JP5040794B2 - 二次電池集電体用ニッケル箔 - Google Patents

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本発明は、二次電池の集電体に用いるニッケル箔に関する。
携帯型電子機器は、小型化、作動の長時間化および高性能化が進み、その駆動電源には小型で高性能の二次電池(蓄電池)が使用されている。また最近は、コードレス電動工具などの電源としてもこの二次電池が使用されつつあり、ますます大容量化が要望されている。これらの二次電池の代表例には、ニッケル・水素電池またはリチウムイオン電池がある。
ニッケル・水素電池は、多孔性ニッケル基板にペースト状の水酸化ニッケルを塗布した正極と水素吸蔵合金粒のペーストを塗布した負極とから構成され、高いエネルギー密度を備える電池である。
リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を備え、自己放電も小さく、充電・放電のサイクル特性などに優れた性能を持っている。
ニッケル・水素電池の負極は、活物質の高密度化と密着性(担持性)を高めるため、多孔金属箔の両表面に活物質をスラリー状として塗布して乾燥した後、圧延ロールなどで圧着加工が施されて製造される。
特許文献1には、電池のエネルギー密度を高めるため、負極芯材として総厚さが20〜50μmのニッケルめっきした穿孔鋼箔、およびこの心材を熱処理し、引張強度と展性をもたせた穿孔鋼箔を用いたアルカリ蓄電池の発明が開示されている。この鋼箔は、穿孔(パンチング)加工を行うときの孔の形状が良く、しかも高速パンチングするために硬さを高くしているため、このままニッケルめっきを施した後に活物質を塗布し、圧着させると活物質の付着性が悪い。このためパンチング作業を圧延加工されたままで行い、ニッケルめっきを施した後、軟化焼鈍を行う方法が採られている。
蓄電池の高性能化は、高出力化することと高容量化することで得られる。電池容量を高めるには、(1)蓄電池の容積を大きくする、(2)活物質(水素吸蔵合金など)の性能を向上させる、(3)活物質の充填量を増やす、(4)電池の構成材料を小容積化する、といった方法がある。
上記(3)の活物質の充填量を増やすことおよび(4)の電池の構成材料を小容積化する対策として、負電極に種々改良を加えた提案がなされている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4など参照)。
これらの二次電池の電極は、活物質および結着剤などを非水溶媒でペースト状としたものを集電体(金属箔)の両表面に塗布、乾燥した後、ロールなどによって圧着処理を施して製造される。たとえば負極集電体には、電池の電解液と反応しないニッケル箔、銅箔または鉄箔にニッケルめっきを施したものなどがある。
これらの金属箔は、ロールによる圧延法または回転ドラム表面に金属を析出させる電解析出法によって製造される。そして活物質の担持性を改善するため金属箔に多数の孔を設けたり、表面粗さを調整することが提案されている。
多数の孔を設けた金属箔(以下、これを「多孔金属箔」という)は、たとえば特許文献4に、鋼板を冷間圧延によって厚さ50〜70μmの鋼箔とし、それにプレス穿孔機(パンチング・マシン)などを用いて多数の小孔を穿った後、その表面にニッケルめっきを施した厚さがおよそ60〜80μmのニッケルめっき鋼箔が開示されている。また、特許文献1には、電池のエネルギー密度を高めるため、負極芯材として総厚さが20〜50μmのニッケルめっきした穿孔鋼箔、またはこの心材を熱処理し、引張強度と展性をもたせた穿孔鋼箔を用いたアルカリ蓄電池が開示されている。
金属箔の表面に凹凸を形成させて活物質の担持性を改善する方法は、たとえば特許文献5に、金属箔の厚さが50μm以下で、その両面に高さが0.1〜20μmの凹凸が形成されている負極集電体を用い、負極の結着剤量を減少させて放電特性を改善したリチウム二次電池が開示されている。また、特許文献6には、電解析出箔からなり、その箔の主面の表面あらさが10点平均あらさにして3.0μmより小さく、この主面と他方の主面との表面あらさの差が10点平均あらさにして2.5μmより小さい集電体を正極および負極のいずれかに使用した非水電解液二次電池が開示されている。
