JP5013242B2 - 着色されたフッ素樹脂成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、着色されたフッ素樹脂成形体に関し、より詳しくはフッ素樹脂成形体表面を着色塗料で着色し、強固な着色塗膜を形成したフッ素樹脂成形体に関する。
ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエ−テル)系共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体等のフッ素系重合体(以下単に「フッ素樹脂」ともいう。)は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、ガスバリア性等に優れた特性を有し、その成形体は、半導体産業や自動車産業等の種々の分野で使用されている。また、フッ素樹脂は電気絶縁特性と難燃性を兼ね備えており、電線の絶縁被覆材料としても好ましく使用されている。
実際の使用状況においては、当該フッ素樹脂成形体表面を着色する必要がしばしば生ずる。しかしながら、フッ素樹脂の表面は撥水撥油性を有しており、インキや塗料を塗布してフッ素樹脂成形体を着色する場合、塗膜が十分に密着しないという問題点があった。
従来、フッ素樹脂表面の塗膜等他の樹脂との密着性や接着性を改良する方法としては、コロナ放電や大気圧プラズマを利用した表面改質法(例えば、特許文献1を参照。)が知られているが、成形機以外に当該処理を実施するための装置を導入する必要があり、また、複雑な形状の成形体表面やチューブやボトルの内面を処理することが困難である等の問題があった。
また、フッ素樹脂表面にアミノ置換有機シランを含む接着剤組成物を塗布して基材に密着させる方法が提案されているが、融点以上の温度で熱処理する必要があり、溶融成形した成形体の形状を維持したまま他材料を密着させることは困難であった(例えば、特許文献2を参照)。
さらにまた、一般的に、フッ素樹脂を使用した電線被覆を着色する場合は、フッ素樹脂に顔料を混練する方法が行われている。しかしながら、高価な顔料を多量に樹脂に配合するため高コストになること、顔料の分散不良によってピンホールが発生してしまうこと、色を変える際に大量の樹脂を廃棄する必要がある等の問題があった。そこで、成形した電線をインク中に浸漬・塗布して、当該電線被覆表面を着色する方法も提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。このように塗布により着色する方法によれば、高価な顔料を樹脂に混練しないので、コストを低く抑えることが可能であり、また顔料を混練していないため顔料不分散によるピンホールの発生も抑制できる。
しかしながら、一般的な樹脂の被覆電線については適用可能なこのような着色方法は、フッ素樹脂電線の場合は、前述のとおり、密着した塗膜を得ることが困難であるため、フッ素樹脂電線にはそのまま適用することは困難であった。
また、カラー顔料を絶縁性樹脂に混合して着色樹脂としこれを押出してカラー被覆電線とする方法においては、上記したように、当該カラー被覆電線の色彩を変える場合は、着色の為に混合するカラー顔料を取換えなければならないため、一時的に製造ラインを停止せざるを得ず、製造ラインの稼働率低下を招いていた。また、カラー顔料を取り換えてから製造を再開する際、被覆不良屑や色彩不良の被覆材料屑が大量に発生し、被覆材料の無駄が発生し、高コストになるという問題があった。
かかる問題を解決する為、PVC等の被覆電線の製造ラインにカラーインク塗布装置を設置し、色換え時に発生する色彩不良のカラー被覆電線の表面をカラーインクをスプレーして着色する方法が提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。しかしながら、この着色方法は、容易に表面を着色可能なPVC被覆電線において適用できる方法であり、フッ素樹脂電線には応用することが出来なかった。前記したとおり、フッ素樹脂電線被覆の場合は、厄介な表面処理を行わない限り、カラーインク着色は困難である。
特開平8−198984号公報(特許請求の範囲(請求項1〜9)) 特表2004−536722号公報(特許請求の範囲(請求項1〜15)) 特開平5−217435号公報(特許請求の範囲(請求項1〜2)) 特開平6−150744号公報(特許請求の範囲(請求項1)、〔0019〕〜〔0025〕)
本発明の目的は、上記のような背景のもとに開発が要請されている、低価格で、表面に形成された着色塗膜の密着性に優れたフッ素樹脂成形体を提供することである。
本発明に従えば、酸無水物残基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、加水分解性シリル基、アルコキシカルボニル基、及び酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(a)を含有するフッ素樹脂の成形体表面に、当該官能基と反応する官能基(b)を有する着色塗料を塗布し、上記官能基の反応が実質的に進行する温度で加熱処理して得られることを特徴とする着色されたフッ素樹脂成形体が提供される。
以下に詳述するように、本発明の着色されたフッ素樹脂成形体は、当該フッ素樹脂成形体表面に対し特段の前処理等の工程を必要とすることなく、その着色塗膜はフッ素樹脂成形体表面への密着性に優れるものである。
