JP5040562B2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、アクセルペダルとブレーキペダルの両方が踏み込まれる両踏み状態のような、駆動輪への駆動力が所定値より高く、かつ、制動圧が所定値より高い高駆動力、高制動圧状態を検出できるアンチスキッド制御(以下、ABS制御という)装置に関するものである。
従来、特許文献1において、アクセルペダルとブレーキペダルが両踏みされた場合に、ABS制御における制動圧の減圧を規制することで十分な制動力が得られなくなることを防止する装置が提案されている。
具体的には、ABS制御は、推定車体速度と各車輪速度との偏差に相当するスリップ率が所定の閾値を超えた場合に実行される。そして、ABS制御が開始されると減圧モードが設定され、ホイールシリンダ(以下、W/Cという)に発生させる制動圧を減少させることで車輪速度を復帰させ、スリップ率が小さくなると、保持モードを経てパルス増圧モードが設定されることでW/Cにかかる制動圧が高められる。
このようなABS制御を実行するにあたり、例えば各車輪速度のうちの最も高い値(以下、MAX輪車輪速度という)を推定車体速度として採用している。このため、ABS制御中にアクセルペダルとブレーキペダルが両踏みされた場合に、駆動輪の車輪速度が駆動力に伴って高くなるためにMAX輪車輪速度が高くなり、推定車体速度が見かけ上大きくなる。これにより、従動輪の車輪速度が推定車体速度よりも見かけ上落ち込み、減圧モードが設定されたままの状態が続き、W/Cにかかる制動圧が減圧されてしまうため十分な制動力が得られなくなってしまう。
このため、特許文献1では、アクセルセンサにてアクセルペダル操作を検出し、アクセルペダル操作が検出された場合にはABS制御による制動圧の低減を規制している。
特開平5−77705号公報
しかしながら、アクセルペダル操作を検出するためにアクセルセンサを備えなければならないため、設備投資が必要になる。
なお、ここでは、駆動輪への駆動力が所定値より高く、かつ、制動圧が所定値より高い高駆動力、高制動圧状態の一つとして両踏み状態を例に挙げて説明したが、必ずしもペダル踏み込みが行われる場合に限るものではなく、例えば高駆動力状態として、単にスロットル開度が大きくされる場合の高駆動力状態も検出できるようにするのが好ましい。
本発明は上記点に鑑みて、アクセルセンサを備えなくてもアクセルペダルとブレーキペダルの両踏み状態のような、駆動輪への駆動力が所定値より高く、かつ、制動圧が所定値より高い高駆動力、高制動圧状態を検出できるようにアンチスキッド制御装置を提供することを第1の目的とする。
また、アクセルセンサを備えなくてもアクセルペダルとブレーキペダルの両踏み状態を検出できるようにし、ABS制御による制動圧の減圧が必要以上に継続されることを防止できるABS制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、駆動輪への駆動力が所定値より高く、かつ、制動圧が所定値より高い高駆動力、高制動圧状態状態を判定する手段(200〜255)を有し、該高駆動力、高制動圧状態を判定する手段は、駆動輪のうちの少なくとも1輪および従動輪のうちの少なくとも1輪がABS制御中であるか否かを判定する第1手段(205)と、第1手段にて肯定判定された場合に、従動輪のうち車輪速度が大きい方を従動輪MAX輪として、推定車体速度から該従動輪MAX輪の車輪速度を引いたときの差が閾値(A)を超えているかを判定する第2手段(215)と、従動輪MAX輪がABS制御における減圧モードもしくは保持モードが設定されている状態であるか否かを判定する第3手段(220)と、第2手段および第3手段で肯定判定された状態が所定時間(KT)継続したときに高駆動力、高制動圧状態であると判定する第4手段(225〜235)と、を備え、第4手段は、第3手段で肯定判定されたとき、第2手段で求められた推定車体速度から該従動輪MAX輪の車輪速度を引いたときの差に基づいて所定時間を設定し、差が大きいほど所定時間を短く設定することを特徴としている。
