加速度センサーは、エアーバッグ作動用に多く用いられ、自動車が衝突した衝撃を加速度として検知する。自動車ではX軸,Y軸の加速度を測定するため1軸もしくは2軸機能で充分であった。また、測定する加速度が非常に大きかった。
最近は、加速度センサーが携帯端末機器やロボット等にも使用されることが多くなり、空間の動きを検出するためX,Y,Z軸の加速度を測定する3軸加速度センサーが要求されてきている。また、微小な加速度を検出するために高分解能で、小型であることが要求されている。
多くの加速度センサーは錘や可撓部の動きを電気信号に変換する方法を採用している。これらには、錘の動きを錘と連結した可撓部に設けたピエゾ抵抗素子の抵抗変化から検出するピエゾ抵抗素子型,錘の動きを固定電極との間の静電容量変化で検出する静電容量型などがある。
特許文献1及び特許文献2に示す従来の3軸加速度センサーに関して簡単に説明する。従来の3軸加速度センサー101として、分解斜視図を図13に、図13におけるA−A′方向の断面図を図14に示す。
3軸加速度センサー101は、セラミック製のケース102内に3軸加速度センサー素子103と、3軸加速度センサー素子103からの信号の増幅や温度補償等を行う制御用のIC104を積層して固定し、蓋105とケース102を接合し、加速度センサー素子103とIC104をケース102内に密封する。
図14に示すように、3軸加速度センサー素子103は樹脂接着材106を用いてケース102に固着され、IC104は樹脂接着材107を用いて3軸加速度センサー素子103上に固着される。
3軸加速度センサー素子103はセンサー端子108を、IC104はIC端子109を、ケース102はケース端子110をそれぞれ有し、センサー端子108とIC端子109、およびIC端子109とケース端子110の間をワイヤー111で接続される。こうしてセンサーの信号はケース102に設けたケース端子110と接続する出力端子112から外部に取り出される。蓋105は例えばAuSu半田などの接着材102aでケース102に固着される。
図15は、3軸加速度センサー素子103の構造を示す平面模式図である。方形の支持枠部113と錘部114と対を成す梁部115とを有し、錘部114が2対の梁部115で支持枠部113の中央に保持されている。梁部115にはピエゾ抵抗素子が設けられている。
一対の梁部115にはX軸ピエゾ抵抗素子116とZ軸ピエゾ抵抗素子118が、他の一対の梁部115にはY軸ピエゾ抵抗素子117が設けられている。一対の梁部115の各付根部4ヶ所にピエゾ抵抗素子を配し、これらを配線でつないでブリッジ回路を構成することで、ピエゾ抵抗素子の均一な抵抗変化はキャンセルでき、またブリッジ回路の接続の仕方を変えることで、XおよびY軸とZ軸の加速度を分離して検出することができる。また、支持枠部113上にはセンサー端子108が配列している。
ブリッジ回路による加速度検出の仕組みについて図16(a)〜(d)を用いて説明する。図16(a),図16(b)はそれぞれ、X方向とZ方向に加速度がかかったときの錘部114の動きをXZ断面で示している。
例えば図16(a)のようにX方向に加速度が与えられたとき、錘部114は上端中央あたりを中心に回転し、梁部115が変形する。梁部115の変形に伴って、梁部115上面に設けられた4つのX軸ピエゾ抵抗素子X1〜X4に加わる応力が変化し、抵抗も変化する。この場合、X1,X3が引張、X2,X4が圧縮の応力変化となり、図16(c)に示すX軸検出用ブリッジ回路の中点電位に差が生じ、加速度の大きさに応じた出力が得られる。
