JP5015463B2 - 粘着付与剤樹脂エマルション - Google Patents
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Description
特に、近年は、シックハウス症候群などのVOCの問題、作業衛生面や安全性などの観点から、従来の溶剤型粘着剤に代えて、環境保全に資する水系エマルション型のものに大きく転換されつつある。
その従来技術は次の通りである。
粘着付与剤樹脂が、ロジン又はその誘導体と、水添石油樹脂及び水添テルペン樹脂から選ばれた少なくとも1種以上の樹脂とからなり、この粘着付与剤樹脂をアクリル系共重合体溶液に配合したアクリル系感圧性接着剤組成物が開示されている(請求項1、段落37〜38参照)。
粘着付与剤樹脂が、ロジン系エステルとこれ以外のタッキファイアー(テルペン系樹脂と炭化水素樹脂など:請求項5参照)を併用したもので、これをスチレン系ブロック共重合体に配合して粘着剤を構成することが開示されている(請求項1、段落23〜28参照)。また、実施例には、ロジン系エステルと、テルペン系樹脂及び芳香族系石油樹脂の混合物とを併用した例が記載されている(表1参照)。
重合ロジンと水添ロジンなどとの混合物よりなるロジン成分をエステル化したロジンエステルを粘着付与剤成分として、エチレン系共重合体などのベースポリマーに配合したホットメルト型接着剤組成物が開示されている(請求項1、請求項5参照)。また、粘着付与剤成分としては、ロジンエステルと、テルペン樹脂や石油樹脂などの他の粘着付与剤成分とを併用できることが記載されている(段落31〜32参照)。
粘着付与剤として、(a)水素化石油樹脂および水素化テルペン樹脂から選ばれる少なくとも1種と、(b)ロジンフェノール樹脂との混合物を使用し、これをエチレン系共重合体(ベースポリマー)に配合したホットメルト型接着剤が開示されている(請求項1参照)。また、粘着付与剤として水素化テルペン樹脂とロジンフェノール樹脂を併用した実施例3が記載されている(表1参照)。
粘着付与樹脂が、軟化点115℃〜135℃のロジン系粘着付与樹脂及び反応性水酸基含有ロジン系粘着付与樹脂の特定量、及び加熱反応型アルキルフェノール樹脂もしくはポリオール型キシレン樹脂の特定量からなる混合樹脂であり、これをアクリル系ポリマー溶液に配合した粘着剤組成物が開示されている(請求項1〜2、段落25参照)。また、粘着付与樹脂には、ロジン系、石油樹脂系、テルペン樹脂系があることが記載されている(段落12参照)。
しかしながら、冷凍食品などの品名・品質表示ラベルなどに適用した場合、例えば、この粘着付与剤樹脂エマルションを用いた粘着ラベルを作成し、当該ラベルを約−20℃に保存した冷凍食品へ貼り付けようとすると、著しくタック性が低下して貼り付けが困難になるという問題が発生した。
そこで、この特許文献6のロジン系エマルションに加えて、さらに、低温タック性を付与する目的で、ロジン系以外の軟化点が90℃以下である他種の粘着付与剤樹脂エマルション(例えば、テルペン系樹脂などのエマルション)を併用添加して粘着性能を確認したが、特許文献6のロジン系エマルションが本来有する性能が出現しなくなるうえ、予想に反して低温タック性も付与できなかった(後述の試験例参照)。
そこで、本発明者らは、各種の粘着付与剤樹脂エマルションを適宜配合するのではなく、予め特定高軟化点で特定種の重合ロジン誘導体と特定低軟化点のテルペン系樹脂よりなる粘着付与剤樹脂を溶融混合させたうえで、この混合樹脂をまとめて乳化することにより、一つのエマルション粒子内に複数の粘着付与剤樹脂が相溶して存在する新しい発想の粘着付与剤樹脂エマルションを開発し、この乳化方法で得られたエマルションは上記特許文献6のロジン系樹脂が本来有する粘着物性を損なうことなく、低温タック性をも兼備できることを見い出して、本発明を完成した。
上記重合ロジン誘導体が、重合ロジンをアクリル酸又はフマル酸の少なくとも1種で変性した変性重合ロジンを多価アルコールでエステル化した変性重合ロジンエステルである
ことを特徴とする粘着付与剤樹脂エマルションである。
これに対して、本発明では、特定高軟化点で特定種の重合ロジン誘導体と特定低軟化点のテルペン系樹脂とを予め溶融混合し、この混合樹脂をまとめて乳化することにより、一つのエマルション粒子内に複数の粘着付与剤樹脂が相溶して存在させた状態で水中に分散させているため、対オレフィン粘着性と低温タック性を両立でき、或は、これらの特性の外、耐熱性、曲げ性などの複数の粘着物性バランスを良好に発揮できる。
上記酸変性重合ロジンエステルの具体例としては、重合ロジンをアクリル酸又はフマル酸の少なくとも1種で変性した変性重合ロジンを多価アルコールでエステル化した、アクリル酸変性重合ロジンエステル、フマル酸変性重合ロジンエステル、アクリル酸・フマル酸変性重合ロジンエステル、或は、これらの混合物が挙げられる。
上記二量化反応を施す原料ロジン類には、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジンなどが挙げられる。
上記アクリル酸などで酸変性する対象の重合ロジンは、重合ロジンのみを使用しても良いし、重合ロジンと単量体ロジン類との混合物でも良い。
