ところで、操作者は、表示装置に表示される観察画像を観察しながら、処置具の操作を行う。内視鏡装置の処置具を確認するための手段として、操作者の五感のうち、最も基本となるのは、表示装置を認識するための視覚になる。特許文献1や特許文献2では、視覚による認識のみによっては安全性を確保することができないために、視覚以外の五感を補助的に使用していることになる。つまり、特許文献1では、操作者に了知させる手法として手に伝わる感覚、即ち触感を補助的に使用しており、特許文献2では、操作者に了知させる手法として報知ブザー、即ち聴覚を補助的に使用している。これら触覚や聴覚による認識は、視覚による認識のあくまでも補助的なものである。
従って、操作者は常に表示装置を視認しながら処置具の操作を行うため、内視鏡装置画像の表示装置には、リアルタイムに現状を表示するために動画が表示される。しかし、種々の状況によって、動画が表示されている表示装置を静止画に切り替える必要がある場合がある。例えば、操作者の要求に応じて動画を静止画として保存するときには、表示装置を静止画に切り替えて(フリーズ操作)、保存する画像を確認した後に記憶装置に静止画を保存・記録する(レリーズ操作)。
フリーズ操作を行うときには、表示装置には動画ではなく静止画が表示されている。この静止画は、フリーズ操作を行った瞬間の内視鏡装置の観察画像を表示しており、現在の状況を表示しているのではなく、以前の状況を表示していることになる。つまり、表示している静止画の状況と現状との整合性は取れていないことになる。このとき、表示手段に表示される画像が静止画又は動画であるか否かにかかわらず、処置具を操作することは可能である。そうすると、表示画像と現状との整合性が取れていない状態で、体腔内に挿入される処置具の操作(特に、誤挿入)が行われる可能性がある。
操作者は、表示装置を認識しながら(視覚によって)処置具の操作を行うことが基本である。従って、表示画像と現状との整合性が取れていない状態で処置具の操作が行われるのは、安全性確保の観点から問題となる。また、特許文献1や特許文献2では、視覚ではなく触覚や聴覚によって処置具を認識しているが、操作者にとって最も基本的な視覚による認識手段である表示装置に静止画が表示されている場合には、補助的な触覚や聴覚ではなく、視覚によって認識が左右されやすい。このため、現在の処置具の状態と異なる状況を表示している表示装置を視認しながら処置具の操作を行う可能性が大きい。
そこで、本発明では、表示装置に静止画が表示されている場合に、所定条件下では静止画ではなく動画を表示して、高い安全性を確保することを目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明の請求項1の内視鏡装置は、内視鏡の観察画像を静止画と動画とに選択的に切り替えて表示する画像表示手段と、内視鏡に形成される処置具挿通路に挿通される処置具が、少なくとも内視鏡の先端から突出したときに前記処置具を感知する処置具感知手段と、前記表示手段のモニタに静止画が表示されている場合であって、前記処置具感知手段が前記処置具を感知したときには、動画表示となるように切り替え制御する表示制御手段とを有している。
処置具の操作で最も安全性を確保する必要がある状況としては、処置具が内視鏡装置の先端から突出するときである。このときには、内視鏡装置の画像を表示する表示手段には、必ず現状の処置具の状態をリアルタイムの動画として表示する必要があるが、画像表示手段には静止画が表示されている場合もある。例えば、フリーズ画像を表示するために、画像表示手段に静止画が表示されている場合もある。このときに、処置具としての鉗子を誤って操作を行うと、鉗子が内視鏡の先端から突出する可能性がある。このような場合であっても、以上の請求項1の内視鏡装置により、内視鏡装置の先端から処置具が突出するときに、画像表示手段に静止画が表示されていたとしても自動的に動画表示に切り替わるため、最新の処置具の状況を操作者が確実に視覚による認識をすることができ、十分な安全性を確保することができる。
本発明の請求項2の内視鏡装置は、請求項1記載の内視鏡装置において、前記処置具感知手段は、前記処置具が通過したことを検出する処置具通過検出手段を有し、この処置具通過検出手段が前記処置具の通過を検出したときに、前記処置具を感知して、動画表示となるように制御を行うことを特徴とする。