一方、図16(b)に示すようにZ方向の加速度がかかった場合には、ピエゾ抵抗素子Z2,Z3が引張、Z1,Z4が圧縮の応力変化となり、図16(d)のZ軸検出用ブリッジ回路により出力が得られる。X軸ピエゾ抵抗素子X1〜X4と、Z軸ピエゾ抵抗素子Z1〜Z4は同じ梁部115上に形成されるが、例えばX方向加速度に対して図16(a)のように梁部115が変形しても、図16(d)のZ軸検出用ブリッジ回路では抵抗変化がキャンセルされ、出力は変化しない。すなわち、X軸加速度とZ軸加速度を分離して検出することができる。Y軸加速度の検出は、X軸と同様にして、もう一対の梁部115に形成したピエゾ抵抗素子で行う。
一方、特許文献3に示すように、半導体実装技術でよく用いられている樹脂製の保護パッケージ技術を用いて、小型かつ安価な加速度センサーを実現する方法が知られている。その方法では、可動部を有する3軸加速度センサー素子103をモールド樹脂から保護するため、3軸加速度センサー素子の上下に蓋を接合して封止しておく技術が用いられる。
図17(a)は、この方法で上下に蓋を接合した3軸加速度センサー素子の組み立て構造の断面図を、図13(b)は3軸加速度センサー素子120の平面図を示す。3軸加速度センサー素子120の上下に上蓋121および下蓋122を接合し、3軸加速度センサー素子120の可動部を密閉空間内に封止する。3軸加速度センサー素子120と上蓋121および下蓋122との接合は、金属接合や陽極接合など様々な方法がある。ここでは、一例に金属接合を示す。
図17(b)に示すような接合金属領域123を3軸加速度センサー素子120の表裏両面に形成しておく(裏面の接合金属領域は図示せず)。上蓋121および下蓋122にも接合金属領域(図示せず)を形成し、これらを重ねあわせ、加圧,加熱して接合する。この接合工程は、シリコンウエハから3軸加速度センサー素子120を個片化する前に、3軸加速度センサー素子120が多数形成されたシリコンウエハ(図示せず)と、同じピッチで上蓋121を多数形成した上蓋シリコンウエハ(図示せず)、下蓋122を多数形成した下蓋シリコンウエハと(図示せず)を接合する。そのため、ウエハレベルパッケージ(Wafer Level Packing)と称する(以後、WLPと表記する)。WLPで密閉空間を形成後、ダイシングによって、一つ一つのチップに個片化する。以後、WLPにより封止した後に個片化したチップの名称をセンサー組立体124と表記する。
次いで、樹脂でパッケージ化された3軸加速度センサー125について図18の断面図を用いて説明する。リードフレーム126上に、制御用のIC127を、IC127の上にセンサー組立体124をそれぞれ接着材128,129で固定する。
センサー組立体124のセンサー端子130とIC127のIC端子131をワイヤー132を用いて接続し、同じくIC端子131とリードフレーム126の端子間をワイヤーで接続する(図示せず)。
センサー組立体124とIC127,リードフレーム126が組み立てられた構造体を、トランスファーモールド法を用いモールド樹脂133でモールドする。金型内で樹脂を硬化させた後、金型から取り出し3軸加速度センサー125が得られる。複数の3軸加速度センサーを樹脂モールドまで一括して処理し、金型から離型後にダイシングして個々の3軸加速度センサーに分離する方法も取られる。
上記のWLPと樹脂モールドパッケージを用いた加速度センサーでは、シリコンウエハの段階で、3軸加速度センサー素子120の可動部を保護することができるので、以後の工程において取り扱いが容易であり、厳しい異物管理を必要としない。また、3軸加速度センサー素子120の可動部が守られているため、トランスファーモールド法により周囲を封止することができる。こうして高価なセラミックパッケージを用いることなく、従来のICチップによく用いられる樹脂モールドパッケージの技術でパッケージ組み立てができ、小型で安価な3軸加速度センサーを実現できる。
