以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
本実施の形態の半導体装置およびその製造方法を図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置(不揮発性半導体記憶装置、半導体チップ)の概略構成を示す平面図(平面レイアウト図、チップレイアウト図)である。
本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)1は、抵抗メモリ素子、ここでは相変化型の不揮発性メモリ(不揮発性記憶素子)である相変化メモリ(相変化型不揮発性メモリ、PCM(Phase Change Memory)、OUM(Ovonic Unified Memory))、を含む半導体装置(半導体記憶装置)である。
図1に示されるように、本実施の形態の半導体装置1は、相変化メモリのメモリセルアレイが形成された相変化メモリ領域2を有している。更に、半導体装置1は、DRAM(Dynamic RAM)またはSRAM(Static RAM)等のようなRAM(Random Access Memory)回路が形成されたRAM領域3、CPUまたはMPU等のような論理回路が形成されたCPU領域4、アナログ回路が形成されたアナログ回路領域5、入出力回路が形成されたI/O領域6などを必要に応じて有している。
相変化メモリ領域2には、半導体装置1の主回路の1つとして、比較的大容量の情報を記憶する不揮発性メモリが、抵抗メモリ素子、ここでは相変化型の不揮発性メモリである相変化メモリによって形成されている。相変化メモリは、各メモリセルの記録層(後述する記録層52に対応)の原子配列が変化することによって記憶情報が記憶される(書き込まれる)不揮発性メモリである。相変化メモリは、各メモリセルの記録層(後述する記録層52に対応)において、結晶状態(結晶相)とアモルファス状態(アモルファス相)との間の相変化のような原子配列変化を起こすことによって、その抵抗率(抵抗値)を変化させ、アクセス時における各メモリセルの通過電流が記憶情報に応じて変化するように構成される。相変化メモリにおいては、この記録層の原子配列状態(例えば記録層がアモルファス状態にあるかあるいは結晶状態にあるか)を記憶情報とし、すなわち記録層が原子配列状態によって高抵抗状態にあるか低抵抗状態にあるか(抵抗値変化)を記憶情報とし、アクセス時にアクセス対象である選択メモリセルの通過電流により、選択メモリセルの記憶情報を読み出すことができる。従って、相変化メモリは、記録層(後述する記録層52)において原子配列状態の変化(例えば結晶相と非晶質相との間の相変化)を起こすことによって抵抗値を変化させて、電気抵抗値が高い高抵抗状態と低い低抵抗状態とを記憶させることができ、抵抗値変化を記憶情報とする抵抗メモリ素子の一種とみなすことができる。
次に、相変化メモリ領域2のメモリアレイの構造の例を、図2の回路図を参照して説明する。
図2に示されるメモリアレイの構造は、NOR型として知られるものであり、読出しが高速に行えることから、システムプログラムの格納に適しており、例えば、単体メモリチップ、あるいはマイコンなどの論理LSI混載用として用いられる。図2では、図面が煩雑になるのを防ぐため、WL1ないしWL4のワード線4本、BL1ないしBL4のビット線4本の、アレイの一部を示すに留めている。MC11ないしMC14は、WL1に接続された4つのメモリセルを示す。同様に、MC21ないしMC24、MC31ないしMC34、MC41ないしMC44は、それぞれ、WL2からWL4に接続されたメモリセルを表す。BL1は、MC11ないしMC41のメモリセルが接続されたビット線である。同様に、MC12ないしMC42、MC13ないしMC43、MC14ないしMC44のメモリセルは、それぞれ、ビット線BL2、BL3およびBL4に接続される。
各メモリセルは、1個のMISFET(後述するMISFETQM1,QM2の一方に対応)と、それに直列に接続されたメモリ材料または記憶素子MR(後述する記録層52または記録層52を含む抵抗素子54に対応)からなる。それぞれのワード線(WL1〜WL4)は、各メモリセルを構成するMISFETのゲート電極に接続されている。それぞれのビット線(BL1〜BL4)は、各メモリセルを構成する記憶素子(メモリ材料)MRに接続されている。ワード線WL1〜WL4を駆動するのは、それぞれ、ワードドライバーWD1〜WD4である。どのワードドライバーWD1〜WD4を選択するかは、ロウデコーダ(Xアドレスデコーダ)XDECからの信号で決まる。
VPLは各ワードドライバーへの電源供給線で、電源電圧はVddである。VGLは各ワードドライバーの電位引抜き線で、ここでは接地電位に固定されている。QD1はビット線BL1をプリチャージする選択トランジスタである。同様に、QD2ないしQD4は、それぞれ、BL2ないしBL4をプリチャージする選択トランジスタである。各選択トランジスタ(QD1〜QD4)は、アドレス入力にしたがって、ビットデコーダYDEC1またはビットデコーダYDEC2を介して選択される。この例では、ビットデコーダYDEC1とビットデコーダYDEC2はビット線2本おきに、選択するビット線を交互に受け持つ。読み出しによる出力は、センスアンプSAで検出される。
図3に、図2のアレイ構成に対応する平面レイアウト(平面図)を示す。
図3で、FLは活性領域、M1は第一の金属層(後述する配線37に対応)、M2は第二の金属層(後述する配線72に対応)、ゲート電極パターンFGはシリコン基板上に形成されたトランジスタのゲート電極として用いられる層(後述するゲート電極16a,16b,16cなどを構成する導体膜パターンに対応)、FCTは、FL上面とM1下面とを結ぶコンタクトホール(後述するコンタクトホール32に対応)、R(後述する抵抗素子54に対応)は記憶素子(後述する記録層52に対応)とその上部電極層(後述する上部電極膜53に対応)との積層膜、SCTはM1上面とRの下面とを結ぶコンタクトホール(後述するスルーホール42に対応)、TCTはM1上面とM2下面とを結ぶコンタクトホール(後述するスルーホール65に対応)である。
Rは、同一ビット線に接続されるメモリセルの間で、TCTを介してM2に引き上げられる。このM2がそれぞれのビット線として用いられる。ワード線WL1ないしWL4はFGで形成してある。FGには、ポリシリコンとシリサイド(シリコンと高融点金属との合金)との積層などを用いる。メモリセルMC11を構成する1個のMISFETが、QM1である。MC21を構成するMISFETQM2は、QM1とソース領域を共有している。図3に示されるように、他のセルを構成するMISFETも、これに倣う。ビット線BL1ないしBL4は、メモリアレイ外周に配置されたトランジスタ(MISFET)QD1ないしQD4のソース側に接続される。QD1とQD2のドレイン領域、およびQD3とQD4のドレイン領域は共通である。これらのトランジスタは、各ビット線のプリチャージを行う機能を持つ。同時に、YDEC1あるいはYDEC2からの信号を受けて、指定のビット線を選択する働きも持つ。図3ではnチャネル型である。各ブロックを構成する回路素子は、特に限定されないが、典型的にはCMIFET(Complementary MISFET:相補型MISトランジスタ)等の半導体集積回路技術によって、単結晶シリコンのような1個の半導体基板上に形成される。さらに、相変化を示すカルコゲナイド材料等が集積回路の作成技術にハイブリッドして作成される。これらのパターンのパターニングには、周知の光リソグラフィとドライエッチングを用いることができる。これら製造工程については後でより詳細に説明する。
次に、本実施の形態の半導体装置の構造について、より詳細に説明する。
図4は、本実施の形態の半導体装置1の要部断面図である。図4においては、相変化メモリ領域10Aの断面(要部断面)と周辺回路領域(論理回路領域)10Bの断面(要部断面)とが示されている。相変化メモリ領域10Aは、半導体装置1の相変化メモリ領域2の一部に対応する。周辺回路領域10Bは、半導体装置1の周辺回路領域の一部(nチャネル型MISFETおよびpチャネル型MISFETが形成される領域)に対応し、周辺回路を構成するMISFET(周辺回路領域10Bに形成されるMISFET)などによって、Xデコーダ回路、Yデコーダ回路、センスアンプ回路、入出力回路(I/O領域6の入出力回路)、論理回路(CPU領域4の論理回路)などが形成される。なお、図4においては、理解を簡単にするために、相変化メモリ領域10Aの断面と周辺回路領域10Bとを隣接して示しているが、相変化メモリ領域10Aの断面と周辺回路領域10Bとの位置関係は必要に応じて変更することができる。
図4に示されるように、例えばp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)11の主面に素子分離領域12が形成されており、この素子分離領域12で分離された活性領域にはp型ウエル13a,13bおよびn型ウエル14が形成されている。このうち、p型ウエル13aは相変化メモリ領域10Aに形成され、p型ウエル13bおよびn型ウエル14は周辺回路領域10Bに形成されている。
相変化メモリ領域10Aのp型ウエル13a上にはnチャネル型のMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)QM1,QM2が形成されている。周辺回路領域10Bのp型ウエル13b上にはnチャネル型のMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)QNが形成され、周辺回路領域10Bのn型ウエル14上にはpチャネル型のMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)QPが形成されている。
相変化メモリ領域10AのMISFETQM1,QM2は、相変化メモリ領域10A(2)のメモリセル選択用のMISFETである。MISFETQM1,QM2は、p型ウエル13aの上部に互いに離間して形成されており、それぞれ、p型ウエル13aの表面のゲート絶縁膜15aと、ゲート絶縁膜15a上のゲート電極16aとを有している。ゲート電極16aの側壁上には酸化シリコン、窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜などからなるサイドウォール(側壁スペーサ)18aが形成されている。p型ウエル13a内には、MISFETQM1のドレイン領域としての半導体領域(n型不純物拡散層)20とMISFETQM2のドレイン領域としての半導体領域(n型不純物拡散層)21と、MISFETQM1,QM2のソース領域としての半導体領域(n型不純物拡散層)22とが形成されている。各半導体領域20,21,22は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、n−型半導体領域17aと、半導体領域17aよりも不純物濃度が高いn+型半導体領域19aとにより形成されている。n−型半導体領域17aは、サイドウォール18aの下のp型ウエル13aに形成され、n+型半導体領域19aは、ゲート電極16aおよびサイドウォール18aの外側のp型ウエル13aに形成されており、n+型半導体領域19aは、n−型半導体領域17aの分だけチャネル領域から離間する位置のp型ウエル13aに形成されている。半導体領域22は、同一の素子活性領域に形成された隣り合うMISFETQM1,QM2に共有されて共通のソース領域となっている。なお、本実施の形態では、MISFETQM1,QM2のソース領域を共通とした場合について説明するが、他の形態としてドレイン領域を共通とすることもでき、この場合、半導体領域22がドレイン領域となり、半導体領域20,21がソース領域となる。
周辺回路領域10Bに形成されたMISFETQNもMISFETQM1,QM2とほぼ同様の構成を有している。すなわち、MISFETQNは、p型ウエル13bの表面のゲート絶縁膜15bと、ゲート絶縁膜15b上のゲート電極16bとを有しており、ゲート電極16bの側壁上には酸化シリコンなどからなるサイドウォール(側壁スペーサ)18bが形成されている。サイドウォール18bの下のp型ウエル13b内にはn−型半導体領域17bが形成され、n−型半導体領域17bの外側にはn−型半導体領域17bよりも不純物濃度が高いn+型半導体領域19bが形成されている。n−型半導体領域17bおよびn+型半導体領域19bにより、MISFETQNのLDD構造を有するソース・ドレイン領域が形成される。
周辺回路領域10Bに形成されたMISFETQPは、n型ウエル14の表面のゲート絶縁膜15cと、ゲート絶縁膜15c上のゲート電極16cとを有しており、ゲート電極16cの側壁上には酸化シリコンなどからなるサイドウォール(側壁スペーサ)18cが形成されている。サイドウォール18cの下のn型ウエル14内にはp−型半導体領域17cが形成され、p−型半導体領域17cの外側にはp−型半導体領域17cよりも不純物濃度が高いp+型半導体領域19cが形成されている。p−型半導体領域17cおよびp+型半導体領域19cにより、MISFETQPのLDD構造を有するソース・ドレイン領域が形成される。
ゲート電極16a,16b,16c、n+型半導体領域19a,19bおよびp+型半導体領域19cの表面には、それぞれ金属シリサイド層(例えばコバルトシリサイド(CoSi2)層)25が形成されている。これにより、n+型半導体領域19a,19bおよびp+型半導体領域19cなどの拡散抵抗と、コンタクト抵抗とを低抵抗化することができる。
半導体基板11上には、ゲート電極16a,16b、16cを覆うように絶縁膜(層間絶縁膜)31が形成されている。絶縁膜31は、例えば酸化シリコン膜などからなり、絶縁膜31の上面は、相変化メモリ領域10Aと周辺回路領域10Bとでその高さがほぼ一致するように、平坦に形成されている。
絶縁膜31にはコンタクトホール(開口部、接続孔)32が形成されており、コンタクトホール32内にはプラグ(コンタクト電極)33が形成されている。プラグ33は、コンタクトホール32の底部および側壁上に形成されたチタン膜、窒化チタン膜あるいはそれらの積層膜などからなる導電性バリア膜33aと、導電性バリア膜33a上にコンタクトホール32内を埋め込むように形成されたタングステン(W)膜(主導体膜)33bとからなる。コンタクトホール32およびプラグ33は、n+型半導体領域19a,19bおよびp+型半導体領域19c上やゲート電極16a,16b,16c上に形成されている。
