本発明は、研磨布に関し、特に磁気記録ディスクに用いられるアルミニウム合金基板およびガラス基板を超高精度の仕上げでテクスチャー加工を施す際に好適に用いられ得る研磨布に関するものである。
磁気ディスク等の磁気記録媒体は、近年めざましい技術革新により高容量化と高記録密度化の要求化が高まり、このため各種基板表面加工の高精度化が要求されている。
近年、高容量化と高記録密度化に伴い、記録ディスクと磁気ヘッドとの間隔、すなわち、磁気ヘッドの浮上高さは小さくなってきており、最近では5nm以下の浮上高さのものが要求されている。磁気ヘッドの浮上高さが著しく小さくなることにより、磁気ディスクの表面に突起があるとその突起と磁気ヘッドとが接触してヘッドクラッシュを起こし、ディスク表面に傷が発生する。また、ヘッドクラッシュには至らない程度の微小な突起でも、磁気ヘッドとの接触により情報の読み書きの際に発生するエラーの原因となる。記録ディスクについては、高容量化および高密度化と平行して小型化も進んできており、これに併せてスピンドル回転用のモーター等も小型化されてきている。このため、モーターのトルクが不足し、磁気ヘッドが記録ディスク表面とが密着し、浮上しなくなるというトラブルを引き起こす。
この記録ディスクと磁気ヘッドとの密着を防止する手段として、記録ディスクの基板表面に微細な条痕を形成するテクスチャー加工という表面処理が行われている。また、このテクスチャー加工を行うことにより、ディスク基板上に金属磁性層を形成する際の結晶成長の方向性を制御することで記録方向の抗磁力を向上させることが可能となる。
従来、テクスチャー加工の方法としては、遊離砥粒のスラリーを研磨布表面に付着させて研削を行うスラリー研削等が用いられている。しかしながら、テクスチャー加工によって、磁気ヘッドの低浮上を満足するための表面処理を行う場合、最近の急激な高記録容量化のための高記録密度化に対応するためには、研磨後のうねりを低くし、基板表面粗さを極めて小さくすることが要求され、その要求に対応しうる研磨布が求められている。テクスチャー加工において基板表面粗さを小さくするために、特許文献1および特許文献2のように、クッション性や基材表面の平滑性に優れる不織布を用いる方法が多く提案されてきた。
中でも基材表面の平滑性向上やディスク基板表面への当たりの調節などを目的として、不織布を構成する繊維を極細化し、不織布に高分子弾性体を含浸させるという提案が種々なされている。例えば、特許文献3では、0.3dtex以下の極細繊維からなる不織布に、高分子エラストマーを含浸させた研磨布が提案されており、この研磨布を用いた加工では、0.5nm程度の表面粗さを実現している。
また、特許文献4では極細繊維が絡合してなる不織布中に、特定の湿潤弾性率を有するポリウレタンが含有されており、表面に、0.03dtex以下の繊度を有する極細繊維からなる立毛が存在するテクスチャー加工用研磨シートが提案されている。このテクスチャー加工用シートを用いた加工では、0.4nmの表面粗さを実現している。
また、特許文献5では繊維束内に繊維径の内外周差を有する極細繊維束からなる不織布と、その不織布の空隙に高分子弾性体を充填してなる基材を用いて、0.31nmの表面粗さを実現している。
更に、特許文献6では平均繊度0.001〜0.1dtexのポリアミド極細短繊維の不織布からなる研磨布が提案されており、この研磨布では0.28nmの表面粗さを実現している。
今後、更に表面粗さの極小化を実現できる技術が期待され、この技術の核となる超高精度な研磨布が要求されてきている。
遊離砥粒を含有するスラリーと不織布を主体とする研磨布を用いたテクスチャー加工方法は、まず、研磨布をテープ状として用いる。次いで、基板を連続回転させた状態で、その研磨テープを基板に押しつけながら、基板の径方向に往復運動させ、連続的に研磨テープを走行させる。その際に、スラリーを研磨テープと基板との間に供給し、スラリー中に含まれる遊離砥粒が研磨テープを構成する繊維に微分散した状態で把持され、基板に接触し研磨を行う方法である。
従来の研磨布では、繊維の極細化により、研磨布表面に存在する表面繊維本数こそ多いものの、局所的に繊維の存在しないボイドが多く存在するため、前述のテクスチャー加工において、研磨布内部へのスラリー抜けが多くなり、低表面粗さを実現するために必要なスラリーの使用量が多く、加工効率が低いものであった。更に、スラリーの使用量が多い、すなわち単位時間あたりの研磨に寄与する砥粒量が少ないことにより、必然的に研磨布使用量も多くなり、初期段階において形成されるテクスチャー痕(微細な山や谷)を馴らす、すなわち微細な山や谷を平滑化させる作用が働く。このため、最終的に形成されるテクスチャー加工面の表面粗さこそ小さいものであるが、テクスチャー痕(微細な山や谷)の線密度が低く、シャープさに欠けることが影響して、分解能やS/N比などの電磁変換特性を著しく低下させる要因となり、ハードディスクドライブにおけるエラーの原因となっていた。
ハードディスクの電磁変換特性を向上させるためには、研磨布の使用量を少なくしたライトテクスチャー(軽度な研磨)にて、表面粗さを極小化し、且つシャープなテクスチャー痕を線密度が高い状態で形成させる必要がある。
これに対して、特許文献4では高分子弾性体が極細繊維束の大部分を実質的に拘束しない研磨布、すなわち、極細繊維束と高分子弾性体との間に空隙を形成させる構造を有する研磨布が提案されている。しかしながら、この構造の研磨布では、立毛面を構成する極細繊維束の自由度が大きすぎるために、立毛繊維が乱れた方向性をもって分布された状態となり、テクスチャー加工において、0.3nm以下の基板表面粗さを実現するのに必要な研磨布の使用量が必然と多くなり、テクスチャー痕のシャープさにも欠け、線密度が小さい状態となってしまうため、電磁変換特性の低下につながるという欠点を惹起することとなっていた。また、該研磨布では、強度、クッション性および極細繊維の脱落防止の点から、特定の湿潤弾性率を有するポリウレタンを用いることが提案されているが、研磨布表面繊維の分散性および緻密性が不十分であるため、テクスチャー痕の線密度が低く、スクラッチ数を抑制しきれないものであった。
また、研磨布表面上のボイドを少なくするために、繊維の滑りおよび繊維と高分子弾性体との接着を緩和させ、立毛処理における繊維の引きちぎりを抑制すべく、あらかじめシート状物にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を塗布や含浸させておき、サンドペーパーなどにより表面を研削する方法も提案されている。しかしながら、このような手段では、滑剤の付着ムラを抑えきれないため、シート状物の表面の立毛長さが全体的に不均一となり、局所的に立毛繊維が束状となり、表面のボイドを十分に抑制しきれないものであった。
また、特許文献7では研磨布自体の硬度を上げ研磨効率を上げるために、従来研磨布に使用されている有機溶剤系のポリウレタンに代わり、無孔構造となる水系のポリウレタンを使用する研磨布が提案されている。しかしながら、該研磨布では不織布の繊度が高く、研磨効率を上げることが可能であっても、低表面粗さを実現するものではない。
また、ハードディスクに要求される面記録密度を向上させるために、単位記録面積を小さくする必要性はますます高まってきており、従来のテクスチャー加工において、スクラッチ欠点と判定されなかった微細な傷や突起がエラーの原因となることがわかり、この微細な傷と突起がスクラッチ欠点とみなされる。よって、更なる基板の平滑性および均一性の向上が必要となってきており、これらの要求に対応するためには、研磨布表面の平滑性および均一性を向上させる必要性が高まっている。
これに対して、特許文献8では極細繊維を発生させる複合繊維の繊維収縮率を高め、絡合体の面積収縮率を高め、その後に圧縮する方法や、高分子弾性体を不織布シートに付与後、高分子弾性体の溶剤または膨潤剤をシートに付与し、その後圧縮する方法などを組み合わせた方法を用いることにより、立毛シートの立毛面を表面自動変角光度計により測定した変角反射曲線から求められる数値を規定する技術が提案されている。しかしながら、かかる手段では、構造体として、高分子弾性体が極細繊維束の内周部の繊維にまで強固に接着する状態となりやすいとともに、繊維束同士の拘束力が高くなりすぎるために、立毛繊維が束状状態で分布し、粗密ムラが著しく大きくなり、テクスチャー加工において、0.3nm以下の基板表面粗さを実現できず、且つスクラッチ欠点を発生しやすいものであった。
このように、従来の研磨布を使用した場合、研磨砥粒を均一且つ微分散させることが不十分であるため、研磨砥粒が局所的に凝集したり、局所的に砥粒が存在しない状態が発生し、研磨精度を低下させ、微細な傷や突起からなるスクラッチ欠点を生じやすく、該スクラッチ欠点により電磁変換特性が著しく低下し、生産歩留まりの上から問題が内在していた。
