ところで、特許文献1−4に例示される従来の回転角度検出装置においては、被検出部としての最終減速ギヤ側に磁気回路を形成するための磁石を配置している。しかしながら、上述したように最終減速ギヤが樹脂で製造されているので、磁石には樹脂成形圧が印加される。このため、磁石に割れや欠け等の不具合が発生し、製造上の歩留りが悪化するという問題がある。あるいは、この問題を回避するために2つの磁石を最終減速ギヤの樹脂成形後に接着剤等にて組み付ける必要があり、後工程が増えることによってコストの増加を招いてしまう。
また、従来の回転角度検出装置を、例えば電子スロットル装置等のバルブの回転角度の検出に適用した場合、樹脂化により線膨張係数の差が増加することで、磁石やヨーク等の被検出磁気回路が、最終減速ギヤの回転方向に対して垂直な方向、すなわち最終原則ギヤの径方向に位置ズレする可能性がある。これにより、温度環境下で、磁石およびヨーク等から構成される被検出磁気回路と、ホールICとの間に形成されるエアギャップが変動してしまうため、ホールICを通過する磁束量が変化し、温度特性を悪化させるという問題がある。
さらに、特許文献5に例示されるように回転角度検出装置を構成した場合、ホールICの出力はエアギャップの2乗に反比例となるため、磁性移動体の移動位置に対するホールICの出力特性の直線性が悪いという問題がある。また、磁性移動体がその移動方向に対して垂直方向に位置ズレした場合には、移動位置に対するホールICの出力特性に出力ズレが発生するという問題がある。
よって、本発明の目的は、磁性移動体の移動位置に対する磁気センサの出力特性の直線性を高め、被検出部の回転角度の検出精度を向上させることが可能な回転角度検出装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、被検出部がその移動方向に対して垂直な方向に位置ズレした場合であっても、磁気センサの出力ズレを抑制することが可能な回転角度検出装置を提供することにある。
請求項1に記載の回転角度検出装置は、回転体の回転軸方向に配置された磁気センサ、磁気センサを保持固定する第1磁性固定体、回転体の回転軸を基準とした第1磁性固定体に対する径外方向に間隔を空けて第1磁性固定体を取り囲み少なくとも一箇所に回転体の回転方向における所定の角度範囲で開口する回転方向開口を形成する湾曲部と磁気センサにて検出される磁束の発生源となる磁力線発生部とを有する第2磁性固定体、および、第1磁性固定体を挟んで互いに対向するように第1磁性固定体と湾曲部との間に配置されてともに回転体に固定される第1磁性移動体および第2磁性移動体を備えている。
この第1磁性移動体および第2磁性移動体はいずれも、第1磁性固定体とエアギャップを隔てて対向する内壁面、および、湾曲部とエアギャップを隔てて対向可能であるとともに回転体の回転移動に伴って湾曲部との対向面積が回転方向開口との関係で変化する外壁面を有する。この構成により、磁力線発生部から放出される磁束が湾曲部を経由して第1磁性移動体および第2磁性移動体を通過するような磁路が形成される。このような磁路を通過して磁気センサで検出される磁束は、少なくとも第1磁性移動体および第2磁性移動体の外壁面と湾曲部との対向面積に応じて変化する。
すなわち、磁気センサを通過する磁束は、第2磁性固定体の磁力線発生部から放出され、第1磁性固定体、第2磁性固定体の湾曲部、第1磁性移動体、および第2磁性移動体の内部を流れ、また、これらの各磁性体が互いにエアギャップを隔てて対向する対向面を結ぶように形成される磁路を通ることにより、その磁気センサにおける流れ方向および検出される量が決まる。このため、検出される磁束は、各磁性体間の対向面における対向面積の大きさとエアギャップの大きさとに依存することになる。ここで、一般には、磁気回路を利用した非接触式の回転角度検出装置の被検出部である磁性移動体と磁気センサを備えた磁性固定体とのエアギャップの大きさは、被検出部の回転方向と垂直な方向への位置ズレにより変動するため、磁気センサにて検出される磁束も位置ズレの影響で変動し、検出結果に誤差が発生することが問題であった。
