本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
本発明の実施の形態について以下に示す。
(実施の形態1)
本発明の構成の一部である蒸着用の坩堝11を図1(A)に示す。図1(C)に示すように、坩堝11に蒸着材料である金属酸化物14と金属酸化物より熱伝導率が高いセラミックス15とを充填させる。なお、金属酸化物としては、遷移金属酸化物が好ましく、具体的には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。また、セラミックスとしては金属酸化物、金属窒化物、炭化物、炭素などが好ましく、具体的には酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイトなどが挙げられる。なお、セラミックスの粒径は0.1mm以上5mm以下が好ましい。
坩堝11の材料は、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、窒化ボロン、炭化ケイ素、アルミナ、その他の任意の材料から、使用温度、反応性など考慮し、適宜選択する。坩堝の厚みは蒸着材料の想定内容量や形状、あるいは材料の熱伝導率などを考慮して決めれば良い。
金属酸化物と金属酸化物より熱伝導率が高いセラミックスとを充填し蒸着を行うことで、坩堝の内壁付近と中央部との金属酸化物おける温度差を小さくすることができる。内壁部に接した蒸着材料に過剰な熱がかからないため、副生成物の生成、及び副生成物をはじめとするゴミが突沸により膜中に混入することを抑制することができる。よって、良好な成膜が可能となる。特に、突沸が激しい昇華性を有する蒸着材料において有効である。また、副生成物が蒸着材料上に堆積することがないため、長時間の成膜においても蒸着レートを一定に保つことができる。なお、本形態では、蒸着材料を金属酸化物としているが、有機材料を用いても良い。
また、図1(B)に示す開口部を有する蓋12付きの坩堝13を用いることにより、充填物に含まれるゴミを成膜中に混入することをさらに防ぐことができる。
なお、開口部を有する蓋12の材料は、坩堝11と同様、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、窒化ボロン、炭化ケイ素、アルミナ、その他の任意の材料から、使用温度、反応性など考慮し、適宜選択する。
また、熱伝導率の高いセラミックスを蒸着材料に混在させた場合、充填物の界面と蓋12との距離はセラミックスを混在していない場合に比べて短い。よって、セラミックスを混在することにより充填物からの熱が開口部を有する蓋12へ移動しやすいため、開口部への蒸着物質の付着による開口領域の縮小を抑制することができる。よって、長時間の成膜においても一定の蒸着レートを得ることができる。
なお、開口部を有する蓋12は、蓋の構成材料より熱伝導率の高い物質で被覆されていても良い。より好ましいとされる高い熱伝導率を有する物質は銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)及びベリリウム(Be)である。これらの材料は非常に高い熱伝導率を有するため、開口部付近への蒸着物質の付着の抑制に対し高い効果が期待できる。なお、白金(Pt)は上記の材料より熱伝導率は低いものの、比較的高い熱伝導率を有し且つ非常に安定であることから望ましい材料のうちの一つといえる。また、これらの物質の合金を用いても良い。開口部を有する蓋12は蒸着材料の蒸着温度、蒸着材料との反応性などを考慮し適宜選択する。
上記構成とすることで、さらに開口部を有する蓋の温度低下を防ぎ、一定の蒸着レートを得ることが可能となる。また、セラミックスを坩堝11と同じ高さまで充填した場合、所定温度まで上昇した界面と開口部を有する蓋12との距離が非常に短くなるため、さらに効果的である。なお、共蒸着の際には、蒸着装置によっては当該坩堝を傾ける場合があるため、セラミックスが開口部よりこぼれ落ちないようにメッシュ状の内蓋が必要となる場合がある。この内蓋は充填物の体積変化にかかわらず絶えず充填物の界面と接することが可能な形状に設計する。
(実施の形態2)
本発明の蒸着方法を用いて形成した発光素子について図2(A)を用いて以下に説明する。
本形態において、発光素子は、第1の電極102と、第2の電極107の間に積層体を挟んでなり、積層体は第1の電極102から上方向へ順に第1の層103、第2の層104、第3の層105、第4の層106が積層したものである。なお、本形態では第1の電極102は陽極として機能し、第2の電極107は陰極として機能する。
基板101は発光素子の支持体として用いられる。基板101の材料としては、例えば石英、ガラス、またはプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
第1の電極102としては、さまざまな金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物金属酸化物、合金を用いることができる。例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)などの導電性を有する金属、又はアルミニウム−シリコン(Al−Si)、アルミニウム−チタン(Al−Ti)、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)等それらの合金、または窒化チタン(TiN)等の金属材料の窒化物、ITO(indium tin oxide)、ケイ素を含有するITO、酸化インジウムに2〜20[wt%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(indium zinc oxide)、酸化インジウムに2〜20wt%の酸化珪素を混合したITSO等の金属酸化物などを用いることができるが、仕事関数の大きい物質(仕事関数4.0eV以上)で形成されていることが好ましい。
第1の層103は、有機化合物と金属酸化物の複合材料で形成される層(複合材料層)である。
なお、本形態の発光素子において、上述するような第1の層103に接して形成された第1の電極102は仕事関数の大きい材料に限定されず、仕事関数の小さい材料も用いることができる。
