ところで、上記のような構成の鉄骨造の二重床構造31にあっては、鉄筋コンクリート造の二重床構造よりも静剛性が低く、鉛直方向の振動に対する減衰力が小さいため、図14に示すように、固有振動数における振動振幅の増幅が大きく(動剛性が低く)なる。このため、振動を嫌う精密機器等を上部床45の床面上に設置する場合には、大梁34を支持する柱38のスパンを短くしたり、大梁34等に梁成の高い部材を使用して全体の静剛性を高めなければならず、設置費用が嵩むとともに、上部床45と床スラブ25との間の空間が狭くなり、配線や配管等の空間として使用する場合に使用性が悪くなる。
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、全体の静剛性を高めることなく、鉛直方向の振動を効率良く減衰することができて、固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を効果的に抑制することができ、これにより設置費用を安く抑えることができるとともに、床下の空間の使用性を高めることのできる二重床構造を提供することを目的とする。
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、建物躯体の床スラブの上部に設置される二重床構造であって、前記床スラブの上方に所定の間隔をおいて水平に配置される水平構面と、前記床スラブの上部に設置されて前記水平構面を支持する鉛直構面とを備え、前記鉛直構面は、自重を除く長期荷重及び短期荷重を設計上負担しない補助部材を備え、該補助部材と前記水平構面との間に、前記水平構面の鉛直方向の振動を減衰する減衰手段を介装させたことを特徴とする。
本発明による二重床構造によれば、水平構面に生じる鉛直方向の振動は、水平構面と鉛直構面との間に介装されている減衰手段によって減衰されることになるので、水平構面及び鉛直構面の静剛性を高めることなく、水平構面の固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができる。
また、水平構面に生じる鉛直方向の振動は、鉛直構面の補助部材と水平構面との間に介装されている減衰手段によって減衰されることになるので、水平構面及び鉛直構面の静剛性を高めることなく、水平構面の固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の二重床構造であって、前記補助部材は、一端が前記鉛直構面の一部に又は前記鉛直構面に隣接する前記床スラブの部分に剛結合され、他端が前記減衰手段に剛結合されていることを特徴とする。
本発明による二重床構造によれば、水平構面に生じる鉛直方向の振動を減衰手段に確実に伝達させることができるので、水平構面及び鉛直構面の静剛性を高めることなく、水平構面の固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の二重床構造であって、前記減衰手段は、前記水平構面の鉛直方向の振動を減衰する粘弾性体を備えていることを特徴とする。
本発明による二重床構造によれば、水平構面から減衰手段に入力される鉛直方向の振動は、減衰手段の粘弾性体のダンピング特性によって減衰されることになるので、水平構面の固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができる。
請求項4に係る発明は、請求項1から3の何れかに記載の二重床構造であって、前記水平構面は、前記床スラブの上方に水平に設置される複数の大梁と、対向する大梁間に水平に架設される複数の小梁と、前記大梁及び前記小梁の上部に設けられる床パネルとを備え、前記鉛直構面は、前記床スラブの上部に立設されて前記大梁を支持する複数の柱と、該各柱の一部と前記大梁との間、又は該各柱の下端に隣接する前記床スラブの部分と前記大梁との間に斜めに架設される前記補助部材とを備え、前記補助部材と前記大梁との間に前記減衰手段を介装させたことを特徴とする。
本発明による二重床構造によれば、鉛直構面の補助部材と水平構面の大梁との間に介装されている減衰手段によって水平構面の鉛直方向の振動を減衰することができるので、鉛直構面の柱のスパンを短くしたり、水平構面の梁成を高くしたりして全体の静剛性を高めることなく、水平構面の固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができる。
