JP5016020B2 - おりものシート - Google Patents

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Description

本発明は、おりものシート(パンティライナー)や生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
従来、おりものシートや生理用ナプキン等の体液吸収性物品は、透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、これら両シートの間に介在する吸液性コアとで構成されている。表面シートとしては、不織布や穿孔された合成樹脂フィルムが使用される。そして、表面シートとして、導液管を有する開孔シートや、畝溝構造を有するシート等の様々な形状を付与したものを用いることで、吸収性を向上させる提案がなされている(例えば特許文献1参照)。また、表面シートと吸液性コアとの間に親水性繊維シートを配し、該表面シート及び該親水性繊維シートに特定の親水性勾配を付与することで、一旦吸収された体液が表面シートへ逆戻りする現象(液戻り)や表面シート上での液流れを抑制する提案もなされている(例えば特許文献2参照)。
特開2007−175515号公報 特開2005−87659号公報
特許文献1には、前記表面シートとして、前記吸液性コアから上方へ隆起して物品の第1方向へ延びると共に該第1方向と直交する物品の第2方向へ所与寸法離間して並ぶ複数条の凸部と、該凸部の間を該横方向へ延びる複数条の凹部と、その厚み方向へ貫通して体液が通過可能な多数の開孔部とを有する表面部材を採用した体液処理物品が記載されている。しかし、特許文献1に記載の体液処理物品は、前記凸部が物品の特定の一方向に延びていることなどにより、液の拡散性が高く、特に経血等の粘性の比較的高い体液が、着用時に着用者の肌に接する前記凸部の頂部やその近傍の内部に入り込み易い。また、前記表面部材の下方に位置する前記吸収性コアの下部層の繊維密度が高いことが前記凸部の頂部への液の入り込みを助長しやすく、このため、特許文献1に記載の体液処理物品は、べたつきが発生し易いという問題があった。
特許文献2には、前記表面シートの裏面側に表面側よりも高い親水度を付与すること、及び前記親水性繊維シートの吸液性コア側の面に該表面シート側の面よりも高い親水度を付与することが記載されている。しかし、特許文献2に記載の吸収性物品は、表面シートの裏面側を境界として厚み方向上方と下方とで親水性勾配が逆になっているため(特許文献2の〔0032〕並びに図3及び図4の記載等参照)、特に経血等の粘性の比較的高い体液の厚み方向への移動が阻害され易く、前記境界での液広がりや液が留まることによるべたつきが発生し易いという問題があった。
本発明の目的は、べたつき感がなく、快適に使用できる吸収性物品を提供することにある。
本発明は、肌当接面側に表面シートを備えた縦長の吸収性物品において、前記表面シートは、前記吸収性物品の長手方向に延びる畝部及び溝部を交互に有し且つ該溝部に開孔を有する不織布からなり、該不織布の構成繊維の接触角度が60〜85°であり、前記表面シートの非肌当接面側に、前記溝部に比べて繊維密度が低い低密度シートが、該表面シートに隣接して配されている吸収性物品を提供することにより、前記目的を達成したものである。
本発明の吸収性物品は、液吸収性に優れ、経血等の粘性の高い体液を着用者に不快感を与えないように吸収保持することができるため、べたつきが発生し難く、着用感等の使用感が良好である。
図1は、本発明の一実施形態であるおりものシートの肌当接面側(表面シート側)を示す平面図である。 図2は、図1におけるI−I線断面の模式図である。 図3は、図2の一部を拡大して示す拡大断面模式図である。 図4は、本発明の他の実施形態の図3相当図である。 図5は、図1に示すおりものシートに用いられる表面シートの要部を拡大して模式的に示す斜視図である。 図6は、図5におけるII−II線断面の模式図である。 図7は、図1に示すおりものシートに用いられる表面シートの他の断面の状態を示す図6相当図である。 図8は、図5に示す表面シートを製造する装置の一例を示す模式図である。 図9は、図8における流体透過性支持体を示す斜視図である。 図10は、図8に示す装置を用いた表面シートの製造過程を示す模式図である。 図11は、接触角度の測定方法を説明するための図であり、(a)及び(b)は、接触角度が好ましく計測された図である。尚、(a')及び(b')は、繊維上の液滴が蒸発したあとの繊維を示す図であり、水滴との境界部における繊維表面の接線を計測するために用いる。
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるおりものシートをその表面シート側からみた平面図が示されている。図2は、図1におけるI−I線断面を模式的に示した図である。
本実施形態のおりものシート1は、図1に示すように、平面視して縦長の形状を有し、全体として長手方向中央部が内方に括れている。おりものシート1は、肌当接面側に位置する表面シート10、及び非肌当接面側に位置する裏面シート11を備えている。表面シート10の非肌当接面側には、後述する低密度シート12が、該表面シート10に隣接して配されている。即ち、低密度シート12は、両シート間10,11に介在配置されている。低密度シート12は平面視して縦長の形状をしている。
表面シート10及び裏面シート11は、低密度シート12の外周縁部から外方に延出しており、延出した両シート10,11が熱処理によって互いに接合されることにより、シール部15が形成されている。シール部15は、おりものシート1の外周縁全体に亘って形成されている。おりものシート1の幅方向中央域における非肌当接面、即ち裏面シート11の表面には、おりものシート1を下着に固定するための粘着部(図示せず)が、おりものシート1の長手方向に延びるように形成されている。
本明細書において、「長手方向」は、吸収性物品又吸収性物品を構成する各種部材の長辺に沿う方向(図1では上下方向)であり、「幅方向」は、該長手方向と直交する方向(図1では左右方向)である。また、「肌当接面」は、吸収性物品又吸収性物品を構成する各種部材における、吸収性物品着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、「非肌当接面」は、吸収性物品又吸収性物品を構成する各種部材における、吸収性物品着用時に下着側(着用者の肌側とは反対側)に向けられる面である。
図5には、表面シート10の要部拡大図が示されている。図6は、図5におけるII−II線断面図である。図5中、Yで示す方向がおりものシート1の長手方向であり、Xで示す方向がおりものシート1の幅方向である。図5及び図6に示す表面シート10は、第1の面10aと、これに対向する第2の面10bとを有する。第1の面10aは、表面シート10が、おりものシートや生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品に組み込まれたときに、着用者の肌側を向く面である。第2の面10bは、低密度シート12側を向く面である。表面シート10は、おりものシート1の長手方向Yに延びる畝部20及び溝部30を交互に有し且つ該溝部30に開孔31を有する不織布からなる。畝部20及び溝部30は、それらの延びる方向Yと直交する方向Xに亘って交互に配列されている。
畝部20は、表面シート10の構成繊維で満たされている。つまり畝部20内には空洞は存在していない。同様に、溝部30のうち、後述する開孔31が形成されていない部位は、表面シート10の構成繊維で満たされている。但し、後述するように、畝部20の繊維量と、溝部30の繊維量とは相違しており、溝部30に比べて畝部20の方が繊維量が実質的に多くなされている。
畝部20は、表面シート10における相対的に厚みの大きな部位から構成されており、溝部30は、表面シート10における相対的に厚みの小さな部位から構成されている。その結果、畝部20の実質厚みは、溝部30の厚みよりも大きい。ここで実質厚みとは、表面シート10の裏面から各々の最上部までの長さ(見掛け厚み)ではなく、表面シート10の繊維が存在する部分の長さを意味する。
図6に示すように、畝部20は、その延びる方向と直交する方向(図中、Xで示す方向)での断面において、第1の面10aの側は、上に凸の滑らかな曲線を描く輪郭となっている。畝部20における第1の面10aの側は、第2の面10bの側よりも高く盛り上がっており、これが周期的に連続している。これによって第1の面10aの側は、X方向に沿って波形形状になっている。従って、表面シート10の第1の面10a側が着用者の肌と接する場合には、畝部20の頂部及びその近傍の領域が部分的に接触することになり、全面接触に起因する蒸れによるべたつき感や、こすれに起因する刺激感が低減される。また、着用者から排泄された液が、着用者の肌に付着しづらくなる。
