(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる電力変換装置を含む制御システムの全体構成を模式的に示す説明図である。本実施形態では、電気自動車の駆動用モータに適用された制御システムについて説明を行う。この制御システムは、電力変換器10、モータ30および制御ユニット40を主体に構成されており、電力変換器10および制御ユニット40が本実施形態にかかる電力変換装置を構成している。
図2は、電力変換器10を中心としたシステム構成を模式的に示す説明図である。電力変換器10は、互いに直列接続された複数の電源(本実施形態では、第1および第2の電源20,21)に接続されており、制御ユニット40に制御されることにより各電源20,21の出力電圧から出力電圧パルスを生成する(第1の電力変換手段)。そして、電力変換器10は、この出力電圧パルスにより、負荷である3相交流同期モータ30の駆動電圧を生成する。
ここで、第1および第2の電源20,21は、それぞれが独立した直流電源であり、下位の電源である第1の電源20の正極と、その上位の電源である第2の電源21の負極とが接続されることにより直列接続されている。個々の電源20,21としては、例えば、ニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池といったバッテリを用いることができる。第1の電源20の負極は、負極母線13が接続され、第2の電源21の正極は、正極母線14が接続されている。また、第1の電源20の正極および第2の電源21の負極は、共通母線15に接続されている。この負極母線13と共通母線15との間には、平滑コンデンサ11が設けられており、正極母線14と共通母線15との間には、平滑コンデンサ12が設けられている。
電力変換器10において、共通母線15と、3相に対応する各出力端子との間には、双方向の導通を制御可能なスイッチ手段がそれぞれ接続されている。個々のスイッチ手段は、それぞれが一方向への導通を制御可能な一対の半導体スイッチ(例えば、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子)1a,1b〜3a,3bを、互いの導通方向が逆向きの状態で直列接続することによって構成されている。また、正極母線14と、3相に対応する各出力端子との間には、一般的な3相インバータの上アームと同様なスイッチ手段がそれぞれ接続されている。個々のスイッチ手段は、半導体スイッチ(例えば、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子)4a〜6aを主体に構成されており、個々のスイッチ(トランジスタ)4a〜6aは、コレクタ・エミッタ間に還流用ダイオード4b〜6bが逆並列接続されている。さらに、負極母線13と、3相に対応する各出力端子との間には、一般的な3相インバータの下アームと同様なスイッチ手段がそれぞれ接続されている。個々のスイッチ手段は、半導体スイッチ(例えば、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子)7a〜9aを主体に構成されており、個々のスイッチ(トランジスタ)7a〜9aは、コレクタ・エミッタ間に還流用ダイオード7b〜9bが逆並列接続されている。
これらの半導体スイッチ(以下単に「スイッチ」という)のオンオフ状態、すなわち、導通および遮断の切り替え(スイッチング動作)は、制御ユニット40から出力される駆動信号を通じてそれぞれ制御される。個々のスイッチは、制御ユニット40によってオンされることにより導通状態となり、オフされることにより非導通状態(遮断状態)となる。
図3は、電力変換器10の各相の出力端子の電位の説明図である。電力変換器10の各相の出力端子の電位は、第1の電源20の電圧(以下「第1の電源電圧」という)Vdc1と、第2の電源21の電圧(以下「第2の電源電圧」という)Vdc2とに基づいて、次のように考えることができる。以下、U相のみを例示して説明を行うが、他の相(V相、W相)に対応する出力端子の電位についても同様に考えることができる。
まず、同図(a)に示すように、共通母線15とU相出力端子との間のスイッチ1a,1bをそれぞれオフする。この場合、U相出力端子の電位は、2つの電源20,21を直列に接続した直列電源(電源電圧「Vdc1+Vdc2」)をベースに、スイッチ4a,7aを上下アームとするインバータ回路と同様に、スイッチ4a,7aのオンオフ状態を制御することによって操作することができる。
同図(b)に示すように、正極母線14とU相出力端子との間のスイッチ4aをオフとするとともに、共通母線15とU相出力端子との間の一対のスイッチ1a,1bのうち一方のスイッチ1bをオンとする。この場合、U相出力端子の電位は、第1の電源20(電源電圧「Vdc1」)をベースに、スイッチ1a,7aを上下アームとするインバータと同様に、スイッチ1a,7aのオンオフ状態を制御することによって操作することができる。
同図(c)に示すように、負極母線13とU相出力端子との間のスイッチ7aをオフとするとともに、共通母線15とU相出力端子との間の一対のスイッチ1a,1bのうち他方のスイッチ1aをオンとする。この場合、U相出力端子の電位は、第2の電源21(電源電圧「Vdc2」)をベースに、スイッチ1b,4aを上下アームとするインバータと同様に、スイッチ1b,4aのオンオフ状態を制御することによって操作することができる。
このように電力変換器10は、2つの電源20,21を同時に利用して、または、片方の電源20,21のみを利用してモータ30を駆動することができる。
モータ30は、例えば、中性点を中心に星形結線された複数の相巻線(本実施形態では、U相巻線、V相巻線、W相巻線からなる3つの相巻線)を有する3相交流同期モータである。このモータ30は、電力変換器10内で変換された3相の交流電力が各相巻線に供給されることにより生じる磁界と、回転子の永久磁石が作る磁界との相互作用により駆動する。モータ30のロータは、自動変速機の入力軸に連結されている。
再び図1を参照するに、制御ユニット40は、電力変換器10を制御する制御手段であり、この電力変換器10を介して負荷であるモータ30の出力トルクを制御する(第1の制御手段)。制御ユニット40としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。制御ユニット40は、ROMに記憶された制御プログラムに従い、電力変換器10を制御するための演算を行う。そして、制御ユニット40は、この演算によって算出された制御信号を電力変換器10に対して出力する。
制御ユニット40は、これを機能的に捉えた場合、トルク制御部41と、電流制御部42と、dq/3相変換部43と、電圧配分指令生成部44と、電圧配分部45と、変調率指令生成部46と、導通信号生成部47と、搬送波生成部48と、3相/dq変換部49とを有する。
トルク制御部41は、外部より与えられるトルク指令T*と、モータ回転数ωとに基づいて、モータ30のd軸およびq軸電流指令値id*,iq*をそれぞれ演算する。電流制御部42は、d軸およびq軸電流指令値id*,iq*と、d軸およびq軸電流値id,iqとに基づいて、指令値と実値とを一致させるためのd軸およびq軸電圧指令値vd*,vq*をそれぞれ演算する。ここで、d軸およびq軸電流値id,iqは、モータ30の各相の電流を電流センサによって検出した上で、3相の電流を3相/dq変換部49が変換することにより演算される。なお、モータ30の各相の電流の和はゼロとなるため、少なくとも2相の電流iu,ivを検出することにより、モータ30の各相の電流を特定することができる。dq/3相変換部43は、d軸およびq軸電圧指令値vd*,vq*を3相の出力電圧指令値vu*,vv*,vw*に変換する。
電圧配分指令生成部(電圧配分指令生成手段)44には、外部より目標配分割合rto*が入力される。この目標配分割合rto*は、第1の電源20の出力割合を示すパラメータである。第1の電源20のみで電力を出力する場合、「1」が目標配分割合rto*として入力され、第2の電源21のみで電力を出力する場合、「0」が目標配分割合rto*として入力される。また、第1の電源20と第2の電源21とで均等に電力を配分する場合、「0.5」が目標配分割合rto*として入力される。電圧配分指令生成部44は、目標配分割合rto*が入力されると、この値に基づいて電圧配分指令rto_cmdを電圧配分部45に出力する。電圧配分指令rto_cmdは、第1の電源20と第2の電源21とに対する出力電圧の配分を示すパラメータであり、本実施形態では、目標配分割合rto*に対応する値(rto_cmd=rto*)として電圧配分指令生成部44によって生成される。
電圧配分部45は、電圧配分指令生成部44から出力された電圧配分指令rto_cmdに応じて各相の出力電圧指令値vu*,vv*,vw*をそれぞれ配分する(電圧配分手段)。これにより、第1の電源20に関する3相の出力電圧指令値である配分電圧指令値Vu1_cmd,Vv1_cmd,Vw1_cmdと、第2の電源21に関する3相の出力電圧指令値である配分電圧指令値Vu2_cmd,Vv2_cmd,Vw2_cmdが演算される。
ここで、電圧配分部45が演算する配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw2_cmdの演算概念について説明する。モータトルクをトルク指令値T*通りに制御しつつ、第1の電源20から供給される電力P1と、第2の電源21から供給される電力P2の割合を変更するには、数式1に示す電圧条件および数式2に示す電力条件の双方の条件を満たせばよい。
数式1,2および電圧配分指令rto_cmdを用いることにより、配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw2_cmdは下式の関係によって規定される。電圧配分部45は、下式に示すように、3相の出力電圧指令値vu*,vv*,vw*と、電圧配分指令rto_cmdとに基づいて、配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw2_cmdをそれぞれ演算する。
図4は、変調率指令生成部46の構成を示す説明図である。変調率指令生成部46は、第1および第2の電源電圧Vdc1,Vdc2を参照し、配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw2_cmdから、最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdを生成する。この最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdは、出力電圧パルスを生成するために、搬送波生成部48により生成されるキャリア(第1のキャリア)と比較される変調率の指令値である。変調率指令生成部46は、初期変調率指令生成部46aと、最終変調率指令生成部46bとを備えている。
初期変調率指令生成部46aは、配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw2_cmdを電源電圧Vdc1,Vdc2で規格化することにより、初期変調率指令mu1〜mw2を演算する(初期変調率指令生成手段)。具体的には、第1の電源20に関する配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw1_cmdのそれぞれが第1の電源電圧Vdc1で規格化される、すなわち、配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw1_cmdのそれぞれが第1の電源電圧Vdc1によって除算される。これにより、第1の電源20に関する各相の初期変調率指令mu1〜mw1がそれぞれ演算される。また、第2の電源21に関する配分電圧指令値Vu2_cmd〜Vw2_cmdのそれぞれが第2の電源電圧Vdc2で規格化される、すなわち、配分電圧指令値Vu2_cmd〜Vw2_cmdのそれぞれが第2の電源電圧Vdc2によって除算される。これにより、第2の電源21に関する各相の初期変調率指令mu2〜mw2がそれぞれ演算される。