当該単量体ロジン類としては、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジンなど(即ち、上記原料ロジン類に相当するもの)や、不均化ロジン、水添ロジンなどが挙げられる。また、重合ロジンとしては、ダイマー酸を30重量%以上含有したものが好ましく、より好ましくは60重量%以上のダイマー酸を含有し、130℃以上の軟化点を有する重合ロジンである。市販品としては、ダイマレックス、ダイマレックスA700、ポリペール、ポリレックス(イーストマンケミカル社製品)、シルバロスPR 295、シルバロスPRR−85(アリゾナケミカル社製品)などが好ましい。
また、重合ロジンと単量体ロジン類の混合物を酸変性する場合、その混合比率は、酸変性重量ロジンエステルに適正な軟化点を付与する見地から、重合ロジン/単量体ロジン類(重量比)=50/50〜100/0程度が好ましく、より好ましくは70/30〜100/0程度である。
即ち、先ず、適正なダイマー酸を含有する市販の重合ロジン、或は、市販の重合ロジンに単量体ロジン類を混合して含有率を調整したものを、不活性ガス雰囲気下で加熱溶解した後、攪拌しながら180〜200℃でアクリル酸を添加する。その後、徐々に220〜230℃まで昇温し、熟成した後、アクリル酸変性重合ロジンを得る。尚、原料ロジン類にアクリル酸を付加した後、或は、付加させながら水添又は不均化を行っても良い。
続いて、200℃程度まで冷却し、多価アルコールを添加した後、徐々に270〜280℃まで昇温し、同温度下で脱水縮合反応を行ってアクリル酸変性重合ロジンエステルを得る。尚、エステル化の途中、又はエステル後に、不均化、水添などの化学変性を行っても良い。
上記アクリル酸変性に際しては、アクリル酸モノマーを加熱溶解した重合ロジンに滴下または一括添加するが、添加量は全重合ロジン100重量部に対して、有効成分で0.5〜10重量部の添加が適量であり、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは2〜5重量部である。
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール、ジペンタエリスリトール等の6価アルコール、或いはトリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン等のアミノアルコールなどが挙げられる。
得られたアクリル酸変性重合ロジンエステルは、アクリル酸変性とエステル化によって、高軟化点であるにも拘わらず、ベースポリマーとの相溶性も比較的良好である。
また、フマル酸変性重合ロジンエステルの製造方法は、上記アクリル酸変性重合ロジンエステルのそれに準じる。
さらに、他の好ましい酸変性重合ロジンエステルとして、重合ロジンをマレイン酸で変性し、これをエステル化したマレイン酸変性重合ロジンエステルが挙げられる。
本発明2に示すように、テルペン系樹脂にあっては、テルペン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン重合体が好ましい。
上記テルペン重合体とは、α−ピネン及び/又はβ−ピネン、及び/又はリモネンを触媒存在下で重合させた樹脂である。β−ピネン重合体とは、上記3つの単量体のうち、特にβ−ピネンの相当量が多い樹脂である。テルペンフェノール樹脂とは、フェノール、ホルマリン、及びテルペン類とを縮合させた樹脂である。芳香族変性テルペン重合体とは、各種のテルペンモノマーと芳香族モノマーとを共重合させた樹脂や、テルペン重合体に存在する炭素六員環をベンゼン環変性させた樹脂である。
上記テルペン重合体の市販品には、YSレジンPX800、YSレジンA800(α−ピネン重合体)、ダイマロン、YSオイルDA(ヤスハラケミカル(株)製)などがあり、β−ピネン重合体には、YSレジンPX300N(ヤスハラケミカル(株)製)などがあり、テルペンフェノール樹脂には、YSポリスター80T、YSポリスター30T(ヤスハラケミカル(株)製)などがあり、芳香族変性テルペン重合体には、YSレジンTO85(ヤスハラケミカル(株)製)などがある。
また、テルペン重合体、β−ピネン重合体などで代表されるテルペン系樹脂の軟化点は100℃以下であることが必要であり、好ましくは90℃以下である。軟化点が100℃より高くなると、低タック性が損なわれる恐れがある。
従って、対オレフィン粘着力と低温タック性の粘着物性バランスを良好に確保する見地から、重合ロジン誘導体は150〜180℃の高軟化点を有し、且つ、テルペン系樹脂は100℃以下の低軟化点を有することが重要である。
重合ロジン誘導体とテルペン系樹脂の混合割合は、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂=40〜85重量部/60〜15重量部であることが必要であり、好ましくは重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂=50〜80重量部/50〜20重量部である。