一方、第2の面10bの側は、下に凸の滑らかで且つ緩やかな曲線を描く輪郭となっている。したがって表面シート10の低密度シート12との対向面のうち、畝部20に位置する部位は、表面シート10の下側に配される低密度シート12と、面で以て接触するようになる。これによって、表面シート10に排泄された液は、該表面シート10における畝部20を透過して、円滑に低密度シート12へと移行することが可能になる。その結果、表面シート10の第1の面10aは、さらっとしたドライ感の高いものとなる。
畝部20の形状は上述の形状に限られず、例えば図7(a)に示すように、第2の面10bの側が、上に凸の滑らかでかつ緩やかな曲線を描く輪郭となっている場合や、図7(b)に示すように、第2の面10bの側が平坦である場合もある。このような形状の相違は、主として表面シート10の製造条件に依存する。
図6に示すように、畝部20は、X方向での断面において、第1の面10a側に頂部21を有し、この部位において実質厚みが最も大きくなっている。そして、X方向に関し、頂部21から離れるに連れ実質厚みが漸減している。したがって、表面シート10は、そのX方向に沿ってみたときに、実質厚みが周期的に変化したものとなっている。図には示していないが、畝部20は、その延びる方向(図6中、紙面と直交する方向)において、頂部21における実質厚みが何れの位置においてもほぼ同じになっている。本実施形態の表面シート10において、畝部20と溝部30との間に明確な境界部は存在せず、一般に、X方向に関して隣り合う2つの頂部21間に位置する最も実質厚みの小さい部位及びその近傍の部位が溝部30となる。畝部20と溝部30との境界を明確に定義する場合には、畝部20の頂部21における見掛け厚みの1/2の厚みの位置を、畝部20と溝部30との境界部とする。
畝部20の見掛け厚みは、表面シート10の肌触りを良好にする観点から、好ましくは0.3〜5mmであり、更に好ましくは0.5〜2.5mmである。畝部20と溝部30との高低差D(図6参照)は、表面シート10のクッション性及び通気性を高め、更に液の拡散を制御する観点から、0.1〜3mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。畝部20及び溝部30の厚みや高低差Dは、マイクロスコープVH‐8000(キーエンス製)を用い、表面シート10の断面を50倍〜200倍に拡大観察して測定する。断面は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用い、表面シート10を切断して得る。
表面シート10のX方向における畝部20の幅は、肌触りと吸収性の観点から、1〜10mmが好ましく、2〜5mmがより好ましい。同様の観点から、表面シート10のX方向における溝部30の幅は、0.5〜7mmが好ましく、1〜3mmが好ましい。本実施形態においては、畝部20と溝部30は同じ幅で形成されているが、これに限られず例えば表面シート10のX方向の中央域における畝部20の幅を、側部域における畝部20の幅よりも広くしてもよい。あるいは、畝部20及び溝部30の幅をランダムにするなど、所望の形態とすることができる。
畝部20の実質厚みは、見掛け厚みの60〜100%、特に70〜100%であることが好ましい。畝部20の実質厚みそれ自体は、最も大きい部位(頂部21)において0.2〜4mm、特に0.3〜3mmであることが好ましい。畝部20がこのような厚みであると、畝部20が倒れにくくなり、表面シート10のクッション性が良くなり、更に液の吸収性(液通過性)が良好となる。また、畝部20の実質厚みが、見掛け厚みより薄い場合、具体的には90%以下の場合には、おりものシート1の使用時に、該おりものシート1が湾曲形状に変形しても、表面シート10と低密度シート12との間に生じる隙間が大きくなることが防止される。また表面シート10が着用者の肌に柔軟にフィットする。なお、溝部30の実質厚みは、0.1〜1mmである。
畝部20と溝部30では、実質的な坪量が異なっている。換言すれば、畝部20と溝部30では繊維量が異なっている。具体的には、溝部30に比べて畝部20の方が繊維量が実質的に多くなっている。畝部20及び溝部30がこのように形成されていることで、装着圧のような厚み方向の圧縮挙動に対して畝部20を潰れにくくしつつ、着用者の大腿部による圧縮圧のような幅方向の湾曲挙動に対しては溝部30の可撓性によって柔軟に変形させることが可能となっている。
畝部20及び溝部30の繊維量を坪量で表すと、畝部20の坪量は、30〜150g/m2、特に40〜100g/m2であることが好ましい。一方、溝部30の坪量(但し開孔31は除く)は、10〜70g/m2、特に15〜50g/m2であることが好ましい。表面シート10の全体としての坪量(開孔31も含む)は、20〜80g/m2、特に30〜80g/m2であることが柔軟性と不織布強度の観点から好ましい。畝部20の坪量は、溝部30を除去した畝部20の重量と面積から求める。畝部20と溝部30との境界は、開孔31の幅と溝部30の幅が同程度のときは、開孔31の幅方向端部を複数連ねて見たときの位置で判断する。溝部30の幅が開孔31の幅より広い場合は、見掛け厚みの測定の場合と同様に、測定する表面シート10の断面形状に基づき、変曲点を基準点(優先)とするか、45°の傾き位置を基準点とする。この上下2点の基準点を結ぶ直線で表面シート10を切断し、畝部20を得てその重量を測定する。溝部30の重量は、切断前の表面シート10の重量と、畝部20の重量との差より求める。
図5に示すように、溝部30には開孔31が多数形成されている。開孔31は溝部30の延びる方向に沿って一定の間隔をおいて規則的に形成されている。したがって、表面シート10には、そのY方向(おりものシート1の長手方向)に沿って一定の間隔をおいて配置された多数の開孔31からなる開孔列が、表面シート10のX方向(おりものシート1の幅方向)に亘って多列に形成された状態になっている。すべての開孔列における開孔31の配置のピッチは同じになっている。隣り合う2つの開孔列においては、表面シート10のX方向に関して開孔31が同位置に位置している。そして、シート10のX方向に沿ってシート全域を見たときに、必ず開孔31が形成されていない部位が存在するように該開孔31は配置されている。更に、表面シート10全体で見ると、開孔31は、シート10のX方向において多列の列をなし、かつY方向においても多列の列をなすように分散配置されている。開孔31がこのように配置されていることで、開孔31が例えば千鳥格子状に配置されている場合に比較して、繊維のより分けによる開孔31の形成を効率的に行うことができる。
開孔31は、表面シート10の構成繊維がより分けられて形成されている。そして、開孔31の端部付近においては、繊維の熱変形に起因する膜状構造が形成されていない。これに起因して、開孔31の端部付近は、剛性が低く、変形に対する柔軟性及び形状復元性に優れている。また、液が通過する構造になっているので、開孔31の端部付近に液が溜まることがない。尚、表面シート全体として見ると、その構成繊維は、基本的に繊維どうしが交絡しているか、又は繊維どうしが融着している。これによって不織布の形態が維持されている。
開孔31は、表面シート10の平面視において種々の形状をとり得る。例えば円形、長円形、楕円形、三角形、四角形、六角形等の形状、又はこれらの組み合わせの形状が挙げられる。開孔31の形状や大きさは、吸収性物品の具体的な用途に応じて適宜決定すればよい。開孔31の大きさは、表面シート10の平面視における投影面積で表して、0.5〜5mm2程度であることが、液の透過性及び表面シート10の強度維持の観点から好ましい。開孔31の大きさは、画像解析装置を使用して計測する。具体的には、光源〔サンライト SL−230K2;LPL(株)社製〕、スタンド〔コピースタンドCS−5;LPL(株)社製〕、レンズ〔24mm/F2.8Dニッコールレンズ〕、CCDカメラ〔(HV−37;日立電子(株)社製)Fマウントによるレンズとの接続〕及びビデオボード〔スペクトラ3200;カノープス(株)社製〕を用いて、表面シート10の裏面1B側の画像を取り込む。取り込まれた画像をNEXUS社製の画像解析ソフトNEW QUBE(ver.4.20)によって開孔31の部分を二値化処理する。二値化処理された画像から得られる個々の面積の平均値を開孔の大きさとする。
開孔31はその端部が、表面シート10の第2の面10b側に突出して、突出部からなる導液管を形成していてもよい。上述のとおり、開孔31の端部は剛性が低いので、かかる突出部を形成することで、表面シート10のクッション性が一層高くなる。また、突出部を形成することで、表面シート10の下側に位置する低密度シート12の構造によらず、表面シート10と低密度シート12との接触を維持できることから、着用者から排泄された液が、表面シート10から低密度シート12へ効率よく伝達される。
