本発明は、一対のアレイレンズを有するオプチカルインテグレータに組み合わされて偏光変換インテグレータを構成する偏光変換素子およびそれを用いた投射型液晶表示装置に関する。
従来、光源からの光をライトバルブで映像信号に応じて光強度変調し、形成された光学像を拡大して投射する光学ブロックである光学ユニットを、駆動回路,電源回路や冷却用ファンなどと共に筐体内に収納した投射型表示装置が知られている。
投射型表示装置では、光源によって照明されるライトバブル上の照度分布を均一とするために、一般に、2枚(一対)のアレイレンズを備えたオプチカルインテグレータが用いられる。また、ライトバブルとして液晶パネルが用いられる場合、光利用効率を高めるために、一方向にアレイ状に配列された複数の平行四辺形柱の透光性部材の界面に偏光分離膜(「PBS膜」,「偏光ビームスプリッタ膜」ともいう)と反射膜とが交互に形成された偏光分離素子(以下、この偏光分離素子を便宜上「PBSアレイ」ともいう)により偏光分離を行い、偏光分離素子の一方の偏光の出射側に配置された位相差板により所定の偏光光に揃えて出射させる偏光変換機能を備えた偏光変換素子を前記オプチカルインテグレータと組み合わせた所謂偏光変換インテグレータ方式が用いられる。この種の技術は、例えば特許文献1に記載されている。また、偏光変換素子については、例えば特許文献2に記載されている。
上記した偏光変換素子の一方の偏光の出射側に配置された位相差板の基材としては、従来、高分子フィルムを一軸延伸した有機フィルム(例えば一軸延伸したポリカーボネートフィルム)が主に用いられている。この有機フィルムは、耐熱性,耐光性が低く、黄変して、偏光変換効率が劣化するという問題を有している。そこで、投射型表示装置の高輝度化に伴い、位相差板の基材として水晶平板を用いることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。水晶を用いれば耐熱性,耐光性,耐久性を向上させることができる。
しかしながら、水晶製の位相差板は、光学用人工水晶を切り出して成形されるので、サイズが大きな位相差板になればなるほど高価になると共に、光学用人工水晶の形成が飛躍的に困難になるという問題がある。この問題を解決する技術として、一つの位相差板を複数に分割された水晶製の位相差板で構成する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開平10−171045号公報
特開2003−287719号公報
特開2003−302523号公報
特開2007−58018号公報
上記した特許文献4によれば、サイズが大きな位相差板をサイズが小さな複数の水晶製の位相差板で構成することができ、比較的低コストで容易に大きな偏光変換素子を作成できる。また、耐熱,耐光性に優れた水晶製の位相差板を使用できるので、偏光変換素子の長寿命化も図れる。
ところで、特許文献4では、一方向にアレイ状に配列された複数の平行四辺形柱の透光性部材の界面に偏光分離膜(偏光ビームスプリッタ膜)と反射膜とが交互に形成された偏光分離素子に、水晶製の位相差板(以下、「水晶位相差板」と省略する)を接着剤(有機製)で固定するようにしている。一方、偏光分離素子の基材は硝子であり、位相差板の基材は水晶であるので、熱膨張率が異なることになる。このため、光源からの光束に晒される偏光変換素子では、偏光分離素子と水晶位相差板との熱膨張率の差による応力により、偏光分離素子から水晶位相差板が剥離し易いという懸念がある。
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたもので、その目的は、水晶位相差板の剥離を低減する偏光変換素子およびそれを用いた投射型液晶表示装置を提供することにある。
上記課題点を解決するために、本発明による投射型液晶表示装置は、光源と、該光源からの光を複数の光に分割するオプチカルインテグレータと、該オプチカルインテグレータからの複数の光を互いに直交する偏光方向を有する2種類の偏光光に分離する複数列の偏光分離部、前記2種類の偏光光のいずれか一方を、偏光方向が直交する他方の偏光光と同じ偏光方向を有する偏光光に変換する、複数列の水晶の位相差板、および、前記複数列の偏光分離部および前記複数列の水晶の位相差板を支持する支持構造体を備えた偏光変換素子と、該偏光変換素子からの光が照射され、映像信号に応じて光学像を形成する液晶表示素子と、前記光学像を拡大して表示する投射レンズを備えた投射型液晶表示装置であって、前記支持構造体は、硝子の位相差板支持部材を含み、前記複数列の水晶の位相差板の少なくとも1列においては、複数の位相差板構成部材が隣接しており、前記位相差板支持部材が前記位相差板構成部材の隣接部分を支持している(発明1)。
また、発明1に記載の投射型液晶表示装置において、前記位相差板構成部材の隣接部分は、前記オプチカルインテグレータからの複数の光が通らない部分であると良い(発明2)。
また、発明1又は2に記載の投射型液晶表示装置において、前記位相差板支持部材の長辺は、前記オプチカルインテグレータからの複数の光が通らない部分であると良い(発明3)。
また、発明1に記載の投射型液晶表示装置において、前記オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズにおける、前記位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数Nは偶数であり、前記位相差板を光軸方向から見た場合において、前記位相差板構成部材の隣接部分が、前記アレイレンズにおける、前記位相差板の長辺と同じ方向の端からN/2番目と(N/2)+1番目のレンズセルの間にあると良い(発明4)。
また、発明1に記載の投射型液晶表示装置において、前記オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズにおける、前記位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数Nは偶数であり、前記位相差板を光軸方向から見た場合において、前記位相差板構成部材の隣接部分が、前記光源からの光によって前記偏光変換素子上に形成される複数のアーク像における、前記位相差板の長辺と同じ方向の端からN/2番目と(N/2)+1番目のアーク像の間にあると良い(発明5)。
また、発明4又は5に記載の投射型液晶表示装置において、前記偏光変換素子における、前記位相差板の長辺と同じ方向の長さをLとした場合における、前記位相差板支持部材の短辺の長さは(L/N)×2であると良い(発明6)。
