JP6342924B2 - ポリウレタン樹脂水性分散体 - Google Patents
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Description
(1)(U)中のウレタン基含量が(U)の重量に基づいて0.5〜5.0mmol/gである。
(2)(U)中の末端アミノ基含量が(U)の重量に基づいて0.35mmol/g以下である。
(3)(U)の数平均分子量(Mn)が1万以上である。
(4)(U)の25℃におけるエタノールに対する膨潤率が(U)の重量に対して120〜280重量%である。
(5)(U)の体積平均粒子径(Dv)が0.01〜1μmである。
(6)(U)中に(U)の重量に基づいて0.01〜5重量%の脂肪族アミド系滑剤を含む。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、上記の6つの要件をすべて満たすものである。
各要件について説明する。
要件(1) ポリウレタン樹脂(U)中のウレタン基含量は、(U)の重量に基づいて、0.5〜5.0mmol/gであり、得られる皮膜の密着性、機械的物性、耐久性、耐薬品性、耐擦過性及び耐ブロッキング性等の観点から、好ましくは0.6〜4.2mmol/g、更に好ましくは0.7〜3.4mmol/gである。ウレタン基含量が0.5mmol/g未満の場合は皮膜の機械的物性、耐久性、耐薬品性、耐擦過性及び耐ブロッキング性等が悪化し、5.0mmol/gを超えると皮膜の密着性が悪化する。
ここで親水性基とは、カルボキシル基、スルホ基、−NHSO3H、及びそれらのアニオン基等のアニオン性親水性基、4級アミノ基等のカチオン性親水性基、ポリオキシエチレン基等のノニオン性親水性基等をさすものとする。
ウレタン基含量は、窒素分析計によって定量されるN原子含量と1H−NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率及びアロハネート基及びビューレット基含量から算出する。
一般にポリウレタン樹脂の分子末端は、原料の水酸基に由来する水酸基、又はイソシアネート基と水の反応若しくは原料のアミノ基に由来するアミノ基となる。また、ポリウレタン樹脂(U)を水中に分散する工程において、ウレタン基、ウレア基、アロハネート基又はビューレット基が加水分解することで、末端アミノ基が生成する。この末端アミノ基は末端水酸基と比較して耐水性が悪いため、末端アミノ基の含量が高いポリウレタン樹脂は耐水性が劣る。
従って、本発明において、ポリウレタン樹脂(U)中の末端アミノ基含量は、(U)の重量に基づいて0.35mmol/g以下であり、耐水性の観点から、好ましくは0.2mmol/g以下、更に好ましくは0.15mmol/g以下、特に好ましくは0.1mmol/g以下である。末端アミノ基含量が0.35mmol/gを超えると耐水性が悪化する。
末端アミノ基含量は全アミン価と3級アミン価から求めることが出来る。
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)のMnは、1万以上であり、得られる皮膜の機械的物性、耐久性、耐薬品性及び耐擦過性等の観点から、好ましくは1万〜100万、更に好ましくは1万〜50万、最も好ましくは1万〜30万である。
Mnが1万未満であると皮膜の機械的物性、耐久性、耐薬品性、耐水性、耐ブロッキング性及び耐擦過性等が悪化する。
Mnはゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが出来る。
GPC測定において、測定に用いられる溶剤に対するポリウレタン樹脂(U)の溶解度が90%未満の場合はGPCの測定精度が低下する。その場合、分子量の正確な測定が困難なため、当該ポリウレタン樹脂の分子量は無限大とした。
(U)の25℃におけるエタノールに対する膨潤率(以下エタノール膨潤率と記載する。)は(U)の重量に対して0.1〜300重量%であり、得られる皮膜の密着性、機械的物性、耐薬品性、耐水性、耐ブロッキング性及び耐擦過性の観点から、好ましくは0.5〜290重量%、さらに好ましくは50〜280重量%、特に好ましくは100〜250重量%である。25℃エタノールに対する膨潤率が0.1重量%より低いと密着性が悪化し、300重量%を超えると耐薬品性、耐水性、耐擦過性及び耐ブロッキング性が悪化する。
ポリウレタン樹脂(U)のエタノール膨潤率は、ウレタン皮膜のエタノール浸漬前後での重量変化から算出する。
エタノール膨潤率とは、ポリウレタン樹脂の架橋量の目安となるものである。
[1]鎖伸長剤(d)の内、炭素数2〜10のポリアルキレンポリアミン類(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等)。