第1の層103を形成する有機化合物としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:NPB)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、N,N’−ビス(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(略称:BSPB)、4,4’,4’’―トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(略称:m−MTDATA)、1,3,5−トリス[N,N−ビス(3−メチルフェニル)−アミノ]−ベンゼン(略称:m−MTDAB)、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物やフタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物を用いることができる。金属酸化物としては、遷移金属酸化物が好ましく、具体的には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。なかでも、電子受容性が高い酸化モリブデンは、大気中においても安定であるため好ましい。なお、金属酸化物は有機化合物に対して5wt%〜80wt%、より好ましくは10wt%〜50wt%の範囲で含まれていることが望ましい。また、第1の層103は、単層だけでなく、混合比や材料が異なる層が二層以上積層した構造としてもよい。
第1の層103の膜厚は60nm以上であることが望ましい。また、120nm以上300nm以下であるとなお良い。第1の層103は厚膜化してもそれに比例した発光素子の駆動電圧の上昇を招かない。そのため、第1の電極の表面に形成された凹凸や電極表面に残ったゴミの影響で第1の電極と第2の電極がショートすることを防ぐ膜厚を選ぶことができる。また、光の取り出し効率を考慮し、最適な膜厚を選ぶことができる。
第2の層104は、ホールを輸送する機能に優れた層(正孔輸送層)、例えばNPBやTPD、TDATA、MTDATA、BSPBなどの芳香族アミン(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物からなる層である。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、第2の層104は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものであってもよい。
第3の層105は、発光性の高い物質を含む発光層である。発光層について特に限定は無いが、発光層として機能する層には大きく分けて2つの態様がある。一つは発光中心となる物質(発光物質またはゲスト材料)のエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する材料(ホスト材料)に発光物質を分散させた構成のホストーゲスト型の層と、もう一つは発光材料のみで発光層を構成する層である。前者の方が濃度消光が起こりにくいため、好ましい。発光物質としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等が挙げられる。また、ホスト材料としては、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)などの金属錯体等を用いることができる。また、発光物質のみで発光層を構成することのできる材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)などがある。
第4の層106は、電子を輸送する機能に優れた層(電子輸送層)、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を第4の層106として用いても構わない。また、第4の層106は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
第2の電極107を形成する物質としては、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の1族または2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li)が挙げられる。しかしながら、第2の電極107と発光層との間に電子を注入する機能に優れた層を設けた場合、仕事関数の大小に関わらず、第1の電極102の材料として挙げた材料も含め、様々な導電性材料を第2の電極107として用いることができる。
なお、電子を注入する機能に優れた層(電子注入層)としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物を用いることができる。また、この他、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたもの、例えばAlq3中にマグネシウム(Mg)を含有させたものなどを用いることも可能である。
本形態において第1の層103は、共蒸着により作製する。なお、それぞれの蒸着材料を充填する容器は実施の形態1に記載した坩堝を用いる。金属酸化物の蒸着には、開口部を有する蓋付きの坩堝の使用が好ましく、金属酸化物と金属酸化物より熱伝導率が高いセラミックスとを充填し蒸着する。なお、有機化合物については、金属酸化物と同じ坩堝を用い、セラミックスの有無はどちらでも良い。ただし、有機化合物の蒸着においても、金属酸化物の場合と同様、坩堝に蒸着材料と蒸着材料より熱伝導率が高いセラミックスとを充填し蒸着することで同様の効果を得ることができる。
第2の層104、第3の層105、第4の層106も、蒸着法で形成することができる。また、それ以外の方法としてはインクジェット法またはスピンコート法などの湿式法によっても形成することができる。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
以上のような構成を有する本形態の発光素子は、第1の電極102と第2の電極107との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である第3の層105において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり第3の層105に発光領域が形成されるような構成となっている。但し、第3の層105の全てが発光領域として機能する必要はなく、例えば、第3の層105のうち第2の層104側または第4の層106側にのみ発光領域が形成されるようなものであってもよい。