特開平9−262775号公報
特開平9−277175号公報
特開2001−1252号公報
特開2002−79472号公報
特開2002−172555号公報
特開2002−273650号公報
特開2005−59179号公報
特開2001−67659号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、テクスチャー加工の加工効率に優れ、スクラッチ欠点が少なく歩留まりがよく、かつ線密度の高いテクスチャー痕を形成することができ、更に基板表面上に表面粗さ0.3nm以下という高精度なテクスチャー加工を施すことができる研磨布を提供することにある。
すなわち、本発明の研磨布は、「単繊維径が5μm以下の極細繊維および/または極細繊維束が絡合してなる不織布と、その不織布内部空間に存在する水分散型ポリウレタンを主成分とした高分子弾性体とからなる研磨布であって、該高分子弾性体部分は無孔構造であり、該水分散型ポリウレタンがノニオン系の内部乳化剤を含むことを特徴とする研磨布」である。
本発明によれば、研磨布表面上の立毛繊維が極めて均一に分散し、かつ隙間が少ない状態で緻密に分布しているので、アルミニウム合金基板およびガラス基板のテクスチャー加工において、研磨布単位表面積あたりの砥粒把持量が高く、加工効率に優れるとともに、スクラッチ欠点が少ないことにより歩留まりがよく、かつ線密度の高いテクスチャー痕を形成することができ、電磁変換特性に優れた記録ディスクの高記録密度化に対応可能な加工面として仕上げることができる研磨布を得ることができる。
本発明の研磨布は、単繊維径が5μm以下の極細繊維および/または極細繊維束が絡合してなる不織布に水分散型ポリウレタンを主成分とした高分子弾性体を含有した研磨布である。
不織布を構成する極細繊維の素材としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12および共重合ナイロンなどのポリアミド類、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートおよび共重合ポリエステルなどのなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種合成繊維を用いることができる。中でも、親水性、耐摩耗性の観点から、ポリアミド類とポリエステル類が好適に用いられる。とりわけ、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12および共重合ナイロンなどのポリアミド類やポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリトリメチレンテレフタレートおよび共重合ポリエチレンテレフタレートのポリエステル類は、スラリー液との親和性が特に良好であり、スラリー液中の研磨砥粒の保持性と分散性に優れ、被研磨物に傷をつけることなく研磨することができるとともに、柔軟性に優れることにより、被研磨物との接触抵抗が低く微細研磨に適した素材として、より好適に用いられる。
不織布を構成する極細繊維の単繊維径は5μm以下であることが特に重要である。極細繊維の単繊維径は、繊維強度と砥粒の把持性の点から、好ましくは0.01μm以上5μm以下の範囲である。5μmを超える場合には、研磨布表面での立毛繊維の緻密性に劣り、遊離砥粒の分布の偏りが大きくなることにより、高精度の仕上げを達成できないため好ましくない。ここでいう単繊維径は、得られたシート状物の厚み方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意の極細繊維の繊維径を測定した値を指すものである。
また、本発明の研磨布においては、本発明の効果を損なわない範囲で、単繊維径が5μmを超える繊維を混合して使用してもよいが、砥粒の把持性や被研磨物へのフィット性および傷の抑制の点から、混合量としては、不織布を構成する極細繊維に対し、単繊維径が5μmを超える繊維の数は10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。なお、ここでいう単繊維径が5μmを超える繊維の割合は、得られたシート状物の厚み方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意の100本の極細繊維の繊維径を測定した場合の割合をいうものである。
極細繊維の断面形状としては特に限定されず、例えば、丸、楕円、扁平および三角などの多角形や、扇、十字、Y、H、X、W、Cおよびπ型などが挙げられる。
本発明の研磨布を構成する不織布は短繊維不織布、長繊維不織布のいずれでもよいが、長繊維不織布は表面繊維の緻密性が、短繊維不織布より劣り、かつ表面繊維本数密度の粗密ムラが大きくなり、研磨砥粒の分布の偏りが大きく、且つ局所的な砥粒の凝集を招き、スクラッチの発生につながるため、短繊維不織布が好ましい。また、短繊維の繊維長に関しては特に限定されないが、表面繊維の緻密性と耐摩耗性を考慮して、25mm以上90mm以下であることが好ましい。
本発明の研磨布は、このような不織布に、水分散型ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を含浸して、無孔構造である当該水分散型ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体が当該不織布の内部空間に存在する構成としたものである。
ここでいう水分散型ポリウレタンとは、水中にポリウレタンが分散している水分散型ポリウレタン液を凝固することで得られるものであり、通常、水分散型ポリウレタン液を不織布等の基布に付与後、凝固、乾燥させて使用するものである。
水分散型ポリウレタンはその特性上、一般的に研磨布等に使用されている有機溶剤系のポリウレタンに比べて親水性であり、テクスチャー加工時にスラリーの分散性がよく、局所的に砥粒が凝集することがなく均一に分散し、スクラッチ抑制や超高精度な加工が可能となる。また、水分散型ポリウレタン液は粘度が非常に低いため、粘度の高い有機溶剤系のポリウレタンに比べ、効率的に多く付与することも可能である。使用する水分散型ポリウレタンの粘度は、含浸性の観点から、水分散型ポリウレタン液の濃度(水分散型ポリウレタン液に対する水分散型ポリウレタンの含有量)が35%の状態で1000mPa・s/25℃以下が好ましい。従来の不織布に有機溶剤系のポリウレタンを付与した研磨布では、ポリウレタンは不織布の繊維と繊維の交絡点を接着している程度でスポットに存在しており、テクスチャー加工時にスラリーを滴下しても、研磨布内部へのスラリー抜けが多いため、スラリー・研磨布ともに使用量が多く、効率的なテクスチャー加工が困難であった。本発明の研磨布において、多くの水分散型ポリウレタンを付与した場合、水分散型ポリウレタンは不織布内で膜状に存在するため、研磨布内部へのスラリー抜けは無く、効率的な加工が可能となる。
また、水分散型ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体が無孔構造であることにより、多孔構造に比べ、研磨布としての硬度が上がることで、被研磨物への接触圧が上がり、より効率的な研磨が可能となる。ここでいう無孔構造とは、研磨布の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率300倍で、任意の10カ所の300μm×300μmの範囲を観察し、水分散型ポリウレタンを主成分とした高分子弾性体部分において、5μm以上の孔が見えないことをいう 高分子弾性体と極細繊維の密着状態については特に限定は無いが、高分子弾性体と極細繊維は実質的に密着していないことが好ましい。高分子弾性体と極細繊維が実質的に密着していないことにより、高分子弾性体が極細繊維の動きを阻害しないため、研磨砥粒が局部的に把持することを防ぎ、スクラッチ等の欠点を減らすことが可能である。ここでいう実質的に密着していないとは、研磨布の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)を倍率300倍で観察した際に、高分子弾性体と極細繊維が接着しておらず、高分子弾性体と極細繊維の間に空隙が存在することが確認できることをいう。
本発明に使用する高分子弾性体の主成分である水分散型ポリウレタンは、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖伸長剤を適宜反応させた構造を有するものを用いることができる。
ポリオールとしては、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ポリラクトン系ジオール、シリコーン系ジオール、フッ素系ジオールや、これらを組み合わせた共重合体を用いてもよい。
