JP4004120B2 - 水分散型ポリウレタン樹脂組成物 - Google Patents

水分散型ポリウレタン樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分散型ポリウレタン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、成膜性に優れ、かつ、耐水性、特に耐熱水性、耐溶剤性、耐薬品性に優れた被膜を与えるノニオン性の水分散型ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水分散型ポリウレタン樹脂組成物の検討は多数なされている。一般的には、ポリウレタン樹脂骨格中にアニオン性、カチオン性又はノニオン性の親水基を導入して、自己乳化分散型にするか、あるいは、疎水性のポリウレタン樹脂に多量の乳化剤を混合し、機械的剪断により強制的に乳化分散する方法が取られている。
親水基をポリウレタン骨格中に導入した自己乳化型ポリウレタン樹脂に関しては、近年、高分子量、高架橋構造のポリウレタン水分散液を得ることが可能となり、かなり改良は進んではいるものの、導入した親水基の影響を完全に免れるまでは至っておらず、特に被膜の耐熱水性や耐湿熱耐久性、あるいは酸、アルカリなどに対する耐薬品性の面で必ずしも満足できるものではない。
一方、疎水性のポリウレタン樹脂に多量の乳化剤を混合し、機械的剪断により強制的に乳化分散する方法においては、分散安定性を得るために、多量の乳化剤が必要であり、この乳化剤の影響により、被膜形成性を著しく阻害するため、満足すべき物性を有する被膜が得られていないのが現状である。
これらの諸問題を解決するために、近年ノニオン性のポリウレタン樹脂エマルジョンの製法において、少量のポリオキシエチレン基をポリウレタン骨格中に導入し、特定の乳化剤を用いて、エマルジョンとしての安定性が良好であり、かつ、かなり優れた物性を有する被膜を与えるポリウレタン樹脂エマルジョンが得られるようになってはきているものの、溶剤系のポリウレタン樹脂組成物と比較すると、成膜性、耐水性、耐薬品性などの面で必ずしも満足できるものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安定な水分散性を備え、成膜性に優れ、かつ、耐水性、特に耐熱水性、耐溶剤性、耐薬品性に優れた被膜を与えるノニオン性の水分散型ポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水分散型ポリウレタン樹脂組成物を製造するに際し、鎖伸長剤として用いるポリアミン化合物のうち、少なくともその一部に、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物を用いることにより、成膜性に優れた水分散型ポリウレタン樹脂組成物が得られ、かつ形成される被膜は、耐水性、耐溶剤性、耐薬品性に優れることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ポリイソシアネートとポリオールより得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、必要により乳化剤の存在下で水に分散させた後に、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物からなるウレタンプレポリマーの鎖伸長剤を用いて、前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長して得られる水分散型ポリウレタン樹脂組成物であって、ポリオール中にポリオキシエチレン基が5〜25重量%含まれ、ウレタンプレポリマー中の遊離イソシアネート基含有量が1.6〜3.2重量%であり、鎖伸長剤として用いるポリアミン化合物において、全ポリアミン化合物中に占める一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物の割合が20〜60重量%であることを特徴とする水分散型ポリウレタン樹脂組成物、
(2)ウレタンプレポリマーが、イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比NCO/OH=1.2/1.0〜1.6/1.0で反応させて得られるものである第(1)項記載の水分散型ポリウレタン樹脂組成物、及び、
(3)ウレタンプレポリマーを水に乳化分散させるに際して、ウレタンプレポリマー100重量部に対して非イオン界面活性剤0.5〜10重量部を添加してなる第(1)項記載の水分散型ポリウレタン樹脂組成物、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の水分散性ポリウレタン樹脂組成物は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、必要により乳化剤の存在下で水に分散させた後に、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物で鎖伸長して得られる水分散型ポリウレタン樹脂組成物であって、鎖伸長剤として用いるポリアミン化合物のうち、少なくともその一部を、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物としたものである。
本発明組成物に用いる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールを、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基が、ポリオールが有するヒドロキシル基に対して過剰となる状態で反応することにより得ることができる。
使用するポリイソシアネートには特に制限はなく、従来より一般に用いられている芳香族、脂肪族及び脂環式のポリイソシアネートを使用することができる。このようなポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボランジイソシアネートなどを挙げることができる。これらのポリイソシアネートは、1種を単独で用いることができ、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボランジイソシアネートを特に好適に使用することができる。