また、発明1に記載の投射型液晶表示装置において、前記オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズにおける、前記位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数(N+1)は奇数であり、前記位相差板を光軸方向から見た場合において、前記位相差板構成部材の隣接部分が、前記アレイレンズにおける、前記位相差板の長辺と同じ方向の端からN/2番目と(N/2)+1番目のレンズセルの間にあると良い(発明7)。
また、発明1に記載の投射型液晶表示装置において、前記オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズにおける、前記位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数(N+1)は奇数であり、前記位相差板を光軸方向から見た場合において、前記位相差板構成部材の隣接部分が、前記光源からの光によって前記偏光変換素子上に形成される複数のアーク像における、前記位相差板の長辺と同じ方向の端からN/2番目と(N/2)+1番目のアーク像の間にあると良い(発明8)。
また、発明7又は8に記載の投射型液晶表示装置において、前記偏光変換素子における、前記位相差板の長辺と同じ方向の長さをLとした場合における、前記位相差板支持部材の短辺の長さが{L/(N+1)}×2であると良い(発明9)。
また、発明7又は8に記載の投射型液晶表示装置において、前記偏光変換素子における、前記位相差板の長辺と同じ方向の長さをLとした場合における、前記位相差板支持部材の短辺の長さは{L/(N+1)}×3であると良い(発明10)。
また、上記課題点を解決するために、本発明による偏光変換素子は、光を互いに直交する偏光方向を有する2種類の偏光光に分離する複数列の偏光分離部、前記2種類の偏光光のいずれか一方を、偏光方向が直交する他方の偏光光と同じ偏光方向を有する偏光光に変換する、複数列の水晶の位相差板、および、前記複数列の偏光分離部および前記複数列の水晶の位相差板を支持する支持構造体を備えた偏光変換素子であって、前記支持構造体は、硝子の位相差板支持部材を含み、前記複数列の水晶の位相差板の少なくとも1列においては、複数の位相差板構成部材が隣接しており、前記位相差板支持部材が前記位相差板構成部材の隣接部分を支持している(発明11)。
また、発明11に記載の偏光変換素子において、前記位相差板構成部材の隣接部分は、前記オプチカルインテグレータからの複数の光が通らない部分であると良い(発明12)。
また、発明11又は12に記載の偏光変換素子において、前記位相差板支持部材の長辺は、前記オプチカルインテグレータからの複数の光が通らない部分であると良い(発明13)。
上記のように、本発明によれば、従来技術のように接着剤を用いず、位相差板支持部材が位相差板構成部材の隣接部分を支持する構造としたので、熱劣化により位相差板が偏光分離素子から剥離するという不具合を低減することができる。
以下、本発明の最良の形態について、図を参照して説明する。なお、各図において、共通な機能を有する要素には同一な符号を付して示し、一度説明したものについては、その重複する説明を省略する。
まず、本実施の形態に係わる光学ユニットの光学系について述べ、その後、本実施形態による偏光変換素子について詳細に説明するものとする。
図1は、本実施形態に係わる光学ユニットの光学系の模式構成図である。なお、図1において、各色光の光路に配置されている要素を区別する際には符号の後に色光を表すR,G,Bを添えて示し、区別する必要がない場合には、色光の添え字を省略する。また、以下の説明を簡単とするため、ローカル右手直角座標系を導入しておく。すなわち、光軸101をZ軸として、Z軸に直交する面内で、図1紙面に平行な軸をY軸とし、図1紙面の裏から表に向かう軸をX軸とする。また、便宜上、X軸に平行な方向を「X方向」,Y軸に平行な方向を「Y方向」と呼ぶものとする。後述する矩形照射有効領域を有する液晶パネル60の面内においては、X方向は矩形照射有効領域における短辺に平行な方向であり、Y方向は矩形照射有効領域における長辺に平行な方向である。
図1において、投射型液晶表示装置の光学系は、照明光学系100と、光分離光学系130と、リレー光学系140と、3つのフィールドレンズ29(29R,29G,29B)と、3つの透過型液晶表示素子としての液晶パネル60(60R,60G,60B)と、光合成手段である光合成プリズム80と、投射手段である投射レンズ90とを備えている。そして、これらの光学素子は、基体550に装着されて、光学ユニット500を構成し、該光学ユニット500は、液晶パネル60を駆動する駆動回路570、液晶パネル60などを冷却する冷却用ファン580、照明光学系100に含まれる光源ユニット10,冷却用ファン580,駆動回路570やその他の図示しない各回路に電力を供給する電源回路560とともに、図示しない筐体に搭載され、投射型液晶表示装置を構成する。
映像表示素子である液晶パネル60を均一に照射する照明光学系100は、略白色光を射出するランプ(光源ともいう)11およびリフレクタ12(ここでは放物面リフレクタ)からなる光源ユニット10と、オプチカルインテグレータを構成する第1のアレイレンズ21および第2のアレイレンズ22と、偏光変換素子25と、集光レンズ(重畳レンズともいう)27を含んでなる。また、照明光学系100からの略白色光を例えば光の3原色光に光分離する光分離光学系130は、2つのダイクロイックミラー31,32と、光路方向を変える反射ミラー33とを有している。また、リレー光学系140は、フィールドレンズである第1リレーレンズ41と、リレーレンズである第2リレーレンズ42と、光路方向を変える2つの反射ミラー45,46とを含んでなる。
ランプ11は、超高圧水銀ランプ,メタルハライドランプ,キセノンランプ,水銀キセノンランプ,ハロゲンランプ等の白色ランプである。リフレクタ12は、ランプ11を背後側から覆うように配置された、例えば回転放物面形状の反射面を有するもので、円形ないし、多角形の出射開口を持つ。
ランプ11から射出された光は、例えば回転放物面形状の反射面を有するリフレクタ12によって反射され、光軸101に略平行となり、光源ユニット10から略平行の光束が射出される。光源ユニット10から射出された光は、偏光変換インテグレータに入射する。
偏光変換インテグレータは、第1のアレイレンズ21と第2のアレイレンズ22からなる均一照明行うオプチカルインテグレータと、光の偏光方向を所定偏光方向に揃えて所定の直線偏光光(例えばS偏光光)に変換する偏光変換素子25(詳細は後述)とで構成される。
第1のアレイレンズ21は、照明光軸方向から見て液晶パネルとほぼ相似な矩形形状を有する複数のレンズセルがマトリクス状に配設されたもので、光源ユニット10から入射した光を複数のレンズセルで複数の光に分割して、効率よく第2のアレイレンズ22と偏光変換素子25を通過するように導く。即ち、第1のアレイレンズ21は、ランプ11と第2のアレイレンズ22の各レンズセルとが光学的に共役な関係になるように設計されている。
