JP5017911B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は電力変換装置の制御方法に関するものである。
従来、燃料電池を主電源として高効率にモータを駆動する技術が開示されている(特許文献1を参照されたい)。この例では、バッテリーがDCDCコンバータを介して燃料電池と並列に接続されており、DCDCコンバータの出力電圧を制御することで、電源の出力効率を改善することを狙ったものである。
特開2002−118981号公報
しかしながら、前記の従来技術においては、DCDCコンバータを使っているため、電源と電力変換装置、モータをすべて含めたシステム全体の体積が大きくなるとともに、バッテリーを充放電するためにはDCDCコンバータを通過するために損失が発生する。
本発明は、DCDCコンバータを介さずに、燃料電池とバッテリーの組み合わせに限らず、複数の電源電力を利用・配分し、全体の体積・損失を低減可能な電力変換装置を提供するものである。
複数の直流電圧源に接続され、前記複数の直流電圧源のそれぞれの出力電圧から出力電圧パルスを生成し合成することで交流電動機の駆動電圧を生成する電力変換装置であって、
前記電力変換装置は前記出力電圧から出力電圧パルスを生成する複数のスイッチを有する電力変換手段と、
前記電力変換手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記複数の直流電圧源から出力される出力電圧パルスの時間比率である変調率指令を演算する演算手段と、
前記変調率指令とPWMキャリアとを比較し前記複数のスイッチを駆動するPWMパルス信号を生成するPWMパルス信号生成手段とを有し、
前記PWMパルス生成手段は、前記複数の直流電圧源に対応する出力電圧パルスのオン時間が互いに連続し、且つ段階的に立ち上がり段階的に立ち下がるように、前記複数の直流電圧源のそれぞれに対応するPWMパルス信号を生成することを特徴とする。
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、
複数の直流電圧源の電力配分を操作することが可能であり、直流電圧を調節するDCDCコンバータを用いずに、電源電力を配分することができる。このため、装置全体の小型化・高効率化することができるようになる。
また、当該電力変換装置を動作させる場合に、出力電圧のオンパルスを連続的に且つ低電位の電源から高電位の電源の順にオンし、高電位の電源から低電位の電源の順にオフするように生成させているので、モータに印加される電圧の時間当たりの電圧変化量が小さくなり電力変換装置から放射されるノイズを低減し、他の機器や自らに対するノイズに関する信頼性を向上することができる。このことにより、作業者・運転者が不快に感じる電磁騒音の急激な増加を防止することができる。
また、オンパルスを連続的且つ段階的に生成させることにより、電力変換装置の電源と出力に接続されたスイッチに生じる電圧変化を低減することができ、このため、スイッチの電力損失をさらに低減することができる。
(第1の実施形態)
以下、諸図面を参照しつつ、本発明の実施様態を詳細に説明する。
本実施形態にて説明する電力変換装置は、図1に示す電力変換器3(電力変換手段に相当する)と図2に示す制御装置4(制御手段に相当する)とを有する。
図1は、複数の電圧源を入力する電力変換器3の回路図を示している。なお、本実施形態においては2つの直流電圧源に対応する制御について説明するが、直流電圧源の数は2つに限られない。