本実施形態のおりものシート1の主たる特徴の1つとして、上述の如き畝溝構造を有する表面シート10(不織布)の構成繊維の接触角度が60〜85°であり、且つ表面シート10の非肌当接面側に、表面シート10の溝部30に比べて繊維密度が低い低密度シート12が、該表面シート10に隣接して配されている点が挙げられる。ここで、接触角度は、繊維の親水性の高低を示す指標となるもので、後述する測定方法により測定される、繊維上の水滴と繊維表面との角度であり、この接触角度が小さいほど繊維の親水性が高いと判断することができる。通常、この種の吸収性物品の表面シートの構成繊維の接触角度は50°以下であり、接触角度が30°以下である繊維は親水性が高いと言える。接触角度60〜85°の繊維は親水性が低い繊維であり、斯かる低親水性繊維を含んで構成される表面シート10は、表面親水性が低い。
一般に、表面シートの表面親水性が高い場合、液は、表面シートとの接触部分からその内部に浸透し、毛管力勾配等に従って該内部を移動する。また、表面シートの表面が疎水性である場合、液は、表面シートと接触してもその内部には浸透し難く、表面シートと身体との間や畝部と畝部との間を移動する。一方、表面親水性が低い本実施形態に係る表面シート10は、該シート10と接触した液が該シート10の内部に容易に浸透するほど毛管力が高くなく、また該液が該シート10の表面から弾かれて該シート10と身体との間等を移動するほど撥水性が高いわけでもないため、該シート10と接触した液が平面的に移動し難い。さらに、表面シート10が畝溝構造であるため、おりものシート着用時において、着用者の身体と表面シート10との間に畝部20,20間に形成される空間を維持し続け、空間量減少による液の拡散も起こし難い。
このため、おりものシート1は、このような畝溝構造を有し且つ表面親水性の低い表面シート10と、その直下に配された低密度シート12とを備えていることにより、特に経血等の粘性が比較的高い液に対して優れた吸収性を示す。即ち、身体から排泄された液は、先ず表面シート10の畝溝構造(畝部20及び溝部30)に付着することになるところ、上述したように表面シート10の表面は低親水性であるため、畝部20の頂部21やその近傍に付着した液は、これらの部位では吸収(浸透)されず、畝部20の傾斜面を伝って溝部30へ移動する。尚、このような畝部20から溝部30への液の移動が生じるのは、主として表面シート10と着用者の肌との密着性が悪く両者間に隙間が生じている場合であり、該密着性が良好で隙間がほとんど無い場合は、排泄された液の多くは直接溝部30に付着する。溝部30の表面上に付着した液は、着用時におりものシート1の肌当接面側から厚み方向にかかる着用者の体圧等により、溝部30の内部に押し込まれ、更にその直下に配されている低密度シート12に押し込まれて吸収される。
溝部30の表面から内部への液の押し込みの際には、畝部20及び溝部30がおりものシート1の長手方向に延びて形成されていることにより、該液のおりものシート1の幅方向への拡散が抑制され、これにより横漏れの防止が図られる。また、溝部30から低密度シート12への液の押し込みは、低密度シート12が溝部30に比べて繊維密度が低くなされていることによりスムーズに行われる。このような液の吸収挙動は、特に液の粘度が中程度(液温25℃での粘度が50〜300mPa・s程度)の場合に発現しやすい。排泄された液が粘度の高い高粘性(液温25℃での粘度がおよそ300mPa・s以上)である場合、その吸収挙動は上述した中粘性の場合と略同じであるが、高粘性の液は中粘性の液に比べて表面シート10の表面に長時間残留する傾向があり、このため、高粘性の液は溝部30の表面上に付着後、該溝部30に沿っておりものシート1の長手方向に拡散しつつ低密度シート12へ移動する。また、排泄された液が粘度の低い低粘性(液温25℃での粘度がおよそ50mPa・s未満)である場合は、該液が付着した部位で速やかに吸収される傾向が強く、溝部30のみならず畝部20でも液の吸収が起こる。経血は、通常、中粘性〜高粘性の液である。尚、前記粘度はブルックフィールド型粘度計を用いて測定される。
表面シート10(不織布)におけるこのような現象は、液体の多孔材料への浸透の解析に用いられる下記のルーカス−ウォッシュバーン(Lucas-Washburn)の式を用いて説明することができる。下記式中、lは浸透深さ(拡散距離)、rは毛管半径、γは液体の表面張力、θは接触角度、ηは粘度、tは時間である。ルーカス−ウォッシュバーンの式によれば、不織布(毛管構造体)における液の移動の制御因子は、毛管構造体の構造に由来するr、毛管構造体の表面と液体との接触状態を示すθであり、毛管半径が大きいほど、表面の濡れ性が高いほど、拡散距離が長くなる。ここで、低粘性液では、分母成分である粘性項(η)は小さく、繊維表面(不織布表面)との濡れ性項(cosθ)や不織布の繊維空間の大きさ項(r)による毛管力因子(分子成分)の影響が大きい。このため低粘性液は、毛管力によって、毛管構造体内を拡散する。一方、高粘性液では、粘性項(η)による影響が強くなり、毛管力因子のひとつである濡れ性項(cosθ)の影響が小さくなるため、低粘性液に比して拡散距離(l)が小さくなり、毛管構造体内での拡散が生じ難くなる。しかし、不織布の繊維空間の大きさ項(r)の影響は大きく、rの大きな繊維粗部(溝部30)や開孔31から液が移動しやすい。即ち、本実施形態に係る表面シート10は、本来、低粘性液に比してその内部を高粘性液が拡散し難いが、溝部30や開孔31等の繊維粗部を通って高粘性液は流れやすい構造であるといえる。
Figure 0005016020
表面シート10(不織布)の構成繊維の接触角度は、上述したように60〜85°であり、好ましくは70〜80°である。該接触角度が60°未満では、親水性が高くなることにより、繊維表面が濡れ易くなり着用者に不快な感覚を与えるおそれがあり、該接触角度が85°を越えると、疎水性が高くなることにより、表面シート10に隣接する低密度シート12に液が移動し難くなり漏れが生じるおそれがある。ここで、「表面シート(不織布)の構成繊維の接触角度」とは、表面シートの構成繊維が複数種存在する場合は、それらのうちで最も接触角度が低い構成繊維の該接触角度を意味する。繊維の接触角度のコントロールは、界面活性剤等や繊維を構成する樹脂を選択する等で行うことができる。界面活性剤等は、通常、繊維に練りこんだり、繊維表面に塗布したりして使用される。接触角度は次のようにして測定される。下記測定方法による接触角度が50°以下の場合は親水性、60°より大きく90°未満の場合は低親水性、90°以上の場合は疎水性である。
(繊維の接触角度の測定方法)
繊維の接触角度は、本出願人の先の出願に係る特開2006−183168号公報に記載の接触角度の測定方法と同様に行う。具体的には、キーエンス製マイクロスコープVH−8000に中倍率ズームレンズ(照明リング付)を90°に倒した状態で使用し、500倍の条件に設定して行った。測定用サンプルは、表面シート(ウエブ)を長手方向70mm×幅方向40mmの大きさにカットしたものを用いた。測定用サンプルにおいては、長手方向がウエブのMD方向/幅方向がCD方向であり、測定環境は、20℃/50%RHであり、測定用サンプルは、測定面を上向きにした状態として、ウエブのCD方向から観察できるように測定ステージにセットした。測定用サンプルにおいては、焦点外の繊維を極力少なくするため、その奥行きは0.5〜2mm程度とすることが好ましい。CD方向からウエブを観察する理由は、一般的にウエブの繊維はMD方向に配向されていることが多く、繊維が測定画面の幅方向に配列する可能性が高くなるためである。このようにセットすることによって、繊維の長さ方向に対して垂直な方向からレンズで観察する。
次いで、セットされた測定用サンプルに、イオン交換水を充填した霧吹き(なるべく霧の状態が細かくなるような道具を使用する)にて水滴を繊維表面に付着させ、付着5秒以内(なるべく2〜3秒)に画像を取り込む。付着後短時間で画像取り込みが必要な理由は、付着した水滴がマイクロスコープの測定部から出る光によって蒸発してしまうことと、油剤による接触角度変化をおこさないようにするためである。水滴の両端もしくは片端の焦点が鮮明な観察結果5点の接触角度を計測し、それらの平均値を「接触角度」とした。接触角度は、画像又は印刷した写真に対して、図11のように、水滴の繊維との接線を引き、画像解析又は分度器等によって、計測を行う。尚、接触角度の測定は、表面シートのままではなく、構成繊維を取り出して計測することも可能である。
上述した本発明に係る液の吸収システムを確実に作用させる観点から、畝部20は溝部30に比べて繊維密度が高いことが好ましい。即ち、おりものシート1における各部の繊維密度は、畝部20、溝部30、低密度シート12の順で低下する(これらの中で畝部20の繊維密度が最も高い)ことが好ましい。斯かる構成により、経血のような粘性のある液が畝部20にて吸収されることが防止されると共に、体圧等による溝部30から低密度シート12への通液性が一層向上し、優れた液吸収性が得られる。畝部20の頂部21やその近傍にて経血のような粘性のある液が吸収されると、べたつきの原因となるおそれがある。