発光は、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方または両方は、透光性を有する物質で成る。第1の電極102のみが透光性を有する物質からなる場合、図2(A)に示すように、発光は第1の電極102を通って基板側から取り出される。また、第2の電極107のみが透光性を有する物質からなる場合、図2(B)に示すように、発光は第2の電極107を通って基板と逆側から取り出される。第1の電極102および第2の電極107がいずれも透光性を有する物質からなるものである場合、図2(C)に示すように、発光は第1の電極102および第2の電極107を通って、基板側および基板と逆側の両方から取り出される。
なお第1の電極102と第2の電極107との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されず、発光層と陽極との間に複合材料層が所定の膜厚で設けられていればその他の層の積層構造については特に限定されず、電子を輸送する機能に優れた層またはホールを輸送する機能に優れた層、電子を注入する機能に優れた層、正孔を注入する機能に優れた層、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等から成る層を自由に組み合わせて構成すればよい。また、第1の電極102上には、酸化ケイ素膜等からなる層を設けることによってキャリアの再結合部位を制御したものであってもよい。
また、上記構成とは逆に第1の電極を陰極として形成し、その後電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、複合材料層、第2の電極(陽極)と順に積層しても良い。
また、本形態の発光素子は、有機材料と無機材料とを含んでいる第1の層103を有するため、電極と、発光物質を含む層との間に生じる応力を緩和させることができる。
また、本形態の発光素子の第1の層103は厚く形成しても駆動電圧や消費電力の上昇が伴わない為、当該第1の層103の膜厚を調整することによってマイクロキャビティ効果や干渉効果を利用した光学設計を行うことができ、色純度が良い発光装置を作成することが出来るようになる。
また、上述したように第1の層103は厚膜化しても発光素子の駆動電圧の上昇を招かないため、凹凸やゴミを充分にカバーできる膜厚を選ぶことができる。さらに、蒸着材料と前記蒸着材料より熱伝導率が高いセラミックスとを充填した坩堝を用いて蒸着することにより成膜中へのゴミの混入を抑制することができる。よって、本発明の蒸着方法を用いて作製した発光素子は、陽極と陰極とのショートが原因で起こる暗点欠陥を最小限にすることが可能となる。
また、有機化合物と金属酸化物の蒸着レートをそれぞれ一定にすることが可能であるため、複合材料層における有機化合物と金属酸化物との組成を容易に制御でき、成膜の再現性が向上する。よって、信頼性のより高い発光素子を作製することが可能となる。
また、本形態の複合材料層の形成に利用した蒸着方法は、第1の層103の形成のみに限定されるものではなく、その他の有機化合物と金属酸化物の複合材料から形成される複合材料層を設ける際に利用することが可能である。
本形態は実施の形態1と適宜組み合わせることが可能である。
(実施の形態3)
図3は本発明の構成の一部である坩堝を利用した蒸着装置の上面図である。
図3(A)において、400は基板、401は成膜室、402、403は搬送室、404は坩堝設置室、405は蒸着源駆動用ロボット、406は坩堝搬送ロボット、407は坩堝設置用回転台、408、409、410は各部屋を仕切るシャッター、411は扉、412は蒸着源である。
基板400は、搬送室402から成膜室401内に搬送される。選択的に蒸着を行う場合には、蒸着マスクと基板との位置合わせを行った後に蒸着を行う。
蒸着源412には、本発明の構成の一部である坩堝413が2個セットされている。異なるEL材料を用いることで、共蒸着を可能とする。ここでは図示しないが、各坩堝の上部にはスライド式のシャッターが設けられている。図3には2個の坩堝を備えた蒸着源が示してあるが、1個、3個あるいはそれ以上の坩堝を備えても良く、本発明は図3の構成に限定されない。また、2個の坩堝には同じ材料を充填しても良い。
蒸着源412にセットされた坩堝413は加熱され、所定の蒸着レートになるまで待機する。所定の蒸着レートで安定させた後、シャッターを開け、蒸着源駆動用ロボット405を用いて蒸着源412を移動させることにより、基板上に蒸着を行う。蒸着源の往復を繰り返すことによって、基板400上に均一な膜が形成される。蒸着終了後、シャッターを閉じ、基板400を搬送室403に搬送する。
また、図3の製造装置には蒸着源412にセットした坩堝を交換する機構が設けられている。以下、その手順について図3(B)を用いて説明する。
坩堝設置室404をベントし、大気圧とする。この時、シャッター410があるため、成膜室401の真空度はそのままの状態である。扉411を開け、坩堝設置用回転台407にEL材料が充填された坩堝413をセットする。その後、扉を閉め、搬送室と同じ真空度、あるいはそれ以下の真空度になるまでに引く。なお、坩堝設置室404は成膜室401よりチャンバーの内容積が小さいため、短時間で所定の圧力まで減圧することが可能である。所定の真空度に達したら、シャッター410を開け、坩堝搬送ロボット406を駆動し、蒸着源412にセットされていた第1の坩堝を取り出し、坩堝設置用回転台407にセットする。坩堝設置用回転台407を回転し、別の材料の充填された第2の坩堝を取り出し、蒸着源412にセットする。
なお、本発明における搬送機構は、図3(B)に記載されるように坩堝413の上方から、坩堝搬送ロボット406のつまみ部が、坩堝413の内側を引っ掛けて搬送する構造に限定されるものではなく、坩堝413の側面をつまんで搬送する構成でも良い。