プラグ33が埋め込まれた絶縁膜31上には、例えば酸化シリコン膜などからなる絶縁膜34が形成されており、絶縁膜34に形成された配線溝(開口部)内に第1層配線としての配線(第1配線層)37が形成されている。配線37は、配線溝の底部および側壁上に形成されたチタン膜、窒化チタン膜あるいはそれらの積層膜などからなる導電性バリア膜36aと、導電性バリア膜36a上に配線溝内を埋め込むように形成されたタングステン膜などからなる主導体膜36bとにより形成されている。配線37は、プラグ33を介して、n+型半導体領域19a,19b、p+型半導体領域19cまたはゲート電極16a,16b,16cなどと電気的に接続されている。相変化メモリ領域10Aにおいて、MISFETQM1,QM2のソース用の半導体領域22(n+型半導体領域19a)にプラグ33を介して接続された配線37により、ソース配線37bが形成されている。
配線37が埋め込まれた絶縁膜34上には、例えば酸化シリコン膜などからなる絶縁膜(層間絶縁膜)41が形成されている。相変化メモリ領域10Aにおいて、絶縁膜41にスルーホール(開口部、孔、接続孔)42が形成されており、スルーホール42内にはプラグ(コンタクト電極、下部電極)43が形成されている。プラグ43は、スルーホール42の底部および側壁上に形成されたチタン膜、窒化チタン膜あるいはそれらの積層膜などからなる導電性バリア膜43aと、導電性バリア膜43a上にスルーホール42内を埋め込むように形成されたタングステン(W)膜(主導体膜)43bとからなる。従って、プラグ43は、層間絶縁膜である絶縁膜41の開口部(スルーホール42)内に形成された(埋め込まれた)導電体部である。スルーホール42およびプラグ43は、配線37のうち、相変化メモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のドレイン用の半導体領域20,21(n+型半導体領域19a)にプラグ33を介して接続された配線37a上に形成され、この配線37aと電気的に接続されている。
相変化メモリ領域10Aにおいて、プラグ43が埋め込まれた絶縁膜41上に、薄い界面層51と、界面層51上の記録層(記憶層、記録材料膜、相変化膜、相変化記録材料膜)52と、記録層52上の上部電極膜(上部電極、金属膜)53とからなる抵抗素子(可変抵抗素子)54が形成されている。すなわち、抵抗素子54は、界面層51、記録層52および上部電極膜53からなる積層パターンにより形成されている。なお、抵抗素子54とそれに接続するプラグ43とを合わせたものを抵抗素子(可変抵抗素子)とみなすこともでき、また、抵抗素子54とそれに接続するプラグ43とを合わせたものがメモリ素子として機能するので、抵抗素子54(界面層51、記録層52および上部電極膜53)とそれに接続するプラグ43とを合わせたものを抵抗メモリ素子とみなすこともできる。
界面層51は、プラグ43が埋め込まれた絶縁膜41と記録層52との間に介在して両者の密着性(接着性)を向上させ、記録層52が剥がれるのを防止するように機能することができる。すなわち、界面層51は、はがれ(剥がれ)防止膜または相変化材料はがれ防止膜として機能することができる。また、界面層51は、記録層52の熱がプラグ43側に逃げる(伝導する)のを防止するように機能することができ、それによって、相変化メモリの熱効率が向上し、相変化メモリの低電流書き換えが可能になる。また、界面層51は、記録層52を加熱する発熱用の抵抗層として機能することもできる。界面層51は、金属酸化物(特に遷移金属の酸化物)または金属窒化物(特に遷移金属の窒化物)であることが好ましく、酸化タンタルまたは酸化クロムから構成されていれば、より好ましく、酸化タンタル(例えばTa2O5またはTa2O5に近い組成の材料)であれば更に好ましく、これにより、界面層51の上記機能を的確に発揮させることができる。また、界面層51の膜厚は、例えば0.5〜5nm程度とすることができる。
記録層52は、原子配列の変化を起こすことによって情報を記憶する記録層(記憶層)であり、例えば結晶相と非晶質相との間の相変化のような原子配列変化によって、その抵抗値(抵抗率)を変化させ、電気抵抗値が高い高抵抗状態と低い低抵抗状態とを記憶する記録層(記憶層)である。すなわち、記録層52は、抵抗メモリ素子(ここでは相変化メモリ)の情報の記録層(記憶層、記憶素子)であり、記憶素子として機能することができる。このため、記録層52は、相変化材料(相変化物質)からなる相変化膜であり、結晶状態とアモルファス状態(非晶質状態、非結晶状態)との2状態間の遷移(相変化)が可能な材料膜(半導体膜)である。
記録層52は、カルコゲン元素(S,Se,Te)を含む材料(半導体)、すなわちカルコゲナイド(カルコゲナイド半導体、カルコゲナイド材料)により形成されている。なお、カルコゲナイドとは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)のうちの少なくとも1元素を含む材料をいう。記録層52の膜厚は、例えば10〜200nm程度とすることができる。
また、少なくともゲルマニウム(Ge)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)を含むGe−Sb−Te系のカルコゲナイド材料を記録層52の材料として用いれば、相変化メモリの記録層としての機能を向上できるので、より好ましく、この場合、記録層52は、少なくともゲルマニウム(Ge)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)とを構成元素として含んでいる。また、記録層52を構成するカルコゲナイドに更にインジウム(In)を導入し、インジウム(In)を導入したGe−Sb−Te系のカルコゲナイド材料を記録層52の材料として用いれば更に好ましく、インジウムを導入したことにより、界面層51と記録層52の仕事関数の差が大きくなって界面層51と記録層52の接合界面近傍での記録層52のバンド湾曲が増大する分だけ、プログラミング電圧を低減することができる。この場合は、記録層52は、ゲルマニウム(Ge)とアンチモン(Sb)とテルル(Te)とインジウム(In)とを構成元素として含んでいる。
図5は、記録層52の状態(相状態)と記録層52の抵抗(抵抗率)との相関を示す説明図(表)である。図5にも示されるように、記録層52は、アモルファス状態と結晶状態とで抵抗率が異なり、アモルファス状態では高抵抗(高抵抗率)となり、結晶状態では低抵抗(低抵抗率)となる。例えば、アモルファス状態での記録層52の抵抗率は、結晶状態での記録層52の抵抗率よりも、10〜10000倍程度大きくなる。このため、記録層52は、結晶状態とアモルファス状態との2状態間の遷移(相変化)が可能で、この2状態間の遷移により抵抗値が変化する抵抗素子(可変抵抗素子)として機能することができる。記録層52は、後述するように、加熱処理(ジュール熱による加熱処理)により結晶状態とアモルファス状態との2状態間を遷移(相変化)させることが可能である。従って、記録層52は、加熱処理により抵抗値が変化する相変化材料からなり、加熱処理により抵抗値が変化する抵抗素子として機能することができる。
上部電極膜53は、相変化メモリの上部電極として機能し、金属膜のような導電体膜からなり、例えばタングステン(W)膜またはタングステン合金膜などにより形成することができ、その膜厚は、例えば10〜200nm程度とすることができる。上部電極膜53は、後述するプラグ64と抵抗素子54とのコンタクト抵抗の低減や、スルーホール63形成後に導電性バリア膜67aを形成する際に、記録層52が昇華するのを防止するように機能することができる。このため、上部電極膜53を形成することが好ましいが、上部電極膜53の形成を省略して後述するプラグ64を記録層52の上面に接続した場合は、プラグ64が相変化メモリの上部電極として機能することになる。
プラグ43は、相変化メモリの下部電極として機能し、抵抗素子54の下部(界面層51の下面)は、プラグ43と接触して電気的に接続されている。従って、抵抗素子54の下部(界面層51の下面)は、プラグ43、配線37aおよびプラグ33を介して、相変化メモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のドレイン領域20,21(n+型半導体領域19a)に電気的に接続されている。
図4に示されるように、絶縁膜41上に、抵抗素子54を覆うように、絶縁膜61と、絶縁膜61上の絶縁膜(層間絶縁膜)62とが形成されている。すなわち、上部電極膜53の上面上および抵抗素子54(記録層52)の側壁上を含む絶縁膜41上に絶縁膜61が形成され、その絶縁膜61上に層間絶縁膜として絶縁膜62が形成されている。絶縁膜61の膜厚は、絶縁膜62の膜厚(例えば数百nm)よりも薄く、例えば5〜20nm程度とすることができる。絶縁膜61は、例えば窒化シリコン膜からなり、絶縁膜62は、例えば酸化シリコン膜からなる。絶縁膜62の上面は、相変化メモリ領域10Aと周辺回路領域10Bとでその高さがほぼ一致するように、平坦に形成されている。
相変化メモリ領域10Aにおいて、絶縁膜61,62にスルーホール(開口部、接続孔)63が形成され、スルーホール63の底部で抵抗素子54の上部電極膜53の少なくとも一部が露出されている。スルーホール63内にはプラグ(コンタクト電極)64が形成されている。プラグ64は、スルーホール63の底部および側壁上に形成されたチタン膜、窒化チタン膜あるいはそれらの積層膜などからなる導電性バリア膜67aと、導電性バリア膜67a上にスルーホール63内を埋め込むように形成されたタングステン(W)膜(主導体膜)67bとからなる。タングステン膜67bの代わりにアルミニウム膜などを用いることもできる。スルーホール63およびプラグ64は、抵抗素子54の上部に形成されており、プラグ64は抵抗素子54の上部電極膜53と電気的に接続されている。従って、プラグ64は、層間絶縁膜である絶縁膜62の開口部(スルーホール63)内に形成され(埋め込まれ)、上部電極膜53と電気的に接続された導電体部である。
周辺回路領域10Bにおいて、絶縁膜41,61,62にスルーホール(開口部、接続孔)65が形成され、スルーホール65の底部で配線37の上面が露出されている。スルーホール65内にはプラグ(コンタクト電極)66が形成されている。プラグ66は、スルーホール65の底部および側壁上に形成されたチタン膜、窒化チタン膜あるいはそれらの積層膜などからなる導電性バリア膜67aと、導電性バリア膜67a上にスルーホール65内を埋め込むように形成されたタングステン膜(主導体膜)67bとからなる。スルーホール65およびプラグ66は、配線37と電気的に接続されている。
プラグ64,66が埋め込まれた絶縁膜62上には、第2層配線としての配線(第2配線層)72が形成されている。配線72は、例えば、チタン膜、窒化チタン膜あるいはそれらの積層膜などからなる導電性バリア膜71aと、導電性バリア膜71a上のアルミニウム(Al)膜またはアルミニウム合金膜(主導体膜)71bとからなる。アルミニウム合金膜71b上に導電性バリア膜71aと同様の導電性バリア膜を更に形成して配線72を構成することもできる。
相変化メモリ領域10Aにおいて、配線72のうちの配線(ビット線)72aは、プラグ64を介して抵抗素子54の上部電極膜53に電気的に接続されている。従って、相変化メモリ領域10Aのビット線を構成する配線72aは、プラグ64、抵抗素子54、プラグ43、配線37aおよびプラグ33を介して、相変化メモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のドレイン領域20,21(n+型半導体領域19a)に電気的に接続されている。
周辺回路領域10Bにおいて、配線72は、プラグ66を介して配線37と電気的に接続され、更にプラグ33を介してMISFETQNのn+型半導体領域19bやMISFETQPのp+型半導体領域19cと電気的と接続されている。
絶縁膜62上に、配線72を覆うように、層間絶縁膜としての絶縁膜(図示せず)が形成され、更に上層の配線層(第3層配線以降の配線)などが形成されるが、ここでは図示およびその説明は省略する。
このように、半導体基板11に、相変化メモリ領域10Aの相変化メモリ(相変化型の不揮発性メモリ)と周辺回路領域10BのMISFETとを含む半導体集積回路が形成されて、本実施の形態の半導体装置が構成されている。
上記のように、記録層52(または記録層52を含む抵抗素子54)と、記録層52(抵抗素子54)に接続されたメモリセルトランジスタ(メモリセル選択用トランジスタ)としてのMISFETQM1,QM2とにより、相変化メモリのメモリセルが構成されている。MISFETQM1,QM2のゲート電極16aは、ワード線(上記ワード線WL1〜WL4に対応)に電気的に接続されている。抵抗素子54の上面側(上部電極膜53)は、プラグ64を介して上記配線72aからなるビット線(上記ビット線BL1〜BL4に対応)に電気的に接続されている。抵抗素子54の下面側(記録層52の下面側、すなわち界面層51)は、プラグ43、配線37aおよびプラグ33を介して、MISFETQM1,QM2のドレイン用の半導体領域20,21に電気的に接続されている。MISFETQM1,QM2のソース用の半導体領域22は、プラグ33を介して、ソース配線37b(ソース線)に電気的に接続されている。
なお、本実施の形態では、相変化メモリのメモリセルトランジスタ(メモリセル選択用トランジスタ)としてnチャネル型のMISFETQM1,QM2を用いた場合について示しているが、他の形態として、nチャネル型のMISFETQM1,QM2の代わりに、他の電界効果型トランジスタ、例えばpチャネル型のMISFETなどを用いることもできる。ただし、相変化メモリのメモリセルトランジスタとしては、高集積化の観点からMISFETを用いることが好ましく、pチャネル型のMISFETに比べ、オン状態でのチャネル抵抗の小さいnチャネル型のMISFETQM1,QM2がより好適である。
