JP5029854B2 - 二枚貝等の底棲生物の養殖装置 - Google Patents

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Description

本発明は、二枚貝等の底棲生物の養殖装置に関するものであり、とくに、アサリやハマグリ、シジミのように潮流にさらされる環境で生息している底棲生物を養殖するために使用される装置に関するものである。
アサリ、ハマグリ、シジミ等に代表される二枚貝類は、わが国の代表的な大衆魚介類であり、庶民が安価に取れる水産タンパク源である。しかし今日、海域の水質汚染、沿岸の護岸工事等による砂浜と干潟の減少等により、資源量及び漁獲量は激減している。現在、二枚貝類の資源量及び漁獲量を確保するため、各地で養殖が行われているが、その養殖方法の多くは、稚貝を海浜に人為的に撒いて自然環境の中で育成させるものである。しかし、このような従来の養殖方法は、海域の環境変化に影響され、生産コストも決して安価ではなく、かつ安定した量を市場に供給できない。
一方、二枚貝の環境に及ぼす作用をみると、二枚貝の摂餌方法は、海水中に浮遊懸濁している微細な植物プランクトンやそれらの破片であるデトライタスをエラによって濾過し、その濾過能力をみると、殻長3cm程度のアサリで一日当たり海水約3リットルを濾過しており、富栄養化物質を除去する海域浄化に貢献している。
従来の貝類養殖装置として提案されている技術を大きく分類すると、海中養殖と陸上養殖とに分けられる。海中での養殖装置は稚貝を付着させる板等を網で囲んで海中に下ろして育成させるため、自然な生息状態に比較的近い環境を整え易いというメリットがある(特許文献1及び特許文献2参照。)。しかし、二枚貝類は売価が安いということもあり、生産コストが課題となって養殖魚介類としては低位に留まっている。とくに、陸上養殖に至ってはコスト面が課題となってほとんど実施されていないのが現状である。
例えば、特許文献3には、陸上におけるアワビの養殖施設が記載されている。このアワビの養殖施設は、アワビの飼育水槽を多段に設置し、この飼育水槽に海水を供給する給水管とオーバーフロー管を備え、さらに飼育水槽に給気管及び給餌場が付設されている。そして、ポンプで給水管に海水を流入させると共に、オーバーフロー管を下げることによって海水を下段の水槽へ流し、海水の流動を促進させる。また、給気管にはブロアーで空気を吸入し、圧縮空気を泡状に噴出させる。これにより溶存酸素の補給を行うようになっている。
特許第3913669号公報 特許第3979746号公報 特許第3493357号公報
しかしながら、従来の貝類の陸上養殖装置では、貝類が生息しているような潮通しがよくてきれいな環境を実現することが難しい。具体的には、水が淀みやすいために水中の溶存酸素量が減少し、残餌や排泄物を除去することが困難で病気に罹り易いという問題があった。本発明は、自然環境に委ねるしかなかった従来の養殖技術が抱える課題を解決するものであり、二枚貝等の底棲生物を安価かつ安定して市場に提供することができるばかりでなく、新鮮な水の流れを造り、自然の生息環境に近い環境を整え、単位面積当たりの育成数量を増加することができる養殖装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の二枚貝等の底棲生物の養殖装置は、水槽又は水域中に浸漬されると共に、二枚貝等の底棲生物の育成床となる複数の皿状容器を鉛直方向に階層し、当該階層育成床を鉛直方向に貫通する中央空洞及びこの空洞と通ずる各育成床間に水平方向の間隙を画成したことを第1の特徴とする。また、皿状容器を分割可能に構成したことを第2の特徴とする。さらに、装置内外へ水を流動するべく、気泡発生器若しくは水流発生器を備えたことを第3の特徴とする。さらにまた、水槽又は水域中に給排水管及び弁を備え、当該水槽又は水域の水位及び給排水量を調整可能にしたことを第4の特徴とする。