最終変調率指令生成部46bは、初期変調率指令mu1〜mw2に基づいて、最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdを生成する。この最終変調率指令生成部46bは、オフセット部46cと、制限部46dとを備えている。
図5は、オフセット部46cの構成を示す説明図である。オフセット部46cは、各電源20,21に関する初期変調率指令mu1〜mw2をそれぞれオフセットさせるオフセット処理を行う(オフセット手段)。具体的には、オフセット部46cは、第1の電源20に関する変調率指令が第2の電源21に関する変調率指令以上となるようにオフセット処理を行う。このオフセット処理により、第1の電源20の正極から負荷へと接続するスイッチ1a〜3aの導通期間中に、第2の電源21の正極から負荷へと接続するスイッチ4a〜6aが導通するように、最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdが規定される。
このオフセット部46cは、変調率振幅演算部46eと、オフセット値生成部46fと、オフセット処理部46gとを有している。
変調率振幅演算部46eは、オフセット処理に必要なオフセット値を求める前提として、初期変調率指令mu1〜mw2の振幅を演算する。具体的には、変調率振幅演算部46eは、d軸およびq軸電圧指令値vd*,vq*に基づいて、出力電圧指令値vu*,vv*,vw*の振幅、例えば、U相出力電圧指令値vu*の振幅vu*_pkを演算する(数式4(1)参照)。つぎに、演算された振幅vu*_pkと、電圧配分指令rto_cmdとを用いて、第1の電源20に関する配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw1_cmdの振幅、例えば、U相配分電圧指令値Vu1_cmdの振幅vu1_cmd_pk、および、第2の電源21に関する配分電圧指令値Vu2_cmd〜Vw2_cmdの振幅、例えば、U相配分電圧指令値Vu2_cmdの振幅vu2_cmd_pkが演算される(数式4(2),(3)参照)。そして、演算された各振幅vu1_cmd_pk,vu2_cmd_pkは、対応する電源電圧Vdc1,Vdc2で規格化される(数式4(4),(5)参照)。これにより、第1の電源20に関する初期変調率指令mu1〜mw1の振幅(以下「第1の変調率振幅」という)mu1_pkと、第2の電源21に関する初期変調率指令mu2〜mw2の振幅(以下「第2の変調率振幅」という)mu2_pkとが演算される。
オフセット値生成部46fは、変調率指令がキャリアと比較できるように、また、第1の電源20に関する変調率指令が第2の電源21に関する変調率指令以上となるように、各電源20毎に、初期変調率指令mu1〜mw1,mu2〜mw2に対するオフセット値m1_off,m2_offを演算する。ここで、第1のオフセット値m1_offは、第1の初期変調率指令mu1〜mw1に対するオフセット値であり、第2のオフセット値m2_offは、第2の初期変調率指令mu2〜mw2に対するオフセット値である。
オフセット処理では、基本的に、第1の電源20に関する変調率指令は、キャリア上部(キャリア振幅の上限(最大値))よりも下側に位置するようにオフセットが行われ、第2の電源21に関する変調率指令は、キャリア下部(キャリア振幅の下限(最小値))よりも上側に位置するようにオフセットが行われる。具体的には、第1および第2のオフセット値m1_off,m2_offは、下式に基づいて演算される。第1および第2の変調率振幅mu1_pk,mu2_pkを参照することにより、変調率指令がすべての時間においてキャリアと比較できるようなオフセット値m1_off,m2_offが演算される。
オフセット処理部46gは、オフセット値m1_off,m2_offに基づいて、初期変調率指令mu2〜mw2にオフセット処理を施すことにより、オフセット変調率指令mu1_off〜mw2_offを演算する。具体的には、オフセット処理部46gは、第1の電源20に関する各初期変調率指令mu1〜mw1に第1のオフセット値m1_offをそれぞれ加算することにより、第1の電源20に関する各相のオフセット変調率指令mu1_off〜mw1_offをそれぞれ演算する。また、オフセット処理部46gは、第2の電源21に関する各初期変調率指令mu2〜mw2に第2のオフセット値m2_offをそれぞれ加算することにより、第2の電源21に関する各相のオフセット変調率指令mu2_off〜mw2_offをそれぞれ演算する。
図6は、制限部46dの構成を示す説明図である。制限部46dは、オフセット処理が行われた各電源20,21の変調率指令、すなわち、オフセット変調率指令mu2_off〜mw2_offに対して制限処理を行うことにより、各電源20,21の最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdを生成する(制限手段)。この制限部46dは、制限処理により、第1の電源20の正極から負荷へと接続するスイッチ1a〜3aの導通時間と、第2の電源21の正極から負荷へと接続するスイッチ4a〜6aの導通時間とが大小関係において逆転しないように制限をかける機能を担っている。具体的には、制限部46dは、変調率指令がキャリアの最大値(具体的には「1」)および最小値(具体的には「0」)の範囲から外れないように制限を行い、さらには、第1の電源20に関する変調率が第2の電源に関する変調率未満とならないように制限を行う。
制限部46dは、優先変調率選択部46hと、変調率制限部46iとを備えている。
優先変調率選択部46hは、第1および第2の電源20,21のうち、どちらの電源20,21の変調率指令を優先させるかを選択する。この選択は、第1の電源20に関する変調率指令を第2の電源21に関する変調率指令以上とする制限を行う際、優先させる変調率指令を基準として、もう一方の変調率指令にかけるために行われる。具体的には、電圧配分指令rto_cmdが1よりも大きい場合には(rto_cmd>1)、第1の電源20に関する変調率指令が優先変調率として選択される。電圧配分指令rto_cmdが0よりも小さい場合には(rto_cmd<0)、第2の電源21に関する変調率指令が優先変調率として選択される。一方、電圧配分指令rto_cmdが0以上かつ1以下の場合には(0≦rto_cmd≦1)、第1および第2の電源20に関する変調率指令のいずれも優先変調率として選択されない。このような選択を行うことにより、配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw2_cmdが、電圧配分される前の出力電圧指令値vu*,vv*,vw*よりも大きい値となる電源20,21の変調率指令を選択することができる。
変調率制限部46iは、優先変調率選択部46hの選択結果に基づいて、初期変調率指令mu1〜mw2に対する上限および下限を設定し、当該設定された制限によりオフセット変調率指令mu1_off〜mw2_offに対する制限を行う。以下、優先選択された変調率指令と、その制限(上限および下限)との関係を説明する。
第1のケースとして、優先変調率に第1の電源20に関する変調率指令が選択されている場合を説明する。この場合、第1の電源20に関する各相の変調率指令の制限として、上限に「1(キャリアの最大値)」が設定され、下限に「0(キャリアの最小値)」が設定される。また、第2の電源21に関する各相の変調率指令の制限として、上限に「1」および「第1の電源20のオフセット変調率指令mu1_off〜mw1_off」のうち小さい方の値が設定され、下限には「0」が設定される。
第2のケースとして、優先変調率に第2の電源20に関する変調率指令が選択されている場合を説明する。この場合、第1の電源20に関する各相の変調率指令の制限として、上限に「1」が設定され、下限に「0」および「第2の電源21のオフセット変調率指令mu2_off〜mw2_off」のうち大きい方の値が設定される。また、第2の電源21に関する各相の変調率指令の制限として、上限に「1」が設定され、下限に「0」が設定される。
第3のケースとして、優先変調率として何も選択されてない場合を説明する。この場合、第1の電源20に関する各相の変調率指令の制限として、上限には「1」が設定され、下限に「0」および「第2の電源21のオフセット変調率指令mu2_off〜mw2_off」のうち大きい方の値が設定される。また、第2の電源21に関する各相の変調率指令の制限として、上限に「1」および「第1の電源20のオフセット変調率指令mu1_off〜mw1_off」のうち小さい方の値が設定され、下限値に「0」が設定される。
変調率制限部46iは、上記のように設定される上限および下限をリミッタとして、オフセット変調率指令mu1_off〜mw2_offを入力することにより、最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdを生成する。具体的には、第1の電源20に関する各相の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdと、第2の電源21に関する各相の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdとが生成される。
再び図1を参照するに、導通信号生成部47は、最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdと、搬送波生成部48において生成されたキャリアとに基づいて、電力変換器10の各スイッチのオンオフ状態を設定する導通信号を生成する。そして、導通信号生成部47は、生成された導通信号を通じて電力変換器10の各スイッチのオンオフ状態を制御する(導通制御手段)。本実施形態において、搬送波生成部48は、下限を「0」、上限を「1」として周期的に変動するキャリアを生成する。なお、キャリアには、三角波を用いることができるが、三角波ではなく鋸波を用いてもよい。
図7は、導通信号生成部47による電力変換器10の各スイッチのオンオフ状態の説明図である。導通信号生成部47は、最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdとキャリアとの比較の結果、導通信号を生成し、この導通信号を通じて各スイッチのオンオフ状態を制御する。以下、U相のみについて説明を行うが、他の相についても同様である。この図7において、各スイッチ1a,1b,4a,7aに関する導通信号がHighレベルのときに、各スイッチ1a,1b,4a,7aがオンとなる。また、Vunは、U相の出力電圧、すなわち、電力変換器10のU相の出力と、平滑コンデンサ11の負極との間の電圧を示す。
まず、第1の電源20のみで構成するインバータ回路(図3(b)参照)を、キャリアと、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmdとの比較で回路を駆動する場合を考える。導通信号生成部47は、最終変調率指令mu1_cmdがキャリアよりも小さい場合(mu1_cmd<キャリア)、スイッチ1aをオフに制御し、スイッチ7aをオンに制御する。これに対して、最終変調率指令mu1_cmdがキャリアよりも大きい場合(mu1_cmd>キャリア)、スイッチ1aがオンに制御され、スイッチ7aがオフに制御される。
次に、第2の電源21のみで構成するインバータ回路(図3(c)参照)を、キャリアと、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmdとの比較で回路を駆動する場合を考える。導通信号生成部47は、最終変調率指令mu2_cmdがキャリアよりも小さい場合(mu2_cmd<キャリア)、スイッチ1bをオンに制御し、スイッチ4aをオフに制御する。これに対して、最終変調率指令mu2_cmdがキャリアよりも大きい場合(mu2_cmd>キャリア)、スイッチ1bがオフに制御され、スイッチ4aがオンに制御される。