この点、本発明は、第1磁性移動体と第2磁性移動体とがともに回転体に固定されることにより、たとえ第1磁性移動体に位置ズレが生じた場合であっても、第2磁性移動体が第1磁性移動体と一体で移動し、第2磁性移動体にも同じ方向および大きさの位置ズレが生じるので、第1磁性移動体の位置ズレによる磁束への影響が第2磁性移動体の位置ズレによって緩和されるように構成されている。詳しくは、この第1磁性移動体および第2磁性移動体は、第1磁性固定体を挟んで互いに対向し、かつ、ともに第1磁性固定体と湾曲部との間に配置されている。この構成により、第1磁性移動体と第2磁性移動体とがその回転方向に対して垂直な方向に位置ズレした場合には、第1磁性固定体に対する対向面でのエアギャップ、ならびに、第2磁性固定体の湾曲部に対する対向面でのエアギャップが、互いにギャップ長さの増減を補い合うため、位置ズレによる磁束密度の偏りが相殺され、磁気センサの出力ズレが低減されるようになる。したがって、本発明によると、第1磁性移動体および第2磁性移動体の回転方向への移動位置に対する磁気センサの出力特性の直線性が高められ、被検出部の回転角度の検出精度を向上させることができる。
また、請求項2に記載の回転角度検出装置によると、磁力線発生部は、上述した第2磁性固定体に磁石をただ一つ保持固定することによって構成されている。この構成によれば、磁性固定体に複数の磁石を配置して磁路を形成する場合に比べて、使用する磁石の個数を減らすことにより製造工程およびコストを削減することが可能となるばかりでなく、磁気センサにて検出される磁束とは無関係な磁気ループが複数の磁石間で形成されてしまうことがなくなるという利点がある。したがって、磁石から放出される磁束が効率よく磁気センサを通過して検出されるような磁気回路を安定して形成することが可能となり、結果として、磁性移動体の移動位置に対する磁気センサの出力特性の直線性を高められ、被検出部の回転角度の検出精度を向上させることができる。
ところで、このような回転角度検出装置において、回転方向開口の近傍に磁性移動体と湾曲部との対向面を有する状態では、磁束がこの対向面に垂直な方向でエアギャップを経由して第1磁性固定体へ向かって流れ、磁力センサを通過する方向により、例えば磁束量または磁束密度を示す値(以下、磁束の値とする)に応じて、プラスまたはマイナスの出力信号として出力される。一方、磁性移動体と湾曲部との対向面がなくなった状態では、磁束の流れ方向が第1磁性固定体へ向かうことなく湾曲部と磁性移動体とに沿う方向へと変わるため、磁気センサにて検出される磁束の値がゼロとなる。
ここで、請求項3に記載の回転角度検出装置によると、第1磁性移動体および前記第2磁性移動体のうち少なくともいずれか一方について、外壁面が回転体の回転方向において占める角度範囲を、湾曲部に開口する回転方向開口の角度範囲と略同一としている。このため、回転体が特定の回転位置にあるときにおいてのみ、当該外壁面が湾曲部と対向しない状態が作り出される。この構成によれば、回転体の回転角度が検出される範囲のうち特定の回転角度でのみ、回転方向開口と磁性移動体の一つとの回転位置が一致して磁気センサによって検出される磁束の値がゼロとなるため、当該磁気センサを流れる磁束の方向が切替わる回転角度近傍においても、良好な直線性にてゼロ付近の磁束の値の変化に対応した出力信号が得られるよう磁気センサの出力特性の直線性を高め、被検出部の回転角度の検出精度を向上させることができる。
なお、例えば、第1磁性移動体および第2磁性移動体の内外壁面、ならびにこれらに対向する第1磁性固定体および湾曲部の対向面が全て、回転体の回転軸を中心とした円弧面状に形成されている場合、エアギャップの大きさは回転角度によらずほぼ一定となり、回転角度の検出が可能な角度範囲において、磁気センサにて検出される磁束は第1磁性移動体および第2磁性移動体の外壁面と湾曲部との対向面積に比例するように変化する。ここで、回転角度の検出が可能な角度範囲は、磁気センサをある方向へ通過して検出される磁束がプラス方向に最大となる回転角度と、磁束が磁気センサを逆方向へ通過してマイナス方向に最大となる回転角度との間で決まる。すなわち、当該角度範囲を超えた回転角度においては、検出される磁束の絶対値が再び減少するため、直線的な出力がなされる範囲からは外れることになる。
