本発明は、各家庭や工場等から排出される汚水や雨水を大気圧と負圧源との圧力差を利用して収集する真空流体搬送システムに関し、特に、水上コテージ等、管路を水平若しくは上り勾配を与えて設置する場合に用いて好適な真空流体搬送システムに関する。
(優先権の主張)
本願は、2005年12月27日に日本国特許庁に出願された特願2005−374046号に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、図16に示すような真空流体搬送システムとしての真空式下水道システムが知られている(例えば、特開平8−319662号公報(段落0018乃至0051、図1)参照)。
このような従来の真空式下水道システムでは、民家、集合住宅、各種施設等の建物1から排出される流体としての汚水6が、自然流下により、真空弁3が設置された集水升としての汚水升2内に、一時貯留される。
この汚水升2内では、前記汚水6が、一定量に到達すると、前記真空弁3が開放されて、この汚水升2内の汚水の水面に作用する大気圧と、真空下水管4に対して、真空ポンプ施設5から付与される真空圧との差圧により、真空ポンプ施設5方向へ、前記汚水6が搬送されるように構成されている。
このような真空式下水道システムでは、前記真空下水管4が、1〜3%程度の下り勾配部4a…と、これらの下り勾配部4a,4a間に位置して、所定の間隔を置いて上り勾配が与えられるリフト部4b…とが、交互に位置して連続した鋸歯状に配管されて主に構成されている。
次に、この従来例の作用効果について説明する。
このように構成された従来の真空流体搬送システムでは、前記真空弁3の開放タイミングや、空気量の調整、及び前記リフト部4b…のリフト形状やリフト量を調整することによって、汚水搬送量が設定されるように構成されている。
そして、前記リフト部4bに一時的に汚水が滞留して、「水栓」が形成されることにより、通過する空気と共に、気液混相流が形成されて、真空下水管4内を下流側方向へ搬送される。
すなわち、前記真空ポンプ施設5に設けられた真空ポンプの作動で、下流側が、比較的高い真空度の真空状態となり、上流側の空気圧との圧力差が利用されて、前記汚水が、この真空下水管4の管路内を、下流側に向けて搬送される。
この際、汚水に比して空気の方が流速が早いため、汚水6内を空気が通り過ぎた後は、汚水6の持っている推力と、管路の勾配に従って、これらの汚水6は真空下水管4内を流れる。
このため、最終的には、空気と、汚水6とが分離された気液分離状態で、下流側の次のリフト部4bに滞留する。
このリフト部4bに滞留した汚水6は、いわゆる「水栓」となり、上流側の何れかの真空弁3…の作動によって、前記真空ポンプ施設5側に吸引される空気が通過する際、この空気と共に、気液混相流が形成されて、このリフト部4bを乗り越えて、真空下水管4内を下流側方向へ搬送される。
なお、自動吸気システムを大気の供給に用いて圧力を低減させる真空流体搬送システムも知られている(例えば、特開2000−144868号公報(段落0021、段落0022、段落0041乃至段落0121、図2)参照)。
また、前記真空下水管4とは、別に設けられた均圧管に、一方向への空気の流れを許容する逆止弁が設けられた真空流体搬送システムも知られている(例えば、特開2002−180527号公報(段落0020、図1)参照)。
更に、前記真空下水管4に、「水栓」を形成させる為のリフト部4b…に相当するポケット部を形成した物も知られている(例えば、特開平11−222908号公報(段落0013乃至段落0020、図1)参照)。
しかしながら、このような従来の真空流体搬送システムでは、前記真空弁3の開放タイミングや、空気量の調整、及び前記リフト部4b…のリフト形状やリフト量を調整することによって、汚水搬送量が設定されている。
また、管路内に汚水が滞留して、所望の真空度が得られなくなるいわゆるエアロック(ウォーターブロック)を生じさせないように、前記リフト部4b…のリフト形状やリフト量を設定しなければならず、設計が煩雑であると共に、施工も容易であるとは言い難かった。
更に、リフト部4bによって、滞留された汚水6は、いわゆる「水栓」を構成して、上流側の何れかの真空弁3…の作動によって、間欠的に、気液混相流として、これらのリフト部4bを乗り越えて、次のリフト部4bに到達するように搬送される。
このため、リフト部4bを用いて、複数の「水栓」を構成する為には、必ず下り勾配部4aを組み合わせて、鋸歯形状の多段リフト配管を構築しなければならない。
従って、図17に示すような水辺7に設けられる桟橋8上の複数の水上コテージ9…等の建物の汚水収集システムに適用しようとすると、高さ方向の設置スペースが制約される桟橋8の下方で、所望のリフト形状やリフト量を設定して、施工することは困難であった。
また、従来考案されているような、単に水平配管と気液混合用のポケットを形成する水平配管システムは、空気の流入を真空弁のみに依存するシステムであり、設計上の配管長を伸ばせないばかりか、一度エアロックを発生させた場合には解除が非常に難しく、安定したシステムとして運用できない危険性がある。
そこで、この発明は、エアロックが発生した場合にも、エアロックの解除を自動的に行えて、水平配管を可能とすることにより、設置箇所の汎用性を向上させた流体搬送効率の良好な真空流体搬送システムを提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、本願発明の第1の特徴は、管路内を真空とすることにより、圧力差を利用して流体を搬送する真空流体搬送システムであって、前記管路は水平に配管される部分を含むものであり、管路内の真空度が、所定値以下に低下した際に、大気を該管路外から管路内へ導入する自動吸気装置を設けることである。
ここで、水平に配管される部分とは、若干の上り勾配若しくは下り勾配及びこれらが複合された勾配を有する複合配管も含まれ、設置箇所の設置スペース効率を損なわない程度の約1〜3%程度の上り勾配若しくは下り勾配を含むものである。
又、管路の配管パターンが、水平部、上り傾斜部、水平部の配管パターンや、水平部、下り傾斜部、水平部の配管パターン、或いは水平部の配管パターンの何れであってもよく、これらの3つの配管パターンが複合された組み合わせ配管パターンであっても含まれる。