直流電圧源11の負極と、直流電圧源12の負極を共通負極母線16に接続する。共通負極母線16とモータ2のU相33、V相34、W相35の各相端子間には、一般的に知られているインバータの下アームと同様に、半導体スイッチ107a,108a,109aとダイオード107b,108b,109bの組を接続する。直流電圧源11の正極母線15とモータ2の各相端子間とは、双方向の導通を制御可能な半導体スイッチ101a/101b,102a/102b,103a/103bでそれぞれ接続する。また、直流電圧源12の正極母線17とモータ2(交流電動機に相当する)の各相端子間にも双方向の導通を制御可能な半導体スイッチ104a/104b,105a/105b,106a/106bをそれぞれ接続する。
直流電圧源11の正極母線15と共通負極母線16の間には平滑コンデンサ13を接続し、直流電圧源12の正極母線17と共通負極母線16の間にも平滑コンデンサ14を接続する。
電力変換器3は、共通負極母線16と直流電圧源11の正極母線15と直流電圧源12の正極母線17、以上の3つの電位をもとに、モータ2に印加する電圧を生成する直流−交流電力変換器である。各相に設けられた複数の半導体スイッチが、モータ2の各相に出力する電圧を生成するスイッチ手段であり、電圧生成手段3を構成する。また前記半導体スイッチが前記複数の電位の中から択一的に接続し、その接続する時間の割合を変化させることで、モータ2に必要な電圧を供給する。
図2を用いて、制御装置4の構成を説明する。
トルク制御手段41は、外部より与えられるトルク指令Te*とモータ回転速度ωから、交流モータのd軸電流の指令値id*とq軸電流の指令値iq*を演算する手段である。トルク制御手段41では、予め作成されたTe*,ωを軸としたマップを参照し、id*,iq*を出力する。
電流制御手段42では、d軸電流指令値id*,q軸電流指令値iq*と3相/dq変換48からのd軸電流値id、q軸電流値iqとから、これらを実現するための電流制御を行う。この制御によって、三相交流の各相の電圧指令値vu*,vv*,vw*を出力する。
図3を用いて、電流制御手段42の詳細について説明する。
電流制御器421では、トルク制御手段41からのid*,iq*に3相/dq変換48からのid,iqが追従するように、それぞれPI制御によるフィードバック制御を行って、d軸電圧指令値vd*、q軸電圧指令値vq*を出力する。ここで、id、iqは3相/dq変換手段48により、電流センサで検出したU相電流iu、V相電流iv及びiu,ivから求めたW相電流iwを変換して求められる。dq/3相変換手段422は、dq軸電圧を3相電圧指令に変換する手段であり、dq軸電圧指令値vd*,vq*を入力とし、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、W相電圧指令値vw*を出力する。
図2に戻って、電力制御・変調率演算手段45(演算手段に相当する)では、直流電圧源11と直流電圧源12から供給される電力の分配目標値rto_pa、rto_pbを用いて電力制御を行う。電力の分配目標値は、直流電圧源11と直流電圧源12の電力の比率を意味しており、電源の出力効率を向上させることを目的として、図示しない外部コントローラから与えられる。電力の分配目標値rto_pa,rto_pbは次の関係を持つ。
rto_pa+rto_pb=1 ・・・(1)
このため、一方の電力分配目標値が得られれば,上の関係から、もう一方の電力分配目標値を求めることができる。図2では、電力制御・変調率演算手段45の入力としてrto_paのみを記しており、電力制御・変調率演算手段45内部での演算によって、上式に基づいて、rto_pbを演算する。
図4を用いて、電力制御・変調率演算手段45の詳細を説明する。
乗算器451aでは、vu*,vv*,vw*に、それぞれrto_paを乗じて、直流電圧源11 側の電圧指令値であるvu_a*,vv_a*,vw_a*を演算する。以下、直流電圧源11から生成する電圧の指令を直流電圧源11分電圧指令、直流電圧源12から生成する電圧の指令を直流電圧源12分電圧指令と記す。