なお、坩堝設置用回転台407にセットされている坩堝413は、真空排気している間に内蔵したヒータで坩堝を材料が飛ばない程度の温度まで加熱しておいても良い。その場合、交換後の加熱時間が短縮され、スループットの高い装置となる。開口部を有する蓋付きの坩堝を用いた場合であっても、熱伝導率の高いセラミックスの充填により蒸着材料の付着による開口領域の縮小を抑制できるため、再加熱による蒸着レートの減少はなく、上記効果を得ることができる。
本形態は実施の形態1乃至2のいずれかと適宜組み合わせることが可能である。
(実施の形態4)
図4にマルチチャンバー型の製造装置の上面図を示す。図4に示す製造装置は、スループット向上を図ったチャンバー配置としている。
図4は、シャッター500a〜500mと、基板投入室520と、封止、取出室519と、搬送室504、514と、成膜室506、509、530と、坩堝設置室526a〜526dと、前処理室503と、封止基板ロード室517と、シーリング室518とを有するマルチチャンバーの製造装置である。
以下、予め陽極(第1の電極)と、該陽極の端部を覆う絶縁物(隔壁)とが設けられた基板を図4に示す製造装置に搬入し、発光装置を作製する手順を示す。なお、アクティブマトリクス型の発光装置を作製する場合、予め基板上には、陽極に接続している薄膜トランジスタ(電流制御用TFT)およびその他の薄膜トランジスタ(スイッチング用TFTなど)が複数設けられ、薄膜トランジスタからなる駆動回路も設けられている。また、単純マトリクス型の発光装置を作製する場合にも図4に示す製造装置で作製することが可能である。
まず、基板投入室520に上記基板をセットする。基板サイズは、320mm×400mm、370mm×470mm、550mm×650mm、600mm×720mm、680mm×880mm、1000mm×1200mm、1100mm×1250mm、さらには1150mm×1300mmのような大面積基板でも対応可能である。
基板投入室520にセットした基板(陽極と、該陽極の端部を覆う絶縁物とが設けられた基板)は搬送室504に搬送する。搬送室504には基板を搬送または表裏を反転するための搬送機構(搬送ロボットなど)と真空排気手段とが設けられている。、また、他の搬送室514も504と同様に搬送機構と真空排気手段とが設けてある。搬送室504に設けられたロボットは、基板の表裏を反転させることができ、成膜室506に反転させて搬入することができる。搬送室504は真空排気処理室と連結されており、真空排気して真空にすることも、真空排気した後、不活性ガスを導入して大気圧にすることもできる。
また、上記の真空排気処理室としては、磁気浮上型のターボ分子ポンプ、クライオポンプ、またはドライポンプが備えられている。これにより各室と連結された搬送室の到達真空度を10−5〜10−6Paにすることが可能であり、さらにポンプ側および排気系からの不純物の逆拡散を制御することができる。不純物が装置内部に導入されるのを防ぐために導入するガスとして、窒素や希ガス等の不活性ガスを用いる。これらのガスは、ガス精製機により高純度化されたものを用いる。従って、ガスが高純度化された後に蒸着装置に導入されるようにガス精製機を備えておく必要がある。これにより、ガス中に含まれる酸素や水、その他の不純物を予め除去することができるため、装置内部にこれらの不純物が導入されるのを防ぐことができる。
また、基板投入室520にセットする前には、暗点欠陥を低減するために第1の電極(陽極)の表面に対して界面活性剤(弱アルカリ性)を含ませた多孔質なスポンジ(代表的にはPVA(ポリビニルアルコール)製、ナイロン製など)で洗浄して表面のゴミを除去することが好ましい。また、多孔質なスポンジの代わりに、基板の面に平行な軸線まわりに回動して基板の面に接触するロールブラシ(PVA製)を有する洗浄装置を用いてもよいし、基板の面に垂直な軸線まわりに回動しつつ基板の面に接触するディスクブラシ(PVA製)を有する洗浄装置を用いてもよい。
また、基板側の成膜面から水分の進入を防止するため、有機化合物を含む膜の蒸着直前に真空加熱を行うことが好ましく、基板を搬送室504から真空加熱が可能な前処理室503に搬送し、上記基板に含まれる水分やその他のガスを徹底的に除去するために、アニールを真空(5×10−3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10−4〜10−6Pa)で行う。特に、層間絶縁膜や隔壁の材料として有機樹脂膜を用いた場合、有機樹脂材料によっては水分を吸着しやすく、さらに脱ガスが発生する恐れがあるため、有機化合物を含む層を形成する前に100℃〜250℃、好ましくは150℃〜200℃、例えば30分以上の加熱を行った後、30分の自然冷却を行って吸着水分を除去する真空加熱を行うことは有効である。
例えば、第1の電極(陽極)の表面をスポンジで洗浄した後、基板投入室520に搬入した後、蒸着直前に前処理室503に搬送して真空加熱(170℃、加熱30分、冷却30分)した後、成膜室506に搬送して大気に触れることなく蒸着法により発光層の形成を行えばよい。
次いで、搬送室504に連結された成膜室506へ基板を搬送機構511により搬送して、複合材料層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、または電子注入層となる層を適宜成膜する。発光素子の材料を適宜選択することにより、発光素子全体として、単色(具体的には白色、赤色、緑色、または青色)の発光を示す発光素子を形成することができる。成膜は蒸着源200を備えたロボットが移動することで成膜を行う。なお、蒸着源にセットする坩堝は実施の形態1に記載したものを用いる。複合材料層における金属酸化物の蒸着には、開口部を有する蓋付きの坩堝の使用が好ましく、金属酸化物と金属酸化物より熱伝導率が高いセラミックスとを坩堝に充填し蒸着を行う。なお、複合材料層の有機化合物については、金属酸化物と同じ坩堝を用い、セラミックスの有無はどちらでも良い。その他の有機化合物を充填する坩堝は特に限定はされないが、金属酸化物の場合と同様、坩堝に蒸着材料と蒸着材料より熱伝導率の高いセラミックスとを充填し蒸着することで同様の効果を得ることができる。
また、成膜室506には、実施の形態3に示したように発光素子の材料や金属酸化物と熱伝導率が高いセラミックスとが充填された坩堝が複数備えられている坩堝設置室526a〜526dが設けられている。必要となる坩堝を成膜室に搬送し、順次蒸着を行う。また、フェイスダウン方式で基板をセットし、CCDなどで蒸着マスクの位置アライメントを行い、抵抗加熱法で蒸着を行うことで選択的に成膜を行うことができる。蒸着が終了すると基板は次の搬送室側に搬送されることとなる。