図7から分かるように、本実施形態では、U相用のスイッチ1a,1b,4a,7aの操作により、PWM1周期、すなわち、キャリア1周期において、以下に示す(1)から(4)の状態が順次設定される。
(1)全電源20,21のオフ
スイッチ1a:オフ,スイッチ7a:オン,スイッチ1b:オン,スイッチ4a:オフ
(2)下位の第1の電源20のみオン
スイッチ1a:オン,スイッチ7a:オフ,スイッチ1b:オン,スイッチ4a:オフ
(3)第1の電源20のオン期間中にその上位の第2の電源21のオン
スイッチ1a:オン,スイッチ7a:オフ,スイッチ1b:オフ,スイッチ4a:オン
(4)下位の第1の電源20のみオン(上位の第2の電源21のオフ)
スイッチ1a:オン,スイッチ7a:オフ,スイッチ1b:オン,スイッチ4a:オフ
一連のスイッチ操作から分かるように、キャリアの1周期における各電源20,21からモータ30へと接続する各スイッチに対する制御は、つぎのように示すことができる。具体的には、第1の電源20から第2の電源21にかけて、第1の電源20からモータ30へ接続するスイッチ1aの導通期間中に、第2の電源21からモータ30へ接続するスイッチ4aが導通される。このスイッチ制御により、キャリアの1周期における出力電圧パルスは、最下位の第1の電源20の負極電圧(「0」)と、第1の電源20の正極電圧(「Vdc1」)と、第1の電源20の正極電圧出力期間中に第2の電源21が出力する正極電圧(「Vdc1+Vdc2」)とで構成され、凸状の波形となる。
このように本実施形態において、電力変換器10において、キャリアの1周期における各スイッチに対する制御として、最下位の電源(第1の電源20)から最上位の電源(第2の電源21)にかけて、下位の電源(第1の電源20)に対応するスイッチ(スイッチ1a)の導通期間中に、その上位の電源(第2の電源21)に対応するスイッチ(スイッチ4a)が導通される。この電力変換器10の制御により、キャリアの1周期における出力電圧パルスは、第1の電源20の負極電圧(「0」)と、最下位の電源(第1の電源20)から最上位の電源(第2の電源21)にかけて、自己よりも下位の電源の正極電圧出力期間中に各電源が出力する正極電圧(「Vdc1」および「Vdc1+Vdc2」)とで構成される。かかる構成によれば、直列電源を下位から上位に従って制御することで、短絡の発生を抑制しつつ、電力の高速配分が実現することができる。これにより、両方の電源20,21を同時に制御しながらモータ30に電力を供給することができる。
図8は、導通信号生成部47による電力変換器10の各スイッチのオンオフ状態の説明図である。上述したように、上位の電源に対応するスイッチは、その下位の電源に対応するスイッチの導通期間中に導通するものである。図7に示す例では、最下位から最上位にかけて各電源に対応するスイッチの導通期間は、順次短くなっている。ところで、図8に示すように、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmdと、第2の電源21の最終変調率指令mu1_cmdとが一致しているケースでは、下位の電源に対応するスイッチ(スイッチ1a)の導通期間の始まりと同期して、その上位の電源に対応するスイッチ(スイッチ4a)が導通する。また、下位の電源に対応するスイッチ(スイッチ1a)の導通期間の終わりと同期して、その上位の電源に対応するスイッチ(スイッチ4a)が遮断する。この場合、キャリア1周期において、最下位から最上位にかけて各電源に対応するスイッチの導通期間は同じとなる。キャリアの1周期における出力電圧パルスは、最下位の電源(第1の電源20)の負極電圧(「0」)と、最上位の電源(第2の電源21)がそれよりも下位の電源(第1の電源21)の正極電圧出力期間中に出力する正極電圧(「Vdc1+Vdc2」)とで構成され、単純な矩形波となる。このように、本明細書では、「スイッチの導通期間中」、「下位の電源の正極電圧出力期間中」とは、期間の始点から終点までの全範囲を含むこととする。
図9は、電圧配分指令rto_cmdと、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmdおよびキャリアとの関係を示す説明図である。同図(a),(c)は、電圧配分指令rto_cmdが「0」よりも大きく「1」よりも小さいケースを示している。このケースでは、2つの電源20,21で、モータ30の電力を分担している状態となる。同図(b)は、電圧配分指令rto_cmdが「0」よりも小さいケース、または、電圧配分指令rto_cmdが「1」よりも大きいケースを示している。前者のケースでは、第2の電源21がモータ30の電力以上に出力し、第1の電源20が充電している状態となる。また、後者のケースでは、第1の電源20がモータ30の電力以上に出力し、第2の電源21が充電している状態となる。
同図(d)は、電圧配分指令rto_cmdが「1」となるケースを示しており、このケースは、第1の電源20のみでモータ30の電力を出力している状態となる。また、同図(e)は、電圧配分指令rto_cmdが「0」となるケースを示しており、このケースは、第2の電源21のみでモータ30の電力を出力している状態となる。
また、本実施形態において、最終変調率指令値mu1_cmd〜mw2_cmdは、初期変調率指令mu1〜mw2に対してオフセット処理を行い、その後に制限処理を行うことにより算出される。オフセット処理では、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdは、第2の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmd以上となるように両者が相対的にオフセットされる。これにより、第1の電源20に対応するスイッチ1aの導通時間が、第2の電源21に対応するスイッチ4aの導通時間以上に設定される。そのため、スイッチングパターンの異常を抑制し、安定して両方の電源20,21を同時に制御しながら、モータ30に電力を供給することができる。また、電圧配分指令rto_cmdにより出力電圧指令値vu*,vv*,vw*を配分し、その上で初期変調率指令mu1〜mw2を生成する。そのため、各電源20,21の出力電力を任意の値で制御可能となり、さらに電圧配分指令rto_cmdにより電源20,21の間での電力の移動も可能となる。
また、本実施形態において、制限処理として、各電源20,21の初期変調率指令mu1〜mw2に関する制限値(上限および下限)が設定され、この制限値の範囲にオフセット変調率指令mu1_off〜mw2_offが制限される。かかる構成によれば、制限値を設定することが可能であるため、運転状態に合わせた制限処理を行うことができる。これにより、モータ30の負荷が急変するような場合であっても、不必要な制限がかけられるといった事態を抑制することができる。その結果、モータ駆動の制御性の向上を図ることができる。
また、本実施形態において、変調率制限部46iは、オフセット変調率指令mu1_off〜mw2_offに関する制限値として、キャリアの最大値または最小値の他に、他方の電源に関するオフセット変調率指令mu1_off〜mw2_offが適用される。かかる構成によれば、第1または第2の電源20,21に関するオフセット変調率指令mu1_off〜mw2_offが、互いの値を制限値とするため、導通時間が逆転しない変調率指令値の範囲を最大とすることができる。そのため、モータ30への出力範囲を最大限広くする、もしくは電圧配分割合の設定範囲を最大限広くすることができる。
また、本実施形態において、制限部46dは、各電源20,21に関する変調率指令について、どちらの変調率指令を優先とするか選択する優先変調率選択部46hを有している。優先とする変調率指令を選択することで、互いの変調率が交わっている際、優先とする変調率指令に応じて他方の変調率指令を制限することができる。これにより、変調率指令の出力されない空間ができるといった事態を抑制することができるので、モータ30への出力電力を大きく保つことができる。
また、優先変調率選択部46hは、配分電圧指令値Vu1_cmd〜Vw2_cmdが出力電圧指令値vu*,vv*,vw*よりも大きい電源に対応する変調率指令を選択する。そのため、モータ30を主に駆動している一方の電源20,21に対応する変調率指令が選択されることになる。これにより、モータ30への出力電力は安定して確保されるため、モータ30の出力変動を抑制することができる。
また、本実施形態において、変調率制限部46iは、優先変調率選択部46hによって優先として選択された電源の変調率指令に関する制限値として、キャリアの最大値および最小値を設定する。かかる構成によれば、優先として選択された変調率指令は、最大振幅を取ることが可能となり、電源からの最大出力の電力をモータ30に与えることができる。
また、変調率制限部46iは、第1の電源20に対応する変調率指令が優先として選択された場合、第2の電源21の変調率指令に関する制限値として、上限にキャリアの最大値および第1の電源20のオフセット変調率指令mu1_off〜mw1_offのうち小さい方の値を設定し、制限値の下限としてキャリアの最小値を設定する。かかる構成によれば、優先として選択された変調率指令が使用していない部分を最大限利用することが可能となる。そのため、モータ30への出力範囲、もしくは電圧配分割合の設定範囲を最大とすることができる。
また、変調率制限部46iは、第2の電源21に対応する変調率指令が優先として選択された場合、第1の電源20の変調率指令に関する制限値として、上限にキャリアの最大値を設定し、下限にキャリアの最小値および第2の電源21のオフセット変調率指令mu2_off〜mw2_offのうち大きい方の値を設定する。かかる構成によれば、優先として選択された変調率指令が使用していない部分を最大限利用することが可能となる。そのため、モータ30への出力範囲、もしくは電圧配分割合の設定範囲を最大とすることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態にかかる制御システムについて説明する。第2の実施形態にかかる制御システムが、第1の実施形態のそれと相違する点は、制御ユニット40における電圧配分指令生成部44の構成である。第1の実施形態と共通する構成については重複する説明は省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
図10は、第2の実施形態にかかる電圧配分指令生成部44の構成を模式的に示す説明図である。電圧配分指令生成部44は、外部から入力される目標配分割合rto*に基づいて、電圧配分部45に電圧配分指令rto_cmdを出力する機能を担っており、本実施形態では、電圧振幅演算部44aと、配分範囲演算部44bと、電圧配分指令制限部44cとを備えている。
電圧振幅演算部44aは、d軸およびq軸電圧指令値Vd*,Vq*から、モータ30を駆動するための出力電圧指令値vu*,vv*,vw*の電圧振幅Vpkを演算する。電圧振幅Vpkは、下式に基づいて演算され、その演算結果は配分範囲演算部44bに出力される。
配分範囲演算部44bは、電圧振幅Vpkと、第1および第2の電源電圧Vdc1,Vdc2とに基づいて、電圧配分指令上限rto_uppおよび電圧配分指令下限rto_lowを演算する。具体的には、配分範囲演算部44bは、各電源20,21に関する変調率指令が「1」を超えないような上限下限範囲を演算する。また、配分範囲演算部44bは、第1および第2の電源20,21のうち一方の電源がモータ30の電力以上に電力を出力して他方の電源が余剰分の電力を充電する場合において、第1の電源20に関する変調率指令が第2の電源21に関する変調率指令未満とならない上限下限範囲を演算する。そして、これら演算された上限下限範囲に基づいて電圧配分指令上限rto_uppおよび電圧配分指令下限rto_lowが演算される。
