乗り物や劇場などにおいては、複数のシートが並設されるため、通路に面していない奥側のシートに座っている人が通路に出る場合や通路からそのシートに向かう場合に、通路側のシートに座っている人を避けて通らなければならない。たとえば、航空機では、できるだけ多くの座席数を確保するために、前後左右の間隔を狭めた座席配列となっており、通路側のシートに座っている人が脚を伸ばしているような場合には、窓側などのシートに座る人はそれを跨ぐようにして通らなければならず、出入りが容易ではない。このような状況で、近くに収納棚(物入れ)の棚板などが丁度よい高さにあると、足掛けにされる虞がある。
しかし、足掛けにされても破損しないよう棚板や収納棚を頑丈に造ると、重量が増加してしまい、乗り物、特に航空機においては好ましくない。一方、開閉パネルを備えるクローズ式の収納ボックスや引き出し式の物入れでは、足掛けにされる虞は少ないが、構造が複雑になってやはり重量が増えてしまい、物品の出し入れも面倒になってしまう。またネット式では、保持できる物品が小型で軽量のものに限られると共に、保持した物品が手前に出っ張るため、邪魔になりやすいなどの欠点がある。
また、シートの周辺部に設けられた収納棚の棚板が足掛けにされる虞のある場合は上記例に限らず、他にも、たとえば航空機の客室天井部付近など高所に設置された手荷物用の収納ボックスに対して物品を出し入れするような場合などにも足掛けにされる虞がある。
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、棚板が足掛けとして利用される虞が少なく、仮に足が掛けられても破損することのない収納棚を提供することを目的としている。また、その収納棚を座席使用者の物品を収納するために備えた座席システムを提供することを目的としている。
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]出し入れ口が設けられ、前記出し入れ口を通して内部に入れられた物品が収納される収納空間を構成する収納体と、
前記収納体内に設けられ、前記物品が載置される棚板本体と、
前記棚板本体の先端側に回動可能に設けられ、下向きに所定以上の荷重が加えられると、前記物品を載置可能な載置姿勢から下方へ回動する可動部と、
を備えた
ことを特徴とする収納棚。
上記発明では、収納棚は、出し入れ口が設けられると共に、出し入れ口を通して内部に入れられた物品を収納する収納空間を構成する収納体を備え、その出し入れ口を通して物品が収納体の内部に出し入れ可能とされる。この収納棚とは、出し入れ口を除いて棚板の上方空間を壁体などで取り囲むように構成されたものであり、物品の出し入れは、出し入れ口からのみ可能とされたものである。また、上向きに開口した出し入れ口から入れられた物品を底板に載置して収納する収納ボックスなどとは異なり、収納棚の出し入れ口は、前方、後方、側方などのほぼ横向きに開口して設けられており、棚板を含む平面と出し入れ口とが交差(通常はほぼ直交)する関係となって、棚板の端部が出し入れ口側に存在する。また、収納体内に設けられた棚板は、棚板本体、および、棚板本体の先端側に回動可能に設けられた可動部により構成され、収納体内に入られた物品は、その棚板を構成する棚板本体および載置姿勢にされた可動部に載置されて収納される。
そして、棚板の先端側部分を構成し、棚板の一部として機能する可動部は、物品の一部が載置された程度の小さな荷重を下向きに受けても、下方へ回動することなくその物品を支える。また、仮に人が収納棚の出し入れ口から足先を入れて可動部に掛けようとしても、物品よりもはるかに大きな所定以上の荷重(体重)を下向きに加えられた可動部が下方へ回動するため、その人は足先を可動部に掛けられないようになる。これにより、収納棚の棚板が足掛けとして利用される虞はなくなる。また、下方へ回動した可動部は、上方へ回動させ載置姿勢に戻すことで容易に繰り返し使用できる。
[2]前記可動部は、前記棚板本体側に棚板本体の幅方向に沿って配置された回動軸を中心に回動可能とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の収納棚。
上記発明では、可動部を回動させるための回動軸が棚板本体側に棚板本体の幅方向に沿って配置され、可動部はその回動軸を中心に、回動軸とは反対側の先端部側が下方へ回動する。このように回動する可動部であれば、収納棚の出し入れ口から入れられた人の足先が可動部に掛けられようとする際に、足先から受ける荷重に対して、回動軸や棚板本体に負荷を掛けることなく下方へ円滑に回動して荷重を逃がすことができる。
[3]前記可動部は、前記収納体の内側壁面側に前記棚板本体の奥行き方向に沿って配置された回動軸を中心に回動可能とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の収納棚。
上記発明では、可動部を回動させるための回動軸が収納体の内側壁面側に棚板本体の奥行き方向に沿って配置され、可動部はその回動軸を中心に、回動軸とは反対側の先端部側が下方へ回動する。このように回動する可動部であれば、収納棚の出し入れ口から入れられた人の足先が可動部に掛けられようとする際に、足先から受ける荷重に対して、回動軸や棚板本体に負荷を掛けることなく下方へ円滑に回動して荷重を逃がすことができる。
[4]前記可動部を前記載置姿勢側へ付勢する付勢手段を有する
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の収納棚。