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の二重床構造であって、前記隣接する柱間には、つなぎ材が水平に架設され、該つなぎ材と前記柱との連結部近傍に前記補助部材の一端を剛結合させたことを特徴とする。
本発明による二重床構造によれば、つなぎ材と柱との連結部近傍に補助部材の一端が剛結合され、補助部材の他端と大梁との間に減衰手段が介装され、この減衰手段によって水平構面に生じる鉛直方向の振動が減衰され、水平構面の固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)が抑制されることになる。
請求項6に係る発明は、請求項4又は5に記載の二重床構造であって、単一の前記鉛直構面に配置された少なくとも2つの前記補助部材間、又は当該補助部材と前記減衰手段との連結部近傍間に、他のつなぎ材が水平に架設されていることを特徴とする。
本発明による二重床構造によれば、他のつなぎ材により補助部材間、又は当該補助部材と前記減衰手段との連結部近傍間が連結されるので、水平構面に生じる鉛直方向の振動が効率的に減衰され、水平構面の固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)が抑制されることになる。
請求項7に係る発明は、請求項1から3の何れかに記載の二重床構造であって、前記水平構面は、前記床スラブの上方に水平に設置される複数の大梁と、対向する大梁間に水平に架設される複数の小梁と、前記大梁及び前記小梁の上部に設けられる床パネルとを備え、前記鉛直構面は、前記床スラブの上部に立設されて前記大梁を支持する複数の柱と、前記複数の柱の間にて、前記大梁に向けて前記床スラブの上部に鉛直方向に立設される前記補助部材とを備え、前記補助部材と前記大梁との間に前記減衰手段を介装させたことを特徴とする。
本発明による二重床構造によれば、鉛直構面の補助部材と水平構面の大梁との間に介装されている減衰手段によって水平構面の鉛直方向の振動を減衰することができるので、鉛直構面の柱のスパンを短くしたり、水平構面の梁成を高くしたりして全体の静剛性を高めることなく、水平構面の固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができる。
請求項8に係る発明は、請求項4から7の何れかに記載の二重床構造であって、前記鉛直構面を構成する前記複数の柱のスパンが長方形の短辺又は長辺をなすように前記複数の柱が配置されており、前記減衰手段は、前記長辺に属する部分にのみ配置されていることを特徴とする。
本発明による二重床構造によれば、水平構面に生じた鉛直方向の振動の長辺方向におけるモード(周波数)が励起されやすくなり、このモードは、長辺に属する部分の前記減衰手段によって効率的に減衰することができる。これによって、短辺に属する部分の減衰手段をなくすことができるので、製作費を安く抑えることができるとともに、水平構面と床スラブとの間に形成される空間をより広くとることができる。
請求項9に係る発明は、請求項4から8の何れかに記載の二重床構造であって、前記対向する大梁間には、小梁が格子状に架設されていることを特徴とする。
本発明による二重床構造によれば、対向する大梁間に小梁を格子状に架設しているので、大梁の剛性を全体の剛性に大きく寄与させることができ、水平構面の鉛直方向の振動を大梁と補助部材との間の減衰手段に効率良く伝達させて減衰することができ、水平構面の固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができる。
以上、説明したように、本発明による二重床構造によれば、水平構面や鉛直構面の静剛性を高めることなく、水平構面の固有振動における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を減衰手段によって抑制することができる。従って、鉛直構面の柱のスパンを短くしたり、水平構面の梁成を高くして全体の静剛性を高めることなく、固有振動数における振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制できるので、振動を嫌う精密機器等が設置されるクリーンルーム等に適用する場合であっても、安価な費用で要求される減衰機能を備えた二重床構造を提供することができる。