[2]鎖伸長剤(d)に含まれる炭素数2〜30のポリエポキシ化合物の内、3官能以上のもの(例えば、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等)。
[3]Mn300未満の低分子ポリオール(a2)の内、3価以上の脂肪族アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)。
[4] ポリイソシアネート(b)の内、3個以上のイソシアネート基を有するもの(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート化合物等)。
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)の体積平均粒子径(Dv)は、0.01〜1μmであり、ポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性の観点から、好ましくは0.02〜0.7μm、更に好ましくは0.03〜0.4μmである。(Dv)が0.01μm未満であると高粘度のためハンドリング性が悪化し、1μmを超えると分散安定性が低下する。
体積平均粒子径(Dv)は光散乱粒度分布測定装置で測定される。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、滑剤(f)をポリウレタン樹脂水性媒体中のウレタン樹脂(U)の粒子中に相溶させることにより、皮膜の耐ブロッキング性及び耐擦過性に優れる。滑剤の含有量は、皮膜の密着性、耐ブロッキング性及び耐擦過性の観点から(U)の重量に基づいて0.01〜5wt%であり、好ましくは0.02〜2wt%、特に好ましくは0.05〜1wt%である。含有量が0.01wt%未満であると耐ブロッキング性及び耐擦過性が悪化し、5wt%を超えると密着性が低下する。
ポリウレタン樹脂水性分散体中の滑剤(f)の含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GCMS)で測定することができる。
本発明において、ポリウレタン樹脂(U)中のウレア基含量は、皮膜の密着性及び耐水性の観点から、(U)の重量に基づいて2.0mmol/g以下であることが好ましく、更に好ましくは1.5mmol/g以下、特に好ましくは1.0mmol/g以下、とりわけ好ましくは0.7mmol/g以下である。
ウレア基含量は窒素分析計によって定量されるN原子含量と1H−NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率及びアロハネート基及びビューレット基含量から算出する。
アロハネート基及びビューレット基の含有量はガスクロマトグラフィー法で測定される。
以下各成分について説明する。
尚、本発明におけるポリオールのMnはポリエチレングリコールを標準としてゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるものである。但し、低分子ポリオールのMnは化学式からの計算値である。
低分子量多価アルコールとしては、Mn300未満の2価〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール及びMn300未満の2価〜8価又はそれ以上のフェノールのアルキレンオキサイド(EO、PO、1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレンオキサイド等を表し、以下AOと略記)低モル付加物が使用できる。
縮合型ポリエステルポリオールに使用できる低分子量多価アルコールの内好ましいのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、ビスフェノールAのEO又はPO低モル付加物及びこれらの併用である。
ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
(c1)としては、例えばアニオン性基としてカルボキシル基を含有し、炭素数が2〜10の化合物[ジアルキロールアルカン酸(例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸及び2,2−ジメチロールオクタン酸)、酒石酸及びアミノ酸(例えばグリシン、アラニン及びバリン)等]、アニオン性基としてスルホン酸基を含有し、炭素数が2〜16の化合物[3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸及びスルホイソフタル酸ジ(エチレングリコール)エステル等]、アニオン性基としてスルファミン酸基を含有し、炭素数が2〜10の化合物[N,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)スルファミン酸等]等並びにこれらの化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