vu_a*= vu*・rto_pa
vv_a*= vv*・rto_pa ・・・(2)
vw_a*= vw*・rto_pa
一方、直流電圧源12の電圧指令値は、モータ電流制御の制御電圧から得られた電圧指令値vu*,vv*,vw*から、直流電圧源11の電圧指令値vu_a*、vv_a*、vw_a*を減算器451bで減算して求める。

vu_b*= vu*−vu_a*
vv_b*= vv*−vv_a* ・・・(3)
vw_b*= vw*−vw_a*

以下の変調率演算とPWMパルス生成の説明はU相についてのみ行うが、V相、W相についても同様の操作を行う。
(変調率演算手段452)
図4の変調率演算手段452はそれぞれ直流電圧源11の電圧Vdc_a、直流電圧源12の電圧Vdc_bを入力し、正規格化した電圧指令である瞬時変調率指令mu_a*,mu_b*,mv_a*, mv_b*, mw_a*, mw_b*を生成する変調率演算手段である。
図4における点線部は、変調率演算手段452であり、乗算器452a、452bによって構成されている。ここでは、U相の直流電圧源11分電圧指令vu_a*、直流電圧源12分電圧指令vu_b *をそれぞれの直流電圧の半分の値で正規化することで直流電圧源11分瞬時変調率指令mu_a*、直流電圧源12分瞬時変調率指令mu_b*を求める。

mu_a*=vu_a*/(Vdc_a/2) ・・・(4)
mu_b*=vu_b*/(Vdc_b/2)