また、柱のスパンを短くしたり、梁成を高くしたりする必要がないので、水平構面と床スラブとの間の空間を広くとることができ、空間を配線、配管、空気循環、機器搬入等の空間として使用する場合の使用性、即ち床下空間の使い勝手を大幅に高めることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図3Aには、本発明による二重床構造の第1の実施の形態が示されていて、図1は二重床構造の全体を示す概略平面図、図2は図1の一部を示す概略斜視図、図3Aは減衰手段の一例を示す概略図である。
すなわち、この二重床構造1は、精密生産工場等のクリーンルーム等に適用したものであって、精密生産工場等の建物躯体の床スラブ25の上部に上部床21を設置し、この上部床21の床面上に各種の精密機器や生産設備を設置し、この上部床21の床面と床スラブ25との間に配線、配管、空調循環、機器搬入等のための空間18を形成したものである。
上部床21は、床スラブ25の上方に所定の間隔をおいて水平に設置される水平構面2と、床スラブ25の上部に垂直に設定されて水平構面2を支持する鉛直構面7と、水平構面2と鉛直構面7との間に介装される減衰手段10とを備えている。
水平構面2は、床スラブ25の上方に所定の間隔をおいて水平に設置され、床スラブ25の上方の部分を格子状に区画するH型鋼等の鋼材から形成される複数の大梁4と、各開口3を囲む対向する大梁4、4間に水平に架設され、各開口3を格子状に区画するH型鋼等の鋼材から形成される複数の小梁5と、各開口3を囲む大梁4及びその内側に架設される小梁5の上部に水平に設置される四角形板状の床パネル6とを備えている。なお、大梁4及び小梁5と床パネル6との間に必要に応じて根太(図示せず)を介装させてもよい。
鉛直構面7は、各開口3を囲む大梁4の交差部に対応する床スラブ25の部分にそれぞれ垂直に立設され、上端部で大梁4の交差部を支持するH型鋼等の鋼材から形成される柱8と、大梁4の中間部とその大梁4の両端部を支持する柱8の下端部との間にそれぞれ斜めに架設されるH型鋼等の鋼材から形成される補助部材9とを備えている。この補助部材9は、自重を除く長期荷重及び短期荷重を設計上負担しないものが好ましく、これにより、減衰手段10は、水平構面2の鉛直振動を効率的に減衰させるように設計できる。
この場合、補助部材9の一端部は、柱8の下端部に溶接等によって剛結合され、補助部材9の他端部と大梁4の中間部との間に後述する減衰手段10が介装されている。なお、補助部材9の一端部を、柱8の下端部に隣接する床スラブ25の部分にアンカーボルト等によって剛結合するように構成してもよい。これにより、水平構面2に生じる鉛直方向の振動を減衰手段10に確実に伝達させることができる。また、図2に示した第1の実施の形態の鉛直構面7にある補助部材9のように減衰手段10を介装させるための補助部材9が床スラブ25との間で三角形のトラス構造を形成している場合には、補助部材9の一端部と減衰手段10との結合、及び補助部材9の他端部と柱8の下端部との結合の一方又は双方に、ヒンジ、ピン継手等を用いたピン結合を採用してもよい。ピン結合採用可能箇所23を図12に示す。
減衰手段10は、図3Aに示すように、大梁4側に一体に連結される一方の部材11と、補助部材9側に一体に連結される他方の部材14と、一方の部材11と他方の部材14との間に介装される粘弾性体17とから構成され、一方の部材11と他方の部材14とが粘弾性体17を介して鉛直方向に相対変位可能に構成されている。
一方の部材11は、板状の取付け部12と、取付け部12の下面側に所定の間隔をおいて垂直に立設される一対の板状の外板13、13とからなり、他方の部材14は、板状の取付け部15と、取付け部15の上面側に垂直に立設されるとともに、一方の部材11の両外板13、13間に挿入される板状の内板16とからなり、内板16の両面と各外板13の内面との間に粘弾性体17がそれぞれ一体に設けられている。
なお、減衰手段10は、図3Aに示すものに限られることはなく、例えば図3Bに示すようなものであってもよい。図3Bに示す減衰手段10では、粘弾性体17が複数層になっている。また、図3Aや図3Bに示す減衰手段10では、内板16の枚数よりも外板13の枚数の方が多くなっているが、外板13の枚数よりも内板16の枚数の方が多くなっていてもよい。したがって、図3Aや図3Bに示す減衰手段10は、上下を逆にして配置することも可能である。
そして、上記のような構成の本実施の形態による二重床構造1において、上部床21の水平構面2上に設置される各種の生産設備等を作動させたり、水平構面2上を作業者等が歩行した場合等に、それらによる加振力が水平構面2に入力し、その加振力によって水平構面2に鉛直方向への振動が生じる。