炭素数1〜20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
(c2)に用いられる中和剤としては、生成するポリウレタン樹脂の水性分散体の乾燥性及び得られる皮膜の耐水性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から(c2)に用いられる中和剤としては、炭素数1〜10のモノカルボン酸及び炭酸が好ましく、更に好ましいのはギ酸及び炭酸、特に好ましいのは炭酸である。
本発明における親水性基の含有量とは、未中和のカチオン性基又はアニオン性基の重量%を意味し、対イオンの重量は含まない。例えば、(c1)における親水性基の含有量は、2,2−ジメチロールプロピオン酸のトリエチルアミン塩の場合は、カルボキシル基(−COOH)の重量%を、3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸のトリエチルアミン塩の場合はスルホ基(−SO3H)の重量%を指す。また、(c2)における親水性基の含有量は、3級アミノ基中の窒素原子のみの重量%を指す。
ポリウレタン樹脂は、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
また、(U)へ架橋構造を導入するためには、ポリオール(a)、ポリイソシアネート(b)及び/又は鎖伸長剤(d)に3官能以上の多官能モノマーを使用することにより、(U)中に架橋構造を導入することが可能である。
本発明におけるポリウレタン樹脂水性分散体は、(U)の分散性及び水性分散体の安定性の観点から、必要により(U)を分散剤(h)の存在下で水に分散させることができる。
(U)は親水性基を有したポリウレタン樹脂である場合は、(U)の重量に基づく(c)の含有量と(h)の含有量の合計量は、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、更に好ましくは0.6〜10重量%である。
本発明の製造方法で得られるポリウレタン樹脂水性分散体のpHは、好ましくは2〜12、更に好ましくは4〜10である。pHは、pH Meter M−12[堀場製作所(株)製]で25℃で測定することができる。
水性塗料及び水性インクには、塗膜形成補助やバインダー機能の向上等を目的として、必要により本発明のポリウレタン樹脂水性分散体におけるウレタン樹脂(U)以外に、他の水性媒体分散性樹脂又は水溶性樹脂を併用していてもよい。
架橋剤の添加量はポリウレタン樹脂水性分散体の固形分重量を基準として、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
消泡剤としては、長鎖アルコール(オクチルアルコール等)、ソルビタン誘導体(ソルビタンモノオレート等)、シリコーンオイル(ポリメチルシロキサン及びポリエーテル変性シリコーン等)等が挙げられる。
劣化防止剤及び安定化剤(紫外線吸収剤及び酸化防止剤等)としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系劣化防止剤及び安定化剤等が挙げられる。
凍結防止剤としては、エチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤の含有量は、水性塗料の重量に基づいてそれぞれ通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。
水性塗料及び水性インクの固形分濃度は、好ましくは3〜70重量%、更に好ましくは7〜60重量%である。
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に表1に記載の各原料を仕込んで85℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマー(P−1)のアセトン溶液を製造した。得られたウレタンプレポリマーのアセトン溶液400.00部に、40℃で撹拌しながらトリエチルアミン(中和剤)5.82部を加え、60rpmで30分間均一化した後、エバラマイルダー[荏原製作所(株)製]を用いて水700.00部と共に乳化した後、鎖伸長剤であるジエチレントリアミン1.57部を加え、減圧下に65℃で8時間かけてアセトンを留去し、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)を得た。