また本発明の着色されたフッ素樹脂成形体は、通常の着色成形体のように着色マスターバッチを使用するものでなく、容易な塗布工程で実施できるため、実際の生産において各種の色彩の成形体の切換え生産が容易であり、切換え時のロスが生ずることもなく、少量多品種に対しても高い生産性をもって柔軟に対応できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(官能基を有するフッ素樹脂)
本発明におけるフッ素樹脂成形体におけるフッ素樹脂とは、酸無水物残基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、加水分解性シリル基、アルコキシカルボニル基、及び酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(a)を含有するフッ素樹脂である。
そして官能基(a)を有するもっとも代表的なフッ素樹脂としては、例えば特開2004−238405に記載の無水イタコン酸や無水シトラコン酸由来の酸無水物残基を有する含フッ素共重合体があげられる。また、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物のような酸無水物基含有環状モノマー由来の酸無水物残基を有する含フッ素共重合体であってもよい。
本発明の対象とするフッ素樹脂としては、上記の官能基を有するものであれば特に限定するものではないが、好ましくは、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン系共重合体が望ましく、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体がより好ましく、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体が最も好ましい。(以下、エチレンを「E」、テトラフルオロエチレンを「TFE」、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)を「PAVE」と表すことがある。)
本発明におけるフッ素樹脂の容量流速(以下「Q値」という。)は、0.1〜1000mm3/秒で、好ましくは、1〜500mm3/秒、さらに好ましくは、2〜200mm3/秒である。Q値は、フッ素樹脂を溶融成形する場合に問題となる樹脂の溶融流動性を表す指標であり、分子量の目安となる。すなわち、Q値が大きいと分子量が低く、小さいと分子量が高いことを示す。本発明におけるQ値は、島津製作所社製フローテスタを用いて、樹脂の融点より50℃以上高い温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの含フッ素共重合体の押出し速度である。Q値が小さすぎると当該フッ素樹脂の押出し成形が困難となり、大きすぎると樹脂の機械的強度が低下する。
また、本発明におけるフッ素樹脂の融点は120〜310℃が好ましく、150〜300℃がより好ましく、180〜300℃が最も好ましい。
本発明において、前記フッ素樹脂に官能基(a)を導入する方法としては、含フッ素モノマーを重合してフッ素樹脂を製造する際に、含フッ素モノマーと官能基(a)を有するコモノマーとを共重合させる方法;官能基(a)を有する重合開始剤又は連鎖移動剤の存在下に含フッ素モノマーを重合し、重合体末端に官能基(a)を導入する方法;官能基(a)を有するコモノマーとフッ素樹脂とを混練した後、放射線照射する方法;官能基(a)を有するコモノマー、フッ素樹脂及びラジカル開始剤とを混練した後、溶融押出しすることにより当該官能基(a)を有するコモノマーをフッ素樹脂にグラフト重合する方法等が挙げられる。このうち好ましくは、特開2004−238405に記載のように、含フッ素モノマーと、官能基(a)を有するコモノマー、例えば無水イタコン酸や無水シトラコン酸を、または、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物のような酸無水物基含有環状モノマーを共重合させる方法である。
フッ素樹脂成形体における官能基(a)の含有量は、好ましくは0.01〜10モル%(官能基(a)のモル/重合体の全繰り返し単位モル、以下同じ。)、より好ましくは0.05〜5モル%、最も好ましくは0.1〜3モル%である。官能基の量がこれよりあまり少ない場合は、本発明の効果を奏することができず、これよりあまり過大の場合は、フッ素樹脂成形体の物理的特性自体を低下させるおそれがあり好ましくない。
(官能基を有する着色塗料)
本発明のフッ素樹脂成形体は、上記した官能基(a)を含有する前記フッ素樹脂の成形体表面に、官能基(a)と反応する官能基(b)を有する着色塗料を塗布し、加熱処理して得られる。
かかる官能基(b)としては、アミノ基、イソシアナト基、水酸基、加水分解性シリル基、エポキシ基、酸無水物残基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明における塗料としては、特に限定するものではなく、一般の塗料用樹脂に顔料及び有機溶剤等を配合した塗料が好ましく使用される。