処置具感知手段が処置具を感知するときの具体的な手段としては、請求項2のように処置具通過検出手段を設けることができる。処置具が内視鏡先端から突出したときに、処置具の通過を検出する位置に処置具通過検出手段を設けることにより、内視鏡先端から処置具が突出したときに処置具が感知される。このため、処置具が自動的に感知され、静止画が表示されていても画像表示手段には最新の処置具の状況を示す動画に切り替わるため、操作者は確実に視覚による認識を行うことができる。
処置具通過検出手段としては、例えば光センサや圧力センサ、磁力センサ、機械的な検出手段等の任意の手段を適用することができる。光センサの場合には、内視鏡の処置具挿通路又は処置具の何れか一方に透過型又は反射型の投光部、他方に受光部を設けて、処置具が光センサを通過したときに処置具の通過を検出するようにする。この場合には、処置具が光センサを通過する位置を、処置具が内視鏡の先端から突出する位置に設けることにより、処置具を感知することができる。また、圧力センサや磁力センサの場合も同様であり、処置具が内視鏡の先端から突出する位置に、圧力センサや磁力センサを設ける。機械的な検出手段としては、処置具が内視鏡の先端から突出する位置に対応して、処置具と処置具挿通路とに夫々凹凸部を設け、両凹凸部が接触することを検出することもできる。この凹凸部は処置具及び処置具挿通路の先端側に設けてもよいし、基端側に設けてもよい。
本発明の請求項3の内視鏡装置は、請求項1記載の内視鏡装置において、前記処置具感知手段は、さらに前記処置具が内視鏡の先端部近傍の所定範囲内にあるとき、及び/又は前記処置具が変位したときに、前記処置具を感知して、動画表示となるように制御を行うことを特徴とする。
請求項3の内視鏡装置では、(1)処置具が内視鏡の先端部近傍の所定範囲内にあること、(2)処置具が変位したこと(つまり、位置が変化したこと)、の2つの条件の何れか一方又は両方を処置具の感知条件としている。つまり、処置具が内視鏡先端から突出するとき以外の状態でも、処置具が内視鏡装置の先端部近傍で変位した場合(前記の(1)及び(2)の条件の両方を具備した場合)には、処置具が内視鏡装置先端から突出する蓋然性が高い。このような場合には、画像表示手段に動画表示を行い、現状の処置具をリアルタイムに表示して操作者に認識させると、より高い安全性を確保することができる。一方、処置具が変位状態にある場合でも、その先端が内視鏡装置操作部の基端側に位置している場合には、処置具が変位したとしても、内視鏡装置先端から処置具が突出する蓋然性は極めて薄い。このような場合にも画像表示手段に静止画が表示されないとすると、安全な状態であるにもかかわらず、フリーズ操作やレリーズ操作を行うことができなくなり、操作性が低下してしまう。
そこで、請求項3ように、処置具が内視鏡装置の先端部近傍の所定範囲内で変位したときに、画像表示手段に動画が表示することにより、より高い安全性を確保することができ、同時に操作性が低下することを防ぐことができる。なお、所定範囲とは、処置具が変位したときに内視鏡装置先端から突出する蓋然性が高い範囲をいう。従って、処置具が挿通される処置具挿通路の基端側の部位で変位したとしても、処置具が内視鏡装置先端から突出する蓋然性は低いため、内視鏡装置先端部近傍の所定範囲には入らないことになる。
前記したケースは(1)及び(2)の2つの条件を具備している場合であるが、何れか一方の条件を満たしたときに処置具を感知する制御を行うこともできる。つまり、処置具が変位していない状態でも、先端部近傍の所定範囲に処置具がある場合には、処置具が変位すると、直ちに内視鏡装置先端から処置具が突出する可能性がある。従って、処置具は変位していないが、所定範囲にあるとき(前記の(1)の条件を満たしているとき)に、処置具を感知することにより、さらに高い安全性を確保することもできる。このとき、処置具を感知すると、フリーズ操作やレリーズ操作を行うことができないため、操作性は低下する。
また、前記の(2)の条件を満たしたときに、処置具を感知するようにすることもできる。処置具が変位したときに、処置具の位置にかかわらず処置具を検出するようにすることにより、さらに高い安全性を確保することができる。この場合にも、フリーズ操作やレリーズ操作を行うことができないため、操作性は低下する。従って、前記(1)の条件又は前記(2)の条件の何れか一方を満たしたときに処置具を検出することにより、さらに高い安全性を確保できるが、その分、操作性は低下するため、安全性と操作性とのバランスを考慮して、操作者は任意に選択することができる。