このように、ABS制御中に、推定車体速度と従動輪MAX輪の車輪速度との差が閾値以上の状態で、かつ、減圧モードもしくは保持モードが設定されているという状態となり、この状態が続けば高駆動力、高制動圧状態と判定している。このため、アクセルセンサを備えなくてもアクセルペダルとブレーキペダルの両踏み状態のような高駆動力、高制動圧状態を検出できる。
また、推定車体速度と従動輪MAX輪の車輪速度との差に応じて高駆動力、高制動圧状態の判定に掛ける時間を調整することができ、より車両状態に応じた高駆動力、高制動圧状態の判定を行うことが可能となる。
請求項2に記載の発明では、高駆動力、高制動圧状態を判定する手段は、駆動輪のうちの少なくとも1輪および従動輪のうちの少なくとも1輪がABS制御中であるか否かを判定する第1手段と、第1手段にて肯定判定された場合に、従動輪のうち車輪速度が大きい方を従動輪MAX輪として、該従動輪MAX輪がABS制御における減圧モードもしくは保持モードが設定されている状態であるか否かを判定する第2手段と、第2手段にて肯定判定された場合に、従動輪のうち車輪速度が大きい方を従動輪MAX輪として、推定車体速度から該従動輪MAX輪の車輪速度を引いたときの差の積算値を演算し、該積算値が閾値を超えたときに高駆動力、高制動圧状態であると判定する第3手段と、を備えて構成されていることを特徴としている。
このように、推定車体速度と従動輪MAX輪の車輪速度との差の積算値と閾値とを比較することにより、高駆動力、高制動圧状態の判定を行うこともできる。
具体的には、請求項3に記載したように、推定車体速度を演算する手段にて、ブレーキ中において、高駆動力、高制動圧状態であるか否かにより、推定車体速度を演算する手法を変更し、高駆動力、高制動圧状態中でない場合には、駆動輪と従動輪の各車輪速度のうち最も高い値を車輪速度とする第1手法にて推定車体速度を演算し、高駆動力、高制動圧状態中である場合には、従動輪の車輪速度に基づいて推定車体速度を演算する第2手法にて推定車体速度を演算する。
このように、高駆動力、高制動圧状態が検出されたときに、駆動輪と従動輪の各車輪速度のうち最も大きな車輪速度を推定車体速度として採用するという手法を推定車体速度の演算手法として用いないようにすることで、推定車体速度がより正確に求められるようにしている。このため、ABS制御中に高駆動力、高制動圧状態となった場合に、ABS制御による制動圧の減圧が必要以上に継続されることを防止できるABS制御装置とすることが可能となる。
例えば、請求項4に示すように、推定車体速度を演算する手段は、第2手法として、従動輪のうち車輪速度が大きい方を従動輪MAX輪として、該従動輪MAX輪の車輪速度を推定車体速度とする手法により推定車体速度を演算することができる。また、請求項5に示すように、推定車体速度を演算する手段は、第2手法として、従動輪の車輪速度の平均値を推定車体速度とする手法により推定車体速度を演算することもできる。
請求項6に記載の発明では、高駆動力、高制動圧状態を判定する手段は、推定車体速度が所定速度(KV)未満の際にのみ高駆動力、高制動圧状態の判定を行うことを特徴としている。
車速が速い時には、アクセルペダルが踏み込まれたとしても加速トルクが少なく、加速トルクによる車輪スリップが発生しにくいため、ブレーキペダル踏み込みにより十分に制動力を得ることができる。このため、所定車速未満の場合にのみ高駆動力、高制動圧判定を行うようにすることもできる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
また、高駆動力、高制動圧状態とは、アクセルペダルおよびブレーキペダルの両方を踏んだいわゆる両踏み状態だけでなく、スロットルバルブまたはブレーキシステムの故障等によりアクセル・ブレーキの作動の両方が同時に起きることで高駆動力、高制動力になった状態や、スロットルバルブとブレーキシステムの双方が故障して高駆動力、高制動力になった状態を含む概念を意味している。以下の説明では、その一例である両踏み状態を例に挙げて説明している。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態が適用されたABS制御装置を実現するブレーキ制御装置1の各機能のブロック構成を示したものである。このブレーキ制御装置1のうちABS制御を実現する部分がABS制御装置に相当する。なお、以下の説明では、前輪FL、FRが駆動輪、後輪RL、RRが従動輪であるFF駆動車両を例に挙げて説明する。