塗料用樹脂としては、アルキド樹脂、フタール酸樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、尿素樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ウレタン変成アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、NAD樹脂、塩素系ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、液状ポリブタジエン樹脂、ロジン変成マレイン酸樹脂、クマロン樹脂、アルコキシシラン樹脂等の樹脂が挙げられる。それらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、耐熱性の低い着色塗料を塗布する場合は、まず下塗りとして耐熱性に優れた塗料を当該フッ素樹脂成形体表面に塗布して下塗り層を形成し、その下塗り層の上に上塗りとして耐熱性の低い着色塗料を塗布して密着を向上させてもよい。
このうち、特に耐熱性を要求される電線用途等に使用する場合は、シリコーン樹脂又はフッ素樹脂が好ましい。また、ポリアミド、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、アクリル樹脂は、それ自身官能基を含有するため好ましい。
本発明における官能基(b)を有する着色塗料の製造方法としては、モノマーを重合して前記塗料用樹脂を製造するときに、当該モノマーと官能基(b)を有するコモノマーを共重合する方法;官能基(b)を有する重合開始剤又は連鎖移動剤の存在下に、当該モノマーを重合して塗料用樹脂の末端に官能基(b)を導入する方法;塗料用樹脂に有機溶剤や種々の添加剤を配合し、塗料用組成物(本発明においては、単に「塗料」という。)を製造するときに官能基(b)を有する化合物をさらに配合する方法等が挙げられる。
本発明者らの検討によれば、塗料用樹脂に各種成分を配合して塗料を製造するときに、官能基(b)を有する化合物を添加・配合する方法が最も容易で好ましく、この方法により、充分な効果が得られる。
官能基(b)を有する化合物の添加量は、官能基の種類によっても変わりうるが、通常塗料に対し、0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜8質量%、最も好ましくは0.5〜5%である。
官能基(b)を有する化合物としては、当該官能基を有し、かつ、塗料組成物との親和性が優れる化合物であれば特に限定されず任意のものが使用可能である。例えば、
アミノ基を有する化合物としては、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリス(2−エチルヘキシロキシ)シラン、N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−(1−アミノプロポキシ)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノウンデシルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素原子数1〜20のアルキレンジアミン類、アミノプロピルビニルエーテル;
イソシアネート基を有する化合物としては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート類;
水酸基を有する化合物としては、エチレングリコール、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール等のジオール類、ポリオール類、ヒドロキシブチルビニルエーテル;
加水分解性シリル基を有する化合物としては、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;
エポキシ基を有する化合物としては、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルビニルエーテル;
酸無水物を有する化合物としては、無水酢酸等のカルボン酸無水物類、無水ピロメリット酸、無水フタール酸等の芳香族酸無水物、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物等の不飽和基含有環状酸無水物;等が挙げられる。
また、塗料用樹脂自体が当該官能基を有しているものを選択して使用してもよく、例えば、ポリアミド樹脂ではアミノ基やカルボキシ基、酢酸ビニル樹脂ではアルコキシカルボニル基、ポリビニルアルコール、ポリウレタンでは水酸基、アクリル樹脂ではカルボキシル基、エポキシ基や水酸基等が挙げられる。
(官能基(a)、(b)の組合せ)
本発明において、官能基(a)と官能基(b)の具体的な組合せとしては、例えば以下のものが好ましいものとしてあげられる。
(i)官能基(a)が酸無水物残基、カルボキシル基、エポキシ基又は酸ハライド基であり、官能基(b)がアミノ基である組合せ;
(ii)官能基(a)が酸無水物残基、カルボキシル基又は水酸基であり、官能基(b)がイソシアナト基である組合せ;
(iii)官能基(a)が酸無水物残基、カルボキシル基、水酸基又は加水分解性シリル基であり、官能基(b)が水酸基である組合せ;
(iv)官能基(a)が水酸基又は加水分解性シリル基であり、官能基(b)が加水分解性シリル基である組合せ;
(v)官能基(a)が酸無水物残基またはカルボキシル基であり、官能基(b)がエポキシ基である組合せ;
(vi)官能基(a)が水酸基又はエポキシ基であり、官能基(b)が酸無水物残基又はカルボキシル基である組合せ;
(vii)官能基(a)がアルコキシカルボニル基であり記官能基(b)がアルコキシカルボニル基である組合せ等が好ましい組合せとして挙げられる。
さらにより好ましい(a)、(b)の特定の組合せは、以下のとおりである。
(a)酸無水物残基/(b)アミノ基
(a)酸無水物残基/(b)エポキシ基
