JP5014546B2 - ヒドロキシルアンモニウム塩溶液の分離方法 - Google Patents

ヒドロキシルアンモニウム塩溶液の分離方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ろ過によって固体触媒粒子を含む水性反応混合物からヒドロキシルアンモニウム塩溶液を分離する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒドロキシルアンモニウム塩の重要な用途は、ケトンまたはアルデヒドからのオキシムの製造、特に、シクロヘキサノンからのシクロヘキサノンオキシムの製造である。このオキシムの製造法のために、循環プロセスが公知であり、ここでは、酸-緩衝された反応媒体が、ヒドロキシルアンモニウム塩合成帯域およびオキシム合成帯域を経て循環するように保持される。反応媒体は、例えばリン酸および/または硫酸および、これらの酸から誘導される緩衝塩、例えばアルカリおよび/またはアンモニウム塩によって、酸-緩衝される。ヒドロキシルアンモニウム塩合成帯域においては、硝酸イオンまたは窒素酸化物が水素を用いてヒドロキシルアミンへ転化される。ヒドロキシルアミンは遊離の緩衝酸と反応して対応するヒドロキシルアンモニウム塩を生じ、これは次に、オキシム合成帯域へ送られ、ここでケトンと反応して、酸を放出し、対応するオキシムになる。反応媒体からオキシムを分離した後、反応媒体は、ヒドロキシルアンモニウム塩合成帯域へ再利用され、反応媒体に新しい硝酸イオンまたは窒素酸化物が添加される。 ヒドロキシルアンモニウム塩合成が、リン酸および硝酸イオンから出発する場合には、上記した化学反応は、次のように示される:
1) ヒドロキシルアンモニウム塩の製造:
【化1】
Figure 0005014546
2)オキシムの製造:
【化2】
Figure 0005014546
3)形成されたオキシムの分離後、HNO3の形態の新たな硝酸イオンの供給:
【化3】
Figure 0005014546
【0003】
第1の反応は、不均質に触媒される。好ましくは、触媒は、細かく分けられた固体として、液体反応混合物中に分散相として存在する。
第1段階の反応混合物は、ヒドロキシルアンモニウム塩溶液中に固体触媒粒子の懸濁物を含む水性反応混合物である。この水性反応混合物がオキシム合成帯域へ送られる前に、固体触媒粒子は好ましくは、この水性反応混合物から分離され、ヒドロキシルアンモニウム塩溶液を生じる。ヒドロキシルアンモニウム塩の製造において用いられる触媒は主として、担体物質、例えば炭素上の活性成分として白金族金属からの金属、例えばPdまたはPd+Ptからなる。触媒は、1種以上の触媒活性化剤の存在によって活性化することができる。触媒活性化剤は、Cu、Ag、Cd、Hg、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、As、SbおよびBiを含む群からの元素であり得る。問題の元素を含む化合物、例えば酸化物、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物および酢酸塩がまた触媒活性化剤として使用できる。元素またはその化合物は、米国特許第3,767,758号明細書に記載されているように、触媒へ直接施与することができ、またはそれらを反応媒体へ添加することができる。
【0004】
炭素上のPd+Pt触媒を用いると、硝酸塩のヒドロキシルアンモニウム塩への反応において高レベルの活性および妥当な程度の選択性が達成されることは、例えば米国特許第5,792,439号明細書から公知である。炭素上のPd触媒を用いると、ヒドロキシルアンモニウム塩合成においてより高い程度の選択性が達成されることは、例えば国際特許出願公開WO-A-9818717号から公知である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
欧州特許出願第577,213号は、直交流ろ過(crossflow filtration)によって、固体触媒粒子を含む水性反応混合物からヒドロキシルアンモニウム塩を分離する方法を記載する。
【0006】
欧州特許出願第577,213号にしたがう直交流ろ過を使用することの欠点は、フィルターの孔がまもなく小さい触媒粒子によって詰まらせられ、それでフィルターを通過する流量が低く、逆流洗浄がしばしば必要とされることである。したがって、ろ過容量は低い。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、より高い容量を有するろ過法を提供することである。