本願発明の第2の特徴は、前記管路の一部に集水升が接続されると共に、該集水升には、内部に貯留される流体が一定量となると、開放されて大気を導入することより、集水升内の流体を管路を介して送出する真空弁が設けられていることである。
本願発明の第3の特徴は、前記管路内の真空度の低下で、流体が滞留する流体滞留部を設け、前記自動吸気装置の下流側を該流体滞留部内に位置させることである。
本願発明の第4の特徴は、前記流体滞留部は、前記管路から下方に向けて分岐された分岐管内に設けられていることである。
本願発明の第5の特徴は、前記分岐管は、前記管路から、斜め下方に向けて分岐されて、合流方向が、前記管路の流体通過方向に沿うように前記管路に対して鋭角に接続された分岐管路を有したY字管部に設けられていることである。
本願発明の第6の特徴は、前記流体滞留部は、水平部から上り傾斜部、水平部、下り傾斜部、水平部と続く配管路で形成されていることである。
本願発明の第7の特徴は、前記流体滞留部は、前記管路を下方に凸状とすることで内部に形成されるポケット部であることである。
本願発明の第8の特徴は、前記流体滞留部は、管路口径を部分的に小さくすることにより形成されていることである。
本願発明の第9の特徴は、前記管路の一部には、前記自動吸気装置の下流側に位置して、該管路を閉塞することにより、下流側の真空度が低下して、上流側の真空度が高くなる逆転現象が生じても、流体の逆流を防止する逆止弁が設けられていることである。
本願発明の第10の特徴は、前記自動吸気装置は、管路の最上流側の端部に設けられていることである。
この発明の最良の実施の形態の実施例1の真空流体搬送システムが適用される水上コテージの全体の構成を説明する水辺の模式的な縦断面図である。
実施例1の真空流体搬送システムで、桟橋の最も陸地から離間した部分の一部拡大側面図である。
実施例1の真空流体搬送システムで、要部の構成を説明する桟橋の一部拡大側面図である。
実施例1の真空流体搬送システムに用いられる自動吸気弁で、弁体が閉塞されている状態を説明する縦断面図である。
実施例1の真空流体搬送システムに用いられる自動吸気弁で、弁体が開放されている状態を説明する縦断面図である。
実施例1の真空流体搬送システムに用いられる自動吸気弁が、閉塞されている状態を示す一部断面図である。
実施例1の真空流体搬送システムに用いられる自動吸気弁が、開放された状態を示す一部断面図である。
実施例1の真空流体搬送システムに用いられる自動吸気弁で、開放による大気の導入で汚水が搬送されて、再びダイヤフラムが引き下げられる様子を示す一部断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例2の真空流体搬送システムで、水平配管の他の例を示す一部断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例3の真空流体搬送システムで、流体滞留部の要部の構成を説明する一部拡大断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例4の真空流体搬送システムで、流体滞留部の要部の構成を説明する一部拡大断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例5の真空流体搬送システムで、流体滞留部の要部の構成を説明する一部拡大断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例6の真空流体搬送システムで、流体滞留部の要部の構成を説明する一部拡大断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例6の真空流体搬送システムで、気液混送の様子を説明するB部の拡大断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例7の真空流体搬送システムで、流体滞留部の要部の構成を説明する一部拡大断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例7の真空流体搬送システムで、流体滞留部を構成する一対のレデューサ部材の側面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例7の真空流体搬送システムで、流体滞留部の軸方向に沿った拡大断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例8の真空流体搬送システムで、流体滞留部の要部の構成を説明する一部拡大断面図である。
この発明の最良の実施の形態の実施例8の真空流体搬送システムで、流体滞留部の構成を説明するA−A線に沿った位置での拡大断面図である。
一従来例の真空流体搬送システムで、地中に埋設されるリフト部を有する鋸歯状配管の一例を示す模式的な縦段面図である。
他の従来例の真空流体搬送システムで、水上コテージに鋸歯状配管を適用した様子を示す模式的な縦断面図である。
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の真空流体搬送システムについて説明する。
図1乃至図10は、この発明の実施の形態の真空流体搬送システムを示すものである。
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
まず、図1の構成から説明すると、この実施の形態では、水辺7に設けられる桟橋8上に、所定の間隔を置いて施工された複数の水上コテージ9…等の建物が設けられている。
これらの水上コテージ9…内には、各々図2に示すように、水洗トイレ12、浴槽13、洗面台14、キッチンシンク15等が設けられていて、各排水管11a,11bを介して、前記桟橋8下方へ向けて、汚水を自然流下させて、真空弁付汚水升2に、流入させるように構成されている。
また、主に水平に配管される部分と、若干の上り勾配若しくは下り勾配の部分とが複合された勾配を有する複合配管も含む主管路10の下流側端部は、陸地Gに設けられた真空ポンプ施設5内の集水タンクに連結されていて、この集水タンク内を真空ポンプの作動により、真空状態とすることにより、この真空弁付汚水升2から排出される主管路10内の汚水を搬送することが可能となるように構成されている。
図1乃至図9は、この発明の実施の形態の実施例1の真空流体搬送システムを示すものである。