第1のアレイレンズ21と同様に、照明光軸方向から見て矩形形状の複数のレンズセルがマトリクス状に配設された構成を有する第2のアレイレンズ22は、構成するレンズセルそれぞれが対応する第1のアレイレンズ21のレンズセルの形状を液晶パネル60に投影(写像)する。
この時、偏光変換素子25で第2のアレイレンズ22からの光は所定の偏光方向(例えばS偏光)に揃えられる。そして、第1のアレイレンズ21の各レンズセルの投影像は、それぞれ集光レンズ27、光分離光学系130,フィールドレンズ29G,29B,リレー光学系140,フィールドレンズ29Rにより各液晶パネル60上に重ね合わせられる。
なお、第2のアレイレンズ22とこれに近接して配設される集光レンズ27とは、第1のアレイレンズ21の各レンズセルと液晶パネル60とが、光学的に物体と像の関係(即ち、共役な関係)になるように設計されているので、第1のアレイレンズ21で複数に分割された光束は、第2のアレイレンズ22と集光レンズ27によって、液晶パネル60上に重畳して投影され、実用上問題のないレベルの均一性の高い照度分布の照明が可能となる。
以上述べたように、第1のアレイレンズ21,第2のアレイレンズ22,偏光変換素子25とで構成された偏光変換インテグレータは、ランプ(光源)11からの偏光方向がランダムな光を所定偏光方向に揃えながら、液晶パネル60を均一照明することができる。
照明光学系100から射出された光(略白色光)は、光分離光学系130に入射する。光分離光学系130は、照明光学系100からの略白色光を光の3原色の色光に光分離する。例えば第1の色光であるB光(青色帯域の光)と、第2の色光であるG光(緑色帯域の光)と、第3の色光であるR光(赤色帯域の光)とに分光する。そして、光分離した各色光を対応する液晶パネル60(60R,60G,60B)に向かうそれぞれの光路(第1の色光のB光路,第2の色光のG光路,第3の色光のR光路)に導光する。すなわち、ダイクロイックミラー31により、例えばB光は反射され、対応する液晶パネル60B(B光路)に向かう。また、G光およびR光は、ダイクロイックミラー31を透過し、ダイクロイックミラー32によりG光とR光に分離される。ここでは、G光はダイクロイックミラー32を反射して対応する液晶パネル60G(G光路)に向かい、R光はダイクロイックミラー32を透過して対応する液晶パネル60R(R光路)に向かう。
光分離光学系130の各光路について具体的に述べる。
ダイクロイックミラー31を反射したB光は、反射ミラー33を反射して、フィールドレンズ29Bを通過して、B光用の液晶パネル60Bに入射する。
一方、ダイクロイックミラー31を透過したG光およびR光の内、G光はダイクロイックミラー32を反射して、フィールドレンズ29Gを通過して、G光用の液晶パネル60Gに入射する。
また、R光は、ダイクロイックミラー32を透過し、リレー光学系140に入射する。リレー光学系140に入射したR光は、フィールドレンズの第1リレーレンズ41によって、反射ミラー45を経て、第2リレーレンズ42の近傍に集光(収束)し、フィールドレンズ29Rに向けて発散する。そして、反射ミラー46を経てフィールドレンズ29Rに入射し、フィールドレンズ29Rで光軸にほぼ平行とされ、R光用の液晶パネル60Rに入射する。
液晶パネル60(60R,60G,60B)は、光入射側に入射側偏光板(図示せず)を備え、光出射側に出射側偏光板(図示せず)を備える。
各液晶パネル60は、入射側偏光板により偏光度が高められた光分離光学系130から入射するS偏光の色光を、駆動回路570で駆動されて、図示しないカラー映像信号に応じて変調(光強度変調)し、各色光の例えばP偏光の光学像を形成する。そして、P偏光の各光学像は、出射側偏光板により不要な偏光光成分(ここではS偏光光)が除去されてコントラストが高められ、光合成手段としての光合成プリズム80に入射する。この時、B光路およびR光路では、液晶パネル60B,60Rと光合成プリズム80との間にλ/2波長板70B,70Rが設けられている。従って、P偏光のB光およびR光の光学像はS偏光(光合成プリズム80のダイクロイック膜面に対してS偏光)の光学像とされて、P偏光(光合成プリズム80のダイクロイック膜面に対してP偏光)のG光の光学像と共に、光合成プリズム80で効率よく光合成される。
光合成プリズム80は、B光を反射するダイクロイック膜(誘電体多層膜)81bと、R光を反射するダイクロイック膜(誘電体多層膜)81rとが、4つの直角プリズムの界面に略X字状(クロス状)に形成されたものである。そして、3色光の各光学像を合成してカラー映像光(画像光)とする機能を有する。光合成プリズム80では、一般に、光利用効率の向上の点から、ダイクロイック膜81(81b,81r)の面に対してG光をP偏光光、R光とB光をS偏光光とする所謂SPS合成が用いられる。液晶パネル60からはP偏光光が射出されるので、B光路とR光路にはλ/2波長板70B,70Rが設けられ、光合成プリズム80に入射されるB光とR光はS偏光光とされている。光合成プリズム80の3つの入射面の内、対向する入射面に入射したB光とR光(ダイでロイック膜面に対してS偏光光)は、クロスしたB光用のダイクロイック膜81bおよびR光用のダイクロイック膜81rでそれぞれ反射され、また、中央の入射面に入射したG光(ダイクロイック膜面に対してP偏光光)は直進して、光合成され、出射面から出射する。その後、例えばズームレンズであるような投射レンズ90によって、スクリーン(図示せず)に投影される。
冷却用ファン580は、例えば液晶パネル60等で光源ユニット10からの照射光の一部を吸収して生じる熱を、空気の流れ(風)を図示しない冷却用ダクトを介して送風し、液晶パネル60への流路585を形成して冷却する。
なお、リレー光学系140は、光源からB光用の液晶パネル60Bまでの光路長(B光路長)および光源からG光用の液晶パネル60Gまでの光路長(G光路長)に対して、光源からR光用の液晶パネル60Rまでの光路長(R光路長)が長いので、これを補正するためのものである。
ここで、リレー光学系140について少し述べておく。
R光路上の第1リレーレンズ41の近傍には、照明光学系100により第1のアレイレンズ21の各レンズセル像が重畳した仮想の液晶表示像(図示せず)が結像する。この仮想の液晶表示像をR光用の液晶パネル60Rにリレー(写像)するのがリレー光学系140の目的である。すなわち、リレー光学系140の第2リレーレンズ42は、仮想の液晶表示像をR光用の液晶パネル60R上に写像する。つまり、仮想の液晶表示像と液晶パネル60Rは、物と像の関係にある。また、リレー光学系140のフィールドレンズである第1リレーレンズ41は、液晶パネル60R上に結像する像の照度が隅々まで均一となるように、仮想の液晶表示像を通過した光を第2リレーレンズ42近傍に集光する。第2リレーレンズ42近傍には第2のアレイレンズ22上に形成された、複数のアーク像(2次光源像)が形成される。つまり、第2のアレイレンズ22と第2リレーレンズ42は物と像の関係にある。