この場合、水平構面2と鉛直構面7との間には減衰手段10が介装されているので、この減衰手段10の粘弾性体17のダンピング特性によって水平構面2に生じる鉛直方向の振動を減衰させることができる。従って、水平構面2の固有振動数における振動振幅が増幅されるようなことはなく、図4に示すように、振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができるので、水平構面2の上部に振動を嫌う精密機器等を設置した場合であっても、それらの精密機器等が鉛直方向の振動によって悪影響を受けるようなことはなく、それらの性能を充分に発揮させることができる。
また、水平構面2及び鉛直構面7の静剛性を高める必要がないので、鉛直構面7の柱8のスパンを小さくしたり、水平構面2の大梁4等の梁成を高くしたりする必要はなく、製作費を安く抑えることができるとともに、水平構面2と床スラブ25との間に形成される空間18を広くとることができるので、その空間18を配線、配管、空気循環、機器搬入等の空間として使用する場合の使用性、即ち床下空間の使い勝手を大幅に高めることができる。
図5には、本発明による二重床構造の第2の実施の形態が示されていて、この二重床構造1は、各開口3を囲む一方の対向する大梁4、4に対して、第1の実施の形態と同様に、補助部材9の他端部を大梁4の中間部に減衰手段10を介して連結し、他方の対向する大梁4、4に対して、補助部材9の他端部を大梁4の中間部よりも長手方向の端部側に寄った部分に減衰手段10を介して連結したものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。
そして、本実施の形態に示す二重床構造1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、水平構面2の上部に設置される各種の生産設備等を作動させたり、水平構面2上を作業者等が歩行した場合等に、それらによる加振力が水平構面2に入力し、その加振力によって水平構面2に鉛直方向への振動が生じることになる。
この場合、水平構面2と鉛直構面7との間には減衰手段10が介装されているので、この減衰手段10の粘弾性体17のダンピング特性によって水平構面2に生じる鉛直方向の振動を減衰させることができる。従って、水平構面2の固有振動数における振動振幅が増幅されるようなことはなく、図4に示すように、振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができるので、水平構面2の上部に振動を嫌う精密機器等を設置した場合であっても、それらの精密機器等が鉛直方向の振動によって悪影響を受けるようなことはなく、それらの性能を充分に発揮させることができる。
また、水平構面2及び鉛直構面7の静剛性を高める必要がないので、鉛直構面7の柱8のスパンを小さくしたり、水平構面2の大梁4等の梁成を高くしたりする必要はなく、製作費を安く抑えることができるとともに、水平構面2と床スラブ25との間に形成される空間18を広くとることができるので、その空間18を配線、配管、空気循環、機器搬入等の空間として使用する場合の使用性、即ち床下空間の使い勝手を大幅に高めることができる。
図6には、本発明による二重床構造の第3の実施の形態が示されていて、この二重床構造1は、大梁4を支持する隣接する柱8、8間に水平につなぎ材19を架設し、各開口3を囲む一方の対向する大梁4、4に対して、第1の実施の形態と同様に、補助部材9の他端部を大梁4の中間部に減衰手段10を介して連結し、他方の対向する大梁4、4に対して、補助部材9の他端部を大梁4の中間部よりも長手方向の端部側に寄った部分に減衰手段10を介して連結したものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。なお、補助部材9の一端部は、柱8のつなぎ材19との連結部に隣接する部分に連結されている。
そして、本実施の形態に示す二重床構造1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、水平構面2の上部に設置される各種の生産設備等を作動させたり、水平構面2上を作業者等が歩行した場合等に、それらによる加振力が水平構面2に入力し、その加振力によって水平構面2に鉛直方向への振動が生じることになる。