【0006】
使用するポリオールは、全ポリオール成分中にポリオキシエチレン基が5〜25重量%含まれるものであり、より好ましくは全ポリオール成分中にポリオキシエチレン基が5〜20重量%含まれるものである。全ポリオール成分中のポリオキシエチレン基の含有量が5重量%未満であると、ウレタンプレポリマーの親水性が不足し、乳化分散状態が不安定となり、あるいは、乳化剤を多量に使用するために、成膜性、耐水性などの物性面で劣ったものとなるおそれがある。また、全ポリオール成分中のポリオキシエチレン基の含有量が25重量%を超えると、鎖伸長時にゲル化を起こしやすく、安定な分散物が得られたとしても得られる被膜の耐水性が劣ったものとなるおそれがある。ポリオール成分中に含まれるポリオキシエチレン基を与える化合物としては、例えば、分子量400〜4,000のポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピレングリコール、ポリオキシエチレンテトラメチレングリコールなどを挙げることができる。また、エチレングリコール、プロプレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの低分子量多価アルコールや、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの低分子量ポリアルキレンポリアミンに、エチレンオキサイドを単独で、あるいはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの1種又は2種以上と組み合わせて付加した化合物などを挙げることができる。
【0007】
本発明組成物において、ポリオキシエチレン基以外の構造を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレン基以外のポリオール構造が基本的に疎水性の構造であり、末端にヒドロキシル基を有し、分子量が500〜4,000であるポリオールを好適に使用することができる。このようなポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクタムジオールなどより製造されたポリエステル系ポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオールなどを挙げることができる。
本発明組成物において、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールを、イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比NCO/OHが1.1/1.0〜1.6/1.0の範囲で反応させて得られるものであることが好ましく、モル比NCO/OHが1.25/1.0〜1.4/1.0の範囲で反応させて得られるものであることがより好ましい。また、得られるウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基含有量は1.6〜3.5重量%であり、より好ましくは1.8〜3.2重量%である。ウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基含有量が1.6重量%未満であると、ウレタンプレポリマーの粘度が著しく上昇するために乳化が困難となり、乳化の際に多量の有機溶剤の添加を必要とし、コスト上不利になるばかりでなく、乳化分散後、ポリアミン化合物で鎖伸長するとき、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物の添加量が少なくなり、その結果架橋構造が不足して、目的とする物性を得ることが困難となるおそれがある。ウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基含有量が3.5重量%を超えると、水分散型ポリウレタン樹脂組成物の経時貯蔵安定性と加工安定性が低下するおそれがある。
【0008】
ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物から、ウレタンプレポリマーを製造するにあたり、必要に応じて、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどの2個以上の活性水素原子を有する低分子鎖伸長剤を用いることができる。これらの鎖延長剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明組成物において、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの製造方法には特に制限はなく、例えば、従来より公知のワンショット法(1段式)あるいは多段式のイソシアネート重付加反応法によって、反応温度40〜150℃の条件下で行うことができる。この際、必要に応じて、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチル錫−2−エチルヘキソエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどの反応触媒、あるいはリン酸、リン酸水素ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイルなどの反応抑制剤を添加することができる。さらに、反応段階で、又は、反応終了後に、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を添加することができる。このような有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、塩化メチレンなどを挙げることができる。これらの中で、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルを特に好適に使用することができる。これらの有機溶剤は、プレポリマーの乳化分散及び鎖伸長後に、加熱減圧することにより除去することができる。
【0009】