上記発明では、付勢手段によって載置姿勢側へ付勢された可動部は、下向きに所定以上の荷重が加えられなければ、付勢手段による付勢力によって載置姿勢に保たれ、載置された物品を支える。また、下向きに所定以上の荷重が加えられると、付勢手段による付勢力に抗して下方へ回動し、その荷重が取り除かれると、付勢手段により付勢されて上方へ回動し載置姿勢に自動で復帰する。
このような付勢手段を設けることにより、たとえば下方へ回動した可動部を載置姿勢に復帰させるなどの手動操作が不要となり、利便性が向上する。
[5]前記棚板本体または前記収納体の内側壁面と、前記載置姿勢側へ付勢された前記可動部とが接触する接触部に、緩衝部材が設けられている
ことを特徴とする[4]に記載の収納棚。
上記発明では、上記[2]の構成であれば、棚板本体と、載置姿勢側へ付勢された可動部とが接触する接触部に、緩衝部材が設けられる。また、上記[3]の構成であれば、収納体の内側壁面と、載置姿勢側へ付勢された可動部とが接触する接触部に、緩衝部材が設けられる。この緩衝部材は、棚板本体または収納体の内側壁面と、可動部とのいずれか一方のみに設けてもよく、両方に設けてもよい。
これにより、下方へ回動した可動部が付勢手段により付勢されて載置姿勢に戻る際に、棚板本体または収納体の内側壁面に衝突することで発生する衝撃や衝突音が緩衝部材によって緩和される。
[6]前記棚板本体に対する前記可動部の前記載置姿勢での傾斜角度を調整する角度調整手段を有する
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の収納棚。
上記発明では、棚板本体に対する可動部の載置姿勢での傾斜角度を調整し、たとえば、可動部上面(載置面)を基端側(棚板本体側)から先端側へ向けて上り傾斜させることで、棚板に載置された物品を脱落しにくくすることができる。また、棚板に対する物品の出し入れ易さと脱落防止のバランスとを、棚板の設置角度や可動部の大きさなどに応じて適宜調整できるようになり、収納棚の利便性や汎用性が高められる。
[7]前記可動部の先端部に、上方へ突出された突出部が設けられている
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の収納棚。
上記発明では、たとえば、収納棚が乗り物などに設置されて振動を受けたり傾いたりしても、棚板に載置された物品は、可動部の先端部に設けられた突出部に引っ掛かって棚板から滑り落ちることが防止される。
[8]出し入れ口が設けられ、前記出し入れ口を通して内部に入れられた物品が収納される収納空間を構成する収納体と、
前記収納体内に設けられ、前記物品が載置される棚板本体と、
前記棚板本体の先端側に設けられ、下向きに所定以上の荷重が加えられると、前記物品を載置可能な載置姿勢から下方へ曲げ変形しその変形状態から前記載置姿勢へ形状復帰可能な変形部と、
を備えた
ことを特徴とする収納棚。
上記発明では、収納棚が備える収納体の内部に、出し入れ口を通して物品が入れられると、その物品は、収納体内に設けられた、棚板を構成する棚板本体および載置姿勢とされた変形部に載置されて収納される。
そして、棚板の先端側部分を構成し、棚板の一部として機能する変形部は、物品の一部が載置された程度の小さな荷重を下向きに受けても、下方へ曲げ変形することなくその物品を支える。また、仮に人が収納棚の出し入れ口から足先を入れて変形部に掛けようとしても、物品よりもはるかに大きな所定以上の荷重(体重)を下向きに加えられた変形部が下方へ曲げ変形するため、その人は足先を可動部に掛けられないようになる。これにより、収納棚の棚板が足掛けとして利用される虞はなくなる。また、下方へ曲げ変形した変形部は載置姿勢へ形状復帰するため、容易に繰り返し使用できる。このような曲げ変形および形状復帰する変形部は、たとえば、一部あるいは全体を弾性材料や形状記憶材料などで形成することにより実現できる。
[9]前記変形部の先端部に、上方へ突出された突出部が設けられている
ことを特徴とする[8]に記載の収納棚。
上記発明では、たとえば、収納棚が乗り物などに設置されて振動を受けたり傾いたりしても、棚板に載置された物品は、変形部の先端部に設けられた突出部に引っ掛かって滑り落ちることが防止される。
[10]座席本体と、前記座席本体に取り付けられた[1]乃至[9]のいずれか1項に記載の収納棚と、
を備えた
ことを特徴とする座席システム。
[11]座席本体と、
前記座席本体を使用する使用者の物品を収納するために座席本体の周囲に設けられた[1]乃至[9]のいずれか1項に記載の収納棚と、
を備えた
ことを特徴とする座席システム。
乗り物や劇場などに設置された座席を使用する使用者(客)の物品を収納するための収納棚を、座席本体に取り付けた座席システム、または、座席本体の周囲に設けた座席システムにて、収納棚の棚板が座席使用者に足掛けとして利用される虞が少なくなり、仮に足が掛けられても収納棚の破損を防止できる。
[12]前記座席本体が航空機に設置される
ことを特徴とする[10]または[11]に記載の座席システム。
航空機では特に軽量化が求められるため、足掛け可能に棚板および収納棚全体を強固に製造する代わりに、足を掛けられないようにした本発明の構造は好適である。
本発明に係る収納棚によれば、棚板が足掛けとして利用される虞が少なくなり、仮に足が掛けられても収納棚が破損することはない。また、本発明に係る座席システムによれば、上記収納棚を座席使用者の物品を収納するために備えることで、収納棚の棚板が座席使用者に足掛けとして利用される虞が少なくなり、仮に足が掛けられても収納棚が破損することはないため、棚板や収納棚を頑丈に造る必要性がなくなり、座席システム全体を軽量化することができる。