従来の海浜を利用した養殖方法が、いわば「平屋建ての住宅」であるのに対し、本装置は「高層の集合住宅」といえ、生産効率を飛躍的に高めるものである。さらに、生産効率を高めるため、階層した育成床を鉛直方向に貫通する中心空洞及びこの空洞と通ずる各育成床間に水平方向の間隙を設け、装置内の水の流動を促進させる。さらに、本装置内外へ水がより流動するよう、気泡発生器若しくは水流発生器を設置する。さらに、人為的に育成環境を制御するため、給水管及び弁を備えた水槽に納め、水槽の水位及び水槽の給排水量を調整する。これにより、水槽内の汚濁物や餌量の調整を可能とし、より生産効率を高めることができる。
さらに、このような給排水管及び弁を備えた複数の水槽を、管により連結すると、大規模な養殖プラントに発展させることができ、生産効率は飛躍的に高まる。また、このプラントにおいて、排水側の配管にサイフォン管を採用して連結すれば、水槽内の水位が自然に上昇下降し、人工的に干潮満潮を再現できることから、養殖対称に適した干出時間の調整が容易にできる。
とくに、陸上養殖を可能とするが、海浜養殖においても利用が可能であり、総合的なプラントとして有用である。また、本装置は、一台から数千台といった大規模なシステムまで構成が可能であることから、単に水産養殖の分野に留まらず小規模な飲食産業、レジャー産業から巨大生産工場までその利用範囲は広い。
本発明に係る養殖装置の一実施例を示すスケルトン斜視図である。 本発明に係る養殖装置の他の実施例を示すスケルトン斜視図である。 本発明に係る養殖装置の他の実施例を示すスケルトン斜視図である。 育成皿(育成床)を示す斜視図である。 本発明に係る閉水状態を示す養殖装置の縦断面図である。 育成皿(育成床)の要部断面図である。 育成皿(育成床)間の間隙を示す要部断面図である。 育成皿(育成床)間の間隙を示す要部断面図である。 養殖装置への下部からの給水状態を示す縦断面図である。 養殖装置への上部からの給水状態を示す縦断面図である。 養殖装置に水槽を使用しない例を示す縦断面図である。 本発明装置を使用した養殖プラントの模式図である。 本発明装置を使用した養殖プラントの模式図である。 本発明装置を使用した養殖プラントの模式図である。 本発明装置を使用した養殖プラントの模式図である。 本発明装置を使用した養殖プラントの模式図である。
本発明に係る養殖装置1は、図1及び図2に示すように、円形の育成皿2を多段に複数枚積層して、その上部よりも下部が縮径したカップ状の水槽3に収容して構成される。積層された育成皿2の中央部は水槽3内で底部から上部まで円管状の中央空洞4が形成される構造となっている。
ここで、育成皿2は、円周方向に扇状に分割された4つの貝収容部2aを組み合わせて構成されており、貝収容部2aの底面にはパンチングメタルあるいはメッシュフィルター等の網体2bが張設されている。そして、育成皿2を鉛直方向に積層することで、育成皿2の弧状凹所2cが階層して中心軸線上に円管状の中央空洞4が画成されるようになっている。このように育成皿2を分割して構成することで観察や収穫を容易に行うことができる。
さらに、図2に示す装置は、この円管状の中心空洞4内に円筒管5を差し入れ係合させた構造となっている。円筒管5の表面任意箇所には、育成皿2の接触面の弧凹所2cの係合ディンプル2dに雌雄嵌合する突起5aが形成されている。
図3に示す養殖装置1は中央空洞4を錐形板2eの積層によって区画形成する構成となっている。このように、中心空洞4の形状は上述のような円管形に限定されるものではなく、例えば矩形管形でも楕円管形でも構わない。また、各実施例装置の底部は空間ができるように上げ底構造となっているが、使用状況によっては底面を基端としても構わない。