また、基本的には、処置具が内視鏡先端から突出した状態にある場合には、安全性確保のため、画像表示手段には常に動画が表示される。しかし、このような状況下でも、処置具が停止している場合には、画像表示手段に静止画を表示しても安全性は確保される。この場合には、処置具が変位したときに、画像表示手段には動画表示される制御を行わなくてはならない。従って、処置具感知手段が処置具を感知する条件としては、前記の(2)の条件を満たしたときとなる。また、前記の(1)の条件を含める場合には、内視鏡の挿入部近傍の所定範囲に、処置具挿通路の内部だけではなく外部を含めることにより、処置具が内視鏡先端から突出した状態において変位したときに、処置具を感知することができる。
本発明の請求項4の内視鏡装置は、請求項1乃至3何れか1項に記載の内視鏡装置において、前記処置具感知手段が前記処置具を感知している間は、前記画像表示手段を静止画に切り替えることを禁止する切替禁止手段を設けたことを特徴とする。
処置具感知手段が処置具を感知している間、つまり内視鏡装置の先端から処置具が突出している状況下、又は処置具が内視鏡装置の先端部近傍の所定範囲内で変位している状況下では、画像表示手段には常に動画を表示している状態を維持し、静止画に切り替えてはならない。そこで、請求項4の内視鏡装置により、処置具感知手段が処置具を感知している間は、画像表示手段の表示を静止画に切り替えることを禁止する切替禁止手段を設けることにより、常に動画を表示している状態を維持できる。
本発明の請求項5の内視鏡装置は、請求項3記載の内視鏡装置において、 前記内視鏡に設けられ、磁場を発生するトランスミッタと、前記処置具に設けられ、前記トランスミッタから発生した磁場を検出して自身の位置情報を取得する位置センサと、を有し 前記処置具感知手段は、前記位置センサが取得した位置が前記所定範囲内にあるとき、及び/又は前記位置が変位したときに、前記処置具を感知することを特徴とする。
請求項3の内視鏡装置では内視鏡装置先端部の所定範囲内で処置具が変位したときに、処置具を感知するが、その具体的な手法として、磁場を発生するトランスミッタとトランスミッタが発生した磁場を検出する位置センサとを利用することができる。トランスミッタを磁場の中心として、磁場中心部から外側に向かって所定の磁場エリアを発生し、磁場の強弱によって、磁場エリア内での位置センサの位置を把握することができる。そして、トランスミッタを内視鏡に取り付けているため、処置具に取り付けている位置センサの位置情報を取得することができる。従って、この位置情報により前記(1)の条件を満たすか否かを判定することができ、位置情報に変化が生じたか否かに基づいて前記(2)の条件を満たすか否かを判定することができる。これにより、処置具を感知することができる。
本発明の請求項6の内視鏡装置は、請求項3記載の内視鏡装置において、磁場を発生するトランスミッタと、前記処置具に設けられ、前記トランスミッタから発生した磁場を検出して自身の位置情報を取得する第1の位置センサと、前記内視鏡に設けられ、前記トランスミッタから発生した磁場を検出して自身の位置情報を取得する第2の位置センサと、を有し前記処置具感知手段は、前記第1の位置センサと前記第2の位置センサとの間の距離が前記所定範囲内にあるとき、及び/又は前記距離が変化したときに、前記処置具を感知することを特徴とする。
請求項5の場合には、磁場を発生するトランスミッタを内視鏡に取り付けていたため、内視鏡と処置具との相対的な位置関係に基づいて処置具を感知していたが、請求項6の場合には、トランスミッタを任意の位置に別個独立に設け、処置具と内視鏡との夫々に位置センサを設けることで、処置具と内視鏡との位置関係(前記(1)の条件)及び変位(前記(2)の条件)を検出することができる。つまり、請求項6の場合は、トランスミッタを基準として処置具及び内視鏡の絶対位置関係に基づいて処置具を検出していることになる。
請求項5の内視鏡装置では、相対的な位置関係に基づいて処置具の変位を感知しているため、内視鏡装置に位置センサを設ける必要はなく、請求項6の内視鏡装置では、絶対的な位置関係に基づいて処置具の変位を感知しているため、トランスミッタは任意の位置に配置することができる。
ここで、トランスミッタから発生される磁場の範囲を処置具の変位を感知する、請求項3の所定範囲と一致させることにより、内視鏡装置先端の所定範囲で処置具が変位したときに、内視鏡装置を感知することが可能となる。
また、前述してきた処置具としては、例えば、鉗子、カテーテル、高周波処置具等を適用することができ、また超音波プローブ等も適用することができる。また、画像表示手段に表示される画像は動画及び静止画の両者を含む概念であり、画像表示手段には静止画又は動画が選択的に切り替えられて表示される。