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る座席システム10を示している。図2は、本実施形態の座席システム10に設けられた箱型の収納棚20を示しており、図3は、本実施形態の収納棚20に設けられた棚板24の先端側を示している。
図1に示す本実施形態の座席システム10は、航空機の客室に設置されるリクライニング機構を備えたライフラットタイプ(Lie Flat Type)のビジネスクラス用の座席(シート)として構成されており、隣り合わせで配設された2つのシート本体11と、それら2つのシート本体11の間に設けられた1つの収納棚20とを備えている。
各シート本体11は、シート本体11に座った乗客が航空機の進行方向(前方)を向くよう、同方向に向けられて客室のフロアパネルFPに固定されている。また、航空機のビジネスクラスなどでは、2つのシート本体11がたとえば窓側と通路側とに並設されて使用されることが多く、この2脚セットのシート本体11の間に、シューズボックスとして使用される箱型の収納棚20が設置されている。
シート本体11は、フロアパネルFPに固定されて乗客が腰掛ける腰掛部(着座部)となるシートクッション12と、シートクッション12の後部に起立姿勢と傾斜姿勢との間で回動可能(リクライニング可能)に取り付けられた背もたれ部となるシートバック13と、シートバック13の上部に設けられた後頭部の突き当て支持部となるヘッドレスト14と、シートクッション12の左右両側部に設けられたひじ掛け部となる一対のアームレスト15とを備えており、シートクッション12の後部には、後側のシート本体11に座った乗客の手荷物を入れる空洞状の手荷物入れ16が設けられている。
収納棚20は、その収納棚20が設けられたシート本体11の後側のシート本体11に座る乗客二人分の靴を収納するための二段のシューズボックスであり、そのため、シート本体11の後寄りに配置されている。
この収納棚20は、内部が空洞で縦長の直方体箱状に形成された収納体としての棚箱21を備えている。棚箱21は、後面が開口されており、その開口部が後方(横方向)から靴を出し入れするための出し入れ口23とされ、後方へ向けられてシート本体11の図示しないフレームに取り付けられている。また、収納棚20(棚箱21)の下面はフロアパネルFPに接触させられない規定があるため、収納棚20の下面とフロアパネルFPの間には所定寸法(たとえば1インチ以上)の隙間が設けられている。
図2に示すように、棚箱21内の上下方向における下部と中央部付近には、同一構成の2枚の棚板24が設けられている。これら2枚の棚板24の上側にそれぞれ形成された2つの空間が、靴を収納するための収納空間22とされており、棚箱21内に入れられた靴は、上段または下段の棚板24に載せられて収納される。
棚板24は、棚板本体25と、棚板本体25の先端側に設けられた可動部材26とにより2分割に構成されている。
棚板本体25は、厚肉の矩形平板状に形成されており、奥端面および両側端面が棚箱21の奥壁面21Aおよび互いに対向する両内側壁面21Bにそれぞれ固着され、載置面となる上面が略水平にされている。
可動部材26は、棚板本体25よりも薄肉で小型の矩形平板状に形成されており、図3に示すように、基端部がヒンジ27を介して棚板本体25の先端部に連結され回動可能に取り付けられている。
ヒンジ27は、ヒンジ軸28にねじりコイルばね30が組み付けられた汎用のばねヒンジであり、ヒンジ軸28を棚板本体25の先端面25Aにおける上下方向の略中央部に、棚板本体25の幅方向(左右方向)に沿って略水平に配置した状態で、棚板本体25の先端面25Aにおける下部と、可動部材26の下面26Bにおける基端部とに跨がりネジ29によって取り付けられている。
可動部材26は、このヒンジ27によって支持されつつ棚板本体25に対してヒンジ軸28を中心に先端側を上下に回動できるよう取り付けられ、ねじりコイルばね30のばね荷重によって先端側を上方へ回動させるよう付勢されている。詳細には、可動部材26は、自然状態(無負荷状態)では自重で下方へ回動しようとする回転モーメントよりも大きなばね荷重でヒンジ27により持ち上げられ、基端面26A上部を棚板本体25の先端面25A上部に突き当てることで上方への回動位置が規制され、図3の実線で示すように略水平に保持されている。
このように、上方へ付勢された可動部材26の姿勢が、靴などの物品を載置できる載置姿勢であり、載置姿勢に保たれた可動部材26は、載置面となる上面26Cが棚板本体25の上面とほぼ同一面にされると共に、棚板24に載置された物品の脱落を防止するために、基端側(棚板本体25側)から先端側へ向けて少し上り傾斜している。