畝部20の繊維密度は、好ましくは0.02〜0.1g/cm3、更に好ましくは0.04〜0.08g/cm3である。溝部30の繊維密度は、好ましくは0.01〜0.08g/cm3、更に好ましくは0.02〜0.07g/cm3である。低密度シート12の繊維密度は、好ましくは0.005〜0.08g/cm3、更に好ましくは0.01〜0.05g/cm3である。尚、低密度シート12が繊維密度の異なる2層以上をその厚み方向に積層してなる多層構造である場合、前記の「低密度シートの繊維密度」は、表面シート10に隣接する層(最上層)の繊維密度を意味する。
また、畝部20の繊維密度と溝部30の繊維密度との比(畝部/溝部)は、好ましくは1.3〜5、更に好ましくは1.5〜3である。溝部30の繊維密度と低密度シート12の繊維密度との比(溝部/低密度シート)は、好ましくは1.2〜10、更に好ましくは1.5〜5である。畝部20、溝部30、低密度シート12それぞれの繊維密度は次の方法で測定される。
(畝部及び溝部の繊維密度の測定方法)
上記記載の畝部及び溝部の実質的な坪量を測定した結果得られる畝部及び溝部の各坪量と、表面シートの断面形状より得られる畝部及び溝部の各面積とを得て、目的とする繊維密度を算出する。先ず、表面シートの断面形状より畝部及び溝部の各面積を計測する方法について説明すると、計測対象の表面シートが組み込まれ且つ荷重がかかっていない状態の吸収性物品を測定用サンプルとし、該サンプルのMD方向断面を画像解析装置を使用して観察し、該表面シートの畝部及び溝部それぞれの断面積を計測する。該画像解析装置としては、上述の開孔31の大きさの計測に使用した画像解析装置と同様のものを用いることができる。この断面積の計測における計測対象部分は、開孔部(開孔31)を有しない部分とする。次いで、表面シートに開孔が形成されている場合は、表面シートの開孔率を画像解析装置等により測定し、表面シートの重量及び断面積を計測する。次いで、上記サンプルを畝部と溝部とに分離し、畝部の重量及び断面積を計測し、元の表面シートの重量及び断面積それぞれから畝部の重量及び断面積それぞれを差し引いて、溝部の重量及び断面積をそれぞれ求める。こうして得られた畝部及び溝部それぞれの重量及び断面積と、表面シートの長さとから各部の繊維密度を算出する。また、得られた各部の重量と、上記画像解析における断面画像より得られる各部の合計幅とから各部の坪量を算出する。また溝部においては、開孔相当の面積を差し引いて実坪量と実繊維密度も算出する。
(低密度シートの繊維密度の測定方法)
低密度シートを2枚のアクリル板(縦10cm×横10cm×厚み5mmを2枚)で挟み、この状態で光学顕微鏡を用いて低密度シートの断面を観察し、この断面画像から目視にて低密度シートの平均的な断面厚み(実質厚み)を求め、該実質厚みと予め求めた低密度シートの坪量とから、低密度シートの繊維密度を算出する。
但し、表面シート10と低密度シート12とが一体的にエンボス加工されている場合、あるいは低密度シート12のみにエンボス加工等により凹凸が付与されている場合など、低密度シート12に目視で識別可能な高密度の凹部が形成されている場合において、該低密度シートの繊維密度を求める場合、このような凹部はシート全体からは無視して考えて、平均的な断面厚み(見掛け厚み)を求め、該見掛け厚みと予め求めた低密度シートの坪量とから、低密度シートの見掛け密度を算出し、該見掛け密度を、高密度の凹部が形成されている低密度シートの繊維密度とみなす。該見掛け密度は具体的には次のようにして測定される。低密度シートが凹凸のない平坦なシートの場合は、実質厚みと見掛け厚みは略等しい。
(低密度シートの見掛け密度の測定方法)
凹部が形成されている低密度シートを、2枚のアクリル板(縦10cm×横10cm×厚み5mmを2枚)で、該凹部を跨いでシートの平坦部(又は凸部)同士を潰さないように挟み、この状態で光学顕微鏡を用いて低密度シートの断面を観察し、この断面画像から目視にて2枚のアクリル板間の平均的な距離を求めてこれを見掛け厚みとし、該見掛け厚みと予め求めた低密度シートの坪量とから、低密度シートの見掛け密度を算出する。
本実施形態のように溝部30に開孔31を形成した場合には、排泄された高粘性の液は、先ず体圧等の外力によって開孔31に導かれ、次いで低密度シート12へ移動する。この際、低密度シート12が表面シート10の畝部20よりも低密度であると、液が低密度シート12へ移動しやすく、低密度シート12が表面シート10の溝部30の実質繊維密度よりも低密度であると、表面シート10の濡れを防ぎやすい。該実質繊維密度は、表面シート10の溝部30の開孔31を除いて算出される。溝部30の実質繊維密度は、好ましくは0.02〜0.12g/cm3、更に好ましくは0.03〜0.10g/cm3であり、溝部30の実質繊維密度と低密度シート12の繊維密度との差(繊維密度差)は、0.02以上、特に0.03以上であることが好ましい。尚、溝部30に開孔31を形成する代わりに、溝部30に繊維密度が相対的に高い部位及び低い部位をそれぞれ形成しても良く、このように繊維密度の高低が溝部30に形成された場合には、開孔31が形成された場合と略同様の効果が奏される。
また、上述した本発明に係る液の吸収システムを確実に作用させる観点から、畝部20は、図3に示すように、おりものシート1の幅方向Xでの断面において、その頂部21が上に向かって凸に湾曲し且つ該頂部21から下部に向かうにつれて幅が増大していることが好ましい。より具体的には、畝部20の断面形状は、三角形形状、山型形状、半円形状等であることが好ましい。畝部20がこのような断面形状を有していることにより、畝部20の頂部21やその近傍に付着した粘性のある液が、該畝部20の傾斜した表面を伝って溝部30へ移動し易くなり、上述した本発明に係る液の吸収システムがより確実に作用するようになる。また、体圧等の圧力がかかることにより表面シート10の表面上に液が付着して残るという不都合も抑えられる。
これに対し、図4に示すように、畝部20の頂部21が平坦となっており、図3に示すように上に向かって凸に湾曲していない場合には、平坦な頂部21に液が付着したままで上述した液の溝部30への移動が起こりにくい。従って、図4に示す如き断面形状、具体的には台形形状、凸型形状、四角型形形状、矩形形状等の断面形状を有する畝部は、図3に示す如き断面形状を有する畝部に比べて液の吸収性に劣り、表面シート上に液が付着したまま残留し易い。
図1及び図2に示す表面シート10は、単層構造のものであったが、これに代えて表面シート10を2層以上の多層構造とすることもできる。但し、表面シート10が多層構造であると、各層の界面で液の吸収が阻害されるおそれがある。このため、表面シート10は図1及び図2に示す如き単層構造のものが好ましい。
上述した本発明に係る液の吸収システムにおいては、低密度シート12は液の保持層としての役割を果たすものであり、その内部に一定量以上の液を収容し得る空間(繊維間の空隙)が形成されていることが好ましい。斯かる観点から、低密度シート12は、坪量が20〜100g/m2、特に30〜80g/m2であり、繊維密度(低密度シートの表面に目視で識別可能な凹部が形成されている場合は見掛け密度)が0.005〜0.06g/m3、特に0.007〜0.04g/m3であることが好ましい。また、低密度シート12の無荷重下における厚みは、クッション性による柔らかな感触と快適な装着感を両立する観点から、好ましくは0.2〜3.0mm、更に好ましくは0.5〜1.5mmである。また、低密度シート12は、凹凸のない平坦なシート、つまり、繊維密度と見掛け密度とが略同じ数値を示すシートであることが好ましい。
また、低密度シート12の構成繊維が該シートの厚み方向(Z軸方向)に配向していることは、表面シート10を通過した液を素早く取り込み、表面シート10と低密度シート12との間での液拡散や低密度シート12の内部での液拡散を抑制しやすくできる点で好ましい。斯かる観点から、低密度シート12の構成繊維の配向角度は、50〜130°であることが好ましく、60〜120°であることがより好ましく、70〜110°であることが更に好ましい。構成繊維の配向角度は次の方法で測定される。シートの下記測定方法による配向角度が50〜130°の範囲にある場合は、該シートの構成繊維はシートの厚み方向に配向していると言える。尚、配向角度の測定結果が180〜360°の範囲で得られた場合は、0〜180°に換算して、具体的には得られた配向角度から180°を減することで算出する。
(構成繊維の配向角度の測定方法)
