JP4922721B2 - アルミニウム塗装板及びこれを用いたプレコートアルミニウムフィン材 - Google Patents
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前記親水性被膜が、親水性塗料に抗菌防黴剤を加えた塗料組成物から形成され、
当該塗料組成物が、前記親水性塗料と、5000〜20000の分子量でポリオキシエチレン鎖を有する物質で抗菌防黴剤を取囲んだ粒状体が水性媒体に分散した分散溶液とを含み、
前記親水性被膜において、前記抗菌防黴剤が前記親水性被膜の厚さ方向の表面側において前記基材側よりも高濃度で含有されており、
前記抗菌防黴剤がビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)−ジンク及び2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジンの少なくとも一方を含有することを特徴とするアルミニウム塗装板とした。
5000〜20000の分子量でポリオキシエチレン鎖を有する物質で抗菌防黴剤を取囲んだ粒状体が水性媒体に分散した分散溶液を調製する工程と、当該分散溶液を親水性塗料に加えて塗料組成物を調製する工程と、当該塗料組成物を前記基材の少なくとも一方の面に塗布して焼付ける工程と、を含み、
前記抗菌防黴剤がビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)−ジンク及び2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジンの少なくとも一方を含有することを特徴とするアルミニウム塗装板の製造方法とした。
本発明に係るアルミニウム塗装板は、アルミニウム又はアルミニウム合金の基材と、当該基材の少なくとも一方の面に形成した親水性被膜とを備える。
本発明で用いるアルミニウム基材は、熱交換器用フィン材として使用されているものであれば特に限定されるものではない。すなわち、JIS規格の1100合金、1050合金、1N30合金等の純アルミニウム系合金;2017合金、2024合金等のAl−Cu系合金;3003合金、3004合金等のAl−Mn系合金;5052合金、5083合金等のAl−Mg系合金;6061合金等のAl−Mg−Si系合金;などを用いることができる。また、アルミニウム基材の形状は特に限定されるものではないが薄板が好ましく、シート状薄板やコイル状薄板が好適に用いられる。
親水性被膜を形成する前に、耐食性付与のための下地皮膜として、クロメート処理、ベーマイト処理、ジルコニウム処理といった無機系皮膜;アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の耐食性を有する有機樹脂皮膜を、アルミニウム基材表面に設けるのが好ましい。無機系皮膜の形成には、浸漬処理、スプレー処理、ロールコーターによる塗布が適用できる。有機樹脂皮膜の形成には、浸漬処理、ロールコーターによる塗布の両方が適用できる。
親水性被膜としては、親水性を有するものであれば特に限定されるものではなく、無機系被膜、有機樹脂系被膜、無機/有機樹脂の複合系被膜を用いることができる。
本発明では、親水性被膜に防菌防黴性を付与すべく抗菌防黴剤が添加される。本発明における抗菌防黴剤とは、抗菌性及び防黴性の少なくともいずれか一方を有するものであって、抗菌性及び防黴性の両方を有するものが好ましい。抗菌防黴剤としては、イソチアゾリン系、アルデヒド系、ベンズイミダゾール系、ハロゲン系、カルボン酸系、スルファミド系、チアゾール系、トリアゾール系、フェノール系、フタルイミド系、ナフテン酸系、ピリジン系等の有機系、Ag、Cu、Zn等の無機系が挙げられるが、その中でも、ジンクピリチオン、即ちビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)−ジンク、ならびに、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジンが、親水性等の被膜物性に影響を及ぼし難いこと、水不溶性、熱安定性に優れることから好ましい。したがって、ビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)−ジンク及び2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジンの少なくとも一方を用いるのが好ましい。