特開2003−172745号公報
特開2006−098321号公報
特開平10−170380号公報
以下、図面を参照しながら発明の一実施例における加速度センサーについて説明する。図1,図2は、本実施例の加速度センサーにおける加速度センサー素子10の構造を示している。図1は平面図、図2は図1のk−k′断面図である。
図1の加速度センサー素子10は、例えば従来例で示した図13及び図14のように組み立てられる加速度センサーや、図18に示した蓋を接合して気密封止された後、樹脂製の保護パッケージに組み立てられる加速度センサーなどに適用できる。そこで本実施例では特に加速度センサー素子10を中心に詳細に説明する。
本実施例の加速度センサー素子10は、支持枠部11内に、錘部12が、可撓性を有する4本の梁部13によって支持されている。錘部12は、4つの本体部とその4つの本体部と接続して梁部13と接続する中間部とからなる。
4本の梁部13をそれぞれ第1梁部13a,第2梁部13b,第3梁部13c,第4梁部13dと表記する。図1における加速度センサー素子10では、X軸方向に伸びる第1梁部13aと第2梁部13bがX軸とZ軸方向の加速度を検知するために用いられる。
第1梁部13aと第2梁部13bの支持枠部11側と錘部12側の付根付近には、X軸ピエゾ抵抗素子14とZ軸ピエゾ抵抗素子16が、図16で説明したように、一対の梁部13にそれぞれ4つずつ設けられている。Y方向に伸びる第3梁部13cと第4梁部13dは、Y軸ピエゾ抵抗素子15をそれぞれ二つずつ有している。Z軸ピエゾ抵抗素子16は、X方向とY方向のどちらの梁部上に配置しても良いが、本実施例ではX方向の第1梁部13aと第2梁部13b上に形成した。従って、図1に示すように、ピエゾ抵抗素子14〜16は各軸毎に梁部13の付根付近に設けられている。各軸のピエゾ抵抗素子は、図1では図示していない配線で接続してブリッジ回路を構成した。
外力により加速度が加わることで錘部12が図16に示したように変位し、梁部13が変形することでピエゾ抵抗素子の電気抵抗が変化する。各軸の4つのピエゾ抵抗素子の抵抗変化量の差により生じる電位差を、ブリッジ回路で取り出すことで加速度の値として検出できる。ブリッジ回路の構成方法は図16に示したのと同様である。図1においては、各梁部13は空隙部19を有する略矩形状の応力緩衝部17を有している。各梁部において、応力緩衝部17は、梁部の長手方向に対する中心線18よりも錘部12に近く配置した。
加速度センサー素子10の製造方法を、図2を参照しながら簡単に説明する。図2は図1のk−k′断面図である。加速度センサー素子10は、約400μm厚のシリコン層に約1μmのシリコン酸化層を挟んで約6μmのシリコン層を有するSOIウエハを使用して加工した。シリコン酸化膜層はドライエッチングのエッチングストップ層として用い、構造体は2層のシリコン層に形成した。以下、薄い方の第1シリコン層を第1層20,厚い方の第2シリコン層を第2層21と称し、シリコン酸化膜層と接合していない第1層の表面を第1面22,第2層の表面を第2面23,シリコン酸化膜層を介した接続面を第3面24と称す。
半導体ピエゾ抵抗素子の形状をフォトレジストでパターニングし、第1面22にボロンを1〜3×1018原子/cm3打ち込み半導体ピエゾ抵抗素子を形成した。同様に、ピエゾ抵抗素子よりも高濃度でボロンを打ち込んだP型配線をピエゾ抵抗素子に接続するように形成した。さらに、第1面22にシリコン酸化膜を形成しピエゾ抵抗素子を保護した。シリコン酸化膜上にアルミニウム系金属をスパッタリングして金属配線を形成し、シリコン酸化膜に形成したスルーホールを介して、P型配線と接続した。ピエゾ抵抗素子上に形成したシリコン酸化膜は、第1層20のシリコンと金属配線間の絶縁膜としても働く。シリコン酸化膜および金属配線はフォトリソグラフィにより所望の形状に加工した。
