JP5027967B2 - 歯科用インプラント - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、歯科用インプラント及びそのシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
歯科用インプラントには、硬組織へ植立する部分と、義歯を装着する部分を歯肉上へ突出した状態にまで延ばした状態とするような2パート1回法インプラントと、硬組織へ植立する部分と、義歯を装着する部分を歯肉より隠れる高さとした2パート2回法インプラントがある。
2パート1回法インプラントは、植立体(フィクスチャー)を歯肉表面までの高さで埋入し、義歯部を装着するまで間、植立体に義歯部を接合する際用いられる接合孔を異物混入等を防止する為に覆っておく仮蓋体(ヒーリングキャップ又はヒーリングアバットメント)を歯肉上に突出した状態で露出して行う。この形態のインプラントは、手術が1回で済み、患者の肉体的・金銭的負担が2回法より少なく済む点でメリットがある。
【0003】
2パート2回法インプラントについては、図5で示すように歯肉部SNを切開し(HK1)、上述した植立体(フィクスチャー)52を骨内又は骨HKと同じ高さで埋入し(図5(a))、上述した仮蓋体(ヒーリングキャップ又はヒーリングアバットメント)51を取り付けて、完全に歯肉を閉じる(H)(図5(b))。ある一定期間をおいて、再度歯肉を切開(HK2)した後、仮蓋体51を外し(図5(c))、アバットメント53を装着する(図5(d))。
【0004】
この様なインプラントは、人工の歯が歯肉内部から立ち上がるため、より自然な感じがすることから審美性に優れ、又、義歯部を接合するまでの一定期間、食物の摂取などによるインプラントへの揺動が全くないことから、義歯を装着できる期間、安静な状態を保つのに都合が良いといったメリットがある。
【0005】
これら2パートのインプラントには共通した機構がいくつか具備される。例えばフィクスチャーとアバットメントとの接合部分には各々が回転しないような機構が施されている場合がある。これは口腔内において不特定方向からの加重によりフィクスチャーとアバットとの接合部分が緩み、アバットメントの脱落や固定ネジの破折などの事故を防止するためである。固定する機構については6角形状、8角形状、独自の形状、またフィクスチャー側が凸(エクスターナルタイプ)または凹(インターナルタイプ)とさまざま工夫されている。
【0006】
一方で2パート・インプラントの義歯作製方法は大変複雑である。口腔内に植立されたフィクスチャーを正確に義歯作製用模型に再現したのちに通常の義歯作製工程を経て義歯が完成する。義歯製造の要はこの義歯作製用模型に正確に再現する部分にあり、いろいろと工夫されている。一般的な再現方法としてはオープントレイ法、クローズドトレイ法の2種類に大分される。オープントレイ法はフィクスチャーと印象用冶具、ダミーを固定して模型を作製するため最も正確に口腔内を再現した石膏模型を作製することができる。しかし、口腔内印象用トレイを患者毎にオリジナルで作製しなければならない、操作が複雑であるなどの理由によりユーザーである歯科医からは敬遠される傾向にある。
【0007】
クローズドトレイ法はオープントレイ法と比べると比較的安易で臨床現場において評価は高い。しかし、一部ゴム弾性を使った再現手法を利用するため正確な位置に戻すという観点ではオープントレイ法よりも再現精度が落ちる。
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
フィクスチャーとアバットの接合部位における回転防止機構はインプラント成功のカギを握る重要な構成要素のひとつであるが、6角又は8角のかみ合わせによる回転防止機構はその応力が角の頂点に集中し、加工精度が悪い場合にはその機能を十分に果たさない。 また、長期間にわたるこのような応力は確実に金属疲労を起こし、頂点に集中した応力により、いずれ回転する危険性を含んでいる。この嵌め合い精度が許容しうる回転角は2度未満とされており、この角度以上回転する場合、いずれ回転又はアバットメントそのものが破折にいたる場合がある。
【0009】
