JP5016955B2 - 単孔中空粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、単孔中空粒子及びその製造方法に関する。
従来から、樹脂粒子が、化粧品、電子写真用トナー、担体、塗料、インキ、樹脂改質剤、マイクロカプセル、軽量骨材の充填材などの幅広い分野で使用されている。
このような樹脂粒子の製造方法としては、特許文献1に、疏水性のモノマーより選択される1種または2種以上の原料モノマーを分散媒である水系中で重合するにあたり、モノマー相には非イオン界面活性剤また水槽にはイオン性界面活性剤を含有させて水相/モノマー相/水相型の多重エマルジョンを形成させた後、疏水性のモノマーに可溶な重合開始剤により重合させる球状の空胞を有する球状重合体の製造法が開示されている。
しかしながら、上記球状重合体の製造方法では、水相及びモノマー相の何れにも多量の界面活性剤が添加されており、得られた球状重合体から界面活性剤を溶剤によって除去する必要があり、製造工程が煩雑であるといった問題点を有している。
そして、球状重合体からの界面活性剤の除去が不充分であると、球状重合体を化粧品や塗料に配合した場合に製品の安定性を損ねたり、或いは、変質の原因になるといった問題点も有していた。
又、特許文献2には、疎水性ビニル系モノマー70〜99.5重量部と、親水性基を有するビニル系モノマー0.5〜30重量部と、重合開始剤とからなる油相を、分散安定剤を含む水相中に分散させて懸濁重合させることにより中空を有する樹脂粒子を得る中空樹脂粒子の製造方法が開示されており、界面活性剤を用いていないものの、得られる中空樹脂粒子中には多数の微細な気泡部が形成されているに過ぎず、更に、疎水性ビニル系モノマーと親水性基を有するビニル系モノマーとの共重合体に限定されるといった問題点を有していた。
更に、特許文献3には、スチレンモノマー100重量部と多官能重合性単量体5〜100重量部とからなる単量体混合物に、該単量体混合物100重量部に対して、セルロース樹脂0.5〜5重量部を溶解させた溶解液を、水系分散媒体中に分散させ、次いで前記単量体混合物を重合する中空粒子の製造方法が開示されているものの、上記中空樹脂粒子の製造方法と同様に、得られる中空粒子は、その内部に多数の微細な気泡部が形成されているに過ぎない。
又、特許文献4には、重合体コア粒子と、数平均粒子径が該コア粒子の数平均粒子径の1/5以下である無機質粒子とを気流中で高速撹拌して無機質粒子によって被覆層が形成された複合粒子を形成し、次いで該複合粒子を加熱することにより重合体を分解させ、粒子内部に空孔を形成する球状無機質中空粒子の製造方法が開示されているものの、無機質粒子による被覆工程と、複合粒子を構成している重合体の加熱分解する工程とを必要とし、煩雑であるといった問題点を有していた。
特公平3−36041号公報 特開2004−292596号公報 特開2006−265394号公報 特開平5−138009号公報
本発明は、簡単な製造方法で得ることできる単孔中空粒子及びその製造方法を提供する。
本発明の単孔中空粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体97〜100重量%及び多官能ビニル単量体0〜3重量%を含有するビニル単量体を重合させてなる重合体100重量部と、表面に疎水化処理を施した疎水化度が10〜90%の金属酸化物0.5〜40重量部とを含有し、且つ、内部に中空部を一つ有することを特徴とする。
上記単孔中空粒子を構成する重合体は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、必要に応じて所定量の多官能ビニル単量体とを含むビニル単量体を重合させてなる。
又、上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
更に、上記ビニル単量体には多官能ビニル単量体が必要に応じて含有されていてもよい。このような多官能ビニル単量体としては、特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。なお、アルキレングリコールジメタクリレートのアルキレンの炭素数は2〜4が好ましい。