次に、第1面22にフォトレジストパターンを形成した後、ドライエッチングにより梁部13,錘部12,支持枠部11の形状を加工した。さらに、第2面23にフォトレジストパターンを形成した後、ドライエッチングにより錘部12と支持枠部11の形状を加工した。第1層20と第2層21との間に残ったシリコン酸化膜層は、ウェットエッチングで除去した。
以上の処理により、錘部12と、錘部12の周囲を囲む支持枠部11は、第1層20から第2層21にかけて形成される。また、梁部13は第1層20に形成される。
従来例で示したように、WLP技術によって加速度センサー素子10の上下を、例えばシリコンからなる蓋部で封止して、センサー組立体124とした(図3参照)。そのため、上記ドライエッチング工程の前に、金属接合に用いる金属薄膜をウエハの第1面22および第2面23に形成しておき、蓋となるウエハ2枚には同様の金属薄膜と金属半田を設けておき、3枚のウエハを重ねて加圧,加熱して接合した後、ダイシングにより個辺化し、センサー組立体124を得た。
また、梁部13の長手方向に対する中心線18(図1中では一点鎖線)よりも錘部12に近い位置に応力緩衝部17を設けた。加速度センサー素子10は、図1に示すように各梁部13に応力緩衝部17を有している。応力緩衝部17は矩形形状をしており、中央に空隙部19を有する。応力緩衝部17は梁部13と同様に第1層20に形成し、梁部13と同じ厚みとした。図2に示す様に、k−k′断面部は応力緩衝部17を境に、梁部13が枠側梁部25と錘側梁部26とに分かれた形となる。
図3に本実施例の加速度センサー素子10を用いた加速度センサー実装構造体136の断面模式図を示す。3軸加速度センサー素子10にWLPで蓋を接合したセンサー組立体124に、図18で示したようにリードフレーム126と制御用IC127とに電気的に接続した状態で、加速度センサー素子10を内部に内包するように樹脂でパッケージ化した樹脂パッケージ部である保護パッケージに組み立てた3軸加速度センサーを、製品基板134に半田135で接合した状態を示している。
半田接合の際には250℃程度に加熱された後、常温まで冷却されるため、加速度センサー実装構造体136には各所に熱応力が発生する。構成部材のおよその熱膨張係数は、センサー組立体124および制御用IC127を構成するシリコンが2.5×10-6/℃、モールド樹脂133が6〜9×10-6/℃、リードフレーム126は銅製で15×10-6/℃、製品基板134が15〜20×10-6/℃である。
冷却時の熱収縮の際には、センサー組立体124は、モールド樹脂133からの圧縮力を受け、また下方にあるリードフレーム126および製品基板134はさらに収縮するため、センサー組立体124はさらに圧縮力を受けるとともに、上凸方向に反らされる。3軸加速度センサー素子10にこうした外力が加わることによって、ブリッジ回路を構成する4つのピエゾ抵抗素子に抵抗変化が発生し、それらが均一な変化でなければ、3軸の出力の少なくともいずれかの出力が変化してしまい、オフセット変化が発生してしまう。
本実施例では、梁部13に応力緩衝部17を設けたことにより、加速度センサー素子10が圧縮の外力を受け、梁部13の長さ方向に圧縮力がかかった場合においても、応力緩衝部17の変形によって外力を吸収できた。応力緩衝部17がないと、圧縮の外力により梁部13が座屈変形し、錘部12がZ方向に大きく変位して、大きなオフセット変化が発生してしまう恐れがあるが、応力緩衝部17により外力を吸収することで、座屈変形によるオフセット変化を抑えることができる。また、座屈変形が発生すると、単位加速度に対する錘部12の変位量が変化する。センサー出力は錘部12の変位量に比例するので、座屈変形によりセンサー感度が変化してしまう。応力緩衝部17の効果により、外力によるセンサー感度の変化を抑えることができた。