(変調率補正手段453、変調率オフセット演算器454)
図4における変調率補正手段453は、得られた変調率を出力するために、PWM周期の時間幅を配分し、変調率指令値の演算を行う。
まず、変調率オフセット演算器454で直流電圧源11の電圧Vdc_a、直流電圧源12の電圧Vdc_bと電力の分配目標値rto_paから、次の変調率オフセットma_offset0,mb_offset0を演算する。ここでrto_pbは、前記の式をもとに演算する。

rto_pb=1−rto_pa ・・・(5)
得られた変調率オフセットma_offset0,mb_offset0は、加算器453aと453bで、それぞれ直流電圧源11分瞬時変調率指令mu_a*、直流電圧源12分瞬時変調率指令mu_b*と加算する。
そして変調率指令mu_a_c*、mu_b_c*を以下のように求める。

mu_a_c*= mu_a*+ma_offset*−1
・・・(8)
mu_b_c*= mu_b*+mb_offset*−1

(変調率加算手段455)
図4における変調率加算手段455は、電圧比較手段455aを備え、直流電圧源11の電圧Vdc_a、直流電圧源12の電圧Vdc_bの大小を比較判断し、その判断に基づき変調率指令mu_a_c*、mu_b_c*から変調率指令mu_a_c2*、mu_b_c2*を算出する。図5は変調率加算手段455における制御を示すフローチャートである。以下、フローチャートに沿って詳細を説明する。
まず、電圧比較手段455aにおいて直流電圧源の電圧の大小関係を判断する(ステップS1a(以下、ステップSを「S」と記す)。直流電圧源の電圧がVdc_a<Vdc_bである場合(S1a)、変調率指令mu_a_c2*は変調率指令mu_a_c*とmu_b_c*との和とし、変調率指令mu_b_c2*は変調率指令mu_b_c*とする(S2a)。

mu_a_c2* = mu_a_c* + mu_b_c*
・・・(9)
mu_b_c2* = mu_b_c*

一方、直流電圧源の電圧がVdc_a>Vdc_bである場合(S1a)、変調率指令mu_a_c2*は変調率指令mu_a_c*とし、変調率指令mu_b_c2*は変調率指令mu_a_c*とmu_b_c*との和とする(S3a)。

mu_a_c2* = mu_a_c*
・・・(10)
mu_b_c2* = mu_a_c* + mu_b_c*

すなわち、直流電圧源11の電圧Vdc_a、直流電圧源12の電圧Vdc_bの大小を比較判断をするステップS1において、直流電圧源11または直流電圧源12のうち低電圧側の直流電圧源に対応する変調率指令は、変調率指令mu_a_c* 、 mu_b_c*の和から設定し、高電位側の直流電圧源に対応する変調率指令は、式(8)で算出する変調率指令をそのまま変調率指令として設定する。
図2に示すPWM生成手段47は、変調率加算手段455で算出された変調率指令に基づき、変調率指令mu_a_c2*、mu_b_c2*と三角波キャリアとを比較し、電力変換器3に印加するPWMパルスを生成する。なお、三角波キャリアは図7に示すように、各スイッチのオン時間を決定するための搬送波であり、上限が+1、下限が−1の値をとる三角波である。
(PWMパルス生成手段47)
図6に、PWMパルス生成手段47の詳細を示す。PWMパルス生成手段47は、比較部471と、論理演算部472を有する。また、最終的に電力変換器3に印加されるPWMパルス信号は、図8に示す電力変換器3のU相を示す等価回路におけるスイッチA〜E(A:101a、B:107a、C:101b、D:104a、E:104bに相当する)のそれぞれに対応するPWMパルス信号A〜Eを生成する。
また、ここでは、U相の各スイッチを駆動する信号を、図8をもとに次のようにおく。
PWMパルス信号A:電源aから出力端子の方向へ導通するスイッチAの駆動信号
PWMパルス信号B:出力端子から負極の方向へ導通するスイッチBの駆動信号
PWMパルス信号C:出力端子から電源aの方向へ導通するスイッチCの駆動信号
PWMパルス信号D:電源bから出力端子の方向へ導通するスイッチDの駆動信号
PWMパルス信号E:出力端子から電源bの方向へ導通するスイッチEの駆動信号
次に、図6において、どのようにPWMパルス信号を生成するかを説明する。
まず、PWMパルス信号A、Dは比較部471において、三角波キャリアと変調率指令mu_a_c2*、mu_b_c2*との比較により、以下のように決定する(以下、PWMパルス信号Aを「A」と記す。B〜Eも同様)。