破折にいたるケースにおいてアバットメントとフィクスチャーを固定するネジの緩みが原因と思われる例も多い。これは装着当初、嵌めあい精度が十分であったとしても長期間にわたる口腔内加重により固定用ネジが緩み、アバットメントとフィクスチャーが動揺することにより徐々にネジの破折を招くというメカニズムであると考えられる。固定ネジの締結力をトルクレンチ等で数値化し、同一の力で締結することを推奨するメーカーも多数存在するが、ネジの緩みに関する検討を行っているメーカーは少なく、また有効な固定ネジ緩み防止構造もない。
【0010】
そしてフィクスチャー植立後のヒーリングアバットメント装着時、またはアバットメント装着時に固定ネジを上手に装着できず、落下してしまう事故も多い。口腔内における作業スペースは限られた狭いスペースしかなく、この狭いスペース内で直径4mm程度、長さ10mm程度の細かい部品を直径2mm程度の固定用ネジで固定しなければならない。この様な状況では人的なミスが起きやすく、最悪の場合には固定ネジを患者が誤飲する危険性がある。この問題は患者の開口に依存し、是正するにはインプラントの機構的に工夫する以外、解決する道はない。
【0011】
この作業スペースは上部構造を製造するために必要な口腔内印象を取得する際にも問題となる。オープントレイ法においては長時間に渡り患者に開口を要求しなければ正確な口腔内印象を取得することは難しい。また、クローズドトレイ法においては手術時の煩わしさからは多少開放されるが、上部構造を作製する際に一部ゴム弾性を利用して模型化する方法をとるため、正確な模型が完成したか不安が残る。
【0012】
上記に鑑み本発明は、生体硬組織へ植立するためのフィクスチャーと上部接合体であるアバットメントとの接合面の形状を、円弧歯車状とすることで、回転防止機構を設け、その回転防止機構が嵌め合い精度の向上及び接合後の回転応力分散に効果のある歯科用インプラントを提供する。さらに、本発明では、ねじ山に少なくとも一つ以上の小さいネジ山を設けて、累合時、事実上複数の小さいねじ山を持ったねじ山が、累合相手のネジの谷部において弾性力を発揮して、固定ネジは緩みを防止することを可能とする。本発明は、固定ネジによる締結時及びヒーリングアバットの装着時にはフィクスチャーとの間に小さな突起部とこの突起部にした凹部を設け、当該突起部と凹部との結合により仮着した状態を形成する形態を提案する。また、この仮着構成は口腔内模型を作製するためのツールの固定にも利用する。これにより従来の歯科インプラントにはない、簡便且つ正確な模型を作製できる。
【0013】
以下に本発明の詳細を示す。
本発明における植立孔は、生体硬組織、則ち顎骨等、頭部口腔内周辺の骨組織であり、植立体は、この顎骨に孔を開けて、そこに挿入されるものであればよい。植立体は、主にチタン材が好適に利用されるが、その他の材質、アルミナ、ジルコニア、チタン合金、窒化チタン、等生体材料として使用されているものであれば適用可能である。又、この植立体の周辺にハイドロキシアパタイト等の生体に親和性を有する材料を被覆した複合的な材料や植立体の表面をチタン等生体適合性に優れた金属をプラズマ溶射等で修飾した複合的な材料においても好適に使用される。
【0014】
(a)ヒーリングアバアットメント、フィクスチャーの接続部における形状本発明におけるフィクスチャー、アバットメント接合部位の形状は6つ以上の円形状頂点を有する円弧歯車状の応力分散形状を呈する。当該形状によれば、トルク伝達用の端部において、中心軸線から半径方向内側に開かれた互いに同一曲率の複数(好ましくは8個)の半円弧曲面と、半径方向外側に開かれかつ前半円弧曲面の曲率よりも大きく且つ同数(好ましくは8個)の互いに同一曲率の円弧曲面が同一円周に沿って交互に配置される。そして、互いに隣接する前記2種類の円弧曲面の端部がそれぞれ互いに隣接方向に接合され、そのようにして形成された交互逆向きの大小2種類の円弧曲面からなる凸状と凹状とをフィクスチャーとアバットメント接合部位に備えた形状を示す
【0015】
この形状は通常の6角形または8角形の接合部位形状と比べてトルクに対する応力を分散する効果があり、それに伴う回転防止能などに優れている。当該形状において6つの凸状を有するものが最適とされている。
しかし、本発明では8角がもっとも好適に作用する。 これはこの接合部形状の持つ役割は回転防止、応力分散以外にもアバットメントを接合した際に決定する上部構造の方向も決定してしまうため、臨床現場において多くの角度を選択できるようにする必要が生じるためである。