さらに本実施例では、応力緩衝部17を梁部13の長手方向に対する中心線18よりも錘部12に近く配置したことで、製品基板への実装前後のオフセット変化を小さくできた。
前述のようにオフセット変化はブリッジ回路を構成する4つのピエゾ抵抗素子の抵抗変化が異なる場合に発生する。3軸加速度センサーを製品基板に実装したとき、製品基板から受ける力の影響によってピエゾ抵抗素子の応力が変化する。4つのピエゾ抵抗素子の応力変化を均一にできればオフセット変化をゼロにできるが、製品基板は適用される製品により厚さや熱膨張係数が変わるため、いつもゼロにすることは困難である。製品基板の仕様がばらついても、オフセット変化が小さくなるような構造にすることが望ましい。
発明者らは、熱応力シミュレーションおよび試作評価の結果から、加速度センサー素子10にかかる圧縮外力および反り変形の影響で、支持枠部11に近いピエゾ抵抗素子(図16(b)のZ1,Z4。以下枠側ピエゾ抵抗素子27と表記する)と、錘部12に近いピエゾ抵抗素子(図16(b)のZ2,Z3。以下錘側ピエゾ抵抗素子28と表記する)の応力変化に差が生じ、Z軸のオフセット変化が発生していることを見出した。さらに、圧縮外力および反り変形に対するオフセット変化の程度が、応力緩衝部17の梁部長手方向の位置に影響されることを発見した。
本実施例のように、加速度センサー素子10が圧縮力を受け、上凸に反らされている場合には、応力緩衝部17の位置を錘部12の方向にシフトすることで、圧縮外力および反り変形の変化に対するオフセット変化の感度を低減することができた。
前述のように樹脂製の保護パッケージに組み立てた時点で加速度センサー素子10は圧縮外力と上凸反り変形を受けており、製品基板への実装により、圧縮外力と上凸反り変形の量が変化していると考えられるので、応力緩衝部17を錘部12の方向にシフトすることで、基板実装前後のオフセット変化を小さくできた。
図4に梁部13の詳細寸法を示す。梁部13は、応力緩衝部17と、支持枠部11と応力緩衝部17をつなぐ枠側梁部25と、錘部12と応力緩衝部17をつなぐ錘側梁部26からなる。応力緩衝部17は、梁部13の長手方向への曲げ変形およびねじり変形しやすい形状であるほど、梁部13の長手方向に加わる外力の吸収効果が大きい。
そのため、空隙部19の幅L3は、梁部13の幅L2より大きくし、応力緩衝部17の枠辺のうち、梁部13の幅方向に伸びた部分(幅方向枠辺29と表記する)がなるべく長くなるようにした。ピエゾ抵抗素子は枠側梁部25および錘側梁部26上で、支持枠部11および錘部12に近い位置に形成される。支持枠部11および錘部12に近い位置にするほど、錘部12の変位に対するピエゾ抵抗素子の応力変化が大きくなり、センサー感度が高くなるためである。
枠側梁部25および錘側梁部26は、支持枠部11および錘部12に近い部分の幅L1と、応力緩衝部17に近い部分の幅L2が異なる形状とした。X方向に伸びる梁部ではX軸ピエゾ抵抗素子およびZ軸ピエゾ抵抗素子が形成されるので、それらを配置するのに十分な幅を有するようにL1が決められる。
一方、応力緩衝部17に近い部分は、ピエゾ抵抗素子が形成されないので幅を狭くできる。L2を短くするほど、幅方向枠辺29を長くして外力を吸収しやすくできるので、L2はL1よりも短くして、間をテーパー形状でつないだ形状とした。
