものを用いた。
まず、上記基板2にリン酸クロメートを浸漬処理することにより、基板2の表面に化成皮膜4を形成した後、抗菌マイクロビーズ32を含有するベース樹脂31をバーコーターを用いて上記化成皮膜4上に塗布し、表1に示す焼付け処理条件で焼付けて、表1に示す膜厚を有するプレコート層3を形成した。
各試料における、ベース樹脂31の種類、マイクロビーズ321の粒径、抗菌マイクロビーズ32の含有量、プレコート層3の焼付処理条件、プレコート層3の膜厚については、表1に示す。
本例では、本発明の抗菌性プレコートアルミニウム合金板の比較例として、表2に示す、複数種類のプレコートアルミニウム合金板(試料C1〜試料C7)を、上記実施例1と同様の方法で作製した。
各試料における、ベース樹脂の種類、マイクロビーズの粒径及び含有量、プレコート層の焼付処理条件、プレコート層の膜厚は、表2に示す。
また、試料C7は、上記プレコート層の膜厚が50μmを超えるため、塗装したベース樹脂が乾かず、プレコート膜の形成ができなかった。
本例では、上記実施例1において作製した抗菌性プレコートアルミニウム合金板(試料E1、試料E2)、及び比較例1において作製したプレコートアルミニウム合金板(試料C1)について、抗菌性試験を行った。試験室温度は25℃、関係湿度は46%であった。
抗菌性試験は、JIS Z 2801:2000(抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果)に準拠して行った。
まず、菌として、大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC12732)を準備した。
抗菌活性値は、以下の式に基づいて算出した。
抗菌活性値=Log(Y/X)・・・(I)
(上記式中、Xは、抗菌加工試験片の生菌個数平均値を、Yは、比較対照用の抗菌剤無添加の無加工試験片の生菌個数平均値を表す)
抗菌活性値が2.0以上の場合を合格とし、抗菌活性値が2.0未満の場合を不合格とする。結果を表3に示す。
これより、黄色ブドウ球菌に対しては、抗菌マイクロビーズを含有しているか否かに関わらず、抗菌効果が認められることが確認された。一方、大腸菌に対する抗菌性は、抗菌マイクロビーズを含有している場合に認められ、また、抗菌マイクロビーズの含有量が多いほど、その効果が高くなることから、抗菌マイクロビーズの含有による影響があることがわかった。
抗菌性評価は、大腸菌の抗菌活性値が2.0以上の場合を合格(評価○)、大腸菌の抗菌活性値が2.0未満の場合を不合格(評価×)とした。
また、本例の抗菌性プレコートアルミニウム合金板は、抗菌剤をそのままプレコート層内に分散させるのではなく、上記マイクロビーズに含浸させ、抗菌マイクロビーズという形態でプレコート層内に配置している。そのため、上記抗菌マイクロビーズが脱落しない限り、含浸させた抗菌剤が長期にわたって安定的にマイクロビーズに保持され、また、多孔質を構成する細孔の中から抗菌剤が適度に表面に露出するため、長期間にわたって健全に抗菌性を発揮することができる。
これにより、本発明によれば、抗菌性に優れ、かつ抗菌効果の持続性に優れた抗菌性プレコートアルミニウム合金板を提供することができる。
また、比較例としての試料C2は、抗菌マイクロビーズの粒径が本発明の下限を下回るため、抗菌剤を含浸できる容量が小さくなり、抗菌力が不足し、抗菌性が認められず不合格であった。
また、比較例としての試料C3は、抗菌マイクロビーズの粒径が本発明の上限を上回るため、プレコート層がマイクロビーズを保持し難くなり、抗菌マイクロビーズが脱落するため、抗菌性が認められず不合格であった。
また、比較例としての試料C6は、プレコート層の膜厚が本発明の下限を下回るため、抗菌マイクロビーズが脱落しやすいため、抗菌性が認められず不合格であった。
2 基板
3 プレコート層
31 ベース樹脂
32 抗菌マイクロビーズ
321 マイクロビーズ
322 細孔
323 抗菌剤
Claims (4)
- アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の片面又は両面に形成したプレコート層とよりなり、
少なくとも一方の上記プレコート層は、有機樹脂よりなるベース樹脂中に、粒径が1〜50μmの多孔性の有機物質よりなるマイクロビーズに抗菌剤を含浸させてなる抗菌マイクロビーズを含有してなり、
該抗菌マイクロビーズの含有量は、上記プレコート層全体の乾燥重量を100重量%として、0.5〜5重量%であり、
かつ、上記プレコート層の膜厚は、1〜50μmであることを特徴とする抗菌性プレコートアルミニウム合金板。 - 請求項1において、上記ベース樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂のいずれかであることを特徴とする抗菌性プレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1又は2において、上記プレコート層と上記基板との間には、化成皮膜を有することを特徴とする抗菌性プレコートアルミニウム合金板。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記プレコート層を形成する際には、上記ベース樹脂及び上記抗菌マイクロビーズを含む塗料を上記基板上に塗布した後、温度200〜250℃に30秒〜2分間保持する焼付け処理を行うことを特徴とする抗菌性プレコートアルミニウム合金板。
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