構成繊維の配向角度の測定には、顕微鏡による断面観察を行うところ、繊維が延びる形状を捉えて測定する必要があること、及び表面シートにおける畝部と溝部構造の配向性を評価する必要があることから、表面シートにおいてはMD方向から45度傾斜した断面を観察し、低密度シートにおいては、上述した接触角度の測定方法と同様に、MD方向断面をCD方向側から観察した。測定用サンプルの奥行きは、キーエンス製マイクロスコープVH−8000に中倍率ズームレンズの場合、2mm以内とするが、一般に焦点深度が深い電子顕微鏡(SEM)を使用した場合、5mm以内で可能である。本発明では、日本電子(株)製JCM−5100を使用した。顕微鏡による断面観察で撮影した断面写真を、画像処理ソフトウエア〔(株)日本ローパーメディアサイバネティックス製、Image−PRO PLUS Ver.6.2(日本語版)〕を使用して解析し、繊維を二値化し、離散二次元フーリエ変換し、X−Yグラフ化を行ってパワースペクトルを得る。このパワースペクトルは、繊維の配向がある場合には楕円となり、繊維の配向が強い場合には扁平率の大きい楕円となり、繊維の配向がランダム化されているほど真円に近づく。ここで、繊維の配向角度は、X軸における楕円形の長軸の傾きであり、長軸と短軸の比が配向強度となる。尚、上述したフーリエ変換によるX−Yグラフ化の後、「文化財保存修復学会第26回大会研究発表要旨集,44−45(2004)」記載の方法を行っても良く、あるいは該方法を用いて画像処理から配向角度及び配向角度強度を求めても良い。また、表面シート10における構成繊維の配向角度及び配向角度強度は、該表面シート10が凹凸形状(畝溝構造)を有していることから、畝部20の頂部21から溝部30を幅方向に3〜4分割して畝部20及び溝部30を含まない部分で測定する。尚、配向角度強度は、繊維配向の規則性を示す値であり、数値が1を超えると繊維配向性が高いと考えられる。
シートの構成繊維の配向角度を前記範囲に調整する、即ち、シートの構成繊維をその厚み方向に配向させる方法としては、例えばエアレイド法による低密度シートの作製が挙げられる。エアレイド法は、周知の通り、気流にのせた繊維をネット上に落下堆積させることによりウエブ形成を行う工程を含む不織布の製造方法である。また、別の方法として、構成繊維がシートの厚み方向と直交する方向(シートの面方向)に実質的に配向しているシートを作製し、該シートの繊維配向を機械的手段により変更する方法が挙げられる。構成繊維がシートの面方向に実質的に配向しているシートは、特別な工夫をしなくても、例えば、カード法によるウエブ形成後にニードルパンチ法のように繊維交絡を行う繊維シートの形成方法;繊維配向の少ない繊維シートの該繊維配向を機械的手段によって変更する方法等によって得られる。このような機械的手段による繊維配向の変更は、例えば次のようにして行なうことができる。即ち、構成繊維がシートの面方向に実質的に配向しているシートに、一方向に延び且つシートの厚み方向に貫通していないスリット(切れ目)を、該一方向と直交する方向に所定間隔を置いて複数設けた後、隣接するスリット間に位置するシートの一部(繊維集合体)を、該一方向(スリットの延びる方向)を回転軸方向として略90度回転させることにより、該シートの構成繊維の配向角度を前記範囲に調整することができる。また、スリット位置で切断した後に異なるシート材料を接着剤等で貼り付けて、同様に90°回転させることで得ることもできる。
図1及び図2に示す低密度シート12は、単層構造のものであったが、これに代えて低密度シート12を2層以上の多層構造とすることもできる。低密度シート12が、例えば、表面シート10に隣接する上層と、該上層の非肌当接面側の面に積層された下層とからなる2層構造のものである場合、上層に比べ下層の繊維密度を高めることが好ましい。即ち、好ましい多層構造の低密度シート12は、表面シート10側から上層及び下層を順次積層してなり、該上層が該下層に比べて繊維密度が低いものである。斯かる2層構造の低密度シートによれば、粘性の高い液の引き込み後に粘性物中の水分を分離することによる捕集能力や拡散抑制が向上する。繊維密度は、上述した測定方法に準じて測定される。また、繊維密度のコントロールは、繊維の太さや繊維樹脂材料等により行うことができる。上層と下層との坪量比(上層/下層)は、好ましくは1〜5、更に好ましくは1.5〜3である。
上述したように、本実施形態においては、おりものシート1の外周縁全体に亘って、表面シート10及び裏面シート11が熱処理によって互いに接合されてなるシール部15が形成されている。上述したように、表面シート10は長手方向に延びる畝溝からなる畝溝構造を有しているため、該畝溝構造を熱処理して厚みの均一なシール部とした場合、該シール部の近傍に位置する畝溝構造と該シール部との間に大きな段差が生じ、着用時の不快感につながるおそれがある。特に、図1に示すように、おりものシートの長手方向中央部に括れ部が存在する場合、該括れ部に位置するシール部においては、このような問題が生じ易い。そこで、このような畝溝構造の採用に起因する段差の減少を図り、より良好な着用感を得る観点から、シール部15、特におりものシート1の長手方向中央部あるいは着用者の排泄部に対向する排泄部対向部に存する括れ部に位置する、シール部15は、その内周縁から外周縁に向かうにつれて厚みが減少していることが好ましい。このような厚み分布を有するシール部15は、表面シート10と裏面シート11とを常法通り熱処理する際に、両シート10,11におけるシール部15の内周縁となる部位から外周縁となる部位に向かって多段階で圧力をかけ、且つ各段階における圧力を、外周縁となる部位に向かうにつれて増大させることにより得られる。
上記観点から、シール部15は、おりものシート1の外観形状と概ね沿う方向に線状に形成されることが好ましい。また、おりものシート1の可撓性を良好にしながらシール部15が安定するようにする観点から、シール部15は図1に示す如き平面視(上面視)において、互いに交差していない複数本の短い線(好ましくは長さが5mm以下)を含んで構成されていることが好ましく、また漏れ難くする観点から、シール部を構成する線(表面シートの圧縮部分)が平面視において表面シートの畝部と重なる部分を有することが好ましい。また、シール部15が接着剤を含んで構成されていることがシール部15の強度の観点から好ましい。
次に、本実施形態のおりものシート1の構成材料等について説明する。裏面シート11としては、それぞれ、従来のこの種の吸収性物品において用いられているものを特に制限なく用いることができる。裏面シート11としては、液不透過性ないし撥水性の材料、例えば熱可塑性樹脂製のフィルムや、これに不織布をラミネートしたものを用いることができる。また、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布や、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド(SMMS)不織布を用いることもできる。裏面シート11は透湿性を有していてもよい。透湿性を有する裏面シートとしては、熱可塑性樹脂及びそれと相溶性のない微粒子を含む樹脂組成物をフィルム状に押し出し、一軸又は二軸延伸して得られる多孔性フィルムや、上述のSMS不織布が挙げられる。
表面シート10(不織布)の構成繊維としては、天然繊維、半天然繊維、合成繊維等、当該技術分野において従来用いられている繊維を特に制限なく用いることができる。繊維間の詰まりすぎを起こさず、表面シート10に柔軟性を付与する観点から、合成繊維を用いることが好ましい。合成繊維の配合量は、表面シート全体の50重量%以上が好ましく、70%重量以上がより好ましい。もちろん、合成繊維100%から表面シート10を構成してもよい。表面シート10が合成繊維100%からなる場合、着用者の体圧が加わった状態下でも畝溝構造が潰れ難くなるので、溝部30に沿った通気性が良好となる。
表面シート10に使用する合成繊維としては、例えば自己融着性繊維である芯鞘構造繊維やサイドバイサイド型繊維が挙げられる。この他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の単繊維や複合繊維を用いることができる。畝溝構造及び開孔形状の成形性の観点から、ポリエチレンを鞘成分に有する芯鞘構造繊維や、ポリエチレン部分を有するサイドバイサイド型繊維を用いることが好ましい。繊維の(平均)繊度は、1〜6dtexの範囲が好ましい。
表面シート10に使用する合成繊維として捲縮繊維を用いると、表面シート10のクッション性が一層向上するので好ましい。捲縮繊維としては、二次元に捲縮した繊維及びコイル状の三次元に捲縮した繊維のいずれも用いることができる。特に熱の付与によってコイル状に三次元捲縮した繊維を表面シート10に含まれていることが好ましい。このような繊維は、潜在捲縮繊維を原料として用いることで、表面シート10に含ませることができる。潜在捲縮繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性樹脂を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイドバイサイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる。