この場合、水平構面2と鉛直構面7との間には減衰手段10が介装されているので、この減衰手段10の粘弾性体17のダンピング特性によって水平構面2に生じる鉛直方向の振動を減衰させることができる。従って、水平構面2の固有振動数における振動振幅が増幅されるようなことはなく、図4に示すように、振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができるので、水平構面2の上部に振動を嫌う精密機器等を設置した場合であっても、それらの精密機器等が鉛直方向の振動によって悪影響を受けるようなことはなく、それらの精密機器等の性能を充分に発揮させることができる。
また、水平構面2及び鉛直構面7の静剛性を高める必要がないので、鉛直構面7の柱8のスパンを小さくしたり、水平構面2の大梁4等の梁成を高くしたりする必要はなく、製作費を安く抑えることができるとともに、水平構面2と床スラブ25との間に形成される空間18を広くとることができるので、その空間18を配線、配管、空気循環、機器搬入等の空間として使用する場合の使用性、即ち床下空間の使い勝手を大幅に高めることができる。
図7に、本発明による二重床構造及び従来の二重床構造の動剛性の解析結果を示す。
図7において、Aは、大梁と柱との間に補助部材を架設し、補助部材の両端部を大梁及び柱に剛接合した従来の二重床構造、Bは、大梁と柱との間に補助部材を設けていない二重床構造、Cは、本発明による二重床構造(大梁と柱との間に補助部材を架設し、補助部材と大梁との間に減衰手段(ダンパー)を介装させた二重床構造)の解析結果を示す。縦軸は剛性、横軸は周波数を示す。この解析結果から、本発明による二重床構造は、減衰手段を介装させることによって減衰性能が大幅に向上し、動剛性における固有振動数の落ち込みが大きく改善されていることが分かる。
図8には、本発明による二重床構造の第4の実施の形態が示されていて、この二重床構造1は、各開口3を囲む一方の対向する大梁4、4に対して、第1の実施の形態と同様に、補助部材9の他端部を大梁4の中間部に減衰手段10を介して連結し、他方の対向する大梁4、4に対して、補助部材9の他端部を大梁4の中間部よりも長手方向の端部側に寄った部分に減衰手段10を介して連結したものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。
また、本実施の形態では、図8に示すように、単一の鉛直構面7において互いに隣接するように配置された一対の補助部材9、9間がつなぎ材20で連結されており、この点が前記第2の実施の形態に示すもの(図5)と相違する。これにより、水平構面2と鉛直構面7との間に減衰手段10を介装させるための補助部材9の剛性を第2の実施の形態に示すものよりも高くすることができる。なお、つなぎ材20は、補助部材9、9間を連結することに代えて、減衰手段10の取付け部15、15間、すなわち減衰手段10と補助部材9との連結部近傍間を連結してもよい。
そして、本実施の形態に示す二重床構造1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、水平構面2の上部に設置される各種の生産設備等を作動させたり、水平構面2上を作業者等が歩行した場合等に、それらによる加振力が水平構面2に入力し、その加振力によって水平構面2に鉛直方向への振動が生じることになる。
この場合、水平構面2と鉛直構面7との間には剛性が高い減衰手段10が介装されているので、この減衰手段10の粘弾性体17のダンピング特性によって水平構面2に生じる鉛直方向の振動を第2の実施の形態に示すものよりもより効率的に減衰させることができる。従って、水平構面2の固有振動数における振動振幅が増幅されるようなことはなく、本実施の形態でも、図4に示すように、振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができるので、水平構面2の上部に振動を嫌う精密機器等を設置した場合であっても、それらの精密機器等が鉛直方向の振動によって悪影響を受けるようなことはなく、それらの性能を充分に発揮させることができる。
また、水平構面2及び鉛直構面7の静剛性を高める必要がないので、鉛直構面7の柱8のスパンを小さくしたり、水平構面2の大梁4等の梁成を高くしたりする必要はなく、製作費を安く抑えることができるとともに、水平構面2と床スラブ25との間に形成される空間18を広くとることができるので、その空間18を配線、配管、空気循環、機器搬入等の空間として使用する場合の使用性、即ち床下空間の使い勝手を大幅に高めることができる。