次いで、搬送室514内に設置されている搬送機構により、基板を成膜室506から取り出し、大気にふれさせることなく、成膜室530に搬送して陰極(または保護膜)を形成する。この陰極は、抵抗加熱を用いた蒸着法により形成される無機からなる金属膜(MgAg、MgIn、CaF2、LiF、Ca3N2などの合金、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形成した膜、またはこれらの積層膜)である。また、スパッタ法を用いて陰極を形成してもよい。
また、上面射出型または両面射出型の発光装置を作製する場合には、陰極は透明または半透明であることが好ましく、上記金属膜の薄膜(1nm〜10nm)、或いは上記金属膜の薄膜(1nm〜10nm)と透明導電膜との積層を陰極とすることが好ましい。この場合、透明導電膜(ITO(酸化インジウム酸化スズ合金)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In2O3―ZnO)、酸化亜鉛(ZnO)等)からなる膜を成膜室509でスパッタ法を用いて形成すればよい。以上の工程により、積層構造の発光素子が形成される。
また、搬送室514に連結した成膜室509で窒化珪素膜、または窒化酸化珪素膜からなる保護膜を形成してもよい。この場合、成膜室509内には、珪素からなるターゲット、または酸化珪素からなるターゲット、または窒化珪素からなるターゲットが備えられている。
例えば、珪素からなる円盤状のターゲットを用い、成膜室を窒素雰囲気または窒素とアルゴンを含む雰囲気とすることによって陰極上に窒化珪素膜を形成することができる。また、炭素を主成分とする薄膜(DLC膜、CN膜、アモルファスカーボン膜)を保護膜として形成してもよい。また、別途、CVD法を用いた成膜室を設けてもよい。ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜とも呼ばれる)は、プラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法、熱フィラメントCVD法など)、燃焼炎法、スパッタ法、イオンビーム蒸着法、レーザー蒸着法などで形成することができる。成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えばCH4、C2H2、C6H6など)とを用い、グロー放電によりイオン化し、負の自己バイアスがかかったカソードにイオンを加速衝突させて成膜する。また、CN膜は反応ガスとしてC2H4ガスとN2ガスとを用いて形成すればよい。なお、DLC膜やCN膜は、透明もしくは半透明な絶縁膜である。透明とは可視光の透過率が80〜100%であることを指し、半透明とは可視光の透過率が50〜80%であることを指す。
次いで、発光素子が形成された基板を取出室519に搬送する。
封止基板は、封止基板ロード室517に外部からセットし、用意される。なお、水分などの不純物を除去するために予め真空アニールを行うことが好ましい。そして、封止基板に発光素子が設けられた基板とを貼り合わせるためのシール材を形成する場合には、シーリング室518でシール材を形成する。また、封止基板に乾燥剤を設けてもよい。ここでは、封止基板に対してシール材を形成した例を示したが、特に限定されず、発光素子が形成された基板にシール材を形成してもよい。
次いで、取出室519で基板と封止基板と貼り合わせ、貼り合わせた一対の基板を取出室519に設けられた紫外線照射機構によってUV光を照射してシール材を硬化させる。なお、ここではシール材として紫外線硬化樹脂を用いたが、接着材であれば、特に限定されない。
次いで、貼り合わせた一対の基板を取出室519から取り出す。
以上のように、図4に示した製造装置を用いることで完全に発光素子を密閉空間に封入するまで大気に曝さずに作製することが可能であるため、信頼性の高い発光装置を得ることが可能となる。また、蒸発源が移動し、成膜室506内を基板が移動することで短時間に蒸着が完了するため、スループットよく発光装置を作製することができる。
なお、律速となる処理室に搬送される基板をストックするために別にストック室を設けてもよい。また、ここでは図示しないが、各処理室での作業をコントロールするための制御装置や、各処理室間を搬送するための制御装置や、基板を個々の処理室に移動させる経路を制御して自動化を実現するコントロール制御装置などを設けている。
また、図4に示す製造装置では、陽極として透明導電膜(または金属膜(例えばTiNなど)が設けられた基板を搬入し、有機化合物を含む層を形成した後、透明または半透明な陰極(例えば、薄い金属膜(Al、Ag)と透明導電膜の積層)を形成することによって、上面射出型(或いは両面射出)の発光素子を形成することも可能である。なお、上面射出型の発光素子とは、陰極を透過させて有機化合物層において生じた発光を封止基板側から取り出すことが可能な発光素子を指している。
また、図4に示す製造装置では、陽極として透明導電膜が設けられた基板を搬入し、有機化合物を含む層を形成した後、金属膜(Al、Ag)からなる陰極を形成することによって、下面射出型の発光素子を形成することも可能である。なお、下面射出型の発光素子とは、有機化合物層において生じた発光を透明電極である陽極からTFTの方へ取り出し、さらに基板を通過させる発光素子を指している。
以上のように、本発明の蒸着法を用いて形成された発光素子は成膜中に暗点欠陥の原因となるゴミが混在することを抑制できる。また、有機化合物と金属酸化物の蒸着レートをそれぞれ一定にすることが可能であるため、複合材料層における有機化合物と金属酸化物との組成を制御でき、成膜の再現性が向上する。よって、信頼性のより高い発光素子を作製することが可能となる。
本形態は実施の形態1乃至2のいずれかと適宜組み合わせることが可能である。
(実施の形態5)
本形態では、図5を用いて画素部に本発明の蒸着方法を用いて形成された発光素子を有する発光装置について説明する。なお、図5(A)は、発光装置を示す上面図、図5(B)は図5(A)中A−A’線断面図(A−A’で切断した断面図)である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