そして、ビニル単量体中に多官能ビニル単量体を含有する場合における多官能ビニル単量体の含有量は、多いと、多官能ビニル単量体は反応性が高いために、ビニル単量体の重合時においてビニル単量体の液滴の粘度が短時間のうちに高くなり、ビニル単量体の液滴同士の合一ができなくなってビニル単量体の液滴中に水系分散媒体を取り込めなくなり、単孔中空粒子を得ることができないことがあるので、ビニル単量体中、3重量%以下が好ましい。
又、本発明の単孔中空粒子は金属酸化物を含有している。このような金属酸化物としては、特に限定されず、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などが挙げられ、酸化チタンが好ましい。
そして、上記金属酸化物の表面は元来親水性であるところ、本発明においては、金属酸化物の表面には疎水化処理が施されており、このような疎水化処理としては、特に限定されず、金属酸化物の表面を疎水性化合物で被覆する方法や、金属酸化物の表面に疎水性化合物をカップリングさせて疎水化する方法などが挙げられる。
上述のように金属酸化物の表面に疎水化処理を施すのは、金属酸化物が元来有している親水性によって水系分散媒体との馴染み性を確保しつつ、金属酸化物の表面に施した疎水化処理によって上記ビニル単量体との馴染み性を確保するためであり、金属酸化物の表面に親水性及び疎水性の双方の性質を併存させることによって、この金属酸化物の作用により、ビニル単量体の液滴中への水系分散媒体の取り込みを可能にしている。従って、金属酸化物の表面に疎水化処理を施すにあたっては、金属酸化物の表面を完全に疎水化するのではなく、金属酸化物の表面の親水性を一部残存させた状態に金属酸化物の表面を疎水化する必要がある。
そして、金属酸化物の疎水化度は、低いと、ビニル単量体との馴染み性が低下して金属酸化物をビニル単量体中に安定的に分散させることができないことがある一方、高いと、ビニル単量体の液滴中に金属酸化物の作用によって水系分散媒体を取り込むことができないことがあるので、10〜90%に限定され、20〜90%が好ましく、30〜80%がより好ましい。
なお、金属酸化物の疎水化度はメタノール法によって測定され、具体的には、下記の要領で測定されたものをいう。先ず、金属酸化物0.2gを500ミリリットルのビーカーに供給した後に蒸留水50ミリリットルを供給して、ビーカー内に長さ30mmの撹拌子を入れマグネチックスターラー(アズワン社製 商品名「パソリナスターラーCT−1型 」、目盛設定:5)で撹拌しながら、ビーカー内の水面よりも下側にメタノールを注入した。
そして、ビーカー内の液面上に金属酸化物が認められなくなった点を終点とし、この終点に至るまでにビーカー内に供給したメタノール量(Xミリリットル)を測定し、下記式に基づいて金属酸化物の疎水化度を算出した。
疎水化度(%)=100×(X/(50+X))
単孔中空粒子中における金属酸化物の含有量は、少ないと、粒子中に中空部が形成されていない粒子が多数、発生する一方、多いと、ビニル単量体の重合時に分散性が安定せず、単孔中空粒子を得ることができないので、上記ビニル単量体を重合させてなる重合体100重量部に対して0.5〜40重量部に限定され、3〜30重量部が好ましい。
更に、本発明の単孔中空粒子内には中空部が一つのみ形成されている。このように中空部を一つのみ有することによって、中空部に多量の内包物を収納することができる一方、中空部を空の状態とすることによって軽量性に優れたものとすることができる。
そして、単孔中空粒子の中空部は下記の通りに定義される。先ず、単孔中空粒子をその重心を通る面にて二分割し、この分割面を電子顕微鏡で撮影して顕微鏡写真を得る。
上記顕微鏡写真に表れた単孔中空粒子の断面を包囲し得る最小径の真円を描き、この真円の直径を単孔中空粒子の直径D1とする。次に、上記顕微鏡写真に表れた単孔中空粒子の空間部を包囲し得る最小径の真円を描き、この真円の直径を単孔中空粒子の空間部の直径D2とする。そして、単孔中空粒子の空間部の直径D2が、単孔中空粒子の直径D1の60%以上である場合、単孔中空粒子の空間部を中空部とする。単孔中空粒子の空間部の直径D2が、単孔中空粒子の直径D1の60%未満であると、単孔中空粒子の空間部内に多量の内包物を収納できないか、或いは、単孔中空粒子の軽量性が低下するからであり、単孔中空粒子の空間部(中空部)の直径D2が、単孔中空粒子の直径D1の65〜95%であることが好ましい。