第1に、各電源20,21に関する変調率指令が「1」となってしまう範囲の演算方法を説明する。まず、第1の電源電圧Vdc1で変調率指令が「1」となってしまう場合の電圧配分指令の上限範囲rto_upp1は、下式により演算される。この上限範囲rto_upp1は、第1の電源20で電圧振幅Vpkの何倍まで出力できるかを演算することとなる。
つぎに、第2の電源21の電源電圧Vdc2で変調率が「1」となってしまう場合の電圧配分指令の下限範囲rto_low1は、下式により演算される。この下限範囲rto_low1は、第2の電源21のみの場合に変調率指令が1までの間で電圧振幅Vpkの何倍まで出力するかを演算し、この演算値を「1」から減算する。
第2に、一方の電源がモータ30の電力以上に電力を出力して他方の電源が余剰分の電力を充電する場合において、第1の電源20に関する変調率指令が第2の電源21に関する変調率指令未満とならない範囲の演算方法を説明する。ここで、各変調率指令の振幅の和が「0.5」を超えないように、その範囲を設定する。
まず、第1の電源20がモータ30の電力以上に多く電力を出力する場合、電圧配分指令の上限範囲rto_upp2は、下式(1)に示す関係を満たす。この(1)式より、電圧配分指令の上限範囲rto_upp2は下式(2)で演算される。
つぎに、第1の電源20が余剰分の電力を充電する場合、電圧配分指令の下限範囲rto_low2は、下式(1)に示す関係を満たす。この(1)式より、電圧配分指令の下限範囲rto_low2は下式(2)で演算される。
配分範囲演算部44bは、電圧配分指令上限rto_uppとして、上述した演算より得られる電圧配分指令の上限範囲rto_upp1,rto_upp2のうちの最小値を設定する。また、配分範囲演算部44bは、電圧配分指令下限rto_lowとして、上述した演算より得られる電圧配分指令の上限範囲rto_low1,rto_low2のうちの最大値を設定する。
電圧配分指令制限部44cは、外部から目標配分割合rto*と、配分範囲演算部44bから電圧配分指令下限rto_lowおよび電圧配分指令上限rto_uppが入力される。電圧配分指令制限部44cは、目標配分割合rto*と、電圧配分指令下限rto_lowおよび電圧配分指令上限rto_uppの範囲とを比較する。目標配分割合rto*がこの上下限範囲から外れる場合、電圧配分指令制限部44cは、当該上下限範囲を限度として目標配分割合rto*を制限し、制限した値を電圧配分指令rto_cmdとして出力する。なお、目標配分割合rto*が上下限範囲内である場合、電圧配分指令制限部44cは、目標配分割合rto*を電圧配分指令rto_cmdとして出力する。
このように本実施形態において、電圧配分指令生成部44は、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdが第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmd以上となる関係を保つことが可能な配分範囲を演算し(配分範囲演算部44b)、目標配分割合rto*を演算された配分範囲に制限して電圧配分指令rto_cmdを出力する(電圧配分指令制限部44c)。かかる構成によれば、変調率制限部46iにおいて制限を受けにくくなり、変調率波形に高調波成分が重畳されにくくなる。その結果、トルク変動などが起きにくくなり、モータ30での損失を増加することなくモータ30を安定して駆動することができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態にかかる制御システムについて説明する。第3の実施形態にかかる制御システムが、第1の実施形態のそれと相違する点は、電力変換器10の構成と、この構成の相違にともなう制御ユニット40の制御手法とである。第1の実施形態と共通する構成については重複する説明は省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
図11は、第3の実施形態にかかる電力変換装置の電力変換器10を中心としたシステム構成を模式的に示す説明図である。電力変換器10は、互いに直列接続された第1から第3の電源20〜22に接続されており、制御ユニット40に制御されることにより各電源20〜22の出力電圧から出力電圧パルスを生成する。そして、電力変換器10は、この出力電圧パルスにより、負荷であるモータ30の駆動電圧を生成する。
ここで、第1から第3の電源20〜22は、それぞれが独立した直流電源である。各電源20〜22は、下位の電源(例えば、第1の電源20)の正極と、その上位の電源(例えば、第2の電源21)の負極とが接続されることにより、最下位から最上位の電源20〜22が互いに直列接続されている。個々の電源20〜22としては、例えば、ニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池といったバッテリを用いることができる。最上位に位置する第3の電源22の正極は、正極母線76が接続され、最下位に位置する第1の電源20の負極は、負極母線77が接続される。また、第1の電源20の正極と、その上位に位置する第2の電源21の負極とは、第1の共通母線78が接続され、第3の電源20の負極と、その下位に位置する第2の電源21の正極とは、第2の共通母線79が接続される。この負極母線77と第1の共通母線78との間、第1の共通母線78と第2の共通母線79との間、第2の共通母線79と正極母線76との間には、平滑コンデンサ73〜75がそれぞれ設けられている。
電力変換器10において、第1の共通母線78と、3相に対応する各出力端子との間には、双方向の導通を制御可能なスイッチ手段がそれぞれ接続されている。個々のスイッチ手段は、一対の半導体スイッチ(例えば、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子)61a,61b〜63a,63bを互いに逆並列接続することにより構成されている。第2の共通母線79と、3相に対応する各出力端子との間には、双方向の導通を制御可能なスイッチ手段がそれぞれ接続されている。個々のスイッチ手段は、一対の半導体スイッチ(例えば、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子)64a,64b〜66a,66bを互いに逆並列接続することにより構成されている。
また、正極母線76と、3相に対応する各出力端子との間には、一般的に知られている3相インバータの上アームと同様に、スイッチ手段がそれぞれ接続されている。個々のスイッチ手段は、半導体スイッチ(例えば、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子)67a〜69aを主体に構成されており、個々のスイッチ(トランジスタ)67a〜69aは、コレクタ・エミッタ間に還流用ダイオード67b〜69bがそれぞれ逆並列接続されている。負極母線77と、3相に対応する各出力端子との間には、一般的に知られている3相インバータの下アームと同様に、各相に対応したスイッチ手段がそれぞれ接続されている。個々のスイッチ手段は、半導体スイッチ(例えば、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子)70a〜72aを主体に構成されており、個々のスイッチ(トランジスタ)70a〜72aは、コレクタ・エミッタ間に還流用ダイオード70b〜72bがそれぞれ逆並列接続されている。これらの半導体スイッチ(以下単に「スイッチ」という)のオンオフ状態は、制御ユニット40から出力される駆動信号を通じて制御される。
図12は、第1から第3の電源20〜22に関する最終変調率指令を示す説明図である。制御ユニット40は、第1の実施形態と同様の制御概念にしたがい、3相の出力電圧指令値vu*,vv*,vw*と、第1から第3の電源20〜22の出力割合を示す目標配分割合rto*とに基づいて、第1から第3の電源20〜22に関する各相の最終変調率指令をそれぞれ演算する。以下、U相のみについて説明を行うが、他の相についても同様である。同図に示すように、第1から第3の電源20〜22が3個直列接続されている場合、最下位の第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd、その上位の第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd、および最上位の第3の電源22の最終変調率指令mu3_cmdは、この順番で、キャリアの上部から下部にかけて順次配置された格好となる。それぞれの最終変調率指令mu1_cmd〜mu3_cmdが交差しない範囲で、電力配分や電源20〜22間の電力の移動が可能となる。
図13は、第3の実施形態にかかる電力変換器10の各スイッチのオンオフ状態の説明図である。制御ユニット40は、各電源20〜22に関する最終変調率指令とキャリアとを比較して導通信号を生成し、この導通信号を通じて電力変換器10の各スイッチのオンオフ状態を設定する導通信号を生成する。以下、U相のみについて説明を行うが、他の相についても同様である。
まず、第1の電源20のみで構成するインバータ回路を、キャリアと、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmdとの比較で駆動する場合を考える。制御ユニット40は、最終変調率指令mu1_cmdがキャリアよりも小さい場合(mu1_cmd<キャリア)、スイッチ61aをオフに制御し、スイッチ70aをオンに制御する。これに対して、最終変調率指令mu1_cmdがキャリアよりも大きい場合(mu1_cmd>キャリア)、スイッチ61aがオンに制御され、スイッチ70aがオフに制御される。
つぎに、第2の電源21のみで構成するインバータ回路を、キャリアと、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmdとの比較で駆動する場合を考える。制御ユニット40は、最終変調率指令mu2_cmdがキャリアよりも小さい場合(mu2_cmd<キャリア)、スイッチ64aをオフに制御し、スイッチ61bをオンに制御する。これに対して、最終変調率指令mu2_cmdがキャリアよりも大きい場合(mu2_cmd>キャリア)、スイッチ64aがオンに制御され、スイッチ61bがオフに制御される。
第3の電源22のみで構成するインバータ回路を、キャリアと、第3の電源22の最終変調率指令mu3_cmdとの比較で駆動する場合を考える。制御ユニット40は、最終変調率指令mu3_cmdがキャリアよりも小さい場合(mu3_cmd<キャリア)、スイッチ67aをオフに制御し、スイッチ64bをオンに制御する。これに対して、最終変調率指令mu2_cmdがキャリアよりも大きい場合(mu2_cmd>キャリア)、スイッチ67aがオンに制御され、スイッチ64bがオフに制御される。
図13から分かるように、本実施形態では、U相用のスイッチ61a,70a,64a,61b,67a,64bの操作により、PWM1周期、すなわち、キャリアの1周期において、以下に示す(1)から(6)の状態が順次設定される。
(1)全電源20〜22のオフ
スイッチ61a:オフ,スイッチ70a:オン,スイッチ64a:オフ,スイッチ61b:オン,スイッチ67a:オフ,スイッチ64bオン
(2)最下位の第1の電源20のみオン
スイッチ61a:オン,スイッチ70a:オフ,スイッチ64a:オフ,スイッチ61b:オン,スイッチ67a:オフ,スイッチ64b:オン
(3)第1の電源20のオン期間中にその上位の第2の電源21のオン
スイッチ61a:オン,スイッチ70a:オフ,スイッチ64a:オン,スイッチ61b:オフ,スイッチ67a:オフ,スイッチ64b:オン
(4)第1および第2の電源20,21のオン期間中に最上位の第3の電源22のオン
スイッチ61a:オン,スイッチ70a:オフ,スイッチ64a:オン,スイッチ61b:オフ,スイッチ67a:オン,スイッチ64b:オフ
(5)最上位の第3の電源22のみオフ(第1および第2の電源20,21のオン)