本発明組成物においては、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、必要により乳化剤の存在下で水に分散させる。ウレタンプレポリマーの親水性が強く、自己乳化性を有する場合には、乳化剤を添加する必要はないが、ウレタンプレポリマーの疎水性が強い場合には、乳化剤の存在下にウレタンプレポリマーを水に分散させる。本発明組成物において、ウレタンプレポリマーを乳化する際に用いる乳化剤としては、非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。非イオン界面活性剤の中で、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンプロピレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンプロピレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、プルロニック型非イオン界面活性剤を特に好適に使用することができる。
非イオン界面活性剤の添加量は、被乳化物であるウレタンプレポリマーのポリオキシエチレン基含有量などに起因する親水性により異なるが、ウレタンプレポリマー100重量部に対し、0.5〜10重量部であることが好ましく、1〜6重量部であることがより好ましい。非イオン界面活性剤の添加量がウレタンプレポリマー100重量部に対して0.5重量部未満であると、安定な乳化分散状態を得ることが困難になるおそれがある。非イオン界面活性剤の添加量がウレタンプレポリマー100重量部に対して10重量部を超えると、得られる被膜の耐水性が劣るものとなるおそれがある。
【0010】
本発明組成物におけるウレタンプレポリマーの乳化分散及びポリアミン化合物との反応の方法に特に制限はなく、公知の乳化機などを用いて機械的剪断力を加えて乳化分散することができるが、ウレタンプレポリマー又はウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液に乳化剤を混合し、水に乳化分散したのち、ポリアミン化合物を添加し、鎖伸長する方法、あるいは、乳化分散物をポリアミンの溶液中に添加して鎖伸長する方法が好ましい。何れの方法においても、ウレタンプレポリマーの乳化分散物を得る際に、転相乳化の工程を取るため、ホモミキサーや、ホモジナイザーなどの機械的剪断力を加えることが好ましい。乳化分散は、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と水又は乳化剤との反応を極力抑えるために、室温ないし40℃の温度範囲で行うことが好ましく、さらに、リン酸、リン酸水素ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、アジピン酸、塩化ベンゾイルなどの反応抑制剤を添加することが好ましい。
本発明組成物において、鎖伸長剤として用いるポリアミン化合物は、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物であり、かつ、少なくともその一部が、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物である。
一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を2個有するジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボランジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、キシリレンジアミンなどを挙げることができる。これらの中で、エチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン及びノルボランジアミンを特に好適に使用することができる。また、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミンなどを挙げることができる。これらの中で、ジエチレントリアミン及びイミノビスプロピルアミンを特に好適に使用することができる。
【0011】
本発明組成物において、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物及び一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物は、それぞれ1種ずつを用いることができ、あるいは、一方を1種、他方を2種以上組み合わせて用いることができ、さらには、両方を2種以上ずつ組み合わせて用いることもできる。ウレタンプレポリマーとポリアミン化合物との反応条件には特に制限はないが、通常は、20〜40℃の反応温度で、ウレタンプレポリマーとポリアミン化合物を混合したのち、30〜120分間で鎖伸長反応は完結する。
本発明組成物においては、鎖伸長剤として用いる全ポリアミン化合物の中で、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物の割合が10〜60重量%であることが好ましく、20〜45重量%であることがより好ましい。全ポリアミン化合物中、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物の割合が10重量%未満であると、ポリウレタンの架橋構造が十分ではなく、目的とする物性、すなわち、優れた耐水性、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性などを得ることが困難となるおそれがある。全ポリアミン化合物中、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物の割合が60重量%を超えると、ポリウレタンの架橋密度が高くなり過ぎて、成膜時にクラックなどが生じたり、あるいは、ポリウレタンの分子量が十分に上昇しなくなるおそれがある。一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物を、全ポリアミン化合物中に10〜60重量%となる量で存在せしめることにより、ポリウレタン樹脂が適当な架橋構造を形成し、被膜が強靭なものとなる。本発明組成物において、ポリアミン化合物の使用量は、ウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基に対するアミノ基の量が、0.8〜1.2当量倍となる量であることが好ましい。