また、収納棚20の出し入れ口23、棚板24、および収納空間22の大きさは、少なくとも成人男性の履く靴一足が出し入れおよび収納可能で、かつ、収納棚20の設置スペースを考慮し必要以上に大きくならないようにされている。たとえば、本実施形態では1つの収納空間22に一足分(左右一組)の靴を重ねて収納できるようにするため、棚板本体25の奥行き寸法(棚箱21の奥壁面21Aから棚板本体25の先端面25Aまでの距離)L1に、可動部材26の奥行き寸法L3を加算した、棚板24の奥行き寸法は、成人男性の履く靴の平均的な長さ寸法と同等かそれよりも少し長くされている。棚板24(出し入れ口23)の幅寸法は、成人男性の履く靴の平均的な幅寸法よりも少し長くされている。出し入れ口23の高さ寸法は、一足分の靴を重ねた状態で出し入れできるよう、その一足分の靴を重ねた高さ寸法よりも大きくされている。出し入れ口23の開口端縁から棚板本体25の先端面25Aまでの距離L2は、出し入れ口23から入れられた成人男性の足先が棚板本体25に届かない、または、届き難いよう、たとえば、成人男性の平均的な足のサイズ(たとえば25〜27cm程度)の1/3〜1/2程度に設定されている。また、本実施形態では、可動部材26の先端を出し入れ口23から突出させないようにしており、したがって、可動部材26の奥行き寸法L3は、上記L2よりも少し短くされている(L3<L2)。さらに、棚板本体25の上面に対する可動部材26の上面26Cの傾斜角度はα1に設定されている。
また、ヒンジ27が備えるねじりコイルばね30のばね荷重(F1)は、載置姿勢の可動部材26に対し下向きに所定以上の荷重が加えられると、ヒンジ27を介して可動部材26を支えきれずに下方へ回動させる大きさに設定されている。
言い換えると、ねじりコイルばね30は、可動部材26の重量(G1)によって発生するヒンジ軸28を中心とした回転モーメント(M1)と、可動部材26に加えられた荷重(F2)によって発生するヒンジ軸28を中心とした回転モーメント(M2)との加算分に抗するばね荷重(F1)を有している。したがって、ばね荷重(F1)から上記の回転モーメント(M1)を差し引いた分以下の回転モーメント(M2)を発生させる荷重(F2)が可動部材26に加えられた場合には、ねじりコイルばね30はヒンジ27を介して可動部材26を上方へ付勢し続け、載置姿勢に保持する。また、ばね荷重(F1)から上記の回転モーメント(M1)を差し引いた分よりも大きな回転モーメント(M2)を発生させる荷重(F2)が可動部材26に加えられた場合には、ねじりコイルばね30はヒンジ27を介して可動部材26を支えられなくなり、弾性的に撓み変形して可動部材26を下方へ回動させる。
F1≧M1+M2 ⇒ 可動部材26は上方へ付勢(載置姿勢)
F1<M1+M2 ⇒ 可動部材26は下方へ回動(下降姿勢)
このねじりコイルばね30のばね荷重(F1)は、可動部材26と、可動部材26の載せられた物品(靴の一部)が支えられ、かつ、可動部材26に所定以上の荷重(F2)が加えられると弾性変形する大きさに設定されている。なお、載置姿勢の可動部材26が下方へ回動する荷重(F2)は、たとえば、120〜150N程度が好ましい。したがって、載置姿勢の可動部材26に少なくともそれ以上の荷重が加えられると、可動部材26はヒンジ27のヒンジ軸28を中心に下方へ回動し、図3の二点鎖線で示すように、先端側を下向きにした下降姿勢となる。このように、ヒンジ27を介して棚板本体25の先端部に取り付けられた可動部材26は、上記の載置姿勢と下降姿勢との間で回動可能とされている。
次に、上記構成の座席システム10が備える収納棚20の作用について説明する。
本実施形態の座席システム10では、2つのシート本体11の間に配置された収納棚20に、後向きに開口された出し入れ口23を通して、後側のシート本体11に座る乗客が、自分の脱いだ靴などの物品を出し入れすることができる。この収納棚20に入られた靴などの物品は、収納棚20(棚箱21)内に設けられた棚板24に載置されて収納される。詳細には、棚板24を構成する棚板本体25および載置姿勢とされた可動部材26に載置されて収納される。
ここで可動部材26は、靴の一部が載置された程度の小さな荷重を下向きに受けても、下方へ回動することなくその靴を支える。また、特に本実施形態では、可動部材26の上面(載置面)が基端側(棚板本体25側)から先端側へ向けて少し上り傾斜していることで、棚板24に載置された靴が滑り落ちにくくなる。たとえば航空機の場合、飛行中は水平姿勢ではなく機種を少し上に向けた傾斜姿勢となるため(たとえば2〜3度)、可動部材26を含む棚板24全体を略水平に設置すると、飛行中に後側に傾いて、載置された靴が滑り落ちやすくなる。これに対し、上記構成の棚板24であれば、航空機の飛行中に傾きや振動が発生しても、靴が棚板24から簡単に滑り落ちることを防止できる。
一方、特に通路側のシート本体11に座った乗客がリクライニング姿勢で脚を伸ばしているような場合には、窓側のシート本体11に座っている乗客は、それを跨ぐようにして通らなければならなくなり、伸ばされた脚の先端付近に位置する収納棚20の棚板24が丁度よい高さにあると、棚板24に足先を掛けて跨ぎ易くしようとする虞がある。このような状況で、仮にその窓側の乗客が収納棚20の出し入れ口23から足先を入れて棚板24の可動部材26に掛けようとしても、可動部材26は、物品よりもはるかに大きな荷重(体重)が下向きに加えられることで、図3の実線で示す載置姿勢から下方へ回動し、図3の二点鎖線で示す下降姿勢となる。そのため、可動部材26には人の足などが掛けられなくなり、棚板24が足掛けとして利用される虞はなくなる。
また本実施形態では、一足分の靴を重ねた状態で出し入れできる高さ寸法に設定した棚箱21の出し入れ口23に対し、出し入れ口23から棚板本体25の先端面25Aまでの距離(L2)を、成人男性の平均的な足のサイズ(たとえば25〜27cm程度)の1/3〜1/2程度に設定して、その間に可動部材26を配置している。上記の高さ寸法の出し入れ口23に対して棚箱21の出し入れ口23から棚板本体25までの距離をこの程度確保していれば、出し入れ口23から入れられた足先が棚板本体25に届いて掛けられる虞もなくなり、十分な防止効果が得られる。