まず、構成から説明すると、この実施例1の真空流体搬送システムでは、主管路10内の真空度が、所定値以下に低下した際に、大気をこの主管路10外から主管路10内へ導入する吸気装置としての端末自動吸気弁16及び所定間隔を置いて設置される複数の吸気装置としての自動吸気弁17…が、各々前記桟橋8の下面側に吊り下げられて設けられている。
このうち、前記自動吸気弁17の構成について、図4及び図5を用いて詳述する。
尚、前記端末自動吸気弁16については、最も陸地Gから離間した水上コテージ9の下方に、装着方向を90度異ならせて吊り下げられて、吸気音低減サイレンサ16aが装着されていること以外は、この自動吸気弁17と概略同様に構成されているので、説明を省略する。
図4に示すように、この自動吸気弁17は、主に、弁箱19と、この弁箱19に摺動自在に収納される弁体20と、この弁箱19との間に、ダイヤフラム22を狭持して水密状態で固定されるキャップ体21とを有して構成されている。
このうち、前記弁箱19には、空気導入管18の上流側部分の端部18a及び下流側部分の端部18bが、各々固定リング部材18c,18cのネジ部を螺合させることにより固定されると共に、止水リング部材18d,18dが介在されて、水密シール状態で接続される接続口部19a,19bが一体に設けられている。
また、前記弁箱19には、軸方向に沿って、前記弁体20を支持する調整ボルト部材23を中心位置とする略中空円筒形状の弁体収納凹部19cが設けられていて、半径方向に軸方向を有する円筒状の上流側隔室19dに、円形の流入孔部19eを介して連通されている。
更に、前記キャップ体21の頭頂部には、弁体の開閉のタイミングを調整する螺合部材21aが設けられている。
この螺合部材21aに形成された雌ネジ部には、調整ボルト部材23の雄ネジ部が螺合されている。
また、この調整ボルト部材23の下端には、支持鍔部材20cが固着されていて、この支持鍔部材20cの軸方向に沿った位置が、この調整ボルト部材23の螺合量の変更により、調整可能となるように構成されている。
また、前記弁体20の上側弁体20aの内部には、前記調整ボルト部材23が、上方から挿通されている。
この上側弁体20aの内部には、前記支持鍔部材20cに下端部24bを当接させて支持されるスプリング部材24が設けられていて、前記調整ボルト部材23が、このスプリング部材24の中央へ挿通されるように設けられている。
そして、このスプリング部材24の上端部24aに当接される鍔状部材20dを介して、前記上側弁体20aの上壁部内側面20eが、上方へ向けて付勢されている。
また、この弁体20の下端部には、テーパ状シール面部25aを有するガイド体25が、前記弁体20を構成する上側弁体20a,ダイヤフラム22,下側弁体20bと共に、固定用弁棒部材26によって共締めされて固定されている。
このうち、前記ダイヤフラム22は、弾性変形可能な熱可塑性エラストマー等によって構成されている。
また、前記弁体収納凹部19cは、半径方向に軸方向を有する円筒状の下流側隔室19gを介して、前記空気導入管18の端部18bから、図6に示すようなY字管部27に連通されている。
このY字管部27は、前記空気導入管18と一体に連設された分岐管28を有している。
この分岐管28は、前記主管路10から、斜め下方に向けて分岐されて、合流方向が、前記主管路10内の流体通過方向Fに沿うように前記主管路10に対して鋭角(この実施例1では、約30度乃至45度程度)に接続された分岐管路28aを有している。
また、前記空気導入管18の端部18aから延設される上流側部分は、鉛直方向へ立設される空気流入パイプ部材30に接続されている。
そして、図6に示すように、前記主管路10側からの負圧が、この弁体収納凹部19cに到達している場合には、前記スプリング部材24の付勢力に抗して、前記ダイヤフラム22が、下方に向けて引き下げられて、前記テーパ状シール面部25aによって、前記流入孔部19eの周縁部19fが、閉塞される。
また、図7に示すように、水頭hが、上昇して前記下流側隔室19g内に流体が満たされると、前記主管路10側からの負圧が、この弁体収納凹部19cに到達せずに、前記スプリング部材24の付勢力によって、前記ダイヤフラム22が、上方に向けて移動する。
このため、前記テーパ状シール面部25aと、前記流入孔部19eの周縁部19fとの間に、大気を通過させる隙間が形成されて、上流側隔室19dから前記弁体収納凹部19c方向へ向けて、気液混相流を形成する空気が導かれるように構成されている。
この実施例1では、図6及び図7に示すように、主管路10内の真空度の低下で、流体が、前記分岐管28内の分岐管路28aを流下して、流体滞留部としての空気導入管18の水平部内で、汚水6が滞留する部分に、この自動吸気弁17の下流側隔室19gの下流側が位置されている。
そして、水頭hが、前記空気導入管18の水平部の最上面位置又は、下流側隔室19gの最上面位置を超える高さ位置となった場合に、前記主管路10内に失われつつある負圧が、残存していても、前記弁体収納凹部19c内に負圧が到達しないように、水栓によるエアロック化を行い、前記自動吸気弁17が作動を開始する反応速度を向上させることができるように構成されている。
更に、この実施例1では、図2に示すように、前記端末自動吸気弁16が、最も陸地Gから離間した水上コテージ9の下方に、前記他の自動吸気弁17の装着方向とは、90度異ならせた装着状態で、吊り下げられている。
この端末自動吸気弁16では、下流側の主管路10との接続部分に、前記下流側隔室19gに隣接して、円弧状の下方に湾曲凸設される流体滞留部50が接続されている。
この流体滞留部50では、内部の汚水6が滞留する部分に、この自動吸気弁17の下流側隔室19gの内部空間が位置するように高さ方向位置が設定されている。
また、この実施例1では、図1及び図2に示すように、前記主管路10の一部に、前記汚水升2が接続されている。
この汚水升2には、内部に貯留される流体としての汚水6が一定量となると、開放されて大気を導入することより、汚水升2内の汚水6を、主管路10を介して送出する真空弁3が設けられている。
すなわち、この汚水升2では、内部に設けられた検知管によって、この汚水升2内に流入した汚水6が、一定量まで溜まったことが検知されると、前記真空弁3が開放されて、主管路10内に、この汚水6が送出されるように構成されている。
更に、この実施例1では、図1及び図3に示すように、前記主管路10の一部に、前記各自動吸気弁17の下流側に位置して、主管路10内の流体の逆流を防止する複数の逆止弁40…が設けられている。