重合ロジン誘導体が40重量%より少ないと、対オレフィン粘着力が損なわれる恐れがあり、重合ロジン誘導体が85重量%より多いと、テルペン系樹脂の割合が過小になり、低温タック性が低下する恐れがある。
重合ロジン誘導体とテルペン系樹脂の溶融混合は任意の方法で行えば良く、特段の制約はない。例えば、重合ロジン誘導体とテルペン系樹脂とを加熱溶融して混合しても良いし、両者を溶剤に溶解させて混合溶液としても良い。
予め溶融混合した上記粘着付与剤樹脂をまとめて乳化させる際の乳化剤は特に限定されることなく、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の各種の乳化剤が使用でき、アニオン系及びノニオン系乳化剤の単用又は併用が好ましい。その使用量は固形の粘着付与剤樹脂100重量部に対して1〜10重量部が適当であり、好ましくは1〜5重量部である。
上記アニオン系乳化剤には、有機スルホン酸、硫酸エステルのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられ、具体的には下記の(1)〜(6)などである。
(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類。
(2)ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどのアルキル(又はアルケニ
ル)硫酸エステル塩類
(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイ
ルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル塩類。
(4)ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン
スチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類。
(5)モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、
ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸2ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩並びにその誘導体類。
(6)アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどのアルキルジアリールエ
ーテルジスルホン酸塩並びにその誘導体類。
また、上記ノニオン系乳化剤としては下記の(1)〜(7)などが挙げられる。
(1)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなど
のポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル類。
(2)ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニ
ルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類。
(3)ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪
酸エステル類。
(4)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタ
ン高級脂肪酸エステル類。
(5)ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエートなどのポ
リオキシエチレン高級脂肪酸エステル類。
(6)オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高
級脂肪酸エステル類。
(7)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー。
上記合成高分子系乳化剤とは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアマイド、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの重合性モノマーを2種以上重合させて得られる重合体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどのアルカリ類で塩形成させて水に分散又は可溶化させた水分散性重合体である。
また、上記モノマーの他にも、重合可能なモノマー類を限定されることなく使用でき、重合方法も特に制約されることはない。
上記溶剤型乳化法は、粘着付与剤樹脂をメチレンクロライド等の塩素系炭化水素溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、或は溶解可能な溶剤類などの有機溶剤に溶解させ、乳化剤と水を混合溶解した乳化水を予備混合して、粗粒子の水性エマルションを調製した後、各種ミキサー、コロイドミル、高圧乳化機、高圧吐出型乳化機、高剪断型乳化分散機などを用いて微細乳化した後、常圧或は減圧下で加熱しながら上記有機溶剤を除去する方法である。