これに対し、請求項4に記載の回転角度検出装置によれば、第1磁性固定体または湾曲部は、第1磁性移動体または第2磁性移動体との対向により作り出されるエアギャップの大きさが、回転体の回転移動に伴って変化するように構成されている。この構成によって、磁気センサで検出される磁束は、少なくとも外壁面の湾曲部に対向する対向面積と、当該変化するエアギャップの大きさとに応じて変化する。このため、エアギャップをほぼ一定として構成した場合に対応する「回転角度の検出が可能な角度範囲」を超えた回転角度においても、可変としたエアギャップの大きさの変化に伴い、磁気センサで検出される磁束の絶対値がさらに大きくなるように変化させることができる。つまり、この範囲においても、回転角度によるエアギャップの大きさの変化に伴い磁気センサの出力特性の直線性を高めるように第1磁性固定体または湾曲部の曲率を適宜変更して設計することにより、当該「回転角度の検出が可能な角度範囲」を拡げることが可能となる。もちろん、このような構成においても、エアギャップ同士が互いにギャップ長さの増減を補い合うので、被検出部がその移動方向に対して垂直な方向に位置ズレした場合であっても磁気センサの出力ズレを抑制することができる。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による回転角度検出装置の構成を図1−3に示す。
本実施形態の適用されるエンジンには、燃焼室内に供給する吸入空気量を制御する電子スロットル装置が取り付けられている。
電子スロットル装置は、エンジンの吸気ダクトの途中に結合されるスロットルボディと、このスロットルボディの吸気通路を開閉するスロットルバルブと、このスロットルバルブを支持固定するシャフトと、スロットルバルブを駆動するモータを含むアクチュエータと、エンジンの運転状態に応じてモータへの供給電力を可変制御して、スロットルバルブの回転角度を制御するエンジン制御ユニット(ECU)とを備えている。
ここで、スロットルバルブのシャフトを開弁作動方向または閉弁作動方向に駆動するアクチュエータは、電力の供給を受けるとスロットルバルブを駆動する回転駆動力を発生するモータ、およびこのモータの回転駆動力をシャフトに伝達するための動力伝達機構を含んで構成される電動式アクチュエータである。なお、動力伝達機構は、モータの回転速度を所定の減速比となるように減速すると共に、モータの回転駆動力を増大させる歯車減速機構によって構成されている。この歯車減速機構は、モータの出力軸に固定されたピニオンギヤ、このピニオンギヤと噛み合って回転する中間減速ギヤ、およびこの中間減速ギヤと噛み合って回転する最終減速ギヤを有している。また、歯車減速機構を構成する3つのギヤのうち少なくとも最終減速ギヤは、合成樹脂によって所定のギヤ形状となるように一体的に形成されている。
また、電子スロットル装置には、運転者のスロットル操作量に応じて開弁駆動または閉弁駆動されるスロットルバルブの回転角度に相当するスロットル開度を電子信号に変換し、ECUへどれだけスロットルバルブが開かれているかを出力する非接触式ポジションセンサが搭載されている。以下、本実施形態においては、この非接触式ポジションセンサとして、図1−3に示す回転角度検出装置1の構成を適用した場合を例示して説明する。
回転角度検出装置1は、スロットルバルブの回転角度を検出するスロットル開度センサであって、軟磁性体からなる第1磁性移動体および第2磁性移動体としての第1ロータ11および第2ロータ12、磁気センサとしてのホールIC13とそれを保持固定する第1磁性固定体としてのセンサ固定ステータ14、ならびに、第2磁性固定体としての磁石固定ステータ15とその一箇所に保持固定される磁石16を備えている。磁石固定ステータ15は、磁石16が設けられる位置の両側にそれぞれ延びて湾曲する、湾曲部としての第1ヨーク17、および第2ヨーク18を左右対称に有する。
第1ロータ11と第2ロータ12とは、ともに回転体としての上記スロットルバルブのシャフトの一端に結合される最終減速ギヤ(以下、被検出部とする)に固定され、被検出部と一体でその回転軸回りに回転する。当該被検出部の回転軸方向には、磁束を検出可能なホールIC13が配置されている。ホールIC13をこのような位置に保持固定しているセンサ固定ステータ14は、軟磁性体により略円盤状に形成されており、被検出部とは別体で、例えば、電子スロットル装置のスロットルボディに固定されている。第1ロータ11と第2ロータ12とは、センサ固定ステータ14に対し被検出部の回転方向と垂直な方向に、すなわちセンサ固定ステータ14と略同一の仮想平面上に、当該センサ固定ステータ14を挟んで互いに対向するように配置されている。ここで、上述したように、第1ロータ11と第2ロータ12とはともに被検出部に固定されているので、例えば、第1ロータの位置が被検出部の回転方向と垂直な方向にずれる場合には、第2ロータ12が第1ロータ11と一体で移動し、第2ロータ12の位置も同じ方向へ同じ量だけずれることになる。
