JP5040589B2 - スローアウェイチップおよびこれを用いたスローアウェイ式切削工具 - Google Patents
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Description
他の目的で逃げ面上に溝形などを形成したスローアウェイチップとしては、円弧状断面をもつ複数条の切欠き溝が、各側面にチップ締結孔の軸方向に沿って相互に平行して形成されたスローアウェイチップが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
本発明は、略平板状をなし、この上面に形成されたすくい面と、このすくい面と交差する外周面に形成された逃げ面と、これらすくい面と逃げ面との交差稜線部に形成された切れ刃とを有するスローアウェイチップであって、前記逃げ面に外周方向に延びるように形成された切りくずを破断させるためのブレーカ溝を備え、該ブレーカ溝が少なくとも1つの逃げ面に垂直な垂線に対して傾斜する傾斜面を備えることを特徴とするスローアウェイチップを提供する。
また、上記発明においては、ブレーカ溝の長手方向に直交する断面形状が略台形状であることとしてもよい。
このように構成することで、ブレーカ溝に入り込んだ切りくずが、一方の傾斜面に突き当たった後にこれに対向する傾斜面に突き当たることにより拘束されやすく、速やかにカールさせられて折損することになる。
このようにブレーカ溝を複数設けることで、切りくずを確実に拘束することができ、切屑処理性が向上する。また、ブレーカ溝を上下対称の形状となるように構成することで、チップ本体の上下稜線部に切れ刃が形成されたネガティブチップに適用することができる。この場合、スローアウェイチップの表裏を切れ刃として使用することができるので非常に経済的である。
このように構成することで、逃げ面におけるブレーカ溝が形成されていない部分の面積を維持しつつ、ブレーカ溝の増大を図ることができる。そのため、スローアウェイチップの剛性を低下させることなく、切屑処理性の向上を図ることができる。
本実施形態に係るスローアウェイチップ1は、超硬合金、サーメット、セラミックス等から構成され、図1(a)に示されるように、略四角形の平板状をなし、上下面にすくい面2が形成され、このすくい面2と交差する各側面に逃げ面3が形成されるとともに、これらすくい面2と逃げ面3とがなす各交差稜線部に切れ刃4が形成されたネガティブチップからなる。
各ブレーカ溝5は、逃げ面3側から見た形状が略長方形をなすとともに、図1(c)に示されるように、長手方向に直交する断面形状が上底よりも下底が短い略台形状をなし、逃げ面に平行な底面5bと、該底面5bに垂直な深さd方向に対して互いに相反する方向に傾斜する1対の傾斜面5a,5aとを備えている。
各ブレーカ溝5の深さdとしては、チップ剛性維持の観点から0.3mm以上1.0mm以下の範囲内で設定されることが好ましく、有利には0.5mm以上0.7mm以下の範囲内で設定されることが好ましい。0.3mmより小さいと期待するような効果が得られず、1.0mmより大きいとチップ自体の剛性が劣化するおそれがあるからである。
本実施形態に係るスローアウェイチップ1によれば、切削に伴ってスローウェイチップ1の外周方向に延び出た切りくずが、ブレーカ溝5に入り込み、一方の傾斜面5aに突き当たった後、もう一方の傾斜面5aに突き当たることにより、速やかにカールさせられて折損することになる。つまり、逃げ面3に設けられたブレーカ溝5が、切削によって工作物から分離して流出する切りくずを適当な小片に破断させる、いわゆるチップブレーカとして機能する。したがって、切屑処理性に優れ、長く延び出た切りくずが絡みつく等して起る切りくず障害による仕上げ面粗さの悪化、刃部の損傷等を防止できる。その結果、優れた仕上げ面品位および工具寿命を得ることができる。
例えば、自動車の下回り部品などで多く使用される熱間圧延軟鋼板(JIS G 3131において規定されるSPHC)などの切りくずが繋がり易い工作物を旋削加工する場合においても、流出した切りくずをブレーカ溝5によって細かく分断することができ、切屑処理性に優れる点で有用である。
また、従来、チップブレーカによって湾曲させられるものの、逃げ面3に当たって滑ってしまい、分断されずに長く延びてしまっていた切りくずも、ブレーカ溝5により確実に小片に破断されることになる。
また、ブレーカ溝5は上下対称の形状となるように構成されているので、スローアウェイチップ1を上下反転して使用しても、同様の効果を得ることができる。
例えば、図2(a)(b)に示されるように、3本のブレーカ溝5を切れ刃4に対して平行に同間隔で形成したり、異なる幅や長さのブレーカ溝5を同間隔で配置したり、異なる間隔で配置したりしてもよい。
また、図3(a)に示されるように、2本のブレーカ溝5からなる×印状や、*印状、千鳥状等としてもよい。
また、図3(b)に示されるように、大きさ形の異なる略三角形のブレーカ溝5を4つ設けることにしてもよい。
また、図3(c)〜(e)に示されるように、ブレーカ溝5を単数としたり、ブレーカ溝5に互いに対向する傾斜面5a,5aを2対以上設けたり、円弧状の傾斜面5aを備えることにしてもよい。