次に、本実施形態に係わる偏光変換インテグレータの光学構成について図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係わる偏光変換インテグレータの要部構成の拡大図である。図2(a)は偏光変換インテグレータをX方向から見た上面図である。図2(b)は偏光変換インテグレータをY方向から見た側面図である。図2(c)は図2(a)の偏光変換素子の拡大詳細図である。なお、図2において、Z方向は光軸方向に対応しており、X方向は液晶パネル60の矩形有効表示領域の短辺に平行な方向に対応しており、Y方向は液晶パネル60の矩形有効表示領域の長辺に平行な方向に対応している。
図2から明らかなように、オプチカルインテグレータを構成する第1のアレイレンズ21,第2のアレイレンズ22は、ここでは共に、X方向に8分割され、Y方向に6分割されている。すなわち、第1のアレイレンズ21,第2のアレイレンズ22は、レンズセルが8行6列のマトリクス状に配列された構成を有している。
また、偏光変換素子25は、オプチカルインテグレータを構成する第1のアレイレンズ21,第2のアレイレンズ22によって分割されたそれぞれの光束を2種類の直線偏光光(P偏光光とS偏光光)に分離する偏光分離素子としてのPBSアレイ58と、このPBSアレイ58によって分離されたP偏光光とS偏光光の内、P偏光光をS偏光光に変換する偏光変換手段としての位相差板54とを含んでなる。
PBSアレイ58は、入射光束に対して傾斜して配置され、入射光束を互いに直交する偏光方向を有する2種類の直線偏光光に分離する複数の偏光分離部52と、偏光分離部52の間に交互に並行配置され、偏光分離部52で分離されたいずれか一方の偏光光を反射する複数の反射部53と、偏光分離部52と反射部53が形成された複数の透光性部材51とを含んでなり、偏光分離部52と反射部53が形成された透光性部材51がアレイ状に配列された偏光分離素子である。
図2を用いて具体的に述べると、PBSアレイ58は、液晶パネル60の短辺に平行な方向であるX方向に沿って伸びた平行四辺形柱である硝子(ガラス)などの透光性部材51が、光軸101方向(Z方向)に対して直交する面(XY平面)内でY方向に沿って複数アレイ状に配列され、隣接する透光性部材51間の界面に交互に偏光分離部(以下、「PBS膜」ともいう)52と反射部53が形成されたものである。なお、PBS膜52としては誘電体多層膜が用いられ、反射部53としては誘電体多層膜や金属膜が用いられる。
また、位相差板54は、ここでは、PBSアレイ58(偏光変換素子25)の光入射側の開口部55を通り、PBS膜52を透過した光(P偏光光)が出射する出射面に備えられている。本実施形態においては、位相差板54として、水晶製の位相差板(水晶位相差板)を用いる。
偏光変換素子25は、ここでは、光軸101と平行四辺形柱の透光性部材51の延伸方向(X方向)とで形成される面(光軸101を含むXZ平面であり、以下、この面を便宜上「光軸面」と称する)S101に対して、対称に構成されている。透光性部材51の傾きは、光軸面S101に対して図2(c)紙面右側では45度右上がりで、図2(c)紙面左側では45度右下がりである。勿論、PBS膜と反射部の順序も光軸面S101に対して対称で、光軸面S101に対して図2(c)紙面右側では、光軸101から右側に向けてPBS膜,反射部,PBS膜,反射部,…の順序で、光軸面S101に対して図2(c)紙面左側では、光軸101から左側に向けてPBS膜,反射部,PBS膜,反射部,…の順序で形成されている。なお、偏光変換素子25は光軸面S101に対して対称であるとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、特許文献3,4に記載の偏光変換素子のごとく、全てのPBS膜,反射部が入射光束に対して同一傾斜を有するものであってもよいことは言うまでもない。
以上のように構成された偏光変換素子25に、第1のアレイレンズ21,第2のアレイレンズ22を通って光入射側の開口部55の一つ(例えば開口部556)に光Lが入射するものとする。入射した光Lのうち、例えばS偏光光はPBS膜52で反射され、対を成して対向する反射部53で反射されてS偏光光で出射する。また、P偏光光はPBS膜52を透過し、光出射面の位相差板54によりS偏光光に変換されて出射する。このような基本と成る偏光変換部50が複数(例えば図2では501〜506の6個)構成され、偏光変換素子25は入射した光の偏光方向を所定偏光方向の光(ここではS偏光光)に揃えて出射させる偏光変換機能を有している。なお、符号56の部材はオプチカルインテグレータからの光束が偏光変換素子25のPBS膜52のみに入射し、反射部53には入射しないようにするための遮光板である。以下偏光変換部,開口部などを特定する場合には、図2(c)紙面左端側から数えた数字1〜6を添えて示す。
位相差板54として水晶位相差板を用いる場合、水晶は高価なので、その切り出し方法について十分考慮しておく必要がある。次に、水晶位相差板の水晶基材の切り出し方法について、図3を用いて説明する。
図3は、水晶基材の切り出し方法を説明する概念図である。図3において、所定サイズの水晶ウエハ(例えば76φの水晶ウエハ)210の中央部から、所定の長さの水晶基材211が、図3(a)に示すように、8本取れたとする。しかし、この切り出し方法では、水晶ウエハ210の左右端部は使用されず無駄となるため、取り数が少なく、位相差板が高価なものとなる。そこで、図3(b)に示すように、水晶基材の長さを例えば半分とすれば、水晶ウエハ210の図紙面左右端部からも水晶基材を切り出しすることが可能となる。つまり、水晶基材の取り数が多くなり、コストを下げることができることになる。この切り出し方法により切り出された半分の長さの水晶基材212で構成された水晶位相差板をその長手方向で繋ぎ合わせた偏光変換素子例が、前記した特許文献4(特開2007−58018号公報)の図6に記載されている。
しかしながら、特許文献4に開示されている偏光変換素子においては、長手方向で分割された水晶位相差板をPBSアレイに接着剤で固定するようにしている。接着剤は有機製であるため接着力は熱により劣化する。そのため、光源からの強力な光束に晒される偏光変換素子では、PBSアレイと水晶位相差板との熱膨張率の差による応力で、水晶位相差板が剥離し易いという懸念がある。