本発明において好ましく用いられるポリエーテル系ジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
ポリエステル系ジオールは、アルカンジオールとジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とを、通常のポリエステル生成反応に採用される条件下に反応させることによって得ることができる。アルカンジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,10−デカンジオールなどが挙げられる。
ジカルボン酸の代表例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸など脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独または2種以上の混合物で使用される。中でも脂肪族ジカルボン酸が好適に用いられる。これらジカルボン酸は、エステル形成性誘導体の形で用いてもかまわない。その際の代表例としては、上記例示のジカルボン酸のメチルエステルやエチルエステルなどの低級アルキルエステルなどが挙げられる。上記のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体は、単独または2種以上の混合物で使用されてもかまわない。
ポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルとのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。アルキレングリコールとしては、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、2−メチル−1,8オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオールおよび2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオールなどの分岐アルキレングリコールを用いることができる。また、炭酸エステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートなどが挙げられる。
ポリラクトン系ジオールの例としては、ポリ−ε−カプロラクトンジオールやポリ−β−メチル−d−バレロラクトンジオールなどが挙げられる。これらポリラクトンジオールはアルキレングリコール等を開始剤として用いて、ラクトンを開環重合させることによって製造される。
かかるポリマージオール成分の中でも、立毛繊維の脱落抑制およびテープ状とした研磨布のテクスチャー加工時の伸びによる幅変化の抑制という観点から、ポリカーボネート系ジオールがより好ましく使用される。中でも、直鎖アルキレングリコールと分岐アルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネートジオールを用いることにより、ポリウレタンが非晶構造となりやすく、緻密で且つ立毛繊維が均一分散した立毛面を得られる。
ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、等の脂肪族系、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族系が挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。
鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、メチレンビスアニリン等のアミン系、エチレングリコール等のジオール系、さらにはポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを用いることができる。
水分散型ポリウレタンの強度等を向上させるため、水分散型ポリウレタン内に内部架橋剤を導入してもよい。内部架橋剤とは、水分散型ポリウレタン分子の一部として水分散型ポリウレタンを合成する際にあらかじめ分子構造内に導入しておく架橋反応可能な官能基を有する化合物のことである。
水分散型ポリウレタンには、ポリウレタン分子内に内部乳化剤として親水基を持つ自己乳化型と、界面活性剤を用いてポリウレタンを乳化させる強制乳化型がある。本発明ではいずれでもよいが、強制乳化型は界面活性剤を含むため、洗浄工程が必要である事や、製膜時のポリウレタンエマルジョン同士の融着を阻害することでの物性低下が考えられるため、自己乳化型の方が好ましい。
自己乳化型に用いる内部乳化剤は、4級アミン塩等のカチオン系、スルホン酸塩、カルボン酸塩等のアニオン系、ポリエチレングリコール等のノニオン系、およびカチオン系とノニオン系の組み合わせ、アニオン系とノニオン系の組み合わせのいずれでもよいが、カチオン系内部乳化剤は、黄変等の耐光性に劣り、アニオン系内部乳化剤は、中和剤による弊害が発生する可能性があるため、ノニオン系内部乳化剤であることが好ましい。
強制乳化型に使用する乳化剤は、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、または両性界面活性剤等を用いることができる。
また、水分散型ポリウレタンは、後述する製造方法において、感熱ゲル化性を有することが好ましいことや、研磨時にスラリーとの馴染みを向上させる為に親水性を向上させることが好ましいため、水分散型ポリウレタン全重量に対して3重量%以上30重量%以下のポリエチレングリコールを有してもよい。特に、ノニオン系内部乳化剤によって自己乳化している自己乳化型−水分散型ポリウレタンの場合、少なすぎると自己乳化しにくくなり、多すぎるとポリウレタン膜の強力等の物性低下が発生しやすいことから、水分散型ポリウレタン全重量に対するポリエチレングリコールの含有量はより好ましくは5重量%以上20重量%以下である。
また、高分子弾性体は、主成分として水分散型ポリウレタンを用いるが、バインダーとしての性能や立毛繊維の均一分散状態を損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂およびエチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていてもよく、各種の添加剤、例えば、リン系、ハロゲン系、無機系などの難燃剤、フェノール系、硫黄系、リン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系およびベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、カーボンブラック等の顔料、カルボジイミド基やオキサゾリン基等の官能基を有する物質、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の架橋剤、防カビ剤、可塑剤、浸透剤、滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロック剤、帯電防止剤、界面活性剤、凝固調整剤、消泡剤、セルロース等の充填剤などを含有していてもよい。
本発明の研磨布においては、基材全重量に対する高分子弾性体の含有量は20重量%以上200重量%以下であることが好ましい。20重量%以上とすることで、シート強度を得てテープ状とした研磨布のテクスチャー加工時の伸びによる幅変化の抑制ができ、かつ繊維の脱落を防ぐことができる。200重量%以下とすることで、研磨布最表面に高分子弾性体が露出することを防ぎ、目的とする立毛状態を得ることができる。より好ましくは30重量%以上180重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以上120重量%以下である。これらの範囲の中で高分子弾性体の含有量を調節することで、研磨布の硬度を選択することができる。高分子弾性体の含有量を上げることで研磨布の硬度は上がり、高分子弾性体の含有量を下げることで研磨布の硬度は下がる。高分子弾性体の含有量は研磨布を使用したテクスチャー加工時の条件等により、適宜選択すればよい。
また、高分子弾性体の含有量をより高くすることで、テクスチャー加工時にスラリーが、研磨布の研磨面から裏に抜けることを防ぎ、研磨布表面に多くの砥粒を把持することができ、効率のよい研磨ができる。
次に、本発明の研磨布の製造方法について説明する。
不織布を構成する極細繊維を得る手段としては、特に限定はないが極細繊維発生型繊維を用いることが好ましい。極細繊維発生型繊維をあらかじめ絡合した後に繊維の極細化を行うことによって、極細繊維が絡合してなる不織布を得ることができる。