このように、収納棚20の棚板24を足掛けに利用できない構造としたことで、足を掛けられても破損しないよう棚板24や棚箱21を頑丈に造る必要性がなくなり、したがって、そのような高い強度(剛性)を持たせる構造に比べて、収納棚20および座席システム10全体を軽量化することができる。
また、特に本実施形態では、可動部材26を回動させるためのヒンジ27が備えるヒンジ軸28が棚板本体25側に棚板本体25の幅方向に沿って配置されており、可動部材26はそのヒンジ軸28を中心に、ヒンジ軸28とは反対側の先端部側が下方へ回動する。このように回動する可動部材26であれば、収納棚20の出し入れ口23を通して斜め上方向から入れられた人の足先が可動部材26に掛けられようとする際に、足先から受ける荷重に対して、ヒンジ軸28を含むヒンジ27や棚板本体25に負荷を掛けることなく下方へ円滑に回動して荷重を逃がすことができる。
また本実施形態では、可動部材26を棚板本体25の先端部にヒンジ27を介して取り付け、可動部材26が靴などの物品を載置可能な載置姿勢と、棚板本体25に接続されつつ棚板本体25に対して下方へ回動した下降姿勢との間で回動可能となるよう構成しており、このようなヒンジ27を用いることで、棚板本体25に対する可動部材26の回動動作を簡単な構成で実現できる。また、本実施形態のように、棚板本体25および可動部材26とは別体で構成されたヒンジ27であれば、万が一、ヒンジ27が破損しても、ヒンジ27のみの交換によって容易に対応することができる。
また本実施形態では、ヒンジ27に組み付けられたねじりコイルばね30によって可動部材26は載置姿勢側へ付勢され、下向きに所定以上の荷重が加えられなければ、ねじりコイルばね30によるばね荷重によって載置姿勢に保たれ、載置された靴などの物品などを支える。また、下向きに所定以上の荷重が加えられると、ねじりコイルばね30によるばね荷重に抗して下方へ回動し、その荷重が取り除かれると、ねじりコイルばね30により付勢されて上方へ回動し、載置姿勢に自動で復帰する。
このような付勢手段としてのねじりコイルばね30を備えることで、たとえば下方へ回動した可動部材26を載置姿勢に復帰させるための手動操作が不要となり、利便性が向上する。また、可動部材26を載置姿勢に保持してロックしつつ、所定以上の荷重に対してはロック解除して下降姿勢へ回動させるような、複雑な構造のロックおよびロック解除機構などを別途組み込む必要もなくなり、簡素な構成で所望する可動部材26の回動動作を実現できると共に、軽量化にも寄与できる。
[第2の実施の形態]
図4は、上述した座席システム10に設けられる本発明の第2の実施形態に係る収納棚に設けられた棚板先端部の構成を示している。
図4に示すように、本実施形態の棚板31では、棚板本体25の先端面25Aにおける上部に、緩衝部材32が貼り付けられている。この緩衝部材32は、たとえば、合成ゴムシートやエラストマーシートなどの弾性体で、棚板本体25の幅方向(紙面奥行き方向)に沿って長尺状に形成されており、棚板本体25(先端面25A上部)と、載置姿勢側へ付勢された可動部材26(基端面26A上部)とが接触する接触部CPをカバーするように配置されている。
また、可動部材26の上面26Cにおける先端部には、上方へ突出された突出部33が設けられている。この突出部33は、たとえば、可動部材26の幅方向(紙面奥行き方向)に沿った単一の壁状に形成する、あるいは、幅方向に沿って所定の間隔で複数に分割して形成するようにしてもよい。また、断面形状については、図示のような矩形状の他に、台形状や半円状などとしてもよい。
以上により、本実施形態の棚板31では、下方へ回動した可動部材26がヒンジ27のねじりコイルばね30により付勢されて上方へ回動し載置姿勢に戻る際に、基端面26Aの上部が棚板本体25の先端面25Aの上部に衝突することで発生する衝撃や衝突音は緩衝部材32によって緩和される。これにより、棚板31を備える収納棚が取り付けられたシート本体11に座る乗客に対して、振動や騒音により不快な気持ちにさせたり、睡眠を妨げたりするようなことを防止できる。
また、棚板31に載置された靴は、航空機の飛行中に傾きや振動が発生しても、可動部材26の上面26C先端部に設けられた突出部33に引っ掛かることで、棚板31から滑り落ち難くされる。
[第3の実施の形態]
図5は、上述した座席システム10に設けられる本発明の第3の実施形態に係る収納棚に設けられた棚板先端部の構成を示している。
図5に示すように、本実施形態の棚板34では、棚板本体25の先端面25Aにおける上部に、先端面25Aに対して凹状となる段部35が設けられている。段部35の底面(縦壁面)には、棚板本体25の板面に沿ってネジ孔36が形成されており、ネジ孔36には、角度調整ネジ37が螺合されて取り付けられている。
角度調整ネジ37は、ドライバーなどの工具を用いて正逆方向(ねじ込み方向又は緩め方向)へ回転されると、段部35の底面からの突出量が変更される。この角度調整ネジ37は、たとえば、棚板本体25の幅方向(紙面奥行き方向)における中央部に1本設ける、あるいは、棚板本体25の幅方向にセンター振り分けで複数本設けるようにしてもよく、その本数や配置については、棚板24の幅寸法などに応じて適宜決定することができる。また、図示のように頭部を段部35の底面から離して隙間を空けるような場合には、その隙間量に応じた厚さのスペーサーや、隙間量に応じた枚数の平座金などを入れて、締結固定するようにしてもよい。