また、抗菌防黴剤はその粒径を5μm以下とするのが好ましい。5μmを超えると塗膜から抗菌剤が脱落する可能性が大きくなる。
また、抗菌防黴剤は溶媒に難溶性のものが多く、水性の親水性塗料に添加しても沈降や凝集等を起こし良好な混合状態の塗料組成物が得られない。このような塗料組成物を塗装しても塗装ムラ等を生じるために種々の不具合が生じる。また、溶媒に難溶性であるため、親水性塗料に多量に添加することができない。その結果、得られる抗菌防黴性が不十分であったり、抗菌防黴性の持続期間が短くなるなどの障害も生じる。
本発明の親水性被膜には、必要に応じて、タンニン酸、没食子酸、フイチン酸、ホスフィン酸等の防錆剤;ポリアルコールのアルキルエステル類、ポリエチレンオキサイド縮合物等のレベリング剤;相溶性を損なわない範囲で添加されるポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミド等の充填剤;フタロシアニン化合物等の着色剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩系等の界面活性剤;酸化亜鉛、酸化シリコン(シリカ)、酸化アルミ(アルミナ)、酸化チタン等の無機酸化物等;の添加剤を添加することができる。
本発明のアルミニウム基材面に親水性被膜を形成するには、脱脂等の前処理や酸洗浄等を施したアルミニウム材表面に耐食性の下地皮膜を形成し、その表面に親水性被膜用の液状の塗料組成物を塗装(塗布)しこれを焼付ける。上述のように、前処理や酸洗浄、ならびに、耐食性下地皮膜の形成は必須ではない。
このようにして作製されるアルミニウム塗装板は、その表面にプレス成形加工用の揮発性プレス油を塗布してからスリット加工やコルゲート加工等の成形加工を施すことにより、所望のフィン形状からなるプレコートアルミニウムフィン材が作製される。このようなプレコートアルミニウムフィン材は、例えば空調機用熱交換器のフィン材として、特に室内機のフィン材として好適に用いられるが、フィン材間の結露等を防止する用途であれば、空調機用熱交換器に限定されるものではない。
樹脂成分として、アクリル樹脂と鹸化度92〜99モル%で平均重合度1800のポリビニルアルコール(PVA)とからなるもの、抗菌防黴剤として、ジンクピリチオン(ZPT)を含有する塗料組成物を以下のようにして調製した。
作製したアルミニウム塗装板を流量5L/分の水道水に240時間浸漬した後に、ゴニオメーターで純水の接触角を測定した。表1中の記号の意味は以下の通りであり、○を性能を満足する合格とした。
○:接触角が15°以下であり非常に良好であることを示す。
△:接触角が15゜を越え、かつ30°以下であり、良好であることを示す。
×:接触角が30゜を越え不良であることを示す。
JISZ2371による塩水噴霧試験により評価した。試験後500時間における試料の表面を目視で観察した。○を性能を満足する合格とした。
○:貫通孔が形成されておらず非常に良好であることを示す。
△:形成された貫通孔が5個以下であり良好であることを示す。
×:形成された貫通孔が6個異常であり不良であることを示す。
1.抗菌力試験
JIS Z 2801の試験法に従って、下記のようにして評価した。
(1)使用培地
1/100普通ブイヨン培地、SCDLP培地を用いた。
(2)供試菌
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)を用いた。
(3)抗菌力試験方法
10mL生理食塩水で各菌懸濁液を調製した。これを100倍希釈した普通ブイヨン培地に菌数が105個/mLになるように接種した。滅菌済みのプラスチックシャーレに50×50mmに切り取った試料を入れた。試料中央に調整した菌液を0.1ml滴下した。上部をポリエチレンフィルムで覆い菌液を密着させ、35℃に保った培養庫内に保管した。24時間後にSCDLP培地10mLを注入し菌液を洗い出した。洗い出した溶液中の菌数をスパイラルプレイタ−法により測定した。〔(接種菌数−試験後菌数)/接種菌数×100〕によって表わされる減菌率(%)を用いて評価し、99%以上を合格とした。
JIS Z 2911の試験法に従って、下記のようにして評価した。
(1)使用培地
JIS無機塩寒天培地を用いた。
(2)供試菌
Aspergillus niger、Aureobasidium pullulans、Gliocladium virens、Penicillium