なお、608は、ソース側駆動回路601およびゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示していないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていてもよい。本発明の発光装置には、発光装置本体だけの場合はもちろん、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
次に、断面構造について図5(B)を用いて説明する。基板610上には駆動回路部および画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602が示されている。
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成してもよい。また、本実施例では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示しているが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に形成することもできる。
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
また、成膜を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、あるいは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。さらには、絶縁物614の材料として有機物に限らず無機物が用いることができ、例えば酸化珪素、酸窒化珪素等を用いることができる。
第1の電極613上には、発光物質を含む層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。
発光物質を含む層616は、蒸着法、またはインクジェット法によって形成される。発光物質を含む層616には、少なくとも発光層と、本発明の蒸着方法を用いて第1の電極に接して複合材料層が設けられていればその他の層の積層構造については特に限定されず、適宜選択することができる。
また、陽極として機能する第1の電極613、発光物質を含む層616、及び陰極として機能する第2の電極617は、実施の形態2に記載した各々の材料を適宜選択して用いることができる。
さらに、シール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される構成も含むものとする。
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
以上のようにして、本発明の蒸着方法を用いて作製された発光装置を得ることができる。本発明の蒸着法を用いて形成された発光装置は成膜中に暗点欠陥の原因となるゴミが混在することを抑制できる。また、有機化合物と金属酸化物の蒸着レートをそれぞれ一定にすることが可能であるため、複合材料層における有機化合物と金属酸化物との組成を制御でき、成膜の再現性が向上する。よって、信頼性のより高い発光装置を作製することが可能となる。
本形態は実施の形態1乃至4のいずれかと適宜組み合わせることが可能である。
また、本発明は上記の形態に限定されるものではない。
(実施の形態6)
本発明の有機トランジスタの構造の一形態を図9に示す。なお、710が基板、711がゲート電極、712がゲート絶縁膜、713が有機半導体材料を含む半導体層、714が有機化合物と金属酸化物の複合材料で形成される層(複合材料層)、715が導電層であり、ソース及びドレイン電極716a、bは、複合材料層714および導電層715を有する。各層及び電極の配置は、素子の用途により適宜選択できる。また、図9では複合材料層714が半導体層713に接して設けられているがこの限りではなく、ソース電極及び/またはドレイン電極の一部に含まれていれば良い。
図9(A)の構造について、図10の作製方法に沿って説明する。基板710は、ガラス基板、石英基板、結晶性ガラスなどの絶縁性基板や、セラミック基板、ステンレス基板、プラスチック基板(ポリイミド、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン等)等を用いることができる。また、これら基板は必要に応じてCMP等により研磨してから用いても良い。
基板710上に後にゲート電極711を形成する(図10(A))。ゲート電極711に用いる材料は、特に限定されるものではないが以下に挙げるような、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウムなどの金属及びそれらを含む合金、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレンなどの導電性高分子化合物、シリコン、ドープドシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素などの無機半導体、さらにこれらに酸(ルイス酸も含む)、ハロゲン原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属原子などがドーピングされているものも挙げられる。形成方法についても特に限定は無く、スパッタリング法や蒸着法などにより成膜した後、エッチングなどの方法により所望の形状に加工すればよい。
次に、ゲート絶縁膜712を形成する(図10(B))。ゲート絶縁膜712は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒素を含む酸化ケイ素及び酸素を含む窒化ケイ素などの無機絶縁材料や、アクリルやポリイミドなどの有機絶縁材料等を用いて形成すればよい。また、ケイ素と酸素との結合で骨格構造が構成され、置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)、またはフルオロ基、または少なくとも水素を含む有機基とフルオロ基とを有する、いわゆるシロキサン系の材料を用いて形成してもよい。また、ゲート絶縁膜712は単層でもよいし、2以上の層からなる複数層としても良い。なお、これらの絶縁膜はディップ法、スピンコート法、液滴吐出法などの塗布法や、CVD法、スパッタ法など公知の方法によって成膜することができる。有機材料やシロキサン系の材料は塗布法により成膜することができ、下層の凹凸を緩和することができる。