まず、本実施形態のブレーキ制御装置1について説明する。図1に示されるように、ブレーキ制御装置1には、ブレーキペダル11、倍力装置12、マスタシリンダ(M/C)13、W/C14、15、16、17およびブレーキ液圧制御用アクチュエータ18が備えられている。このような構成により、ドライバがブレーキペダル11を踏み込んだときにM/C13に発生したブレーキ液圧がブレーキ液圧制御用アクチュエータ18を通じて各W/C14〜17に制動圧として加えられるようになっている。
また、ブレーキ制御装置1にはブレーキECU20が備えられており、このブレーキECU20が様々な制御手段の一部として機能し、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ18に備えられた図示しない各種制御弁やモータ駆動によるポンプを作動させることで、ブレーキ制御装置1が発生させる制動力を制御するようになっている。具体的には、ブレーキ制御装置1には、各車輪FL、FR、RL、RRの車輪速度に応じたパルス信号を検出信号として出力する車輪速度センサ21〜24やブレーキペダル11が踏み込まれたときに押されるストップランプスイッチ25が備えられ、各車輪速度センサ21〜24の検出信号やストップランプスイッチ25の検出信号がブレーキECU20に入力され、ブレーキECU20が入力された検出信号に基づいて各種演算を行うことにより、制動力の制御を行っている。
例えば、ブレーキECU20は、車輪速度センサ21〜24の検出信号を受け取ると、これに基づいて各車輪FL〜RRの車輪速度を求めると共に推定車体速度の演算を行い、さらに、推定車体速度と各車輪速度との偏差に相当するスリップ率の演算を行う。また、ストップランプスイッチ25の検出信号に基づいてブレーキ中であるか否かの判定を行う。
そして、ブレーキ中にスリップ率がABS制御の開始閾値を超えた車輪に関しては、ABS制御を開始し、減圧モード、保持モード、パルス増圧モードという周知の制御モードを設定すると共に、各制御モードに対応して減圧制御、保持制御、パルス増圧制御を実行することで車輪がロックすることを防止する。なお、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ18は、一般的なABS制御が行えるものであればどのようなものであっても良く、基本構造自体は周知なものであるため、ここでは詳細についての説明は省略する。
以下、本実施形態にかかるABS制御の詳細について説明するが、ABS制御の基本的な部分に関しては既に周知となっているため、ABS制御のうち本発明の特徴にかかわる推定車体速度の演算や両踏み状態の判定に関してのみ説明する。
図2に推定車体速度演算処理のフローチャートを示し、この図を参照して本実施形態の推定車体速度の演算について説明する。
まず、ステップ100では、各車輪の車輪速度の演算を行う。この処理は、車輪速度センサ21〜24の検出信号を受け取ることにより行われる。次に、ステップ110では、駆動輪である両前輪FL、FRのうち車輪速度が大きい方の車輪(以下、前輪MAX輪(駆動輪MAX輪)という)の車輪速度と、従動輪である両後輪RL、RRのうち車輪速度が大きい方の車輪(以下、後輪MAX輪(従動輪MAX輪)という)の車輪速度を求める。この処理は、上記ステップ100での演算結果から、両前輪FL、FRのうち車輪速度が大きい方の値を前輪MAX輪の車輪速度として選択し、両後輪RL、RRのうち車輪速度が大きい方の値を後輪MAX輪の車輪速度として選択することにより行われる。
続いて、ステップ120に進み、ブレーキ中であるか否かを判定する。この判定は、ストップランプスイッチ25の検出信号に基づいて行われる。ここで否定判定された場合にはステップ130に進み、各車輪速度がブレーキによる影響を受けていないため、一般的な推定車体速度の演算手法により仮の推定車体速度を演算する。例えば、ステップ130では、従動輪である後輪MAX輪の車輪速度を仮の推定車体速度VWOとしている。