また、本実施の形態では、抵抗素子54を、プラグ43、配線37(37a)およびプラグ33を介してメモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のドレイン(半導体領域10,11)に電気的に接続しているが、他の形態として、抵抗素子54を、プラグ43、配線37(37a)およびプラグ33を介してメモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のソースに電気的に接続することもできる。すなわち、抵抗素子54を、プラグ43、配線37(37a)およびプラグ33を介してメモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のソースまたはドレインの一方に電気的に接続すればよい。ただし、メモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のソースよりもドレインをプラグ33、配線37(37a)およびプラグ43を介して抵抗素子54に電気的に接続した方が、不揮発性メモリとしての機能を考慮すれば、より好ましい。
次に、相変化メモリ(相変化メモリ領域2,10Aに形成された相変化メモリ)の動作について説明する。
図6および図7は、相変化メモリの動作を説明するためのグラフである。図6のグラフの縦軸は、相変化メモリに印加するリセットパルス、セットパルスおよびリードパルスの電圧(任意単位:arbitrary unit)に対応し、横軸は時間(任意単位:arbitrary unit)に対応する。図7のグラフの縦軸は、相変化メモリにリセットパルス、セットパルスまたはリードパルスを印加したときの記録層52の温度(任意単位:arbitrary unit)に対応し、横軸は時間(任意単位:arbitrary unit)に対応する。
記憶素子(相変化メモリのメモリセル)に記憶情報‘0’を書き込む場合、すなわち相変化メモリのリセット動作(記録層52のアモルファス化)時には、図6に示されるようなリセットパルスをビット線(配線72a)およびプラグ64を介して抵抗素子54(記録層52)に印加する。MISFETQM1,QM2のソース(半導体領域22)には、ソース配線37bおよびプラグ33を介して固定電位(例えば0V)を供給し、選択されたMISFETのゲート電極16aには、ワード線を介して所定の電圧を印加する。このリセットパルスは、記録層52を、その融点Tm以上に熱してからアモルファス化温度Ta以下まで急冷するような電圧パルスであり、比較的高い電圧(例えば1.5V程度)を比較的短い時間印加する。リセットパルス印加時は、比較的大きな電流が流れ、図7に示されるように、記録層52の温度が記録層52の融点Tm以上に上昇して記録層52が溶融し、リセットパルスの印加が終了すると、記録層52はアモルファス化温度Ta以下にまで急冷し、記録層52はアモルファス状態となる(リセット状態)。リセットパルスの印加時間を短くして、与える全エネルギーを小さくし、冷却時間t1を短く、例えば約1nsに設定することにより、記録層52は高抵抗のアモルファス状態となる。このように、リセット動作は、プラグ43(下部電極)と抵抗素子54とからなる抵抗メモリ素子(相変化メモリ素子)の書き換えのためにプラグ43と上部電極膜53との間を高抵抗化させる動作である。
逆に、記憶情報‘1’を書き込む場合、すなわち相変化メモリのセット動作(記録層52の結晶化)時には、図6に示されるようなセットパルスを、ビット線(配線72a)およびプラグ64を介して抵抗素子54(記録層52)に印加する。MISFETQM1,QM2のソース(半導体領域22)には、ソース配線37bおよびプラグ33を介して固定電位(例えば0V)を供給し、選択されたMISFETのゲート電極16aには、ワード線を介して所定の電圧を印加する。このセットパルスは、記録層52をガラス転移点と同じかそれよりも高い結晶化温度TCより高い温度領域に保つような電圧パルスであり、リセットパルスよりも低い電圧(例えば0.8V程度)をリセットパルスよりも長い時間(結晶化時間以上)印加するセットパルス印加時は、リセット時よりも低い電流が比較的長時間流れ、図7に示されるように、記録層52の温度が記録層52の結晶化温度TC以上の温度に上昇して記録層52が結晶化し、セットパルスの印加が終了すると、記録層52は冷却し、結晶状態(多結晶状態)となる(セット状態)。結晶化に要する時間t2は記録層52を構成するカルコゲナイド材料の組成によって異なるが、例えば、約50nsである。図7に示した記録層52(抵抗素子54)の温度は、記録層52自身が発するジュール熱や周囲への熱拡散などに依存する。このように、セット動作は、プラグ43(下部電極)と抵抗素子54とからなる抵抗メモリ素子(相変化メモリ素子)の書き換えのためにプラグ43と上部電極膜53との間を低抵抗化させる動作である。
相変化メモリのリード動作時には、図6に示されるようなリードパルスを、ビット線(配線72a)およびプラグ64を介して抵抗素子54(記録層52)に印加する。MISFETQM1,QM2のソース(半導体領域22)には、ソース配線37bおよびプラグ33を介して固定電位(例えば0V)を供給し、選択されたMISFETのゲート電極16aには、ワード線を介して所定の電圧を印加する。リードパルスは、セットパルスよりも更に低い電圧(例えば0.3V程度)をセットパルスよりも短い時間印加する。リードパルスの電圧は比較的低く、リードパルスを印加しても、図7に示されるように、記録層52の温度が記録層52の結晶化温度Tc以上に上昇することはないので、記録層52の相状態は変化しない。記録層52が結晶状態のときは、記録層52(抵抗素子54)は相対的に低抵抗であり、記録層52がアモルファス状態のときは、記録層52(抵抗素子54)は相対的に高抵抗である。このため、リードパルスを印加したときにその記録層52(抵抗素子54)が接続されたMISFET(QM1またはQM2)に流れる電流は、記録層52が結晶状態の場合は相対的に大きく、記録層52がアモルファス状態の場合は、相対的に小さくなる。従って、流れる電流の大小により、データ(プラグ43と上部電極膜53との間の記録層52が結晶状態(低抵抗状態)とアモルファス状態(高抵抗状態)のどちらであるか)を判別することができる。
このように、リセット動作およびセット動作により記録層52がアモルファス状態であるかあるいは結晶状態であるかを移行させることにより、相変化メモリにデータを記録(記憶、格納、書き込み)することができ、記録層52がアモルファス状態であるかあるいは結晶状態であるかを相変化メモリの記憶情報とし、相変化メモリに記録したデータ(記憶情報)をリード動作により読み出すことができる。従って、上記記録層52は、相変化メモリの情報の記録層である。
図8は、カルコゲナイド材料を用いた記憶素子(記録層52)の動作原理を模式的に示す説明図(グラフ)であり、記憶素子のI−V特性が示されている。図8のグラフの横軸は記憶素子(記録層52)への印加電圧に対応し、縦軸は記憶素子(記録層52)を流れる電流に対応する。図8では、IW1からIW0の範囲内のセット電流を印加する場合に記憶情報‘1’が書き込まれ、IW0以上のリセット電流を印加する場合に記憶情報‘0’が書き込まれることを示している。図8のI−V特性に示されるように、書き込み情報に応じた値の電流パルスを記憶素子(記録層52)に印加することにより、記憶素子の結晶状態が制御される。ただし、どちらの状態を‘0’、どちらの状態を‘1’としても良い。以下では、図8に従い、四通りの書き込み動作をより詳細に説明する。
図8からも分かるように、第一に、初期状態1の記憶素子(記録層52)に‘1’書き込みを行う場合、セット電流(セットパルス)が印加されると、セット(結晶)状態の低抵抗曲線を辿って初期状態とセット領域との間を往復するので、状態が保持される。第二に、初期状態‘1’の記憶素子(記録層52)に‘0’書き込みを行う場合、リセット電流(リセットパルス)が印加されると、セット状態の低抵抗曲線を辿ってリセット電流に達する。次に、ジュール熱により部分的に融解が始まるので、導電率が徐々に下がる。さらに、融解が進むと高抵抗状態になる。液相の記憶素子を急冷すると、アモルファス状態に相変化するので、液相時の抵抗よりも若干低いリセット(非晶質)状態の高抵抗曲線を辿って初期状態に戻る。図8で点線で示した部分は、リセットパルスは既に切れているが、そのまま電圧をかけ続けたら抵抗値の変化で電流はこのように変化するはず、という仮想的な線である。第三に、初期状態‘0’の記憶素子(記録層52)に‘1’書き込みを行う場合、セット電流(セットパルス)を印加すると、記憶素子の端子電圧がしきい電圧V0を超えた時に、低抵抗状態にスイッチする。スイッチング後は、ジュール熱によって結晶化が進行する。電流値がセット電流に達すると、結晶化領域が広がって相変化することにより、さらに抵抗値が下がるので、低抵抗曲線を辿って初期状態に戻る。途中から電圧−電流曲線の傾斜がゆるやかになるのは、低抵抗状態へスイッチングしていた領域がスイッチOFFとなり、結晶化による抵抗低下のみが残留するためである。第四に、初期状態‘0’の記憶素子(記録層52)に‘0’書き込みを行う場合、前述したスイッチング後にほとんど結晶化する時間はなく、スイッチングしたことによる低抵抗曲線を辿ってリセット領域に達し、融解、急冷、固化して初期状態に戻る。
次に、図9および上記図2を参照して、図2に示したアレイ構成を用いたメモリセルの読み出し動作について説明する。ここで、図9は、メモリセルMC11を選択する場合の動作波形(電圧印加波形)の一例を示している。
まず、待機状態において、プリチャージイネーブル信号PCが電源電圧Vdd(例えば1.5V)に保持されているので、n型チャネル型MISトランジスタ(MISFET)QC1ないしQC4によりビット線BL1がプリチャージ電圧VDLに維持される。ここでプリチャージ電圧VDLは、Vddよりもトランジスタのしきい電圧だけ降下した値で、例えば1.0Vである。また、共通ビット線I/Oも、プリチャージ電圧VDLにプリチャージされている。
読み出し動作が始まると、電源電圧Vddとなっているプリチャージイネーブル信号PCが接地電位GNDに駆動され、接地電位GND(VSSに対応)となっているビット選択線YS1が昇圧電位VDH(例えば1.5V以上)に駆動されることにより、トランジスタ(MISFET)QD1が導通する。この時、ビット線BL1はプリチャージ電圧VDLに保持されるが、ソース線CSLはソース電圧VSL(例えば0V)に駆動される。このソース電圧VSLとプリチャージ電圧VDLは、プリチャージ電圧VDLがソース電圧VSLよりも高く、その差は、記憶素子(抵抗)MRの端子電圧が図8に示したような読み出し電圧領域の範囲内に収まるような関係に設定されている。
次に、接地電位GNDとなっているワード線WL1が昇圧電位VDHに駆動されると、ワード線WL1上の全てのメモリセルにおけるトランジスタ(MISFET)QMp(p=1、2、…、m)が導通する。この時、記憶素子MRに電位差が生じたメモリセルMC11内に電流経路が発生し、ビット線BL1が、記憶素子MRの抵抗値に応じた速さでソース電圧VSLに向かって放電される。図9では、記憶情報‘1’を保持している場合の方が、記憶情報‘0’の場合よりも抵抗値が小さいものとしているので、放電が速い。したがって、記憶情報に応じた信号電圧が発生される。非選択メモリセルMC12〜MC1mでは記憶素子MRの電位差が0なので、非選択ビット線BL2ないしBL4はプリチャージ電圧VDLに保持される。すなわち、ワード線WL1とビット線BL1により選択されたメモリセルMC11のみが、ビット線BL1を通じて読み出し電流を流す。
なお、待機状態において、メモリアレイのビット線やソース線をフローティングとすると、読み出し動作開始時にビット線と共通ビット線を接続した際に、電圧が不定であるビット線の容量が共通ビット線から充電されてしまう。このため、図9ではワード線WL1に応じてビット選択線YS1も立ち下げ、さらに接地電位GNDとなっているプリチャージイネーブル信号PCを電源電圧Vddに駆動することにより、ビット線およびソース線をプリチャージ電位VDLに駆動して待機状態としている。また、昇圧電位VDHは、電源電圧Vddとnチャネル型MISトランジスタのしきい電圧VTNを用いて、VDH>Vdd+VTNの関係を満たすように設定されている。例えば相変化メモリの書き込み動作では、後述するように、読み出し動作よりも大きな電流を流す必要がある。このため、本実施の形態では、ワード線とビット選択線を昇圧電位VDHに駆動してnチャネル型MISトランジスタの抵抗を下げることにより、正確な書き込み動作を行うことができる。また、プリチャージ電圧VDLをソース電圧VSLより高く設定することにより、選択ソース線を選択メモリセル中のトランジスタ(MISFET)QMmのソースとし、記憶素子MRの抵抗によらず、トランジスタのゲート−ソース間電圧を確保できる。なお、逆の電位関係であっても、その差が、図8に示したような読み出し電圧領域の範囲内に収まるように設定されているならば、同様の選択動作が可能である。
なお、図9は、ソース線CSLを駆動してからワード線WL1を駆動する例であるが、設計の都合によっては、ワード線WL1を駆動してからソース線CSLを駆動してもよい。この場合には、最初はワード線WL1が駆動されて選択トランジスタQM1が導通するため、記憶素子MRの端子電圧は0Vに確保される。その後、ソース線CSLを駆動すると、記憶素子MRの端子電圧は0Vから大きくなるが、その値はソース線CSLの駆動速度で制御可能で、前述した読み出し領域の範囲に収めることができる。
以上、メモリセルMC11を選択する例を示したが、同じビット線上のメモリセルは、それらのワード線電圧が接地電位GNDに固定されているので選択されることはない。また、他のビット線とソース線は同じ電位VDLなので、残りのメモリセルも非選択セルの状態に維持される。