本発明は、処置具が内視鏡の挿入部から突出したときに処置具感知部が処置具を感知して、画像表示手段を自動的に動画表示する制御を行うことにより、常に最新の処置具の状態を操作者に把握させることができ、高い安全性を確保することができる。
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示す本発明の内視鏡装置の一例は、主に内視鏡1と鉗子2とプロセッサ装置3とモニタ3Mとを有して構成される。このうち内視鏡1は、本体操作部11と挿入部12と処置具導入部13と処置具挿通路14とユニバーサルコード15とを有している。また、挿入部12の先端近傍にはトランスミッタ71が取り付けられている。本体操作部11は操作者が操作するための操作部であり、挿入部12は被検者の体腔内に挿入される挿入部である。処置具導入部13は処置具としての鉗子2を導入するための導入部であり、本体操作部11に設けられる。処置具挿通路14は鉗子2の挿通路となっており、処置具導入部13から挿入部12の先端まで延在されている。また、内視鏡1の本体操作部11からはユニバーサルコード15が引き出され、内視鏡の画像を処理する内視鏡画像処理装置としてのプロセッサ装置3の接続部3a及び3bに着脱可能に接続するための接続コネクタ15a及び15bを備えている。
図2は、内視鏡1に挿脱される処置具としての鉗子2の一例を示している。図2の鉗子2は、スライダ24を備える操作部20と可撓性シース22を備えるコード部21と鉗子部23と信号ケーブル26と接続コード27と位置センサ72とを有している。操作部20は操作者が操作するための部材であり、コード部21は処置具挿通路14に挿入されるコード部である。鉗子部23は実際に処置を行う部位であり、スライダ24は鉗子部23を開閉動作させるための部材である。信号ケーブル26は位置センサ72に接続され、接続コード27と共に、位置センサ72の信号授受を行うための部材である。接続コード27は、プロセッサ装置3と信号の授受を行うためのコードであり、例えば図1の背面に設けられる接続部に着脱可能に接続される。
図3は、内視鏡1と鉗子2とプロセッサ装置3と処置具感知部7との回路構成の一例の概略を示している。図3において、内視鏡1の回路構成としては、CCD51とCDS/AGC回路52とA/D変換機53と第1のDSP54と第1のCPU55とTG56とCCD駆動回路57とフリーズスイッチ58を有して構成される。CCD51は入射光を結像し、光電変換する固体撮像素子であり、内視鏡1の観察画像を電気信号に変換する。CCD51からの出力信号は、CDS(Correlated Double Sampling)/AGC(Auto Gain Control)回路52において相関二重サンプリング及び増幅処理が施され、A/D変換機53においてアナログ信号からデジタル信号に変換されて、第1のDSP54に入力される。DSPは、入力された観察画像の信号に対してガンマ補正やYC分離等の各種の信号処理を施す。本実施形態では、第1のDSP54と後述する第2のDSP61との2つのDSPを備え、第1のDSP54では、Y(輝度)信号及びC(カラー)信号の分離等の各種のデジタル処理を行い、第2のDSP61ではYC信号からRGB信号への変換やガンマ補正等の種々のデジタル処理を施すものとする。
内視鏡1に設けられる第1のCPU(Central Processing Unit)15は、内視鏡1の全体の制御を行う。第1のCPU55にはTG(Timing Generator)16が接続され、第1のCPU55の制御によりTG56がタイミングパルス信号の生成を行い、このタイミングパルス信号に基づいてCCD駆動回路57からCCD51の駆動を行う。そして、CCD駆動回路57の駆動に基づいて、CCD51から観察画像の信号を読み出す。また、第1のCPU55にはフリーズスイッチ58が接続されている。フリーズスイッチ58は操作者が静止画を表示したいときに押下するためのスイッチであり、本体操作部11に設けられる。フリーズスイッチ58は手動操作可能に設けられており、押下された場合には、その旨の信号が第1のCPU55に出力される。