極細繊維発生型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分・島成分とし、海成分を溶剤などを用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を繊維断面を放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも、海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、極細繊維からなるシート状物をバフィング処理し、立毛面を形成させた際の立毛の開繊性に優れている。
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海・島の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子配列体方式による海島型複合繊維がより好ましい。
海島型複合繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステル、ポリ乳酸、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂などを用いることができる。
海成分を溶解する溶剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンの場合は、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤、共重合ポリエステル、ポリ乳酸の場合は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の場合は、熱水を用いることができ、溶剤中に海島型複合繊維を浸漬し、窄液を行うことによって除去することができる。
このようにして得られた極細繊維発生型繊維を、絡合させて不織布とする。本発明の研磨布を構成するための不織布を得るには、極細繊維発生型繊維を短繊維化し、カード・クロスラッパーを用いてシート幅方向に配列させた積層ウエブを形成せしめた後、ニードルパンチ処理を行うことが好ましい。ウエブを形成するという点においては、ランダムウエブなどを用いることも可能である。また、メルトブローやスパンボンドなど、紡糸から直接形成する長繊維不織布でもよい。しかしながら、本発明の研磨布においては、表面繊維の緻密性の高い短繊維不織布のほうが好ましい。
ニードルパンチ処理のパンチング本数は、繊維の高絡合化による緻密な立毛面形成の観点から、1000本/cm2以上4000本/cm2以下であることが好ましい。パンチング本数が1000本/cm2未満では、表面繊維の緻密性に劣ることにより、所望の高精度の仕上げを得ることができず、また、パンチング本数が4000本/cm2を超えると、加工時間増による加工性の悪化を招くとともに繊維損傷が大きく、強度低下につながることがある。ニードルパンチング後の複合繊維不織布シートの繊維密度は、表面繊維本数の緻密化の観点から、0.2g/cm3以上であることが好ましい。
このようにして得られた複合繊維不織布は、表面繊維本数の緻密化の観点から、乾熱または湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。
また、極細繊維化処理をした後に、極細繊維および/または極細繊維束の相互絡合をより高め、緻密化させることおよび極細繊維束の開繊性を高め、平滑性を向上させるという点から、ウォータージェットパンチング処理などの高速流体流処理や、液流染色機、ウィンス染色機、ジッガー染色機、タンブラーおよびリラクサー等を用いた揉み処理を適宜組み合わせて実施してもよい。高速流体流処理と揉み処理を組み合わせて行う場合には、揉み処理時の寸法変動を抑える点から、高速流体流処理を行った後に揉み処理を行うことが好ましい。高速流体流処理として、作業環境の点で水流を使用するウォータージェットパンチング処理が好ましく、ウォータージェットパンチング処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常、直径0.06〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させる方法が好適に用いられる。
本発明の研磨布は、前記不織布シートを極細繊維化処理する前および/または後に、水分散型ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を付与させることにより得ることができる。かかる高分子弾性体は、研磨布にコシを与えたり、繊維形態保持などの役割を有し、極細短繊維不織布の内部空間に高分子弾性体を充填し一体化させることにより、被研磨物へのフィット性および被研磨物表面の傷の抑制効果に優れるものである。
水分散型ポリウレタンを前記不織布に付与するにあたっては、不織布に当該水分散型ポリウレタン液を含浸、または付与し乾熱凝固する方法、不織布に水分散型ポリウレタン液を含浸後、湿熱凝固して加熱乾燥する方法、熱水中で湿式凝固して加熱乾燥する方法、およびその組み合わせがあるが、特に限定することはない。なお、乾燥温度は低すぎると乾燥時間が長時間となり、高すぎると水分散型ポリウレタンの熱劣化の原因となることから、80℃以上180℃以下が好ましい。より好ましくは90℃以上160℃以下である。
本発明に使用する水分散型ポリウレタン液には、貯蔵安定性や製膜性向上のために水溶性有機溶剤を水分散型ポリウレタン液に対して0重量%以上40重量%以下含有していてもよいが、製膜時の加熱による大気中への有機溶剤の放出や最終製品への有機溶剤の残留等の懸念から、有機溶剤は0重量%以上1重量%以下に抑えることが好ましい。
水分散型ポリウレタン液の濃度(水分散型ポリウレタン液に対する水分散型ポリウレタンの含有量)は、水分散型ポリウレタン液の貯蔵安定性の観点から、10重量%以上50重量%以下が好ましい。
また、水分散型ポリウレタン液は感熱ゲル化温度を有することが好ましい。感熱ゲル化温度を有することで、シートに含浸し、乾燥する際の水分散型ポリウレタンのマイグレーション現象を抑制することができる。ただ、感熱ゲル化温度は低すぎると水分散型ポリウレタンの貯蔵においてゲル化する可能性が高く、高すぎるとマイグレーション現象を抑制することができなくなることから、55℃以上90℃以下であることが好ましい。
水分散型ポリウレタン液は単独で感熱ゲル化性を有することが好ましいが、水分散型ポリウレタン液に感熱ゲル化性を付与する、または感熱ゲル化温度を低下させる目的で、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の無機塩を添加してもよい。
また、水分散型ポリウレタン液を付与するにあたっては、バインダーとしての性能や立毛繊維の均一分散状態を損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系およびポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂およびエチレン−酢酸ビニル樹脂などを添加してもよく、各種の添加剤、例えば、リン系、ハロゲン系、無機系などの難燃剤、フェノール系、硫黄系、リン系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系およびベンゾエート系などの光安定剤、ポリカルボジイミドなどの耐加水分解安定剤、カーボンブラック等の顔料、カルボジイミド基やオキサゾリン基等の官能基を有する物質、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の架橋剤、防カビ剤、可塑剤、浸透剤、滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロック剤、帯電防止剤、界面活性剤、凝固調剤剤、消泡剤、セルロース等の充填剤などを添加して用いることができる。
本発明の研磨布において、極細繊維と高分子弾性体とからなるシート状物の少なくとも片面に、極細繊維からなる立毛面を有することが重要である。該立毛面はバッフィング処理により得られる。ここでいうバッフィング処理とは、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いてシート表面を研削する方法などが一般的である。とりわけ、シート表面をサンドペーパーを使用して起毛処理することにより、均一で緻密な立毛を形成することができる。更に、超高精度の仕上げで基板表面にテクスチャー加工を施し、かつスクラッチを抑制する目的で、シート表面上の表面繊維分布の均一性および緻密性を向上させ、立毛繊維の方向性を極めて少なくするためには、研削負荷をより小さくすることが好ましい。研削負荷が高い状態では、巻き毛状となる立毛繊維が多く、また立毛繊維が束状に膠着した状態となりやすい。研削負荷を小さくするためには、バフ段数やサンドペーパー番手などを適宜調整することが好ましい。中でも、バフ段数は3段以上の多段バッフィングとし、各段に使用するサンドペーパーの番手をJIS規定の150番〜600番の範囲とすることが好ましい。