可動部材26には、上面26Cの先端部に、第2の実施形態と同様の突出部33が設けられており、更に基端面26Aの上部に、同じく緩衝部材32が貼り付けられている。この緩衝部材32は、可動部材26の全幅に亘って設けてもよく、あるいは、角度調整ネジ37との対応箇所のみに設けてもよい。
これにより、可動部材26は上方へ付勢されると緩衝部材32が角度調整ネジ37の頭部に当接して上方への回動範囲が規制され、その状態に保持される。また、角度調整ネジ37の突出量を変更することで、棚板本体25に対する載置姿勢での傾斜角度、詳細には、棚板本体25の上面に対する載置姿勢での上面26Cの傾斜角度が調整可能とされている。
以上により、本実施形態の棚板34では、可動部材26を下方へ回動させると(図の二点鎖線)角度調整ネジ37の頭部が露出し、角度調整ネジ37を回転操作できるようになる。そして、ドライバーなどを用いて角度調整ネジ37を正逆方向へ回転させ、段部35の底面からの突出量を調整して、棚板本体25に対する可動部材26の載置姿勢での傾斜角度を予め調整しておく。
たとえば、角度調整ネジ37をネジ孔36に完全に締め込むと、段部35からのネジ突出量が最小となり、可動部材26の上面26Cは、基端側(棚板本体25側)から先端側へ向けて上り傾斜して、棚板本体25の上面に対する傾斜角度が最大となる。また、角度調整ネジ37を緩めて突出量を大きくすると、棚板本体25に対する可動部材26の傾斜角度は小さくなり、突出量を更に大きくすると、可動部材26の上面26Cを棚板本体25の上面と略同一面(略水平)にする、あるいは、基端側から先端側へ向けて下り傾斜させるようなことも可能となる。
このように、可動部材26の傾きを調整できることで、棚板34に対する靴の出し入れ易さと滑り落ち防止のバランスを、棚板34の設置角度や可動部材26の大きさ(奥行き寸法)などに応じて適宜調整できるようになり、収納棚の利便性や汎用性が高められる。
また、本実施形態の場合も、下方へ回動した可動部材26がヒンジ27のねじりコイルばね30により付勢されて上方へ回動し載置姿勢に戻る際に、可動部材26の基端面26Aに設けられた緩衝部材32が角度調整ネジ37の頭部に衝突することで、衝突時の衝撃や衝突音は緩衝部材32によって緩和される。したがって、第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、第2の実施形態と同様に、航空機の飛行中に傾きや振動が発生しても、棚板31に載置された靴は可動部材26の上面26C先端部に設けられた突出部33に引っ掛かることで、棚板31からの滑り落ち難くされる。
[第4の実施の形態]
図6は、上述した座席システム10に設けられる本発明の第4の実施形態に係る収納棚40の上部構成を示している。
図6に示すように、本実施形態の収納棚40では、棚箱41の内部に設けられた棚板42が、棚箱41内の奥側に配置された棚板本体43と、棚板本体43の先端側に配置された2つの可動部材44とで3分割に構成されている。
棚板本体43は、第1の実施形態と同じく、奥端面が棚箱41の奥壁面41Aに固着され、左右の両側端面が棚箱41の左右の両内側壁面41Bに固着されて、載置面となる上面が略水平にされている。
一方、2つの可動部材44は、外側の側端部が第1の実施形態と同じヒンジ27を介して棚箱41の内側壁面41Bに回動可能に取り付けられている。詳細には、ヒンジ27は、ヒンジ軸28を棚箱41の内側壁面41B側に、棚板本体43の奥行き方向(前後方向)に沿って略水平に配置した状態で、棚箱41の内側壁面41Bと、可動部材44の下面における外側の側端部(基端部)とに跨がって取り付けられており、可動部材44は、ヒンジ27に組み込まれたねじりコイルばね30のばね荷重により上方へ付勢され、ヒンジ27に支持された外側の側端部を棚箱41の内側壁面41Bに当接させることで、上方への回動位置が規制されている。そして自然状態(無負荷状態)では、図6の実線で示すように、載置面となる上面が略水平にされると共に、棚板本体43の上面と略同一面にされて相互に隣接し、物品を載置できる載置姿勢に保たれている。
また、この載置姿勢に保たれた各可動部材44に対し、下向きに所定以上の荷重が加えられると、各可動部材44はそれぞれヒンジ27のヒンジ軸28を中心に、棚箱41の内側壁面41Bに対して下方へ回動し、図6の二点鎖線で示すように、中央から分断するよう互いに離間すると共に棚板本体43からも分離して、内側の側端部を下向きにした下降姿勢となる。このように、棚箱41の出し入れ口23に臨ませて棚板本体43の先端側に配置する可動部材44を2つ設け、各可動部材44をヒンジ27を介して棚箱41の内側壁面41Bに取り付けた構成の本実施形態の棚板42も、各可動部材44が上記の載置姿勢と下降姿勢との間で回動可能とされている。
以上により、本実施形態の収納棚40においても、靴などの比較的軽い物品が棚板42に載置された場合には、ヒンジ27のねじりコイルばね30により上方へ付勢された各可動部材44が下方へ回動することなくその物品を支える。
また、棚板42の先端部を構成する2つの可動部材44に、人が足先を掛けようとしても、各可動部材44は下向きに大きな荷重(体重)が加えられることで、分断するよう下方へ回動しつつ互いに離間し、棚板本体43からも分離する。このように、本実施形態の棚板42も、先端側に設けられた可動部材44に足を掛けることはできないため、棚板42が足掛けにされる虞はなくなる。したがって、第1の実施形態と同じく、収納棚40および座席システム10全体の軽量化を図ることができる。