プロセッサ装置3の回路構成について説明する。プロセッサ装置3は、第2のDSP61と画像メモリ62とD/A変換機63と第2のCPU64とを有して構成される。第2のDSP61は、YC信号からRGB信号への変換やガンマ補正等の種々のデジタル処理を施して、映像信号を生成する。第2のDSP61から出力される映像信号は画像メモリ62に1フレーム分の映像信号として一時的に記憶される。保存された映像信号はD/A変換機63によって読み出されてデジタル信号からアナログ信号に変換され、最終的にモニタ3Mに内視鏡1の観察画像が表示される。第2のCPU64は、プロセッサ装置3の全体の制御を行うための制御手段となる。また、モニタ3Mには、動画と静止画とを選択的に切り替えて表示することが可能である。
処置具感知部7の回路構成について説明する。処置具感知部7は、トランスミッタ71と位置センサ72と判定部73と信号出力部74とを有して構成される。処置具感知部7は、鉗子2を感知したときには、第1のCPU55に対して鉗子2を感知していることを通知する処置具感知手段である。
トランスミッタ71は磁場を発生させる手段であり、内視鏡1の挿入部12の先端に設けられる。このトランスミッタ71を中心に三次元的な空間内の一定範囲に磁場が発生する。磁場を発生させるための手段としては、例えばトランスミッタ71に1又は複数個のコイルを設け、このコイルに交流電流を流すことにより、磁場を発生することができる。この場合にはコイルの他に電源が必要となるが、電源を内視鏡1の外部に別個独立に設けて、コイルと電源とを接続する方式であってもよいし、トランスミッタ71に電源としてのバッテリを搭載し、このバッテリとコイルとを接続する方式であってもよい。
また、位置センサ72はトランスミッタ71から発生した磁場を検出する手段であり、位置センサ72は鉗子2の先端に設けられる。トランスミッタ71からは一定範囲に磁場が発生されて磁場エリアが発生するが、この磁場エリアのうち位置センサ72が磁場を検出できる範囲が、本実施形態の所定範囲ARとなる。磁場エリアの中で、位置センサ72は、磁場の強弱に応じてトランスミッタ71を基準とした位置情報を取得する。例えば、トランスミッタ71の直近に位置センサ72があるときには、強い磁場を検出するため、トランスミッタ71の直近に位置していることを検出し、トランスミッタ71から離間した位置に位置センサ72があるときには、弱い磁場を検出するため、トランスミッタ71から離間した位置にいることを検出する。位置センサ72は、トランスミッタ71の位置を基準とした位置情報を取得しているため、相対位置の情報を取得することになる。位置センサ72は、信号ケーブル26及び接続コード27を経由して、内視鏡1に設けられる判定部73に接続され、位置センサ72が取得した位置情報は判定部73に出力される。位置センサ72は、トランスミッタ71を基準とした相対位置の情報を常に取得し、常に最新の相対位置の情報を判定部73に対して出力している。
判定部73は、鉗子2を感知するための条件を満たしているか否かを判定する判定部である。判定部73には信号出力部74が接続され、判定部73は、鉗子2を感知していると判定している場合には、第1のCPU55に対して鉗子2を感知している旨の信号を出力するように信号出力部74に命令を出す。信号出力部74と第1のCPU55とは接続され、判定部73からの命令に従って、信号出力部74は第1のCPU55に対して鉗子2を感知している旨の信号を出力する。
なお、位置センサ72は鉗子2に設けられ、トランスミッタ71、判定部73及び信号出力部74は内視鏡1に設けられている。従って、処置具感知部7は単体の装置として設けられているのではなく、処置具感知部7の構成要素は内視鏡1と鉗子2とに分散して配置されている。ただし、機能的には、トランスミッタ71と位置センサ72と判定部73と信号出力部74とは、あくまでも処置具感知部7の構成要素となるものである。図1乃至図3の例では、処置具感知部7を分散して他の装置内に配置しているが、処置具感知部7を別個独立の単体の装置としてもよい。
鉗子2を感知するための条件を具体的に説明する。本発明において、鉗子2を感知する条件としては、安全性確保の観点から、モニタ3Mに動画を表示する必要がある場合、つまり鉗子2の現在の最新の状態を表示する必要がある場合である。例えば、フリーズ操作を行うとモニタ3Mに静止画が表示されるが、このときに、操作者が鉗子2を誤って操作(特に、挿入操作)を行うことがある。そうすると、モニタ3Mに表示されている鉗子2の状態から、誤操作を行った状態とは変化しているため、リアルタイムに鉗子2の状態を表示していないことになる。そこで、少なくとも、鉗子2の先端が挿入部12の先端から突出するときには、モニタ3Mの表示を静止画から動画に切り替えて、操作者が目視によりリアルタイムに現状を認識可能な状態にしなくてはならない。また、それ以外にも、(1)内視鏡1の先端近傍の所定範囲に鉗子2が位置していること、(2)鉗子2が変位(つまり、位置が変位したこと)、の2つの条件の何れか1つの条件を満たしている場合、又は2つの条件を満たしている場合には、安全性確保の観点から、鉗子2を感知する条件とすることもできる。