また、本発明の研磨布は、ポリウレタン含浸前、極細繊維発現工程前または起毛処理を行う前に、シート厚み方向に半裁、ないしは数枚に分割されて得られるものでもよい。
得られた研磨布については、極細繊維束の開繊を促すために湯練り等の処理を施してもよい。また、柔軟剤、耐電防止剤、撥水剤、親水剤等の薬剤を付与してもよい。
本発明の研磨布をテープ状として、テクスチャー加工を施す際に、寸法変化が生じると、基板表面を均一に研磨することができないため、研磨布に形態安定性を付与するために、研磨布の片面に補強層を接着してもよい。研磨布に補強層を設ける際には、補強層を接着したシート状物の反対面が立毛面となっていることが必須条件である。また、研磨布に補強層を接着する方法として、熱圧着法、フレームラミ法、補強層とシート状物との間に接着層を設ける方法のいずれを採用してもよい。また、接着層としては、ポリウレタン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエン(NBR)、ポリアミノ酸およびアクリル系接着剤など、ゴム弾性を有するものであれば使用可能である。コストや実用性を考えると、NBRやSBRのような接着剤が好ましい。接着剤の付与方法としては、エマルジョンや、ラテックス状態でシート状物に塗布する。
補強層としては、織編物や熱接着繊維を用いた不織布なども考えられるが、高精度のテクスチャー加工を行うには、厚みや物理特性において均一なフィルム状物を使用することが好ましい。補強層に織編物や熱接着繊維を用いた場合には、補強層の表面の凹凸が大きすぎるために、研磨布全体に補強層の凹凸が反映し、基板表面のうねりを抑制することができず、かつ所望の表面粗さを達成しえないことがある。
フィルム状物は、表面の平滑性に優れることから、研磨布表面の平滑性を損なうことなく、高精度のテクスチャー加工を行うことができる。ここでいうフィルムとなる素材としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系およびポリフェニルサルファイド系などのフィルム形状を有するものであれば使用可能であるが、汎用性を考えるとポリエステルフィルムを使用することが好ましい。フィルムからなる補強層を設ける場合には、テクスチャー加工時のシートの形態安定性、クッション性および基板表面へのフィット性を全て満足させる点から、不織布からなるシート状物との厚みバランスをとることが必要である。不織布からなるシート状物は、仕上げ厚みとして0.4mm以上であることが好ましく、生産性の点から好ましくは0.4mm以上2mm以下の範囲である。フィルムの厚みは20μm以上100μm以下とすることが好ましい。不織布からなるシート状物の厚みが0.4mm未満であると、テクスチャー加工時の寸法変化が大きく、超高精度の仕上げが行えないため、補強層が必要であるが、補強層の効果が強くクッション性を失ってしまうことがある。フィルム層の厚みが20μm未満であると、テクスチャー加工時の寸法変化を抑えることが困難であり、100μmを超えると、研磨布全体の剛性が高くなりすぎるために、スクラッチの発生を抑えることができないため好ましくない。
本発明の研磨布を用いて、テクスチャー加工を行う方法としては、かかる研磨布を加工効率と安定性の観点から、30mm以上50mm以下幅のテープ状にカットして、テクスチャー加工用テープとして用いる。該研磨テープと遊離砥粒を含むスラリーを用いて、アルミニウム合金磁気記録ディスクやガラス磁気記録ディスクのテクスチャー加工を行う方法が好適な方法である。研磨条件として、スラリーは、ダイヤモンド微粒子などの高硬度砥粒を水系分散媒に分散したものが好ましく用いられる。砥粒の保持性と分散性の観点から、本発明の研磨布を構成する極細繊維の繊維径に適合した砥粒径は、0.2μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.01μm以上0.2μm以下の範囲である。
本発明で得られた研磨布は、表面上の立毛繊維が極めて均一に分散し、かつ隙間が少ない状態で緻密に分布しているので、アルミニウム合金基板およびガラス基板のテクスチャー加工において、研磨布単位表面積あたりの砥粒把持量が高く、加工効率に優れるとともに、スクラッチ欠点が少ないことにより歩留まりがよく、かつ線密度の高いテクスチャー痕を形成することができ、更に基板表面上に表面粗さ0.3nm以下という高精度なテクスチャー加工を施すことができ、電磁変換特性に優れた記録ディスクの高記録密度化に対応可能な加工面として仕上げることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[評価方法]
(1)単繊維径及び平均単繊維径
研磨布を厚み方向にカットした断面を観察面として走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、任意の極細繊維の単繊維径を測定して小数点第2位を丸め、単繊維径とした。
また、任意の100本の極細繊維の単繊維径を測定し、これを母集団とした平均値を算出する。該平均値を小数点第2位で四捨五入し、平均単繊維径とした。当該100本中に5μmを超えるものがなければ、5μmを超える繊維なし、と判断した。
(2)高分子弾性体の膜構造
研磨布を厚み方向にカットした断面を観察面として走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、高分子弾性体部分の膜構造を判断した。
(3)基板表面粗さ
JIS B−0601(2001年版)に準拠して、Schmitt Measurement Systems,Inc製TMS−2000表面粗さ測定器を用いて、テクスチャー加工後のアルミディスク基板サンプル表面の任意の10カ所について平均粗さを測定し、10カ所の測定値を平均することにより基板表面粗さを算出した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(4)スクラッチ点数
テクスチャー加工後の3.5インチアルミ基板5枚の両面、すなわち計10表面を測定対象として、Candela5100光学表面分析計を用いて、深さ3nm以上の溝をスクラッチとし、スクラッチ点数を測定し、10表面の測定値を平均し、1の位で四捨五入した値で評価した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(5)ラインデンシティ
原子間力顕微鏡AFMを用いて、テクスチャー加工後の基板サンプル表面の任意の10カ所について、半径方向長さ1μmあたりに形成されているテクスチャー痕の本数を測定し、その平均値をラインデンシティとした。数値が大きいほど高性能であることを示す。
(6)伸びによる幅変化率
研磨布を長さ方向35cm幅方向5cmにカット後、長さ方向の両端をそれぞれの端から10cmの位置にホッチキスで固定し、両端に輪を有した測定サンプルを作製した。このサンプルに、水を十分に染み込ませた後に、一端の輪に棒を通してサンプルを吊し、もう一端には3kgの重りを吊した。この状態で5分放置し、測定前後のサンプル中心の幅を用いて、下記の計算式により幅変化率を求め、25%以下を合格とした。
幅変化率(%)={(測定前の幅− 測定後の幅)/ 測定前の幅}×100
[化学物質の表記]
各実施例・比較例で用いた化学物質の略号の意味は以下の通りである。
C5C6PC:ペンタメチレンカーボネートジオールとヘキサメチレンカーボネートジオールの共重合ポリカーボネートポリオール
3MPC:ポリ(3−メチルペンタンカーボネート)ポリオール
PHC:ポリヘキサメチレンカーボネート
H12MDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
IPDI:イソフォロンジイソシアネート
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
PTMG:ポリテトラメチレングリコール
EG:エチレングリコール
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
PET:ポリエチレンテレフタレート
Ny6:6−ナイロン
PSt:ポリスチレン
PU:ポリウレタン
[ポリウレタン種]
実施例、比較例で用いた水分散型ポリウレタン液の組成は下記の通りである。
(1)水分散型ポリウレタン液I(PU−I)
ポリウレタン種 :自己乳化型
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
外部乳化剤 :なし