以上の説明では、待機状態のワード線を接地電位GNDとし、選択状態のソース線をソース電圧VSLとしている。これらの電圧関係は、非選択メモリセルを通じて流れる電流が動作に影響を及ぼさないように設定する。すなわち、ソース線が選択され、ワード線が非選択のメモリセル、例えばメモリセルMC11を選択する際の非選択メモリセルMC21〜MCn1のトランジスタ(MISFET)QMが十分オフになるように設定すれば良い。ここで示したように、待機状態のワード線電圧を接地電位GNDとし、ソース電圧VSLを正の電圧とすることにより、トランジスタQMのしきい値電圧を低くできる。場合によっては、選択されたソース線を接地電位0Vとして、待機状態のワード線を負の電圧にすることも可能である。その場合にも、トランジスタQMのしきい値電圧を低くできる。待機時のワード線用に負電圧を発生させる必要があるが、選択時のソース線の電圧が、外部から印加される接地電位GNDであるため安定させ易い。トランジスタQMのしきい値電圧を十分高くすれば、選択時のソース線と待機状態のワード線を接地電位0Vとしても良い。その場合、外部から印加される接地電位GNDである上に、待機状態のワード線の容量が安定化容量として働くために、選択時のソース線の電圧をさらに安定なものにできる。
さらに、図10に従い、上記図2に示したアレイ構成を用いたメモリセルの書き込み動作について説明する。但し、図10は、メモリセルMC11を選択する場合の動作波形である。まず、メモリセルMC11の選択動作は、読み出し動作と同じように行われる。メモリセルMC11が選択されると、書き込み電流が発生される。‘0’書き込みの場合、図8に示した範囲の値に設定されたリセット電流がメモリセルMC11に印加される。リセット電流のパルス幅は短く、駆動後は直ちに待機状態に戻って、電流値が0となる。このようなリセット電流により、図6および図7に示したようなリセットパルスと同じジュール熱が発生される。反対に、‘1’書き込みの場合、図8に示した範囲の値に設定されたセット電流が印加される。このパルス幅は約50nsである。このようなセット電流により、図6および図7に示したようなセットパルスと同じジュール熱が発生される。このように、書き込みパルスの印加時間と電流値は書き込み回路で制御されるので、どちらの記憶情報を書き込む場合においても、メモリセルはセット電流のパルス幅だけ選択状態にある。
次に、本実施の形態の半導体装置1の製造工程について、図面を参照して説明する。図11〜図21は、本実施の形態の半導体装置1の製造工程中の要部断面図であり、上記図4に対応する領域が示されている。なお、理解を簡単にするために、図15〜図21では、図14の絶縁膜31およびそれより下の構造に対応する部分は図示を省略している。
まず、図11に示されるように、例えばp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)11を準備する。それから、半導体基板11の主面に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon )法などにより、絶縁体からなる素子分離領域12を形成する。素子分離領域12を形成することにより、半導体基板11の主面には、素子分離領域12によって周囲を規定された活性領域が形成される。
次に、半導体基板11の主面にp型ウエル13a,13bとn型ウエル14を形成する。このうち、p型ウエル13aは相変化メモリ領域10Aに形成され、p型ウエル13bおよびn型ウエル14は周辺回路領域10Bに形成される。例えば半導体基板11の一部にp型の不純物(例えばホウ素(B))をイオン注入することなどによりp型ウエル13a,13bを形成し、半導体基板11の他の一部にn型の不純物(例えばリン(P)またはヒ素(As))をイオン注入することなどによりn型ウエル14を形成することができる。
次に、例えば熱酸化法などを用いて、半導体基板11のp型ウエル13a,13bおよびn型ウエル14の表面に薄い酸化シリコン膜などからなるゲート絶縁膜用の絶縁膜15を形成する。絶縁膜15として酸窒化シリコン膜などを用いることもできる。絶縁膜15の膜厚は、例えば1.5〜10nm程度とすることができる。
次に、p型ウエル13a,13bおよびn型ウエル14の絶縁膜15上にゲート電極16a,16b,16cを形成する。例えば、絶縁膜15上を含む半導体基板11の主面の全面上に導電体膜として低抵抗の多結晶シリコン膜を形成し、フォトレジスト法およびドライエッチング法などを用いてその多結晶シリコン膜をパターン化することにより、パターニングされた多結晶シリコン膜(導電体膜)からなるゲート電極16a,16b,16cを形成することができる。ゲート電極16aの下に残存する絶縁膜15がゲート絶縁膜15aとなり、ゲート電極16bの下に残存する絶縁膜15がゲート絶縁膜15bとなり、ゲート電極16cの下に残存する絶縁膜15がゲート絶縁膜15cとなる。なお、成膜時または成膜後に不純物をドーピングすることにより、ゲート電極16a,16bはn型不純物が導入された多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)により形成され、ゲート電極16cはp型不純物が導入された多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)により形成される。
次に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより、p型ウエル13aのゲート電極16aの両側の領域にn−型半導体領域17aを形成し、p型ウエル13bのゲート電極16bの両側の領域にn−型半導体領域17bを形成する。また、ホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどにより、n型ウエル14のゲート電極16cの両側の領域にp−型半導体領域17cを形成する。
次に、ゲート電極16a,16b,16cの側壁上に、サイドウォール18a,18b、18cを形成する。サイドウォール18a,18b、18cは、例えば、半導体基板11上に酸化シリコン膜、窒化シリコン膜またはそれらの積層膜からなる絶縁膜を堆積し、この絶縁膜を異方性エッチングすることによって形成することができる。
次に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより、p型ウエル13aのゲート電極16aおよびサイドウォール18aの両側の領域にn+型半導体領域19aを形成し、p型ウエル13bのゲート電極16bおよびサイドウォール18bの両側の領域にn+型半導体領域19bを形成する。また、ホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどにより、n型ウエル14のゲート電極16cおよびサイドウォール18cの両側の領域にp+型半導体領域19cを形成する。イオン注入後、導入した不純物の活性化のためのアニール処理(熱処理)を行うこともできる。
これにより、相変化メモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のドレイン領域として機能するn型の半導体領域20,21と、共通のソース領域として機能するn型の半導体領域22とが、それぞれ、n+型半導体領域19aおよびn−型半導体領域17aにより形成される。そして、周辺回路領域10BのMISFETQNのドレイン領域として機能するn型の半導体領域とソース領域として機能するn型の半導体領域とが、それぞれ、n+型半導体領域19bおよびn−型半導体領域17bにより形成され、MISFETQPのドレイン領域として機能するp型の半導体領域とソース領域として機能するp型の半導体領域とが、それぞれ、p+型半導体領域19cおよびp−型半導体領域17cにより形成される。
次に、ゲート電極16a,16b,16c、n+型半導体領域19a,19bおよびp+型半導体領域19cの表面を露出させ、例えばコバルト(Co)膜のような金属膜を堆積して熱処理することによって、ゲート電極16a,16b,16c、n+型半導体領域19a,19bおよびp+型半導体領域19cの表面に、それぞれ金属シリサイド層25を形成する。その後、未反応のコバルト膜(金属膜)は除去する。
このようにして、図11の構造が得られる。ここまでの工程により、相変化メモリ領域10Aに、nチャネル型のMISFETQM1,QM2が形成され、周辺回路領域10Bに、nチャネル型のMISFETQNとpチャネル型のMISFETQPとが形成される。従って、相変化メモリ領域10AのMISFETQM1,QM2と周辺回路領域10BのMISFETQN,QPとは、同じ製造工程で形成することができる。
次に、図12に示されるように、半導体基板11上にゲート電極16a,16b,16cを覆うように絶縁膜(層間絶縁膜)31を形成する。絶縁膜31は、例えば酸化シリコン膜などからなる。絶縁膜31を複数の絶縁膜の積層膜により形成することもできる。絶縁膜31の形成後、必要に応じてCMP処理などを行って絶縁膜31の上面を平坦化する。これにより、相変化メモリ領域10Aと周辺回路領域10Bとで、絶縁膜31の上面の高さがほぼ一致する。
次に、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜31上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、絶縁膜31をドライエッチングすることにより、絶縁膜31にコンタクトホール32を形成する。コンタクトホール32の底部では、半導体基板11の主面の一部、例えばn+型半導体領域19a,19bおよびp+型半導体領域19c(の表面上の金属シリサイド層25)の一部やゲート電極16a,16b,16c(の表面上の金属シリサイド層25)の一部などが露出される。
次に、コンタクトホール32内に、プラグ33を形成する。この際、例えば、コンタクトホール32の内部を含む絶縁膜31上に導電性バリア膜33aをスパッタリング法などによって形成した後、タングステン膜33bをCVD法などによって導電性バリア膜33a上にコンタクトホール32を埋めるように形成し、絶縁膜31上の不要なタングステン膜33bおよび導電性バリア膜33aをCMP法またはエッチバック法などによって除去する。これにより、コンタクトホール32内に残存して埋め込まれたタングステン膜33bおよび導電性バリア膜33aからなるプラグ33を形成することができる。
次に、図13に示されるように、プラグ33が埋め込まれた絶縁膜31上に、絶縁膜34を形成する。それから、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜34上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、絶縁膜34をドライエッチングすることにより、絶縁膜34に配線溝(開口部)35を形成する。配線溝35の底部では、プラグ33の上面が露出される。なお、配線溝35のうち、相変化メモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のドレイン領域(半導体領域20,21)上に形成されたプラグ33を露出する配線溝35、すなわち開口部35aは、溝状のパターンではなく、そこから露出するプラグ33の平面寸法よりも大きな寸法の孔(接続孔)状のパターンとして形成することができる。また、本実施の形態では、開口部35aを他の配線溝35と同時に形成しているが、開口部35a形成用のフォトレジストパターンと他の配線溝35形成用のフォトレジストパターンとを別に用いることで、開口部35aと他の配線溝35とを異なる工程で形成することもできる。
次に、配線溝35内に配線37を形成する。この際、例えば、配線溝35の内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜34上に導電性バリア膜36aをスパッタリング法などにより形成した後、タングステン膜などからなる主導体膜36bをCVD法などによって導電性バリア膜36a上に配線溝35を埋めるように形成し、絶縁膜34上の不要な主導体膜36bおよび導電性バリア膜36aをCMP法またはエッチバック法などによって除去する。これにより、配線溝35内に残存して埋め込まれた主導体膜36bおよび導電性バリア膜36aからなる配線37を形成することができる。
配線37のうち、相変化メモリ領域10Aの開口部35a内に形成された配線37aは、プラグ33を介して相変化メモリ領域10AのMISFETQM1,QM2のドレイン領域(半導体領域20,21)に電気的に接続される。配線37aは、半導体基板11上に形成された半導体素子間を接続するように絶縁膜31上に延在しているのではなく、プラグ43とプラグ33とを電気的に接続するために絶縁膜31上に局所的に存在してプラグ43とプラグ33との間に介在している。このため、配線37aは、配線ではなく、接続用導体部(コンタクト電極)とみなすこともできる。また、相変化メモリ領域10Aにおいて、MISFETQM1,QM2のソース用の半導体領域22(n+型半導体領域19a)にプラグ33を介して接続されたソース配線37bが、配線37により形成される。
配線37は、上記のような埋め込みタングステン配線に限定されず種々変更可能であり、例えば埋め込み以外のタングステン配線や、アルミニウム配線などとすることもできる。
次に、図14に示されるように、配線37が埋め込まれた絶縁膜34上に、絶縁膜(層間絶縁膜)41を形成する。
次に、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜41上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、絶縁膜41をドライエッチングすることにより、絶縁膜41にスルーホール(開口部、接続孔)42を形成する。スルーホール42は、相変化メモリ領域10Aに形成され、スルーホール42の底部では、上記配線37aの上面が露出される。
次に、スルーホール42内に、プラグ43を形成する。この際、例えば、スルーホール42の内部を含む絶縁膜41上に導電性バリア膜43aをスパッタリング法などによって形成した後、タングステン膜43bをCVD法などによって導電性バリア膜43a上にスルーホール42を埋めるように形成し、絶縁膜41上の不要なタングステン膜43bおよび導電性バリア膜43aをCMP法またはエッチバック法などによって除去する。これにより、コンタクトホール42内に残存して埋め込まれたタングステン膜43bおよび導電性バリア膜43aからなるプラグ43を形成することができる。このように、プラグ43は、絶縁膜41に形成された開口部(スルーホール42)に導電体材料を充填して形成される。