図4(a)を参照すると、鉗子2の鉗子部23が内視鏡1の先端面1Tから突出しようとしているときには、モニタ3Mに動画が表示される制御を行うため、判定部73は鉗子2を感知しなくてはならない。最小限、このときに鉗子2を感知すればよいが、高い安全性確保のために、同図に示されるように、内視鏡1の先端近傍の所定範囲ARに鉗子2があること(前記(1)の条件)、及びこの所定範囲AR内で鉗子2が変位したときに(前記(2)の条件)、鉗子2を感知するようにする。
図4(b)の状態を考えた場合、位置センサ72はトランスミッタ71を基準とした位置情報を取得するため、この位置情報を判定部73に出力する。判定部73には、予め前記の所定範囲ARの情報を記憶しておき、位置センサ72から出力される位置情報と、予め記憶している所定範囲ARの情報とを比較して、位置センサ72からの位置情報が所定範囲ARの内にあるか外にあるかを判定する。図4(b)の状態では、所定範囲ARの内にあると判定されるため、前記(1)の条件は充足する。
次に、判定部73は位置センサ72から入力した位置情報に変化が生じているか否かを判定する。位置情報に変化が生じていれば、トランスミッタ71に対して位置センサ72が変位したことを判定することができる。位置センサ72は鉗子2に取り付けられ、トランスミッタ71は内視鏡1に取り付けられているため、位置センサ72の変位を検出することにより、内視鏡1に対して鉗子2が変位したことを判定できる。従って、図4(b)において、判定部73が変位を判定したときには、前記(2)の条件を充足する。この場合、前記(1)及び(2)の条件を満たすため、判定部73は鉗子2を感知し、モニタ3Mに動画を表示させる制御を行う(第1のCPU55に対して信号を出力するように、信号出力部74に命令を出す)。これにより、モニタ3Mに静止画が表示されていたとしても、判定部73が鉗子2を感知したことにより、動画表示を優先し、自動的に動画表示に切り替わる。
図4(c)には、鉗子2が所定範囲ARに入っていない場合を示している。この場合は、位置センサ72からの位置情報に基づいて、判定部73は鉗子2が所定範囲ARに入っていないことを検出するため、前記(1)の条件は満たさないことを判定できる。このため、モニタ3Mに動画表示を表示させる制御を行わない。また、図4(b)において、鉗子2が変位していない場合も同様に、モニタ3Mに動画表示させる制御を行わない。
図4(c)に示すように、鉗子2が所定範囲ARに入っていない場合に動画表示をさせる制御を行わないのは、図(c)の状態では、鉗子2の鉗子部23の先端と内視鏡1の先端面1Tとの間の間隔は比較的余裕があるため、この状態で鉗子2が多少変位したとしても、内視鏡1の先端面1Tから鉗子2の鉗子部23が突出する可能性は極めて低い。一方で、このような状態であっても、モニタ3Mに常に動画表示させるように制御すると、フリーズ操作の操作性が低下する。同様に、所定範囲ARに鉗子2が入っている場合であっても、変位していない場合には鉗子部23が突出することはないため、このような状況下では、フリーズ操作を許可してもよい。そこで、前記(1)及び(2)の2つの条件を満たしたときに、モニタ3Mを動画表示させる制御を行うことにより、操作性の向上と安全性の確保との2つをバランス良く両立させることができる。
ただし、操作性の向上よりも安全性の確保に重点を置く場合には、前記(1)の条件又は前記(2)の条件の何れか1つの条件を満たしているときに、モニタ3Mを動画表示させる制御を行うこともできる。例えば、鉗子2が所定範囲ARに入っている場合(前記(1)の条件を満たしている場合)には、鉗子2が変位していなくても(前記(2)の条件を満たしていない場合であっても)、判定部73は鉗子2を感知して、第1のCPU55に対して信号を出力するように、信号出力部74に対して命令を出すようにしてもよい。逆に、鉗子2が所定範囲ARに入っていない場合(前記(1)の条件を満たしていない場合)であっても、鉗子2が変位している場合(前記(2)の条件を満たしている場合)には、判定部73は鉗子2を感知するようにしてもよい。
以上の構成において、最初に操作者がフリーズスイッチ58を押下した場合の動作について説明し、次に処置具感知部7が鉗子2を感知している場合の動作について説明する。