【0012】
ポリウレタンに架橋構造を導入する方法としては、ウレタンプレポリマーの段階で、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの低分子量多価アルコールを反応する方法もあるが、十分な架橋構造を導入して、優れた耐水性、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性などが得られる程度に低分子量多価アルコールを反応すると、プレポリマーの粘度が極端に高くなったり、ゲル状の粘性になるため、乳化分散が極めて困難となる。また、粘度を低下させるためには、多量の溶剤が必要となり、製造工程上及びコスト上著しく不利になる。
本発明の水分散型ポリウレタン樹脂組成物は、従来の水分散型ポリウレタン樹脂組成物と比較して、得られる被膜の耐熱水性や耐湿熱耐久性、あるいは、酸、アルカリなどに対する耐薬品性、強度などの諸物性において、非常に優れたものであり、溶剤系ポリウレタン樹脂組成物に匹敵するものである。さらに、耐溶剤性に至っては、溶剤系ポリウレタン樹脂組成物を凌ぐものとなっている。
従って、本発明の水分散型ポリウレタン樹脂組成物は、編織物、不織布などの繊維素材、紙、木、天然皮革、金属素材、FRPなどの浸漬、含浸、コーティング、接着、塗装などの幅広い用途に利用することができる。また、その優れた耐熱水性のために、不織布を用いて、水分散性ポリウレタン樹脂組成物を含浸したのち、染色工程を経由する人工皮革分野において特に有用となる。本発明の水分散型ポリウレタン樹脂組成物を用いて加工された人工皮革は、引張り、引裂き、摩耗などの各物性が著しく向上したものとなる。さらには、この分野は、従来は溶剤系ポリウレタン樹脂組成物、具体的には、溶剤としてジメチルホルムアミドを用いた湿式ウレタン樹脂組成物が用いられていたが、昨今の環境問題もあり、溶剤を使用しない加工という面でも非常に有利である。
【0013】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、評価は下記の方法により行った。
(1)ポリウレタン水分散物の平均粒子径
レーザー回析式粒度分布測定装置[(株)島津製作所、SALD−1100]を用いて測定する。
(2)ポリウレタン水分散液からのフィルムの作製
ステンレス箱中に、ポリウレタン水分散液を流し込んで風乾し、さらに130℃にて20分間熱処理を行い、厚さ約0.3mmのフィルムを作製する。
(3)ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液からのフィルムの作製
ステンレス箱中に、ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を流し込み、120℃にて2時間熱処理を行い、厚さ約0.3mmのフィルムを作製する。
(4)フィルムの引張試験
ポリウレタンフィルムを、オートグラフ[(株)島津製作所、オートグラフAG−500D]を用い、引張速度300mm/分で引張試験を行い、100%モジュラス、300%モジュラス、破断強度及び破断伸度を測定する。
(5)フィルムの耐熱水性
ポリウレタンフィルムを、酢酸0.5g/リットル溶液中、浴比1:20にて、ミニカラー[(株)テクサム技研、TYPE MC12EM]を用い、130℃で60分間処理したのち室温まで冷却し、直ちに取りだして、表面の水分をろ紙で拭き取り、重量を測定する。フィルムの初期重量W0及び処理後の重量W1より、ポリウレタンフィルムの耐熱水性試験における重量膨潤率を、次式より算出する。
重量膨潤率(%)={(W1−W0)/W0}×100
(6)耐薬品性及び耐溶剤性
ポリウレタンフィルムを、2重量%塩酸、2重量%水酸化ナトリウム水溶液、メチルエチルケトン、トルエン及びエタノールに、それぞれ30℃にて24時間浸漬したのち直ちに取りだし、表面の薬品又は溶剤をろ紙で拭き取り、重量を測定する。フィルムの初期重量W0及び処理後の重量W1より、ポリウレタンフィルムの耐薬品性試験及び耐溶剤性試験における重量膨潤率を、次式より算出する。重量膨潤率(%)={(W1−W0)/W0}×100
【0014】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹込み管を備えた4ツ口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1,100)82.5重量部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1,000、オキシエチレン基含有量70重量%)8.7重量部、1,4−ブタンジオール1.6重量部、トリメチロールプロパン1.9重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのち、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート45.4重量部を加え、75℃にて150分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が3.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)6重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水251重量部を徐々に加えて転相乳化、分散させ、この乳化分散物にピペラジン2.9重量部及びジエチレントリアミン1.1重量部を水16.2重量部に溶解したポリアミン水溶液を添加して90分間撹拌した。次いで、得られたポリウレタン分散液を減圧下に50℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分36.8重量%、粘度35mPa・s(BM型粘度計、1号ローター、30rpm.、測定温度20℃)、平均粒子径0.71μmの安定なポリウレタン水分散液を得た。