次に、図15に示されるように、プラグ43が埋め込まれた絶縁膜41上に、界面層51、記録層52および上部電極膜53を順に形成(堆積)する。なお、上記のように、図15〜図21では、図14の絶縁膜31およびそれより下の構造に対応する部分は図示を省略している。界面層51の膜厚(堆積膜厚)は、例えば0.5〜5nm程度、記録層52の膜厚(堆積膜厚)は、例えば10〜200nm程度、上部電極膜53の膜厚(堆積膜厚)は、例えば10〜200nm程度である。
次に、図16に示されるように、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、界面層51、記録層52および上部電極膜53からなる積層膜をパターニングする。これにより、上部電極膜53、記録層52および界面層51の積層パターンからなる抵抗素子54が、プラグ43が埋め込まれた絶縁膜41上に形成される。界面層51を、上部電極膜53および記録層52をドライエッチングする際のエッチングストッパ膜として用いることもできる。
次に、図17に示されるように、絶縁膜41上に、抵抗素子54を覆うように、絶縁膜(エッチングストッパ膜)61を形成する。絶縁膜61の膜厚(堆積膜厚)は、例えば5〜20nm程度とすることができる。
絶縁膜61としては、記録層52が昇華しない温度(例えば400℃以下)で成膜できる材料膜を用いることが好ましい。絶縁膜61として窒化シリコン膜を用いれば、例えばプラズマCVD法などを用いて記録層52が昇華しない温度(例えば400℃以下)で成膜できるので、より好ましく、これにより、絶縁膜61の成膜時の記録層52の昇華を防止できる。
次に、絶縁膜61上に絶縁膜(層間絶縁膜)62を形成する。絶縁膜62は絶縁膜61よりも厚く、層間絶縁膜として機能することができる。絶縁膜62の形成後、必要に応じてCMP処理などを行って絶縁膜62の上面を平坦化することもできる。
次に、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜62上にフォトレジストパターンRP1を形成する。フォトレジストパターンRP1は、スルーホール63を形成すべき領域に開口部を有している。
次に、図18に示されるように、フォトレジストパターンRP1をエッチングマスクとして、絶縁膜62をドライエッチングすることにより、絶縁膜61,62にスルーホール(開口部、接続孔、貫通孔)63を形成する。この際、まず、絶縁膜61よりも絶縁膜62の方がエッチングされやすい条件で絶縁膜61が露出するまで絶縁膜62をドライエッチングして絶縁膜61をエッチングストッパ膜として機能させ、それから、絶縁膜62よりも絶縁膜61の方がエッチングされやすい条件でスルーホール63の底部の絶縁膜61をドライエッチングすることで、絶縁膜61,62にスルーホール63を形成することができる。その後、フォトレジストパターンRP1は除去する。
スルーホール63の底部では、抵抗素子54の上部電極膜53の少なくとも一部が露出される。絶縁膜62をドライエッチングする際のエッチングストッパ膜としての絶縁膜61を用いているため、上部電極膜53のオーバーエッチングを防止し、スルーホール63形成のためのドライエッチング時のエッチングダメージや、プラグ64用の導電体膜成膜時の熱負荷ダメージを抑えて、プラグ64の直下の領域の記録層52の特性の変化を抑制または防止し、相変化メモリの電気特性の信頼性を良好なものとすることができる。また、記録層52の側壁は絶縁膜61で覆われているため、スルーホール63に目外れが生じたとしても、スルーホール63から記録層52が露出するのを防止でき、プラグ64用の導電体膜成膜時に記録層52が昇華するのを防止できる。また、絶縁膜61により記録層52の昇華を防止できるので、スルーホール63形成時に、スルーホール63の下部近傍に異物が形成されず、また、たとえ異物が形成されたとしても洗浄で容易に除去できる。
また、上記のように絶縁膜61のドライエッチングの際に絶縁膜をエッチングストッパ膜として機能させるので、絶縁膜61は、絶縁膜62とエッチング速度(エッチング選択比)を異ならせることができる材料膜により形成されており、絶縁膜61と絶縁膜62とが異なる材料により形成されていれば、より好ましい。また、絶縁膜61の膜厚は、抵抗素子54の上部電極膜53の膜厚よりも薄いことが好ましい。
次に、図19に示されるように、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜62上に形成した他のフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、絶縁膜62,61,41をドライエッチングすることにより、絶縁膜62,61,41にスルーホール(開口部、接続孔)65を形成する。スルーホール65は、周辺回路領域10Bに形成され、その底部で配線37の上面が露出される。その後、フォトレジストパターンは除去する。なお、先にスルーホール65を形成してから、上記スルーホール63を形成することもできる。また、スルーホール63とスルーホール65とは、異なる工程で形成することが好ましいが、同じ工程で形成することも可能である。
次に、スルーホール63,65内に、プラグ64,66を形成する。この際、例えば、スルーホール63,65の内部を含む絶縁膜62上に導電性バリア膜67aをスパッタリング法などによって形成した後、タングステン膜67bをCVD法などによって導電性バリア膜67a上にスルーホール63,65を埋めるように形成し、絶縁膜62上の不要なタングステン膜67bおよび導電性バリア膜67aをCMP法またはエッチバック法などによって除去する。これにより、スルーホール63内に残存して埋め込まれたタングステン膜67bおよび導電性バリア膜67aからなるプラグ64と、スルーホール65内に残存して埋め込まれたタングステン膜67bおよび導電性バリア膜67aからなるプラグ66とを形成することができる。タングステン膜67bの代わりに、アルミニウム(Al)膜またはアルミニウム合金膜(主導体膜)などを用いることもできる。
また、スルーホール63,65を形成した後、同じ工程でプラグ64,66を形成することで製造工程数を低減することができるが、他の形態として、スルーホール63またはスルーホール65の一方を形成してからそのスルーホールを埋めるプラグ(プラグ64またはプラグ66の一方)を形成し、その後、スルーホール63またはスルーホール65の他方を形成してそのスルーホールを埋めるプラグ(プラグ64またはプラグ66の他方)を形成することもできる。
次に、図20に示されるように、プラグ64,66が埋め込まれた絶縁膜62上に、第2層配線として配線72を形成する。例えば、プラグ64,66が埋め込まれた絶縁膜62上に、導電性バリア膜71aとアルミニウム膜またはアルミニウム合金膜71bとをスパッタリング法などによって順に形成し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いてパターニングすることで、配線72を形成することができる。配線72は、上記のようなアルミニウム配線に限定されず種々変更可能であり、例えばタングステン配線または銅配線(埋込銅配線)などとすることもできる。
次に、図21に示されるように、絶縁膜62上に、配線72を覆うように、層間絶縁膜としての絶縁膜81を形成し、絶縁膜81にスルーホール(図示せず)とそのスルーホールを埋めるプラグ(図示せず)を形成し、絶縁膜81上に、第3層配線として配線82を形成する。配線82は、例えば、導電性バリア膜82aとアルミニウム膜またはアルミニウム合金膜82bの積層膜などからなり、配線72と同様の手法により形成することができる。配線82は、絶縁膜81のスルーホール(図示せず)内に埋め込まれたプラグ(図示せず)などを介して、下層の配線(ここでは配線37,72)と必要に応じて電気的に接続されている。
次に、絶縁膜81上に、配線82を覆うように、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜またはこれらの積層膜などからなる相対的に薄い絶縁膜91を形成してから、絶縁膜91上に絶縁膜91よりも相対的に厚い表面保護膜としての絶縁膜(保護膜、保護樹脂膜、表面保護膜)92を形成する。絶縁膜92は、例えば、ポリイミド樹脂(樹脂材料)などの樹脂材料膜により形成することができる。それから、絶縁膜92,91の一部を選択的に除去して開口部93を形成し、開口部93の底部で配線82の一部を露出して配線82からなるパッド部(パッド電極、ボンディングパッド)94を形成する。なお、第3層配線である配線82を最上層配線とする場合について説明したが、これに限定されず、形成する配線層の数は必要に応じて変更可能である。また、図21では、パッド部94を模式的に示しており、パッド部94の形成位置、形状および寸法は、必要に応じて種々変更可能である。例えば、パッド部94は、相変化メモリ領域10Aや周辺回路領域10Bではなく、半導体装置1の周辺部(外周部)に配置することもできる。その後、必要に応じて水素中のアニール処理が行われて、ウエハ・プロセス(ウエハ処理工程)が完了する。
このようにして、半導体基板11に対してウエハ・プロセスが施される。ここでウエハ・プロセスは、前工程とも呼ばれ、一般的に、半導体ウエハ(半導体基板11)の主面上に種々の素子(ここではMISFETQM1,QM2,QN,QPや抵抗素子54など)や配線層(ここでは配線37,72,82)を形成し、表面保護膜(ここでは絶縁膜92)を形成した後、半導体ウエハに形成された複数のチップ領域(各チップ領域から半導体チップが形成される)の各々の電気的試験をプローブ等により行える状態にするまでの工程を言う。なお、上記絶縁膜92は、ウエハ・プロセスを施した半導体ウエハにおいては、最上層となる。
ウエハ・プロセスの後、抵抗素子54の初期化を行う。この抵抗素子54の初期化については、後でより詳細に説明する。その後、ウエハ状態の半導体基板11をダイシングなどによって切断、分離し、個々の半導体チップ(半導体装置)に個片化する。これにより、相変化メモリを有する半導体装置(半導体チップ)1が完成する。
図22〜図24は、本実施の形態の半導体装置1の製造工程中の要部断面図であり、図4の抵抗素子54の近傍に対応する領域が示されている。また、図22〜図24は、同じ断面領域が示されているが、図22は、抵抗素子54を構成する界面層51、記録層52.および上部電極膜53を積層成膜した直後の(図15の工程段階)に対応し、図23は、ウエハ・プロセス終了直後(図21の工程段階)に対応し、図24は、ウエハ・プロセスの後に記録層52の初期化を行った後に対応する。図22〜図24には、記録層52のうち、結晶化度(結晶性)が低く、非晶質(アモルファス)に近い状態にある領域(部分)を符号52aで、領域52aよりも結晶化度(結晶性)の高い状態にある領域(部分)を符号52bで示してある。また、図23、図24では、図面を簡略化するために、絶縁膜61を絶縁膜62に含めて図示している。
本実施の形態の半導体装置1は、図22〜図24にも示されるように、下部電極として機能するプラグ43と、プラグ43(下部電極)上に形成された界面層51と、界面層51上に形成されたカルコゲナイド層からなる記録層52と、記録層52上に形成された上部電極膜53とからなるメモリ素子(抵抗メモリ素子、ここでは相変化メモリ素子)を備えた半導体装置である。下部電極としてのプラグ43は、半導体基板11上に形成された絶縁膜41の開口部42内に埋め込まれ、界面層51は、プラグ43が埋め込まれた絶縁膜41上に形成され、界面層51上に記録層52と上部電極膜53が下から順に形成されている。そして、記録層52の一部がプラグ43と平面的に(半導体基板11の主面に平行な平面でみて)重なっている。すなわち、プラグ43の上面は、記録層52の平面パターンに内包されるように形成されている。
記録層52は、図22に示されるように成膜直後は全体が非晶質に近い状態(高抵抗領域52a)であるが、その後の高温工程(高温になる工程、例えば絶縁膜61、62やプラグ64,66や配線72,82用の導体膜の成膜工程などの配線プロセス)で記録層52は加熱されて、図23に示されるように大部分が結晶化する。
しかしながら、記録層52と界面層51との界面から離れた位置では記録層52は結晶化して結晶化領域52bとなるのに対して、記録層52と界面層51との界面近傍では、記録層52は非晶質に近い状態(領域52a)のまま残存する。これは、カルコゲナイドからなる記録層52は、界面層51との接着性(密着性)が高いので、界面層51との界面から離れた位置に比べて、界面層51との界面の近傍では、記録層52を構成する原子が移動しにくく、成膜直後の原子配列状態がウエハ・プロセス終了後まで残存し易いためと考えられる。従って、ウエハ・プロセス終了直後(初期化前)には、図23に示されるように、記録層52のうち、記録層52と界面層51との界面近傍以外の領域は、結晶化された結晶化領域52bとなっているが、記録層52のうち、記録層52と界面層51との界面近傍の領域は、非晶質(アモルファス)に近い状態(結晶化度が低い状態)の領域52aとなっている。図23において、領域52aの厚み(界面層51の上面に垂直な方向の厚み)は、例えば数nm程度である。
ここで図22に示したのは、記録層52や上部電極膜53の成膜時の基板温度を室温付近に保って成膜を行なった場合である。記録層52や上部電極膜53の成膜時の基板温度が記録膜52の結晶化温度よりも高い状態で成膜した場合には、成膜直後(図15の工程段階)で既に記録層52の大部分が結晶化している。ただし、高い温度で記録層52、上部電極膜53を成膜しても、界面層51の接着力が高いと、記録層52は、界面層51との界面近傍で界面層51と原子配列を整合させる必要があるため、界面層51との界面近傍は、原子配列の乱れた状態で成膜される。一方、界面近傍から離れた位置では、原子が比較的自由に動けるため、高温で成膜した場合は、成膜中にもその場結晶化する。したがって、高い温度で記録層52や上部電極膜53を成膜した場合は、成膜直後にすでに結晶化度が低い高抵抗領域52aとそれよりも結晶化度が高い結晶化領域52bとが形成されている(すなわち成膜直後にすでに図23のような状態になっている)。