この逆止弁40には、上辺側の回動軸を中心として、揺動自在に設けられて片開きに動作する揺動弁本体41によって、管路が開閉塞されることにより、下流側の真空度が低下して、上流側の真空度が高くなる逆転現象が生じても、流体の逆流が防止されるように構成されている。
また、この実施例1の真空流体搬送システムでは、気液混合箇所が少ない配管にて設計する場合、自動吸気によるエアロックの解除効果は得られるが、短時間に大量の流体が真空ステーションに搬送される可能性もある。
このような場合でも、時間最大汚水量にあたる汚水が、真空ポンプ施設5の集水タンクに連続流入する事を前提とした集水タンクの容量設計が行なわれていて、圧送ポンプの設計と同様に、集水タンクにオーバーフローが生じないように設定されている。
次に、この実施例1の真空流体搬送システムの作用について説明する。
このように構成されたこの実施例1の真空流体搬送システムでは、図1に示す前記真空ポンプ施設5内に設けられた真空ポンプの作動により、主管路10内が真空状態となる。
そして、図2に示す前記水上コテージ9の水洗トイレ12,浴槽13,洗面台14及びキッチンシンク15等の水廻り設備で使用された汚水6が、前記配水管11a,11b等を自然流下して、前記真空弁付汚水升2内に流入される。
この汚水升2では、内部に貯留される流体としての汚水6が一定量となると、内部に設けられた検知管によって、この汚水升2内に流入した汚水6が、一定量まで溜まったことが検知される。
この検知により、前記真空弁3が、開放されて大気が導入されることより、汚水升2内の汚水6が、主管路10内に送出される。
図6に示すように、前記汚水升2の真空弁3が開いて、送出された汚水6は、水平に配管された主管路10内では、汚水6の上流側の真空度と、下流側の真空度との差圧によって、主管路10の延設方向に沿うように、搬送力が与えられて、円滑に前記真空ポンプ施設5方向への汚水6の搬送が行われる。
この際、前記Y字管部27の分岐管28は、斜め下方に向けて接続されているので、一部の汚水6が、分岐管路28a内を流下する。
この実施例1では、分岐管28と連通する空気導入管18の下流側水平部は、主管路10に比して、小径に設定されている。
このため、図7に示すように、主管路10が、汚水6によってエアロックされて、更に汚水6が分岐管路28a内に流入する前に、汚水6の水頭hが、前記空気導入管18の水平部の最上面位置又は、下流側隔室19gの最上面位置を超える高さ位置となる。
このため、前記主管路10内がエアロック寸前で、失われつつある負圧が、残存していても、前記弁体収納凹部19c内に負圧が到達しないように、水栓によるエアロック化が行われる。
この実施例1では、分岐管28と連通する空気導入管18の下流側水平部は、主管路10に比して、小径に設定されているため、汚水6の滞留量が少なくても、エアロック可能な水栓を得ることが出来る。
この際、前記自動吸気弁17の下流側隔室19gが、分岐管路28aの下方の流体滞留部内に位置している。
このため、前記滞留した汚水6で、下流側隔室19g内空間が満たされて、前記流体滞留部内の真空度が低下する。従って、この流体滞留部を設けていない場合に比して、前記自動吸気弁17の作動が開始される真空度まで早期に真空度が低下する。
よって、前記自動吸気弁17が作動を開始する反応速度を向上させることが出来、主管路10内で、エアロックが生じる直前に、自動吸気弁17の作動を開始させることが可能で、エアロックが生じた場合のみならず、エアロックを事前に検知して、直ちに自動吸気弁17を開放させることができる。
そして、図7に示すように、前記自動吸気弁17の弁対収納凹部19cの真空度の低下(気圧の上昇)によって、前記ダイヤフラム22が、前記スプリング部材24の付勢力によって、上方方向へ引き上げられて、前記テーパ状シール面部25aと、前記流入孔部19eの周縁部19fとの間に、大気を通過させる隙間が形成される。
従って、前記空気流入パイプ部材30から上流側隔室19dを介して、この自動吸気弁17内に導かれた大気が、前記弁体収納凹部19c方向へ向けて、前記テーパ状シール面部25aと、前記流入孔部19eの周縁部19fとの間の隙間から流入する。
このため、図8に示すように、この導入された大気が、空気導入管18の水平部内及び下流側隔室19g内に滞留した汚水6の内部を通過して、気液混相流が形成されながら、前記主管路10方向へ向けて、押し上げる。
すなわち、前記流体滞留部内に滞留した汚水6の内部を導入された大気が通過する際、汚水6が、導入された大気と共に、気液混相流となって、搬送に必要とされる充分な推力を与えられる。
このため、主管路内を下流側方向へ搬送される汚水6に所定の推力が与えられることとなるため、主管路10内汚水によるエアロックが発生しても、エアロック部分が自動吸気弁17によって導入された大気を含む気液混相流で押し流されて、水平に配管された主管路10内の汚水が下流側に向けて搬送される。
このようにエアロックが解除されると、再び主管路10内の真空度が上昇する。
主管路10内の真空度の上昇に伴って、前記下流側隔室19g及び弁体収納凹部19cの真空度も上昇(気圧の低下)するので、自動吸気弁17内のダイヤフラム22が、スプリング部材24の付勢力に抗して、下方に向けて引き下げられて、前記テーパ状シール面部25aによって、前記流入孔部19eの周縁部19fが、閉塞される。
従って、この自動吸気弁17の吸気が停止するので、主管路10内を所望の真空度に復帰させることができる。
このように、各自動吸気弁17が、個別に分岐管28内の汚水6を気液混相流として送出することが出来る。
このため、従来のようにリフト部を必要としないので、上下方向に配管スペースを必要とせず、図11に示すような鋸歯状の配管を設置する必要が無くなる。
従って、図1に示すように、桟橋8の下方の吊下配管や、或いは、建物の床下や仮設配管等の転がし配管等、高さ方向の設置スペースを確保しにくい施工箇所に応じた施工方法で設置可能である。
また、前記自動吸気弁17によって、エアロックが解除されると、再び主管路10内の真空度が上昇する。
このため、前記汚水升2内に集水された汚水6を、前記真空弁3を用いて送出する際、送出する為に必要とされる真空度を容易に得られる。
更に、この実施例1では、前記流体滞留部としての分岐管路28a内の水平部が、前記主管路10から下方に向けて分岐された分岐管28内に設けられている。