また、特に本実施形態では、可動部材26を回動させるためのヒンジ27が備えるヒンジ軸28が収納棚40(棚箱41)の内側壁面41B側に棚板本体43の奥行き方向に沿って配置されており、各可動部材44は各ヒンジ軸28を中心に、ヒンジ軸28とは反対側の先端部側(内側の側端部側)が下方へ回動する。このように回動する可動部材44であれば、収納棚40の出し入れ口23を通して斜め上方向から入れられた人の足先が可動部材44に掛けられようとする際に、足先から受ける荷重に対して、ヒンジ軸28を含むヒンジ27や棚板本体43に負荷を掛けることなく下方へ円滑に回動して荷重を逃がすことができる。
また、ねじりコイルばね30を組み込んだヒンジ27を用いて、可動部材44を棚箱41の内側壁面41Bに回動可能に取り付けつつ、上方へ付勢して支持していることにより、棚箱41の内側壁面41Bに対する可動部材44の回動動作を簡単な構成で実現できる。さらに、第1の実施形態と同じく、下降姿勢から載置姿勢への手動による復帰操作が不要であり、回動および復帰機構の簡素化によって、収納棚40および座席システム10全体の軽量化も促進できる。
なお、本実施形態のように、棚箱41の内側壁面41Bに取り付けられる可動部材44についても、第1の実施形態で説明した可動部材26と同様に、載置面となる上面を棚板本体43側から出し入れ口23側へ向けて上り傾斜させることができる。たとえば、上記のヒンジ27を使用する場合には、ヒンジ軸28が棚板本体43側から出し入れ口23側へ向けて上り傾斜するよう傾いた状態で、ヒンジ27を棚箱41の内側壁面41Bに取り付けるだけで、簡単に実現することができる。可動部材44をこのように傾けた場合には、第1の実施形態と同じく、棚板42に載置された物品の脱落防止効果が高められる。
また、第2の実施形態で説明した緩衝部材32を、棚箱21の内側壁面21Bと、載置姿勢側へ付勢された可動部材44とが接触する接触部に設けることも可能であり、同じく突出部33を可動部材44の先端部(出し入れ口23側)に設けることも可能である。さらに、棚箱21の内側壁面21Bに対するヒンジ27(ヒンジ軸28)の取付角度を調整可能とする、あるいは、個別に設けた角度調整機構を介してヒンジ27を棚箱21の内側壁面21Bに取り付けるなどにより、第3の実施形態で説明したように、棚板本体43に対する可動部材44の載置姿勢での傾斜角度を調整することも可能である。
[第5の実施の形態]
図7(A)、(B)は、上述した座席システム10における本発明の第5の実施形態に係る収納棚に設けられた2種類の棚板先端部の構成を示している。
本実施形態の図7(A)に示した棚板50では、棚板本体25の先端面25Aに、第1および第2の実施形態で説明した可動部材26、44に換えて、断面L字形の変形部材51が接着あるいはネジ止めなどによって固定されている。この変形部材51は、棚板本体25に接続された基端部(接続部)52が、弾性変形可能な樹脂材料などを用い、高い耐屈曲性(剛性)を有して所定以上の荷重が加わると弾性的に曲げ変形する断面形状(厚さ寸法)に形成されている。また、変形部材51の先端部53は剛体であり、比重が小さい樹脂材料で形成される、あるいは、内部が空洞にされるなどして、軽量化されている。
本実施形態の図7(B)に示した棚板54では、棚板本体25の先端面25Aに、断面L字形の変形部材55が接着あるいはネジ止めなどによって固定されている。この変形部材55は全体が弾性変形可能な樹脂材料などにより、高い耐屈曲性を有して所定以上の荷重が加わると弾性的に曲げ変形する断面形状に形成されている。
このように、棚板本体25との接続部である基端部52のみが弾性材料で形成された変形部材51を備える棚板50、あるいは、全体が弾性材料で形成された変形部材55を備える棚板54においても、それぞれ下向きに所定以上の荷重が加えられなければ、弾性力によって図の実線で示す載置姿勢を保ち、載置された物品を支える。また、下向きに所定以上の荷重が加えられると、棚板50の場合は変形部材51の基端部52が弾性的に曲げ変形して、図の二点鎖線で示すように下方へ撓み、また棚板54の場合は変形部材55全体が弾性的に曲げ変形して、図の二点鎖線で示すように下方へ撓む。さらに、上記の荷重が取り除かれると、変形部材51は基端部52の弾性力により、また変形部材55は自身の弾性力により、それぞれ元の状態に復帰する。したがって、第1および第2実施形態と同じく、本実施形態の棚板50、54も足掛けとして利用される虞はなくなる。
また、上記構成のように、少なくとも一部を弾性材料で形成した変形部材51、55であれば、第1および第2実施形態と同様に、たとえば下方へ曲げ変形した変形部材51、55を載置姿勢に復帰させるための手動操作が不要となって利便性が向上する。
なお、本実施形態の変形部材51、55についても、第1の実施形態で説明した可動部材26と同様に、載置面となる上面を棚板本体25側から出し入れ口23側へ向けて上り傾斜させることが可能であり、また、第4の実施形態で説明した可動部材44と同様に、棚箱41の内側壁面41Bに取り付けて棚板本体25の先端側に配置することが可能である。さらに、第2および第3の実施形態で説明した突出部33を変形部材51、55の先端部に設けることも可能である。
[第6の実施の形態]
図8は、上述した座席システム10に設けられる本発明の第6の実施形態に係る収納棚60の構成を示している。