更に本発明のフィクスチャーとアバットメントの接合面を形成する円弧歯車状は、図2で示すような場合において、好ましくは当該波形の外周方向の曲線の曲がりの程度が大きい大曲率円弧11と、内周方向の曲がりの程度の小さい小曲率円弧12の曲率が異なる様な、或いは、フィクスチャーの外周方向の大曲率円弧11の曲率:フィクスチャーの内周方向の小曲率円弧12の曲率=1:2となる様な構成(アバットメント側の接合面の形状はこの逆)と設定されることが好ましいが、この比率は、植立する部位や、インプラントの材質等、その他様々な要因により適宜選択されるものである。
【0016】
(b)ヒーリングアバアットメント、フィクスチャーとの間の仮着構成
更に本発明は、この接合部位の内面には仮着用スリット(例えば図1(b)の14で示す凹部)を具備する。この仮着用スリットは口腔内のハンドリングを向上させる目的と口腔内模型を作製するための冶具を固定するために使用されてもよい。
ヒーリングアバットメント、口腔内模型用冶具、アバットメントにはフィクスチャーと接合時にこの仮着用スリットと合わされる同位置に突起(例えば図1(a)の3)を設ける。
これによりフィクスチャーを植立後、ヒーリングアバットメント、口腔内模型用冶具、アバットメントを狭い口腔内において脱落による誤飲などを防ぎ、安全に仮着することができる。
この突起の位置、仮着用スリットの位置、数、形状等は、ヒーリングアバットメントの形状等により、適宜選択される。
この場合の、ヒーリングアバアットメント、フィクスチャーの接合面の形状は、図1、2に示された形状に限定されることはなく。微少な突起及びこの突起と結合する仮着用スリットの組み合わせがヒーリングアバアットメント、フィクスチャーの両接続体間に形成されればよい。
【0017】
尚、本発明は、上述のような、波状の結合面を有する乃至は、微少突起及び仮着スリットを有するフィクスチャーとアバットメントとの接合関係において、図1で示すようにフィクスチャー側をソケットの様な凹状、アバットメント側をプラグの様な凸状の構造に加工した場合、好適に作用する場合がある。これは万が一アバットメントの破折をきたした場合、リカバリーをしやすくするためである。
【0018】
(c)ヒーリングアバアットメント、フィクスチャーの接続時に用いられる固定ネジと、フィクスチャ内に形成されたネジ部との累合形状仮着されたヒーリングアバットメント、口腔内模型用冶具、アバットメントは固定ネジにより完全に固定される。ここで使用する固定ネジの山部にはスリットが設けられており、ナット側のフランクによってボルト側のフランクをスリット側へ押圧して弾性変形させ、 この弾性変形の押圧力によりボルトの緩みを防止するものである。この固定ネジ形状は、特公平2−58016号公報等に記載されているような形状が利用できる。当該形状は締め付け時の応力がネジ全体に分散されるため、通常のネジと比べ、締め付け時に力が必要である。また、これが原因によりネジがナット内で噛んでしまい、取り外せなくなるという問題も生じている。
本発明用いるアバット、ヒーリングアバットのネジ山の形状はネジ部の長さが比較的短いために締結力低減、噛み付き防止が期待できる。
【0019】
【実施例】
図1において、(a)は、アバットメントの全体を示すものであり、上部構造を形成するものである。1はアバットメント本体であり、チタン、チタン合金、その他歯科領域において一般的に使用されている金合金等で形成され、中心に接合ネジ6を挿入する為の上下に貫通した挿入口13を設け、下部には、フィクスチャー本体4と接合するための接合部2が形成されている。
【0020】
図2に接合部2をA方向から見た図を示す。10は、円弧歯車状に形成された接合面であり、内側方向の曲部を形成する大曲率円弧11と外側方向の曲部を形成する小曲率円弧12が滑らかに結合された状態である。小曲率円弧の曲率:大曲率円弧の曲率=1:2となっている。円弧の数は大小8個である。各々の円弧は規則的に且つ効果的に配置されており、端点を角(8角形)にするよりもトルク伝達方向に対して応力の分散が期待できる。3は、凸部であり、曲率円弧1の略中央に配置されている。凸部3は、アバットメント本体1と同一の素材で形成されている他、ゴム、樹脂等、その他弾性的に特徴のある部材が用いられる場合もある。凸部3は、個々の小曲率円弧に存在する必要はなく、一乃至数個おきに設けられても良い。5は、挿入口13と連通している孔部である。
【0021】