上記無溶剤乳化法は、常圧或は加圧下で溶融した粘着付与剤樹脂と乳化水を予備混合し、粗粒子の水性エマルションを調製した後、各種乳化分散機を用いて同様に微細乳化させる方法である。
また、上記転相乳化法は、常圧或は加圧下で粘着付与剤樹脂を加熱溶融した後、攪拌しながら乳化水を徐々に加えて先ず油中水型エマルションを形成させ、次いで水中油型エマルションに相反転させる方法であり、溶剤法或は無溶剤法いずれの方法でも可能である。
上記アクリルエマルションは、(メタ)アクリル酸とC1〜C18のアルキルアルコールとのエステル単量体を反応させて得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体を主成分とする水分散物である。
上記エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどが挙げられるが、主成分としては、アクリル酸n−ブチル及び又はアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましく、他の単量体を1種以上使用することもできる。
上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は上記単量体の他にも、重合性のビニル系単量体の少なくとも1種を共重合させることができる。
上記重合性の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有単量体を使用することができ、さらに、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピロリドンなどの窒素含有単量体や、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのビニル基含有単量体を使用することもできる。
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量部中に、当該単量体の1種又は2種以上を、20重量部以下、好ましくは10重量部以下の割合で共重合させて使用することもできる。
共重合反応を行う際の界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系乳化剤が使用できるが、アニオン系及び又はノニオン系乳化剤が好ましい。当該乳化剤の具体例としては、前記粘着付与剤樹脂エマルションの製造に際して記載した各種乳化剤を単用又は併用できる。
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩の他に、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物及びアゾビスイソブチロニトリルなども使用できる。また、比較的低温で重合を行う場合には、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムなどの還元剤を併用してレドックス重合させることもできる。
また、生成する重合体の重合速度の制御を目的として、各種塩類も添加でき、重合体の分子量を制御するためにドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなどの連鎖移動剤、及びα−メチルスチレンダイマーなどの分子量調整剤を使用することもできる。
また、粘着剤を塗工乾燥する工程で造膜速度を改善するために、各種高沸点溶剤類などの造膜助剤を少量添加することもできる。
前記天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスの製造については、上記アクリルエマルションに準じる。
より具体的には、本発明の粘着付与剤樹脂エマルションは、アクリルエマルションに対しては固形分100重量部に5〜30重量部、SBRラテックス及びCRラテックスでは同じく10〜50重量部添加することが好ましい。
尚、本発明は下記の実施例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
製造例1は軟化点177℃のアクリル酸変性重合ロジンエステルの例、製造例2は軟化点166℃のフマル酸変性重合ロジンエステルの例である。
また、比較製造例1は軟化点が本発明の特定範囲より低いアクリル酸変性重合ロジンエステルの例である。
尚、図1に、製造例1〜2及び比較製造例1で使用したロジン系樹脂及び付加酸の種類、得られた重合ロジン誘導体の軟化点、酸価などをまとめた。
攪拌装置、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、重合ロジン(重合部66.0%、酸価150、軟化点133℃)100部を仕込んだ後、窒素ガスを吹き込みながら加熱溶融させた。その後、攪拌を開始して190℃に温度を維持した。続いて、98%アクリル酸5.1部を滴下漏斗に秤量し、滴下しながら加え、220℃まで昇温して3時間反応させてアクリル酸変性重合ロジンを得た。得られた樹脂の性状は、酸価172.4、軟化点144℃であった。