一方、ステップ120で肯定判定された場合にはステップ140に進み、両踏み状態中であるか否かを判定する。両踏み状態であるか否かは、後述する両踏み判定の結果に基づいて判定される。具体的には、両踏み判定において両踏み状態であるとの判定結果であった場合には、両踏み状態を示すフラグがONされるようになっているため、このフラグがONであるかOFFであるかに基づいて両踏み状態であるか否かを判定できる。
ここで両踏み状態中でなければステップ150に進み、4つの車輪のうちの最も車輪速度が大きな値であるMAX輪車輪速度を仮の推定車輪速度とする。また、両踏み状態であれば、ステップ130に進み、従動輪である後輪MAX輪の車輪速度を仮の推定車体速度VWOとする。
すなわち、両踏み状態中の場合には、上述したように、駆動輪の車輪速度が駆動力に伴って高くなるためにMAX輪車輪速度が高くなる。これにより、両踏み状態中にMAX輪車輪速度を推定車体速度として採用してしまうと、推定車体速度が見かけ上大きくなってしまい、従動輪の車輪速度が推定車体速度よりも見かけ上落ち込んでしまうことになる。このため、ここでは両踏み状態中であれば従動輪である後輪MAX輪の車輪速度を仮の推定車体速度VWOとして採用している。
この後、ステップ160に進み、仮の推定車体速度VWO、前回の制御周期のときの推定車体速度に対して車体速度が増加し得る増加最大値αUPを加算した最大車体速度VSOUP、および、前回の制御周期のときの推定車体速度に対して車体速度が減少し得る減少最大値αDOWNを減算した最大車体速度VSODWのうちの中間値を最終的な推定車体速度として採用する。
このように、両踏み状態中であるか否かにより推定車体速度の求め方を変え、両踏み状態中である場合にはMAX輪車輪速度を推定車体速度として採用するという手法はとらないようにしている。これにより、両踏み状態中にMAX輪車輪速度を推定車体速度として採用した場合のように、推定車体速度が見かけ上大きくなってしまい、従動輪の車輪速度が推定車体速度よりも見かけ上落ち込んでしまうことで、ABS制御における制動圧の減圧が不必要に継続されてしまうために十分な制動力が得られなくなるということを防止することができる。
続いて、両踏み判定処理の詳細について説明する。図3は、ブレーキECUで実行される両踏み判定処理の詳細を示したフローチャートである。この図に示される処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンされているときに所定の制御周期毎に実行される。
まず、ステップ200では、両踏み状態であるか否かを判定する。具体的には、両踏み状態を示すフラグがONされているかOFFされているかにより両踏み状態であるか否かを判定できる。この両踏み状態を示すフラグは、後述するステップ235やステップ255の処理によりON/OFFされるため、この処理結果に基づいて本ステップの判定を行うことになる。
ここで否定判定されればステップ205に進み、4輪ともABS制御中であるか否かを判定する。両踏み判定処理とは別フローとして実行している周知のABS制御処理において、上述した推定車体速度演算により求められた推定車体速度と各車輪速度との偏差により表されるスリップ率がABS制御開始閾値と比較されており、その閾値を超えたときにABS制御中であることを示すフラグがONされる。このため、このフラグがONしているかOFFしているかに基づいてABS制御中であるか否かを判定できる。ここで肯定判定されればステップ210に進む。
ステップ210では、推定車体速度が所定車速KV(例えば、50km/h)未満であるか否かを判定する。ここでいう所定車速KVは、両踏みが行われた時に制動力が十分得られなくなるという問題が発生し得る車速に設定してある。すなわち、車速が速い時には、アクセルペダルが踏み込まれたとしても加速トルクが少ないため、加速トルクによる車輪スリップが発生しにくく、ブレーキペダル踏み込みにより十分に制動力を得ることができるため、所定車速KV未満の場合にのみ両踏み判定を行うようにしている。ここで肯定判定されればステップ215に進む。
ステップ215では、後輪MAX輪の車輪速度に対して誤差許容値Aを足した値が推定車体速度未満であるか否かを判定する。誤差許容値Aとは、例えば異形タイヤを装着した場合に車輪速度が正規の値に対して誤差を生じているような場合に、本ステップの判定が誤った結果を導き出してしまわないようにするための値である。