(a)エポキシ基/(b)アミノ基
(a)加水分解性シリル基/(b)加水分解性シリル基
(a)酸ハライド基/(b)アミノ基
また、官能基(a)と官能基(b)の反応を促進する為、塗料に触媒となる成分を添加することも好ましい。例えば、酸無水物残基とエポキシ基を選択した場合は3級アミン、オクトエ酸第一スズ、酸、アルコール類、フェノール類が好ましく、カルボキシル基及び酸無水物残基と水酸基を選択した場合は、アセチルアセトンの第二鉄塩が好ましく、加水分解性シリル基と水酸基を選択する場合は、アミン類が好ましい。
また、官能基(a)と官能基(b)の両方が水酸基である場合は、各種ジイソシアネート類を添加することが好ましい。
また、官能基(a)と官能基(b)の両方がアルコキシカルボニル基である場合は、トリメンベース、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート等の塩基若しくは、アミノシランカップリング剤若しくは、アルミニウムトリアルコキシド類を添加することが好ましい。
(加熱処理工程)
本発明の着色されたフッ素樹脂成形体は、官能基(a)を含有するフッ素樹脂の成形体表面に、当該官能基(a)と反応する官能基(b)を有する着色塗料を塗布し、この官能基(a)と(b)の反応が実質的に進行する温度で加熱処理して得られる。
反応が実質的に進行する温度としては、任意の温度が選定できるが、好ましくは、当該フッ素樹脂の融点未満であって、かつ、融点以下100℃までの温度で加熱処理することであり、より好ましくは融点以下20〜100℃、最も好ましくは融点以下25〜90℃で加熱処理するものである。かくして、加熱処理により、官能基(a)と官能基(b)とが化学反応し結合を形成することによって、塗膜とフッ素樹脂成形体との密着性が著しく向上できる。加熱処理温度が、当該フッ素樹脂の融点以上であると、フッ素樹脂成形体が変形する傾向を生じ好ましくない。
また、加熱処理の時間は、加熱温度によっても変わりうるが、通常10秒〜10時間、好ましくは1分〜1時間、さらに好ましくは3〜30分である。
なお、加熱処理の装置としては、一般的な加熱装置又は乾燥装置が使用可能であり、例えば、電熱乾燥器、赤外線乾燥器、熱風乾燥機、電気炉等目的に応じて任意のものが採用できる。
(顔料等)
本発明において、着色塗料に配合される顔料としては、加熱処理時に分解、変質しないものであれば、特に限定するものではなく、通常のものが使用可能であり、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、銅・クロムブラック、モリブデートオレンジ、酸化鉄、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、チタン・アンチモン・クロムイエロー、クロムグリーン、酸化クロムグリーン、コバルトグリーン、群青、紺青等の無機顔料;
モノアゾ系、ポリアゾ系、キノフタロン系、β―ナフトール系、ピラゾロン系、縮合多環式系、アントラキノン系、フタロシアニン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系等の有機顔料が挙げられる。
また、塗料を構成するための有機溶剤としては、n−ヘプタン、n−ヘキサン等の炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類;メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルセロソルブ等のグリコールジエーテル類が挙げられる。さらに市販の各種シンナーも使用できる。
本発明における着色塗料は、例えば、塗料用樹脂、(b)官能基を有する化合物、上記顔料及び有機溶剤を混合することにより調製されるものであり、及び所望により、さらに、通常塗料に配合される、消泡剤、界面活性剤、増粘剤、乳化剤、レベリング剤、顔料、分散剤等の添加剤を配合することができる。また、現在、多数の市販の機能性樹脂が入手可能であり、目的に応じたものを選択・使用することができる。
なお、本発明において、フッ素樹脂成形体への着色塗料の塗布手段は特に限定するものではなく、刷毛塗り、バーコータ、ディップコータ、スプレーコータ、シャワーコータ、スクリーン印刷、スピンコータ、ロールコータ、ドクターブレードコータ、ロッドコータ、カーテンフローコータ等、対象とするフッ素樹脂成形体の形状、塗布厚み、塗布液の濃度や粘度等に応じて任意の塗布手段を採用することができる。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。なお、%とあるものは、とくに断りなき限り、質量%である。
以下の実施例及び比較例において、塗膜の強度は、以下のようにしてその接着性により評価した。
〔塗膜の接着性〕
JIS K5600−5−6に記載されているテープ剥離試験に準拠して塗膜のフッ素樹脂への接着性の評価を実施した。ただし、本試験においては、フッ素樹脂のフィルムの上に形成した塗膜の接着性を評価するため、塗膜は碁盤目にカットせずに評価を実施した。
〔合成例1〕(官能基を含有するE/TFE系樹脂の合成)
特開2004−238405の実施例9に記載された方法により、酸無水物残基を有するフッ素樹脂を合成した。すなわち