このポリウレタン水分散液から得られたフィルムは、100%モジュラス22kg/cm2、300%モジュラス47kg/cm2、破断強度355kg/cm2、破断伸度450%であり、耐熱水性試験における重量膨潤率は7重量%、耐薬品性試験及び耐溶剤性試験における重量膨潤率は、2重量%塩酸が9重量%、2重量%水酸化ナトリウム水溶液が3重量%、メチルエチルケトンが52重量%、トルエンが26重量%、エタノールが63重量%であった。
実施例2
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1,100)86.8重量部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1,000、オキシエチレン基含有量70重量%)9.1重量部、1,4−ブタンジオール1.6重量部、トリメチロールプロパン2.0重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのち、イソホロンジイソシアネート40.4重量部を加え、75℃にて240分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が3.2重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)6重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水251重量部を徐々に加えて転相乳化、分散させ、この乳化分散物にピペラジン3.1重量部及びジエチレントリアミン1.2重量部を水17.0重量部に溶解したポリアミン水溶液を添加して90分間撹拌した。次いで、得られたポリウレタン分散液を減圧下に50℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分36.6重量%、粘度80mPa・s(BM型粘度計、1号ローター、30rpm.、測定温度20℃)、平均粒子径0.35μmの安定なポリウレタン水分散液を得た。
このポリウレタン水分散液から得られたフィルムは、100%モジュラス14kg/cm2、300%モジュラス31kg/cm2、破断強度220kg/cm2、破断伸度560%であり、耐熱水性試験における重量膨潤率は12重量%、耐薬品性試験及び耐溶剤性試験における重量膨潤率は、2重量%塩酸が15重量%、2重量%水酸化ナトリウム水溶液が6重量%、メチルエチルケトンが58重量%、トルエンが25重量%、エタノールが57重量%であった。
【0015】
参考例
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1,100)82.5重量部、ポリエチレングリコール(平均分子量600)8.7重量部、1,4−ブタンジオール1.6重量部、トリメチロールプロパン1.9重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのち、イソホロンジイソシアネート45.4重量部を加え、75℃にて240分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が2.7重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びプルロニック型ノニオン界面活性剤[旭電化(株)、アデカプルロニックL−72]5重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水247重量部を徐々に加えて転相乳化、分散させ、この乳化分散物にイソホロンジアミン5.1重量部及びジエチレントリアミン1.0重量部を水24.4重量部に溶解したポリアミン水溶液を添加して90分間撹拌した。次いで、得られたポリウレタン分散液を減圧下に50℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分36.4重量%、粘度60mPa・s(BM型粘度計、1号ローター、30rpm.、測定温度20℃)、平均粒子径0.45μmの安定なポリウレタン水分散液を得た。
このポリウレタン水分散液から得られたフィルムは、100%モジュラス13kg/cm2、300%モジュラス27kg/cm2、破断強度194kg/cm2、破断伸度520%であり、耐熱水性試験における重量膨潤率は14重量%、耐薬品性試験及び耐溶剤性試験における重量膨潤率は、2重量%塩酸が14重量%、2重量%水酸化ナトリウム水溶液が7重量%、メチルエチルケトンが65重量%、トルエンが28重量%、エタノールが66重量%であった。
実施例4
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1,100)85.7重量部、ポリエチレングリコール(平均分子量600)18.3重量部、1,4−ブタンジオール1.7重量部、トリメチロールプロパン2.1重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのち、ヘキサメチレンジイソシアネート32.3重量部を加え、75℃にて70分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が2.6重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=13)8重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水252重量部を徐々に加えて転相乳化、分散させ、この乳化分散物にピペラジン2.5重量部及びジエチレントリアミン1.0重量部を水13.7重量部に溶解したポリアミン水溶液を添加して90分間撹拌した。次いで、得られたポリウレタン分散液を減圧下に50℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分37.3重量%、粘度180mPa・s(BM型粘度計、1号ローター、30rpm.、測定温度20℃)、平均粒子径0.21μmの安定なポリウレタン水分散液を得た。
