JP5024238B2 - ガスセンサ素子の製造方法 - Google Patents
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かかる従来のガスセンサ素子においては、特許文献1に記載されているように、上記一対の電極に通電を行うことにより、固体電解質体の酸素イオン伝導率を変化させる。これにより、電気化学セルの活性温度を低下させることができ、ひいてはガスセンサ素子の早期活性を図ることができる。
しかしながら、上記混合液は、電極に含有される白金をも溶解してしまい、白金による電極活性効果が低減してしまう。その結果、ガスセンサ素子の早期活性を図ることが困難となってしまうという問題がある。
上記固体電解質体と上記一対の電極とを積層してなる未焼積層体を形成する形成工程と、
上記未焼積層体を焼成して積層体を形成する焼成工程と、
白金を溶解することなく上記一対の電極に付着する不純物を除去する酸からなる浸漬液に、上記積層体における上記一対の電極のうち少なくとも一方の電極を浸漬させる酸処理工程とを有し、上記浸漬液は、塩酸、硝酸又はフッ酸のいずれか一つからなり、
かつ、上記酸処理工程の後、上記積層体における上記一対の電極に通電を行う通電工程を有することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法にある(請求項1)。
本願の発明者らは鋭意研究の結果、白金を溶解することなく電極に付着する不純物を除去する酸からなる浸漬液に一対の電極のうち少なくとも一方の電極を浸漬させることにより、ガスセンサ素子の早期活性を実現することができることを見いだした。
その結果、ガスセンサ素子を早期に活性させることができる。
その結果、ガスセンサ素子の検出精度を向上させることができる。
これにより、白金を溶解することなく電極に付着した白金酸化物などの不純物を十分に除去することができる。そのため、早期活性を十分に図ることができるとともに、検出精度に十分優れたガスセンサ素子を得ることができる。
なお、浸漬液としては、特に塩酸を用いることが好ましい。この場合には、白金を溶解することなく電極に付着する不純物を容易かつ十分に除去することができる。
これにより、酸処理工程と通電工程との相乗効果により、電極に付着した不純物を確実に除去することができ、ガスセンサ素子のより一層の早期活性を実現することができる。
また、前述したように酸処理工程を行うことを前提とするため、上記通電工程における印加電圧を従来の通電工程における印加電圧より小さくしても、従来よりもガスセンサ素子を早期に活性させることができる。その結果、従来のガスセンサ素子において問題となっていたような固体電解質体が損傷してその機械的強度が低下してしまうという問題を解消することができる。
本発明のガスセンサ素子1の製造方法に係る実施例について、図1〜図3とともに説明する。
本発明の製造方法によって製造されるガスセンサ素子1は、図1、図2に示すように、酸素イオン伝導性の固体電解質体111と、固体電解質体111の一方の面と他方の面とに設けてあるとともに白金を含有させてなる一対の電極112とからなる電気化学セル11を少なくとも一つ備える。
また、本例の製造方法においては、白金を溶解することなく一対の電極21に付着する不純物を除去する酸からなる浸漬液4に、積層体31における一対の電極12を浸漬させる酸処理工程を有する。
なお、後述するように本例における浸漬液4は塩酸からなる。
本例の製造方法によって作製されるガスセンサ素子1として、自動車エンジン等の各種車両用内燃機関の排気管に設置して、排気ガスフィードバックシステムに使用する空燃比センサ素子(A/Fセンサ素子)、排気ガス中の酸素濃度を測定する酸素センサ素子(O2センサ素子)、排気管に設置する三元触媒の劣化検知等に利用するNOx等の大気汚染物質濃度を調べるNOxセンサ素子等がある。
ガスセンサ素子1は、図1、図2に示すように、電気化学セル11として、酸素イオン伝導性の固体電解質体111と、該固体電解質体111の一方の面に設けた電極112(以下、測定電極112aという。)と、固体電解質体111の他方の面に形成した基準電極112(以下、基準電極112b)とを有する。
また、基準電極112bにも、測定電極112aと同様、リード部113bと端子部(図示略)とが接続されている。
該基準ガス室120には、基準ガスとしての大気が導入される。
該ヒータ13は、通電により発熱する発熱部131と、該発熱部131を支持するためのヒータ基板132とを有する。
さらに、拡散抵抗層14には、該拡散抵抗層14を覆うように遮蔽層15が積層されている。
拡散抵抗層14は、ガス透過性の多孔質材料によって形成される。そして、拡散抵抗層14は、その側面140を介して測定電極112aまで被測定ガスを導入することができるよう構成されている。
まず、電気化学セル11の形成工程について説明する。
固体電解質体111を形成するためのセラミックグリーンシートは、例えば、セラミック粉末、バインダ、可塑剤などを所定量加えて混合したスラリーを用いてドクターブレード法などにより形成することができる。
次いで、固体電解質体111を形成するためのセラミックグリーンシートの外表面に、導電性を有する測定電極112a、基準電極112b、リード部113a、113b等をそれぞれ形成するための導体ペーストを印刷する。
次に、未焼積層体21にヒータ13などを積層していく。
具体的には、未焼積層体21と拡散抵抗層14と遮蔽層15とを、熱圧着により一体化させるとともに、ヒータ13と基準ガス室形成層12とを、熱圧着により一体化させる。