PWMパルス信号Dは、
キャリア > mu_b_c2* ならば D = OFF
キャリア < mu_b_c2* ならば D = ON

同様に、PWMパルス信号Aは以下のように決定する。
キャリア > mu_a_c2* ならば A = OFF
キャリア < mu_a_c2* ならば A = ON

また、PWMパルス信号C、E、Bは、論理演算部472において、それぞれ論理合成により以下のように決定する。
このとき、スイッチC、Eのうち高電位側の直流電圧源と接続するスイッチを常時オンとしてもよい。なお、スイッチを常時オンする場合、PWMパルス信号によって駆動してもよく、また最初から常時オンのスイッチを用いてもよい。
変調率加算手段455およびPWM生成手段47においてPWMパルス信号を生成する一例をより詳細に説明する。
図9は、直流電圧源の電圧の大小関係がVdc_a<Vdc_bであるときの一例である。図9には、1つの三角波キャリアと3つの変調率指令mu_a_c*、mu_a_c2*、mu_b_c2*が示してある。一点鎖線で示す変調率指令mu_a_c*は、実際に三角波キャリアと比較するわけではなく、説明上記載するものである。まず、変調率加算手段455では、直流電圧源の電圧の大小関係がVdc_a<Vdc_bであるときは、低電位側の変調率指令mu_a_c*にmu_b_c*を加算し変調率指令mu_a_c2*を設定する。一方高電位側の変調率指令mu_b_c*は、式(8)で算出する変調率指令mu_b_c*を変調率指令mu_b_c2*として設定する。そして、PWMパルス生成手段47の比較部471により生成される、低電位側の直流電圧源11に対応し、直流電圧源11からモータ2へ導通するスイッチを駆動するPWMパルス信号Aは変調率指令mu_a_c*から生成する場合のPWMパルス信号A′に比べ、オン時間が長くなる。このオン時間の延長分は、PWMパルス信号Dのオン時間に相当し、変調率指令mu_a_c*から生成する場合に得られるPWMパルス信号A′の立ち上がりと立ち下がりにそれぞれPWMパルス信号Dオン時間/2分ずつ延長される。
このようにして、PWMパルス生成手段47の比較部471では変調率指令mu_a_c2*、mu_b_c2*と三角波キャリアとを比較し、PWMパルス信号A、Dを生成する。そして、さらにPWMパルス生成手段47の論理演算部472では、比較部471で生成されたPWMパルス信号A、Dに基づき、上述する論理演算から、PWMパルス信号B、C、Eを生成する。
このようにして生成される図10に示すPWMパルス信号A〜Eを電力変換器3に印加すると、図11に示すような互いの出力電圧パルスが連続し、且つ低電位側の出力電圧が先に立ち上がり、次いで高電位側の出力電圧パルスが立ち上がるとともに、高電位側の出力電圧パルスが先に立ち下がり、次いで低電位側の出力電圧が立ち下がる形の出力電圧パルスがモータ2に印加される。
本実施形態は、直流電圧源11および直流電圧源12(第1の直流電圧源または第2の直流電圧源(複数の直流電圧源)に相当する)に接続され、直流電圧源11および直流電圧源12のそれぞれの出力電圧から出力電圧パルスを生成し合成することでモータ2の駆動電圧を生成する電力変換装置であって、電力変換装置は出力電圧から出力電圧パルスを生成する複数のスイッチを有する電力変換手段と、電力変換器3を制御する制御手段4とを備え、制御手段4は、直流電圧源11および直流電圧源12から出力される出力電圧パルスの時間比率である変調率指令を演算する演算手段45と、変調率指令とPWMキャリアとを比較し複数のスイッチを駆動するPWMパルス信号を生成するPWMパルス信号生成手段47とを有し、PWMパルス生成手段47は、直流電圧源11および直流電圧源12に対応する出力電圧パルスのオン時間が互いに連続し、且つ段階的に立ち上がり段階的に立ち下がるように、第1の直流電圧源及び第2の直流電圧源のそれぞれに対応するPWMパルス信号を生成することにより、直流電圧源11および直流電圧源12からモータ2に印加される電圧は図11に示すように小→大→小の順となり、モータに印加される電圧のdv/dtを小さくすることができる。その結果、電力変換器から放射されるノイズを小さくすることができ、他の機器に与える影響や、インバータ自身のノイズに対する信頼性を向上することができる。
また、各素子に印加される電圧が、直前にオンしていた直流電圧と次にオンする素子に接続される直流電圧の差によって決まる。従って、素子に印加される電位差を小さくすることができ、スイッチング損失を小さくすることができるため、効率が良い。
また、PWMパルス生成手段47は、1つの三角波キャリアと、複数の直流電圧源のうち低電位側の直流電圧源に対応する変調率指令及び高電位側の直流電圧源に対応する変調率指令の2つの変調率指令とを比較し、PWMパルス信号を生成することにより単一のキャリアで第1の直流電圧源及び第2の直流電圧源の出力電圧パルスを生成・制御できるため、簡素な制御装置によって実現することができる。