そこで、本実施形態の偏光変換素子は、PBSアレイと長手方向で繋ぎ合わされた2つの水晶位相差板とを支持する支持構造体を備え、該支持構造体は水晶位相差板をそのの繋ぎ合わせ部(繋ぎ目,隣接部分)近傍でPBSアレイに透光性の硝子板(位相差板支持部材)により支持する構造とする。
次に、PBSアレイと長手方向で繋ぎ合わされた水晶位相差板とが支持構造体に装着された、実施例1による偏光変換素子について、図6を用いて説明する。
図6は、実施例1による支持構造体に装着された偏光変換素子を光出射側から見た概観を模式的に示した斜視図である。
図6から明らかなように、PBSアレイ58と長手方向で繋ぎ合わされた(隣接された)2つの水晶位相差板(位相差板構成部材)54aとを支持する支持構造体250は、略矩形枠状の支持枠251と、水晶位相差板54aをその繋ぎ目(隣接部分)54bでPBSアレイ(偏光分離素子)58側に押さえ付ける硝子板(位相差板支持部材)252とからなる(支持構造については図4,図5で後述する)。支持枠251はここでは耐熱性の樹脂(モールド)から成るとする。支持枠251には光が照射されないので耐熱性が問題になる程高温とならず、樹脂を用いることができる。しかし、支持枠251の材質はこれに限定されるものではなく、金属(例えばアルミニウム)であってもよい。硝子板252はコストの点から白板硝子を用いるものとする。一つの位相差板54は、その長手方向(すなわち、X方向)において2分割されており、同じ長さを有する2つの水晶位相差板54aが長手方向(X方向)で繋ぎ合わされて、構成されている。各位相差板54における2つの水晶位相差板54aの長手方向の繋ぎ目(位相差板54の分割部,隣接部分)54bの位置は同じである。この繋ぎ目54bの位置は、オプチカルインテグレータで分割された光束間の位置に対応するようにしている(理由については図7で後述)。
次に、図7を用いて、PBSアレイ上におけるランプのアーク像の位置と、水晶位相差板の長手方向での繋ぎ目位置と、硝子板の位置との関係について説明する。
図7は、PBSアレイ上における光分布に硝子板を重ね合わせた図で、水晶位相差板の長手方向での繋ぎ目位置と、その繋ぎ目近傍で水晶位相差板を支持する(押圧するなど)硝子板の幅と、オプチカルインテグレータで分割された光束との関係を説明するための図である。
図7のアーク像11Aのパターンから明らかなように、アーク像11Aとアーク像11Aとの間には隙間がある。この隙間はオプチカルインテグレータで分割された光束(オプチカルインテグレータからの複数の光)が通らない部分である。この隙間(オプチカルインテグレータで分割された光束間)に前記した繋ぎ目54bのラインが位置するようにすれば、繋ぎ目部分には光がほとんど入射しないので、繋ぎ目54bによる陰影をなくすことができる。従って、本実施形態では、繋ぎ目54bの位置は、オプチカルインテグレータで分割された光束間の位置に対応するようにしている。
また、本実施例では、位相差板54が長手方向(X方向)で2分割されているので、繋ぎ目54bを結ぶラインは光軸101を含むY軸となる。この場合、次に述べる理由により、益々繋ぎ目により陰影が生じる恐れはないと言える。すなわち、通常、ランプ11の図示しないアークの長手方向は光軸101に沿っており、偏光変換素子25(PBSアレイ58)の開口部55の長手方向(X方向)と直交するように配置されるので、図7から明らかなように、PBSアレイ58上のアーク像11Aにおいて、Y軸(繋ぎ目を結ぶライン)を挟むアーク像11Aaは、Y軸方向で光軸101から遠ざかる程細長くなり、Y軸と略平行となる。つまり、Y軸を挟むアーク像11Aaの間は広がるので、Y軸(繋ぎ目を結ぶライン)上には、光がほとんど入射しないことになる。
位相差板54を分割部近傍、つまり、2つの水晶位相差板54aをその繋ぎ目54bの近傍でPBSアレイ58側に支持する(押圧するなど)硝子板(位相差板支持部材)252のX方向(縦方向,幅方向,位相差板の長辺と同じ方向)の端部(位相差板支持部材の長辺)252aの位置も、繋ぎ目54bの位置と同様に、オプチカルインテグレータで分割された光束間(オプチカルインテグレータからの複数の光が通らない部分)に対応させれば、その端部252aによる陰影をなくすことができる。すなわち、硝子板252の幅(位相差板支持部材の短辺)は、第1のアレイレンズ21のレンズセルの2つ分に対応している。
オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズに注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成について記載すると以下のようになる。すなわち、オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズにおける、位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数Nが偶数である場合には、位相差板を光軸方向から見た場合において、位相差板構成部材の隣接部分が、アレイレンズにおける、位相差板の長辺と同じ方向の端からN/2番目と(N/2)+1番目のレンズセルの間にあると良い。
例えば、図2におけるように、第1のアレイレンズ21,第2のアレイレンズ22のレンズセルが8行6列のマトリクス状に配列された構成を有している場合には、位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数Nは8となり、N/2=4,(N/2)+1=5となるので、位相差板を光軸方向から見た場合において、位相差板構成部材の隣接部分は、アレイレンズにおける、位相差板の長辺と同じ方向の端から4番目と5番目のレンズセルの間にあると良い。このように構成すると、位相差板構成部材の隣接部分には、オプチカルインテグレータからの複数の光がほとんど入射しないので、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる。
また、偏光変換素子上に形成されるアーク像に注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成について記載すると以下のようになる。すなわち、オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズにおける、位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数Nが偶数である場合には、位相差板を光軸方向から見た場合において、位相差板構成部材の隣接部分が、光源からの光によって偏光変換素子上に形成される複数のアーク像における、位相差板の長辺と同じ方向の端からN/2番目と(N/2)+1番目のアーク像の間にあると良い。