この目的は、非対称フィルターを通るケーキろ過を行い、非対称フィルターが、異なる孔径を有する少なくとも2層を含み、少なくとも1層がろ過層であり、ろ過層の孔径が0.1〜10μmであり、ろ過層の厚みが10〜1000μmであることにおいて達成される。
【0008】
ヒドロキシルアンモニウム塩を製造するための存在する装置に本発明の方法を適用することのために、存在する装置の容量を増加させることができる。
ケーキろ過は、固体粒子の層をフィルター材料上に沈積させ、それによってろ過ケーキを作る技術である。固体粒子はかくしてフィルターによって保持され、一方、液相はろ液として通過する。本発明の方法においては、触媒の層(ろ過ケーキ)は、フィルター材料上に沈積される。ケーキろ過を用いてさえ、フィルターが効率的に機能を発揮するには、ろ過ケーキの形成を必要とする。
【0009】
非対称フィルターは幾つかの層、少なくとも2層からなり、1つの層の孔径は、他の層の孔径より大きい。少なくとも1層がろ過層である。非対称フィルターは主として2層からなり、1層が構造的な機能を有し(構造層)、他の層が実際のフィルターを構成する(ろ過層)。構造層の孔径はろ過層の孔径より大きい。「孔径」という語がこの説明において使用される場合には、ろ過層の孔径を常に意味する。ろ過層の厚みは10〜1000μmである。ろ過層の厚みは好ましくは100〜500μmである。本発明に従う非対称フィルターのろ過層の厚みは通常、フィルターの壁厚の1〜25%に等しい。
【0010】
ろ過層の孔径は0.1〜10μm、好ましくは1〜5μmである。
触媒粒子は、一般に平均粒径5〜150μm、好ましくは10〜60μmを有する。「平均粒径」とは、50体積%の粒子が特定の直径より大きいことを意味する。特に、該直径範囲および粒径範囲のそれぞれ以内で、触媒粒子の平均粒径は、ろ過層の平均孔径より大きい。
【0011】
フィルター媒体は一般に、ミクロ細孔物質、例えば炭素、焼結金属、ポリマーおよびセラミック由来の材料、例えばSiCにおけるAl2O3(Al2O3 en SiC)である。好ましくは、フィルター媒体がなる材料は、SiC、炭素または焼結金属である。
従来の記述にしたがえば、ヒドロキシルアンモニウム塩溶液からの固体触媒粒子の分離はまた、2〜5mmの厚みおよび0.5〜50μmの孔径を有する通常のフィルターを通したケーキろ過によって行うことができる。
これはフィルター全域での大きい圧力降下を含み、これは一部は、厚いろ過ケーキの構造による。このフィルターはまた、小さい触媒粒子により詰まらされる。
【0012】
本発明の方法においては、より薄いろ過層を有する非対称フィルターが使用され、小さい触媒粒子による詰まりの速度および強さの減少をもたらす。非対称フィルターでの圧力降下は、同じ全体的厚みの通常のフィルターでの圧力降下より小さい。驚くべきことに、非対称フィルターが使用されるとき、ろ過ケーキでの圧力降下がまたより低く、よって予想されるよりずっと小さい圧力降下で作業することが可能であることが見出された。このことのさらなる利点は、低い圧力降下のために、フィルターの破壊の発生が減らされることである。その上、通常のケーキろ過と比べて、非対称フィルターが使用されるときにろ過容量が増加する。
【0013】
ろ過が行われる温度は、一部は、ヒドロキシルアンモニウム塩合成帯域で優勢な温度に依存し、一部は、フィルター媒体の熱安定性に依存する。ろ過は一般に25〜100℃、好ましくは45〜65℃で行われる。
ろ過が行われる圧力ならびに圧力差は、ヒドロキシルアンモニウム塩合成帯域で優勢なプロセス圧力に依存する。施与されるべき圧力は一般に0〜5MPaにある。圧力は好ましくは1〜4MPaにある。フィルター媒体全域での圧力差は、フィルター媒体およびフィルターの所望の容量に依存する。一般に、圧力差は、非対称フィルターを使用するために低くあることができ、0〜0.4MPaにある。好ましくは、0.02〜0.07MPaの圧力差が施与される。
【0014】
本発明はまた、ヒドロキシルアンモニウム塩溶液を製造および精製する方法であって、上記したろ過プロセスによって、とりわけ固体触媒粒子を含む水性反応混合物からヒドロキシルアンモニウム塩溶液が分離される方法に関する。本発明の1つの実施態様においては、上記したプロセスを用いてヒドロキシルアンモニウム塩がろ過され、溶解したヒドロキシルアンモニウム塩の一部は分離され、不均質な触媒を含む残りの水性反応混合物はヒドロキシルアンモニウム塩合成帯域へ戻される。
【0015】