次にゲート絶縁膜712を覆う半導体層713を形成する(図10(C))。半導体層713を形成する有機半導体材料はキャリア輸送性があり、かつ電界効果によりキャリア密度の変調が起こりうる有機材料であれば、低分子、高分子のいずれも用いることができる。その種類は特に限定されるものではないが、多環芳香族化合物、共役二重結合化合物、金属フタロシアニン錯体、電荷移動錯体、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、オリゴチオフェン類、フラーレン類、カーボンナノチューブ、などが挙げられる。例えばポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリチエニレンビニレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリセレノフェン、ポリフラン、ポリ(p−フェニレン)、ポリインドール、ポリビリダジン、ナフタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、アントラセン、トリフェノジオキサジン、トリフェノジリアジン、ヘキサセン−6,15−キノン、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィド、ポリビニルピリジン、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、アントラセンテトラカルボン酸ジイミド、C60、C70、C76、C78、C84及びこれらの誘導体を用いることができる。また、これらの具体例としては、一般的にP型半導体とされるテトラセン、ペンタセン、セクシチオフェン(6T)、銅フタロシアニン、ビス−(1,2,5−チアジアゾロ)−p−キノビス(1、3−ジチオール)、ルブレン、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)(PTV)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ジオクチルフルオレン−ビチオフェンコポリマー(F8T2)、一般的にN型半導体とされる7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、11,11,12,12,−テトラシアノ−1,4−ナフタキノジメタン(TCNNQ)、N,N’−ジオクチルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(PTCDI−C8H)、銅十六フッ化フタロシアニン(F16CuPc)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5、5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)(DCMT)等がある。なお、有機半導体においてP型やN型の特性はその物質固有のものでは無く、キャリアを注入する電極との関係や注入の際の電界の強度に依存し、どちらになりやすいという傾向はあるもののP型半導体としてもN型半導体としても使用することができる。なお、本実施の形態においては、P型半導体がより好ましい。
これらの有機半導体材料は、蒸着法やスピンコート法、液滴吐出法などの方法により成膜することができる。
次に半導体層713の上に複合材料層714を形成する(図10(D))。本発明の複合材料層714に使用する有機化合物の種類は特に限定されるものではないが、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス(N−{4−[N,N−ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(DNTPD)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)のような芳香族アミン骨格を有するものが好ましい。また、N−(2−ナフチル)カルバゾール(NCz)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)などのN−アリールカルバゾール誘導体やアントラセンや9,10−ジフェニルアントラセン(DPA)などの芳香族炭化水素を用いることもできる。また、半導体層713として用いることが可能な材料も使用することができる。この場合、半導体層713と複合材料層714との密着性や界面の化学安定性が向上する。また、製造プロセスが簡便になるといった利点があげられる。
複合材料層714に使用する金属酸化物は特に限定されるものではないが、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。なかでも、電子受容性が高い酸化モリブデンは、大気中においても安定であるため好ましい。なお、金属酸化物が5wt%以上80wt%以下、より好ましくは10wt%以上50wt%以下で含有されている複合材料層であることが望ましい。
なお、複合材料層714は、本発明の蒸着方法を用いて共蒸着により作製する。それぞれの蒸着材料を充填する容器は実施の形態1に記載した図1(A)もしくは(B)の坩堝を用いる。金属酸化物の蒸着には、開口部を有する蓋付きの坩堝の使用が好ましく、金属酸化物と金属酸化物より熱伝導率が高いセラミックスとを充填し蒸着する。なお、有機化合物については、金属酸化物と同じ坩堝を用い、セラミックスの有無はどちらでも良い。ただし、有機化合物の蒸着においても、金属酸化物の場合と同様、坩堝に蒸着材料と蒸着材料より熱伝導率が高いセラミックスとを充填し蒸着することで同様の効果を得ることができる。
次に、導電層715を形成する(図10(E))。導電層715に使用する材料は、特に限定されるものではないが、金、白金、アルミニウム、タングステン、チタン、銅、モリブデン、タンタル、ニオブ、クロム、ニッケル、コバルト、マグネシウムなどの金属及びそれらを含む合金、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレンなどの導電性高分子化合物等が挙げられる。一般的にはソース及びドレイン電極716a、bに用いる導電層715としては、金属を用いることが多い。