なお、第3の実施の形態と第4の実施の形態を組み合わせてもよい。すなわち、つなぎ材19とつなぎ材20とを併用してもよい。これにより、水平構面2に生じる鉛直方向の振動をさらに効率的に減衰させることができる。
図9には、上記第4の実施の形態の変形例が示されていて、この二重床構造1は、図8に示す柱8のスパン(梁間)を変更したものであり、具体的には、互いに隣接する一対の柱8、8間のスパンが長方形の短辺又は長辺をなすように柱8が配置されている。この結果、図9に示す二重床構造1では、水平構面2に入力された加振力によって生じた鉛直方向の振動の長辺方向におけるモード(周波数)が短辺方向のものに比べて励起されやすくなる。このようにして長辺方向においてモードが励起された振動も、水平構面2と鉛直構面7との間に介装された減衰手段10の粘弾性体17のダンピング特性によって減衰される。すなわち、本変形例においても、上記第4の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
すなわち、本変形例では、水平構面2に生じる振動のモードは、長辺方向とは相対的に短辺方向において励起されにくくなるので、短辺に配置すべき補助部材9及び当該補助部材9に結合すべき減衰手段10を省略することができる。具体的には、図9に示すように、短辺に配置すべき補助部材9の数を長辺に配置すべき補助部材9の数よりも少なくすることができ、より好ましくは、長辺に属する部分にのみ補助部材9及び当該補助部材9に結合する減衰手段10が配置される。これにより、製作費を安く抑えることができるとともに、水平構面2と床スラブ25との間に形成される空間18を上記第4の実施の形態よりもより広くとることができるので、その空間18を配線、配管、空気循環、機器搬入等の空間として使用する場合の使用性、即ち床下空間の使い勝手を大幅に高めることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の第5の実施の形態について説明する。
図1及び図10には、本発明による二重床構造の第5の実施の形態が示されていて、図10は図1に示す二重床構造の一部を示す概略斜視図である。また、図3Aには図10の減衰手段の一例が示されている。
すなわち、この二重床構造1は、精密生産工場等のクリーンルーム等に適用したものであって、精密生産工場等の建物躯体の床スラブ25の上部に上部床21を設置し、この上部床21の床面上に各種の精密機器や生産設備を設置し、この上部床21の床面と床スラブ25との間に配線、配管、空調循環、機器搬入等のための空間18を形成したものである。
上部床21は、床スラブ25の上方に所定の間隔をおいて水平に設置される水平構面2と、水平構面2と鉛直構面との間に介装される減衰手段10とを備えている。また、この二重床構造1において、水平構面2を支持する鉛直構面は、床スラブ25の上部に垂直に立設された複数の柱8によって設定される。
水平構面2は、床スラブ25の上方に所定の間隔をおいて水平に設置され、床スラブ25の上方の部分を格子状に区画するH型鋼等の鋼材から形成される複数の大梁4と、各開口3を囲む対向する大梁4、4間に水平に架設され、各開口3を格子状に区画するH型鋼等の鋼材から形成される複数の小梁5と、各開口3を囲む大梁4及びその内側に架設される小梁5の上部に水平に設置される四角形板状の床パネル6とを備えている。なお、大梁4及び小梁5と床パネル6との間に必要に応じて根太(図示せず)を介装させてもよい。
鉛直構面は、各開口3を囲む大梁4の交差部に対応する床スラブ25の部分にそれぞれ垂直に立設され、上端部で大梁4の交差部を支持するH型鋼等の鋼材から形成される柱8と、大梁4の両端部を支持する柱8の間にて、それぞれ大梁4に向けて床スラブ25の上部に鉛直方向に立設されるH型鋼等の鋼材から形成される補助部材としての間柱22とを備えている。この間柱22は、自重を除く長期荷重及び短期荷重を設計上負担しないものが好ましく、これにより、減衰手段10は、水平構面2の鉛直振動を効率的に減衰させるように設計できる。
この場合、間柱22の一端部は、床スラブ25にアンカーボルト等によって剛結合され、間柱22の他端部と大梁4の中間部との間に図3Aに示したような減衰手段10が介装されている。これにより、水平構面2に生じる鉛直方向の振動を減衰手段10に確実に伝達させることができる。なお、間柱22の一端部を床スラブ25と結合させるとしたが、間柱22の結合先は、床スラブ25に限られることはなく、床スラブ25のように剛性の高い部材であればいかなるものであってもよい。