このため、分岐管28の先端に前記自動吸気弁17を設けることで、前記自動吸気弁17の下流側である下流側隔室19gを、流体滞留部内に位置させることが出来、別途、流体滞留部を構成する物品を設ける必要が無く、施工コストの上昇を抑制できると共に、設置スペースの効率が、良好である。
また、前記分岐管28が設けられたY字管部27では、前記主管路10へのこの分岐管28の合流方向が、前記主管路10の流体通過方向Fに沿うように、前記主管路10に対して鋭角に接続された分岐管路28aを有して形成されている。
このため、前記気液混相流が、この分岐管路28aから主管路10内に送り出される際に、推進力を主管路10内の流体に与えながら円滑に合流させて、前記真空ポンプ施設5方向へ効率的に搬送させることができる。
更に、この実施例1では、前記主管路10の一部で、前記各自動吸気弁17の下流側に位置するように、複数の逆止弁40…が設けられている。
この逆止弁40では、揺動自在に設けられた揺動弁本体41によって、管路が開閉塞されて、水上コテージ9から前記真空ポンプ施設5へ向かう方向の汚水6が、この揺動弁本体41を押し開いて、通過可能となるように開放される。
また、前記真空ポンプ施設5から、水上コテージ9に向かう方向に流れようとする汚水6は、揺動弁本体41を閉塞させて、通過不能となる。
このため、この逆止弁40によって、前記主管路10が閉塞されると、下流側の真空度が低下して、上流側の真空度が高くなる逆転現象が生じても、この逆止弁40の揺動弁本体41が閉塞されることにより、水平に主管路10を配管しても、流体の逆流が阻止される。
従って、主管路10の直線化により、更に、安定させて、流体を搬送させることが出来、流体の主管路10内壁面との摩擦による動力損失を減少させることができる。
また、これらの複数の逆止弁40…によって、流体の逆流量を減少させることができるので、更に、搬送効率の良好な長い主管路10を得ることができる。
しかも、この実施例1では、図1及び図2に示すように、更に、前記主管路10の最上流側の端部に設けられている前記端末自動吸気弁16によって、前記主管路10内の真空度が低下すると、大気が、この主管路10外から主管路10内へ導入される。
このため、主管路10内に、汚水によるエアロックが発生しても、エアロック部分が、この端末自動吸気弁16によって導入された大気で押し流されて、水平に配管された主管路10内の汚水を下流側に向けて、一気通管させて搬送させることが出来る。
このように、主管路10の端部に設けられた端末自動吸気弁16によって、主管路10内で一気通管させて、流体を搬送させることもできるので、搬送効率を良好なものとすることができる。
しかも、この実施例1では、前記端末自動吸気弁16の下流側の主管路10との接続部分に、前記下流側隔室19gに隣接して、円弧状の下方に湾曲凸設される流体滞留部50が接続されている。
この流体滞留部50では、内部の汚水6が滞留する部分に、この端末自動吸気弁16の下流側隔室19gの内部空間が位置するように高さ方向位置が設定されている。
このため、前記主管路10内で、エアロックが発生する前に、この流体滞留部50内に流下して滞留した汚水6が、端末自動吸気弁16の下流側隔室19gをエアロックすることにより、暫時大気が、この端末自動吸気弁16から導入される。
従って、この大気と流体滞留部50内に滞留された汚水6との気液混相流が、間欠的に送出されて、水平に配管された主管路10内の汚水を下流側に向けて、一気通管させて搬送させることが出来る。
図9は、この発明の実施の形態の実施例2の真空流体搬送システムを示すものである。
なお、前記実施例1と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
この実施例2の真空流体搬送システムでは、前記流体滞留部としてのポケット部111,111が、前記水平に配管される管路としての主管路110を下方に凸状とすることで、主管路110内部に形成されるように構成されている。
そして、これらのポケット部111,111には、各々自動吸気装置としての自動吸気弁17の下流側である下流側隔室19gが、側壁部から略Y字状を呈するように分岐された分岐管部112に接続されて、汚水6が滞留する部分に位置させるように構成されている。
次に、この実施例2の真空流体搬送システムの作用について説明する。
この実施例2の真空流体搬送システムでは、前記実施例1の真空流体搬送システムの作用効果に加えて、更に、前記各ポケット部111,111が、前記主管路110を下方に凸状とする形状に設定されることで、この主管路110の内部に、エアロックを行う水栓が形成される流体滞留部を容易に構成することができる。
このため、ポケット部111に位置する前記主管路110の管壁部から分岐管部112を分岐させて、前記自動吸気弁17の下流側隔室19gを接続することで、前記自動吸気弁17の下流側である下流側隔室19gの内部空間を、このポケット部111によって構成される流体滞留部内に位置させることが出来る。
したがって、別途、流体滞留部を構成する為の別物品を設ける必要が無いと共に、設置スペースの効率が良好である。
他の構成、及び作用効果については、前記実施例1と同一乃至均等であるので説明を省略する。
図10は、この発明の実施の形態の実施例3の真空流体搬送システムを示すものである。
なお、前記実施例1,2と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
この実施例3の真空流体搬送システムでは、前記流体滞留部としての上突ポケット部211が、水平方向に配管される管路としての主管路210の上方に、連続して一体に凸設形成されている。
また、図9のように下に凸の形状であって、同径リフト(図11において、h1=0のこと)がゼロであるゼロリフトでもよい。水上コテージの場合は、吊り下げるので、この形態が好ましい。
この実施例3の上突ポケット部211は、主に、上流側の水平部211aから上り傾斜部211b、水平部211c、下り傾斜部211d、及び下流側の水平部211eへと続く配管路を有して、形成されている。
このうち、前記水平部211cの底部211fは、前記主管路210の上壁部210aと略同一高さとなるように構成されている。
そして、この上突ポケット部211の上流側の水平部211aの底部には、前記自動吸気弁17の下流側隔室19gが、下方に突状のJ字状パイプ部材212を介して接続されていて、汚水が滞留する部分に、自動吸気弁17の下流側が位置するように構成されている。