また、幅方向枠辺29の幅L5を細くするほど、外力吸収効果が大きくなる。梁部13の形状は、梁部の幅方向に対する中心線n−n′に対して線対称に形成した。梁部の長さ方向に対する中心線m−m′(中心線18)に対しては、応力緩衝部17の中心線p−p′が錘部12の方向にシフトした形状とした。つまり、枠側梁部25の長さL7を錘側梁部26の長さL8より長くした。
本実施例では各部の寸法は次の様にした。付根付近の梁幅L1は28μm、応力緩衝部17付近の梁幅L2は18μm、空隙部19の幅L3は72μm、応力緩衝部17の梁幅方向長さL4は100μm、幅方向枠辺29の幅L5は11μm、応力緩衝部17の梁長手方向の長さL6は52μm、枠側梁部25の長さL7は116.5μm、錘側梁部26の長さL8は146.5μm、梁部13の長さL9は315μm、応力緩衝部17の錘部12の方向へのシフト量L10は15μmとした。また、変形時の応力集中を防ぐため、梁部の付根および枠型の応力緩衝部の各コーナー部には適度なR形状を形成した。
図5にピエゾ抵抗素子,P型配線,金属配線の配置を模式的に示す。図中において、応力緩衝部17のシフト,コーナー部のR形状などは省略した。
X軸ピエゾ抵抗素子14およびZ軸ピエゾ抵抗素子16を配置した第1梁部13aまたは第2梁部13bを示している。梁部13の梁幅方向に対する中心線n−n′に対して対称とするために、X軸ピエゾ抵抗素子14は中心線n−n′に対称に2箇所に形成し、P型配線30で接続した。Z軸ピエゾ抵抗素子16はX軸ピエゾ抵抗素子14の外側に同様に2箇所に形成し、P型配線30で接続した。X軸ピエゾ抵抗素子14およびZ軸ピエゾ抵抗素子16の残りの端部は、P型配線30に接続して、梁部13の外側まで引き出した。
錘部12側から支持枠部11側への配線引き出しのために、梁部13上には3本の金属配線31を形成した。金属配線31の残留応力の影響を考慮し、金属配線31のパターンも中心線n−n′に対して対称とすることが望ましい。本実施例のように金属配線が奇数本の場合には、応力緩衝部17において1本の配線を分岐することで対称にできる。図5では、中央の金属配線を、応力緩衝部17で両側に分岐するようにした。
応力緩衝部17の働きに付いて、以下図を用いて詳細に説明する。図6(a)は、梁部13の長手方向に圧縮力が加わったときの応力緩衝部17の変形状態を模式的に示した斜視図である。同様に平面の模式図を図6(b)に示す。図6(b)のように、応力緩衝部17の幅方向枠辺29が曲げ変形することで梁部13の長手方向にかかる圧縮力を吸収できる。また、図6(a)のように、応力緩衝部17がねじり変形することで、枠側梁部25および錘側梁部26が厚さ方向に曲げ変形しやすくして、上記圧縮力を吸収する効果もある。
図7(a)と図7(b)に梁部の断面方向の模式図を示す。図7(a)は枠型の応力緩衝部を有する本実施例の梁部の断面方向の模式図である。図7(b)は錘部12から支持枠部11まで直線的につながった従来の梁部32の断面方向の模式図である。本実施例の梁部13は図7(a)に示すように、枠型の応力緩衝部17がねじり変形することにより、枠側梁部25,錘側梁部26を厚み方向に曲げ変形し易くして、圧縮力を逃がし易くする効果がある。
本実施例の加速度センサー素子10では、梁部13の表面にシリコン酸化膜などの絶縁膜や金属配線が形成されており、これらは梁部13の材料であるシリコンと熱膨張係数が異なるため、絶縁膜や金属配線の成膜温度から常温に冷却されるまでの温度変化に応じて熱応力を発生する。