さらにまた、PWMパルス生成手段47は、複数の直流電圧源のうち低電位側の直流電圧源に対応するPWMパルス信号がオンしている間に、高電位側の直流電圧源に対応するPWMパルス信号をオン・オフし、出力電圧パルスを連続して出力する。また前記複数の直流電圧源のうち高電位側の直流電圧源に対応する出力電圧パルスのオン時間の中間点を中心として、連続する出力電圧パルスが左右対称となるようにPWMパルス信号を生成することにより、確実に出力電圧パルスのオン時間を連続させ、且つ段階的に立ち上がり立ち下がることを可能とする。
また、変調率加算手段455は、直流電圧源11と直流電圧源12の電圧を比較する手段を有し、低電位側の直流電圧源に対応するいずれか一方の変調率指令を、電力分配目標値から算出される複数の直流電源に対応する各々の変調率指令を加算して算出することにより、低電圧側の直流電圧源に対応する変調率を高電位側の直流電圧源に対応する変調率分かさ上げすることによって、電源aからの電圧パルスと電源bからの電圧パルスが重なる分の誤差を補償できるとともに、電源電圧が小→大→小の順番で出力することができる。
なお、本実施形態のように、第1の直流電圧源及び第2の直流電圧源に電位差があり、正極間同士を接続する二つのスイッチA、Dが同時にオンした場合、正極間に短絡電流が流れ発熱する可能性があるために、これに耐えうる素子を選定する必要が出てくる。しかし、このような素子はコストが高いため極力使用を避けたい。このような素子を使用しない場合、正極間に短絡電流を流さないようにする必要がある。そこで、高電位側の直流電圧源に接続し、直流電圧源からモータ2へ導通するスイッチを駆動するPWMパルスと低電位側の直流電圧源に接続し、モータ2から直流電圧源へ導通するスイッチを駆動するPWMパルスとにはデッドタイムを設ける。例えば図8及び図10において、電源電圧がVdc_a<Vdc_bで、PWMパルス信号DがOFF→ON、PWMパルス信号CがON→OFFのときを考える。このスイッチDがPWMパルス信号に応じONする場合であって、スイッチCがPWMパルス信号に応じてはいるが完全にOFFしきらないとき、スイッチC、Dが同時にオンする時間が生じ、同時ONの間は電源bから電源aに短絡電流が流れ、素子D、Cが発熱する。この場合、PWMパルス信号DとPWMパルス信号Cとにデッドタイムを設けることにより、正極間の短絡電流を抑制することが可能である。
さらに、電源aと負極、電源bと負極間の短絡電流を防止するために、PWMパルス信号A、PWMパルス信号Bにもデッドタイムを設ける。
また、モータ2から電源の方向に電流が流れている場合に、スイッチCとスイッチEが同時にOFFする区間があると、モータ2のインダクタンスと電流の微分値によって、端子に電圧が発生する。従って、半導体スイッチがともにオフとなるPWMパルス信号を与える場合には、半導体スイッチの耐圧を、この電圧も想定した値のものを使用せざるを得ず、このような素子は一般的に高価である。従って、この場合端子に発生する電圧を抑えるために、スイッチCとスイッチEを駆動させるPWMパルス信号CとPWMパルス信号Eとを同時にONするオーバーラップタイムを設けることにより、常に電流の経路を確保し端子における電圧発生を抑制することが可能である。
なお、制御手段4は、スイッチC,Eのうち、高電位側の直流電圧源に接続するスイッチを駆動するPWMパルスを常にオンさせることにより、オーバーラップタイムを設けなくとも、モータ2から電源の方向に流れる電流の経路を正極間短絡することなく常に確保することが可能である。また、初めからスイッチC,Eのうち、高電位側の直流電圧源に接続するスイッチを常時オンとすれば、スイッチCを制御するためのPWMパルスを生成する必要がなくなり、当該スイッチを含む部分にダイオードなどの安価な素子で構成するスイッチを使用することが可能である。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、比較部471において、三角波キャリアと変調率指令mu_a_c2、mu_b_c2*の比較により、PWMパルス信号を生成するときの条件が異なる。以下に、第1に実施形態との差異を説明する。
PWMパルス信号A、Dは比較部471において、三角波キャリアと変調率指令mu_a_c2*、mu_b_c2*との比較により、以下のように決定する(以下、PWMパルス信号Aを「A」と記す。B〜Eも同様)。なお、ここでは、直流電圧源11と直流電圧源12の電圧の大小関係がVdc_a<Vdc_bであるときの条件を説明するが、直流電圧源11と直流電圧源12の電圧の大小関係がVdc_a>Vdc_bであるときも、下記条件においてスイッチAとDを入れ換えることにより同様の制御が可能である。