例えば、第1のアレイレンズ21,第2のアレイレンズ22のレンズセルが8行6列のマトリクス状に配列された構成を有している場合には、位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数Nは8となり、N/2=4,(N/2)+1=5となるので、位相差板を光軸方向から見た場合において、位相差板構成部材の隣接部分は、光源からの光によって偏光変換素子上に形成される複数のアーク像における、位相差板の長辺と同じ方向の端から4番目と5番目のアーク像の間にあると良い。このように構成すると、位相差板構成部材の隣接部分には、オプチカルインテグレータからの複数の光がほとんど入射しないので、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる。
また、上記した、オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズに注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成、及び、偏光変換素子上に形成されるアーク像に注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成は共に、前記偏光変換素子における、前記位相差板の長辺と同じ方向の長さをLとした場合における、前記位相差板支持部材の短辺の長さは(L/N)×2であると良い。このように構成すると、図7に示したように、光源からの光によって偏光変換素子上に形成される複数のアーク像が、位相差板支持部材の長辺にはほとんど入射しないので、位相差板支持部材による陰影をさらになくすことができる。
次に、本実施例による偏光変換素子の支持構造について図4,図5を用いて説明する。
図4は、偏光変換素子の分解斜視図である。図6は、偏光変換素子を支持構造体に装着した熱カシメ前の状態を示す図である。
図4から明らかなように、支持構造体250の支持枠251は、図紙面横方向(Y方向)の2つの横枠部251a,251bと、図紙面縦方向(X方向)の2つの縦枠部251c,251dとを備え、縦枠部251c,251dの高さは縦方向で熱カシメを行うために横枠部251a,251bより高くしてある(詳細は後述)。図紙面の支持枠251においては、偏光変換素子25の光入射側が上側であり、光出射側が下側である。横枠部251a,251bには、それぞれ、その中央部を挟んで2つの突起254が設けられており、2つの突起254の間に硝子板252を装着するための凹部255が形成されている。また、縦枠部251c,251dには、それぞれ、所定の間隔をおいて複数の突起256が設けられており、突起256の間に水晶位相差板54aを装着するための凹部257が所定数設けられている。
このような支持枠251に、偏光変換素子を装着する手順は例えば次の通りである。先ず、硝子板252を横枠部251a,251bの凹部255に装着する。そして、硝子板252の上に直交して水晶位相差板54aを縦方向(X方向)に装着する。すなわち、2つの水晶位相差板54aの内、一方の水晶位相差板54aを縦枠部251cの凹部257に装着し、他方の水晶位相差板54aを縦枠部251dの凹部257に装着する。
なお、水晶位相差板54aを装着する順序は限定されるものではなく、任意でよい。勿論、2つの水晶位相差板54aをそれぞれの凹部257に位置合わせて挿入することにより、繋ぎ目54bで横方向にずれることなく縦方向で密着するように、支持枠251が精度高く形成されていることはいうまでもない。また、硝子板252と水晶位相差板54aとが浮くことなく密着するように凹部255と凹部257の高さ位置が適切に設定されていることは言うまでもない。
また、上記説明では、2つの水晶位相差板54aをそれぞれ別々に装着するとしたが、2つの水晶位相差板54aを接着剤で繋ぎ合わせたものを装着するようにしても良い。接着剤は熱により劣化するが、本実施形態では、2つの水晶位相差板54aを繋ぎ目で、硝子板252で支持して(押圧するなどして)固定するので、接着剤の劣化は問題となることはない。そして、この水晶位相差板の装着を偏光変換部50の数に対応する回数分(ここでは、6回)繰り返す。その後、PBSアレイ58を載せ、アルミ二ウム製の遮光板56を載せる。
図5に遮光板56を載せた状態の偏光変換素子を示す。図5において、縦枠部251c,251dの斜線部は熱カシメ部251eである。支持枠251に硝子板252,水晶位相差板54a,PBSアレイ58,遮光板56の順序で積層した図5の状態から、熱カシメ部251eに図示しない治具を用いて熱を付与して、遮光板56の上から熱カシメを行う。熱カシメ後の支持構造体250に装着された偏光変換素子は、図6(a)に示されている。
このように、本実施例は、PBSアレイ58と繋ぎ合わされた水晶位相差板とが積層された偏光変換素子を、支持枠251と硝子板252とにより挟み込む支持構造を採用している。従って、従来のように、PBSアレイ58に位相差板54を固定するために接着剤を用いないで、熱による劣化を低減することができ、位相差板の剥離を抑制することができる。
なお、上記では、一つの位相差板を2分割し、2つの短い水晶位相差板を繋ぎ合わせるものとした。しかし、本発明は一つの位相差板を複数に分割し、複数の短い水晶位相差板を繋ぎ合わせる場合にも適用できる。この場合、硝子板は分割数に応じて板数を増加させても良い。例えば、3分割の場合は、水晶位相差板の分割数である3から1を引いた2枚に増加させても良い。また、板数を増加させず、硝子板の幅(位相差板支持部材の短辺)をより長くすることにより、複数の短い水晶位相差板の隣接部分を支持するようにしても良い。
組み立てる場合は、先ず、図示しない治具を用いて、例えばUV接着剤で複数の短い水晶位相差板を繋ぎ合わせて1本の長い位相差板を形成しておく。そして、水晶位相差板の繋ぎ目位置に対応して横枠部に分割数に応じて増やされた突起間の凹部にそれぞれの硝子板を装着する。その後、UV接着剤を用いて繋ぎ合わせておいた位相差板を縦枠部の凹部に装着し、その上にPBSアレイと遮光板を順に積層し、熱カシメを行って偏光変換素子を組み上げる。このようにすれば、熱劣化により接着剤の接着力が劣化しても、繋ぎ目位置近傍を硝子板で押し付けているので、水晶位相差板が偏光分離素子から剥離するのを抑えることができる。
上記した実施形態では、図3(b)に示す水晶基材の切り出し方法を本発明に適用したが、図3(c)に示す切り出し方法も本発明に適用することができる。すなわち、図3(c)において、水晶ウエハ210の中央部では所定の長さで切り出し、図紙面左右端部では半分の長さで切り出すようにしてもよい。この切り出し方法を適用すれば、水晶ウエハ210の中央部では半分に分割する必要がないので、その分、コストを下げることが可能となる。以下、図3(c)に示す切り出し方法を適用した他の実施例(第2の実施例)について説明する。なお、支持構造体に偏光変換素子を装着する手順は上記した実施例1に同じであり、その説明を省略する。