本実施例に係る育成皿2は、図1に示すように扇状に分割されているが、円形の一体構造としてもよく、使用時、作製時の状況に応じて適宜変更が可能であり、その機能が発揮できる構造体であれば、その形状は限定されない。また、上述したように、貝収容部2aの底部は、穴開きパンチング構造、あるいはメッシュフィルター構造となっており、育成に使用される海水、淡水が通過できる構造となっているが、使用状況によっては底板を水が浸透しない構造としても構わない。
本発明装置の最大の特徴は、育成皿2を多段に階層したときに積層体の中心軸上に煙突様の中心空洞4が画成されることにあり、育成皿2の外周縁は、重ね合わせたときに隙間Dができる構造とされている点にある。尚、本実施例では、育成皿2の外形を円形で説明しているが、その機能、作用が維持されるなら、楕円でも矩形でもよい。
また、本実施例では、アサリ、ハマグリ等の底棲二枚貝を養殖する場合について説明しているが、育成する底棲生物はこれらに限定されず、牡蠣、シジミ貝等の淡水で成長する貝類についても適用できる。
各段の育成皿2には、図4に示すように、対象貝類Sに適した砂等の育成培地6を皿の上部まで敷き詰め、そこにアサリ、ハマグリ等の育成対象貝類Sを載置する。アサリ、ハマグリは装置稼動後に自ら潜砂して安定生息状態となる。
本発明に係る養殖装置1は、育成皿2を水槽3内に多段に組上げた後に注水する。つまり、本養殖装置1は砂浜海岸を階層した構造となり、装置の設置面積に対する養殖培地6の面積を飛躍的に引き上げている。尚、養殖装置1内で貝類を育成するためには、海水を流動させる必要があり、海水を流動させるためには、下記に詳述する方法が採用されるが、利用状況に合わせて選択、またこれらを合成した手法を用いても構わない。
ここで、微小気泡による曝気、すなわちエアレーションによる上昇流と水槽3の下部からの給水による水槽内の水流の動きを説明する。図5に示すように、水槽3内にある海水W及び給水された海水Wは、気泡の上昇力と給水された水圧で中心部空洞4内を上昇するが、その際に各段の育成皿2の中心開口部から流動する海水Wの連行作用によって、各育成皿2の段間の間隙Dに存在する海水Wが空洞4に吸い込まれていく。空洞4に吸い込まれた海水Wは、空洞4内を他の間隙Dから吸水された海水Wと共に水槽3の上部まで到達した後に当然排出されるが、その他の海水Wは育成皿2と水槽3の壁面間の間隙Dから各階層の間隙Dに戻り循環流を形成する。また、育成皿2に敷き詰めた砂等の養殖培地6の空隙を浸透濾過して下段の間隙Dに流動する。これにより、酸素を十分含んだ水流を効率的に供給でき、呼吸がし易く潮通しのよい生息環境を提供することができる。
図6は、二枚貝Sが潜砂した状態の育成皿2の断面を示したものである。二枚貝Sの本体は潜砂した砂6中にあるが、呼吸のため溶存酸素の取り込みと餌である海中の懸濁態有機物の取り込みは、入水管Sa及び出水管Sbを砂6上に露出して砂面直上の海水Wから吸水、濾過摂食する。したがって、これら二枚貝Sが生息するための重要な条件は、砂面直上の育成環境をいかに良好にするかということである。例えば、アサリは砂面直上数センチ程度の幅の海水しか吸水することができない。それより上層にどれだけ良い海水があろうが、餌があろうが関係ない。
図7及び図8に示すように、養殖装置1は各育成皿2段間の間隙Dに、中央空洞4方向に連通される海水Wの捕流で常に流れが発生することになり、間隙Dの間隔幅を調整することで、その流速を変化させることができ、育成する底棲生物の種別に応じた最適な流速を設定することができる。加えて、間隙Dの幅を狭くすることで、育成する底棲生物が利用可能な範囲の水深を保持すればよく、より少ない海水量で効果的に溶存酸素や懸濁態餌量を供給することができる。本装置1ではエアホース8から送気した空気を散気ブロアー7を使用して微小気泡を中央空洞4の下方で発生させてエアレーションし、上昇流を発生させているが、このエアレーションは海水中の溶存酸素の供給にも資している。