内視鏡1の観察画像は、通常は動画として表示される。このため、プロセッサ装置3の画像メモリ62には、CCD駆動回路57からのタイミングパルス信号に基づいて、CCD51から読み出された内視鏡1の観察画像が連続的に入力され、画像メモリ62に記憶される映像信号は、常に最新の画像を連続的に更新して記憶する。そして、連続的に更新されている内視鏡の観察画像を順次読み出してモニタ3Mに出力して表示することにより、操作者は動画を認識することができる。
従って、モニタ3Mには動画がメインとして表示されるが、操作者がモニタ3Mの観察画像を確認しているときに、観察画像を保存したい場合等においては、一時的にモニタ3Mに静止画を表示して保存を行う。この操作を行うためにフリーズスイッチ58が設けられる。操作者がフリーズスイッチ58を押下すると、その旨の信号が第1のCPU55に出力される。第1のCPU55は、この信号を入力すると、第2のCPU64に対して、フリーズスイッチ58が押下されたため、画像メモリ62の更新作業を中断する旨の指令を出力する。第2のCPU64は、この指令を入力したときには、画像メモリ62に対して観察画像の更新作業を中断する命令を出力する。この命令を画像メモリ62が受け取ると、画像メモリ62は画像の更新作業を中断する。画像メモリ62の画像の更新作業が中断すると、モニタ3Mの表示は動画から静止画に切り替わり、更新作業を中断したときの画像が静止画として表示され、動画は表示されない。
フリーズスイッチ58が押下されると、モニタ3Mには静止画が表示されるが、処置具感知部7が鉗子2を感知しているときには、モニタ3Mに自動的に動画表示される制御がされるため、モニタ3Mの画面は静止画から動画に切り替わる。鉗子2が内視鏡1の先端近傍の所定範囲AR内で変位をすると、判定部73が鉗子2を感知し、信号出力部74に対して信号出力の指令を出す。この指令に基づいて信号出力部74は第1のCPU55に、鉗子2を感知している旨の信号を出力する。
フリーズスイッチ58が押下されたことにより、第1のCPU55から第2のCPU64を介して画像メモリ62に画像の更新作業を中断する旨の指令を出しているときに、処置具感知部7が鉗子2を感知した場合には、第1のCPU55は、フリーズスイッチ58からの信号よりも処置具感知部7の信号出力部74からの信号を優先し、第2のCPU64に対して画像の更新作業を停止する旨の信号を出力しない。これにより、画像の更新作業を停止する旨の信号を入力しないため、画像メモリ62は画像の更新作業を再び開始する。このため、モニタ3Mには静止画が表示されることはなく、常に動画が表示される。一方、フリーズスイッチ58が押下されていない場合には、画像メモリ62に対して更新作業の中断の指令が出力されないため、処置具感知部7の信号出力部74からの信号にかかわらず、モニタ3Mには動画が表示される。
次に、処置具感知部7が鉗子2を感知している間は、モニタ3Mの表示を動画から静止画に切り替えることを禁止する制御について説明する。鉗子2を感知しているという状況下では、安全性確保のため、モニタ3Mは常に鉗子2の最新の状況を表示している必要がある。このため、第1のCPU55に対して、処置具感知部7の信号出力部74から鉗子2を感知している旨の信号が入力されているときに、フリーズスイッチ58が押下された旨の信号を入力したとしても、処置具感知部7からの信号を優先して、第1のCPU55は、第2のCPU64に対して画像の更新作業を中断する指令は出さない。これにより、処置具感知部7が鉗子2を感知している間は、フリーズスイッチ58が押下されても、モニタ3Mの表示は動画から静止画に切り替えることが禁止される。
<第2の実施形態>
以上の第1の実施形態では、トランスミッタと位置センサとの相対位置関係に基づいて、鉗子2を感知する制御を行っているが、第2の実施形態では、絶対位置関係に基づいて、鉗子2を感知する制御を行う場合について説明する。
この実施形態では、第1の実施形態で説明した内視鏡1の挿入部12に取り付けられていたトランスミッタ71の位置には、トランスミッタではなく第1の位置センサ81が取り付けられている。また、図5に示すように、第1の実施形態の位置センサ82の位置には、同様に位置センサが取り付けられているが、第1の位置センサ81と区別するために、第2の位置センサ82とする。そして、磁場を発生しているトランスミッタ83が、例えば被検者の外部に配置されているものとする。