キャリア > mu_b_c2* ならば D = OFF
キャリア < mu_b_c2* ならば D = ON
次に、Aは以下のように決定する。

キャリア > mu_a_c2* かつ キャリア > mu_b_c2* ならばA = OFF
キャリア < mu_a_c2* かつ キャリア > mu_b_c2* ならばA = ON
キャリア < mu_a_c2* かつ キャリア < mu_b_c2* ならばA = OFF

また、C、E、Bは、それぞれ論理合成により以下のように決定する。
変調率加算手段455およびPWM生成手段47においてPWMパルス信号を生成する一例をより詳細に説明する。
図12は、直流電圧源の電圧の大小関係がVdc_a<Vdc_bであるときの一例である。図12には、1つの三角波キャリアと2つの変調率指令mu_a_c2*、mu_b_c2*が示してある。上述する条件にて、PWMパルス信号を生成することによって、PWMパルスオン時間が重複する間、低電位側の直流電圧源に対応し、直流電圧源から負荷へ導通するスイッチを駆動するPWMパルスをオフすることを実現する。
第2の実施形態において、PWMパルス生成手段は、直流電圧源11、12のうち高電位側の直流電圧源に対応するPWMパルス信号の両端に、低電位側の直流電圧源に対応するPWMパルス信号のオン時間が連続するようにPWMパルス信号を生成することにより、出力電圧パルスのオン時間を互いに連続させ、且つ段階的に立ち上がり段階的に立ち下がるように出力電圧パルスを生成することができる。さらに、第1の実施形態において、出力電圧パルスが重複する間のPWMパルスを生成するために、スイッチをオン状態に維持するための電流を流さずともよいため、消費電力を低減することを可能とする
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態にて説明した変調率加算手段455における制御フローチャートが異なる。以下差異を説明する。
(変調率加算手段455)
変調率加算手段455は、電圧比較手段455aを備え、電源電圧Vdc_a、Vdc_bの大小を比較判断し、その判断に基づき変調率指令mu_a_c*、mu_b_c*から変調率指令mu_a_c2*、mu_b_c2*を算出する。図13は変調率加算手段455における制御を示すフローチャートである。なお、ステップS1a、ステップS2a、ステップS3aは、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
ステップS1aにおいて直流電圧源の電圧がVdc_a=Vdc_bと等しい場合、電力の分配目標値rto_pa、rto_pbの大小を比較判断する(S1b)。電力の分配目標値rto_pa、rto_pbは式(1)の関係から、ここではrto_paがrto_pa≦0.5またはrto_pa>0.5のどちらかを判断する。そして、rto_pa≦0.5のときはステップS2へ、rto_pa>0.5のときはステップS3aへと制御する。
すなはち、直流電圧源11の電圧Vdc_a、直流電圧源12の電圧Vdc_bの大小を比較判断をするステップS1において、直流電圧源の電圧の大小関係がVdc_a=Vdc_bである場合、電力の分配目標値rto_pa、rto_pbの大小を比較し、直流電圧源11または直流電圧源12直流電圧源のうち電力の分配目標値が小さい直流電圧源に対応する変調率指令を、変調率指令mu_a_c* 、 mu_b_c*の和から設定し、電力の分配目標値が大きい直流電圧源に対応する変調率指令は、式(8)で算出されている変調率指令をそのまま変調率指令として設定する。
第3の実施形態は、直流電圧源11および直流電圧源12の電圧が等しい場合、制御手段4は、直流電圧源11および直流電圧源12に対応する出力電圧パルスのオン時間が互いに連続し、直流電圧源11または直流電圧源12のうち電力分配目標値が大きい直流電圧源の出力電圧に対応するPWMパルスから順に立ち上がり、電力分配目標値が小さい直流電圧源の出力電圧に対応するPWMパルスから順に立ち下がるように、直流電圧源11および直流電圧源12のそれぞれに対応するPWMパルスを生成する。さらに、変調率加算手段455は、直流電圧源11および直流電圧源12の電圧を比較する手段455aを有し、直流電圧源11と直流電圧源12の電圧とが同電第1変調率指令または第2変調率指令のうちの電力分配目標値が小さい直流電圧源に対応位である場合、するいずれか一方の変調率指令を、電力分配目標値から算出される複数の直流電源に対応する各々の変調率指令を加算して算出する。
このように、電力の分配目標値に基づき変調率を設定することによって、PWMパルス信号の幅が小さい直流電圧源の出力電圧パルスがモータに電圧を出力している時間区間の中央に配置される。さらに、電力の分配目標値の小さい直流電圧源に対応する変調率を電力の分配目標値の大きい直流電圧源に対応する変調率分かさ上げし設定することで、第1の直流電圧源からの出力電圧に対応するPWMパルスと第2の直流電圧源からの出力電圧に対応するPWMパルスが重なる分の誤差を補償をする際に、パルス幅の大きいPWMパルスが小さいPWMパルスの両端へ分割され、パルス幅の小さいPWMパルスが分割されることがなくなるので、パルス幅の小さいPWMパルスでも確実に出力することができ、電力制御精度を高くすることができる。
本発明における電力変換器を示す図である。 図1に示す電力変換器の制御手段を示す図である。 図2に示す制御手段における電流制御手段を示す図である。 図2に示す制御手段における電力制御・変調率演算手段を示す図である。 第1の実施形態において図4に示す電力制御・変調率演算手段の変調率加算手段における制御のフローチャートを示す図である。 図2に示す制御手段におけるPWMパルス生成手段を示す図である。 図6に示すPWMパルス生成手段にて用いる三角波キャリアを示す図である。 図1に示す電力変換器の等価回路を示す図である。 第1の実施形態において変調率を加算したときのPWMパルスを示す図である。 第1の実施形態において電力変換器に印加されるPWMパルスを示す図である。 第1及び第2の実施形態において交流電動機に印加される電源からの出力電圧パルスを示す図である。 第2の実施形態において電力変換器に印加されるPWMパルスを示す図である。 第3の実施形態において図4に示す電力制御・変調率演算手段の変調率加算手段における制御のフローチャートを示す図である。
符号の説明
11、12、 直流電圧源
2、 モータ(交流電動機に相当する)
3、 電力変換器(電力変換手段に相当する)
101a/101b〜109a/109b、 スイッチ
4、 制御手段
41、 トルク制御手段
42、 電流制御手段
421、 電流制御器
422、 dp/3相変換手段
45、 電力制御・変調率演算手段
451a、 乗算器
451b、 減算器
452、 変調率演算手段
452a、 乗算器
452b、 減算器
453、 変調率補正手段
453a、453b、 加算器
454、 変調率オフセット値演算器
455、 変調率加算手段
455a、 電圧比較手段
47、 PWMパルス生成手段
471、 比較部
472、 論理演算部