一方、砂6には、海水からの沈降物と、育成貝の糞や偽糞といわれる口から直接吐き出される凝集有機物態が砂中に吐き出され堆積してくる。これらの有機汚物は砂6中のバクテリアによって分解されることになるが、砂6中に十分酸素が無いと、嫌気性の分解過程を経て、生息生物にとって有害な硫化水素等の汚染物質が増加して、いずれは育成生物が生息できなくなる。これを回避するためには、砂6中にも十分な酸素を供給し続ける必要がある。また、バクテリアによる分解によって生成された物質をできるだけ蓄積させないように、溶出、洗い出し作用を継続させる必要がある。本装置1では、各育成皿2段間の間隙D内に常に水流が発生するので、間隙Dの天井部、つまり育成皿2の底部のパンチ穴やメッシュフィルターも洗浄される。
このように、間隙Dが肝要な働きをしており、間隙Dの幅はできるだけ狭い幅を取ることで少量の海水で効果的な流速を発生させることができ、溶存酸素及び餌量の運搬を可能にする。当然、水槽3内の海水を交換しなければ汚染物質の濃度は上昇する。汚濁状況に応じて水槽3内の海水は交換する必要があるが、水槽3内の育成生物Sに利用される海水の比率は非常に高いために、無駄な海水の交換の比率を下げることができ、結果的に、より少量な海水交換量で済み、海水を供給するポンプ等の設備費やコスト削減につながる。
また、海水中の餌量は育成生物Sの摂餌活動で減少していくので、減少に応じた分の微細藻等の餌の供給は必要となるが、供給海水中、あるいは水槽3内海水中に十分な餌量や酸素が存在していれば、敢えて餌量や酸素を供給する必要はない。また、生育期間が短くて良い場合は、水槽3の外部から海水の注入をしない独立循環型での利用も可能である。
図9は、水槽3の外部からの給水法を示している。これによれば、供給海水中の溶存酸素及び餌量が十分であれば、エアレーションせずとも所期の効果を得ることができる。排水は水槽3上部からオーバーフローさせても、上部排水管5から排水させてもよい。もちろん、中央空洞4内で微小気泡を発生させて、エアーリフト方式で空洞内上昇流を促進させると水槽内循環流の効率が高くなることは前述のとおりである。
図10には、中央空洞4の上部より海水を注入する方法を示している、この場合は、中央空洞4の上部を水槽3の水面より嵩上げする必要がある。この方法では、中央空洞4の上昇流とその連行作用は発生しない。逆に、中央空洞4内に供給される海水Wを各段間隙D内に分配することになるが、溶存酸素、餌の供給といった作用は、前述の方法と同様である。この方法は、水槽3外から海水が十分に供給可能であり、供給体に溶存酸素や餌量といった物質が豊富に含まれている場合に有効である。
上記いずれの方法も、養殖培地6に海水Wを効果的に接触、循環させることができ、底部一面利用の従来の海浜利用養殖に比較して、育成床を階層して立体化することで、単位面積当たりの個体収容密度を飛躍的に高めることができる。
図11は、水槽3を使用することなく、育成皿2のみを使用する方法を示している。本発明の要旨は、各育成皿2間の間隙Dに潮流が発生することである。したがって、この機能が発揮されれば、敢えて循環流を発生させなくても所期の養殖効果は得られる。つまり、陸上養殖であれば水槽3は必須であるが、内湾や漁港内に階層した育成皿2のみを沈降して、中央空洞4内に上昇流又は下降流を発生させるものでもよい。
以下、本発明装置を使用した養殖プラントについて説明する。ここでいうプラントとは、育成皿2のみ又は水槽3を含む養殖装置1を複数連結して使用するシステムを指している。その連結法は大別すると、使用する水(海水、淡水、汽水等が考えられるが、ここではこれらの代表呼称として「海水」を使用する。)を常に駐留あるいは貯水した状態で使用するシステム(ここでは、貯水システムと呼ぶことにする)と通常の干潟、砂浜で見られる干潮、満潮現象を取り入れた貯水状態と干潮、干出状態を繰り返すシステム(ここでは、干満システムと呼ぶことにする)である。
貯水システムプラント:
図12(a)は、育成皿2を水槽3内に複数枚積層した養殖装置1の水槽3の下部より餌を含んだ海水Wを水槽3内に供給し、常時貯留させた状態で水槽3からオーバーフローした海水Wを排水パイプ11に排出するシステムである。この貯水システムの特徴はブロアー7によって中央空洞4内に上昇流を発生させるエアレーションを併用するシステムで、水槽3下部から各水槽3に個別に海水Wを供給するために、例えば、各水槽3の育成生物の個体収容密度が異なっている場合や、稚貝育成水槽と成貝育成水槽が同一システム内に混在している場合に、供給する微細藻等餌量の調整を海水供給量で調整する場合などに有効である。海水Wはある程度循環流により繰り返し各段間の間隙Dを流通することができる。この作用を活かすためには給水量を極力抑えながら供給することで、育成生物に利用されなかった海水Wを無駄に排水することを抑制することができ、且つ、給水バルブ10の操作だけで各水槽3の海水交換率を独立して調整することができる。
図12(b)は、海水が給水される上流側の水槽3Aの上部排水口3aと、下流側の水槽3B及び3Cの下部給水口3bを順次連結したプラントを示すものである。供給された海水Wは上流側水槽3Aから下流側水槽3B及び3Cに向けて流れ、上流側水槽3Aから順次使用されていくために、下流側水槽3B及び3Cに行くにしたがい海水中の餌量は減少していき、培地6から海水中に溶出した汚濁物質も下流側水槽3B及び3C行くにしたがって、濃度が増加してしまう。しかしながら、給水設備及び排水設備が比較的簡単、省部材化が図れるという利点がある。
図12(c)に示すプラントは、中央空洞部4の水面より高い位置から中央空洞部4内に落水させて給水するものである。これにより、中央部空洞4内には給水量に応じた下降流が発生し、各育成皿2段間の間隙には中央空洞部4より分配流が供給されることになり、エアレーションが不要になる。この方法は供給海水量(溶存酸素及び餌を含む)が比較的豊富に使用できる場合に有効であり、また、循環流が発生しないために、供給された海水Wは装置1内を一度しか通過しないことになる。このため育成生物Sに利用されなかった餌が混入した排水は多くなるが、育成生物Sは常に新鮮な海水に晒されるという利点がある。
干満システムプラント:
図13は各水槽33A、3B及び3Cの下部同士を給水パイプ9の枝管9aで連結したプラントを示すもので、最後尾の水槽3Cの排水パイプ11の枝管11aは逆U字型でサイフォンの原理を利用して排水されるようになっている。したがって、当初、給水が始まると、全水槽3A、3B及び3Cがほぼ同じ水位で水面が上昇していき、排水パイプ11の枝管11aの上部まで水面上昇が継続される。その後、水面が排水パイプ11の枝管11aの最高位置まで到達した時点で排水が始まり、水位は低下し始める。水面が排水パイプ11の枝管11aの取水口まで低下すると、外気を吸入して排水は停止し、再度全水槽3A、3B及び3Cがほぼ同時に水面上昇に転ずる。その後はこの水面の上昇と下降を繰り返す。水面の上昇下降の水位変動の時間は、供給海水量の給水スピード及び排水パイプ11の枝管11aの管径または給水を間欠的に行うかどうかで調整できる。
図14は各水槽3A、3B及び3Cを逆U字型パイプ(以下、排水サイフォンという)12で連結したプラントを示すものである。この方式は各水槽3A、3B及び3Cに排水サイフォン12を給水パイプとして採用したものであり、各水槽3A、3B及び3Cの水位変動には位相差が生じる。つまり、給水側上流の第1水槽3Aが満水位Lに到達すると、第1水槽3Aの排水サイフォン12が第2水槽3Bに給水を開始して、第2水槽3Bが水位上昇すると共に第1水槽3Aの水位が低下する。そして、第1水槽3Aと第2水槽3Bの水位が一致した時点で、両水槽3A及び3Bが同水位で満水位L(図中、二点鎖線で示す水平線)まで水位の上昇に転ずる。そして、これらが満水位Lになった時点で第3水槽3Cへの吸水が開始され、順次下流側水槽3B及び3Cへ海水Wの供給が同じ状態で移動していく。