次に、この実施例3の真空流体搬送システムの作用効果について説明する。
このように構成された実施例3記載のものでは、前記実施の形態の実施例1及び2の作用効果に加えて、更に、水位が、前記水平部211cの底部211f近傍に到達すると、前記主管路210の上壁部210aが、汚水に満たされて、主管路210が閉塞される。
このため、前記上流側の水平部211aの上り傾斜部211b上流側の汚水が滞留した部分の真空度は低下して、前記自動吸気弁17が開放される。
他の構成、及び作用効果については、前記実施例1,2と同一乃至均等であるので説明を省略する。
図11は、この発明の実施の形態の実施例4の真空流体搬送システムを示すものである。
なお、前記実施例1乃至3と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
この実施例4の真空流体搬送システムでは、前記流体滞留部としての上突ポケット部311が、水平方向に配管される管路としての主管路310の上方に、連続して一体に凸設形成されている。
この実施例4の上突ポケット部311は、主に、上流側の水平部311aから上り傾斜部311b、水平部311c、下り傾斜部311d、及び下流側の水平部311eへと続く配管路を有して、形成されている。
このうち、前記水平部311cの底部311fは、前記主管路310の上壁部310aよりも、一定高さh1高い位置となるように構成されている。
なお、一定高さh1=0の場合を同径リフトと定義する。
そして、この上突ポケット部311の上流側の水平部311aの底部には、前記自動吸気弁17の下流側隔室19gが、下方に突状のJ字状パイプ部材212を介して接続されていて、汚水が滞留する部分に、自動吸気弁17の下流側が位置するように構成されている。
次に、この実施例4の真空流体搬送システムの作用効果について説明する。
このように構成された実施例4記載のものでは、前記実施の形態の実施例1乃至3の作用効果に加えて、更に、水位が、前記水平部311cの底部311f近傍に到達する前に、前記主管路310の上壁部310aが、汚水に満たされて、主管路310が閉塞される。
このため、前記上流側の水平部311aの上り傾斜部311b上流側に位置する汚水が滞留する部分の真空度は低下して、前記自動吸気弁17が確実に開放される。
他の構成、及び作用効果については、前記実施例1乃至3と同一乃至均等であるので説明を省略する。
図12は、この発明の実施の形態の実施例5の真空流体搬送システムを示すものである。
なお、前記実施例1乃至4と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
この実施例5の真空流体搬送システムでは、前記流体滞留部としての上突ポケット部411が、水平方向に配管される管路としての主管路410の上方に、連続して一体に凸設形成されている。
この実施例5は上に凸のゼロリフトの変形例を示しているが、下に凸のゼロリフトの変形例を用いても良い。
この実施例5の上突ポケット部411は、主に、上流側の水平部411aから上り傾斜部411b、頭頂部411c、下り傾斜部411d、及び下流側の水平部411eへと続く配管路を有して、形成されている。
このうち、前記頭頂部411cは、前記上り傾斜部411b、及び下り傾斜部411d間を同一管路内径で、屈曲して接続するように構成されている。
そして、この上突ポケット部411の上流側の水平部411aの底部には、前記自動吸気弁17の下流側隔室19gが、下方に突状のJ字状パイプ部材212を介して接続されていて、汚水が滞留する部分に、自動吸気弁17の下流側が位置するように構成されている。
次に、この実施例5の真空流体搬送システムの作用効果について説明する。
このように構成された実施例5記載のものでは、前記実施の形態の実施例1乃至4の作用効果に加えて、更に、前記頭頂部411cによって、前記上り傾斜部411b、及び下り傾斜部411d間が同一管路内径で、屈曲されて接続されている。
このため、図12中、寸法L1に示されるように、主管路410に占める上突ポケット部411の比率を減少させて、更に、良好なスペース効率の真空流体搬送システムを提供できる。
他の構成、及び作用効果については、前記実施例1乃至4と同一乃至均等であるので説明を省略する。
図13A及び13Bは、この発明の実施の形態の実施例6の真空流体搬送システムを示すものである。
なお、前記実施例1乃至5と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
この実施例6の真空流体搬送システムでは、前記流体滞留部としての陥凹部511が、水平方向に配管される管路としての主管路510の上側側面を凹状として、管路内に突出された上突部511aを有して、主管路510の一部の径方向開口断面積を減少させるように形成されている。
そして、この陥凹部511の上流側で、水平部510aの底部510bには、前記自動吸気弁17の下流側隔室19gが、下方に突状のJ字状パイプ部材212を介して接続されていて、汚水が滞留する部分に、自動吸気弁17の下流側が位置するように構成されている。
次に、この実施例6の真空流体搬送システムの作用効果について説明する。
このように構成された実施例6記載のものでは、前記実施の形態の実施例1乃至5の作用効果に加えて、更に、陥凹部511が、水平方向に配管される主管路510の上側側面を凹状として、管路内に突出された上突部511aにより、主管路510の一部の径方向開口断面積が減少されている。
この陥凹部511によって、流量が制限されるので、例えば、主管路510内で、汚水が、スラグ流から気液分離していても、前記上突部511aで、径方向開口断面積が、減少しているので、主管路510内の管頂部近傍の空気を汚水と混合させることができる。
この実施例6においては、主管路510の下側側面の形状を維持して、その上側側面を凹状としているが、主管路510の上側側面の形状を維持して、その下側側面を凹状とすることも可能である。
このため、空気のみが、主管路510内の管頂部近傍を移動して、汚水の搬送に寄与しなくなる虞を減少させることができる。
他の構成、及び作用効果については、前記実施例1乃至5と同一乃至均等であるので説明を省略する。
図14A−14Cは、この発明の実施の形態の実施例7の真空流体搬送システムを示すものである。