このように、界面層51と記録層52の接着性が高いことは、記録層52の剥がれ防止に有効であるという利点を得られるが、ウエハ・プロセス終了後、図23のように、記録層52のうち界面層51との界面付近が結晶化度の低い状態(高抵抗領域52a)のままになっている、すなわち記録層52のうちの界面層51と記録層52との界面近傍に結晶化度が記録層52の他の領域(結晶化領域52b)よりも相対的に低い層(すなわち高抵抗領域52a)が形成された状態となっているという、本発明者が見出した新たな現象を発生させてしまう。従って、ウエハ・プロセス終了直後(後述する初期化前)の状態では、記録層52は、界面層51との界面近傍の結晶化度が相対的に低い層(すなわち高抵抗領域52a)と、その上部の結晶化度が相対的に高い領域(結晶化領域52b)とを有した状態となっている。
領域52bよりも領域52aの方が結晶化度は低いが、結晶化度の高い状態よりも結晶化度の低い状態の方が抵抗率は大きいため、領域52bの抵抗率に比べて領域52aの抵抗率は大きい。このため、領域52aは、領域52bよりも結晶化度が相対的に低く高抵抗率の領域、すなわち高抵抗領域52aと称する(みなす)ことができ、領域52bは、領域52aよりも結晶化度が相対的に高く結晶化された領域、すなわち結晶化領域52aと称する(みなす)ことができる。従って、ウエハ・プロセス直後(初期化前)の状態では、記録層52と界面層51との界面近傍での高抵抗領域52aの存在を主因として、抵抗素子54のウエハ・プロセス直後の抵抗値(初期抵抗)が大きくなってしまう。また、ウエハ・プロセス直後(初期化前)の状態では、界面層51の結晶性も低く、これも抵抗素子54の抵抗値(初期抵抗)が大きくなる原因の一つとなる。すなわち、ウエハ・プロセス直後の状態では、下部電極としてのプラグ43と上部のプラグ64との間に形成される抵抗素子54の抵抗値(初期抵抗)が大きくなってしまう。この状態(抵抗素子54の抵抗が高い状態)のままでは、安定動作時の書き換えパルス(上記図6の電圧パルス)によるプログラミングは困難であり、相変化メモリの安定した書き換えが行えず、相変化メモリを有する半導体装置の性能を低下させてしまう。このため、記録層52と界面層51との界面近傍の高抵抗領域52aの結晶化度を高めて、安定動作時の書き換えパルスによって書き換え可能なレベルの抵抗値(リセット時の抵抗値よりも低い抵抗値、好ましくはセット状態の抵抗値レベル)まで抵抗素子54を低抵抗化させる動作(この動作を初期化と称する)が必要になる。
そこで、本発明者は、安定動作時のプログラミング電圧(上記図6のリセットパルスの電圧値VRPに対応)よりも高い電圧をビット線(配線72a)に加えることによって初期化を行なうことを検討した。電圧印加による初期化は、下部電極としてのプラグ43上にアモルファス(非晶質)に近い状態で残っている界面層51(酸化タンタル)や記録層52(カルコゲナイド)の結晶化度を高める処理であると考えられる。すなわち、プラグ43(下部電極)と上部電極膜53との間に電圧(初期化のための電圧)を印加して、抵抗素子54(記録層52)に電流を流す。この初期化動作によって流れる電流のジュール熱によって、図24に示されるように、プラグ43の上方で、高抵抗領域52aが加熱されて結晶化し、結晶化領域52bとなる。初期化のための電圧の印加により、図24のように、プラグ43の上方は、ほぼ全てが結晶化領域52bとなるので、プラグ43aと上部電極膜53との間に結晶化領域52bによる電流経路が形成され、それによって、抵抗素子54(記録層52)が低抵抗化されて初期化される。図24に示されるような初期化された記録層52(抵抗素子54)は、上記図6に示されるような電圧パルス(安定動作時の書き換えパルス)によるリセット動作、セット動作およびリード動作が可能となる。
図25は、ウエハ・プロセス終了直後(初期状態)の抵抗素子54(相変化素子)の電流−電圧特性を、電流掃引モードで測定した場合の典型的な波形を示すグラフ(説明図)である。図25のグラフの横軸が、電圧(ビット線電圧、すなわちプラグ43aと上部電極膜53との間に印加される電圧)に対応し、図25のグラフの横軸が、抵抗素子54に流れる電流(すなわちプラグ43aと上部電極膜53との間に流れる電流)に対応する。また、図25のグラフのVthは、初期化電圧(初期化に必要な電圧値)に対応し、Ithは、初期化電流(初期化に必要な電流値)に対応する。
図25のグラフでは、領域A1で電圧を増加させるに従って電流が増加するが、折れ曲がり位置A2において、ジュール熱によって高抵抗領域52aが結晶化して結晶化領域52bによる電流経路がプラグ43aと上部電極膜53との間に形成される。これにより、抵抗素子54の抵抗値が下がり、高抵抗の領域A1の電流−電圧特性から、領域A3を経て、低抵抗の領域A4,A5の電流−電圧特性へと移行する。
図25に示される電流−電圧特性が急激な折れ曲がりを示す点(折れ曲がり位置A2)が初期化条件であり、この折れ曲がり位置A2の電圧(閾値電圧)Vthよりも高い電圧幅のパルス(電圧パルス)を印加しないと、抵抗素子54を低抵抗化(初期化)できない。この電圧Vthが、初期化電圧に対応する。また、この初期化電圧Vth印加時に流れる電流Ithが初期化電流に対応する。図25のグラフの場合は、初期化電圧Vthが1.9Vであるので、この場合は、プラグ43aと上部電極膜53との間に、1.9V以上の電圧パルスを印加しないと、抵抗素子54を低抵抗化(初期化)できないことを示している。
図26は、界面層51を酸化タンタル膜で構成したときの、初期化電圧Vthの界面層51(酸化タンタル膜)の膜厚に対する依存性を示すグラフである。図26のグラフの横軸は、界面層51(酸化タンタル膜)の膜厚に対応し、図26のグラフの縦軸は、初期化電圧Vthに対応する。また、図26のグラフには、記録層52に、インジウム(In)を導入していないGe−Sb−Te系のカルコゲナイド材料(GST)を用いた場合(図26のグラフでは黒丸で示してある)と、記録層52に、インジウム(In)を導入したGe−Sb−Te系のカルコゲナイド材料(InGST)を用いた場合(図26のグラフでは白丸で示してある)との2つのケースについて、グラフ化してある。
図26から分かるように、界面層51(酸化タンタル膜)の膜厚が厚くなるに従って、初期化電圧Vthが高くなる。これは、初期化のために記録層52に印加されるべき電圧(図26のグラフの横軸がゼロのときの初期化電圧Vthに相当する値)が界面層51の厚みによって変わらなかったとしても、界面層51の膜厚が厚くなるほど界面層51に加わる電圧が大きくなり、界面層51および記録層52の両者に印加される電圧の合計で規定される初期化電圧Vthが大きくなるためである。このため、プラグ43(下部電極)と記録層52の間に界面層51(好ましくは酸化タンタル膜)を介在させることで、低電力(低電流)書き換えが可能になる効果を得られるが、界面層51を介在させた分だけ初期化電圧Vthは高くなり、例えば前記効果が最も高い膜厚3〜5nmでは、初期化電圧Vthが2V前後とかなり高い値になる。
しかしながら、初期化電圧Vthが高いと、初期化の際に抵抗素子54に印加する電圧が電源電圧よりも高くなって、新たな給電方法が必要となり、半導体装置の大型化や半導体装置の製造コストの増加を招いてしまう可能性がある。また、初期化電圧Vthが高いと、初期化の際に抵抗素子54に印加する電圧が高くなって、初期化時の負荷が高まり、初期化時に素子自体が破壊される可能性があり、素子が破壊された半導体装置は不良品として除去するので、半導体装置の製造歩留まりを低下させてしまう。
そこで、本実施の形態では、低い電圧でも抵抗素子54の初期化を可能とするため、加熱しながら初期化のための電圧を抵抗素子54に印加する。すなわち、室温よりも高い温度に半導体基板11を加熱しながら(半導体基板11を加熱した状態で)、プラグ43(下部電極)と上部電極膜53との間に電圧(初期化のための電圧)を印加して、抵抗素子54(記録層52)に電流を流す。
初期化前には、記録層52のうちの界面層51と記録層52との界面近傍に、結晶化度が相対的に低い層(すなわち高抵抗領域52a)が形成されていたが、半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流す初期化動作を行うことにより、プラグ43と上部電極膜53との間の界面層51および記録層52に流れる電流のジュール熱によって、図24に示されるように、高抵抗領域52a(結晶化度が相対的に低い層)の結晶化度を上げる(高める)。すなわち、初期化動作(半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流すこと)により、高抵抗領域52aを結晶化させる。但し、このような初期化動作により、高抵抗領域52a(結晶化度が相対的に低い層)のうちのプラグ43(下部電極)の上方(上部)に位置する部分の結晶化度は上がる(高められる)が、プラグ43から離れた位置では電流(ジュール熱)の影響が小さいため、このような初期化動作を行っても、高抵抗領域52a(結晶化度が相対的に低い層)のうちのプラグ43(下部電極)の上方(上部)から離れた部分は結晶化されずに高抵抗状態(高抵抗領域52b)のままとなる。すなわち、半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流す初期化動作を行っても、高抵抗領域52a(結晶化度が相対的に低い層)のうちのプラグ43(下部電極)の上方(上部)から離れた部分の結晶化度(結晶性)は低いままである。また、半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流す初期化動作の際に、ジュール熱によってプラグ43上の界面層51の結晶化度も高められ、結晶性の乱れ(規則的な原子配列の乱れ)が小さくなる。
このため、図24に示されるように、初期化された記録層52は、プラグ43の上方(上部)から離れた位置に高抵抗領域52aが残存するが、プラグ43の上部には高抵抗領域52aは残存せず、プラグ43の上方(上部)は全て高抵抗領域52aよりも結晶化度が高められた結晶化領域52bとなり、残存する高抵抗領域52aとプラグ43とは平面的に(半導体基板11の主面に平行な平面でみて)重ならない状態となる。初期化により、プラグ43aの上部にアモルファスに近い状態の高抵抗層(高抵抗領域52a)が無くなり、プラグ43aと上部電極膜53との間に結晶化領域52bによる電流経路が形成されるので、プラグ43aと上部電極膜53との間の抵抗が低下し、抵抗素子54が低抵抗化される。また、記録層52の初期化時に、プラグ43の上部で記録層52の高抵抗領域52aが結晶化された(結晶化度が高められた)ことに加えて、プラグ43上の界面層51の結晶化度が高められたことも、抵抗素子54の抵抗の低減に寄与する。
このように、本実施の形態では、ウエハ・プロセスの後、相変化メモリの抵抗素子(記録層52)を初期化するために半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流し、それによって、初期化前にプラグ43上にアモルファス(非晶質)に近い状態で残っていた部分(結晶化度が相対的に低い層、すなわち高抵抗領域52a)の結晶化度を上げて結晶化させ、プラグ43と上部電極膜53との間の抵抗を低下させる。この抵抗素子54(記録層52)の初期化動作により、抵抗素子54(あるいはプラグ43および抵抗素子54からなる抵抗素子または抵抗メモリ素子)の抵抗を、書き換え動作によって高抵抗状態を記録された際(すなわちリセット時)の抵抗値よりも低い抵抗値にまで低下させ、書き換え可能なレベルの抵抗値(リセット時の抵抗値よりも低い抵抗値、好ましくはセット状態の抵抗値レベル)に低下させることができる。このため、相変化メモリの記録層52を、上記図6に示されるような電圧パルス(安定動作時の書き換えパルス)によって安定して書き換えできるようになり、半導体装置の性能を向上させることができる。
次に、加熱しながら初期化のための電圧を印加する理由について、より詳細に説明する。
図27は、ウエハ・プロセス終了後でかつ記録層52の初期化前の抵抗素子54の抵抗(この抵抗を初期抵抗と称する)の温度依存性の一例を示すグラフである。図27のグラフの横軸は、半導体基板11の温度(すなわち抵抗素子54の温度)に対応し、図27のグラフの縦軸は、抵抗素子54の初期抵抗に対応する。領域52aの抵抗率は、領域52bの抵抗率よりも数桁大きいため、抵抗素子54の初期抵抗値は、プラグ43の上方に存在する領域52aの抵抗でほぼ決まる。この抵抗素子54の初期抵抗値は、図27に示されるように、指数関数的な温度依存性を示す。これは、非晶質に近い状態のカルコゲナイド(領域52a)の抵抗値は、半導体的な温度依存性があるためである。このため、抵抗素子54の初期抵抗値は、温度が高くなるに従って低くなる。
一方、初期化に要する電流、すなわち初期化電流Ithは、温度にほとんど依存しない。これを示すのが、図28のグラフである。図28は、初期化電流Ithの温度依存性の一例を示すグラフである。図28のグラフの横軸は、半導体基板11の温度に対応し、図28のグラフの縦軸は、初期化電流Ithに対応する。なお、初期化電流Ithとは、初期化に要する電流(プラグ43と上部電極膜53との間の記録層52に流れる電流)のことであり、初期化が開始される電流値、すなわちプラグ43の上方で領域52aの低抵抗化が開始される電流値に対応する。
図28のグラフにも示されるように、初期化電流Ithは温度にほとんど依存しない。すなわち、記録層52を流れる電流値が、温度にほとんど依存しない臨界電流(初期化電流Ith)に達したときに、抵抗素子54の低抵抗化(初期化)が起こる。これは、電流により記録層52(相変化材料)の内部でインパクトイオン化が起こって高抵抗領域52aの低抵抗化が開始するためであると考えられる。
このように、ウエハ・プロセス終了後でかつ記録層52の初期化前の抵抗素子54の初期抵抗値は、温度が高くなるに従って低くなるので、半導体基板11を加熱して高温にすることで抵抗素子54の初期抵抗値を、見かけ上、低くすることができる。
半導体基板11を加熱して抵抗素子54の抵抗値(初期抵抗値)が低い状態で、初期化のための電圧をプラグ43と上部電極膜53との間に印加すると、半導体基板11を加熱しない場合に比べて、抵抗素子54の抵抗が低いことから、より低い電圧でより大きな電流が流れるので、より低い電圧で、初期化が開始されてプラグ43の上方(上部)に存在する高抵抗領域52aを低抵抗化させることができる。すなわち、半導体基板11を加熱せずに初期化のための電圧を印加する場合に比べて、半導体基板11を加熱した状態で初期化のための電圧をプラグ43と上部電極膜53との間に印加した方が、初期化に要する電圧(初期化に必要な電圧、すなわち初期化電圧Vth)を低くすることができる。