図1の(b)は、生体に埋入される部位を示すものでありチタン、チタン合金等の金属部材或いは、外周にアパタイトなど生体親和性部材で被覆された状態を有しているものであって、フィクスチャーと呼ばれるものである。15は、アバットメントが挿入装着される装着部であり、アバットメントの接合部2と嵌合されるべく、内周面に円弧歯車状の形状が形成されている。14は、凹部であり、凸部3と結合するための状態に適当な凹形状が形成されている。凹部14と、凸部3の結合は、仮着状態を形成することが可能であり、施術時におけるアバットメント及びフィクスチャが接合ネジで完全に固定するまで必要性が高いものである。16は、顎骨等の硬組織に累合するための生体ネジ部であり、その一部に長手方向へ、水平なカット面17が施されている。
【0022】
図1(c)において6は、接合ネジでありチタン、チタン合金、各種ステンレス等の金属材料等で形成され、18は、工具を接合するための部位であり、+或いは−の凹形状あるいは、トルクス(商標)形状を具備した工具で結合するための凹形状が形成される場合もある。
19は、ネジ部であり、フィクスチャ本体4の内部ネジ部と累合する為の構成を有する。
ネジ部19のネジ山20は、更に図1(d)の様な構成をとる。図1(d)は、例えば図1(c)の丸で囲んだ部分Bに相当する部分を示すものであり、一つのネジ山20に対し、複数の子ネジ部21,22のネジ山が形成された状態である。
この状態で、累合された状態の一部を図1(e)に示す。この様に、累合先の一つの谷部23に挟まれるように、複数の子ネジ部21,22が存在するため、子ネジ山間でネジの谷部を外方向に押すような弾力性が発生し、ゆるみを抑えることが可能な形状を具備する。
この複数の子ネジは、2つ形成されることが好ましいが、場合によっては、それ以上であっても良い場合もある。
【0023】
次に図3に、図1で示した実施例の使用の一例を示した。
即ち、上部構造を形成するためのアバットメント本体1とフィクスチャ本体4とを接合ネジ6の挿入累合によって、結合させることで、一つの歯科用インプラントが形成されるものである。
施術時は、アバットメント本体1とフィクスチャ本体4を凸部3と凹部14の一時的な結合に基づく仮着状態を利用して、埋入操作を手軽に行うことも可能となる。
【0024】
次に、実際、本実施例を生体に埋入した際の図を図4に示し説明する。
Cは、顎骨組織、Dは、歯肉部を示す。
Eは義歯部である義歯部はセラミックス、長石等の天然石等で、形成されその製法は、CAD/CAMによる機械的研削加工によるものや、その他公知の手法が用いられて形成される。
埋入の仕方等は、公知例として説明した図4で示す手法や、その他の手法が好適に利用できる。
【発明の効果】
以上詳述のごとく本発明は、従来の歯科インプラント体とは異なる新しい機能すなわち、
2ピースタイプを形成するアバットメントとフィクスチャの接合面を、円弧歯車状とすることにより、両構成に働く応力を分散させて、咀嚼力による、結合面の劣化を防ぎ、
接合ネジとフィクスチャとの累合面のネジ部を複数の子ネジ状とすることにより、使用経過時の咀嚼力によるゆるみを防止し、
アバットメントと、フィクスチャの結合時において、仮の結合、即ち仮着状態を形成することにより、手軽な施術が行えるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す図。
【図2】本発明の実施例を示す図。
【図3】本発明の実施例を示す図。
【図4】本発明の実施例を示す図。
【図5】従来例を説明する為の図。
【符号の説明】
1 アバットメント本体
2 接合部
3 凸部
4 フィクスチャ本体
5 孔部
6 接合ネジ
10 接合面
11 大曲率円弧
12 小曲率円弧

Claims (3)

  1. 大小2種類の半円弧曲面が連続的に連なった円弧歯車形状を接合面全面に有する凸状の接合部(2)を具えた上部接合体(1)と前記上部接合体(1)の凸状の接合部(2)と接合面全面で嵌合する大小2種類の半円弧曲面が連続的に連なった円弧歯車形状を有する凹状の装着部(15)を具えた骨内植立体(4)、前記接合部(2)又は装着部(15)のいずれか一方の接合面に凸部(3)、他方の接合面の前記凸部(3)に対応する部位に凹部(14)を設け、前記凸部(3)と凹部(14)が結合することで仮着状態を形成することができる歯科用インプラント。
  2. 小曲率半円弧曲面の曲率:大曲率半円弧曲面の曲率=1:2である請求項1に記載の歯科用インプラント。
  3. 前記円弧歯車形状の円弧の数が6又は8である請求項1に記載の歯科用インプラント。
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