なお、前記実施例1乃至6と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
この実施例7の真空流体搬送システムでは、前記流体滞留部としての縮径部611が、水平方向に配管される管路としての主管路610の周囲に環凹状に設けられていて、管路内に突出されたリング状凸部611aを有して、主管路510の一部の径方向開口断面積を減少させるように形成されている。
そして、このリング状凸部611aの上流側で、水平部610aの底部610bには、前記自動吸気弁17の下流側隔室19gが、下方に突状のJ字状パイプ部材212を介して接続されていて、汚水が滞留する部分に、自動吸気弁17の下流側が位置するように構成されている。
更に、この実施例7では、図14Aに示す前記縮径部611が、図14A及び14Bに示すように、一対のレデューサ部材620,620の小径部621,621同士を対向させて接続することにより、構成されている。
次に、この実施例7の真空流体搬送システムの作用効果について説明する。
このように構成された実施例7記載のものでは、前記実施の形態の実施例1乃至6の作用効果に加えて、更に、前記縮径部611のリング状凸部611aによって、水平方向に配管される主管路610の一部の径方向開口断面積が減少されている。
このため、このリング状凸部611aによって、流量が制限されるので、例えば、主管路610内で、汚水が、スラグ流から気液分離していても、このリング状凸部611aで、径方向開口断面積を、減少させて、主管路610内の管頂部近傍の空気を汚水と混合させることができる。
このため、空気のみが、主管路610内の管頂部近傍を移動して、汚水の搬送に寄与しなくなる虞を減少させることができる。
更に、この実施例7では、前記縮径部611が、図14Bに示すように、一対のレデューサ部材620,620の小径部621,621同士を対向させて接続することにより、図14Cに示すように、主管路610の一部に、容易に、前記縮径部611を介在させることが出来る。
このため、製造コストの増大が抑制される。
他の構成、及び作用効果については、前記実施例1乃至6と同一乃至均等であるので説明を省略する。
他の構成、及び作用効果については、前記実施例1乃至5と同一乃至均等であるので説明を省略する。
図15A及び図15Bは、この発明の実施の形態の実施例8の真空流体搬送システムを示すものであって、図15Aは、流体滞留部の要部の構成を説明する一部拡大断面図であり、図15Bは、図15Aの流体滞留部の構成を説明するA−A線に沿った位置での拡大断面図である。
なお、前記実施例1乃至7と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
この実施例8の真空流体搬送システムでは、前記流体滞留部としての仕切り板部711が、水平方向に配管される管路としての主管路710の内周壁の上側に、略三日月リブ状を呈して固着されている。
そして、この仕切り板部711が設けられている箇所では、主管路710の径方向開口断面積が減少するように構成されている。
更に、この仕切り板部711の上流側で、水平部710aの底部710bには、自動吸気弁17の下流側隔室19gが、下方に突状のJ字状パイプ部材212を介して接続されていて、汚水が滞留する部分に、自動吸気弁17の下流側が位置するように構成されている。
なお、この実施例8を示す図15Aでは、仕切り板部711を主管路710の内周壁の上側に固着させているが、主管路710の内周壁の下側に固着させることも可能である。
次に、この実施例8の真空流体搬送システムの作用効果について説明する。
このように構成された実施例8記載のものでは、前記実施の形態の実施例1乃至7の作用効果に加えて、更に、前記仕切り板部711が設けられている箇所では、水平方向に配管される主管路710の一部の径方向開口断面積が減少されている。
このため、この仕切り板部711によって、流量が制限されるので、例えば、主管路710内で、汚水が、スラグ流から気液分離していても、この仕切り板711で、径方向開口断面積を、減少させて、主管路710内の管頂部近傍の空気を汚水と混合させることができる。
このため、空気のみが、主管路710内の管頂部近傍を移動して、汚水の搬送に寄与しなくなる虞を減少させることができる。
他の構成、及び作用効果については、前記実施例1乃至7と同一乃至均等であるので説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態の実施例1乃至8を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の実施例1乃至8に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
即ち、前記実施の形態の実施例1では、主管路10の一部に汚水升2を設けて、真空弁3を設置させているが、特にこれに限らず、汚水升2及び真空弁3を用いずに真空流体搬送システムを構成しても良く、また、汚水升2及び真空弁3を用いる場合、これらの形状、数量及び接続形状が特に限定されるものではない。
更に、前記実施例1では、前記主管路10の一部に、前記自動吸気弁17の下流側に、主管路10内の流体の逆流を防止する逆止弁40が設けられているが、特にこれに限らず、逆止弁40を用いずに真空流体搬送システムを構成しても良く、また、逆止弁40を用いる場合、これらの形状、数量及び材質等が特に限定されるものではない。
また、この実施の形態の真空流体搬送システムでは、汚水を搬送する真空流体搬送システムを例示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、上水、中水や雨水及びこれらの混合水等、どのような種類の流体であっても、主管路内を真空とすることにより、圧力差を利用して搬送出来る流体であるならば、どのような種類の流体であってもよい。
そして、前記実施例1では、主管路10の配管角度を水平としているが、この水平には、若干の上り勾配若しくは下り勾配及びこれらが複合された勾配を有する複合配管も含まれ、設置箇所の設置スペース効率を損なわない程度の約1〜3%程度の上り勾配若しくは下り勾配を有するものであっても水平に含まれる。
更に、管路の配管パターンが、水平部、上り傾斜部、水平部の配管パターンや、水平部、下り傾斜部、水平部の配管パターン、或いは水平部の配管パターンの何れであってもよく、これらの3つの配管パターンが複合された組み合わせ配管パターンであっても含まれる。