本実施例では、金属配線よりも絶縁膜の応力が支配的であり、シリコン酸化膜はシリコンよりも熱膨張係数が小さいため、梁部13は絶縁膜のある表面側(第1面22側)が凸になる方向に反りやすい。応力緩衝部がなく直線的な従来の梁部32の場合には、曲率が連続しなければいけないので、梁部32の中央部が自然な反り方向とは反対向きに反り、図7(b)のような下向きの凸の形状になる。この形状は不安定であり、錘部が上下に変位した形状など、別の形状へ移行しやすい。こうした状態で梁部の長手方向にかかる外力が変化すると、センサー感度の変化が大きくなってしまう。本実施例の加速度センサー素子10では、応力緩衝部17のねじり変形の効果により、図7(a)に示したように、応力緩衝部17が変曲点になり枠側梁部25,錘側梁部26の大部分が自然な反り方向に変形した安定な形状になるため、他の変形形状に移行し難くなり、センサー感度の変化を小さくできる。
さらに、本実施例の加速度センサー素子10では、応力緩衝部17を、梁部13の長手方向に対する中心線18よりも錘部12に近く配置することで、加速度センサー素子10にかかる圧縮力および上凸反りの変化に対するオフセット変化を小さくできた。そのメカニズムの詳細を図8を用いて説明する。
図8は加速度センサー素子10が圧縮力および上凸反りを受けたときの変形形状を示す断面模式図である。上凸反りを受けた状態で圧縮力が加わると、錘部12が上方向に移動していき、各ピエゾ抵抗素子の応力変化は、枠側ピエゾ抵抗素子27よりも錘側ピエゾ抵抗素子28の方が、引張方向の応力変化が大きくなる。一方、梁部13が圧縮を受けるほど、枠側梁部25と錘側梁部26は変曲点である応力緩衝部17との接続端部において下向きの力を受ける。
ここで、応力緩衝部17が錘部12の方向にシフトしていると、錘側梁部26よりも枠側梁部25の方が長いため、前記下向きの力のモーメントの作用が、枠側ピエゾ抵抗素子27の方が大きくなり、引張方向の応力変化が大きくなる。このように、応力緩衝部17をシフトした効果は、錘部12の変位によるピエゾ抵抗素子応力変化の差異をキャンセルする方向に働き、トータルでピエゾ抵抗素子の応力変化が均一になる方向に働いて、オフセット変化を小さくできる。
枠型の応力緩衝部17の形状は本実施例で示した形状に限定されるものではない。例えば、枠型形状を複数並べて形成してもよい。応力緩衝部17の効果を高めるために、枠型形状を3つ連続して形成した梁部形状の例を図9の平面図に示す。
図9に示した応力緩衝部17と同じ寸法の形状を直列に3つ配置した。ただし、枠側梁部25および錘側梁部26のテーパー部を形成する領域が取りにくいので、枠側梁部25および錘側梁部26の幅は、付根付近の幅L1で一定とし、その幅で応力緩衝部17に接続するようにした。枠型形状が3つあることで、1つの場合よりも外力の吸収効果が高くなり、外力変化に対する感度の変化、およびオフセット変化をさらに小さくすることができた。
応力緩衝部17の他の実施形態について以下説明する。前述の応力緩衝部17と異なるのは、応力緩衝部17が九十九折形状である点である。この九十九折形状の応力緩衝部17を備えた梁部13の構造を示す平面図を図10に示す。
九十九折形状の応力緩衝部17は、応力緩衝部17の中心点に対して点対称の形状をしている。応力緩衝部17は、前述したように梁部の長手方向への曲げ変形およびねじり変形しやすい形状であるほど、外力の吸収効果が大きい。梁幅方向の九十九折内辺間の距離L11は、梁部の応力緩衝部付近での幅L2より大きくした。九十九折部の角部には適度なR形状を設けた。