次に、上記単孔中空粒子の製造方法について説明する。先ず、(メタ)アクリル酸エステル系単量体に必要に応じて多官能ビニル単量体が添加されてなるビニル単量体100重量部と、表面に疎水化処理が施された金属酸化物0.5〜40重量部と、重合開始剤とを水系分散媒体中に分散させる。なお、ビニル単量体中に金属酸化物及び重合開始剤を分散させて分散液とし、この分散液を水系分散媒体中に分散させてもよい。
なお、上述と同様の理由で、ビニル単量体中における(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有量は97〜100重量%に、多官能ビニル単量体の含有量は0〜3重量%に限定され、表面に疎水化処理が施された金属酸化物はビニル単量体100重量部に対して0.5〜40重量部に限定され、3〜30重量部が好ましい。
ビニル単量体、表面に疎水化処理が施された金属酸化物及び重合開始剤を水系分散媒体中に分散させる方法としては、例えば、プロペラ翼などの撹拌力によって分散する方法、ローターとステーターから構成され且つ高剪断力を利用する分散機であるホモミキサー、超音波分散機などを用いる方法、マイクロフルイダイザー、ナノマイザーなどのビニル単量体の液滴同士の衝突や機壁への衝突力を利用した高圧型分散機を用いる方法が挙げられる。
上記水系分散媒体としては、例えば、水、水と水溶性有機媒体との混合物などが挙げられ、水が好ましい。なお、水溶性有機媒体としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコールなどが挙げられる。
そして、水系分散媒体中における水の量としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体に必要に応じて多官能ビニル単量体が添加されてなるビニル単量体、表面に疎水化処理が施された金属酸化物及び重合開始剤の総量100重量部に対して100〜1000重量部が好ましい。水系分散媒体中に上述の程度の水が含有されておれば、ビニル単量体の重合を安定的に行うことができる。
上記重合開始剤としては、通常、懸濁重合に用いられるものであれば、特に限定されず、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、オルソクロロベンゾイルパーオキサイド、オルソメトキシベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ系重合開始剤などが挙げられ、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
そして、重合開始剤の添加量は、通常、ビニル単量体100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5.0重量部がより好ましい。
更に、上記水系分散媒体中には分散安定剤が添加されてもよい。上記分散安定剤としては、特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの難水溶性無機塩、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、珪酸マグネシウムナトリウムなどの無機高分子物質などが挙げられる。
上記分散安定剤は、得られる単孔中空粒子の粒子径や、ビニル単量体の重合時の分散安定性などを考慮して選択され、添加量も調整される。具体的には、分散安定剤の添加量は、ビニル単量体100重量部に対して0.5〜20重量部が好ましい。
更に、水系分散媒体中に分散安定剤に加えて界面活性剤が添加されてもよい。このような界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
上記アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリなどの脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などが挙げられる。
又、上記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。
そして、上記カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
更に、上記両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどが挙げられる。