表面シート10に使用する合成繊維として、熱の付与によって伸長する繊維を用いても表面シート10のクッション性が一層高まるので好ましい。この理由は、表面シート10の製造中に付与された熱に起因する繊維間の詰まりが防止されるからである。そのような繊維としては、例えば本出願人の先の出願に係るWO2007/66599が挙げられる。
上述の捲縮繊維及び熱伸長性繊維のいずれを用いる場合にも、それらの繊維は、表面シート10中に合計で30〜70重量%配合されていることが好ましい。
低密度シート12としては、例えば、エアースルー不織布、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等が用いられる。これらの中でも、単層構造の低密度シートあるいは2層構造の低密度シートにおける上層(表面シート10に隣接する層)として用いるには、クッション性及び嵩高性の観点から、エアースルー不織布が好ましい。
低密度シート12の構成繊維としては、天然繊維、半天然繊維、各種合成繊維等を用いることができる。これらの中でも、嵩高性による低密度構造の形成の容易さ、不織布強度及び良好なクッション性の観点から、熱融着成分と該熱融着成分よりも高融点の成分とを有する合成繊維が好ましい。
本実施形態のおりものシート1は、裏面シート11の表面に配された粘着部(図示せず)を介して下着の内面に固定されて使用される。本実施形態のおりものシート1は、上述した液の吸収システムの作用により、液吸収性に優れ、尿などの粘性の低い液のみならず、経血等の粘性の比較的高い体液についても、表面シート上に残さずにおりものシート1の内部に吸収保持することができるため、べたつきが発生し難く、着用感等の使用感が良好である。
次に、本実施形態のおりものシート1の好適な製造方法について説明する。先ず、図5に示す表面シート10の製造方法について説明する。表面シート10は、図8に示す装置を用い、流体交絡法によって製造される。この装置を用いた製造方法は、(イ)繊維集合体を供給し、該繊維集合体の供給方向と直交する方向に波状構造を形成するための流体透過性支持体上に該繊維集合体を導く工程、(ロ)該支持体上に位置する該繊維集合体に流体を吹き付けて、その構成繊維を寄り分け畝溝構造と開孔を形成する工程、及び(ハ)引き続き該支持体上に位置する該繊維集合体に再び流体を吹き付けて、畝溝構造と開孔が形成された該繊維集合体を不織布化する工程を有する。
図8に示す装置40は、流体透過性支持体50及び第1噴射ノズル51及び第2噴射ノズル52を備えている。図8に示すように、流体透過性支持体50はロール状のものであり、その周面はメッシュ等の流体透過性材料で構成されている。支持体50の周面には、ロールの回転方向に沿って延びる凸部と凹部とが、ロールの軸方向に交互に形成されている。これによって、表面シート10の原料である繊維集合体53に、その供給方向と直交する方向に波状構造を形成することができる。凸部の頂部には、ロールの回転方向に沿って断続的に形成された突起部54が位置している。突起部54は、ロールの回転方向に沿って一定間隔をおいて配置されている。かつロールの軸方向に沿ってみたときに、突起部54は一直線上に位置するように配置されている。
第1噴射ノズル51及び第2噴射ノズル52は、支持体50の周面に対向するように配置されている。各ノズル51,52は、支持体50の全幅にわたり流体を噴射できるような構造になっている。ノズル51,52は、表面シート10の原料である繊維集合体53の供給方向に関し、第1噴射ノズル51が上流側に位置し、第2噴射ノズル52が下流側に位置している。
(イ)の工程においては、繊維集合体53は、図8中、矢印の方向に回転している流体透過性支持体50へ供給され、該支持体50の周面に抱かれた状態で搬送される。次いで(ロ)の工程において、支持体50の周面上で、第1噴射ノズル51から噴射された流体が繊維集合体53に吹き付けられる。この流体の吹き付けによる圧力で、繊維集合体53は、図10(a)及び(b)に示すように、支持体50の周面に形成されている凸部55の位置において、構成繊維の寄り分けが生じる。この寄り分けによって、構成繊維は、凸部55間に位置する凹部56内へ移動していく。つまり、繊維の分配が起こる。
また、凸部55の頂部に突起部54が形成されている場合には、図10(c)に示すように、構成繊維の寄り分けが一層促進され、突起部55上に位置する繊維集合体54に孔が生じる。この孔が、表面シート10における開孔31となる。
繊維集合体としては、カードウエブ等の繊維の結合や絡合が生じていないか、又はその程度が低いものや、不織布等の繊維の結合や絡合が生じているものを用いることができる。特に、不織布としては、繊維長が30mm以下であり、かつバインダー成分をそれ自体が有しない繊維を含む不織布、具体的には、パルプ繊維の繊維間がバインダー(接着成分)によって固定されている乾式パルプシートを用いることが好ましい。
この工程で用いられる流体としては、水等の液体及び空気等の気体を使用することが可能である。流体の種類は、支持体50上に導く繊維集合体によって選択する。例えば、カードウエブのように結合又は交絡のない繊維集合体を用いる場合には、空気流又は水蒸気流(スチームジェット)を使用することが好ましい。エアスルー不織布のように、繊維交点で結合を有する繊維集合体を用いる場合には、水流又は水蒸気流(スチームジェット)を使用することが好ましい。後者の場合、繊維交点での結合を部分的に剥離し、繊維交絡の程度を低く抑えつつ、繊維の移動によって畝溝構造及び開孔を形成することができる。また、繊維間を詰まらせすぎないようにすることができる。このように、本工程は、繊維の移動による畝溝構造及び開孔の形成が主たるものであり、繊維の交絡の程度は低く抑えられている。
上述の水流とは、水等の完全な液体流を意味する。水蒸気流(スチームジェット)とは、液体状態でない水の流体流をいう。液体水流又は水蒸気流(スチームジェット)を使用した場合、繊維交絡は突起部55の近傍に位置する繊維ほど進行し、その部分の繊維密度が高める傾向にある。特に、繊維集合体として不織布を用いた場合(すなわち再不織布化)、凸部55では繊維交絡がほとんど行われないので、不織布が本来的に有するクッション感が維持される。一方、凹部56及び突起部55の近傍に位置する繊維には交絡が生じ、凸部55に位置する繊維に対して相対的に毛管勾配(密度勾配)が大きくなる。
(ロ)の工程である第1噴射ノズル51からの流体の吹き付けによって畝溝構造及び開孔が形成されたら、次いで(ハ)の工程である第2噴射ノズル52からの流体の吹き付けによって繊維交絡が生じ、繊維集合体が不織布化(繊維集合体として不織布を用いた場合には再不織布化)される。この場合に使用する流体としては、液体水流又は水蒸気流を用いることが好ましい。これらの流体を用いることで、繊維交絡を効率的に行うことができる。なお、上述の再不織布化とは、繊維集合体として不織布を用いた場合に、前工程である畝溝構造及び開孔の形成工程において、繊維の切断又は融着部分が剥離した繊維を再度融着又は再度交絡させて不織布としての形態を維持させることを言う。
(ロ)の工程及び(ハ)の工程で繊維集合体53に吹き付ける流体を、支持体50の凸部55に集中すると、支持体50の凹部56に比べて凸部55の流体圧を高めることができるので、開孔性が良好となるので好ましい。また開孔の端部付近の繊維密度をより高くすることができる点で好ましい。
(ハ)の工程において流体として水蒸気流を使用した場合、第2噴射ノズル52からの水蒸気流を比較的低い温度である100〜150℃(ウエブ上で繊維融着温度よりも低い温度)とすることで、繊維交絡のみが行われる。水蒸気流は液体水流に比べるとエネルギー(噴射圧)が低い(流体流の分散が大きい)ので、繊維集合体として不織布を用いる場合よりも、ウエブへ吹き付けるときに用いることが好ましい。ウエブの方が不織布よりも繊維の移動が容易だからである。しかしながら、繊維集合体として不織布を用いた場合であっても、(ロ)の工程によって形成された畝溝構造及び開孔の形状が回復しない程度の弱い繊維交絡状態となる噴射圧を水蒸気流によって与えることができる。さらに、水蒸気流の温度が、ウエブ上で繊維融着温度よりも高くなる160〜200℃程度の場合、仮に繊維融着温度より20℃以上高い温度であっても、繊維集合体中の繊維に加わる熱量は、繊維を構成する樹脂が溶融して甚だしく流動するほどではなく、またすべての繊維の交点で樹脂の流動がおこり融着が生じるとは限らない程度であるので、繊維集合体全体を固化させるものではない。したがって水蒸気流の噴射圧が高い状態にあり、繊維同士がかなり接近した状態であっても、繊維の目詰まりを起こさせずに、繊維交点で融着を行うことができる。