そして、最後尾の水槽3Cが満水位Lになると、最後尾水槽3Cの排水サイフォン12から全水槽3A、3B及び3Cの排水が最後尾排水口より開始される。各水槽3A、3B及び3Cの最低水位は、最後尾水槽3Cの排水量と最上流水槽3Aの給水量の差で変化するが、排水量が給水量より多い場合は、最後尾水槽3Cの排水口3bまで水位が低下した後に、最後尾排水口3bに外気が入り込んで排水はストップする。その後、最上流水槽3Aより貯水が始まり、順次下流側水槽3B及び3Cに移動することを繰り返すことになる。このプラントは、下流側水槽3B及び3Cに行くにしたがって、干出時間が長くなる。また、上層段の育成皿2のほうが干出時間が長くなる。したがって、長い干出時間好む育成種と短い干出時間好む育成種など、性質の異なる育成種を同一プラント内に混在して養殖する場合に適している。
図15に示すプラントは、図14に示したプラントとほぼ同じであるが、最後尾の水槽3Cの排水サイフォン方式をオーバーフロー管12と制御型調整バルブ13に変更したものである。また、給水側も同様に制御型調整バルブ13で任意に給水と排水を行うことができるようになっている。この方式は叙述してきた自然な物理現象を利用するのではなく、完全に人為的に給排水及び水位変動を制御するものであり、干出時間を自由に制御できる。したがって、育成生物の特性、あるいは餌量の消費量に応じて干出時間を調整することが可能となる。
図16は、育成皿2を同一プール14内に組み込んだプラントを示すものである。この場合の干満水位の制御は、プール14全体の給水管14a、排水口14bで行うことになるが、各育成皿2に対して個別の水槽及び配管システムが要らなくなる。また、水質の汚濁速度は個別に水槽3を使うシステムより緩和することができる。このプラントを自然海の干満差で利用する場合は、積層した育成皿2だけを海岸などの自然の干満潮が発生する場所に設置することで利用可能となる。
1 養殖装置
2 育成皿(育成床)
2a 貝収容部
2b 網体(パンチングメタル又はメッシュフィルター)
2c 弧状凹所
2d 係合ディンプル
2e 錐形板
3 水槽
3A 第1の水槽(上流側)
3B 第2の水槽(中間)
3C 第3の水槽(下流側)
4 中央空洞
5 円筒管
5a 弧状凹所との係合突起
6 養殖培地(砂層)
7 散気ブロアー
8 エアホース
9 給水パイプ
9a 給水パイプの枝管
10 給水バルブ
11 排水パイプ
11a排水パイプの枝管
12 排水サイフォン又はオーバーフロー管
13 制御型調整バルブ
14 プール
14a給水管
14b排水口
S 二枚貝(底棲生物)
Sa 入水管
Sb 出水管
育成皿間の間隙
育成皿と水槽壁との間隙

Claims (4)

  1. 水槽又は水域中に浸漬されると共に、二枚貝等の底棲生物の育成床となる複数の皿状容器を鉛直方向に階層し、当該階層育成床を鉛直方向に貫通する中央空洞及びこの空洞と通ずる各育成床間に水平方向の間隙を画成したことを特徴とする二枚貝等の底棲生物の養殖装置。
  2. 皿状容器を分割可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の二枚貝等の底棲生物の養殖装置。
  3. 装置内外へ水を流動するべく、気泡発生器若しくは水流発生器を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の二枚貝等の底棲生物の養殖装置。
  4. 水槽又は水域中に給水管及び弁を備え、当該水槽又は水域の水位及び給排水量を調整可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の二枚貝等の底棲生物の養殖装置。
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