このポリウレタン水分散液から得られたフィルムは、100%モジュラス18kg/cm2、300%モジュラス38kg/cm2、破断強度216kg/cm2、破断伸度490%であり、耐熱水性試験における重量膨潤率は11重量%、耐薬品性試験及び耐溶剤性試験における重量膨潤率は、2重量%塩酸が10重量%、2重量%水酸化ナトリウム水溶液が4重量%、メチルエチルケトンが59重量%、トルエンが31重量%、エタノールが71重量%であった。
【0016】
実施例5
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1,100)36.3重量部、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量1,000)38.5重量部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1,000、オキシエチレン基含有量70重量%)19.2重量部、エチレングリコール1.0重量部、トリメチロールプロパン1.8重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのち、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート43.2重量部を加え、75℃にて180分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が2.2重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)6重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水253重量部を徐々に加えて転相乳化、分散させ、この乳化分散物にピペラジン2.1重量部及びジエチレントリアミン0.9重量部を水11.9重量部に溶解したポリアミン水溶液を添加して90分間撹拌した。次いで、得られたポリウレタン分散液を減圧下に50℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分36.5重量%、粘度45mPa・s(BM型粘度計、1号ローター、30rpm.、測定温度20℃)、平均粒子径0.45μmの安定なポリウレタン水分散液を得た。
このポリウレタン水分散液から得られたフィルムは、100%モジュラス30kg/cm2、300%モジュラス72kg/cm2、破断強度410kg/cm2、破断伸度420%であり、耐熱水性試験における重量膨潤率は9重量%、耐薬品性試験及び耐溶剤性試験における重量膨潤率は、2重量%塩酸が8重量%、2重量%水酸化ナトリウム水溶液が5重量%、メチルエチルケトンが38重量%、トルエンが30重量%、エタノールが40重量%であった。
実施例6
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ヒドロキシル基末端ポリブチレンアジペート(平均分子量1,000)76.1重量部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1,000、オキシエチレン基含有量70重量%)16.9重量部、1,4−ブタンジオール1.5重量部、トリメチロールプロパン1.9重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのち、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート40.4重量部を加え、75℃にて300分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が2.1重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)7重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水254重量部を徐々に加えて転相乳化、分散させ、この乳化分散物にピペラジン2.0重量部及びジエチレントリアミン0.8重量部を水11.3重量部に溶解したポリアミン水溶液を添加して90分間撹拌した。次いで、得られたポリウレタン分散液を減圧下に50℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分36.7重量%、粘度95mPa・s(BM型粘度計、1号ローター、30rpm.、測定温度20℃)、平均粒子径0.98μmの安定なポリウレタン水分散液を得た。
このポリウレタン水分散液から得られたフィルムは、100%モジュラス21kg/cm2、300%モジュラス45kg/cm2、破断強度283kg/cm2、破断伸度460%であり、耐熱水性試験における重量膨潤率は16重量%、耐薬品性試験及び耐溶剤性試験における重量膨潤率は、2重量%塩酸が14重量%、2重量%水酸化ナトリウム水溶液が6重量%、メチルエチルケトンが73重量%、トルエンが33重量%、エタノールが69重量%であった。
【0017】
比較例1
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1,100)87.2重量部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1,000、オキシエチレン基含有量70重量%)12.7重量部、1,4−ブタンジオール2.3重量部、トリメチロールプロパン1.3重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのち、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート35.6重量部を加え、75℃にて240分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が0.48重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)6重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水251重量部を徐々に加えて転相乳化を試みたが、分散していく過程で、粘度が著しく上昇し、乳化分散は困難であった。
比較例2