上記界面活性剤は、得られる単孔中空粒子の粒子径や、ビニル単量体の重合時の分散安定性などを考慮して選択され、添加量も調整される。具体的には、界面活性剤の添加量は水系分散媒体100重量部に対して0.001〜0.1重量部が好ましい。
更に、水系分散媒体中には、ビニル単量体の重合を抑制して適正に重合を行うために水溶性重合禁止剤を添加してもよい。このような水溶性重合禁止剤としては、特に限定されず、例えば、亜硝酸塩類、ハイドロキノンなどが挙げられる。そして、水溶性重合禁止剤の添加量としては、水系分散媒体100重量部に対して0.001〜1重量部が好ましい。
次に、水系分散媒体中を撹拌しながら加熱して重合開始剤を分解させてビニル単量体を懸濁重合させる。なお、水系分散媒体の加熱温度としては、通常、30〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。又、ビニル単量体の重合時間は、0.1〜20時間が好ましい。
しかるに、水系分散媒体中には、ビニル単量体と金属酸化物とが存在しており、金属酸化物はその表面に疎水化処理が施されており、金属酸化物は、その表面に親水性を有する部分と疎水性を有する部分の双方を有している。
そして、金属酸化物は、その疎水性部分の作用によってビニル単量体との馴染み性に優れており、ビニル単量体中に円滑に分散する一方、親水性部分の作用によって水系分散媒体との馴染み性にも優れている。
従って、ビニル単量体を水系分散媒体中において撹拌しながら重合するにあたり、ビニル単量体の液滴同士は水系分散媒体中において衝突を繰り返しながら重合する。その過程で、ビニル単量体の液滴の一部が互いに合一して一体化するが、この際、ビニル単量体の重合がある程度進行してビニル単量体の液滴がある程度の粘度を有してくると、ビニル単量体中に分散している金属酸化物は水系分散媒体との馴染み性に優れていることから、ビニル単量体の液滴が合一する過程において金属酸化物が水系分散媒体の一部を取り込み、この取り込まれた水系分散媒体は、適度な粘度を有するビニル単量体の液滴によって内包された状態となる。
そして、ビニル単量体の液滴に内方された水系分散媒体は、当初はビニル単量体の液滴内に微分散した状態となっているが、ビニル単量体の液滴が水系分散媒体内において撹拌されて変形し、更に、ビニル単量体の液滴同士が合一する過程で、ビニル単量体の液滴に内包されている水系分散媒体同士が合一してビニル単量体の液滴内において一つの塊となっていく。
しかして、ビニル単量体の液滴はその中央部に水系分散媒体の塊を形成しつつ、ビニル単量体の重合が進行し、水系分散媒体からなる一つの塊を中央部に内包した樹脂粒子を得ることができる。
そして、ビニル単量体の液滴は水系分散媒体中において撹拌されながら重合するので、ビニル単量体の液滴に内包された水系分散媒体の塊は、ビニル単量体の液滴内に偏在することなく略中央部に位置した状態を維持しながら、ビニル単量体の重合は進行し、その結果、水系分散媒体からなる一つの塊は、得られる樹脂粒子の略中央部に位置している。
しかる後、吸引濾過、遠心分離などの汎用の手段を用いて水系分散媒体中から樹脂粒子を分離し、イオン交換水による洗浄を行った後に乾燥させて、樹脂粒子中に内包している水系分散媒体を蒸発、除去させて、内部に中空部を一つのみ有する単孔中空粒子を得ることができる。
このようにして得られた単孔中空粒子は、その中空部に所望物質を収納して用いたり、或いは、中空部を空の状態として軽量性に優れた充填材として用いることができる。本発明の単孔中空粒子は、具体的には、化粧品のすべり性付与剤、電子写真用トナー、担体、塗料、インキ、樹脂改質剤、マイクロカプセル、軽量骨材などに用いることができる。
本発明の単孔中空粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体97〜100重量%及び多官能ビニル単量体0〜3重量%を含有するビニル単量体を重合させてなる重合体100重量部と、表面に疎水化処理を施した疎水化度が10〜90%の金属酸化物0.5〜40重量部とを含有し、且つ、内部に中空部を一つ有することを特徴とするので、中空部に所望物質を収納して用い、或いは、中空部を空の状態で用いることにより軽量性が要求される種々の用途に幅広く用いることができる。