スイッチ61a:オン,スイッチ70a:オフ,スイッチ64a:オン,スイッチ61b:オフ,スイッチ67a:オフ,スイッチ64b:オン
(6)最上位およびその下位の第2および第3の電源21,22のみオフ(第1の電源20のオン)
スイッチ61a:オン,スイッチ70a:オフ,スイッチ64a:オフ,スイッチ61b:オン,スイッチ67a:オフ,スイッチ64b:オン
一連のスイッチ操作から分かるように、キャリアの1周期における各電源20〜22からモータ30へと接続する各スイッチに対する制御は、つぎのように示すことができる。具体的には、第1の電源20からモータ30へ接続するスイッチ61aの導通期間中に、第2の電源21からモータ30へ接続するスイッチ64aが導通される。また、第2の電源21からモータ30へ接続するスイッチ64aの導通期間中に、第3の電源22からモータ30へ接続するスイッチ67aが導通される。このスイッチ制御により、キャリアの1周期における出力電圧パルスは、最下位の第1の電源20の負極電圧(「0」)と、第1の電源20の正極電圧(「Vdc1」)と、第1の電源20の正極電圧出力期間中に第2の電源21が出力する正極電圧(「Vdc1+Vdc2」)と、第1および第2の電源20,21の正極電圧出力期間中に第3の電源22が出力する正極電圧(「Vdc1+Vdc2+Vdc3」)とで構成され、三段の凸状の波形となる。
このように本実施形態において、電力変換器10において、キャリアの1周期における各スイッチに対する制御として、最下位の電源(第1の電源20)から最上位の電源(第3の電源22)にかけて、下位の電源(第1の電源20(または第2の電源21))に対応するスイッチ(スイッチ61a(またはスイッチ64a))の導通期間中に、その上位の電源(第2の電源21(または第3の電源22))に対応するスイッチ(スイッチ64a(またはスイッチ67a))が導通される。この電力変換器10の制御により、キャリアの1周期における出力電圧パルスは、第1の電源20の負極電圧(「0」)と、最下位の電源(第1の電源20)から最上位の電源(第2の電源)にかけて、自己よりも下位の電源の正極電圧出力期間中に各電源20〜22が出力する正極電圧(「Vdc1」,「Vdc1+Vdc2」,「Vdc1+Vdc2+Vdc3」)とで構成される。かかる構成によれば、電力の高速配分が実現すると共に、両方の電源20,21を同時に制御しながらモータ30に電力を供給することができる。このようにすることで、2つ以上の電源20〜22を直列接続し使用する場合であっても、電力配分、電源間の電力移動が可能となる。
なお、2つ以上の電源20〜22を直列接続し使用する場合であっても、第1の実施形態と同様、「スイッチの導通期間中」、下位の電源の正極電圧出力期間中」とは、期間の始点から終点までの全範囲を含むこととする。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態にかかる制御システムについて説明する。第4の実施形態にかかる制御システムが、第1の実施形態のそれと相違する点は、制御ユニット40における変調率指令生成部46、具体的には、最終変調率指令生成部46bの構成である。第1の実施形態と共通する構成については重複する説明は省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
図14は、最終変調率指令生成部46bの構成を模式的に示す説明図である。最終変調率指令生成部46bは、第1および第2の電源20,21の各最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdがキャリアと比較可能であって、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdが第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmd以上となるように、初期変調率指令mu1〜mw2に対してオフセット処理を行い、これにより、各電源20,21の最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdを生成する。本実施形態の最終変調率指令生成部46bは、損失定義部46jと、導通時間設定部46kと、変調率振幅演算部46lと、電源電圧比較部46mと、オフセット値生成部46nと、オフセット処理部46oとを備えている。
損失定義部46jには、電力変換器10において大きな損失を発生するスイッチが定義されている。導通時間設定部46kには、損失定義部46jに定義されるスイッチの導通時間が設定されている。例えば、損失定義部46jは、各スイッチの温度を検知することにより、検出された温度によって電気的な損失が大きいスイッチを特定する。また、導通時間設定部46kは、予め設定されたマップや計算式に基づいて、温度から、電気的な損失が大きいスイッチのみが導通する時間を設定する。
変調率振幅演算部46lは、第1の実施形態に示す変調率振幅演算部46eと同様に、第1の変調率振幅mu1_pkと、第2の変調率振幅mu2_pkとを演算する。電源電圧比較部46mは、第1の電源電圧Vdc1と第2の電源電圧Vdc2との大きさの比較を行う。
オフセット値生成部46nは、導通時間設定部46kに設定される導通時間と、電圧配分指令rto_cmdと、変調率振幅演算部46lにおいて演算された第1および第2の変調率振幅mu1_pk,mu2_pkと、電源電圧比較部46mの比較結果とに基づいて、第1および第2の電源20,21に関するオフセット値m1_off,m2_offをそれぞれ演算する。なお、オフセットm1_off,m2_offの演算方法については後述する。
このようにして生成された個々のオフセット値m1_off,m2_offは、オフセット処理部46oへと出力される。オフセット処理部46oは、第1の電源20に関して、各相の初期変調率指令mu1〜mw1にオフセット値m1_offをそれぞれ加算することにより、各相の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdを演算する。また、オフセット処理部46oは、第2の電源21に関して、各相の初期変調率指令mu2〜mw2にオフセット値m2_offをそれぞれ加算することにより、各相の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdを演算する。
以下、種々のケースを例示してオフセットm1_off,m2_offの演算方法を説明する。なお、本実施形態では、損失定義部46jには、第1の電源20の正極よりモータ30へと接続するスイッチ手段(具体的には、スイッチ1a,1b)の損失が大きいと定義され、また、導通時間設定部46kには、当該スイッチ手段(スイッチ1a,1b)の導通時間を短くする所定時間が設定されているとする。
(ケース1:電圧配分指令rto_cmdが「0」以上「1」以下(第1および第2の電源20,21がそれぞれ力行または回生、もしくは、一方の電源20,21が出力停止で他方の電源20,21が力行または回生))
オフセット値生成部46nは、第1の変調率振幅mu1_pkと、第2の変調率振幅mu2_pkとを比較する。オフセット値生成部46nは、この比較結果を参照した上で、キャリア上限(キャリア振幅の上限)Ucarr、キャリア下限(キャリア振幅の下限)Lcarr、第1および第2の変調率振幅mu1_pk,mu2_pkおよび初期変調率指令mu1〜mw2に基づいて、オフセット値m1_off,m2_offをそれぞれ生成する。
第1の変調率振幅mu1_pkが第2の変調率振幅mu2_pkよりも小さい場合(mu1_pk<mu2_pk)、個々のオフセット値m1_off,m2_offは下式に示すように生成される。
また、該当するスイッチ手段のスイッチング動作を行わない場合には、個々のオフセット値m1_off,m2_offは、下式に示すように生成される。
これに対して、第1の変調率振幅mu1_pkが第2の変調率振幅mu2_pkよりも大きい場合(mu1_pk>mu2_pk)、個々のオフセット値m1_off,m2_offは下式に示すように生成される。
また、該当するスイッチ手段のスイッチング動作を行わない場合には、個々のオフセット値m1_off,m2_offは、下式に示すように生成される。
(ケース2:電圧配分指令rto_cmdが「0」未満または「1」よりも大きい(一方の電源20,21が力行で他方の電源20,21が回生))
オフセット値生成部46nは、第1の電源電圧Vdc1と、第2の電源電圧Vdc2とを比較して、電圧の高い電源20,21を判断する。オフセット値生成部46nは、この判断結果に基づいて、スイッチング損失をより低減するオフセット値m1_off,m2_offを、キャリア上限Ucarr、キャリア下限Lcarr、初期変調率指令mu1〜mw2より生成する。
第1の電源電圧Vdc1が第2の電源電圧Vdc2よりも小さい場合(Vdc1<Vdc2)、該当するスイッチ手段のスイッチング動作を行わない場合には、個々のオフセット値m1_off,m2_offは、下式に示すように生成される。
また、該当するスイッチ手段の切り替えを常に行う場合には、個々のオフセット値m1_off,m2_offは、下式に示すように生成される。
これに対して、第1の電源電圧Vdc1が第2の電源電圧Vdc2以上の場合(Vdc1≧Vdc2)、該当するスイッチ手段のスイッチング動作を行わない場合には、個々のオフセット値m1_off,m2_offは、下式に示すように生成される。
また、該当するスイッチ手段の切り替えを常に行う場合には、個々のオフセット値m1_off,m2_offは、下式に示すように生成される。
なお、上記の演算では、オフセット値生成部46nは、初期変調率指令mu2〜mw1を未知数として含んだ演算結果をオフセット処理部46oに出力するものである。しかしながら、各電源20,21の初期変調率指令mu2〜mw1を演算パラメータとしてオフセット値生成部46nに入力しておいてもよい。
このように本実施形態において、最終変調率指令生成部46bは、第1および第2の電源20,21の各最終変調率指令がキャリアと比較可能であって、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdが第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmd以上となるようにオフセット処理を行う。かかる構成によれば、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdは、第2の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmd以上となるように両者が相対的にオフセットされる。これにより、第1の電源20に対応するスイッチ1aの導通時間が、第2の電源21に対応するスイッチ4aの導通時間以上に設定される。そのため、スイッチングパターンの異常を抑制し、安定して両方の電源20,21を同時に制御しながら、モータ30に電力を供給することができる。また、電圧配分指令rto_cmdにより出力電圧指令値vu*,vv*,vw*を配分し、その上で初期変調率指令mu1〜mw2を生成する。そのため、各電源20,21の出力電力を任意の値で制御可能となり、さらに電圧配分指令rto_cmdにより電源20,21の間での電力の移動も可能となる。
また、本実施形態において、最終変調率指令生成部46bは、電気的な損失が大きいスイッチのみが導通する所定時間が設定されており、設定された所定時間に基づいて、第1の電源21の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdが第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmd以上となる範囲でオフセット処理を行う。これにより、損失の大きいスイッチに電流が流れる時間を設定するのと等価となる。これにより、損失が大きいスイッチで発生する導通損失を制御することが可能となり、全体として損失を低減することができる。