本実施形態によると、ホールIC13にて検出される磁束の発生源は、軟磁性体からなる磁石固定ステータ15のただ一箇所に設けられた、磁力線発生部としての磁石16である。言い換えれば、この回転角度検出センサ1は、回転角度の検出に利用する磁束を、ただ一つの磁石16のみから放出するように構成されている。磁石固定ステータ15は、例えば、センサ固定ステータ14とともにスロットルボディに固定されている。そして、本実施形態においては、長手方向二極に着磁された磁石16を、その着磁方向がホールIC13の長手方向と平行になるように配置している。さらに、磁石固定ステータ15は、当該磁石16の両極を起点としてセンサ固定ステータ14を取り囲むように略扇形状に延びたN極側の第1ヨーク17とS極側の第2ヨーク18とを、センサ固定ステータ14と略同一の仮想平面上に形成している。この第1ヨーク17と第2ヨーク18とは、スロットルバルブの回転軸を中心とし、第1ロータ11と第2ロータ12との径外方向に、略優弧状の「湾曲部」を構成している。そして、第1ヨーク17の端部170と第2ヨーク18の端部180との間は、被検出部の回転方向において、図2に範囲bとして示す角度範囲で開口し、回転方向開口19を形成している。
本実施形態によると、第1ロータ11および第2ロータ12は互いに同一の形状であり、被検出部の回転軸を中心とした略扇形状に形成されている。第1ロータ11および第2ロータ12は、センサ固定ステータ14とエアギャップG11を隔てて対向する凹曲面状の内壁面31、および、同様にエアギャップG12を隔てて対向する内壁面32をそれぞれ有する。また、第1ロータ11は、第1ヨーク17と第2ヨーク18から構成される「湾曲部」とエアギャップG21を隔てて対向可能であるとともに、被検出部の回転移動に伴って当該「湾曲部」との対向面積が回転方向開口19との関係により変化する、凸曲面状の外壁面41を有する。同様に、第2ロータ12は、上述した「湾曲部」とエアギャップG22を隔てて対向する、凸曲面状の外壁面42を有する。図2に示すように、第1ロータ11が被検出部の回転方向において占める角度範囲は、回転方向開口19が開口する角度範囲である範囲bと略同一となっている。このため、被検出部が特定の回転位置にある図2の状態においては、外壁面41の回転方向両端の位置が端部170および端部180の位置に対応し、外壁面41が第1ヨーク17とも第2ヨーク18とも対向しなくなる。
ここで、図1−3を参照して、回転角度検出装置1の作動を説明する。
電子スロットル装置のスロットルバルブがその回転方向に回転変位すると、スロットルバルブのシャフトの回転軸方向の一端部に結合される最終減速ギヤ(すなわち、被検出部)に保持固定された第1ロータ11および第2ロータが、ホールIC13の中心部付近を中心とした回転運動を行う。このとき、第1ロータ11および第2ロータの回転方向への回転変位量、すなわち被検出部の回転角度に応じて、第1ロータの外壁面41と第1ヨーク17の範囲aにおける凹曲面もしくは第2ヨーク18の範囲cにおける凹曲面とが対向する対向面積が変化する。本実施形態では、回転運動によって第1ロータ11が存在しうる範囲を、図2に示す範囲a−cの間としている。当該第1ロータ11が存在しうる範囲は、このように、ホールIC13の長手方向に沿った直線より回転方向開口19側の、180°の範囲内で設定することが好ましい。例えば、図1においては、第1ロータ11と第2ロータ12とがホールIC13の中心部分に対して半時計方向に回転移動し、図3においては、第1ロータ11と第2ロータ12とがホールIC13の中心部分に対して時計方向に回転移動することが可能である。図2の状態では、第1ロータ11と第2ロータ12とがホールIC13の中心部分に対して半時計方向または時計方向のいずれにも回転移動可能である。
なお、第1ロータ11の内壁面31および第2ロータ12の内壁面32とセンサ固定ステータ14の凸曲面とが対向する対向面積は、被検出部の回転角度が変化しても変わらない。また、本実施形態においては、第2ロータ12の外壁面42と第1ヨーク17および第2ヨーク18の構成する「湾曲部」の凹曲面とが対向する対向面積も、第2ロータ12がホールIC13の長手方向に沿った直線に対して回転方向開口19とは反対側の位置(すなわち、図2の範囲a−cを除く範囲)に存在するため、被検出部の回転角度が変化しても変わらない。