そして、本発明の単孔中空粒子の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体97〜100重量%及び多官能ビニル単量体0〜3重量%を含有するビニル単量体100重量部と、表面に疎水化処理を施した疎水化度が10〜90%の金属酸化物0.5〜40重量部とを水系分散媒体中に分散させて上記ビニル単量体を重合させて樹脂粒子を製造し、上記樹脂粒子を加熱して該樹脂粒子中の水系分散媒体を蒸発、除去することを特徴とするので、表面に疎水化処理が施されて表面に親水性及び疎水性の双方の性質を有する金属酸化物の作用によって、ビニル単量体の液滴中に水系分散媒体の一部を円滑に取り込み、ビニル単量体の液滴内に水系分散媒体からなる塊を形成しつつビニル単量体の重合を行うことができ、その結果、得られる樹脂粒子中には、その内部に水系分散媒体からなる一つの塊が形成されており、この水系分散媒体を蒸発、除去することによって、内部に中空部を一つのみ有する単孔中空粒子を容易に製造することができる。
(実施例1)
水500重量部に分散安定剤としてポリビニルアルコール2重量部を溶解させてなる水溶液を1000ミリリットルのセパラブルフラスコに供給した後、水溶液中に水溶性重合禁止剤として亜硝酸ナトリウム0.05重量部を供給して溶解させて水系分散媒体を作製した。
上記とは別に、メタクリル酸メチル100重量部中に、表面に疎水化処理が施された疎水化度が65%の二酸化チタン(堺化学工業製 商品名「STR60C−LP」)25重量部を供給して混合した後、超音波ホモジナイザーを用いて二酸化チタンをメタクリル酸メチル中に均一に分散させて分散液を作製した。この分散液中に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5重量部を更に供給して均一に溶解させた。
得られた分散液を上記水系分散媒体に供給した後、セパラブルフラスコに撹拌翼、温度計及び還流冷却器を取り付けてセパラブルフラスコ内を窒素パージし、セパラブルフラスコ内の水系分散媒体を撹拌速度250rpmにて撹拌しながら60℃に加熱してメタクリル酸メチルを10時間に亘って重合した。
次に、メタクリル酸メチルの重合が終了したことを確認した後にセパラブルフラスコ内の水系分散媒体を冷却した後、濾紙を用いて水系分散媒体中に分散している樹脂粒子を吸引濾過して分離し、樹脂粒子を5リットルのイオン交換水で洗浄して分散安定剤を除去した。
しかる後、樹脂粒子を60℃に保持されたオーブン中に供給して24時間に亘って乾燥して樹脂粒子内部に内包している水分を蒸発、除去して平均粒径が600μmの球状の単孔中空粒子を得た。得られた単孔中空粒子をその重心を通る平面にて切断して電子顕微鏡を用いて観察したところ、図1に示したように、中空部が一つのみ、単孔中空粒子の中央部に形成されていた。単孔中空粒子の中空部の直径は、単孔中空粒子全体の直径の72%であった。
(実施例2)
表面に疎水化処理が施された疎水化度が65%の二酸化チタンを25重量部の代わりに5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして平均粒径が600μmの球状の単孔中空粒子を得た。得られた単孔中空粒子をその重心を通る平面にて切断して電子顕微鏡を用いて観察したところ、図2に示したように、中空部が一つのみ、単孔中空粒子の中央部に形成されていた。単孔中空粒子の中空部の直径は、単孔中空粒子全体の直径の88%であった。
(実施例3)
メタクリル酸メチル100重量部の代わりに、メタクリル酸メチル99重量部及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)1重量部の混合単量体を用いたこと以外は実施例1と同様にして平均粒径が500μmの球状の単孔中空粒子を得た。得られた単孔中空粒子をその重心を通る平面にて切断して電子顕微鏡を用いて観察したところ、図3に示したように、中空部が一つのみ、単孔中空粒子の中央部に形成されていた。単孔中空粒子の中空部の直径は、単孔中空粒子全体の直径の90%であった。
(実施例4)
二酸化チタンを25重量部の代わりに1重量部としたこと以外は実施例1と同様にして平均粒径が300μmの球状の単孔中空粒子を得た。得られた単孔中空粒子をその重心を通る平面にて切断して電子顕微鏡を用いて観察したところ、中空部が一つのみ、単孔中空粒子の中央部に形成されていた。単孔中空粒子の中空部の直径は、単孔中空粒子全体の直径の70%であった。
(実施例5)