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
(2)水分散型ポリウレタン液II(PU−II)
ポリウレタン種 :自己乳化型
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :3MPC
内部乳化剤 :ジメチロールプロピオン酸トリエチルアミン塩
外部乳化剤 :なし
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
(3)水分散型ポリウレタン液III(PU−III)
ポリウレタン種 :強制乳化型
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :なし
外部乳化剤 :ノニオン系界面活性剤
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
(4)水分散型ポリウレタン液IV(PU−IV)
ポリウレタン種 :自己乳化型
ポリイソシアネート:IPDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :EG
外部乳化剤 :なし
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
(5)有機溶剤系ポリウレタン液V(PU−V)
ポリイソシアネート:MDI
ポリオール :PTMG
鎖伸長剤 :EG
溶媒 :DMF
[実施例1]
(研磨布の製造)
島成分としてPETを、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が200島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率60/40で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、単繊維繊度3.9dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで2000本/cm2のパンチ本数でニードルパンチし、不織布を得た。
この不織布を90℃の湯中で2分間処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、固形分濃度30%に調整した水分散型ポリウレタン液I(PU−I)を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する水分散型ポリウレタン重量が90重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。
次にこのシートを90℃に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。脱海シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、単繊維径は5.0μm以下、平均単繊維径は1.0μmであることを確認した。また、水分散型ポリウレタンの膜構造は無孔構造であった。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成し、本発明の研磨布を得た。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は5%であった。
(テクスチャー加工)
該研磨布を40mm幅のテープとし、以下の条件でテクスチャー加工を行った。
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工したディスクを用い、研磨布表面に平均粒径0.1μmのダイヤモンド結晶からなる遊離砥粒スラリーを滴下し、テープ走行速度を5cm/分の条件で10秒間研磨を実施した。テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.16nm、0.15nm、0.15nm、0.17nm、0.16nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認することができた。スクラッチ点数は210点であり、ラインデンシティは14本/μm幅であり、テープの伸びによる幅変化が無く緻密でかつ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であり、スラリーのなじみもよく、極めて良好なものであった。また、テクスチャー加工後に磁性層を製膜した基板は、電磁変換特性に極めて優れるものであった。
[実施例2]
実施例1で得られた研磨布に、NBRを主体とする接着剤を裏面に塗布し、厚み50μmのポリエステルフィルムを圧着し、ポリエステルフィルムが積層された研磨布を制作した。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は0%であった。
このようにして得られた研磨布を用いて、実施例1と同様の方法にてテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.18nm、0.20nm、0.17nm、0.20nm、0.18nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認することができた。スクラッチ点数は290点であり、ラインデンシティは14本/μm幅であり、テープの伸びによる幅変化が無く緻密で且つ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であり、スラリーのなじみもよく、極めて良好なものであった。また、テクスチャー加工後に磁性層を製膜した基板は、電磁変換特性に優れるものであった。
[参考例3]
島成分としてPETを、また海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が376島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率60/40で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、単繊維繊度2.8dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで2000本/cm2のパンチ本数でニードルパンチし、不織布を得た。
この不織布を90℃の湯中で2分間処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、固形分濃度30%に調整した水分散型ポリウレタン液II(PU−II)を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する水分散型ポリウレタン重量が70重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。
次にこのシートを90℃に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。脱海シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、単繊維径は5.0μm以下、平均単繊維径は0.5μmであることを確認した。また、水分散型ポリウレタンの膜構造は無孔構造であった。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成し、本発明の研磨布を得た。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は10%であった。
このようにして得られた研磨布を用いて、実施例1と同様の方法にてテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.14nm、0.15nm、0.14nm、0.16nm、0.17nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認することができた。スクラッチ点数は160点であり、ラインデンシティは15本/μm幅であり、テープの伸びによる幅変化が無く緻密で且つ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であり、スラリーのなじみもよく、極めて良好なものであった。また、テクスチャー加工後に磁性層を製膜した基板は、電磁変換特性に優れるものであった。
[実施例4]
島成分としてNy6を、また、海成分としてポリ乳酸を用い、島数が100島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率40/60で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、単繊維繊度5.0dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで2000本/cm2のパンチ本数でニードルパンチし、不織布を得た。