上述した構成により、磁石16から放出される磁束が第1ヨーク17および第2ヨーク18を経由して第1ロータ11および第2ロータ12を通過するような磁路が形成される。このような磁路を通過してホールIC13で検出される磁束は、第1ロータ11の外壁面41および第2ロータ12の外壁面42と第1ヨーク17および第2ヨーク18との対向面積に応じて変化する。
例えば、図1に示すように、回転方向開口19の近傍において、第1ロータ11の外壁面41が第1ヨーク17との対向面ABを有する状態では、磁石16のN極から第1ヨーク17に沿って放出された磁束が、対向面ABに垂直な方向でエアギャップG21を経由してセンサ固定ステータ14へ向かって流れて磁気回路J(a)を構成し、ホールIC13を通過する方向およびその磁束量に対応した出力信号が当該ホールIC13から出力される。ここで、本実施形態では、ホールIC13を磁束が図1−3の紙面上側から紙面下側へ向かう方向(つまり、磁石16から見て回転方向開口19のある方向)へ通過する場合を、プラスの出力信号が出力されるプラス方向とし、逆方向をマイナス方向と定義する。したがって、図1の状態では、ホールIC13をマイナス方向に通過する磁束が検出され、その磁束量に対応したマイナスの出力信号が出力されることになる。なお、具体的には、ホールIC13からECUに負の電圧信号が出力される。
一方、図2に示すように、第1ロータ11と第1ヨーク17および第2ヨーク18との対向面がなくなった状態では、磁束の流れ方向がセンサ固定ステータ14へ向かうことなく第1ヨーク17、第1ロータ11、第2ヨーク18に沿う方向、および第2ロータ12に沿う方向へと変わる。このとき、磁気回路J(b1)と磁気回路J(b2)とが構成され、センサ固定ステータ14を磁束が通過しなくなるため、センサ固定ステータ14上に配置されたホールIC13にて検出される磁束がゼロとなる。
また、図3に示すように、回転方向開口19の近傍において、第1ロータ11の外壁面41が第2ヨーク18との対向面ABを有する状態では、磁石16のN極から第1ヨーク17に沿って放出された磁束が、センサ固定ステータ14を通過したのち対向面ABに垂直な方向でエアギャップG21を経由して第2ヨーク18へ向かって流れて磁気回路J(c)を構成する。この場合、ホールIC13をプラス方向に通過する磁束が検出され、その磁束量に対応したプラスの出力信号として、当該ホールIC13からECUに正の電圧信号が出力される。以上の作動に続いて、ECUは、ホールIC13より出力される電圧信号に基づき、被検出部の回転角度を算出し、この回転角度に基づいてスロットルバルブの回転角度に相当するスロットル開度を算出する。
次に、本実施形態による被検出部の回転角度の検出方法を図4に基づいて簡単に説明する。図4は、ホールIC13を通過する磁束量に対する被検出部の回転角度を示した特性図である。図4を参照すると、図1に示される状態は、ホールIC13にて検出される磁束量がマイナス方向にピークとなる、被検出部の回転位置が角度(a)の状態である。また、図2に示される状態は、ホールIC13にて検出される磁束がゼロとなる、被検出部の回転位置が角度(b)の状態であり、図3に示される状態は、ホールIC13にて検出される磁束量がプラス方向にピークとなる、被検出部の回転位置が角度(c)の状態である。
本実施形態の回転角度検出装置1では、第1ロータ11および第2ロータ12の内外壁面、ならびにこれらに対向する磁石固定ステータ14および「湾曲部」の対向面が全て、被検出部の回転軸を中心とした円弧面状に形成されているため、各エアギャップの大きさは回転角度によらずほぼ一定となる。また、回転角度検出装置1は、エアギャップG11とエアギャップG12とのギャップ長さが同一であり、かつ、エアギャップG21とエアギャップG22とのギャップ長さが同一であるように設計されている。これにより、図4の角度(a)から角度(c)までの、回転角度の検出が可能となる範囲において、ホールIC13にて検出される磁束は、マイナス方向またはプラス方向の磁束量の絶対値が第1ロータ11の外壁面41と第1ヨーク17または第2ヨーク18との対向面積に比例するように変化する。