二酸化チタンとして、表面に疎水化処理が施された疎水化度が51%の二酸化チタン(堺化学工業社製 商品名「STR100A−LP」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして平均粒径が400μmの球状の単孔中空粒子を得た。得られた単孔中空粒子をその重心を通る平面にて切断して電子顕微鏡を用いて観察したところ、中空部が一つのみ、単孔中空粒子の中央部に形成されていた。単孔中空粒子の中空部の直径は、単孔中空粒子全体の直径の80%であった。
(比較例1)
二酸化チタンを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸メチルの重合を行って平均粒径が300μmの樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子の内部は中実で中空部は形成されていなかった。
(比較例2)
メタクリル酸メチル100重量部の代わりに、メタクリル酸メチル95重量部及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)5重量部の混合単量体を用いたこと以外は実施例1と同様にして平均粒径が350μmの樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子をその重心を通る平面にて切断して電子顕微鏡を用いて観察したところ、図4に示したように、内部は中実で中空部は形成されていなかった。
(比較例3)
二酸化チタンとして、表面に疎水化処理が施されていない疎水化度が0%の二酸化チタン(テイカ株式会社製 商品名「MT−100SA」)を用いて実施例1と同様にして単孔中空粒子を製造しようとしたが、二酸化チタンがメタクリル酸メチル中に分散せず、メタクリル酸メチルの重合過程において二酸化チタンが分離してメタクリル酸メチルの液滴から脱落した。得られた樹脂粒子は球状であったが、その内部は中実で中空部は形成されていなかった。
(比較例4)
二酸化チタンを25重量部の代わりに0.1重量部としたこと以外は実施例1と同様にして平均粒径が300μmの樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子をその重心を通る平面にて切断して電子顕微鏡を用いて観察したところ、図5に示したように、内部は中実で中空部は形成されていなかった。
(比較例5)
二酸化チタンを25重量部の代わりに50重量部としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を製造しようとしたが、得られた分散液を水系分散媒体に供給して撹拌する際に分散不良が発生して球状の樹脂粒子を得ることはできなかった。
実施例1で得られた単孔中空粒子の切断面を写した顕微鏡写真である。 実施例2で得られた単孔中空粒子の切断面を写した顕微鏡写真である。 実施例3で得られた単孔中空粒子の切断面を写した顕微鏡写真である。 比較例2で得られた単孔中空粒子の切断面を写した顕微鏡写真である。 比較例4で得られた単孔中空粒子の切断面を写した顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. (メタ)アクリル酸エステル系単量体97〜100重量%及び多官能ビニル単量体0〜3重量%を含有するビニル単量体を重合させてなる重合体100重量部と、表面に疎水化処理を施した疎水化度が10〜90%の金属酸化物0.5〜40重量部とを含有し、且つ、内部に中空部を一つ有することを特徴とする単孔中空粒子。
  2. 金属酸化物が酸化チタン、酸化アルミニウム、及び、酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の単孔中空粒子。
  3. 金属酸化物が酸化チタンであることを特徴とする請求項2に記載の単孔中空粒子。
  4. (メタ)アクリル酸エステル系単量体97〜100重量%及び多官能ビニル単量体0〜3重量%を含有するビニル単量体100重量部と、表面に疎水化処理を施した疎水化度が10〜90%の金属酸化物0.5〜40重量部とを水系分散媒体中に分散させて上記ビニル単量体を重合させて樹脂粒子を製造し、上記樹脂粒子を加熱して該樹脂粒子中の水系分散媒体を蒸発、除去することを特徴とする単孔中空粒子の製造方法。
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