表1に記載の各原料を用い、実施例1と同様にしてウレタンプレポリマー(P−2)〜(P−7)のアセトン溶液を製造した。また、表2に記載の各原料を用い、実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂水性分散体(Q−2)〜(Q−7)を得た。
表1及び2に記載の各原料を用い、実施例1と同様にして、ウレタンプレポリマー(P’−1)〜(P’−7)、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q’−1)〜(Q’−7)を得た。
<ウレタン基含量及びウレア基含量>
ポリウレタン樹脂のウレタン基含量及びウレア基含量は、窒素分析計[ANTEK7000(アンテック社製)]によって定量されるN原子含量と1H−NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率及び後述のアロハネート基とビューレット基含量から算出する。1H−NMR測定については、「NMRによるポリウレタン樹脂の構造研究:武田研究所報34(2)、224−323(1975)」に記載の方法で行う。すなわち1H−NMRを測定して、脂肪族を使用した場合、化学シフト6ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト7ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を測定し、該重量比と上記のN原子含量及びアロハネート基及びビューレット基含量からウレタン基及びウレア基含量を算出する。芳香族イソシアネートを使用した場合、化学シフト8ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト9ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を算出し、該重量比と上記のN原子含量からウレア基含量を算出する。
以下の方法でポリウレタン樹脂の全アミン価及び3級アミン価を求めて、次式により末端アミノ基含量(mmol/g)を算出する。
末端アミノ基含量(mmol/g)=(全アミン価−3級アミン価)/56.1
(1)全アミン価
100mlのフラスコ中でトルエン50mlにポリウレタン樹脂を溶解後、無水酢酸20mlを加えて、キシレンシアノールFF・メチルオレンジ混合指示薬を用いて、0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液で滴定を行い(終点は、指示薬の色が緑色から赤褐色になった点)滴定ml数を読み取り、次式により全アミン価を算出する。
全アミン価=a ×f/ (S×28.05)
a:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の滴定ml数。
f:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の力価。
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
100mlのフラスコ中でトルエン50mlにポリウレタン樹脂を溶解後、無水酢酸20mlを加えてよく振とうし、30分間室温にて放置。キシレンシアノールFF・メチルオレンジ混合指示薬を用いて、0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液で滴定を行い(終点は、指示薬の色が緑色から赤褐色になった点)滴定ml数を読み取り、次式により3級アミン価を算出する。
3級アミン価=a ×f/ (S×28.05)
a:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の滴定ml数
f:0.5mol/l塩酸・メチルアルコール滴定用溶液の力価
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
ポリウレタン樹脂のアロハネート基及びビューレット基の含量の合計は、ガスクロマトグラフ[Shimadzu GC−9A{島津製作所(株)製}]によって算出する。0.01重量%のジ−n−ブチルアミンと0.01重量%のナフタレン(内部標準)とを含む50gのDMF溶液を調整する。サンプルを共栓付き試験管に測り取り、上記のDMF溶液を2g加え、試験管を90℃の恒温水槽で2時間加熱する。常温に冷却後、10μlの無水酢酸を加え10分間振とう攪拌する。更に50μlのジ−n−プロピルアミンを添加し、10分間振とう後、ガスクロマトグラフ測定を行う。並行してブランク測定を行い、試験値との差よりアミンの消費量を求め、アロハネート基及びビューレット基の含量の合計を測定した。
装置 :Shimadzu GC−9A