次いで、内温を190℃まで冷却し、当該アクリル酸変性重合ロジン100部に対してペンタエリスリトール13.1部を添加した。その後、徐々に280℃まで昇温して、8時間脱水縮合反応させた。得られたアクリル酸変性重合ロジンエステルの軟化点は177℃、酸価は14.4であった。
上記製造例1を基本として、重合ロジン100部を仕込み加熱溶融させた。その後、攪拌を開始して190℃に温度を維持した。続いて、フマル酸2.0部を加えた後、210℃で2時間反応させてフマル酸変性重合ロジンを得た。得られた樹脂の性状は、酸価156.2、軟化点138℃であった。
次いで、内温を190℃に維持して、当該フマル酸変性重合ロジン100部に対してペンタエリスリトール11.8部を添加した。その後、徐々に280℃まで昇温して、8時間脱水縮合反応させた。得られたフマル酸変性重合ロジンエステルの軟化点は166℃、酸価は18.3であった。
前記製造例1を基本として、重合ロジン50部と中国産ガムロジン50部(酸価169、軟化点80℃)を仕込み、加熱溶融させた。その後、攪拌を開始して190℃に温度を維持した。続いて、98%アクリル酸0.6部を滴下しながら加え、220℃まで昇温し、3時間反応させてアクリル酸変性重合ロジンを得た。得られた樹脂の性状は、酸価160.4、軟化点108℃であった。
次いで、内温を190℃まで冷却し、当該アクリル酸変性重合ロジン100部に対してペンタエリスリトール12.2部を加え、脱水縮合反応させた。得られたアクリル酸変性重合ロジンエステルの軟化点は132℃、酸価は16.5であった。
《粘着付与剤樹脂エマルションの実施例》
実施例1〜8のうち、実施例1、2は上記製造例1の重合ロジン誘導体と後述のテルペン系樹脂1(軟化点85℃)とを予め溶融混合して、各種樹脂をまとめて乳化した例、実施例3、4は上記製造例1の重合ロジン誘導体と後述のテルペン系樹脂2(軟化点30℃、常温で半固形状)とを予め混合溶融して、各種樹脂をまとめて乳化した例、実施例5、6は同様に上記製造例2の重合ロジン誘導体とテルペン系樹脂1とを使用した例、実施例7、8は同様に上記製造例2の重合ロジン誘導体とテルペン系樹脂2とを使用した例である。
また、奇数番号の実施例は重合ロジン誘導体とテルペン系樹脂との混合比率が、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂=50部/50部の例であり、偶数番号の実施例は同混合比率が重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂=80部/20部の例である。
尚、図2には、実施例1〜8で使用した重合ロジン誘導体及びテルペン系樹脂の種類と軟化点、各樹脂の配合比率、得られたエマルションの固形分比率及び粒子径などをまとめた。図3には、比較例1〜9についての同様の事項並びに数値をまとめた。
(a)重合ロジン誘導体
上記製造例1で得られた重合ロジン誘導体
(b)テルペン系樹脂1
ヤスハラケミカル株式会社製のYSレジン TO85
(組成:芳香族変性テルペン重合体、軟化点:85℃)
上記(a)の重合ロジン誘導体(製造例1)と上記(b)のテルペン系樹脂1を、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂1=50%/50%の割合で予め混合した後、当該混合物の合計100部をトルエン100部に溶解させて、トルエン溶液を得た。
次いで、乳化剤としてソフタノールMES−9(日本触媒社製品:有効成分24%)12.5部を水116部に希釈溶解して乳化水溶液を調製し、この乳化水溶液を上記トルエン溶液に添加した後、攪拌混合して予備乳化を行った。
得られた予備乳化物をマントンガウリン社製高圧乳化機によって300kg/cm2の圧力で乳化して乳化物を得た。この乳化物を110mmHgの条件下で加熱減圧蒸留してトルエンを除去し、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。その後、得られた粘着付与剤樹脂エマルションにアンモニア水を添加し、pHを7.0に調整した。また、適量の水を添加し、固形分を50%に調整した。
上記製造例1を基本として、重合ロジン誘導体(製造例1)とテルペン系樹脂1の混合割合を、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂1=80%/20%に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、テルペン系樹脂1を下記のテルペン系樹脂2に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
テルペン系樹脂2:ヤスハラケミカル株式会社製のYSレジン PX300N
(組成:β−ピネン重合体、軟化点:30℃)