特開平10−188994号公報 特公昭58−046827号公報 特開昭53−033332号公報 特開昭61−163569号公報 特開平6−260168号公報 特開平9−306504号公報
上記の金属箔(集電体)と電池の活物質との担持性を改善する方法は、多孔金属箔とすることやエッチング処理などで表面あらさを特定の範囲におさめることにあった。
本発明の目的は、多孔ニッケル箔とすることなく、また特別な表面処理をすることもなく、活物質との担持性を改善し、電気伝導性に優れたニッケル箔を提供することにある。
本発明者らは、活物質をニッケル箔の表面に塗布、乾燥した後、圧着加工を施した試験材を調査した結果、従来のニッケル箔に付与された表面あらさなどの小さな凹凸よりも大きな凹凸にすることによって活物質の担持性を改善できることを見いだし、本発明を完成した。
本発明の要旨は、下記(1)の二次電池集電体用ニッケル箔および(2)のそのニッケル箔を製造する方法にある。
(1)凹凸を有するニッケル箔であって、その凹凸は、ニッケル箔の片側の面が窪んでいるとき、その反対側の面が突出している波板状の形状または角錐状の形状であり、ニッケル箔の平面に規則的に分散して形成されている二次電池集電体用ニッケル箔。
(2)断面が半円弧状の陽極とこれに対向して回転するドラム陰極とを有する電解析出装置の陰極として表面に規則的な凹凸を形成したドラムを用い、ドラム表面に析出したニッケルを回収する二次電池集電体用ニッケル箔の製造方法。
本発明のニッケル箔は、規則的な比較的大きな凹凸を形成させることができるため、電池の活物質の担持性に優れ、また活物質とニッケル箔との接触面積も大きくなり、導電性
能に優れている。さらに、多孔にする必要がないので、強度面で箔の厚さを薄くすることができる。このニッケル箔は、陰極として表面に規則的な凹凸を形成した回転ドラムを用い、析出したニッケルを剥離することによって製造することができる。このニッケル箔を電池集電体に使用すれば、電池容量を高めることができる。
本発明の二次電池集電体用ニッケル箔は、表面に凹凸を有するニッケル箔である。その凹凸は、ニッケル箔の片側の面が窪んでいるとき、その反対側の面が突出している波板状の形状または角錐状の形状であり、ニッケル箔を平面でみたとき、その凹凸は規則的に分散して形成されている。これは、後述する図3に示すような表面に規則的な凹凸を有する電解回転ドラムの表面にニッケルを電解析出させることによって製造することができる。
図1は、本発明の規則的な凹凸をもった金属箔の外観を示す模式図であり、(a)は長手方向に山部および谷部を有する波板状の金属箔、(b)ないし(e)は角錐状の凹凸を有する金属箔である。図において(b)と(c)、(d)と(e)とは同じ金属箔であり、(b)と(d)とは箔を上からみた図、同じく(c)と(e)とは箔を下からみた図である。
図1(a)に示すニッケル箔は、山部および谷部からなる凹凸が長手方向に規則的に形成された波板状の箔である。その凹凸は、ニッケル箔の片側の面が谷部であれば(窪んでおれば)、その反対側の面が山部である(突出している)形状である。
図1(b)および(c)に示すニッケル箔は、角錐状の凹凸が交互に規則的に形成されており、(b)に示すように箔の表面側が凸部であれば(突出しておれば)、その位置の裏面では(c)に示すように凹部になっている(窪んでいる)。
図1(d)および(e)に示すニッケル箔は、角錐状の凹凸が千鳥状に規則的に形成されており、その凹凸の形状は図(b)および(c)に示すものと同じである。
図1から明らかなように、本発明のニッケル箔は表面に規則的な凹凸を有するニッケル箔である。その凹凸は、ニッケル箔の片側の面が窪んでおれば、その反対側の面が突出している形状である。このような凹凸を有することによって、電池の活物質の担持性を改善し、活物質と集電体(ニッケル箔)との接触面積を大きくして電気伝導性を高めることができる。
図2は、ドラム電極による連続ニッケル箔電解析出装置を示す概念図である。
ニッケル箔1は、チタン製のドラム電極2を陰極、断面が半円弧状に形成された電極3を陽極とし、回転するドラム電極2の表面に電解浴4からニッケルを析出させ、その析出物を連続に剥離して製作される。