また、最終変調率指令生成部46bは、上記に示した演算に従うことで、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdと、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdとが、各初期変調率指令mu1〜mu2に関する基本波周期の1/3周期以下の時間において一致するようにオフセット処理を行うこととなる。かかる構成によれば、各電源20,21の最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdを一致させることにより、2つの電源20,21の電力配分時に共通で使用するスイッチ手段のみがオンする時間がなくなる。共通のスイッチ手段は、双方向のスイッチ11a,11b〜13a,13bで構成されるため、通常損失が大きくなるスイッチ手段である。その共通のスイッチ手段のみが導通する時間がなくなることで、導通損失をさらに低減することができる。
また、本実施形態において、最終変調率指令生成部46bは、第1および第2の電源20,21がそれぞれ力行または回生、もしくは、一方の電源が出力停止で他方の電源が力行または回生であって、第1の変調率振幅mu1_pkが第2の変調率振幅mu2_pkより小さい場合、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdの上部と第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdの上部とを一致させるようにオフセット処理を行う(図15(a)参照)。かかる構成によれば、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdと、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdとの上下関係が逆転することなく、電力を出力可能となる。また、スイッチ手段における導通損失を低減することができる。なお、図15では、U相に着目した第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmdと、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmdとを示している(図15において同じ)。
また、本実施形態において、最終変調率指令生成部46bは、第1および第2の電源20,21がそれぞれ力行または回生、もしくは、一方の電源が出力停止で他方の電源が力行または回生であって、第1の変調率振幅mu1_pkが第2の変調率振幅mu2_pkより大きい場合、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdの下部と第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdの下部とを一致させるようにオフセット処理を行う(図15(b)参照)。かかる構成によれば、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdと、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdとの上下関係が逆転することなく、電力を出力可能となる。また、スイッチ手段における導通損失を低減することができる。
この場合、最終変調率指令生成部46bは、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdと第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdとが一致している時間の一部において、スイッチ手段がスイッチング動作を行わないようにオフセット処理を行う(図15(a),(b)参照)。かかる構成によれば、一致時間中に導通・遮断の切り替えを行わないことにより、導通損失に加えスイッチング損失も低減することができる。
さらに、本実施形態において、最終変調率指令生成部46bは、一方の電源が力行で他方の電源が回生である場合、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdの上部と、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdの下部とを一致させるようにオフセット処理を行う(図15(c),(d)参照)。かかる構成によれば、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdと、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdとの上下関係が逆転することなく、電力を出力可能となる。また、スイッチ手段における導通損失を低減することができる。
この場合、最終変調率指令生成部46bは、第1の電源電圧Vdc1が第2の電源電圧Vdc2がより小さい場合、第2の電源21の正極より負荷へと接続するスイッチ手段が、第1のキャリア1周期以上、かつ、各初期変調率指令mu1〜mw2に関する基本波周期の1/3周期以下の時間遮断するようにオフセット処理が行われる(図15(c)参照)。かかる構成によれば、電源電圧の高い電源の導通・遮断の切り替えを行わなくなるため、より効果的にスイッチング損失を低減することが可能となる。
また、最終変調率指令生成部46bは、第1の電源電圧Vdc1が第2の電源電圧Vdc2以上の場合、第1の電源20の正極より負荷へと接続するスイッチ手段が、第1のキャリア1周期以上、かつ、各初期変調率指令mu1〜mw2に関する基本波周期の1/3周期以下の時間導通するようにオフセット処理が行われる。かかる構成によれば、電源電圧の高い電源の導通・遮断の切り替えを行わなくなるため、より効果的にスイッチング損失を低減することが可能となる。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態にかかる制御システムについて説明する。第5の実施形態にかかる制御システムが、第1の実施形態のそれと相違する点は、制御ユニット40における変調率指令生成部46、具体的には、最終変調率指令生成部46bの構成である。第1の実施形態と共通する構成については重複する説明は省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
図16は、最終変調率指令生成部46bの構成を模式的に示す説明図である。最終変調率指令生成部46bは、初期変調率指令mu1〜mw2に基づいて、最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdを生成する。本実施形態の最終変調率指令生成部46bは、オフセット値生成部46pと、オフセット処理部46qとを備えている。
オフセット値生成部46pは、キャリア上限(キャリア振幅の上限)Ucarr、キャリア下限(キャリア振幅の下限)Lcarr、初期変調率指令mu1〜mw2、第1および第2の変調率振幅mu1_pk,mu2_pkよりオフセット値m1_off,m2_offを生成する。具体的には、オフセット値生成部46pは、下式に示すように第1の電源20に関するオフセット値m1_offおよび第2の電源21に関するオフセット値m2_offを演算する。ここで、第1および第2の変調率振幅mu1_pk,mu2_pkは、第1の実施形態に示す変調率振幅演算部46eの実行する処理と同様の手法により求めることができる。
このようにして生成された個々のオフセット値m1_off,m2_offは、オフセット処理部46qへと出力される。オフセット処理部46qは、第1の電源20に関して、各相の初期変調率指令mu1〜mw1にオフセット値m1_offをそれぞれ加算することにより、各相の最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdを演算する。また、オフセット処理部46oは、第2の電源21に関して、各相の初期変調率指令mu2〜mw2にオフセット値m2_offをそれぞれ加算することにより、各相の最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdを演算する。
ここで、図17は、キャリアと各電源20,21の最終変調率指令mu1_cmd,mu2_cmdとの関係を示す説明図である。なお、図17は、U相に関する第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmd(上側波形)と、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd(下側波形)とを例示する。このように本実施形態によれば、最終変調率指令生成部46bにより、各電源20,21の正極より負荷へと接続するスイッチ手段が、キャリア1周期以上、各初期変調率指令mu1〜mw2に関する基本波周期の1/3周期以下の時間においてスイッチング動作を行わないようにオフセット処理が行われる。かかる構成によれば、導通・遮断のスイッチング動作を行わない時間があるため、切り替え時に発生するスイッチング損失を低減しつつ、モータ30へ電力を供給することが可能となる。
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態にかかる制御システムについて説明する。第6の実施形態にかかる制御システムが、第1の実施形態のそれと相違する点は、制御ユニット40における導通信号生成部47の構成である。第1の実施形態と共通する構成については重複する説明は省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
導通信号生成部47は、変調率指令生成部46からの最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdと、搬送波生成部48において生成されたキャリアとに基づいて、電力変換器10の各スイッチのオンオフ状態を設定する導通信号を生成する。本実施形態において、搬送波生成部48は、下限を「0」、上限を「1」とする三角波をキャリアとして生成する。なお、キャリアは、三角波ではなく鋸波を用いることもできる。
図18は、第6の実施形態にかかる導通信号生成部47による電力変換器10の各スイッチのオンオフ状態の説明図である。導通信号生成部47は、最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdとキャリアとの比較の結果、導通信号を生成し、この導通信号を通じて各スイッチのオンオフ状態を制御する。以下、U相のみについて説明を行うが、他の相についても同様である。ここで、図18において、各スイッチ1a,1b,4a,7aに関する導通信号がHighレベルのときに、各スイッチ1a,1b,4a,7aがオンとなる。また、Vunは、U相の出力電圧を示す。
まず、第1の電源20のみで構成するインバータ回路(図3(b)参照)を、キャリアと、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmdとの比較で駆動する場合を考える。導通信号生成部47は、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmdがキャリア以下であり、かつ、この第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmdが第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd以上である場合(mu2_cmd≦mu1_cmd≦キャリア)、スイッチ1aをオフに制御し、スイッチ7aをオンに制御する。また、導通信号生成部47は、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmdがキャリアよりも大きく、かつ、このキャリアが第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmdよりも大きい場合(mu2_cmd<キャリア<mu1_cmd)、スイッチ7aをオフに制御し、スイッチ1aをオンに制御する。また、導通信号生成部47は、第1の電源20の最終変調率指令mu1_cmdが第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmd以上であり、かつ、この第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmdがキャリアよりも大きい場合(キャリア<mu2_cmd≦mu1_cmd)、スイッチ1a,4aをそれぞれオフに制御する。