カラム:10%PEG−20M on Chromosorb WAW DMLS 60/80meshガラスカラム 3mmφ×2m
カラム温度:160℃、試料導入部温度:200℃、キャリアガス:窒素 40ml/分
検出器:FID、試料注入量:2μl
(アロハネート基及びビューレット基の含量の合計の算出式)
アロハネート基及びビューレット基の含量の合計={(B−A)/B}×0.00155/S
A:試料の(ジ−n−ブチルアセトアミドのピーク面積/ナフタレンのピーク面積)
B:ブランクの(ジ−n−ブチルアセトアミドのピーク面積/ナフタレンのピーク面積)
S:ポリウレタン樹脂採取量(g)
ポリウレタン樹脂又はポリウレタン水性分散体を、DMF中にポリウレタン樹脂固形分が0.0125重量%となるように加えて、常温で1時間撹拌溶解後、0.3μmの孔径のフィルターでろ過して、得られたろ液に含まれているウレタン樹脂のMwとMnを、DMFを溶媒として、また、ポリスチレンを分子量標準として用いて、GPCにより測定した。
ポリウレタン樹脂(U)のエタノール膨潤率は次に記載の方法で測定した。
ポリウレタン樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、水分乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で、105℃で3時間加熱乾燥することによって得られるフィルムを2cm×8cmにカットして試験片を作成し、小数点以下4桁まで計量可能な電子天秤で重量(W0)を測定した。得られた試験片をエタノール中に浸漬し、25℃24時間浸漬した後取り出し、130℃循風乾燥機で3時間乾燥し、重量(W1)を測定した。得られた数値を用いて下記式にのっとって溶剤への膨潤率を算出した。
膨潤率(%) = (W1)/(W0)×100
W1;ウレタン皮膜のエタノール浸漬後の重量
W0;ウレタン皮膜のエタノール浸漬前の重量
ポリウレタン樹脂水性分散体を、イオン交換水でポリウレタン樹脂の固形分が0.01重量%となるよう希釈した後、光散乱粒度分布測定装置[ELS−8000{大塚電子(株)製}]を用いて測定した。
ポリウレタン樹脂の滑剤(f)の含量はガスクロマトグラフィー質量分析計(GCMS)[GCMS QP−5000{島津製作所(株)製}]によって含有する滑剤を同定した後、滑剤の検量線ピークとの面積比から算出することができる。
装置:GCMS QP−5000
熱分解部:PYR−4A
カラム:Ultra Alloy−5
カラム温度:40℃から10℃/分の速さで昇温し、380℃で10分間保持
試料導入部温度:300℃
キャリアガス:ヘリウム 1ml/分
試料注入量:2μl
質量範囲:m/z 10〜700
<乾燥皮膜の耐水性>
(1)外観
ポリウレタン樹脂水分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で105℃で3時間加熱乾燥することによって得られるフィルムを、60℃のイオン交換水に14日間浸漬した後、目視にて皮膜の表面状態を観察した。変化が無い場合を◎、白化した部分が全面積の50%未満の場合を○、全体的に白化した場合を×とした。
(2)破断伸びの維持率
取り出したフィルムを乾燥して、JIS K7311に記載の5.引張試験に基づいて測定を行ない、浸漬前の破断伸びに対する浸漬後の破断伸びの比、破断伸びの維持率を求めた。
ポリウレタン樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、水分乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で105℃で3時間加熱乾燥することによって得られるフィルムの物性測定を行い、破断強度を機械的物性の指標とした。破断強度が25MPaより大きい場合は機械的物性が非常に良好、10〜25MPaの場合は機械的物性が良好、10MPa未満の場合は機械的物性が十分ではないと判断した。尚、破断強度の測定は、JIS K7311に記載の5.引張試験に基づいて行った。
ポリウレタン樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、水分乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で、105℃で3時間加熱乾燥することによって得られるフィルムを2cm×8cmにカットして試験片を作成した。得られた試験片をジメチルホルムアミド中に浸漬し、40℃24時間浸漬した後取り出し、表面に付着したジメチルホルムアミドを軽くふき取ってから重量(W1)を測定した。次いで、試験片を130℃循風乾燥機で3時間乾燥し、重量(W2)を測定した。得られた数値を用いて下記式にのっとって膨潤率を算出し、膨潤率が100%未満の場合は耐薬品性が非常に良好、100〜200%の場合は耐薬品性が良好、膨潤率が200%以上または溶解した場合は耐薬品性が不十分と判断した。