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1,100)87.2重量部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1,000、オキシエチレン基含有量70重量%)9.2重量部、1,4−ブタンジオール1.7重量部、トリメチロールプロパン2.0重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのち、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート40.0重量部を加え、75℃にて180分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が1.4重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)6重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水256重量部を徐々に加えて転相乳化、分散させ、この乳化分散物にピペラジン0.8重量部及びジエチレントリアミン0.9重量部を水7.0重量部に溶解したポリアミン水溶液を添加して90分間撹拌した。次いで、得られたポリウレタン分散液を減圧下に50℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分36.7重量%、粘度150mPa・s(BM型粘度計、1号ローター、30rpm.、測定温度20℃)、平均粒子径0.83μmの安定なポリウレタン水分散液を得た。
このポリウレタン水分散液から得られたフィルムは、100%モジュラス18kg/cm2、300%モジュラス39kg/cm2、破断強度177kg/cm2、破断伸度500%であり、耐熱水性試験における重量膨潤率は28重量%、耐薬品性試験及び耐溶剤性試験における重量膨潤率は、2重量%塩酸が29重量%、2重量%水酸化ナトリウム水溶液が22重量%、メチルエチルケトンが241重量%、トルエンが195重量%、エタノールが310重量%であった。
【0018】
比較例3
実施例1と同様にして得られたウレタンプレポリマーの乳化分散物に、ピペラジン4.4重量部を水17.4重量部に溶解したピペラジン水溶液を添加して90分間撹拌した。次いで、得られたポリウレタン分散液を減圧下に50℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分36.5重量%、粘度130mPa・s(BM型粘度計、1号ローター、30rpm.、測定温度20℃)、平均粒子径0.42μmの安定なポリウレタン水分散液を得た。
このポリウレタン水分散液から得られたフィルムは、100%モジュラス21kg/cm2、300%モジュラス46kg/cm2、破断強度254kg/cm2、破断伸度430%であり、耐熱水性試験における重量膨潤率は23重量%、耐薬品性試験及び耐溶剤性試験における重量膨潤率は、2重量%塩酸が26重量%、2重量%水酸化ナトリウム水溶液が16重量%、メチルエチルケトンが205重量%、トルエンが172重量%、エタノールが232重量%であった。
比較例4
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(平均分子量1,000)82.8重量部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1,000、オキシエチレン基含有量70重量%)9.6重量部、1,4−ブタンジオール1.7重量部、トリメチロールプロパン2.1重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのちイソホロンジイソシアネート43.8重量部を加え、75℃にて160分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が3.7重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)8重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水249重量部を徐々に加えて転相乳化、分散させ、この乳化分散物にピペラジン3.6重量部及びジエチレントリアミン1.4重量部を水19.9重量部に溶解したポリアミン水溶液を添加して90分間撹拌した。次いで、得られたポリウレタン分散液を減圧下に50℃にて脱溶剤を行うことにより、不揮発分36.6重量%、粘度80mPa・s(BM型粘度計、1号ローター、30rpm.、測定温度20℃)のポリウレタン水分散液を得た。この分散液は、工程途中のプレポリマーの分散物の粒子径は0.35μmであったものの、アミン伸長、脱溶剤後の粒子径は2.8μmで、室温3日放置にて分離沈降し、使用できないものであった。
【0019】
比較例5
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1,100)61.9重量部、ポリオキシエチレンプロピレンランダム共重合グリコール(平均分子量1,000、オキシエチレン基含有量70重量%)12.8重量部、ポリエチレングリコール(平均分子量600)15.3重量部、1,4−ブタンジオール1.4重量部、トリメチロールプロパン1.7重量部、ジブチル錫ジラウレート0.001重量部及びメチルエチルケトン60重量部を取り、均一に混合したのち、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート46.9重量部を加え、75℃にて130分反応させ、不揮発分に対する遊離イソシアネート基含有量が3.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を30℃以下に冷却したのち、デシルリン酸エステル0.1重量部及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(HLB=15)8重量部を添加し、均一に混合した。混合物を別容器に移し、ディスパー羽根を用い、水251重量部を徐々に加えて転相乳化、分散させたところ、軟ペースト状の分散物となった。この分散物に、ピペラジン2.9重量部及びジエチレントリアミン1.1重量部を水16.0重量部に溶解したポリアミン水溶液を添加して10分間撹拌したところ、ゲル化した。