図6には、本実施形態の回路構成が示されている。図6から明らかなように、第1の位置センサ81は内視鏡1に配置され、第2の位置センサ82は鉗子2に配置されている。トランスミッタ83は、内視鏡1、鉗子2及びプロセッサ装置3の何れにも配置されておらず、独立に設けられている。また、第1の実施形態とは異なり、信号出力部74及び判定部73はプロセッサ装置3に配置されている。ただし、何れの場所に配置されていても、機能的に、第1の位置センサ81と第2の位置センサ82とトランスミッタ71と判定部73と信号出力部74とは処置具感知部7の構成要素となる。その他の回路構成は、第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
以上の構成における動作を説明する。最初に、操作者がフリーズスイッチ58を押下すると、モニタ3Mには静止画が表示される。そして、処置具感知部7において、鉗子2を感知すると、モニタ3Mの表示を動画表示する制御を行うが、鉗子2を感知する方式が第1の実施形態と異なる。
内視鏡1の位置は第1の位置センサ81に基づいて検出することができ、鉗子2の位置は第2の位置センサ82に基づいて検出することができるが、両者はトランスミッタ71を基準とした位置となる。このため、トランスミッタ71を基準とした夫々の絶対位置に基づいて鉗子2を感知することになる。つまり、第1の位置センサ81と第2の位置センサ82との間の距離が所定範囲ARの中に入っていれば、鉗子2は所定範囲ARに入っていると判定できる。判定部73に、予め所定範囲ARの情報を記憶しておき、判定部73に接続される第1の位置センサ81及び第2の位置センサ82から出力される内視鏡1と鉗子2との位置の差分と、予め記憶している所定範囲ARの情報とを比較する。この結果、鉗子2が所定範囲ARに入っているか否かを判定する。
そして、鉗子2が変位したか否かは、第1の位置センサ81と第2の位置センサ82との差分に変化が生じたか否かに基づいて判定できる。以上により、(1)鉗子2が所定範囲ARに入っており、(2)鉗子2が変位している、と判定した場合には、鉗子2を感知したものとして、第2のCPU64に対して鉗子2を感知した旨の信号を出力する命令を出し、信号出力部74は命令に従って、第2のCPU64に信号を出力する。
第2のCPU64は、この信号を入力すると、第1のCPU55から出力される画像メモリ62の更新作業の中断の旨の信号を受け取らないように制御する。つまり、フリーズスイッチ58が押下されたときに、第1のCPU55から画像メモリ62の更新作業の中断の信号を第2のCPU64が受け取ることにより、画像メモリ62に対して第2のCPU64が更新作業の中断の命令を出し、画像メモリ62が更新作業を中断することにより、モニタ3Mに静止画が表示される。そこで、信号出力部74から信号が出力されている場合には、第1のCPU55からの信号を第2のCPU64が受け取らないように制御することにより、画像メモリ62の更新作業は中断されず、常にモニタ3Mには動画表示されることになる。
そして、処置具感知部7が鉗子2を感知している間は、モニタ3Mには常に動画表示するように制御するため、信号出力部74からの信号を第2のCPU64が入力している間は、第1のCPU55からの信号を受け取らないように制御する。これにより、モニタ3Mには常に動画表示することができる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態とは異なり、本実施形態では、内視鏡の先端から鉗子が突出したことを検出したことにより、処置具感知部が鉗子を感知するために、処置具通過検出手段としての鉗子通過センサ91を設けている。図7に示すように、鉗子通過センサ91は、1対の投光部92と受光部93とを有して構成され、投光部92は内視鏡1の処置具挿通路14に、受光部93は鉗子2に設けている。投光部92と受光部93とは、夫々鉗子2(正確には鉗子2の鉗子部23の先端)が内視鏡1の先端面1Tから突出したときに、受光可能な位置に配置する。
これにより、鉗子2が内視鏡1の先端面1Tから突出したときに、投光部92からの光を受光部93が受光すると、受光部93が感知した旨を処置具感知部7の判定部73に出力する。ことにより、鉗子2を感知する。そして、鉗子2を感知することにより、モニタ3Mは動画が表示される制御が行われることになる。以上のような処置具通過検出手段を設ければ、少なくとも内視鏡1の先端面1Tから鉗子2が突出したときに、鉗子2を感知して、モニタ3Mの表示を動画表示にする制御を行うことができる。