後輪MAX輪の車輪速度がABS制御中に推定車体速度に対して落ち込んだ場合、ABS制御による制動圧の減圧が行われ、車輪速度の復帰が図られる。これにより、通常であれば後輪MAX輪の車輪速度が回復していき推定車体速度に近づくため、その後、パルス増圧(必要に応じて保持を経てからパルス増圧)とされる。しかしながら、両踏み状態の場合、両踏み状態が判定される以前には前輪MAX輪の車輪速度に基づいて推定車体速度が演算されることになるため、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差が誤差許容値A以上のままの状態が続き、誤差許容値A未満にならない。
このため、ステップ215で肯定判定されたときにはステップ220に進み、後輪MAX輪が減圧モード中であるか否かを判定する。減圧モード中であるか否かは、ABS制御においてどの制御モードを設定するかを適宜フラグにて記憶しているため、この減圧モード中であることを示すフラグがONされているか否かを確認することにより判定できる。ここで減圧モード中であれば、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差が誤差許容値A以上の状態で、かつ、減圧モードが設定されているという状態となり、この状態が続けば両踏み状態になっていると想定される。このため、ここで肯定判定されればステップ225に進み、ブレーキECU内に備えられた図示しない両踏み判定用タイマのカウントを1つインクリメントする。
そして、ステップ230において、両踏み判定用タイマのカウント値が所定値KTに至ると、ステップ235に進んで両踏み状態と判定し、両踏み状態を示すフラグをONする。
ここで、所定値KTは、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差が誤差許容値A以上の状態で、かつ、減圧モードが設定されているという状態が続いた時に両踏み状態と判定できる時間と対応するカウント値である。所定値KTに制御周期を掛けた値が両踏み状態と判定できる時間となる。本実施形態では所定値KTを後述するように誤差許容値Aと相関関係のある値として設定する。
図4は、所定値KTと誤差許容値Aとの関係を示したマップである。これに基づいて誤差許容値Aと所定値KTとの関係についての考え方について説明する。
誤差許容値Aは、上述したように例えば異型タイヤを装着した場合に車輪速度が正規の値に対して誤差を生じているような場合を想定した値であるが、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度にある程度差が発生し得るため、誤差許容値Aを小さく設定すればするほど、ステップ215で肯定判定される可能性が高くなり、逆に、誤差許容値Aを大きく設定すればするほど、ステップ215で肯定判定される可能性は低くなるが、肯定判定されるような状況になった場合にはできるだけ早く両踏み状態と判定するのが好ましい。このため、図4(a)に示すように、誤差許容値Aが小さくなるほど所定値KTを直線的に小さくすると良い。
一方、ステップ205〜215において否定判定された場合には、両踏み状態では無い。このため、ステップ240に進み、両踏み判定用タイマのカウント値をゼロにクリアする。
また、ステップ235において両踏み状態を示すフラグがONになり、上述したステップ200において肯定判定された場合、ステップ245に進んで4つの車輪FL〜RRのうちの1輪以上がABS制御中であるか否かを判定する。ここで肯定判定されればステップ250に進み、推定車体速度が所定車速KV未満であるか否かを判定する。そして、ステップ245およびステップ250のいずれも肯定判定された場合には、そのまま処理を終了する。この場合、両踏み状態という判定結果が維持したままとされる。逆に、ステップ245およびステップ250のいずれか一方でも否定判定された場合には、両踏み判定を行う必要が無くなるため、ステップ255に進み、両踏み状態を示すフラグをOFFすると共に、両踏み判定用タイマをゼロにリセットし、処理を終了する。
以上のようにしてABS制御における推定車体速度の演算および両踏み状態の判定が行われる。図5(a)は、このようなABS制御が実行されたときのタイミングチャートである。参考として、図5(b)に、両踏み判定が行われないときのタイミングチャートも示す。