本実施形態に係るスローアウェイバイト10は、鋼材等から構成され、図5に示されるように、旋盤等に取り付けられて固定される略直方体をなすバイト本体と、該バイト本体の先端部に形成されたスローアウェイチップ1を着座させるためのチップ取付座と、チップ取付座に着脱可能に取り付けられる上述したスローアウェイチップ1とを備える。
そして、チップ取付座にスローアウェイチップ1を載置し、スローアウェイチップ1の中央部に貫通形成された取付穴に、押え金の先端部に形成された突起部を係合させた状態で、締付ボルトを押え金に貫通形成されたボルト穴に挿入することにより、押え金との係合による引き込み作用と押え金によるチップ上面からの押圧作用とによって、スローアウェイチップ1がバイト本体に固着されるように構成されている。
本実施形態に係るスローアウェイバイト10によれば、切りくずが繋がり易い工作物を旋削加工する場合であっても、長く延びた切りくずがブレーカ溝によって破断されるので、切りくずがバイト本体や工作物に絡みついて加工面を傷つけたり、スローアウェイチップと工具本体との間に噛み込まれた切りくずにより刃部が損傷したりすることを防止できる。また、バイト本体や工作物に絡まった切りくずを手作業で取り除くことによって作業者が負傷をする等の切削加工中の切りくず障害に原因する事故を防止することができる。したがって、高精度の仕上げ面品位および作業の安全性を確保できる。また、絡みついた切りくずを除去するために工作機械の稼働を止めて切削作業を中断する必要がないため、加工効率が向上する。
スローアウェイチップとしてJIS B 4120において規定されるCNMG120408-TM,T9015を用い、これをスローアウェイバイト(JIS B 0107において規定されるDCLNL2525M12)に装着して、切削速度(Vc)を150m/min、切込み深さ(ap)を1.0mm、送り量(f)を0.2mm/revに設定し、被削材としてクロムモリブデン鋼(JIS G 4105において規定されるSCM415)を用いて切削試験を行い、その際の切屑処理状況を評価した。
1つの逃げ面3の切れ刃の垂直な垂線に対してに対して30°傾斜するブレーカ溝が交差状に6本形成されたスローウェイチップを実施例1とした。
また、1つの逃げ面3に同形状のブレーカ溝5が切れ刃に対して平行に同間隔で3本形成されたスローウェイチップを実施例2とした。
比較例1および比較例2におけるブレーカ溝の幅は0.5mm、長さは10.4mm、深さは0.5mmであり、切れ刃4に対する所定間隔h1は1.0mmである。
そして、逃げ面にブレーカ溝を設けない点以外は実施例1および実施例2と同じスローアウェイチップを比較例とした。
実験結果を図6に示す。
また、実施例2においても、図6(b)に示されるように、流出した切りくずは、逃げ面3に設けられたブレーカ溝5において拘束されて、細かく分断された。
これに対し、比較例では、図6(c)に示されるように、流出した切りくずは、逃げ面3に接触するものの滑ってしまい、長く伸びて分断されなかった。
また、本実施形態においては、スローアウェイチップ1のクランプ方法として、押え金を用いてクランプする方式を採用したが、これに代えて、取付ねじを用いてクランプするねじ止め方式や、取付穴に嵌挿した偏心ピンや傾動ピンによりクランプする方式等を採用してもよい。
また、本実施形態においては、スローアウェイ式切削工具としてスローアウェイバイトを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、ろう付けバイト等の多種のスローアウェイ式切削工具に適用することができる。
2 すくい面
3 逃げ面
4 切れ刃
5 ブレーカ溝
5a 傾斜面
10 スローアウェイバイト(スローアウェイ式切削工具)
Claims (6)
- 略平板状をなし、この上面に形成されたすくい面と、このすくい面と交差する外周面に形成された逃げ面と、これらすくい面と逃げ面との交差稜線部に形成された切れ刃とを有するスローアウェイチップであって、
前記逃げ面に外周方向に延びるように形成された切りくずを破断させるためのブレーカ溝を備え、
該ブレーカ溝が少なくとも1つの逃げ面に垂直な垂線に対して傾斜する傾斜面を備える
ことを特徴とするスローアウェイチップ。 - 前記ブレーカ溝が少なくとも1対の互いに対向する傾斜面を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のスローアウェイチップ。 - 前記ブレーカ溝の長手方向に直交する断面形状が略台形状である
ことを特徴とする請求項2に記載のスローアウェイチップ。 - 前記ブレーカ溝が1つの逃げ面に複数設けられるとともに、該複数のブレーカ溝がチップ本体の表裏を反転させたときに同形状となるように配設されてなる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスローアウェイチップ。 - 前記複数のブレーカ溝が交差状に配設されてなる
ことを特徴とする請求項4に記載のスローアウェイチップ。 - 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスローアウェイチップを着脱可能に装着してなるスローアウェイ式切削工具。
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