比較例6
実施例1で用いたものと同様な反応装置に、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1,100)172.2重量部、1,4−ブタンジオール7.6重量部及びジメチルホルムアミド560重量部を取り、均一に混合したのち、ジフェニルメタンジイソシアネート60.2重量部を加え、70℃にて250分反応させ、不揮発分30.1重量%、粘度56,000mPa・s(BM型粘度計、4号ローター、6rpm.、測定温度20℃)のポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を得た。
このポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液から得られたフィルムは、100%モジュラス22kg/cm2、300%モジュラス51kg/cm2、破断強度560kg/cm2、破断伸度530%であり、耐熱水性試験における重量膨潤率は6重量%、耐薬品性試験における重量膨潤率は、2重量%塩酸が7重量%、2重量%水酸化ナトリウム水溶液が2重量%であったが、耐溶剤性試験においてはメチルエチルケトンに溶解し、トルエンに対する重量膨潤率は1,082重量%、エタノールに対する重量膨潤率は29重量%であった。
実施例1、2、4〜6及び参考例の結果を第1表に、比較例1〜6の結果を第2表に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0004004120
【0021】
【表2】
Figure 0004004120
【0022】
第1表から明らかなように、実施例1、2、4〜6及び参考例の本発明の水分散型ポリウレタン樹脂組成物は、ノニオン性のポリウレタンで、ポリイソシアネートとして脂肪族又は脂環式のポリイソシアネートを使用しているにもかかわらず、優れた成膜性を備え、その架橋構造より耐熱水性、耐酸性、耐アルカリ性に優れたものとなっており、耐溶剤性に至っては、溶剤系のポリウレタン樹脂組成物をはるかに凌ぐものとなっている。
これに対して、ポリイソシアネートとポリオールの反応において、イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比が1.03で、ウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基含有量が0.48重量%である比較例1においては、ウレタンプレポリマーを転相乳化できない。イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比が1.18で、遊離イソシアネート基含有量が1.4重量%である比較例2においては、安定なポリウレタン水分散液が得られるが、フィルムは重量膨潤率が大きく、耐熱水性、耐薬品性、耐溶剤性に劣るものである。ポリアミン化合物として、アミノ基を2個有するジアミンのみを用いた比較例3においても、安定なポリウレタン水分散液は得られるが、フィルムは重量膨潤率が大きく、耐熱水性、耐薬品性、耐溶剤性に劣るものである。遊離イソシアネート基含有量が3.7重量%である比較例4においては、ポリウレタン水分散液の安定性が不良であり、粒子が分離沈降して使用できない。ウレタンプレポリマーの製造に用いたポリオール成分中のポリオキシエチレン基の含有量が26.1重量%である比較例5においては、転相乳化後の分散物がペースト状であり、ポリアミン化合物との反応によりゲル化する。溶剤系のポリウレタン樹脂組成物を用いた比較例6で得られるフィルムは、耐熱水性、耐酸性、耐アルカリ性は優れているが、耐溶剤性に劣っている。
【0023】
【発明の効果】
本発明の水分散型ポリウレタン樹脂組成物は、鎖伸長剤として用いるポリアミン化合物のうち、少なくともその一部に、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物を用いるので、ポリウレタン樹脂骨格中に適度な架橋構造が形成され、溶剤系のポリウレタン樹脂組成物に匹敵する耐水性、耐薬品性と、溶剤系のポリウレタン樹脂組成物を凌ぐ耐溶剤性などの物性が得られる。
従って、本発明の水分散型ポリウレタン樹脂組成物は、編織物、不織布などの繊維素材、紙、木、天然皮革、FRPなどの加工、金属素材の表面処理、コーティング、接着剤、塗料などのポリウレタン樹脂が利用されている産業上の幅広い用途に活用することができる。

Claims (3)

  1. ポリイソシアネートとポリオールより得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、必要により乳化剤の存在下で水に分散させた後に、一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を2個以上有するポリアミン化合物からなるウレタンプレポリマーの鎖伸長剤を用いて、前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長して得られる水分散型ポリウレタン樹脂組成物であって、ポリオール中にポリオキシエチレン基が5〜25重量%含まれ、ウレタンプレポリマー中の遊離イソシアネート基含有量が1.6〜3.2重量%であり、鎖伸長剤として用いるポリアミン化合物において、全ポリアミン化合物中に占める一分子中に1級及び/又は2級アミノ基を3個以上有するポリアミン化合物の割合が20〜60重量%であることを特徴とする水分散型ポリウレタン樹脂組成物。
  2. ウレタンプレポリマーが、イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比NCO/OH=1.2/1.0〜1.6/1.0で反応させて得られるものである請求項1記載の水分散型ポリウレタン樹脂組成物。
  3. ウレタンプレポリマーを水に乳化分散させるに際して、ウレタンプレポリマー100重量部に対して非イオン界面活性剤0.5〜10重量部を添加してなる請求項1記載の水分散型ポリウレタン樹脂組成物。
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