この不織布を90℃の湯中で2分間処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、固形分濃度30%に調整した水分散型ポリウレタン液I(PU−I)を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する水分散型ポリウレタン重量が100重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。
次にこのシートを90℃に加熱した濃度40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分間処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。脱海シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、単繊維径は5.0μm以下、平均単繊維径は1.5μmであることを確認した。また、水分散型ポリウレタンの膜構造は無孔構造であった。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成し、本発明の研磨布を得た。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は7%であった。
このようにして得られた研磨布を用いて、実施例1と同様の方法にてテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.19nm、0.18nm、0.19nm、0.17nm、0.18nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認することができた。スクラッチ点数は240点であり、ラインデンシティは13本/μm幅であり、テープの伸びによる幅変化が無く緻密で且つ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であり、スラリーのなじみもよく、極めて良好なものであった。また、テクスチャー加工後に磁性層を製膜した基板は、電磁変換特性に優れるものであった。
[実施例5]
島成分としてPETを、また、海成分として共重合ポリスチレンを用い、島数が36島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率60/40で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、単繊維繊度3.2dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで2000本/cm2のパンチ本数でニードルパンチし、不織布を得た。
この不織布を90℃の湯中で2分間処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、固形分濃度30%に調整した水分散型ポリウレタン液I(PU−I)に架橋剤として水分散型イソシアネートWB40−100(旭化成ケミカルズ製)を水分散型ポリウレタン固形分に対し0.5%添加した液を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する水分散型ポリウレタン重量が110重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。
次にこのシートをトリクロロエチレン中に浸漬し、海島型繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。脱海シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、単繊維径が5.0μmを超えるものが存在していたが、その割合は2%であった。また、平均単繊維径は2.1μmであることを確認した。また、水分散型ポリウレタンの膜構造は無孔構造であった。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成し、本発明の研磨布を得た。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は3%であった。
このようにして得られた研磨布を用いて、実施例1と同様の方法にてテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.21nm、0.23nm、0.20nm、0.23nm、0.21nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認することができた。スクラッチ点数は370点であり、ラインデンシティは12本/μm幅であり、テープの伸びによる幅変化が無く緻密で且つ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であり、スラリーのなじみもよく、極めて良好なものであった。また、テクスチャー加工後に磁性層を製膜した基板は、電磁変換特性に優れるものであった。
[実施例6]
島成分としてNy6を、また、海成分として共重合ポリスチレンを用い、島数が100島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率40/60で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、単繊維繊度5.0dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで2000本/cm2のパンチ本数でニードルパンチし、不織布を得た。
この不織布を90℃の湯中で2分間処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、固形分濃度30%に調整した水分散型ポリウレタン液I(PU−I)に架橋剤として水分散型イソシアネートWB40−100(旭化成ケミカルズ製)を水分散型ポリウレタン固形分に対し0.5%添加した液を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する水分散型ポリウレタン重量が130重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。
次にこのシートをトリクロロエチレン中に浸漬し、海島型繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。脱海シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、単繊維径は5.0μm以下、平均単繊維径は1.5μmであることを確認した。また、水分散型ポリウレタンの膜構造は無孔構造であった。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成し、本発明の研磨布を得た。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は5%であった。
このようにして得られた研磨布を用いて、実施例1と同様の方法にてテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.18nm、0.19nm、0.20nm、0.19nm、0.19nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認することができた。スクラッチ点数は230点であり、ラインデンシティは13本/μm幅であり、テープの伸びによる幅変化が無く緻密で且つ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であり、スラリーのなじみもよく、極めて良好なものであった。また、テクスチャー加工後に磁性層を製膜した基板は、電磁変換特性に優れるものであった。
[実施例7]
固形分濃度30%に調整した水分散型ポリウレタン液III(PU−III)を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する水分散型ポリウレタン重量が90重量%となるようにポリウレタンを付与し、その後、熱水にて界面活性剤を除去後、100℃5分で乾燥した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の研磨布を得た。