この融着は、第2噴射ノズル52から吹き付けられた水蒸気流によって行われるので、公知の不織布製造技術であるエアスルー法に比べると、短時間で強い圧力が繊維集合体に加わっている。そのため、繊維交点での融着が安定する前、すなわち互いの繊維の表面で広がって強固な融着点となる繊維鞘成分樹脂の流れ出しが固定化する前に圧力が取り除かれる。その結果、繊維が離間して、橋渡し構造が形成される。このような橋渡し構造は、2本の繊維のうち一方の繊維の鞘成分樹脂が溶融によって引き伸ばされ固化されて形成されていると推定される。なぜならば、この融着工程は、繊維融着を起こす状態ではあっても、熱の付与は比較的短時間で終了するので、繊維融着を起こす各繊維を構成する樹脂どうしが融合して樹脂間の界面が消失する状態ではなく、繊維融着を起こす各繊維を構成する樹脂の界面が存在する状態と考えられるからである。また、繊維融着を起こした融着部分である樹脂間の界面近くで伸長が起こると、該界面が引っ張られて融着部分が減少して、該界面で樹脂どうしが剥離してしまうと考えられるからである。このため、橋渡し構造は接合部分の面積は大きいものの、樹脂が伸ばされて細くなった部分を有している。その結果、得られた表面シート10は、その構成繊維の自由度が向上し、柔軟性及びクッション性が良好になる。一方、エアスルー法よりも強い圧力を受けて製造されるので、2本より多い繊維の多交点が一層作られやすくなっている。このような構造によって、表面シート10の強度が向上する。
(ロ)の工程及び/又は(ハ)の工程で、液体水流を用いる場合には、親水性を付与するために用いられる界面活性剤が繊維表面から流れ落ちるおそれがあるので、繊維内へ界面活性剤を練り込んだものや、天然系/半天然系の親水性繊維を使用することが好ましい。あるいは、後工程において界面活性剤を塗布することが好ましい。これに対して、水蒸気流を用いると、繊維表面の界面活性剤が流れ落ちにくく、繊維の密度が高い部位に一部界面活性剤を集まりやすくすることができるという利点がある。その結果、水蒸気流を用いると、繊維集合体53における支持体50の凹部56及び突起部54に位置する部位の繊維密度が高められるので、必然的にこれら部位の親水度を高めることができる。この効果の応用例として、繊維表面に塗布する界面活性剤又は繊維に練り込む界面活性剤として2種以上のものを使用し、その界面活性剤の耐水性を異ならせる手法が挙げられる。この手法によれば、親水勾配を一層容易に設計できるので有利である。
得られた表面シート10の繊維密度を一層制御するため、(ハ)の工程の後の不織布を、熱風処理工程に付すことも好ましい。熱風処理には、不織布化の促進(繊維集合体の繊維間を結合)及び/又は繊維間の目詰まり解消の効果がある。すなわち、(ハ)の工程において、目詰まり防止の観点から、流体の吹き付け条件を弱くすることがあるところ、それに起因する繊維交絡又は繊維融着の不足を補うために熱風処理工程に付すことが好ましい。また、(ハ)の工程において目詰まりが生じた不織布の嵩を回復させ、あるいは繊維変形(捲縮又は伸長)を発現させるために熱風処理工程に付すことが好ましい。特に、(ハ)の工程で水蒸気流を用いた場合には第2噴射ノズル52を使用するので、エアスルー法に比べて短時間で熱付与工程が完了してしまう。そこで、熱融着状態の安定化の観点から、(ハ)の工程の後工程として、80〜120℃程度の熱風処理工程を行うことが望ましい。あるいは(ハ)の工程の後工程として、急激な温度低下を起こさないようにする安定化工程を行うことが好ましい。また、熱風処理は1段階で行ってもよいし、不織布化の促進のための熱風処理と不織布の嵩回復のための熱風処理とを複数段階以上に分けて行ってもよい。
本製造方法における繊維集合体としてウエブのみを用いる場合には、(ロ)の工程では、空気流又は水蒸気流を用い、(ハ)の工程では、水蒸気流を用いることが好ましい。この理由は、繊維間の目詰まりを防ぎ、繊維交点の融着による不織布化による柔軟な構造ができること、さらに、開孔31の周辺部の繊維密度を高くしやすくできるからである。さらに(ロ)の工程で空気流を用いると、開孔31に導液管を形成しやすくなり、開孔31以外の部位も、図7(a)の形状となりやすくなり、吸収体との接触性が向上する。一方、(ロ)の工程で水蒸気流を用いると、繊維の飛散等が抑えられ流体圧を空気流より高くすることが容易なため、繊維の寄り分けをしやすく、図6の断面形状を得やすくなり、クッション性等の柔軟性を高め易くなる。なお、(ロ)の工程で水蒸気流を用いても、開孔31では流体圧を調整することで、導液管構造と図6の断面形状を両立することが可能である。
本製造方法においては、(ロ)及び(ハ)の工程で水流を使用する場合には、繊維交点に融着点を有する不織布を用いることが好ましい。この理由は、繊維交点の剥離部分による繊維の移動(密度向上部分の形成)と残存する融着点によって繊維の目詰まりを防ぐことができるからである。この場合、(ロ)の工程では、不織布の全体に略均一となるように水流を施して支持体形状に不織布を適合させ、(ハ)の工程では、開孔31を含む溝部30に、畝部20よりも強い水流を吹き付けることで交絡を行い易くし、(ロ)よりも(ハ)の工程の水圧を高めることが、融着点の剥離を促し再交絡を行い易くする観点から好ましい。また、繊維集合体53として、ウエブと不織布との積層体を用いるか、又はウエブと不織布とを供給しつつ両者を積層して繊維集合体53を供給する方法を採用すると、(ロ)及び(ハ)の工程で両者の一体化を進めることができる。このようにして製造された不織布は、畝部20の頂部21から開孔31の端部まで液を導きやすい構造(一体化構造)となる。この場合、ウエブと不織布のうち、水流が直接吹き付けられるのは、ウエブでの繊維の目詰まりを防ぐ観点から、不織布とすることが好ましい。このように(ロ)及び(ハ)の工程で水流を使用すると、図7(b)のような断面形状を得やすくなる。
繊維集合体53として不織布を用い、該不織布が(ロ)の工程の前で別途支持体上に導かれる場合には、得られる不織布の柔軟性及びクッション性を高めることができる。また、繊維集合体53として不織布を用いる場合、該不織布における繊維間の結合や交絡が強いと、(ロ)の工程における繊維移動が起こりにくいことがあるので、(ロ)の工程の前に、不織布における支持体50の凹部56に位置すべき部位にスリット処理を施すことも好ましい。
このようにして得られたシートを、別途製造した低密度シート12の上に載置し、これら表面シート等を、裏面シート11と共に常法に従い加工して、目的とするおりものシート1を得る。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、低密度シート12と裏面シート11との間に、吸収体を介在配置させても良い。吸収体としては、紙;木材フラッフパルプを含んで構成されるパルプ層;ポリマーシート(例えば、2枚の紙等の繊維シート間に吸収性ポリマーを配したもの)等を用いることができる。パルプ層には、当該技術分野において通常用いられる吸収性ポリマーを含有させても良く、また、パルプ層の全体がティッシュペーパによって被覆されていても良い。吸収体の坪量は、好ましくは50〜300g/m2であり、無荷重下における厚みは、好ましくは0.5〜1.0mmである。
また、おりものシート1の左右の側部域における表面シート10上に、防漏カバーシートが配されていても良い。また、ナプキン1の長手方向両側縁に、幅方向外方に延出する一対のウイング部が設けられていても良い。また、前記実施形態では、本発明の吸収性物品の適用例の一つとしておりものシート(パンティライナー)を挙げたが、例えば生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品にも適用できる。前述した各構成は、適宜組み合わせることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
鞘成分ポリエチレン/芯成分ポリエステルの2.2dtex×38mm芯鞘構造繊維を用いて、上述した表面シートの製造方法に従って水蒸気流による不織布化を行い、図3及び図5に示す如き畝溝構造及び開孔を有する40g/m2の実施例1の表面シートを得た。得られた表面シートは、畝部の幅3mm、溝部の幅2mm、厚み(畝部の頂部における見掛け厚み)1.2mmであったが、該厚みについては、該表面シートを60℃に加熱したプレスロール間に挿入して圧縮することで、0.7mmに調整した。表面シートの溝部は溝部の幅と略同じ幅を有する楕円状の開孔を有しており、圧縮後の開孔率は8%であった。また、鞘成分ポリエチレン/芯成分ポリエステルの2.2dtex×51mm芯鞘構造繊維を用いて、エアスルー法による不織布化で、坪量40g/m2で表面に凹凸の無い