次に、第2の電源21のみで構成するインバータ回路(図3(c)参照)を、キャリアと、第2の電源21の最終変調率指令mu2_cmdとの比較で回路を駆動する場合を考える。導通信号生成部47は、最終変調率指令mu2_cmdがキャリアよりも小さい場合(mu2_cmd<キャリア)、スイッチ1bをオンに制御し、スイッチ4aをオフに制御する。これに対して、最終変調率指令mu2_cmdがキャリアよりも大きい場合(mu2_cmd>キャリア)、スイッチ1bがオフに制御され、スイッチ4aがオンに制御される。
このように本実施形態によれば、導通信号生成部47は、第1の電源20に対応するスイッチ手段を導通し、この導通期間中に第2の電源21に対応するスイッチ手段を導通した場合、第2の電源21に対応するスイッチ手段の導通期間中であることを条件に第1の電源20に対応するスイッチ手段を遮断する。かかる構成によれば、電流型のゲートを持つスイッチング素子を用いた場合、ゲート信号を遮断とすることで第1の電源20側のスイッチング素子に電流を流さないこととなる。これにより、ゲートでの損失を低減することができる。
なお、上述した第1から第6の実施形態においても、上記の制御手法と、以下に示すような制御手法などと切り替えて用いてもよい。この制御手法としては、第1の電源20に対応したキャリアと、第2の電源21に対応したキャリアとを持つ。ここで、第1の電源20に対応したキャリアの下端は0、その上端は第1の電源20の電圧値となり、また、第2の電源21に対応したキャリアの下端は第1の電源20の電圧値、その上端は第1および第2の電源20,21の電圧を足した値とする。そして、モータ30に加える出力電圧指令値vu*,vv*,vw*にオフセット値を加え、第2の電源21に対応したキャリアと、第1の電源20に対応したキャリアとのどの部分で比較するかによってスイッチ手段をスイッチングし、電力の配分を行う。この場合、制御手法を切り替える場合は、たとえば、電圧配分指令rto_cmdが0〜1の場合に、後者の制御手法を用い、電圧配分指令rto_cmdが0未満や1を超える場合に、各実施形態に示す制御手法を用いる。なお、電圧配分指令rto_cmdが0〜1の場合であっても、電力の脈動を抑えた制御が必要な場合には各実施形態に示す制御手法を用いてもよい。
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態にかかる制御システムについて説明する。第7の実施形態にかかる制御システムが、第1の実施形態のそれと相違する点は、外部のトルクを受けて発電を行い、この発電電力を直流電源の一つとして用いることである。第1の実施形態と共通する構成については重複する説明は省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
図19は、第7の実施形態にかかる電力変換装置が適用された制御システムの全体構成を模式的に示す説明図である。本実施形態では、電気自動車の駆動用モータに適用された電動機制御システムについて説明を行う。この電動機制御システムは、電力変換器10、モータ30および第1および第2の制御ユニット40,50を主体に肯定されている。
図20は、電力変換器10を中心としたシステム構成を模式的に示す説明図である。電力変換器10は、互いに直列接続された複数の電源に接続されており、第1の制御ユニット40に制御されることにより各電源の出力電圧から出力電圧パルスを生成する直列型変換装置である。そして、電力変換器10は、この出力電圧パルスにより、負荷であるモータ30の駆動電圧を生成する。
本実施形態において、複数の電源は、発電機23による発電電力をインバータ(発電電力変換器)23が整流することで構成される電源(以下「発電電源」という)と、ニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池といったバッテリで構成される第2の電源21とで構成されている。ここで、発電電源(発電機23およびインバータ24)と、第2の電源21とは、それぞれが独立した直流電源として機能するものであり、互いに直列接続されている。なお、発電電源は、第1の実施形態における第1の電源に相当する電源である。
発電機23は、例えば、中性点を中心に星形結線された複数の相巻線(本実施形態では、U相巻線、V相巻線、W相巻線からなる3つの相巻線)を有する3相交流同期モータである。この発電機23は、ロータが外力により回転している場合、ステータ巻線の両端に起電力を生じさせることにより、発電機として機能する。インバータ24は、発電機23によって発電された3相交流電力を直流電力に変換するものであり、発電機23の各相に対応して設けられた上下アームを主体に構成されている。個々のアームは、NPN型のトランジスタ等のスイッチング素子と、これに逆並列に接続される還流用ダイオードとで構成されている。
再び図19を参照するに、第1の制御ユニット40は、第1の実施形態に示す制御ユニット40と同様に、電力変換器10を制御する制御手段であり、この電力変換器10を介して負荷であるモータ30の出力トルクを制御する。第1の制御ユニット40としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。第1の制御ユニット40は、ROMに記憶された制御プログラムに従い、電力変換器10を制御するための演算を行う。そして、第1の制御ユニット40は、この演算によって算出された制御信号を電力変換器10に対して出力する。
第2の制御ユニット50は、インバータ24を制御する制御手段である(第2の制御手段)。第2の制御ユニット50としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。第2の制御ユニット50は、ROMに記憶された制御プログラムに従い、インバータ24を制御するための演算を行う。そして、第2の制御ユニット50は、この演算によって算出された制御信号をインバータ24に対して出力する。第2の制御ユニット50による演算処理は、インバータ24のキャリア周波数(スイッチング周波数)fcと同じ周波数のディジタル制御にて行う。
第2の制御ユニット50は、これを機能的に捉えた場合、発電電力制御部51、電流制御部52、dq/3相変換部53、変調率指令生成部56、PWM生成部57と、搬送波生成部58、3相/dq変換部59とを有している。
発電電力制御部51は、外部システムから入力される発電電力指令Pと、発電機23のロータ回転数ωとに基づいて、発電機23の電流指令id_g*,iq_g*を生成する。電流制御部52は、発電機23に流れる実電流id_g,iq_gが、電流指令id_g*,iq_g*と一致するようにdq軸電圧指令vd_g*,vq_g*を生成する。実電流id_g,iq_gは、発電機23に流れているU相電流iu_g、V相電流iv_gに基づいて、3相/dq変換部59によって生成される。dq/3相変換部53は、dq軸電圧指令vd_g*,vq_g*を、3相の出力電圧指令Vu_g*,Vv_g*,Vw_g*を変換する。
変調率指令生成部56は、3相の出力電圧指令Vu_g*,Vv_g*,Vw_g*と、第1の制御ユニット40のオフセット部46c(具体的には、オフセット値生成部46f)において演算される第1および第2のオフセット値m1_off,m2_offとに基づいて、各相の変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdを生成する。個々の変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdは、「−1」から「1」の範囲の値となる。なお、変調率指令生成部56が行う処理の詳細については後述する。
図21は、インバータ24の上アームSWAおよび下アームSWBのオンオフ状態の説明図である。PWM生成部57は、各相の変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdと、搬送波生成部58にて生成されるキャリア周期Ts(Ts=1/fc)の三角波とを比較して、PWMパルスを生成する。また、変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdはキャリア周期でホールドされる。また、キャリアの振幅は本実施例では「−1」から「1」の範囲とする。インバータ24の各相の上下アームは、PWMパルスをゲート信号として駆動する。具体的には、PWM生成部57は、変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdがキャリアよりも小さい場合、上アームSWAをオフに制御し、下アームSWBをオンに制御する。これに対して、PWM生成部57は、変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdがキャリアよりも大きい場合、上アームSWAをオンに制御し、下アームSWBをオフに制御する。
同図はU相のみについて示すが、他の相についても同様である。なお、同図に示すように、上下アームSWA,SWBが同時にオンとなることがないように、変調率指令mug_cmdを破線で示すようにオフセットさせてキャリアと比較される。これによりアームSWA,SWBの切り替え時にオフセット時間が設定される。
図22は、変調率指令生成部56の構成を示すブロック図である。以下、本実施形態の特徴の一つである変調率指令生成部56について説明する。変調率指令生成部56は、初期変調率指令生成部56aと、オフセット部56bとを有している。
初期変調率指令生成部(発電用変調率生成手段)56aは、3相の出力電圧指令Vu_g*,Vv_g*,Vw_g*を発電電源の電圧Vdc1で規格化する、すなわち、出力電圧指令Vu_g*,Vv_g*,Vw_g*を電圧Vdc1でそれぞれ除算する。これにより、各相の初期変調率指令mug〜mwgがそれぞれ生成される。発電電源の電圧Vdc1は、負極母線13と共通母線15との間の平滑コンデンサ11の電圧として検出することができる。
オフセット部(発電用オフセット手段)56bは、第1および第2のオフセット値m1_off,m2_offと、初期変調率指令mug〜mwgとに基づいて、最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdを演算する。具体的には、オフセット部56bは、初期変調率指令mug〜mwnのそれぞれに第1のオフセット値m1_offを加算することにより、最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdをそれぞれ演算する。
図23は、各相の最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdと、第4の母線電流Ib4と、各相の上アームのスイッチング状態との関係を示す説明図である。同図において、各アームのスイッチは、その導通信号がHighレベルのときにオンとなる。ここで、図20に示すように、直流母線14において平滑コンデンサ12との接続点よりも負荷側における電流を第1の母線電流Ib1とし、直流母線15において平滑コンデンサ11,12との接続点よりも負荷側における電流を第2の母線電流Ib2とする。また、直流母線13において平滑コンデンサ11との接続点よりも負荷側における電流を第3の母線電流Ib3とし、インバータ24の上側アームが接続する直流母線19を流れる電流を第4の母線電流Ib4とする。ここで、第1から第4の母線電流Ib1〜Ib4は、図中の矢印方向(モータ30側へと向かう方向)へ流れる電流を正とする。また、発電機23のU相,V相、W相を流れる電流をそれぞれ電流iu,iv,iwとする。発電機23が発電している場合、第4の母線電流Ib4の極性は正となるが、発電機23が力行している場合、第4の母線電流Ib4のそれは負となる。