なお、回転角度の検出が可能となる範囲のうち、唯一角度(b)においてのみ、回転方向開口19と第1ロータ11との回転位置が一致して検出される磁束がゼロとなる。この構成により、ホールIC13を通過する磁束の流れ方向が切替わる回転角度近傍においても、良好な直線性にてゼロ付近の磁束の変化が得られるよう、ホールIC13の出力特性の直線性が高められ、被検出部の回転角度の検出精度を向上させることが可能となっている。
ところで、図4に例示されるような、被検出部の回転角度に対応して検出される磁束量に基づいた出力特性の直線性は、エアギャップG11とエアギャップG12とのギャップ長さを同一かつエアギャップG21とエアギャップG22とのギャップ長さを同一とし、各エアギャップの大きさを回転角度によらずほぼ一定として設計した構成によって担保される。しかし、実際には、被検出部がその回転方向と垂直な方向に位置ズレすることが起こりうるため、各エアギャップのギャップ長さも、位置ズレにより変動しうるものである。そのため、従来技術による回転角度検出装置では、磁気センサにて検出される磁束が位置ズレの影響で変動し、検出結果に誤差が発生するおそれがあった。
そこで、本実施形態においては、第1ロータ11と第2ロータ12とが対になり、ともに被検出部に固定されているため、万が一第1ロータ11に位置ズレが生じた場合には、第2ロータ12が第1ロータ11と一体で移動し、当該第2ロータ12にも同じ方向および大きさで位置ズレが生じる。そして、第1ロータ11に作られる各対向面におけるエアギャップG11とエアギャップG21、および、第2ロータ12に作られる各対向面におけるエアギャップG12とエアギャップG22が、互いにギャップ長さの増減を補い合うため、位置ズレによる磁束密度の偏りが相殺され、ホールICの出力ズレが低減されるようになる。また、第1ロータ11の位置ズレによる磁束への影響は、第2ロータ12の位置ズレによって緩和される。したがって、本実施形態によると、第1ロータ11および第2ロータ12の回転方向への移動位置に対するホールIC13の出力特性の直線性が高められ、被検出部の回転角度の検出精度を向上させることができる。
また、磁石16をただ一つ配置した本実施形態の構成によれば、磁石固定ステータ15に複数の磁石を配置して磁路を形成する場合に比べて、使用する磁石の個数を減らすことにより製造工程およびコストを削減することが可能となる。さらに、複数の磁石を配置する場合に懸念されるような、ホールIC13にて検出される磁束とは無関係な磁気ループが複数の磁石間で形成されてしまうという問題を防ぐことができる。したがって、本実施形態によると、磁石16から放出される磁束が効率よくホールIC13を通過して検出されるような磁気回路を、安定して形成することが可能である。言い換えれば、ただ一つの磁石16から放出される磁束を、効率よく回転角度の検出に利用することができる。
このように、形成される磁気回路自体がより検出に適するものとなるため、ホールIC13自体の検出精度が高いことは要求されなくなり、コストの削減につながる。また、ホールIC13の検出精度が低ければ、回転角度の検出に用いられる磁気回路とは無関係の外乱磁界を感知することがなくなるため、例えば、磁気センサの検出結果に外乱磁界による誤差が生じたり、当該誤差が繰り返し発生することによって磁気センサの検出精度自体が低下したりするという問題を防ぐことができる。結果として、回転角度検出装置の検出精度が安定し、その使用寿命も長くなる。さらに、磁力を強めなくとも磁束の変化が効率よく検出されるので、磁石の小型化も可能である。ひいては、回転角度検出装置の小型化と、回転角度の検出精度を高めることとを両立させることが可能となる。
(第2実施形態)
ところで、図4に示すように、第1実施形態の構成で検出可能な回転角度の範囲は、ホールIC13を通過して検出される磁束がマイナス方向に最大となる角度(a)と、磁束がホールICを逆方向へ通過してプラス方向に最大となる角度(c)との間である。当該角度範囲を超えた回転角度においては、第1ロータ11と第2ロータ12との位置関係により、検出される磁束の絶対値が再び減少するため、このような回転角度は直線的な出力が得られる範囲から外れることになる。そこで、検出可能な回転角度の範囲を拡げるために、以下に説明する本発明の第2実施形態の構成を採用することが例示される。
本発明の第2実施形態による回転角度検出装置の構成は、図5に示すとおりである。