膨潤率(%) =100×[(W1)−(W2)]/(W2)
W1;ウレタン皮膜のジメチルホルムアミド浸漬後の重量
W2;ウレタン皮膜のジメチルホルムアミド浸漬前の重量
イオン交換水90部、増粘剤[「ビスライザーAP−2」、三洋化成工業(株)製]70部、顔料分散剤[「キャリボンL−400」、三洋化成工業(株)製]10部、酸化チタン[「CR−93」、石原産業(株)製]140部、カーボンブラック[「FW200P」、デグサ(株)製]及び炭酸カルシウム160部をペイントコンディショナーにより30分間混合分散した。ここに1−ノナノール20部、アクリル水性分散体[「ポリトロンZ330」、旭化成(株)製]200部及び実施例1で得たポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)200部を仕込み、10分間混合分散した。更にイオン交換水を用いて25℃での粘度が150mPa・sとなるよう調整し、水性塗料(W−1)を得た。尚、粘度はTOKIMEC(株)製回転式粘度計を用いて、回転数60rpmで測定した。水性塗料(W−1)について、下記試験方法に基づいて塗膜を評価した結果を表4に示す。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)の代わりにポリウレタン樹脂水性分散体(Q−2)〜(Q−7)を用いる以外は、実施例8と同様にして水性塗料(W−2)〜(W−7)を得た。
水性塗料(W−2)〜(W−7)について、下記試験方法に基づいて塗膜を評価した結果を表4に示す。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)の代わりにポリウレタン樹脂水性分散体(Q’−1)〜(Q’−7)を用いる以外は、実施例8と同様にして比較用の水性塗料(W’−1)〜(W’−7)を得た。
水性塗料(W’−1)〜(W’−7)について、下記試験方法に基づいて塗膜を評価した結果を表4に示す。
得られた水性塗料を5cm×20cmの鋼板にスプレー塗布し、120℃で10分加熱して厚さ20μmの塗膜を作製した。この塗装面に1mm角のクロスカットをいれ、次いでセロテープ(登録商標)にて剥離テストを行い、残留する1mm角塗膜の数を調べた。表示は分子に残留数を、分母にはじめにクロスカットした数を示した。
得られた水性塗料を5cm×20cmの鋼板にスプレー塗布し、120℃で10分加熱して厚さ20μmの塗膜を作製した。この塗装面に塗装していない鋼板を重ね、ブロッキングテスターを用いて、1kg/cm2の荷重を加えながら、40℃のオーブンで24時間放置した。その後、試験サンプルを取り出して、重ね合わせた鋼板を剥離した。剥離した塗装していない鋼板への色移りを目視により以下の評価基準で評価した。
◎:塗装していない鋼板に色移りなく、剥離時に抵抗もない。
○:塗装していない鋼板に色移りしないが、剥離時にやや抵抗がある。
△:塗装していない鋼板に色移りがややあり、剥離時にやや抵抗がある。
×:塗装していない鋼板に色移りがあり、剥離時に抵抗がある。
得られた水性塗料を10cm×20cmの鋼板にスプレー塗布し、80℃で3分加熱して厚さ20μmの塗膜を作製した。得られた塗膜を学振型摩擦試験機を用いて、綿金巾で200gの荷重で50往復擦過した後の布への色移りを目視により以下の評価基準で評価した。
◎:綿金巾に色移りしない。
○:綿金巾にほぼ色移りしない。
△:綿金巾にやや色移りがみられる。
×:綿金巾に色移りがみられる。
<塗膜の耐水性評価方法>
得られた水性塗料を10cm×20cmの鋼板にスプレー塗布し、120℃で10分加熱して厚さ20μmの塗膜を作製した。この塗装した鋼板を80℃のイオン交換水中に14日間浸漬した後、取り出して表面を軽く拭き、塗膜表面を目視により以下の評価基準で評価した。
◎:浸漬前後で塗膜表面の変化がない。
○:浸漬前後で塗膜表面の変化がほぼない。
△:浸漬後、塗膜表面に凹凸が見られる。
×:浸漬後、塗膜が一部剥げ落ちている。
イオン交換水29部、カーボンブラック水分散体[「Aqua−Black162」、東海カーボン(株)製、固形分20wt%]4部、プロピレングリコール10部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル30部及び実施例1で得たポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)27部を仕込み、10分間混合し、水性インク(X−1)を得た。水性インク(X−1)について、下記試験方法に基づいて印刷物を評価した結果を表5に示す。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)の代わりにポリウレタン樹脂水性分散体(Q−2)〜(Q−7)を用いる以外は、実施例15と同様にして水性インク(X−2)〜(X−7)を得た。