低密度シート(不織布)を得た。こうして得られた表面シート及び低密度シート、並びに裏面シート(坪量22g/m2のポリエチレン樹脂製フィルム)を用いて、図2に示す如き断面形状を有するおりものシートを作製し、これを実施例1のサンプルとした。サンプルにおける上記各シート間は、ホットメルト型接着剤のスパイラル法(接着剤塗布量5g/m2)によって接合されている。得られたサンプルの外形は、長手方向の長さ150mm、幅方向の長さ60mmでバイオリン型とした。サンプルの厚みは約1.2mmであった。
〔実施例2〕
実施例1において、低密度シートとして坪量80g/m2の不織布を用いた以外は実施例1と同様にしておりものシートを作製し、これを実施例2のサンプルとした。実施例2のサンプルの厚みは約4.7mmであった。
〔実施例3〕
実施例1において、得られた低密度シートに、一方向に延び且つシートの厚み方向に貫通していないスリット(切れ目)を該一方向と直交する方向に2mmピッチで複数形成し、且つ各該スリットの切断面を裏面シートに固定した以外は実施例1と同様にしておりものシートを作製し、これを実施例3のサンプルとした。このようなスリットの形成及び裏面シートとの固定により、実施例3における低密度シートの構成繊維の配向角度は実施例1と異なっている。実施例3のサンプルの厚みは約2.7mmであった。
〔実施例4〕
実施例1において、表面シートの圧縮を行わずに厚み1.2mmのまま用いた以外は実施例1と同様にしておりものシートを作製し、これを実施例4のサンプルとした。実施例4のサンプルの厚みは約1.7mmであった。また、表面シートの溝部は該溝部の幅と略同じ幅を有する楕円状の開孔を有しており、開孔率は10%であった。
〔比較例1〕
実施例1において、表面シートとして畝溝構造及び開孔を有していない坪量30g/m2の不織布を用いた以外は実施例1と同様にしておりものシートを作製し、これを比較例1のサンプルとした。該不織布(表面シート)は、鞘成分ポリエチレン/芯成分ポリエステルの2.2dtex×51mm芯鞘構造繊維を用いて、エアスルー法による不織布化を行って作製した。比較例1のサンプルの厚みは約1mmであった。
〔比較例2〕
実施例1において、低密度シートを用いなかった以外は実施例1と同様にしておりものシートを作製し、これを比較例2のサンプルとした。比較例2のサンプルの厚みは約0.7mmであった。
〔比較例3〕
市販のおりものシート(花王(株)製、商品名「ロリエFパンティライナー」)を比較例3のサンプルとした。このサンプルにおける表面シートは、上層及び下層の2層構造となっており、下記表1においては該下層を低密度シートとみなした場合の各特性値が記載されている。比較例3のサンプルの厚みは約1.2mmであった。
〔比較例4〕
実施例1において、表面シート及び低密度シートとして次のものを用いた以外は実施例1と同様にしておりものシートを作製し、これを比較例4のサンプルとした。比較例4のサンプルの厚みは約1.4mmであった。鞘成分ポリエチレン/芯成分ポリエステルの2.2dtex×38mm芯鞘構造繊維を用いて、空気流による繊維の配列と熱風による不織布化を行い、図5に示す如き畝溝構造及び開孔を有する35g/m2の比較例4の表面
シートを得た。得られた表面シートは、畝部の幅3mm、溝部の幅2mm、厚み(畝部の頂部における見掛け厚み)1.1mmであった。また、鞘成分ポリエチレン/芯成分ポリエステルの2.2dtex×51mm芯鞘構造繊維を用いて、エアスルー法による不織布化で、坪量20g/m2の低密度シート(不織布)を得た。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られたおりものシートについて、上述した方法で表面シートの各部の繊維密度及び表面シートの構成繊維の接触角度、並びに低密度シートの繊維密度、構成繊維の配向角度及び配向角度強度をそれぞれ評価し、更に低密度シートの密度及び坪量をそれぞれ評価した。また以下の方法で液拡がり、べたつき感、滑らかさをそれぞれ評価した。これらの結果を下記表1に示す。
<液拡がり>
高粘性液を使用し評価を行った。高粘性液として、下記の方法により調製した疑軟便を用いた。高粘性液0.5gをスポイトを使用してサンプルの表面シート上に接しながら静かに滴下し、10秒後の広がりを測定する。高粘性液を滴下してから30秒経過したところで、50×50mm厚さ5mmのアクリルプレートを表面シート上における高粘性液が拡散している部位の中心に載せ、さらに重りによって該高粘性液に対する荷重が20g/m2となるように調整する。加圧1分後に重り及びアクリルプレートを取り除き、加圧後
の液の拡がり面積を求める。加圧前後での液の拡がり面積の差分を、加圧前の液の拡がり面積で除した値をパーセント表示として拡散率を求める。該拡散率が低いほど、液拡がりが少なく、表面シートよりも下層側(低密度シート側)に液が移行していると評価できる。該拡散率は30%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、負の値が最も好ましい。
前記疑軟便は次のようにして調製した。スキムミルク〔雪印乳業(株)〕100gと小麦粉〔日清製粉(株)〕100gを容器中で十分に混合し、更にスターラーで攪拌しながら500gのイオン交換水中に徐々に加えた。更に500gのイオン交換水を加えこれらを完全に分散させたあと、前記容器を90℃のウォーターバスに入れて90分間攪拌した(攪拌速度;32rpm)。攪拌終了後、容器ごと氷水で冷却し、容器内が50℃以下になってから防腐剤(Proxel XL−2)を3.6g加えた。更に、スパーテルで十分攪拌した後、冷蔵庫に入れて次の日まで放置し、ストック溶液を得た。使用に際しては該ストック溶液にイオン交換水を加え、液温25℃での粘度300mPa・sに調整した。尚、疑軟便の粘度はブルックフィールド型粘度計(東京計器(株)製)にて測定した。
<べたつき感>
前記<液拡がり>の評価において、加圧1分後に重り及びアクリルプレートを取り除いた後の表面シートの表面状態(液の残り具合)を目視で観察すると共に、加圧された部分を指で触ってその触感を確認し、両結果から総合的にべたつき感を評価する。表面状態は、高粘性液の残り具合を3段階で評価し、高粘性液の残りが広がり部分の10%未満である場合を○、10%以上30%以下である場合を△、30%を越える場合を×とする。液の残り具合は、光沢の有無を基準に行うことが好ましい。一方、触感は、表面シートの表面を指で触ったときに濡れを感じない場合を○、濡れを感じる場合を×とする。
<滑らかさ>
サンプルの表面シートを幅方向及び長手方向の両方向に沿って指で触り、ざらつきが感じられない場合を○、多少ざらつく場合を△、ざらつく場合を×とする。ざらつき感が少ないほど、装着感に優れる。
Figure 0005016020
表1に示すように、実施例1〜4は、比較例1〜4に比して拡散率(液拡がり)が低く、加圧後の液残り状態、特にべたつき感に優れている。また実施例1〜3は、厚み調整をおこなった表面シートを使用しているため、表面シートの滑らかさに優れ、装着感が一層向上している。また、実施例1〜4のように拡散率(液拡がり)が20%以下の場合、表面シートの構成繊維の接触角度が親水性でありながら弱い親水性とされているため、表面シートで液が広がらず、溝部から低密度シートに容易に移行していることがわかり、特に実施例3のように拡散率が負の値の場合は、さらに表面シートの汚れを起こし難く、液が素早く低密度シートに移動している。
1 おりものシート(吸収性物品)
10 表面シート
11 裏面シート
12 低密度シート
15 シール部
20 畝部
21 畝部の頂部
30 溝部
31 開孔

Claims (4)

  1. 肌当接面側に表面シートを備えた縦長のおりものシートにおいて、
    前記表面シートは、前記おりものシートの長手方向に延びる畝部及び溝部を交互に有し且つ該溝部に開孔を有する不織布からなり、該不織布の構成繊維の接触角度が60〜85°であって、該表面シートの表面は低親水性であり、
    前記表面シートの非肌当接面側に、前記溝部に比べて繊維密度が低い低密度シートが、該表面シートに隣接して配されており、
    前記開孔はその端部が、前記表面シートにおける前記低密度シートとの対向面側に突出し且つ該低密度シートに接触しており、
    前記畝部は、前記不織布の構成繊維で満たされ且つ前記溝部に比べて繊維量が多く、且つ前記畝部は、前記おりものシートの幅方向での断面において、該畝部の頂部が上に向かって凸に湾曲し且つ該頂部から下部に向かうにつれて幅が増大しているおりものシート
  2. 前記低密度シートの構成繊維は、該低密度シートの厚み方向に配向している請求項1記載のおりものシート
  3. 前記表面シートと前記低密度シートとがエンボス加工により一体化されている請求項1又は2記載のおりものシート
  4. 前記低密度シートは前記表面シート側から上層及び下層を順次積層してなり、該上層は該下層に比べて繊維密度が低い請求項1〜の何れか一項に記載のおりものシート
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