第2実施形態の基本的な構成およびその作動は、第1実施形態と実質的に同等であり、同一の構成部材については同一の符号を付して説明を省略する。図5に示すように、回転角度検出装置10の第1ロータ21と第2ロータ22とは、第1実施形態の第1ロータ11や第2ロータ12と同様、略扇形状に形成されているが、回転方向における長さが短くなっている。また、第2実施形態の磁石固定ステータ25は、第1ヨーク27と第2ヨーク28とからなる「湾曲部」を有し、第1ヨーク27の端部270と第2ヨーク28の端部280との間は回転方向開口29として範囲eなる角度範囲で開口している。第1ロータ21の回転方向における長さに対応する角度範囲は、この範囲eと合致している。第1ヨーク27と第2ヨーク28とからなる「湾曲部」は、第1ロータ21との対向により作り出されるエアギャップの大きさが被検出部の回転移動に伴って変化するように構成されている。本実施形態によると、「湾曲部」の凹曲面の曲率は、略円盤状のセンサ固定ステータ14とのエアギャップが、その回転方向における位置が回転方向開口29に近づくほど大きくなるように設定されている。すなわち、図5(b)でいうと、範囲dおよび範囲fにおいて、m<nに設定されている。
第1ロータ21および第2ロータ22は、一定かつほぼ同一のギャップ長さのエアギャップを隔ててセンサ固定ステータ14と対向する、凹曲面状の内壁面51および内壁面52をそれぞれ有する。また、第1ロータ21は、第1ヨーク27と第2ヨーク28から構成される「湾曲部」とエアギャップを隔てて対向可能であるとともに、被検出部の回転移動に伴って当該「湾曲部」との対向面積およびエアギャップのギャップ長さが回転方向開口19との関係や「湾曲部」の曲率との関係により変化する、凸曲面状の外壁面61を有する。同様に、第2ロータ12は、上述した「湾曲部」とエアギャップを隔てて対向し、被検出部の回転移動に伴って当該「湾曲部」との対向におけるエアギャップのギャップ長さが「湾曲部」の曲率との関係によって変化する、凸曲面状の外壁面62を有する。例えば、図5(a)の状態では第1ロータ21および第2ロータ22がホールIC13の中心部分に対して反時計方向に回転移動可能であるが、第1ロータ21の外壁面61と第1ヨーク27とが対向する対向面ABと対向面CDとの間では、エアギャップACのギャップ長さよりもエアギャップBDのギャップ長さの方が大きい。また、端部270までの範囲では、第1ロータ21が反時計方向へ移動するに従って、ギャップ長さACもギャップ長さBDも徐々に大きくなっていくとともに、AC<BDの関係を常に有している。そして、図5(b)の状態では、第1ロータ21および第2ロータ22がホールIC13の中心部分に対して反時計方向または時計方向のいずれの方向にも回転移動可能である。
この構成によって、ホールIC13で検出される磁束は、少なくとも外壁面61の第1ヨーク27または第2ヨーク28に対向する対向面積と、当該変化するエアギャップの大きさとに応じて変化する。その変化は、ホールIC13を通過する磁束量に対する被検出部の回転角度を表す特性図である図6に示すとおりである。図6の角度(d)は図5(a)の状態に対応し、図6の角度(e)は図5(b)の状態に対応する回転角度を示す。角度(d)では、図5(a)に示す磁気回路J(d)に対応するマイナス方向の磁束が検出され、角度(e)では、図5(b)における磁気回路J(e1)も磁気回路(e2)もホールIC13を通過しないため、検出される磁束がゼロとなる。
第2実施形態によると、第1実施形態のようなエアギャップをほぼ一定として構成した場合に対応する「回転角度の検出が可能な角度範囲」を超えた回転角度においても、可変としたエアギャップの大きさの変化に伴い、ホールIC13で検出される磁束の絶対値がさらに大きくなるように変化させることができる。つまり、この範囲においても、回転角度によるエアギャップの大きさの変化に伴い、ホールIC13の出力特性の直線性を高めるように「湾曲部」の曲率を適宜変更して設計したことにより、当該「回転角度の検出が可能な角度範囲」が拡げられている。したがって、図4の角度(a)から角度(c)までの範囲よりも、第2実施形態において回転角度の検出が可能な角度範囲である、図6の角度(d)から角度(f)までの範囲の方が大きくなっている。もちろん、このような構成においても、エアギャップ同士が互いにギャップ長さの増減を補い合うので、被検出部がその移動方向に対して垂直な方向に位置ズレした場合であっても、ホールIC13の出力ズレを抑制することができる。