このようにして得られた研磨布を用いて、実施例1と同様の方法にてテクスチャー加工を実施した。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は12%であった。
テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.17nm、0.16nm、0.18nm、0.17nm、0.18nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認することができた。スクラッチ点数は220点であり、ラインデンシティは14本/μm幅であり、テープの伸びによる幅変化が無く緻密で且つ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であり、スラリーのなじみもよく、極めて良好なものであった。また、テクスチャー加工後に磁性層を製膜した基板は、電磁変換特性に優れるものであった。
[実施例8]
島成分としてPETを、また、海成分として5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、島数が200島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率40/60で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、単繊維繊度3.9dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで3000本/cm2のパンチ本数でニードルパンチし、不織布を得た。
この不織布を90℃の湯中で2分間処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、90℃に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に低張力で浸漬して30分間処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。脱海シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、単繊維径は5.0μm以下、平均単繊維径は1.0μmであることを確認した。このシートに、固形分濃度10%に調整した水分散型ポリウレタン液IV(PU−IV)を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する水分散型ポリウレタン重量が30重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察で、水分散型ポリウレタンの膜構造は無孔構造であった。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成し、本発明の研磨布を得た。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は10%であった。
このようにして得られた研磨布を用いて、実施例1と同様の方法にてテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.24nm、0.25nm、0.23nm、0.23nm、0.25nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認することができた。スクラッチ点数は460点であり、ラインデンシティは12本/μm幅であり、テープの伸びによる幅変化が無く緻密でかつ均一なテクスチャー痕が形成された加工面であり、加工性もスラリーのなじみもよく良好であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を製膜した基板は、電磁変換特性に極めて優れるものであった。
[比較例1]
PETを用いて溶融紡糸し、延伸、捲縮、カットを経て原綿を得た。この原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで2000本/cm2のパンチ本数でニードルパンチし、不織布を得た。不織布の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、単繊維径が5.0μmを超えるものが存在し、その割合は97%であり、また平均単繊維径は9.5μmであることを確認した。
この不織布を90℃の湯中で2分間処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、固形分濃度10%に調整した水分散型ポリウレタン液I(PU−I)を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する水分散型ポリウレタン重量が30重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察で、水分散型ポリウレタンの膜構造は無孔構造であった。
そして、該シート(脱海してない)を厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成し、本発明の研磨布を得た。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は32%であった。
このようにして得られた研磨布を用いて、実施例1と同様の方法にてテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ1.28nm、0.94nm、1.12nm、1.33nm、1.18nmであり、目標の表面粗さを得ることができなかった。また、テクスチャー加工面全体を観察すると、テープ伸びによる幅変化が発生したために未加工部分が多く、表面のうねりが大きいものであった。スクラッチ点数は1710点であり、ラインデンシティは3本/μm幅であった。また、テクスチャー加工後に磁性層を製膜した基板はハードディスクドライブテストにおいて、エラーの発生が多発し、電磁変換特性が低いものであった。
[比較例2]
島成分としてNy6を、また海成分として共重合ポリスチレンを用い、島数が100島の海島型複合用口金を用いて、島/海重量比率40/60で溶融紡糸した後、延伸、捲縮、カットを経て、単繊維繊度5dtexの海島型複合繊維の原綿を得た。
この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、次いで2000本/cm2のパンチ本数でニードルパンチし、不織布を得た。この不織布を熱水収縮させた後、ポリビニルアルコール水溶液を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対するポリビニルアルコール重量が45重量%となるようにポリビニルアルコールを付与したシートを得た。このシートをトリクロロエチレン中で海成分を溶解除去し、極細繊維が絡合してなる脱海シートを得た。脱海シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、単繊維径は5.0μm以下、平均単繊維径は1.5μmであることを確認した。
この極細繊維からなる不織布を固形分濃度12%に調整した有機溶剤系ポリウレタン液V(PU−V)を含浸し、DMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固せしめた。その後、ポリビニルアルコールおよびDMFを熱水で除去し、120℃10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する水分散型ポリウレタン重量が30重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察で、有機溶剤系ポリウレタンの膜構造は多孔構造であった。
そして、シート状物を厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面をサンドペーパー番手が240番のエンドレスサンドペーパーを用いた研削により立毛面を形成し、本発明の研磨布を得た。得られた研磨布の伸びによる幅変化率は41%であった。
このようにして得られた研磨布を用いて、実施例1と同様の方法にてテクスチャー加工を実施した。
テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.25nm、0.24nm、0.24nm、0.27m、0.25nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認することができた。スクラッチ点数は610点、ラインデンシティは10本/μm幅であった。しかしながら、テープ自体にコシが無いことと、テープの伸びによる幅変化が発生したこと、スラリーの馴染みが悪いことから、加工性が悪い結果であった。