図5(a)に示されるように、ブレーキペダル11が踏み込まれ、前輪MAX輪の車輪速度および後輪MAX輪の車輪速度が減少していくと共に推定車体速度が減少していった時にABS制御が実行され、かつ、そのABS制御中にアクセルペダル踏み込みが行われると、駆動輪である前輪FL、FRに関しては、ABS制御による制動圧の減圧により駆動力が制動力に打ち勝ち、車輪速度が上昇していく。そして、前輪MAX輪の車輪速度と推定車体速度との偏差が小さくなると減圧モードからパルス増圧モード(必要に応じて保持モードを経てパルス増圧モード)に切り替わる。また、これに伴い推定車体速度も大きくなる。ただし、車体速度が増加し得る増加最大値αUPが決まっているため、推定車体速度が最も大きくなったとしても最大車体速度VSOUPとされるため、前輪MAX輪の車輪速度の方が推定車体速度よりも大きくなる。
また、従動輪である後輪RL、RRに関しては、推定車体速度が大きくなっていく反面、後輪MAX輪の車輪速度は減圧モードとなってもあまり大きくならないため、推定車体速度に対する後輪MAX輪の車輪速度の差があまり縮まらない。このため、後輪MAX輪の車輪速度に対して誤差許容値Aを足した値が推定車体速度未満の状態が続く。そして、この状態が所定時間続き、両踏み判定用タイマのカウント値がKTに達すると、両踏み状態を示すフラグがONされる。これにより、推定車体速度の演算手法としてMAX輪車輪速度が採用されなくなり、代わりに従動輪である後輪MAX輪の車輪速度が採用される。したがって、推定車体速度が後輪MAX輪の車輪速度に追従して小さな値となり、見かけ上推定車体速度が大きくなってしまうことを防止できる。
一方、図5(b)に示されるように、本実施形態のような両踏み判定が行われない場合には、アクセルペダルの踏み込みによって前輪MAX輪の車輪速度が増加していくと、それに追従して見かけ上推定車体速度が大きくなる。しかしながら、後輪MAX輪に関しては減圧モードとなっても車輪速度があまり大きくならないため、長期にわたって減圧モードが設定され続けた状態になる。したがって、制動力を十分に得ることができなくなる。
以上説明したように、本実施形態にかかるABS制御装置では、ABS制御中に、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差が誤差許容値A以上の状態で、かつ、減圧モードが設定されているという状態となり、さらに、この状態が続けば両踏み状態と判定している。このため、アクセルセンサを備えなくてもアクセルペダルとブレーキペダルの両踏み状態を検出できる。
さらに、両踏み状態が検出されたときに、MAX輪車輪速度を推定車体速度として採用するという手法を推定車体速度の演算手法として用いないようにすることで、推定車体速度がより正確に求められるようにしている。このため、ABS制御中に両踏み状態となった場合に、ABS制御による制動圧の減圧が必要以上に継続されることを防止できるABS制御装置とすることが可能となる。
ここで設定値KTについて説明する。図4(a)に示した誤差許容値Aと所定値KTとの関係に基づいて所定値KTを設定している。
すなわち、図3のステップ215において、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差が誤差許容値Aを超えた場合に、その時の推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差Aに対応する所定値KTを図4(a)のマップから選択しておき、ステップ220で肯定判定されたときに、先程選択した所定値KTをステップ230で用いる所定値KTとして利用することができる。このようにすれば、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差に応じて両踏み状態の判定に掛ける時間を調整することができ、より車両状態に応じた両踏み判定を行うことが可能となる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、誤差許容値Aに対応する所定値KTとして、図4(a)に示すマップを用いたが、図4(b)に示すように誤差許容値Aに対して所定値KTが反比例の関係になるようなマップを用いて所定値KTを設定しても良い。