まず、インバータ24において、3相の上アームのスイッチがすべてオフとなる区間T1では、3相の下アームのスイッチがすべてオンとなっている。この場合、スイッチ、還流ダイオードおよび発電機23の間で電流が還流し、第4の母線電流Ib4は「0」となる。つぎに、区間T2では、U相がオンすることにより、直流母線19に電流iuが通電され、区間T3においてV相がオンすることで第4の母線電流Ib4は電流iu,ivの和となる。つぎに、区間T4において、3相がすべてオンとなると、3相の上アームのスイッチ、還流ダイオードおよび発電機23との間で電流が還流するために第4の母線電流Ib4は「0」となる。また、区間T5,T6,T7のそれぞれでは、W相、V相、U相のスイッチが順次オフとなるため、上述した区間T3,T2,T1のそれぞれと同様の状態となる。
ここで、最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdの3つが上側にオフセットしている場合には、オフセットしていなケースと比較して、区間T4が長くなり、区間T1,T7が短くなる。その他の区間T2,T3,T5,T6は同じである。これに対して、最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdの3つが下側にオフセットしている場合には、オフセットしていないケースと比較して、区間T4が短くなり、区間T1,T7が長くなる。このようにして、変調率をオフセットさせることで、第4の直流母線の第4の母線電流Ib4の位相を可変的に設定することができる。
電力変換器10の制御において、キャリアと、第1の電源に相当する発電電源に関する最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdおよび第2の電源21に関する最終変調率指令mu2_cmd〜mw2_cmdとが比較される。図24は、最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdに対するオフセットと、第1から第3の母線電流Ib1〜Ib3との関係について説明する。同図において、Vun〜Vwnは、電力変換器10の各相の出力電圧、すなわち、電力変換器10の各相の出力端子と、平滑コンデンサ11の負極との間の電圧を表している。
まず、発電電源側の回路がスイッチングする場合、区間T1ではスイッチ7a,8a,9aがすべてオンとなる。モータ30の巻線と、スイッチ7a,8a,9aおよび逆並列の還流ダイオード7b、8b、9bにおいてモータ電流が還流するため、第1から第3の母線電流Ib1〜Ib3はゼロとなる。区間T2では、スイッチ1aがオンするために、第2の母線電流Ib2は電流「iu」となり、第3の母線電流Ib3は「−iu」となる。区間T3では、スイッチ2aがオンするため、第2の母線電流Ib2は「iu+iv」となり、第3の母線電流Ib3は「−iu−iv」となる。区間T4では、スイッチ3aがオンするため、スイッチ1a,2a,3a、モータ30の巻線および還流ダイオード7b,8b,9bにおいて電流が還流するため第1から第3の母線電流Ib1〜Ib3はすべてゼロとなる。なお、後述する区間T5〜T9に引き続く区間T10〜T13のそれぞれでは、上述した区間T4〜T1のそれぞれと同様の状態となる。
また、発電電源側に引き続き第2の電源21側の回路がスイッチングする場合においても、スイッチングパターンに応じて、図24に示すように第1から第3の直流母線13〜15に電流が流れる。この場合、区間T5,T9では、第1の母線電流Ib1は電流「iu」となり、第2の母線電流Ib2は「−iu」となる。区間T6,T8では、第1の母線電流Ib1は「iu+iv」となり、第2の母線電流Ib2は「−iu−iv」となる。また、区間T9では、第1から第3の母線電流Ib1〜Ib3はゼロとなる。
ここで、第1の電源である発電電源に関する最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdおよび第2の電源21に関する最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdがオフセットしている場合には、区間T1,T4,T7,T10,T13の長さを可変的に設定される。これにより、第1から第3の母線電流Ib1〜Ib3の位相を可変的に設定することができる。図25は第1から第3の母線電流Ib1〜Ib3のシミュレーション結果であり、キャリアに対応して第1から第3の母線電流Ib1〜Ib4が流れていることがわかる。
図26は、第2の母線電流Ib2と第4の母線電流Ib4との同期を説明するための模式図である。コンデンサ11の電流は、第2の母線電流Ib2と第4の母線電流Ib4との差に対応する。そのため、第2の母線電流Ib2と第4の母線電流Ib4とのタイミングを同期させることによって、コンデンサ11に流れる電流を小さくすることができる。そこで、電力変換器10の制御に関する最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdに対するオフセット値m1_offに対応させて、インバータ24の制御に関する最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdのオフセットさせる。第2の母線電流Ib2と第4の母線電流Ib4とがタイミング的に同期するので、コンデンサ11に流入する電流が打ち消される。これにより、コンデンサ11の発熱が抑制され、コンデンサ11を小型化することができる。したがって、装置サイズの小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、直列型変換装置である電力変換器10のキャリア周波数と、発電電力変換器であるインバータ24のキャリア周波数が等しい。この場合、それぞれの最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmd,mug_cmd〜mwg_cmdに対するオフセット値を互いに等しくすることによって、電源部分に流れ込むパルス状電流の打ち消しタイミングを同期させることができる。これにより、コンデンサ11に流れる電流を打ち消すことができる。
(第8の実施形態)
以下、本発明の第8の実施形態にかかる制御システムについて説明する。第8の実施形態にかかる制御システムが、先の第7の実施形態のそれと相違する点は、直列型変換装置である電力変換器10の制御におけるキャリア周波数と、発電電力変換器であるインバータ24の制御におけるキャリア周波数とが相違する点である。本実施形態では、電力変換器10のキャリア周波数がインバータ24のキャリア周波数よりも小さいケースを想定し、具体的には、インバータ24のキャリア周波数が電力変換器10のキャリア周波数の2倍であることとする。以下、第7の実施形態と共通する構成については重複する説明は省略することとし、相違点を中心に説明を行う。
本実施形態において、第2の制御ユニット50の変調率指令生成部56は、初期変調率指令生成部56aと、オフセット部56bとを有している。初期変調率指令生成部56aは、3相の出力電圧指令Vu_g*,Vv_g*,Vw_g*を発電電源の電圧Vdc1でそれぞれ規格化する。これにより、各相の初期変調率指令mug〜mwgが生成される。オフセット部56bは、第1の制御ユニット40において演算される第1および第2のオフセット値m1_off,m2_offと、初期変調率指令mug〜mwgとに基づいて、最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdを演算する。具体的には、オフセット部56bは、下式に基づいて、最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdをそれぞれ演算する。
図27および図28は、第2の母線電流Ib2と第4の母線電流Ib4との同期を説明するための説明図である。ここで、図27は、電力変換器10の制御における発電電源に関する最終変調率指令mu1_cmd〜mw1_cmdに対するオフセット値m1_cmdに基づいて、インバータ24の制御における最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdを等しくオフセットさせた場合の説明図である。この場合、第2の母線電流Ib2と、第4の母線電流Ib4とがタイミング的に異なるために、コンデンサ11における電流の打消しが発生しない。
そこで、本実施形態では、オフセット部56bは、オフセット値m1_offに係数1/2を乗算した値に基づいて、初期変調率指令mug〜mwgをオフセットさせている。これにより、図28に示すように、第2の母線電流Ib2と、第4の母線電流Ib4とをタイミング的に対応させることができるので、コンデンサ電流を打ち消すことができる。
なお、電力変換器10のキャリア周波数と、インバータ24のキャリア周波数とをパラメータとして、実験やシミュレーションを通じて、適切な変調率オフセット値をテーブル化する。これにより、どのようなキャリア周波数の組み合わせに対してもコンデンサ電流を打ち消すオフセット値を設定することができる。
(第9の実施形態)
以下、本発明の第9の実施形態にかかる制御システムについて説明する。第9の実施形態にかかる制御システムが、先の第7の実施形態のそれと相違する点は、直列型変換装置である電力変換器10の制御におけるキャリア周波数と、発電電力変換器であるインバータ24の制御におけるキャリア周波数とが相違する点である。本実施形態では、電力変換器10のキャリア周波数がインバータ24のキャリア周波数よりも大きいケースを想定し、具体的には、電力変換器10のキャリア周波数がインバータ24のキャリア周波数の2倍であることとする。以下、第7の実施形態と共通する構成については重複する説明は省略することとし、相違点を中心に説明を行う。
本実施形態において、第2の制御ユニット50の変調率指令生成部56は、初期変調率指令生成部56aと、オフセット部56bとを有している。初期変調率指令生成部56aは、3相の出力電圧指令Vu_g*,Vv_g*,Vw_g*を発電電源の電圧Vdc1でそれぞれ規格化する。これにより、各相の初期変調率指令mug〜mwgが生成される。オフセット部56bは、第1の制御ユニット40において演算される第1および第2のオフセット値m1_off,m2_offと、初期変調率指令mug〜mwgとに基づいて、最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdを演算する。具体的には、オフセット部56bは、下式に基づいて、最終変調率指令mug_cmd〜mwg_cmdをそれぞれ演算する。
つぎに、第1の制御ユニット40の搬送波生成部48と、第2の制御ユニット50の搬送波生成部58とにおいて、図29に示すように、電力変換器10の制御におけるキャリアの最小値と、インバータ24の制御におけるキャリアの最小値とがタイミング的に同期するようにキャリア位相を設定する。
かかる構成によれば、第2の母線電流Ib2と、第4の母線電流Ib4とのタイミングを同期させ、コンデンサ電流を小さくすることができる。
なお、図30に示すように、電力変換器10の各電源の最終変調率指令mu1_cmd〜mw2_cmdを、キャリアの最大値もしくは最小値と等しくなるまでオフセットさせる、いわゆる二相変調の場合に、上述した手法により、コンデンサ電流を打ち消してもよい。
以上、本発明にかかる各実施形態を説明したが、本発明は、その発明の範囲内において種々の変更が可能である。また、各実施形態は、それぞれ独立して説明したが、各実施形態を相互に組み合わせて実施することも可能である。