ヒドロキシルアンモニウム塩溶液の製造において使用される触媒は、炭素上のPdまたは炭素上のPd+Pt触媒である。炭素上のPd触媒は一般に、Pd含量1〜25重量%、好ましくは7〜20重量%を有する。炭素上のPd+Pt触媒は一般に(Pd+Pt)含量1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%を有する。Pd:Pt重量比は、一般に1:1〜10:1である。
【0016】
触媒濃度は一般に、反応混合物1グラム当たり0.001〜0.1グラム触媒である。触媒濃度は好ましくは、反応混合物1グラム当たり0.005〜0.05グラム触媒である。
【0017】
以下の実施例によって、それに限定されることなしに、本発明をさらに説明する。
【0018】
【実施例】
ろ過することによって、ヒドロキシルアンモニウム塩溶液から触媒粒子を除いた。触媒の平均粒径は20μmであった。溶液を次のものを通して、一定時間ろ過した:
1.ろ過層の孔径3μm、全体壁厚2.2mmおよびろ過層厚200μmを有する非対称キャンドル(candle)フィルター(クレブソーグ(Krebsoge)、タイプSika-R3 As)(実施例1);
2.孔径3μmおよび壁厚2.2mmを有する通常のキャンドルフィルター(クレブソーグ(Krebsoge)、タイプSika-R3 IS)(比較例A);
3.孔径0.5μmおよび壁厚1.5mmを有するフィルター(LCL、 F 55 C 0505 C)、直交流ろ過の適用(比較例B)。
【0019】
実施例1および比較例Aに従うろ過プロセスの結果をそれぞれと比較するとき、同じ圧力での1平方メートル当たりの流量は、通常のフィルターより非対称フィルターがはるかに高いことが明らかにわかる。また、非対称フィルターでの圧力降下は長時間低いままであり、このことは、フィルターの詰まりがほとんどないことを示す。さらには、非対称フィルターの場合の圧力降下は、通常のフィルターでよりはるかに低い。
これらの2つの効果は共に、非対称フィルターが通常のフィルターよりずっと高いろ過容量を有することを示す。
【0020】
比較例Bからは、フィルターの詰まりにより圧力降下が高すぎてきたので、直交流ろ過を2日間だけしか続けられなかったことがわかる。
【表1】
Figure 0005014546
Figure 0005014546
Figure 0005014546

Claims (11)

  1. ろ過によって固体触媒粒子を含む水性反応混合物からヒドロキシルアンモニウム塩溶液を分離する方法であって、非対称フィルターを通すケーキろ過が行われ、非対称フィルターは異なる孔径を有する少なくとも2層を含み、少なくとも1層がろ過層であり、ろ過層の孔径が0.1〜10μmであり、ろ過層の厚みが10〜1000μmであることを特徴とする方法。
  2. ろ過層の孔径が1〜5μmである請求項1記載の方法。
  3. ろ過層の厚みが100〜500μmである請求項1〜2のいずれか1項記載の方法。
  4. 非対称フィルターのろ過層の厚みが、フィルターの壁厚の1〜25%に等しい請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 非対称フィルターが非対称キャンドルフィルターである請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 非対称フィルターでの圧力降下が0〜0.4MPaである請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 非対称フィルターでの圧力降下が0.02〜0.07MPaである請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  8. 固体触媒粒子が10〜60μmの平均粒径を有する請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
  9. 固体触媒粒子が炭素上のPd触媒粒子である請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
  10. 固体触媒粒子が炭素上のPd+Pt触媒粒子である請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
  11. ヒドロキシルアンモニウム塩溶液が、ろ過によって、固体触媒粒子を含む水性反応混合物から分離される、ヒドロキシルアンモニウム塩溶液を製造および精製する方法であって、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法が行われることを特徴とする方法。
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