図8に示すように、本実施形態の収納棚60では、2枚の棚板62はそれぞれ棚箱61内の奥側に配置されており、奥端面が棚箱61の奥壁面61Aに固着され、左右の両側端面が棚箱61の左右の両内側壁面61Bに固着されており、先端部63が出し入れ口23の開口端縁から所定寸法(L4)だけ奥側に配置されている。なお、本実施形態では、出し入れ口23から棚板62の先端部63までの距離L4を80〜100mmに設定し、棚板62に足を掛けられないようにするための十分な隙間を確保している。
また、各棚板62はそれぞれ載置面となる上面が出し入れ口23側から棚箱61の奥側へ向けて下り傾斜しており、たとえばフロアパネルFPに対して角度α2だけ傾いて配置されている。
以上の構成とされた収納棚60では、第1の実施形態で説明した収納棚20などと同様に、出し入れ口23を通して靴などの物品が出し入れ可能とされ、収納棚60に入れられた物品は、棚箱61内の奥側に設けられた棚板62に載置されて収納される。また、図8に示すように、乗客が足FTを出し入れ口23から入れて棚板62に掛けようとしても、出し入れ口23の付近には棚板62の先端部63が存在しないため、足FTが掛けられなくなる。さらに、棚板62が傾斜していることで、仮に足FTが棚板62の先端部63に届いたとしても掛け難くなる。したがって、この棚板62も足掛けとして利用される虞はない。
また、棚板62が収納棚60内の奥側へ向けて下り傾斜していることで、足掛けとして利用できないよう棚板62の先端側を短くしても、棚板62に載置された物品の脱落を防止することができる。
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
たとえば、第1および第2の実施形態では、棚板24、42の可動部材26、44を回動可能とする回動手段として、ヒンジ軸28を中心に回動する一般的な構成のヒンジ27を用いているが、このような軸回りに回動するヒンジ(蝶番)に換えて、合成樹脂などの弾性材料により弾性変形可能に形成されたインテグラルヒンジなどを用いてもよい。
また、回動手段としての上記ヒンジ27については、付勢手段としてのねじりコイルばね30を備えた汎用のばねヒンジとしているが、このようなヒンジなどからなる回動手段と、ばね部材などからなる付勢手段とを個別に構成するようにしてもよい。
また、上記のような棚板本体25、43および可動部材26、44とは別部材のヒンジ27に換えて、たとえば可動部材の基端部などに側方へ突出する軸部を設け、その軸部を、棚板本体の先端部や棚箱の内側壁面に形成した筒状の軸受け部に回動可能に挿入することで、可動部材を棚板本体の先端部や棚箱の内側壁面に直接取り付けるよう構成してもよい。また軸部と軸受け部の配置を逆にして、すなわち、可動部材の基端部などに軸受け部を設け、その軸受け部に、棚板本体の先端部や棚箱の内側壁面に形成した軸部を回動可能に挿入することで、可動部材を棚板本体の先端部や棚箱の内側壁面に直接取り付けるよう構成してもよい。
また、棚板の可動部(可動部材)を付勢する付勢手段については、上記のようなねじりコイルばねに限らず、圧縮コイルスプリングまたは引っ張りコイルスプリングなどの他のばね部材、あるいは、エアスプリングやガススプリングなどの気体の圧力を利用した圧力スプリングなどとしてもよい。
また、シート本体に対する収納棚の設置数や設置箇所、収納棚の形状、出し入れ口の向きや形成数、あるいは棚板の枚数、形状、大きさ、材質なども上述の実施形態に限定されるものではなく、用途や仕様などに応じて適宜変更することができる。
たとえば、実施の形態で説明した航空機の客室(ビジネスクラス)に設置される座席システム10の例では、2つのシート本体11で1つの収納棚20を共有するようにしているが、1つのシート本体に対して1つまたは複数の収納棚を設けた構成の座席システムに対しても本発明を適用することができる。また、特に航空機や鉄道車両などの客室では、一般的に、天井部付近に手荷物用の収納ボックスや網棚などが設置されており、それらに対して乗客が荷物を出し入れするような場合などにも、シートの周辺部に設置された収納棚の棚板が丁度よい高さにあると、足掛けにされる虞がある。また、航空機のファーストクラスで使用されるリクライニング状態およびベッド状態に変更可能なフルフラットタイプ(Full Flat Type)のシートや、寝台車のベッドなどの乗客が利用する座席では、座席本体(シート本体/ベッド本体)の周りにプライベートスペース(個室)確保用の仕切り壁があり、その仕切り壁に設けられた収納棚においても、同様に棚板が足掛けにされる虞がある。したがって、本発明を適用できる座席システムの収納棚は、実施の形態で説明したような配置に限らず、たとえば、座席本体の前面下部、後面部、側面部などの周辺部、あるいは、座席本体を使用する使用者の物品を収納するために座席本体の周囲に設けられたものなどで、棚板に足が掛けられる虞のある箇所に配置さているものがすべて含まれる。収納棚および棚板の形状については、出し入れ口を通して横方向や斜め上方向から物品が出し入れ可能で棚板に載置できるものがすべて含まれる。したがって、実施の形態で説明したような箱状に限らず、たとえば、出し入れ口が対向する前面と後面、または、左右の両側面に形成されたような枠状(貫通形状)のもの、あるいは、棚板の先端部分を構成する可動部材や変形部材の先端側の一部が出し入れ口から突出するような構成に対しても本発明を適用することができる。
また、本発明は上述した航空機の客室に設置されるシートに限らず、他にも、鉄道車両などの他の乗り物や劇場などに設置されるシートに対して適用することができる。