Funiculosumを用いた。
(3)胞子懸濁液
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.005%水溶液を用いた。
(4)防カビ試験方法
90mmφのプラスチックシャ−レにあらかじめ滅菌固化させておいたJIS無機塩寒天培地中央に、50×50mmに切り取った試験片を貼り付けた。これに供試菌の胞子懸濁液をマイクロスプレ−で接種し、28±2℃で培養する。28日経過後のカビの発育状態を観察した。下記の基準で評価し、0を合格とした。
0:表示倍率50倍の観察で発育が認められない。
1:肉眼では発育がほとんど認められないが、顕微鏡では明白に見える。
2:肉眼で発育が明白に見え、試験表面の25%を越えない。
3:肉眼で発育が明白に見え、試験表面の25%を越える。
耐食性の下地皮膜として塗布型クロメート皮膜に代えてエポキシ樹脂を用いた以外は、実施例1〜3及び比較例1、2と同様にして行なった。なお、エポキシ樹脂の下地皮膜の形成条件は、アルミニウム基材温度:20℃、処理液温度:20℃、塗装から乾燥までの時間:1秒、乾燥条件:風速15m/秒、乾燥温度280℃、乾燥時間10秒、エポキシ樹脂形成量(焼付け後):1.0g/m2)であった。
このようにして得られたアルミニウム塗装板について親水性、耐食性、抗菌防黴性を実施例1〜3及び比較例1、2と同様にして測定、評価した。結果を、分散溶液のポリエチレングリコール分子量と共に表2に示す。
実施例7〜10は、実施例1〜3と同様にして行なった。比較例5〜7は、事前分散を行なわない以外は比較例1と同様にして行なった。ここで、事前分散を行なわないとは、
32.3gのジンクピリチオンと、175gのポリエチレングリコール5%水溶液を別々に親水性塗料に直接加えて塗料組成物を調製したものである。このようにして得られたアルミニウム塗装板について親水性、耐食性、抗菌防黴性を実施例1〜3及び比較例1、2と同様にして測定、評価した。結果を、分散尿液のポリエチレングリコール分子量と共に表3に示す。
2‥‥‥水性媒体
3‥‥‥抗菌防黴剤
4‥‥‥分散溶液
5‥‥‥塗料組成物
Claims (4)
- アルミニウム又はアルミニウム合金の基材と、当該基材の少なくとも一方の面に形成した親水性被膜とを備えたアルミニウム塗装板であって、
前記親水性被膜が、親水性塗料に抗菌防黴剤を加えた塗料組成物から形成され、
当該塗料組成物が、前記親水性塗料と、5000〜20000の分子量でポリオキシエチレン鎖を有する物質で抗菌防黴剤を取囲んだ粒状体が水性媒体に分散した分散溶液とを含み、
前記親水性被膜において、前記抗菌防黴剤が前記親水性被膜の厚さ方向の表面側において前記基材側よりも高濃度で含有されており、
前記抗菌防黴剤がビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)−ジンク及び2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジンの少なくとも一方を含有することを特徴とするアルミニウム塗装板。 - 請求項1に記載のアルミニウム塗装板を用いたプレコートアルミニウムフィン材。
- アルミニウム又はアルミニウム合金の基材と、当該基材の少なくとも一方の面に形成した親水性被膜とを備えたアルミニウム塗装板の製造方法であって、
5000〜20000の分子量でポリオキシエチレン鎖を有する物質で抗菌防黴剤を取囲んだ粒状体が水性媒体に分散した分散溶液を調製する工程と、当該分散溶液を親水性塗料に加えて塗料組成物を調製する工程と、当該塗料組成物を前記基材の少なくとも一方の面に塗布して焼付ける工程と、を含み、
前記抗菌防黴剤がビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)−ジンク及び2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)−ピリジンの少なくとも一方を含有する
ことを特徴とするアルミニウム塗装板の製造方法。 - 請求項3に記載の製造方法によって製造されたアルミニウム塗装板を用いて、その表面に揮発性プレス油を塗布する工程と、揮発性プレス油を塗布したアルミニウム塗装板をスリット加工又はコルゲート加工する工程と、を含むことを特徴とするプレコートアルミニウムフィン材の製造方法。
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