また、この実施の形態の真空流体搬送システムでは、前記自動吸気装置として、自動吸気弁17及び端末自動吸気弁16を用いているが、特にこれに限らず、例えば、機械式若しくは電気制御式の自動吸気装置を用いる等、管路内の真空度が所定値以下に低下した際に、大気を管路外から管路内へ導入できるものであるならば、どのような形状、数量及び構成の自動吸気装置であってもよい。
本願発明によれば、管路内の真空度が低下して、所定値よりも低くなると、前記自動吸気装置によって、大気が該管路外から管路内へ導入される。
このため、管路内に、汚水によるエアロックが発生しても、該エアロック部分が該自動吸気装置によって導入された大気で押し流されて、該水平に配管された管路内の汚水を下流側に向けて搬送させることができる。
このようにエアロックが解除されると、再び管路内の真空度は上昇して、該自動吸気装置による吸気が停止するので、所望の真空度に復帰させることができる。
更に、従来のようにリフト部を必要としないので、上下方向に配管スペースを必要とせず、橋桁の下方の吊下配管や、床下や仮設配管等の転がし配管等による施工箇所に応じた施工方法で設置可能である。
本願発明によれば、前記自動吸気装置によって、エアロックが解除されると、再び管路内の真空度が上昇する。
このため、前記集水升内に集水された汚水を、前記真空弁を用いて送出する際、送出する為に必要とされる真空度を容易に得られる。
このため、更に、搬送効率が良好である。
本願発明によれば、前記自動吸気装置の下流側が、前記流体滞留部内に位置されているので、前記流体滞留部内に真空度の低下で流体が滞留すると、前記自動吸気装置の作動が開始される真空度まで、該流体滞留部を設けていない場合に比して、早期に真空度が低下する。
このため、管路内で、エアロックが生じた場合、直ちに該自動吸気装置を開放させることができる。
そして、該流体滞留部内に滞留した流体の内部を導入された大気が通過する際、該流体が、導入された大気と共に、気液混相流となって、搬送に必要とされる充分な推力を与えられて、管路内を下流側方向へ搬送される。
本願発明によれば、前記流体滞留部が、前記管路から下方に向けて分岐された分岐管内に設けられている。
このため、該分岐管の先端に前記自動吸気装置を設けることで、前記自動吸気装置の下流側を該流体滞留部内に位置させることが出来、別途、流体滞留部を構成する物品を設ける必要が無いと共に、設置スペースの効率が良好である。
本願発明によれば、前記分岐管が設けられたY字管部では、前記管路への該分岐管の合流方向が、前記管路の流体通過方向に沿うように前記管路に対して鋭角に接続された分岐管路を有して形成されている。
このため、前記気液混相流が、管路内に送り出される際に、推進力を管路内の流体に与えながら円滑に合流されて、搬送される。
本願発明によれば、前記流体滞留部が、水平部から上り傾斜部、水平部、下り傾斜部、水平部と続く配管路で形成されている。
該流体滞留部が、同径リフト(設計上のリフト高=0となる上りリフト)以上の高さを設計の基本とする事で、自動吸気効果との組み合わせにより、静的なリフト損失を最小限とする設計が可能となる。
該流体滞留部のリフト形態は水平配管のみならず通常の真空式下水道システムなどにおいても、管路への真空弁ユニットの設置箇所が少なく、空気の連動が少くなる部位に、このリフト形態を設置し、その上流部への自動吸気弁設置によりエアロックに因る被害のない真空式流体搬送システムとすることが可能である。
このため、若干の上方スペースを部分的に設けるだけで、水平配管時においては、例えば、同径リフトの場合、管内径の管内頂部と、リフト部の管内底部が同じとなり、リフトアップの後速やかにリフトダウンで元の勾配の水平配管に戻すことができる。
これにより、従来設計における静的なリフト損失を0とすることが出来るとともに、自動吸気システムに於けるリフト部の静的リフト損失低減効果を最も効果的に与える事が出来る。
本願発明によれば、前記ポケット部が、前記管路を下方に凸状とすることで、該管路の内部に形成される。
このため、該ポケット部に位置する前記管路の管壁部に前記自動吸気装置を設けることで、前記自動吸気装置の下流側を、該ポケット部によって構成される流体滞留部内に位置させることが出来、別途、流体滞留部を構成する物品を設ける必要が無いと共に、設置スペースの効率が良好である。
本願発明によれば、管路の一部管径を絞る事で一時的に流量を制限し、下流側に滞留を設けるものである。
真空式下水道システムでは、通常鋸歯状配管をしており、また、管路への汚水流入が間欠的である。リフト部においても汚水の流れは間欠的である事が多く、管路全体が連続流となる場合は少ない。
一方、絞り部分に於いて気液混合し、絞った部位に於ける流体が高流速になる事を考慮し最大汚水量と絞り管径を定めた場合、時間最大汚水量における設計においても使用可能である。
また、管径の絞り方は管軸の同芯でも可能だが管底側に開口部を設けるような形状がより気液混送によるスラグ流形成を得やすい。管の中に一部間仕切を設ける事による流量制限も同様の効果が得られる。この場合、同様に管頂側への間仕切設置がより効果的となる。
本願発明によれば、 前記管路の一部で、前記自動吸気装置の下流側に位置するように逆止弁が設けられている。
このため、該逆止弁によって、前記管路が閉塞されると、下流側の真空度が低下して、上流側の真空度が高くなる逆転現象が生じても、該逆止弁が流体の逆流を阻止して、更に、流体の搬送を効率的に行うことが出来る。
従って、更に安定させて、流体を搬送させることが出来る管路を得ることができる。
本願発明によれば、前記管路の最上流側の端部に設けられている前記自動吸気装置によって、前記管路内の真空度が低下すると、大気が、該管路外から管路内へ導入される。
このため、管路内に、汚水によるエアロックが発生しても、該エアロック部分が該自動吸気装置によって導入された大気で押し流されて、該水平に配管された管路内の汚水を下流側に向けて搬送される。
よって、管路内で一気通管させて、流体を搬送させることもできるので、搬送効率を良好なものとすることができる。
本発明は、家庭や工場から排出される流体に関して、管路内を真空にすることにより大気圧との圧力差を利用して、その流体を管路内で搬送して収集することのできるシステムに適用することができる。