前記実施例1を基本として、テルペン系樹脂1をテルペン系樹脂2に変更し、重合ロジン誘導体(製造例1)とテルペン系樹脂2の混合割合を、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂1=80%/20%に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、重合ロジン誘導体を前記製造例2に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、重合ロジン誘導体を前記製造例2に変更し、重合ロジン誘導体(製造例2)とテルペン系樹脂1の混合割合を、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂1=80%/20%に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、重合ロジン誘導体を前記製造例2に変更し、また、テルペン系樹脂をテルペン系樹脂2に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、重合ロジン誘導体を前記製造例2に変更し、テルペン系樹脂をテルペン系樹脂2に変更し、また、重合ロジン誘導体(製造例2)とテルペン系樹脂2の混合割合を、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂1=80%/20%に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、テルペン系樹脂を用いず、製造例1の重合ロジン誘導体のみを使用し(従って、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂=100%/0%である)、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、重合ロジン誘導体を用いず、テルペン系樹脂1のみを使用し(従って、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂1=0%/100%である)、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
比較例1の操作により得られた粘着付与剤樹脂エマルションと、比較例2の操作により得られた粘着付与剤樹脂エマルションとを、固形重合比換算で重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂1=50%/50%になるよう混合し、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、重合ロジン誘導体(製造例1)とテルペン系樹脂1の混合割合を、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂1=20%/80%に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、重合ロジン誘導体(製造例1)とテルペン系樹脂1の混合割合を、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂1=90%/10%に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、重合ロジン誘導体を前記比較製造例1に変更し、その他の条件を実施例1と同様に操作して、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、テルペン系樹脂を下記のテルペン系樹脂3に変更し、その他の条件を実施例1と同様にして、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
テルペン系樹脂3:ヤスハラケミカル株式会社製のYSレジン TO105
(組成:芳香族変性テルペン重合体、軟化点:105℃)
前記実施例1を基本として、重合ロジン誘導体を前記比較製造例1に変更し、テルペン系樹脂1をテルペン系樹脂3に変更し、その他の条件を実施例1と同様にして、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
前記実施例1を基本として、テルペン系樹脂1を下記の石油系樹脂に変更し、その他の条件を実施例1と同様にして、粘着付与剤樹脂エマルションを得た。
石油系樹脂:日本ゼオン株式会社製のクイントン U185
(組成:脂肪族系炭化水素樹脂、軟化点:85℃)
測定装置(LA−920;堀場製作所製)を用いて、タングステンランプの透過率(即ち、測定装置における透過率(H))で80〜85%になるように、実施例及び比較例の各粘着付与剤樹脂エマルションを蒸留水で希釈し、且つ、相対屈折率を1.2とする条件で測定し、その結果をコンピューター処理して、得られた算術平均径をエマルションの平均粒子径(μm)とした。実施例と比較例の各エマルションの平均粒子径は図2〜図3の最下欄にまとめた。
先ず、ベースポリマーとしてのアクリル系重合体エマルションの製造方法は次の通りである。
攪拌装置、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガス気流下で、イオン交換水47.7部および還元剤(重亜硫酸ナトリウム)0.1部を溶解し、水溶液(A)とした。