図29は、ウエハ・プロセス終了直後(初期状態)の抵抗素子54(相変化素子)の電流−電圧特性を、電流掃引モードで測定した場合の波形を示すグラフであり、上記図25に対応するものである。図29のグラフの横軸および縦軸は、上記図25のグラフの横軸および縦軸と同様である。また、図29には、半導体基板11を加熱せずに半導体基板11の温度を室温(27℃程度)とした場合(図29のグラフでは点線で示されており、これが上記図25のグラフに相当するものである)と、半導体基板11を加熱して半導体基板11の温度を160℃程度とした場合(図29のグラフでは実線で示されている)とが、グラフ化してある。
図29のグラフからも分かるように、領域A1で電圧を増加させるに従って電流が増加するが、半導体基板11を加熱せずに室温とした場合よりも、半導体基板11を加熱して160℃にした場合の方が、抵抗素子54(の高抵抗領域52a)の抵抗値(初期抵抗値)が小さいことから、所定の電流値を流すのに必要な電圧値を低くすることができ、低い電圧を印加した段階でジュール熱による高抵抗領域52aの低抵抗化が開始される。このため、半導体基板11の温度を室温とした場合よりも、半導体基板11を加熱して160℃にした場合の方が、折れ曲がり位置A2が低電圧側となる。すなわち、半導体基板11の温度を室温にした場合の初期化電圧Vth27℃よりも、半導体基板11を加熱して160℃にした場合の初期化電圧Vth160℃の方が、低くなる(Vth27℃>Vth160℃)。なお、初期化電圧Vth27℃,Vth160℃は、図29のグラフで示される電流−電圧特性が急激な折れ曲がりを示す点(折れ曲がり位置A2)の電圧(閾値電圧)である。半導体基板11を加熱して半導体基板11の温度を160℃にしたときの初期化電圧VthがVth160℃に対応し、半導体基板11を加熱せずに半導体基板11の温度を室温(27℃程度)にしたときの初期化電圧VthがVth27℃に対応する。この初期化電圧Vth27℃,Vth160℃以上の電圧を印加することで、ジュール熱によりプラグ43の上方の高抵抗領域52aを低抵抗化して記録層52を初期化し、抵抗素子54の抵抗値を下げることができる。図29のグラフでは、初期化電圧Vth27℃は、1.9V程度、初期化電圧Vth160℃は、1.3V程度である。
図30は、初期化電圧Vthの温度依存性を示すグラフである。図30のグラフの横軸は、半導体基板11の温度に対応し、図30のグラフの縦軸は、初期化電圧Vthに対応する。
図30のグラフからも分かるように、半導体基板11の温度が高くなるに従って、初期化電圧Vthは低くなる。これは、上述したように、半導体基板11の温度が高くなるほど、抵抗素子54(の高抵抗領域52a)の抵抗値が小さくなることから、所定の電流値(ここでは初期化が開始される初期化電流Ith)を流すのに必要な電圧値(ここでは初期化が開始される初期化電圧Vth)を低くすることができ、低い電圧を印加した段階でジュール熱による高抵抗領域52aの低抵抗化が開始されるようになるためである。このため、半導体基板11を加熱して半導体基板11の温度を高くし、それによって抵抗素子54(の高抵抗領域52a)の初期抵抗値(初期化前の抵抗値)をある程度低くした状態で、初期化のための電圧をプラグ43と上部電極膜53との間に印加すると、室温の場合に必要とされる初期化電圧(Vth27℃)よりも低い電圧(初期化電圧Vth)で記録層52を初期化することができる。図30では、半導体基板11の温度を100℃以上にすることで、1.5V以下の電圧で記録層52の初期化を行えるようになることが示されている。
このように、本実施の形態では、半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流す(プラグ43と上部電極膜53との間に電圧を印加して記録層52に電流を流す)ことにより記録層52を初期化するので、抵抗素子54(記録層52)を初期化するのに要する初期化電圧Vthを低くすることができる。初期化電圧Vthを低くすることができるので、初期化の際に抵抗素子54に実際に印加する電圧(プラグ43と上部電極膜53との間に印加する電圧)を低くすることができる。このため、初期化の際に抵抗素子54に印加する電圧を電源電圧よりも低くすることが可能になり、初期化のために別途給電方法を設ける必要がなくなり、半導体装置の小型化や半導体装置の製造コストの低減を図ることができる。また、初期化の際に抵抗素子54に印加する電圧を低くすることができるので、初期化に伴う負荷を低減し、初期化時に素子自体が破壊されるのを防止することができる。従って、半導体装置の製造歩留まりを向上することができる。
また、本実施の形態では、半導体基板11を加熱しながら抵抗素子54に電圧を印加して記録層52に電流を流すことで記録層52を初期化する。この記録層52の初期化の際にプラグ43(下部電極)と上部電極膜53との間に印加する電圧(後述するVmaxに対応する電圧)は、記録層52の初期化の後、相変化メモリ(抵抗メモリ素子)の書き換えのためにプラグ43と上部電極膜53との間(の記録層52)を高抵抗化させる(すなわちリセット動作を行う)際の印加電圧(プラグ43と上部電極膜53との間に印加する電圧であり図6の印加電圧VRPに対応するもの)以下であることが好ましい(すなわちVmax≦VRP)。このように初期化の際の印加電圧をリセット動作の際の印加電圧VRP以下(Vmax≦VRP)とすることにより、相変化メモリの書き換えの際に印加する電圧よりも高い電圧が初期化動作の際に印加されなくなるので、初期化動作時に書き換え電圧よりも高い電圧が印加されることによる素子の破壊をより的確に防止でき、半導体装置の製造歩留まりをより向上することができる。
また、本実施の形態では、半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流して記録層52を初期化するが、この記録層52の初期化の際には、半導体基板11を100〜250℃の範囲内に加熱しながら記録層52に電流を流して記録層52を初期化することが、より好ましい。初期化時の半導体基板11の温度を100℃以上とすることで、初期化電圧Vthの低減効果を的確に得ることができる。また、初期化時の半導体基板11の温度を100℃以上とすることで、初期化電圧Vthを、通常動作時の書き換え電圧(リセット動作の際の印加電圧VRP)に相当する1.5V以下とすることができ、初期化動作時に、通常動作時の書き換え電圧(リセット動作の際の印加電圧VRP)よりも高い電圧が抵抗素子54に印加されないようにすることが可能になる。また、半導体基板11の加熱温度が高すぎると、抵抗素子54に初期化用の電圧を印加するための治具または装置を、耐熱性を考慮して準備する必要があり、初期化に要するコストや手間を増大させる可能性があるが、初期化時の半導体基板11の温度を250℃以下とすることで、半導体基板11を加熱しながら抵抗素子54に初期化用の電圧を印加することが容易に行えるようになり、初期化に要するコストや手間を低減することができる。
図31〜図33は、記録層52の初期化のために印加する電圧パルス(初期化パルス)の電圧波形の例を示すグラフである。図31〜図33のグラフの縦軸は、プラグ43(下部電極)と上部電極膜53との間に印加する初期化パルスの電圧(任意単位:arbitrary unit)に対応し、図31〜図33のグラフの横軸は時間(任意単位:arbitrary unit)に対応する。図31は、初期化パルスが矩形パルスの場合、図32は、初期化パルスが2段パルス(階段状の多段パルス)の場合、図33は、初期化パルスが立下り斜めパルス(除冷パルス)の場合である。
本実施の形態では、ウエハ・プロセスの後に行う初期化動作の際に、半導体基板11を所定の温度T1(好ましくは100℃≦T1≦250℃)に加熱(基板加熱)しながら、プラグ43と上部電極膜53との間に電圧パルス(初期化パルス)を印加するが、この電圧パルス(初期化パルス)における最高電圧値Vmaxは、温度T1での初期化電圧VthT1以上の値(すなわちVmax≧VthT1)にする必要がある。なお、Vmaxは、初期化パルスにおける電圧の最高値(記録層52の初期化のためにプラグ43と上部電極膜53との間に印加する電圧の最高値)に対応する。また、VthT1は、半導体基板11を加熱して半導体基板11の温度をT1にしたときの初期化電圧Vthに対応し、例えば上記図30のグラフの曲線によって算出することができる。基板温度(T1)が室温の場合、初期化電圧Vthは1.9Vであり、基板温度(T1)が200℃の場合には、初期化電圧Vthは1.2Vにまで低下する。基板加熱は、初期化電圧Vthを低下させるとともに、熱振動によって、電流が流れる経路近傍だけでなく、その周囲まで原子配列変化を容易にするので、初期化のための電圧印加時間が短くて済み、ダメージを防いで初期化をより完全にする効果が有る。同じ条件で比較して初期化電圧印加時間は1/2以下(基板加熱を行わない場合の1/2以下)に、また、100回までの書き換えによる抵抗変動も1/2以下(基板加熱を行わない場合の1/2以下)にできた。
半導体基板11を温度T1に加熱して初期化パルスを印加する場合、初期化パルスが全範囲で初期化電圧VthT1よりも低いと、記録層52の初期化(高抵抗領域52aの結晶化)が始まらず抵抗素子54を低抵抗化できない。しかしながら、初期化パルスの最高電圧値Vmaxが初期化電圧VthT1以上(Vmax≧VthT1)であると、初期化電圧VthT1以上の電圧が印加されているときに、記録層52の初期化(高抵抗領域52aの結晶化)が開始され抵抗素子54が低抵抗化される。
初期化パルスは、例えば、図31のように矩形の電圧パルス(電圧値が一定のパルス)とすることができる。半導体基板11を温度T1に加熱しながら、プラグ43と上部電極膜53との間に、図31のような初期化電圧VthT1以上の定電圧のパルスを印加することで、プラグ43の上方の高抵抗領域52aを結晶化でき、それによって、抵抗素子54の抵抗値を下げて記録層52(抵抗素子54)を初期化することができる。
また、初期化パルスを、階段状のパルス、例えば図32に示されるような2段パルスとすることもできる。この場合、階段状の初期化パルスの初段の電圧(これが最高電圧値Vmaxとなる)を、初期化電圧VthT1以上(Vmax≧VthT1)の値にし、その後、電圧が階段状に減少するようなパルス波形とすることが好ましい。このようなパルスにすれば、初段の電圧が初期化電圧VthT1以上となることで、初段の電圧によってプラグ43の上方の高抵抗領域52aが結晶化し、それによって電流が流れ易くなるので、その後は、階段状に電圧を減少させて電流を制御し、記録層52を徐冷させることができる。
また、初期化パルスを、図33のように、初期化電圧VthT1以上の定電圧(これが最高電圧値Vmaxとなる)の印加と、それに続いて電圧を徐々に減少させるパルス波形とすることもできる。図32のような階段状のパルスの場合は、初期化電圧VthT1以上の電圧を印加した後に階段状に電圧を減少させるのに対して、図33のパルスの場合は、初期化電圧VthT1以上の電圧を印加した後に電圧をなだらかに(ほぼ同じ傾きで)減少させている。図33のようなパルスの場合も、始めに印加する初期化電圧VthT1以上の定電圧によってプラグ43の上方の高抵抗領域52aが結晶化し、それによって電流が流れ易くなるので、その後は、電圧を徐々に減少させて電流を制御し、記録層52を徐冷させることができる。電圧パルスの持続時間は、例えば、5マイクロ秒から1ミリ秒とする。高抵抗層52aは界面層51との高い接着力により結晶化が困難な状態になっているため、通常書き換え時の結晶化動作(セット動作)と同程度の時間(典型的には約1マイクロ秒)以上は必要であり、それよりも長い、例えば、5マイクロ秒以上の持続時間のパルスを印加することが望ましい。ただし、パルス持続時間が長過ぎると、低抵抗化した後に大きな電流が流れ続けることになって、その後の使用環境での素子の寿命が短くなり、加熱状態で初期化を行なうという本発明の効果が損なわれてしまうため、抵抗素子54が充分に低抵抗化できる1ミリ秒以下にする。投入エネルギーでは(1ボルト)×5マイクロアンペア×5マイクロ秒=25ピコジュール以上であって、1.5ボルト×5マイクロアンペア×1ミリ秒=7.5ナノジュール以下とする。電圧や電流を掃引して印加する場合も、上記の電力範囲とする。ただし、ここに示すのは、界面層51として酸化タンタル、記録層52としてGe2Sb2Te5を用いた場合の典型的なエネルギー範囲であって、これらの材料が異なる場合には。上に述べた本発明の効果が得られる範囲で、適切な電圧パルスを選択することができる。
図34は、上記図24と同じく、ウエハ・プロセスの後に記録層52の初期化を行った後の半導体装置の要部断面図であるが、記録層52の結晶化領域52bを、結晶化度(結晶性)が相対的に高い領域52cと低い領域52dとに分けて図示したものである。
上述したように、ウエハ・プロセス終了直後には、上記図23に示されるように、記録層52のうち、記録層52と界面層51との界面近傍の領域は、結晶化度が低い高抵抗領域52aとなっている。そして、半導体基板11を温度T1に加熱しながら初期化のための電圧(初期化電圧VthT1以上の電圧)を抵抗素子54に印加することで、プラグ43の上方で、高抵抗領域52aが加熱されて結晶化する(結晶化度が高められる)。これにより、図24や図34に示されるように、記録層52は、界面層51と記録層52との界面近傍の領域のうちのプラグ43の上方(上部)から離れた部分が結晶化度が低く、非晶質に近い状態(高抵抗領域52a)のまま残るが、それ以外は結晶化領域52bとなる。しかしながら、高抵抗領域52aよりも結晶化度が高い結晶化領域52bにおいても、結晶化度が相対的に高い領域(すなわち結晶性が高い領域52c)と、それよりも結晶化度が相対的に低い領域(すなわち結晶性が低い領域52d)とがある。すなわち、上記のような記録層52の初期化動作(半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流すこと)を行うことにより、記録層52のうち、プラグ43の上方(上部)から離れた位置では結晶化度(結晶性)がほとんど変化しないが、記録層52のうちのプラグ43の上方(上部)に位置する部分の結晶化度(結晶性)が高められる。これは、記録層52の初期化時には、プラグ43と上部電極53の間に電流が流れて初期化が行われるので、プラグ43の上方の位置では、電流(ジュール熱)によって結晶化が促進されるが、プラグ43の上方から離れた位置では、電流(ジュール熱)の影響は小さく、結晶化度(結晶性)がほとんど変わらないためである。このため、図34に示されるように、初期化により、記録層52は、プラグ43の上方(上部)に位置する部分が結晶性の高い領域52cとなり、プラグ43の上方(上部)から離れた部分が、それよりも結晶性が低い領域52dとなる。