前述の実施形態と同様に、九十九折部が梁部13の長手方向の曲げ変形、およびねじり変形することで、梁部13の長手方向にかかる外力を吸収でき、圧縮や反りに対して感度およびオフセットの変化を小さくできた。枠型の応力緩衝部17では、梁幅方向に両側に張り出した枠型形状が一体となって変形するのに対して、九十九折型の応力緩衝部17は、片側の折り返し部がそれぞれ単独に変形することができ、外力の吸収効果を大きくできる。その一方で、梁幅方向への曲げに対して剛性が小さいため、梁部が梁幅方向に曲げ変形しやすくなる。そうした曲げ変形が発生すると、梁部の長手方向の中心線m−m′に対する対称性を失うため望ましくないが、両側に折り返し部を設けることで一方向に偏って梁幅方向の曲げ変形が発生することを防ぐことができる。なお、枠型の応力緩衝部17では、梁幅方向への曲げに対する剛性は従来の直梁に比べても高くなるので、上記梁幅方向の曲げ変形の影響を小さくできる。また、枠型の応力緩衝部17では、中心線m−m′に対して対称な形状であり、変形の偏りからくる出力変化を迎えられる。
図11にピエゾ抵抗素子,P型配線,金属配線の配置を模式的に示す。図11において、応力緩衝部のシフト、コーナー部のR形状などは省略した。X軸ピエゾ抵抗素子およびZ軸ピエゾ抵抗素子を配置した第1梁部13aまたは第2梁部13bを示している。ピエゾ抵抗素子を配置した梁部13の付根付近は第一実施例と同様であるが、応力緩衝部17における金属配線31のパターンが異なる。枠型の応力緩衝部では梁幅方向の両側に分岐するのに対して、九十九折形状では分岐しないので、3本の配線を応力緩衝部17の形状に沿って形成した。
本実施例の九十九折形状の応力緩衝部17も、枠型形状を複数並べて形成してもよい。応力緩衝部17の効果を高めるために、九十九折形状を2つ連続して形成した梁部形状の例を図12の平面図に示す。図11に示した応力緩衝部と同じ寸法の形状を直列に2つ配置した。九十九折形状が2つあることで、1つの場合よりも外力の吸収効果が高くなり、外力変化に対する感度の変化、およびオフセット変化をさらに小さくすることができた。
本発明の加速度センサー素子は、従来例の図17,図18に示したような方法で樹脂モールドパッケージに組み立てた加速度センサーとすることができる。図9に示した3つの枠型形状を並べた形状の応力緩衝部を有する梁部を持つ加速度センサー素子を、図18に示す構造の、サイズ2.5×2.5mm,厚さ1.0mmの樹脂製の保護パッケージに組み立て、特性を評価した。応力緩衝部の位置が梁部長手方向の中心にあるサンプル1と、図9に示したように錘部の方向に15μmシフトしたサンプル2を製作し、厚さ0.6mmの製品基板に搭載して、搭載前後のZ軸オフセット変化を比較した。その結果、温度25℃でのZ軸オフセット変化は、サンプル2がサンプル1の約1/3にまで低減できた。
以上により、本発明の実施例における加速度センサーは、例えば、従来例で示した樹脂製の保護パッケージに本発明を適用した加速度センサー素子を使用して加速度センサーを組み立てた場合においても、製品基板への実装前後でセンサー出力のオフセット変化が小さい加速度センサーを実現できる。
すなわち、梁部において、枠側梁部を錘側梁部より長くする、すなわち応力緩衝部を錘側に近く配置することにより、温度変化に対する保護パッケージ、および保護パッケージを製品基板に実装した実装構造体の特徴的な変形に対して、Z軸出力のオフセット変化を小さくすることができる。
本発明の対象となる加速度センサーは、製品基板への半田実装時、半田溶融温度まで加熱した後に常温まで冷却されるので、その間に熱応力を受ける。センサー組立体,モールド樹脂,リードフレームの熱膨張係数の違いから、冷却時に3軸加速度センサー素子は周囲からの力を受けて、圧縮および上凸反り方向に変形する。
さらに製品基板に実装すると、製品基板の熱収縮による力も加わり、上記圧縮および上凸反りの量が変化する。
本実施例の加速度センサーによれば、応力緩衝部を錘側に近く配置したことにより、圧縮および上凸反りの外力変化に対して、梁部の支持枠に近いピエゾ抵抗素子と、錘部に近いピエゾ抵抗素子の応力変化が均一になるようにできるので、上記外力変化に対してZ軸オフセット変化が小さい加速度センサーを実現できる。