なお、形成方法は半導体層713が分解しないようなものであれば特に限定は無く、スパッタリング法や蒸着法などにより成膜した後、エッチングするなどの方法により所望の形状に加工し作製すればよい。また、導電物を含む液滴を用いてインクジェット法等によって形成してもよい。
以上のようにして作製した有機トランジスタの複合材料層714は、本発明を用いることにより膜中へのゴミの混入を抑制することができる。よって、良好な膜とすることができ、信頼性の高い有機トランジスタを作製することができる。
また、半導体層713と導電層715との間に複合材料層714を挿入した構成のソース及びドレイン電極716a、bを用いることにより、半導体層713とソース及びドレイン電極716a、bとの間のエネルギー障壁が低減し、ソース及びドレイン電極の一方の電極から半導体層へのキャリアの注入と半導体層から他方の電極へのキャリアの排出が容易になる。このため、導電層715の材料は半導体層713とエネルギー障壁が低い材料を選択する必要がなく、仕事関数の制約無しに選択することが可能となる。
複合材料層714はキャリア注入性に優れている他、半導体層713との密着性も導電層715に比較して良好である。なお、本構成のソース及びドレイン電極716a、bは、配線と兼用することができる。
さらに半導体層713の下面に接して、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリビニルフェニールなど有機絶縁材料を成膜しても良い。このような構成により、有機半導体材料の配向をさらに高めるほか、ゲート絶縁膜712と半導体層713との密着性をさらに向上することができる。
本実施形態では、図9(A)の構造のように半導体層713上にソース及びドレイン電極716a、bが設けられた構造(トップコンタクト型構造)を例示したが、本発明は図9(B)の構造のような有機半導体層の下にソース電極、ドレイン電極を設ける構造(ボトムコンタクト型構造)であっても良い。
ボトムゲート型の場合には、トップコンタクト型構造を採用したほうがキャリア移動度が大きいといった利点がある。一方、ボトムコンタクト型構造を用いた場合、ソース及びドレイン配線の微細加工を施すためにフォトリソグラフィなどの工程を容易に用いることができる。そのため、有機トランジスタの構造はその長所、短所に合わせて適宜選択すれば良い。
本形態は、実施の形態1及び3と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態7)
本発明の有機トランジスタを含む液晶表示装置及び表示装置の態様について、図11乃至13を用いて説明する。
図11は液晶表示装置を模式的に表した上面図である。点線で示された811は駆動回路部(ソース側駆動回路)、812は画素部、813は駆動回路部(ゲート側駆動回路)であり、これらは対向基板814とシール材815により封止されている。なお、810は素子基板である。
ソース側駆動回路811およびゲート側駆動回路813は、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)819からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示していないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていてもよい。本発明の発光装置には、発光装置本体だけの場合はもちろん、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
画素部812について特に限定はなく、例えば図12の断面図のように、液晶素子とそれを駆動するためのトランジスタとを有する。
図12の断面図で表される液晶表示装置は、実施の形態6に記載された有機トランジスタと同様に本発明の蒸着方法を用いて形成された複合材料層714を有する有機トランジスタ801を素子基板810上に有する。なお、実施の形態6と同様のものは共通の符号を用いて示し、説明は省略する。
有機トランジスタ801は、絶縁層802によって覆われており、コンタクトホールを介してソース及びドレイン電極の一部として機能する導電層715の一方と画素電極803とが電気的に接続されている。液晶素子は、対向基板814に形成された対向電極805と画素電極803との間に液晶層806を挟んで成り、液晶層806と接する側の対向電極805及び画素電極803の表面には、配向膜807、808が設けられている。なお、液晶層806は、スペーサ809によりセルギャップが保たれたれている。なお、液晶表示装置の構成について特に限定はない。
続いて、本発明の有機トランジスタ801を用いた発光装置について図13を参照しながら説明する。なお、前記発光装置の上面図は図11と同様であるため省略する。図13の断面図で表される発光装置は、実施の形態6に記載された有機トランジスタと同様に本発明の蒸着方法を用いて形成された複合材料層714を有する有機トランジスタ801を素子基板810上に有する。なお、実施の形態6と同様のものは共通の符号を用いて示し、説明は省略する。
有機トランジスタ801は、絶縁層802によって覆われており、コンタクトホールを介してソース及びドレイン電極の一部として機能する導電層715の一方と第1の電極901とが電気的に接続されている。第1の電極901の端部は絶縁層902で覆われており、絶縁層902から露出した部分を覆うように発光層903が形成されている。発光層903上には第2の電極904及びパッシベーション膜905が形成されている。なお、基板810と対向基板814とを画素部の外側においてシール材(図示しない)を用いて封止することによって、発光層903を外気から隔離する。対向基板814と基板810との間の空間907には乾燥した窒素などの不活性気体を充填しても良いし、シール材の代わりに空間907に樹脂などを充填することによって封止を行っても良い。なお、発光装置の構成について特に限定はない。また、対向基板814は封止基板とも言う。
有機トランジスタ801に本発明の蒸着方法を用いて形成した複合材料層を用いることにより、膜中へのゴミの混入を抑制することが可能となり、信頼性の高い表示装置を得ることができる。
本形態は、実施の形態1乃至4及び6と適宜組み合わせることができる。
また、このような液晶表示装置または発光装置は、後述する実施例2に記載した電子機器に適用することも可能である。