結晶性の低い領域52dは、高抵抗領域52aよりも結晶化度(結晶性)が高く、結晶性の高い領域52cは、結晶性が低い領域52dよりも結晶化度(結晶性)が高い。すなわち、結晶性の低い領域52dは、高抵抗領域52aよりも結晶性の乱れ(規則的な原子配列の乱れ)が小さく(少なく、低く)、結晶性の高い領域52cは、結晶性が低い領域52dよりも結晶性の乱れ(規則的な原子配列の乱れ)が小さい(少ない、低い)。この結晶性が低い領域52dは、ウエハ・プロセス後で、初期化前の結晶化領域52bが、初期化動作によっても結晶化度(結晶性)がほとんど変わらずに残存した部分である。初期化前の結晶化領域52bのうち、プラグ43の上方に位置する部分が、初期化動作によって結晶化度(結晶性)が高められて結晶性の高い領域52cとなる。
高抵抗領域52aは、記録層52を構成するカルコゲナイドが、結晶化度(結晶性)が低く、非晶質(アモルファス)のような状態にある領域であるが、高抵抗領域52aが形成されているかどうかは、電子線回折により判別することができる。電子線回折像は、ハロー、リング、リングとスポット混在、スポットの順に結晶化度が高くなるので、各々の領域で得られた電子線回折像を比較することにより、結晶化度合い(結晶化度)の大小(高低)を判別できる。即ち、結晶化度とは、原子配列の規則性の高さを示しており、原子配列が乱れた状態となっている非晶質状態では、結晶化度が低く、ハロー回折パターンに近い電子線回折像が得られる。一方、結晶化度が高くなると、原子配列の規則性が増し、スポットに近い電子線回折像を示す。図35は、高抵抗領域52aの電子線回折写真の一例を示す説明図である。図35に示されるように、高抵抗領域52aの電子線回折写真では、明瞭な回折スポットが観察されず、輪郭のぼけたリング状のハローパターン(ハロー回折パターン)が観察される。
一方、結晶化領域52bは、高抵抗領域52aよりも結晶化度(結晶性)が高い領域(すなわち原子配列の規則性が高い領域)であり、結晶化領域52bが形成されているかどうかは、電子線回折により判別することができる。図36は、結晶化領域52bの電子線回折写真の一例を示す説明図である。図36に示されるように、結晶化領域52bの電子線回折写真では、高抵抗領域52aに比べて明瞭な回折スポットが観察される。また、結晶性が低い領域52dの電子線回折と結晶性の高い領域52cの電子線回折とを比べた場合、結晶性が低い領域52dよりも結晶性の高い領域52cの方が、回折スポットがより明瞭となり、回折スポットの欠けやハロー的なパターンが生じにくい。
従って、上記のような記録層52の初期化を行うことにより、初期化後(相変化メモリの書き換え前)の本実施の形態の半導体装置1は、初期化された記録層52が、図34に示されるように、界面層51と記録層52との界面近傍でかつプラグ43(下部電極)の上方(上部)から離れた高抵抗領域52a(第1領域)と、高抵抗領域52a(第1領域)上の結晶性の低い領域52d(第2領域)と、プラグ43(下部電極)の上方(上部)の結晶性の高い領域52c(第3領域)とを有した状態となる。そして、初期化された記録層52においては、結晶性の乱れ(規則的な原子配列の乱れ)は、高抵抗領域52a(第1領域)が、結晶性が低い領域52d(第2領域)および結晶性の高い領域52c(第3領域)よりも大きい状態となっている。また、初期化された記録層52においては、結晶性の乱れ(規則的な原子配列の乱れ)は、結晶性の高い領域52c(第3領域)が結晶性の低い領域52d(第2領域)よりも小さい状態となっている。
図37は、上記図24と同じく、ウエハ・プロセスの後に記録層52の初期化を行った後の半導体装置の要部断面図であるが、記録層52のうち、上記図6〜図10などを参照して説明したような書き換え動作時に結晶状態と非晶質状態との間で相変化する領域である相変化領域55の形状(位置、範囲、領域)を点線で模式的に示してある。
記録層52の初期化を行った半導体装置は、安定動作時の書き換えパルスによって書き換え可能なレベルの抵抗値(リセット時の抵抗値よりも低い抵抗値、好ましくはセット状態の抵抗値レベル)まで抵抗素子54の抵抗値が低下されているので、上記図6に示されるような電圧パルス(安定動作時の書き換えパルス)によるリセット動作、セット動作およびリード動作が可能となり、相変化メモリの安定した書き換えや読み出しを行うことができる。書き換え動作に必要なジュール熱はプラグ43近傍領域で発生するので、相変化メモリ(記録層52)の書き換え動作(結晶状態と非晶質状態との間の相変化)は、記録層52のうち、ジュール熱の発生しやすいプラグ43近傍領域で起こる。このため、記録層52のうち、書き換え動作時に結晶状態と非晶質状態との間で相変化する領域、すなわち相変化領域55の形状は、図37に模式的に示されるように、プラグ43の上部で半球形状のようになる。例えば、リセット時には、相変化領域55が非晶質状態となり、結晶化領域52b中のプラグ43近傍に半球形状の非晶質領域(非晶質状態の相変化領域55)が形成され、セット時には、相変化領域55が結晶状態となり、相変化領域55を含む結晶化領域52b全体が結晶状態となる。
本実施の形態では、図24、図34および図37にも示されるように、記録層52の初期化を行った後に、界面層51と記録層52との界面近傍でかつプラグ43の上方から離れた位置に高抵抗領域52aが残存している。このため、高抵抗領域52aが残存している部分ではジュール熱が発生しにくく、ジュール熱の発生は高抵抗領域52aが無いプラグ43近傍に限られるので、相変化領域55は、プラグ43の上部に限定的に形成される。このため、書き換え動作時に結晶状態と非晶質状態との間で相変化するのは、プラグ43の上方に限定され、プラグ43の上方から離れた位置では、書き換え動作時に相変化は生じない。このため、書き換え動作時に結晶状態と非晶質状態との間で相変化する相変化領域55を、プラグ43の上方にほぼ限定することができるので、相変化メモリの書き換え(リセット動作またはセット動作)時に抵抗素子54を流れる電流(上部電極膜53とプラグ43との間を流れる電流)を低くすることができ、低い電力(電流)による相変化メモリの書き換えが可能になる。従って、相変化メモリを有する半導体装置の性能を向上させることができる。
なお、本実施の形態では、上述したように、半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流して記録層52を初期化する。熱のアシストがあるため、初期化前の高抵抗領域52aのうち初期化により結晶化された部分の平面寸法(半導体基板11の主面に平行な平面での面積)は、プラグ43の平面寸法(半導体基板11の主面に平行な平面での面積)よりも若干大きくなると考えられる。このため、初期化により形成される結晶性の高い領域52cの平面寸法(半導体基板11の主面に平行な平面での面積)は、プラグ43の平面寸法(半導体基板11の主面に平行な平面での面積)よりも若干大きくなると考えられる。しかしながら、本実施の形態では、初期化動作の際に半導体基板11の加熱処理のみで結晶化している訳ではなく、半導体基板11の加熱とプラグ43および上部電極膜53間の電圧印加の両者によって初期化を行っているので、プラグ43の上方から少し離れた場所には高抵抗層(高抵抗領域52a)が初期化後にも残っており、低電力書き換えが損なわれるほどではない。
図38は、上記図37と同様、ウエハ・プロセスの後に初期化動作を行った後の半導体装置の要部断面図であるが、図37の場合とは異なり、初期化時に高抵抗領域52aも結晶化し、界面層51と記録層52の界面近傍に高抵抗領域52aが残存していない場合が示されている。
図38では、界面層51と記録層52の界面近傍に高抵抗領域52aが残存していないので、図37に比べて、ジュール熱が発生する部分が広がり、書き換え動作時に結晶状態と非晶質状態との間で相変化する相変化領域55が、プラグ43の上方から離れた領域でも形成されるようになる。
このため、界面層51と記録層52の界面近傍に高抵抗領域52aが残存していない図38の場合よりも、界面層51と記録層52との界面近傍でかつプラグ43の上方から離れた位置に高抵抗率の高抵抗領域52aが残存している図37の場合の方が、相変化領域55の平面寸法(半導体基板11の主面に平行な平面での面積)は大きくなる。従って、図38の場合よりも、図37の場合の方が、相変化メモリの書き換え時に抵抗素子54を流れる電流(上部電極膜53とプラグ43との間を流れる電流)をより低くすることができ、より低い電力(電流)による相変化メモリの書き換えが可能になる。
また、本実施の形態とは異なり、記録層52の初期化を行わず、プラグ43の上方に結晶性の高い領域52cが形成されなかった場合、プラグ43上に高抵抗領域52aだけでなく、その上に結晶性が低い領域52dが残存することになる。この場合、結晶性の乱れが大きい領域が、書き換え動作により相変化することになるので、書き換えを行えたとしても、書き換え動作時に、結晶化方向への原子配列変化に時間がかかったり、結晶化したとしても結晶粒間に乱れた構造が集積して抵抗が低くならなかったり、あるいは非晶質状態での微細な組成変調の発生などが生じ、相変化メモリの書き換え特性を低下させる可能性がある。
それに対して、本実施の形態では、図34に示されるように、初期化により、プラグ43の上部で高抵抗領域52aを結晶化しただけでなく、記録層52は、プラグ43の上方領域全体で結晶性が高められて、プラグ43の上方に結晶性の高い領域52cが形成されている。上記相変化領域55は、この結晶性の高い領域52cに形成される。結晶性の高い領域52cは、結晶性が低い領域52dおよび高抵抗領域52aに比べて、結晶性(規則的な原子配列)の乱れが少なく、欠陥やカルコゲナイドの組成変調が少ない。この結晶性の高い領域52cに上記相変化領域55が形成されるので、書き換え動作時に、結晶化方向への原子配列変化に要する時間が短縮され、また、結晶化したときの結晶粒間の構造の乱れを低減してより的確に低抵抗化でき、また、非晶質状態での組成変調の発生を抑制または防止することができ、相変化メモリの書き換え特性を向上することができる。
また、本実施の形態では、上述したような記録層52の初期化を、ウエハ・プロセスの後で、かつダイシングなどにより半導体基板11を切断して各半導体チップに個片化する前に行っている。この場合、ウエハ状態の半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流して記録層52を初期化する。他の形態として、上述したような記録層52の初期化を、ウエハ・プロセスの後で、かつダイシングなどにより半導体基板11を切断して各半導体チップに個片化した後に行うこともできる。この場合、切断されてチップ化(個片化)された半導体基板11(すなわち半導体装置1自体)を加熱しながら記録層52に電流を流して記録層52を初期化する。
但し、上述したような記録層52の初期化は、半導体基板11を切断して各半導体チップに個片化した後に行うよりも、半導体基板11を切断して各半導体チップに個片化する前に行えば、より好ましい。これにより、ウエハの多数の半導体チップ領域の相変化メモリに対して、加熱しながら記録層52に電流を流す初期化動作を容易かつ的確に行うことができるようになる。また、半導体チップを挿入するソケットなどが不要で、ウエハを加熱しながらウエハの各パッド電極にプローブなどを用いて電圧を印加すればよいので、初期化に要する装置を簡略にでき、また、初期化に要する時間も短縮できる。
また、本実施の形態では、上述したように半導体基板11を加熱しながら記録層52に電流を流して記録層52を初期化する。しかしながら、記録層52の高抵抗層(非晶質領域52a)を除去して安定動作時の書き換えパルスによって書き換え可能なレベルの抵抗値(リセット時の抵抗値よりも低い抵抗値、好ましくはセット状態の抵抗値レベル)まで抵抗素子54を低抵抗化させるという初期化の目的を達成するためには、抵抗素子54に電圧を印加せず(記録層52に電流を流さず)に、半導体基板11を加熱することのみによって抵抗素子54の初期化を行うこともできる。この場合、抵抗素子54を形成し、絶縁膜62で埋め込んで以降、通常はウエハ・プロセスの終了後、半導体基板11を、好ましくは500℃以上の温度で10分程度加熱する。抵抗素子54には電流を流さないので、記録層52にジュール熱は発生しないが、半導体基板11全体を加熱することで、記録層52の高抵抗領域52aを結晶化して記録層52全体を結晶化領域52bとすることができ、抵抗素子54(あるいはプラグ43および抵抗素子54からなる抵抗素子または抵抗メモリ素子)の抵抗を、書き換え動作によって高抵抗状態を記録された際(すなわちリセット時)の抵抗値よりも低い抵抗値にまで低下させ、書き換え可能なレベルの抵抗値に低下させることができる。このため、半導体基板11を加熱して記録層52を初期化することにより、相変化メモリを安定して書き換えできるようになる。但し、抵抗素子54に電圧を印加せず(記録層52電流を流さず)に半導体基板11を加熱することのみによって記録層52の初期化を行った場合、初期化後には、界面層51と記録層52との界面近傍には高抵抗領域52aが存在しなくなり、上記図38のような状態となる。全体加熱による初期化では、高抵抗領域52aが消滅して、記録層52の全体が結晶化領域52bに変化するため、その後の書き換えを行なった際に素子間の抵抗値のばらつきがより小さく出来るという利点がある。ただし、電圧印加によるジュール加熱よりも長い時間に渡って、記録層52が高温状態に保持されるため、書き換え可能回数が低下する。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。