水性インク(X−2)〜(X−7)について、下記試験方法に基づいて印刷物を評価した結果を表5に示す。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)の代わりにポリウレタン樹脂水性分散体(Q’−1)〜(Q’−7)を用いる以外は、実施例15と同様にして比較用の水性塗料(X’−1)〜(X’−7)を得た。
水性インク(X’−1〜7)について、下記試験方法に基づいて印刷物を評価した結果を表5に示す。
得られた水性インクを5cm×20cmのコート紙[「オーロラコート」、日本製紙(株)製]に乾燥後の膜厚が2μmとなるよう、バーコーターで塗布し、100℃で10分加熱して印刷物を作製した。この印刷物の印刷面をセロテープ(登録商標)にて剥離テストを行い、剥離した部分の面積により以下の評価基準で評価した。
◎:剥離面積が0%。
○:剥離面積が1〜10%。
△:剥離面積が11〜50%。
×:剥離面積が51〜100%。
得られた水性インクを5cm×20cmのコート紙[「オーロラコート」、日本製紙(株)製]に乾燥後の膜厚が2μmとなるよう、バーコーターで塗布し、100℃で10分加熱して印刷物を作製した。この印刷面に印刷していないコート紙を重ね、ブロッキングテスターを用いて、1kg/cm2の荷重を加えながら、40℃のオーブンで24時間放置した。その後、試験サンプルを取り出して、重ね合わせたコート紙を剥離した。剥離した印刷していないコート紙への色移りを目視により以下の評価基準で評価した。
◎:印刷していないコート紙に色移りなく、剥離時に抵抗もない。
○:印刷していないコート紙に色移りしないが、剥離時にやや抵抗がある。
△:印刷していないコート紙に色移りがややあり、剥離時にやや抵抗がある。
×:印刷していないコート紙に色移りがあり、剥離時に抵抗がある。
得られた水性インクを5cm×20cmのコート紙[「オーロラコート」、日本製紙(株)製]に乾燥後の膜厚が2μmとなるよう、バーコーターで塗布し、100℃で10分加熱して印刷物を作製した。得られた印刷物の印刷面を学振型摩擦試験機を用いて、印刷していないコート紙で200gの荷重で50往復擦過した後の印刷していないコート紙への色移りを目視により以下の評価基準で評価した。
◎:印刷していないコート紙に色移りしない。
○:印刷していないコート紙にほぼ色移りしない。
△:印刷していないコート紙にやや色移りがみられる。
×:印刷していないコート紙に色移りがみられる。
得られた水性インクを5cm×20cmのコート紙[「オーロラコート」、日本製紙(株)製]に乾燥後の膜厚が2μmとなるよう、バーコーターで塗布し、100℃で10分加熱して印刷物を作製した。得られた印刷物の印刷面を学振型摩擦試験機を用いて、水で濡らした印刷していないコート紙で200gの荷重で50往復擦過した後の印刷していないコート紙への色移りを目視により以下の評価基準で評価した。
◎:印刷していないコート紙に色移りしない。
○:印刷していないコート紙にほぼ色移りしない。
△:印刷していないコート紙にやや色移りがみられる。
×:印刷していないコート紙に色移りがみられる。
ポリウレタン樹脂水性分散体を用いて以下のように顔料捺染糊を作製した。
実施例1で得たポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)100部に対して、粘弾性調整剤[「SNシックナー618」サンノプコ(株)製]8.9部、シリコン系消泡剤[「SNデフォーマー777」サンノプコ(株)製]0.9部、水35部、酸化チタン44.6部及び顔料[「NL レッド FR3R−D」山宋実業(株)社製]18.9部を混合して、顔料捺染糊(Y−1)を得た。顔料捺染糊(Y−1)について、下記試験方法に基づいて顔料捺染された繊維布を試験した結果を表6に示す。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)の代わりにポリウレタン樹脂水性分散体(Q−2〜7)を用いる以外は、実施例22と同様にして顔料捺染糊(Y−2)〜(Y−7)を得た。顔料捺染糊(Y−2)〜(Y−7)について、下記試験方法に基づいて顔料捺染された繊維布を試験した結果を表6に示す。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)の代わりにポリウレタン樹脂水性分散体(Q’−1)〜(Q’−7)を用いる以外は、実施例22と同様にして比較用の顔料捺染糊(Y’−1)〜(Y’−7)を得た。顔料捺染糊(Y’−1)〜(Y’−7)について、下記試験方法に基づいて顔料捺染された繊維布を試験した結果を表6に示す。