図8は、実施例2による支持構造体に装着された偏光変換素子を光出射側から見た概観斜視図である。
図8において、中央部に配置される水晶製の位相差板54は分割されてなく、図紙面Y方向端部側に配置される位相差板54は2分割され、同じ長さを有する2つの水晶位相差板(位相差板構成部材)54aが長手方向(X方向)で繋ぎ合わされて(隣接されて)、構成されている。両端部側の水晶位相差板54aの繋ぎ目54bを結ぶラインは、前記した実施例と同様に、光軸101を含むY軸である。従って、繋ぎ目(隣接部分)54bによる陰影をなくすことができる。
また、硝子板(位相差板支持部材)252のX方向(幅方向)の端部(位相差板支持部材の長辺)252aの位置も、繋ぎ目54bの位置と同様に、オプチカルインテグレータで分割された光束間(オプチカルインテグレータからの複数の光が通らない部分)に対応させて、その端部252aによる陰影をなくすことも前記した実施例1と同じである。
なお、上記では、2分割される位相差板を図8紙面のY方向端部側に位置する位相差板としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、Y方向の任意の位置にある位相差板を分割するようにしてもよいことは言うまでもない。例えば、中央部を分割された位相差板とし、端部側の位相差板は分割しないようにしてもよい。
実施例1,2ともにオプチカルインテグレータを構成する第1および第2のアレイレンズの縦方向(X方向,位相差板の長辺と同じ方向)に配列されたレンズセルの個数を偶数(実施例では8セル)としたが、縦方向のレンズセルの個数が奇数の場合もある(例えば、特開2007−17459号公報参照)。以下、この場合における本発明を適用した偏光変換素子の実施例(第3の実施例)について、図9を用いて説明する。なお、以下では、Y方向に配列された偏光変換部の数が6個の偏光変換素子に組み合わされる縦方向のレンズセルの個数が奇数個のオプチカルインテグレータの一例として、縦方向(X方向)のレンズセルの個数が9個で、横方向(Y方向)のレンズセルの個数が6個のものを用いるものとする。
図9は、偏光変換素子の実施例3を示す図である。同図(a)は、第1および第2のアレイレンズの縦方向に配列されたレンズセルの個数が奇数の場合におけるPBSアレイ上の光分布に硝子板を重ね合わせた図で、水晶位相差板の長手方向での繋ぎ目位置(隣接部分の位置)と、その繋ぎ目近傍で水晶位相差板を支持する(押圧するなど)硝子板の幅(位相差板支持部材の短辺の長さ)と、オプチカルインテグレータで分割された光束(オプチカルインテグレータからの複数の光)との関係を説明するための図である。
同図(b)は、同図(a)と同様に、第1および第2のアレイレンズの縦方向に配列されたレンズセルの個数が奇数の場合におけるPBSアレイ上の光分布に硝子板を重ね合わせた図で、水晶位相差板の長手方向での繋ぎ目位置(隣接部分の位置)と、その繋ぎ目近傍で水晶位相差板を支持する(押圧するなど)硝子板の幅(位相差板支持部材の短辺の長さ)と、オプチカルインテグレータで分割された光束(オプチカルインテグレータからの複数の光)との関係を説明するための図であるが、位相差板支持部材の短辺の長さが図(a)よりも長くなっている。
また、図10は、実施例3による支持構造体に装着された偏光変換素子を光出射側から見た概観を模式的に示した斜視図である。なお、説明の都合上、オプチカルインテグレータを構成するレンズセルの横方向(Y方向)の並びを行(L1〜L9)と呼び、図9の光分布(アーク像パターン)に示すように、各アレイレンズ行(L1〜L9)に対応するアーク像行に図紙面上側からL1,L2,L3,…,L9を付すものとする。
縦方向(X方向)のレンズセルの個数が奇数個の場合、図9に示される光分布(アーク像パターン)から明らかなように、縦方向(X方向)の中央行(L5)のレンズセル(図示せず)は光軸を含むY軸上に配置され、かつ、第2のアレイレンズの縦方向(X方向)のレンズセルサイズは光利用効率を考慮して他のレンズセルのサイズに比べ小さくされる(例えば、特開2007−17459号公報参照)。従って、中央行L5のレンズセル(図示せず)によるアーク像11B(例えば、図紙面左側端列のアーク像11Ba)は、他行のそれ(例えばアーク像11Bb)に比べ縦方向(X方向)のサイズが小さい。つまり、Y軸の縦方向直ぐ上の、中央行L5と行L4のレンズセル間に対応する光が通らない部分が存在する。また、Y軸の縦方向直ぐ下の、中央行L5と行L6のレンズセル間にも対応する光が通らない部分が存在する。従って、このラインを、位相差板54を構成する2つの水晶位相差板(位相差板構成部材)54e,54f(後述)の繋ぎ目(隣接部分)54gとすれば、繋ぎ目54gによる陰影を防ぐことができる。ここでは、中央行L5と行L4のレンズセル間に対応する部分を繋ぎ目54gのラインとする。
2つの水晶位相差板54e,54fを繋ぎ目54b近傍で押さえる硝子板(位相差板支持部材)252も縦方向(X方向)の端部252aは、レンズセルの行間の光が通らない部分(すなわち、オプチカルインテグレータで分割された光束間)に配置すればよいので、本実施例では、一方の端部252aは、中央行L5と行L6のレンズセル間に対応する部分に配置し、他方の端部252aは、繋ぎ目54gのラインの上側に位置する行L4と行L3のレンズセル間に対応する部分に配置する。このような硝子板252の配置により、その端部252aによる陰影の影響をなくすことができる。
図10に示される本実施例による偏光変換素子25Bは、実施例1と同様に、一つの位相差板54は、2つの水晶位相差板54eと54fとからなる。しかしながら、ここでは、図9の説明から明らかなように、水晶位相差板54eと54fとの繋ぎ目54gのラインを中央行L5とL4との間の光束間に配置するために、一方の水晶位相差板54eはやや短く、他方の水晶位相差板54fはやや長くされている。また、硝子板252の縦方向(X方向)の端部(位相差板支持部材の長辺)252aは、水晶位相差板54eと54fとの繋ぎ目54gのラインを挟む縦方向(X方向)の次のレンズセル間に対応するように、その幅が設定されている。
オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズに注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成について記載すると以下のようになる。すなわち、オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズにおける、位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数(N+1)が奇数である場合には、位相差板を光軸方向から見た場合において、位相差板構成部材の隣接部分が、アレイレンズにおける、位相差板の長辺と同じ方向の端からN/2番目と(N/2)+1番目のレンズセルの間にあると良い。
例えば、第1のアレイレンズ21,第2のアレイレンズ22のレンズセルが9行6列のマトリクス状に配列された構成を有している場合には、位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数(N+1)は9となり、N=8,N/2=4,(N/2)+1=5となるので、位相差板を光軸方向から見た場合において、位相差板構成部材の隣接部分は、アレイレンズにおける、位相差板の長辺と同じ方向の端から4番目と5番目のレンズセルの間にあると良い。このように構成すると、位相差板構成部材の隣接部分には、オプチカルインテグレータからの複数の光がほとんど入射しないので、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる。
また、偏光変換素子上に形成されるアーク像に注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成について記載すると以下のようになる。すなわち、オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズにおける、位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数(N+1)が奇数である場合には、位相差板を光軸方向から見た場合において、位相差板構成部材の隣接部分が、光源からの光によって偏光変換素子上に形成される複数のアーク像における、位相差板の長辺と同じ方向の端からN/2番目と(N/2)+1番目のアーク像の間にあると良い。
例えば、第1のアレイレンズ21,第2のアレイレンズ22のレンズセルが9行6列のマトリクス状に配列された構成を有している場合には、位相差板の長辺と同じ方向に配列されたレンズセルの個数(N+1)は9となり、N=8,N/2=4,(N/2)+1=5となるので、位相差板を光軸方向から見た場合において、位相差板構成部材の隣接部分は、光源からの光によって偏光変換素子上に形成される複数のアーク像における、位相差板の長辺と同じ方向の端から4番目と5番目のアーク像の間にあると良い。このように構成すると、位相差板構成部材の隣接部分には、オプチカルインテグレータからの複数の光がほとんど入射しないので、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる。
また、上記した、オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズに注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成、及び、偏光変換素子上に形成されるアーク像に注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成は共に、前記偏光変換素子における、前記位相差板の長辺と同じ方向の長さをLとした場合における、前記位相差板支持部材の短辺の長さは{L/(N+1)}×2であると良い。
このように構成すると、図9(a)に示したように、光源からの光によって偏光変換素子上に形成される複数のアーク像のうち、中心付近の4つの大きなアーク像の一部が、位相差板支持部材の長辺に入射するものの、それ以外のアーク像が、位相差板支持部材の長辺にはほとんど入射しないので、位相差板支持部材による陰影をさらになくすことができる。
また、上記した、オプチカルインテグレータを構成するアレイレンズに注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成、及び、偏光変換素子上に形成されるアーク像に注目して、位相差板構成部材の隣接部分による陰影をなくすことができる構成は共に、前記偏光変換素子における、前記位相差板の長辺と同じ方向の長さをLとした場合における、前記位相差板支持部材の短辺の長さは{L/(N+1)}×3であると良い。このように構成すると、図9(b)に示したように、光源からの光によって偏光変換素子上に形成される複数のアーク像(中心付近の4つの大きなアーク像を含む)が、位相差板支持部材の長辺にはほとんど入射しないので、位相差板支持部材による陰影をさらになくすことができる。
本実施形態に係わる光学ユニットの光学系の模式構成図。
本実施形態に係わる偏光変換インテグレータの要部構成の拡大図。
水晶基材の切り出し方法を説明する概念図。
実施例1による偏光変換素子の分解斜視図。
実施例1による偏光変換素子を支持構造体に装着した熱カシメ前の状態を示す図。
実施例1による偏光変換素子を説明する図。
水晶位相差板の長手方向での繋ぎ目位置と、硝子板の幅と、オプチカルインテグレータで分割された光束との関係を説明する図。
実施例2による偏光変換素子を説明する図。
実施例3による偏光変換素子を説明する図。
水晶位相差板の長手方向での繋ぎ目位置と、硝子板の幅と、オプチカルインテグレータで分割された光束との関係を説明する図。
符号の説明
10:光源ユニット、11:ランプ、11A,11B:アーク像、12:リフレクタ、21:第1のアレイレンズ、22:第2のアレイレンズ、25:偏光変換素子、27:集光レンズ、29:フィールドレンズ、31,32:ダイクロイックミラー、33:反射ミラー、41:第1リレーレンズ、42:第2リレーレンズ、45,46:反射ミラー、50:偏光変換部、51:透光性部材、52:PBS膜(偏光分離部)、53:反射部、54:位相差板、54a:水晶位相差板(位相差板構成部材)、54b:繋ぎ目(隣接部分)、54e,54f:水晶位相差板(位相差板構成部材)、54g:繋ぎ目(隣接部分)、55:開口部、56:遮光板、57:開口部、58:PBSアレイ(偏光分離素子)、60:液晶パネル、70:λ/2波長板、80:光合成プリズム、81:ダイクロイック膜、90:投射レンズ、100:照明光学系、101:光軸、130:光分離光学系、140:リレー光学系、210:水晶ウエハ、211,212:水晶基材、250:支持構造体、251:支持枠、251a,251b:横枠部、251c,251d:縦枠部、251e:熱カシメ部、252:硝子板(位相差板支持部材)、252a:硝子板の幅方向の端部(位相差板支持部材の長辺)、254:突起、255:凹部、256:突起、257:凹部、500:光学ユニット、550:基体、560:電源回路、570:駆動回路、580:冷却用ファン、585:流路