次いで、酸処理工程においては、図3(b)に示すように、上記一対の電極112に付着する不純物を白金を溶解することなく除去する酸からなる浸漬液4に、前述した焼成体310における一対の電極112を浸漬させる。
なお、本例においては、測定電極112a、基準電極112bの双方に酸処理を行ったが、測定電極112a又は基準電極112bのいずれか一方にのみ酸処理を行っても、本発明の作用効果を十分に得ることができる。
硝酸を用いる場合には、例えば、60〜80℃に加熱した50〜60質量%の硝酸水溶液に、上記焼成体310を20〜60分浸漬させることが好ましい。
かかる通電工程は、例えば測定電極112aと基準電極112bとに1.5〜2.0Vの電圧を30〜60秒印加することにより行う。
以上の手順により本例のガスセンサ素子1が形成される。
本願の発明者らは鋭意研究の結果、白金を溶解することなく電極112に付着する不純物を除去する酸からなる浸漬液4に一対の電極112を浸漬させることにより、ガスセンサ素子1の早期活性を実現することができることを見いだした。
その結果、ガスセンサ素子1を早期に活性させることができる。
その結果、ガスセンサ素子1の検出精度を向上させることができる。
なお、20〜30℃に保たれた25〜35質量%の塩酸水溶液からなる浸漬液4に積層体31を10〜60分浸漬した後、電気化学セル11を700〜850℃に加熱し、該電気化学セル11に1.0〜2.0Vの電圧を10〜120秒印加することにより、固体電解質体111に損傷を与えることなくガスセンサ素子1を早期に活性させることができる。
本例は、図4、図5に示すように、本発明品と従来品とにおける、センサ出力とヒータ13への通電時間との関係、及びセンサ出力と一対の電極112への印加電圧との関係を調べた例である。
また、上記従来品としては、積層体31における一対の電極112に通電する通電工程のみを行ったガスセンサ素子を用いた。
なお、本発明品及び従来品はともに4個作製した。
また、本発明品及び従来品における通電工程は、ともに電気化学セル11を750℃に加熱した状態で一対の電極112に2Vの電圧を印加することにより行った。
また、本例において使用した符号は、図1において使用した符号に準ずる。
同図に示す曲線L1が本発明品における結果であり、曲線L2が従来品における結果である。
同図からわかるように、本発明品においては、ヒータ13へ通電してから10秒程度で安定したセンサ出力を検出している。
一方、従来品においては、出力が安定するのはヒータ13へ通電してから20秒程度経過した後である。
なお、センサ出力の測定時における、電気化学セル11の温度は約650℃である。すなわち、本例では、従来の作動温度よりも約50℃低い状態で測定している。
同図に示す曲線L3が本発明品における結果であり、曲線L4が従来品における結果である。
同図からわかるように、本発明品の場合には、2mA以上の電流が得られ限界電流を検出することができる。
一方、従来品の場合には、抵抗が大きくなってしまうため十分な電流が得られず、限界電流を検出することが困難である。
そして、大気中のセンサ出力が安定時の95%の値となる時間(以下では、これを活性時間という。)の各ガスセンサ素子における平均値は、本発明品においては12秒、従来品においては20秒であった。この結果から、本発明品は十分に早期活性を実現できていることがわかる。
本例は、図6に示すように、本発明品及び従来品におけるセンサ出力と電極112への印加電圧との関係を調べた例である。
本発明品は、20℃で35質量%の塩酸水溶液にガスセンサ素子を1時間浸漬させた後、150℃に保たれた恒温槽内に30分放置することにより酸処理工程を行った。そしてその後、そのガスセンサ素子における電極112に2Vの電圧を印加して通電工程を行った。
なお、本発明品及び従来品はそれぞれ5個ずつ作製し、これらの電極112へ電圧を印加してセンサ出力を測定した。
また、本例において使用した符号は、実施例1において使用した符号に準ずる。
同図に示す曲線L5が本発明品における結果であり、曲線L6が従来品における結果である。
同図からわかるように、本発明品の場合には、印加電圧が0.3V程度で約2.5mAと十分な量の安定したセンサ出力を検出しており、低電圧でも安定したセンサ出力が得られている。
また、本発明品においては、活性時間の平均が10秒であり、従来品においては、活性時間の平均が15秒であった。
特に塩酸にて上記の条件の酸処理工程を行うとともに、上記の条件の通電工程を行うことにより、これらの相乗効果によって、ガスセンサ素子の活性時間を十分に短縮できるといえる。
11 電気化学セル
111 固体電解質体
112 電極
21 未焼積層体
31 積層体
Claims (1)
- 酸素イオン伝導性の固体電解質体と、該固体電解質体の一方の面と他方の面とに設けてあるとともに白金を含有させてなる一対の電極とからなる電気化学セルを少なくとも一つ備えたガスセンサ素子を製造する方法であって、
上記固体電解質体と上記一対の電極とを積層してなる未焼積層体を形成する形成工程と、
上記未焼積層体を焼成して積層体を形成する焼成工程と、
白金を溶解することなく上記一対の電極に付着する不純物を除去する酸からなる浸漬液に、上記積層体における上記一対の電極のうち少なくとも一方の電極を浸漬させる酸処理工程とを有し、上記浸漬液は、塩酸、硝酸又はフッ酸のいずれか一つからなり、
かつ、上記酸処理工程の後、上記積層体における上記一対の電極に通電を行う通電工程を有することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
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