減衰手段10は、図3Aに示すように、大梁4側に一体に連結される一方の部材11と、間柱22側に一体に連結される他方の部材14と、一方の部材11と他方の部材14との間に介装される粘弾性体17とから構成され、一方の部材11と他方の部材14とが粘弾性体17を介して鉛直方向に相対変位可能に構成されている。
一方の部材11は、板状の取付け部12と、取付け部12の下面側に所定の間隔をおいて垂直に立設される一対の板状の外板13、13とからなり、他方の部材14は、板状の取付け部15と、取付け部15の上面側に垂直に立設されるとともに、一方の部材11の両外板13、13間に挿入される板状の内板16とからなり、内板16の両面と各外板13の内面との間に粘弾性体17がそれぞれ一体に設けられている。
なお、減衰手段10は、図3Aに示すものに限られることはなく、例えば図3Bに示すようなものであってもよい。図3Bに示す減衰手段10では、粘弾性体17が複数層になっている。また、図3Aや図3Bに示す減衰手段10では、内板16の枚数よりも外板13の枚数の方が多くなっているが、外板13の枚数よりも内板16の枚数の方が多くなっていてもよい。したがって、図3Aや図3Bに示す減衰手段10は、上下を逆にして配置することも可能である。
そして、上記のような構成の本実施の形態による二重床構造1において、上部床21の水平構面2上に設置される各種の生産設備等を作動させたり、水平構面2上を作業者等が歩行した場合等に、それらによる加振力が水平構面2に入力し、その加振力によって水平構面2に鉛直方向への振動が生じる。
この場合、水平構面2と鉛直構面との間には減衰手段10が介装されているので、この減衰手段10の粘弾性体17のダンピング特性によって水平構面2に生じる鉛直方向の振動を減衰させることができる。従って、水平構面2の固有振動数における振動振幅が増幅されるようなことはなく、図4に示すように、振動振幅の増幅(動剛性の低下)を抑制することができるので、水平構面2の上部に振動を嫌う精密機器等を設置した場合であっても、それらの精密機器等が鉛直方向の振動によって悪影響を受けるようなことはなく、それらの性能を充分に発揮させることができる。
また、水平構面2及び鉛直構面の静剛性を高める必要がないので、鉛直構面の柱8のスパンを小さくしたり、水平構面2の大梁4等の梁成を高くしたりする必要はなく、製作費を安く抑えることができるとともに、水平構面2と床スラブ25との間に形成される空間18を広くとることができるので、その空間18を配線、配管、空気循環、機器搬入等の空間として使用する場合の使用性、即ち床下空間の使い勝手を大幅に高めることができる。
図11には、上記第5の実施の形態の変形例が示されていて、この二重床構造1は、図10に示す柱8のスパン(梁間)を変更したものであり、具体的には、互いに隣接する一対の柱8、8間のスパンが長方形の短辺又は長辺をなすように柱8が配置されている。この結果、図11に示す二重床構造1では、水平構面2に入力された加振力によって生じた鉛直方向の振動の長辺方向におけるモード(周波数)が短辺方向に比べて励起されやすくなる。このようにして長辺方向においてモードが励起された振動も、水平構面2と鉛直構面との間に介装された減衰手段10の粘弾性体17のダンピング特性によって減衰される。すなわち、本変形例においても、上記第5の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
すなわち、本変形例では、水平構面2に生じる振動のモードは、長辺方向とは相対的に短辺方向において励起されにくくなるので、短辺に配置すべき間柱22及び当該間柱22に結合すべき減衰手段10を省略することができる。具体的には、図11に示すように、短辺に配置すべき間柱22の数を長辺に配置すべき間柱22の数よりも少なくすることができ、より好ましくは、長辺に属する部分にのみ間柱22及び当該間柱22に結合する減衰手段10が配置される。これにより、製作費を安く抑えることができるとともに、水平構面2と床スラブ25との間に形成される空間18を上記第5の実施の形態よりもより広くとることができるので、その空間18を配線、配管、空気循環、機器搬入等の空間として使用する場合の使用性、即ち床下空間の使い勝手を大幅に高めることができる。