電解浴4は、金属めっきに使用される公知の浴、たとえばニッケル箔を製造する場合には、ワット浴、スルファミン酸浴などが使用できる。これらの浴にニッケル箔の柔軟性を調整するため、必要に応じてサッカリン、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリントリスルホン酸ナトリウムのような添加剤、およびその調合剤である市販の添加剤を添加する。
図3は、本発明のニッケル箔を製造するためのドラム電極2の表面の一部を模式的に示す図であり、(a)は円周部に溝(谷部)が規則的に形成されたドラムの表面であり、(b)は円周部に角錐状の突起が交互に規則的に形成されたドラムの表面であり、(c)は円周部に角錐状の窪みが千鳥状に規則的に形成されたドラムの表面である。
図3(a)に示すドラム電極を設けた回転ドラム式電解析出装置を使用すれば、図1(a)に示す凹凸条を有するニッケル箔を製造することができる。すなわち、ドラム表面の凹凸条に沿ってニッケルが電解析出するので、これを剥がせば図1(a)に示すような波板状のニッケル箔が得られる。
図3(b)に示すドラム電極を設けた回転ドラム式電解析出装置を使用すれば、ドラム表面の角錐状の突起に沿ってニッケルが電解析出するので、これを剥がせば図1(b)に示すような角錐状の凹凸を交互に規則的に形成されたニッケル箔が得られる。
図3(c)に示すドラム電極を設けた回転ドラム式電解析出装置を使用すれば、ドラム表面の窪みに沿ってニッケルが電解析出するので、これを剥がせば図1(c)に示すような角錐状の窪みが千鳥状に規則的に形成されたニッケル箔が得られる。
図4は、本発明のニッケル箔の製造に使用するドラム電極表面の一部を示す模式図であり、(a)は図3(a)に示す凹凸条を製作している状況、(b)〜(d)は図3(b)に示す角錐状の突起を有するドラム表面とその断面を示す図である。
図3(a)に示すドラム電極表面の凹凸は、図4(a)に示すように、旋削によって製作することができる。先端角α°をたとえば90°とした切削工具5を用い、工具の送りfをたとえば100μm/回転、切り込みをたとえば50μm以上で旋削することによって、ピッチ100μm、深さ50μmの凹凸溝が得られる。
図3(b)に示すドラム電極表面の凹凸は、先端角α°をたとえば115°とした切削工具5を用い、工具の送りfをたとえば250μm/回転、切り込みをたとえば80μm以上で図4(a)に示すような旋削を行った後、得られた凹凸溝を有するドラムを、さらに旋削に使用した工具に等しい形状の工具を用いて工具の送りピッチpをたとえば250μm、切り込みdをたとえば80mm(正確には、前記凹凸溝の底に工具の先端を合わせる)としてドラムの長手方向に切削することによって得られる。得られた凹凸の形状は、図4(b)〜(d)に示すように底辺の一辺の長さが約250μm、高さが約80μmの角錐状となる。
図3(c)に示す電解ドラム表面の窪みは、たとえば先端の角度α°が135°の角錐の押し込み工具を用い、ドラム表面に約20μm押し込み加工することによって得られる。得られた窪みの形状は、底辺の長さが約100μm、深さが約20μmの角錐状である。
電解析出によって得られたニッケル箔は、チタンドラムなどの陰極にニッケルを析出させ、これを連続的に剥離して得られるので、チタンドラムの表面形状が転写される。しかし、従来の方法では、ドラムの表面を研磨加工などで表面粗さを小さく仕上げられているため、表面粗さの小さなニッケル箔が得られていた。そのため、活物質の担持性を改善するには、エッチング処理などで粗面化する必要があった。
本発明のニッケル箔は、ドラム表面の形状が転写されることを利用したものであり、ニッケル箔の表面に従来の表面粗さよりも大きな凹凸を付けることができるため、活物質の粒子を担持しやすいようにしたものである。
図2に示すような連続ニッケル箔電解析出装置を用い、規則的な凹凸を有する電解析出ニッケル箔を製作した。
この電解析出装置には、図3に示すような電解ドラムが取り付けられるようになっている。ドラムは、直径が400mm、幅が250mm(電解部の幅120mm)の純チタン製である。
上記の電解析出ドラムを使用して、表1に示す電解ニッケル箔(番号1〜4)を製造した。また、比較例として、通常の仕上げ状態の電解析出ドラムを使用して得たニッケル箔をエッチング処理したもの(番号5)、参考例として多孔電解析出ドラムを使用して得たニッケル箔(番号6)を製造した。