また、イオン交換水34.5部にポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル1.5部とポリエチレングリコールオレイルエーテルスルホン酸アンモニウム1.5部を溶解させ、そこへアクリル酸2−エチルヘキシル97.0部とメタクリル酸3.0部と触媒(過硫酸アンモニウム)0.5部を加えてホモミキサーで予備乳化し、分散液(B)とした。
前記水溶液(A)を82℃に保ち、そこへ上記分散液(B)を4時間かけて滴下重合を行った。分散液(B)の全量を滴下し終わった後、82℃で1時間反応を行い、イオン交換水1.5部に還元剤(重亜硫酸ナトリウム)0.1部と触媒(過硫酸アンモニウム)0.1部を溶解したものを加えた。
さらに1時間完結反応を行い、冷却した後、150メッシュの金網でろ過して、固形分54.8%のアクリル系重合体エマルションを得た。
次いで、上記アクリル系重合体エマルション100部(固形分換算)に対して、実施例1〜8及び比較例1〜9の各粘着付与剤樹脂エマルションを10部(固形分換算)と、粘度調整剤としてプライマルASE−60(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製)と、アンモニア水を微量添加した。その後、調整水を加えて固形分を調整し、水性エマルション型アクリル系粘着剤を製造した。
上記実施例1〜8及び比較例1〜9の各粘着付与剤樹脂エマルションを用いた水性粘着剤を、乾燥後の塗膜厚が30μmとなるように、厚さ25μmのPETフィルム上に塗工し、120℃にて5分間乾燥させて粘着シートを作成し、下記の各種性能評価試験に供した。
JIS−Z0237に記載されたJ.Dow法に準じながら、測定雰囲気温度を5℃に変更し、傾斜角30度の平滑斜面上に貼りつけた上記粘着シート上に1/32(鋼球No.1)〜32/32(鋼球No.32)インチの鋼球を転がし、シート上で停止する最大鋼球の番号を測定した。
従って、当該試験では、鋼球番号が大きいほどタック性能が良いものと判断できる。
JIS−Z0237を基本とし、被着体としてポリエチレン板を用いて、これに25mm幅の上記粘着シートを貼り付け、20分後に180度方向へ300mm/分の速度にて引き剥がしたときの剥離強度を測定した。
重合ロジン誘導体エマルションのみを使用した比較例1では、低温タックが顕著に劣った。テルペン系樹脂エマルションのみを使用した比較例2では、対オレフィン粘着力がかなり低かった。また、重合ロジン誘導体エマルションとテルペン系樹脂エマルションを混合した比較例3では、粘着力は比較例1より低下し、低温タックも改善されずに大きく損なわれた。
これに対して、実施例1〜8では、低温タックと対オレフィン粘着力が共に良好に改善され、これら複数の粘着物性バランスに優れることが確認できた。
従って、低温タックと粘着力の粘着物性バランスを良好に発揮させるためには、粘着付与剤樹脂の各エマルションの夫々を単に混合するだけではまったく目的を達成できず、重合ロジン誘導体とテルペン系樹脂を予め溶融混合した粘着付与剤樹脂をまとめて乳化することの重要性が明らかになった。また、これにより、本発明の乳化方式による樹脂同士の良好な相溶性が裏付けられた。
従って、これら比較例6〜8と実施例1〜8を対比すると、樹脂を予め溶融混合した後にまとめて乳化する方式では、粘着物性バランスの面から、重合ロジン誘導体は特定の高軟化点を有し、且つ、テルペン系樹脂は特定の低軟化点を有することの重要性が確認できた。
従って、これら比較例4〜5と実施例1〜8を対比すると、樹脂を予め溶融混合した後にまとめて乳化する方式にあっては、粘着物性バランスの点で、重合ロジン誘導体とテルペン系樹脂の配合比率を特定化することの重要性が確認できた。
最後に、重合ロジン誘導体と石油樹脂を溶融混合した後にまとめて乳化した比較例9では、重合ロジン誘導体が有する粘着力が大きく損なわれるうえ、低温タックも劣ることから、低温タックと粘着力の粘着物性バランスを良好にするためには、重合ロジン誘導体と溶融混合するべき対象の粘着付与剤樹脂はテルペン系樹脂であることの必要性が確認できた。
Claims (3)
- 軟化点が150〜180℃である重合ロジン誘導体と、軟化点が100℃以下のテルペン系樹脂とを、重合ロジン誘導体/テルペン系樹脂=40〜85重量部/60〜15重量部の比率で予め溶融混合し、この混合樹脂を水中に分散させるとともに、
上記重合ロジン誘導体が、重合ロジンをアクリル酸又はフマル酸の少なくとも1種で変性した変性重合ロジンを多価アルコールでエステル化した変性重合ロジンエステルであることを特徴とする粘着付与剤樹脂エマルション。 - テルペン系樹脂が、テルペン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール樹脂及び芳香族変性テルペン重合体の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の粘着付与剤樹脂エマルション。
- 粘着付与剤樹脂エマルションの平均粒子径が0.10〜0.50μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着付与剤樹脂エマルション。
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