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。上記第1実施形態では、後輪MAX輪の車輪速度に対して誤差許容値Aを加算した値が推定車体速度未満の場合に両踏み判定タイマをインクリメントし、この両踏み判定タイマが所定値KTに至った時に両踏み状態と判定している。これは、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差に基づいて両踏み判定を行うのの一例を示したものであるが、以下のように行っても良い。
すなわち、図3のステップ215を無くし、ステップ210で肯定判定されたらステップ220に進むようにし、ステップ220で肯定判定された場合に、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差の積算値を演算し、さらにこの積算値が閾値Xを超えているか否かを判定する。そして、積算値が閾値Xを超えていれば両踏み状態であると判定する。
このように、推定車体速度と後輪MAX輪の車輪速度との差の積算値と閾値Xとを比較することにより、両踏み判定を行うこともできる。
(他の実施形態)
上記各実施形態では、ABS制御中に両踏み状態中であると、推定車体速度を後輪MAX輪の車輪速度とする手法を採用した例を挙げたが、他の手法で推定車体速度を演算するものを採用しても構わない。例えば、2つの従動輪の平均値を推定車体速度としたり、従動輪のうち低い方の車輪速度を推定車体速度としても構わない。
また、上記図2のステップ205では、4輪ともABS制御中である場合に両踏み判定を行うようにしたが、少なくとも前輪一輪および後輪一輪がABS制御中であれば、上述した減圧モードが設定されたままの状態が続き、制動圧が減圧されてしまうため十分な制動力が得られなくなってしまうという問題が生じ得るため、このような場合に両踏み判定を行うことができる。
さらに、上記第1実施形態において、ステップ220で減圧モード中であるか否かを判定したが、減圧モードではなく、保持モードであったとしても制動圧が増加されないため、本ステップをパルス増圧以外のモードであるか否か、つまり減圧モードもしくは保持モードであるか否かという判定ステップに代えても構わない。
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
本発明の第1実施形態にかかる本発明の第1実施形態が適用されたABS制御装置を実現するブレーキ制御装置1の各機能のブロック構成を示した図である。 推定車体速度演算処理のフローチャートである。 ブレーキECUで実行される両踏み判定処理の詳細を示したフローチャートである。 所定値KTと誤差許容値Aとの関係を示したマップである。 (a)は、このようなABS制御が実行されたときのタイミングチャート、(b)は、両踏み判定が行われないときのタイミングチャートである。
符号の説明
1…ブレーキ制御装置、11…ブレーキペダル、12…倍力装置、14〜17…W/C、18…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、21〜24…車輪速度センサ、20…ブレーキECU、25…ストップランプスイッチ、FL〜RR…各車輪

Claims (6)

  1. 車両に備えられた駆動輪および従動輪それぞれの車輪速度を演算する手段(100)と、
    前記車輪速度に基づいて推定車体速度を演算する手段(110〜160)と、
    前記推定車体速度と前記駆動輪および前記従動輪それぞれの前記車輪速度との偏差に相当するスリップ率に基づいてホイールシリンダ(14〜17)に発生させる制動圧を減圧もしくは増圧することにより車輪のロックを防止するアンチスキッド制御を実行する制御手段(20)と、を備えたアンチスキッド制御装置であって、
    前記駆動輪への駆動力が所定値より高く、かつ、前記制動圧が所定値より高い高駆動力、高制動圧状態を判定する手段(200〜255)を有し、
    前記高駆動力、高制動圧状態を判定する手段は、
    前記駆動輪のうちの少なくとも1輪および前記従動輪のうちの少なくとも1輪がアンチスキッド制御中であるか否かを判定する第1手段(205)と、