Claims (9)

  1. 複数の直流電圧源に接続され、前記複数の直流電圧源のそれぞれの出力電圧から出力電圧パルスを生成し合成することで交流電動機の駆動電圧を生成する電力変換装置であって、
    前記電力変換装置は前記出力電圧から出力電圧パルスを生成する複数のスイッチを有する電力変換手段と、
    前記電力変換手段を制御する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、
    前記複数の直流電圧源から出力される出力電圧パルスの時間比率である変調率指令を演算する演算手段と、
    前記変調率指令とPWMキャリアとを比較し前記複数のスイッチを駆動するPWMパルス信号を生成するPWMパルス信号生成手段とを有し、
    前記PWMパルス生成手段は、前記複数の直流電圧源に対応する出力電圧パルスのオン時間が互いに連続し、且つ段階的に立ち上がり段階的に立ち下がるように、前記複数の直流電圧源のそれぞれに対応するPWMパルス信号を生成することを特徴とする電力変換装置。
  2. 請求項に記載の電力変換装置において、
    前記PWMパルス生成手段は、1つの三角波キャリアと、前記複数の直流電圧源のうち低電位側の第1の直流電圧源に対応する第1の変調率指令及び高電位側の第2の直流電圧源に対応する第2の変調率指令とを比較し、前記PWMパルス信号を生成することを特徴とする電力変換装置。
  3. 請求項またはに記載の電力変換装置において、
    前記PWMパルス生成手段は、前記複数の直流電圧源のうち低電位側の前記第1の直流電圧源に対応する第1のPWMパルス信号がオンしている間に、高電位側の前記第2の直流電圧源に対応する第2のPWMパルス信号をオンしオフするように、前記第1、第2のPWMパルス信号を生成することを特徴とする電力変換装置。
  4. 請求項またはに記載の電力変換装置において、
    前記PWMパルス生成手段は、前記複数の直流電圧源のうち高電位側の前記第2の直流電圧源に対応する第2のPWMパルス信号の両端に、低電位側の前記第1の直流電圧源に対応する第1のPWMパルス信号のオン時間が連続するように前記第1、第2のPWMパルス信号を生成することを特徴とする電力変換装置。
  5. 請求項に記載の電力変換装置において、
    前記制御手段は、前記複数の直流電圧源から供給される電力の電力分配目標値を演算する手段を備え、
    前記第1の変調率指令は、前記電力分配目標値から算出される複数の直流電源に対応する各々の変調率指令を加算して算出されていることを特徴とする電力変換装置。
  6. 請求項のいずれかに記載の電力変換装置において、
    前記PWMパルス信号生成手段は、前記複数の直流電圧源の対応する複数の出力電圧パルスを連続して出力するとき、前記複数の直流電圧源のうち高電位側の前記第2の直流電圧源に対応する出力電圧パルスのオン時間の中間点を中心として、連続する出力電圧パルスが左右対称となるように前記第1、第2のPWMパルス信号を生成することを特徴とする電力変換装置。
  7. 請求項に記載の電力変換装置において、
    前記制御手段は、前記複数の直流電圧源から供給される電力の電力分配目標値を演算する手段を備え、
    前記PWMパルス生成手段は、前記複数の直流電圧源の電圧が等しい場合、前記第1の変調率指令を前記電力分配目標値の大きい直流電圧源に対応する変調率指令とし、前記第2の変調率指令を前記電力分配目標値の小さい直流電圧源に対応する変調率指令とすることを特徴とする電力変換装置。
  8. 請求項において、
    前記第2の変調率指令は、前記電力分配目標値から算出される複数の直流電源に対応する各々の変調率指令を加算して算出されていることを特徴とする電力変換装置。
  9. 請求項に記載の電力変換装置において、
    前記複数のスイッチのいずれかであって、前記交流電動機から前記複数の直流電圧源の方向に開通するスイッチのうち、高電位側の直流電圧源に接続するスイッチは、前記複数の直流電圧源から前記交流電動機に電力を供給するときオンすることを特徴とする電力変換装置。
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