その電解析出条件を下記に示す。
電解液:
硫酸ニッケル・・・・ 250g/L
塩化ニッケル・・・・・ 45g/L
ほう酸・・・・・・・・ 40g/L
pH・・・・・・・・・・ 3.5
温度・・・・・・・・・ 50℃
電流密度:20A/dm
Figure 0005040794
電解析出ニッケル箔のエッチング処理は、4%フッ化水素と15%硫酸とを混合した30℃のエッチング液にニッケル箔を浸漬して行った。
得られたこれらのニッケル電解箔は、下記の方法で活物質を担持させた。
活物質には、市販の希土類系のAB型水素吸蔵合金(粒径が50μmアンダー)を用い、活物質の100gに対してCMC(カルボキシ・メチル・セルロース)を0.8gおよび水20cmを混合し、スラリー状とした。このスラリーをアプリケータ塗装器を使
用して塗布したままの厚さが片面で100μmとなるように箔の両面に塗布した。塗布後、温風乾燥機を用い、100℃の温風を1時間吹き付け、乾燥した。乾燥後、プレス機を用い、面圧150N/mm(1.5Ton/cm)で圧着加工を行って電極とした。
電解箔の性能試験として、活物質の箔への担持性試験を行った。
活物質の担持性試験は、180°折り曲げを繰り返して活物質が脱落を開始するまでの曲げ回数を求めた。それらの試験結果を(表1)に示した。
(表1)から明らかなように、本発明例の番号1から4の箔は、図3(a)〜(c)に示すような規則的な凹凸を表面に形成した電解ドラムにニッケルを析出させ、図1に示すような凹凸を有するニッケル箔となっている。このため曲げ試験の結果では、従来のエッチング処理したニッケル箔よりも格段に優れ、参考例の多孔電解ニッケル箔と同等以上の性能を有する。また、番号1、3および4から明らかなように、本発明の箔は、多孔を形成しなくとも活物質の担持性を改善できるので、箔の厚さを薄くすることができる。
(a)山部および谷部を有する波板状の規則的な凹凸を有するニッケル箔の外観を示す模式図、(b)角錐状の規則的な凹凸を有するニッケル箔を上からみた図、(c)角錐状の規則的な凹凸を有するニッケル箔を下からみた図、(d)角錐状の規則的な千鳥状の凹凸を有するニッケル箔を上からみた図、(e)角錐状の規則的な千鳥状の凹凸を有するニッケル箔を下からみた図 ドラム電極による連続ニッケル箔電解析出装置を示す概念図 (a)円周部に溝(谷部)が規則的に形成された電解ドラムの表面の一部を模式的に示す図、(b)円周部に角錐状の突起が規則的に形成された電解ドラムの表面の一部を模式的に示す図、(c)円周部に角錐状の窪みが千鳥状に形成された電解ドラムの表面の一部を模式的に示す図 (a)電解ドラム表面に凹凸を製作している状況を示す模式図、(b)角錐状の突起を有する電解ドラムの表面を示す図、(c)角錐状の突起を有する電解ドラムの断面を示す図、(d)角錐状の突起を有する電解ドラムの断面を示す図
符号の説明
1 ニッケル箔
2 陰極回転ドラム
3 陽極
4 電解液
5 切削工具

Claims (3)

  1. 断面が半円弧状の陽極とこれに対向して回転するドラム陰極とを有する電解析出装置の陰極として表面に規則的な波板状の凹凸を形成したチタン製のドラムを用い、ドラム表面に析出したニッケルを回収して作られた凹凸を有するニッケル箔であって、その凹凸はニッケル箔の片側の面が窪んでいるとき反対側の面が突出する波板状の形状であり、ニッケル箔の平面に規則的に分散して形成されていることを特徴とする二次電池集電体用ニッケル箔。
  2. 断面が半円弧状の陽極とこれに対向して回転するドラム陰極とを有する電解析出装置の陰極として表面に規則的な波板状の凹凸を形成したチタン製のドラムを用い、ドラム表面に析出したニッケルを回収して作られた凹凸を有するニッケル箔であって、その凹凸はニッケル箔の片側の面が窪んでいるとき反対側の面が突出する角錐状の形状であり、ニッケル箔の平面に規則的に分散して形成されていることを特徴とする二次電池集電体用ニッケル箔。
  3. 凹凸を千鳥状に設けたことを特徴とする請求項2に記載の二次電池集電体用ニッケル箔。
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