    前記第1手段にて肯定判定された場合に、前記従動輪のうち車輪速度が大きい方を従動輪MAX輪として、前記推定車体速度から該従動輪MAX輪の車輪速度を引いたときの差が閾値(A)を超えているかを判定する第2手段(215)と、
    前記従動輪MAX輪がアンチスキッド制御における減圧モードもしくは保持モードが設定されている状態であるか否かを判定する第3手段(220)と、
    前記第2手段および前記第3手段で肯定判定された状態が所定時間(KT)継続したときに高駆動力、高制動圧状態であると判定する第4手段(225〜235)と、を備え、
    前記第4手段は、前記第3手段で肯定判定されたときに、前記第2手段で求められた前記推定車体速度から該従動輪MAX輪の車輪速度を引いたときの差に基づいて前記所定時間を設定し、前記差が大きいほど前記所定時間を短く設定することを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  2. 車両に備えられた駆動輪および従動輪それぞれの車輪速度を演算する手段(100)と、
    前記車輪速度に基づいて推定車体速度を演算する手段(110〜160)と、
    前記推定車体速度と前記駆動輪および前記従動輪それぞれの前記車輪速度との偏差に相当するスリップ率に基づいてホイールシリンダ(14〜17)に発生させる制動圧を減圧もしくは増圧することにより車輪のロックを防止するアンチスキッド制御を実行する制御手段(20)と、を備えたアンチスキッド制御装置であって、
    前記駆動輪への駆動力が所定値より高く、かつ、前記制動圧が所定値より高い高駆動力、高制動圧状態を判定する手段(200〜255)を有し、
    前記高駆動力、高制動圧状態を判定する手段は、
    前記駆動輪のうちの少なくとも1輪および前記従動輪のうちの少なくとも1輪がアンチスキッド制御中であるか否かを判定する第1手段と、
    前記第1手段にて肯定判定された場合に、前記従動輪のうち車輪速度が大きい方を従動輪MAX輪として、該従動輪MAX輪がアンチスキッド制御における減圧モードもしくは保持モードが設定されている状態であるか否かを判定する第2手段と、
    前記第2手段にて肯定判定された場合に、前記従動輪のうち車輪速度が大きい方を従動輪MAX輪として、前記推定車体速度から該従動輪MAX輪の車輪速度を引いたときの差の積算値を演算し、該積算値が閾値(X)を超えたときに高駆動力、高制動圧状態であると判定する第3手段と、を備えていることを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  3. 前記推定車体速度を演算する手段は、ブレーキ中において、前記高駆動力、高制動圧状態であるか否かにより、前記推定車体速度を演算する手法を変更しており、前記高駆動力、高制動圧状態中でない場合には、前記駆動輪と前記従動輪の各車輪速度のうち最も高い値を前記車輪速度とする第1手法にて前記推定車体速度を演算し、前記高駆動力、高制動圧状態中である場合には、前記従動輪の車輪速度に基づいて前記推定車体速度を演算する第2手法にて前記推定車体速度を演算することを特徴とする請求項1または2に記載のアンチスキッド制御装置。
  4. 前記推定車体速度を演算する手段は、前記第2手法として、前記従動輪のうち車輪速度が大きい方を従動輪MAX輪として、該従動輪MAX輪の車輪速度を前記推定車体速度とする手法により前記推定車体速度を演算することを特徴とする請求項3に記載のアンチスキッド制御装置。
  5. 前記推定車体速度を演算する手段は、前記第2手法として、前記従動輪の車輪速度の平均値を前記推定車体速度とする手法により前記推定車体速度を演算することを特徴とする請求項3に記載のアンチスキッド制御装置。
  6. 前記高駆動力、高制動圧状態を判定する手段は、
    前記推定車体速度が所定速度(KV)未満の際にのみ前記高駆動力、高制動圧状態の判定を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のアンチスキッド制御装置。
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