顔料捺染糊を綿金巾の型の上に縦2cm×横10cmで膜厚が0.2mmとなるようにバーコーターを用いて塗布した。これを120℃テンターで3分乾燥することにより顔料捺染された繊維布を得た。この顔料捺染された繊維布の捺染面をセロテープ(登録商標)にて剥離テストを行い、剥離した部分を目視により以下の評価基準で評価した。
◎:剥離面積が0%。
○:剥離面積が1〜10%。
△:剥離面積が11〜50%。
×:剥離面積が51〜100%。
顔料捺染糊を綿金巾の型の上に縦2cm×横10cmで膜厚が0.2mmとなるようにバーコーターを用いて塗布した。これを120℃テンターで3分乾燥することにより顔料捺染された繊維布を得た。この顔料捺染された繊維布の捺染面に捺染処理していない綿金巾を重ね、ブロッキングテスターを用いて、1kg/cm2の荷重を加えながら、40℃のオーブンで24時間放置した。その後、試験サンプルを取り出して、重ね合わせた繊維布を剥離した。剥離した捺染処理していない綿金巾への色移りを目視により以下の評価基準で評価した。
◎:捺染処理していない綿金巾に色移りなく、剥離時に抵抗もない。
○:捺染処理していない綿金巾に色移りしないが、剥離時にやや抵抗がある。
△:捺染処理していない綿金巾に色移りがややあり、剥離時にやや抵抗がある。
×:捺染処理していない綿金巾に色移りがあり、剥離時に抵抗がある。
顔料捺染糊を綿金巾の型の上に縦2cm×横10cmで膜厚が0.2mmとなるようにバーコーターを用いて塗布した。これを120℃テンターで3分乾燥することにより顔料捺染された繊維布を得た。この顔料捺染された繊維布の捺染面を学振型摩擦試験機を用いて、捺染処理していない綿金巾で200gの荷重で50往復擦過した後の捺染処理していない綿金巾への色移りを目視により以下の評価基準で評価した。
◎:捺染処理していない綿金巾に色移りしない。
○:捺染処理していない綿金巾にほぼ色移りしない。
△:捺染処理していない綿金巾にやや色移りがみられる。
×:捺染処理していない綿金巾に色移りがみられる。
顔料捺染糊を綿金巾の型の上に縦2cm×横10cmで膜厚が0.2mmとなるようにバーコーターを用いて塗布した。これを120℃テンターで3分乾燥することにより顔料捺染された繊維布を得た。この顔料捺染された繊維布の捺染面を学振型摩擦試験機を用いて、水で濡らした捺染処理していない綿金巾で200gの荷重で50往復擦過した後の捺染処理していない綿金巾への色移りを目視により以下の評価基準で評価した。
◎:捺染処理していない綿金巾に色移りしない。
○:捺染処理していない綿金巾にほぼ色移りしない。
△:捺染処理していない綿金巾にやや色移りがみられる。
×:捺染処理していない綿金巾に色移りがみられる。
Claims (6)
- 水とポリウレタン樹脂(U)を含有し、以下の(1)〜(6)の全てを満たすポリウレタン樹脂水性分散体。
(1)(U)中のウレタン基含量が(U)の重量に基づいて0.5〜5.0mmol/gである。
(2)(U)中の末端アミノ基含量が(U)の重量に基づいて0.35mmol/g以下である。
(3)(U)の数平均分子量(Mn)が1万以上である。
(4)(U)の25℃におけるエタノールに対する膨潤率が(U)の重量に対して120〜280重量%である。
(5)(U)の体積平均粒子径(Dv)が0.01〜1μmである。
(6)(U)中に(U)の重量に基づいて0.01〜5重量%の脂肪族アミド系滑剤を含む。 - ポリウレタン樹脂(U)中のウレア基含量が(U)の重量に基づいて2.0mmol/g以下である請求項1に記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
- ポリウレタン樹脂(U)中のアロハネート基及びビューレット基の含有量の合計値が、(U)の重量に基づいて0.1mmol/g以下である請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂水性分散体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂水性分散体を含有する水性塗料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂水性分散体を含有する水性インク。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂水性分散体を含有する水性繊維加工処理剤。
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