(第3実施形態)
第1実施形態および第2実施形態では磁石16が「湾曲部」の中間位置に保持固定されていたが、本発明においては、「湾曲部」を複数の部材に分割してもよく、「磁力線放出部」を「湾曲部」以外に配置してもよい。
そこで、本発明の第3実施形態による回転角度検出装置の構成を図7に示す。図7(a)は第3実施形態による回転角度検出装置の平面図であり、図7(b)は図7(a)の矢印B方向矢視図、図7(c)は図7(a)の直線A−A断面による断面図である。回転角度検出装置20では、第2磁性固定体としての磁石固定ステータ35において、二つに分割された湾曲部としての第1ヨーク37および第2ヨーク38を有し、回転方向開口が2箇所に形成され、磁石36がホールIC13に対して図7(a)の紙面奥側に配置されている。特に、ホールIC13と磁石36とを被検出部の回転軸方向に配置し、ホールIC13、センサ固定ステータ14、磁石固定ステータ35、および磁石36を、図7(a)に示す左右対称かつ上下対称の配置として構成すれば、その対称性により、磁石36から放出される磁束が効率よくホールIC13を通過して検出されるような磁気回路(すなわち、図7に示す磁気回路J(g))を、安定して形成することが可能となる。その結果、図4に示したような磁束の方向および磁束量に対応する出力の誤差が低減され、ホールIC13による出力特性の直線性が高められる。
(他の実施形態)
本発明の第2実施形態に示したように、「湾曲部」の曲率を適宜変更して設計し、「第1磁性移動体」または「第2磁性移動体」との対向により作り出されるエアギャップの大きさを被検出部の回転移動に伴って変化させるように構成した本発明の変形例として、他の実施形態を図8に挙げている。また、「湾曲部」の曲率を変化させることに代えて、「第1磁性固定体」の曲率を適宜変更して設計し、エアギャップの大きさを被検出部の回転移動に伴って変化させるように構成してもよい。「第1磁性固定体」の形状を変更した他の実施形態のバリエーションを、図9に挙げている。
図8(a)には第2実施形態による回転角度検出装置20の如く、第1実施形態の第1ヨーク17および第2ヨーク18の形状を変更し、エアギャップG30のギャップ長さを回転方向開口側で大きくした湾曲部45を含んでなる回転角度検出装置30を例示している。また、図8(b)に示す回転角度検出装置40のように、エアギャップG40のギャップ長さを磁石16側で大きくして湾曲部55を構成してもよく、図8(c)に示す回転角度検出装置50のように、エアギャップを回転方向開口側と磁石16側との両方で拡げた湾曲部65を構成しても良い。
また、図9(a)に示す回転角度検出装置60、図9(b)に示す回転角度検出装置70、および図9(c)に示す回転角度80のように、「第1磁性固定体」をセンサ固定ステータ44、センサ固定ステータ54、およびセンサ固定ステータ64のように変形してもよい。センサ固定ステータ44のような形状変更により、エアギャップG60が回転方向開口側で大きくなり、センサ固定ステータ54のような形状変更により、エアギャップG70が磁石16側で大きくなるため、図9(a)−(c)によると、図8(a)−(c)と実質的に同一の効果が得られる。
いずれの変形例においても、ホールIC13で検出される磁束が、少なくとも外壁面11の「湾曲部」に対向する対向面積と、当該変化するエアギャップの大きさとに応じて変化し、第2実施形態と同様に、図6のような「回転角度の検出が可能な角度範囲」が大きく直線性の良好な出力特性が得られる。
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施できる。
1、10:回転角度検出装置、11:第1ロータ(第1磁性移動体)、12:第2ロータ(第2磁性移動体)、13:ホールIC(磁気センサ)14:センサ固定ステータ(第1磁性固定体)、15:磁石固定ステータ(第2磁性固定体)、16:磁石(磁力線放出部)、17:第1ヨーク(湾曲部)、18:第2ヨーク(湾曲部)、19:回転方向開口、21:第1ロータ(第1磁性移動体)、22:第2ロータ(第2磁性移動体)、25:磁石固定ステータ(第2磁性固定体)、27:第1ヨーク(湾曲部)、28:第2ヨーク(湾曲部)、29:回転方向開口、31、32:内壁面、41、42:外壁面