内容積が94Lの重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの71.3kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、以下、以下「AK225cb」という。)の20.4kg、CH2=CH(CF22Fの562g、無水イタコン酸(以下「IAN」という。)の4.45gを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、TFE/Eのモル比で89/11のガスで1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの0.7%ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の1Lを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるようにTFE/Eの59.5/40.5モル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。
また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して3.3モル%に相当する量のCH2=CH(CF22Fと0.8モル%に相当する量のIANを連続的に仕込んだ。重合開始9.9時間後、モノマー混合ガスの7.28kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、この含フッ素共重合体(以下「フッ素樹脂1」という。)の組成はTFEに基づく繰り返し単位/Eに基づく繰り返し単位/IANに基づく繰り返し単位/CH2=CH(CF22Fに基づく繰り返し単位のモル比で57.4/38.6/0.48/3.5であった。融点は230℃、297℃で測定したQ値は48mm3/秒であった。
〔合成例2〕(官能基を有する着色塗料1の調製)
オキツモ社製常温硬化型耐熱耐侯塗料(溶剤型シリコーン樹脂系塗料、溶剤はキシレン、顔料は酸化第二鉄を使用。)に、N−(2―アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、製品名:KBM−603、以下「アミノシラン」という。)を1.0質量%添加してアミノ基を有する化合物を含有する着色塗料1を得た。
〔合成例3〕(官能基を含有するTFE/PAVE系樹脂の合成)
内容積が22Lの重合槽を脱気し、AK225cbの19.2kg、ペルフルオロプロピルビニルエーテルの885g、メタノールの10.7g、TFEの1240gを仕込み、重合槽内を50℃に昇温したところ、圧力は0.46MPa/Gであった。重合開始剤としてヘプタフルオロブチロイルパーオキサイドの0.1質量%AK225cb溶液の68mlを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるようにTFEを連続的に仕込み、10分間にほぼ100gのTFEが仕込まれるように前記開始剤を連続的に添加した。
また、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の0.3質量%AK225cb溶液をTFEが85g仕込まれる度に36mlずつ仕込んだ。重合開始3.3時間後、TFEの1.7kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、この含フッ素共重合体(以下「フッ素樹脂2」という。)の組成はTFEに基づく繰り返し単位/ペルフルオロプロピルビニルエーテルに基づく繰り返し単位/5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物に基づく繰り返し単位のモル比で97.8/1.9/0.3であった。融点は290℃、380℃で測定したQ値は13mm3/秒であった。
〔合成例4〕(官能基を有する着色塗料2の調製)
オキツモ社製常温硬化型耐熱耐侯塗料(溶剤型シリコーン樹脂系塗料、溶剤はキシレン、顔料は酸化第二鉄を使用。)に、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、製品名:KBM−603、以下「アミノシラン」という。)を5.0質量%添加してアミノ基を有する化合物を含有する着色塗料2を得た。
〔実施例1〕
合成例1で得られた酸無水物基を有するフッ素樹脂1を押出成形により厚み200μmのフィルム状に成形した。当該フッ素樹脂1のフィルムの表面に、合成例2で調製した官能基を有する着色塗料(アミノシラン1.0質量%含有)を刷毛で塗布し、当該フッ素樹脂の融点より30℃低い温度である200℃に加熱したオーブン中で5分間加熱処理し、着色されたフッ素樹脂フィルムを得た。当該着色塗膜の接着性を、上記した方法により評価したところ、この塗膜は全く剥離せず、いずれも強固な塗膜が得られていることが確認された。
〔実施例2〜5〕
着色塗料のアミノシラン含有量、加熱処理温度、加熱時間を表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂1のフィルムの表面に着色塗膜を形成し、当該塗膜の接着性を評価し、結果を表1にまとめた。
〔比較例1〕
実施例1のフッ素樹脂1を、酸無水物基のような官能基を有しないエチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体(旭硝子社製、商品名 Fluon ETFE C―55AX)に変更する以外は、実施例1と同様にして、当該フッ素樹脂の表面に着色塗膜を形成し、その接着性を評価した。当該皮膜は完全に剥離し、接着性はきわめて低かった。
〔比較例2〜3〕
着色塗料のアミノシラン含有量、熱処理温度、加熱時間を表1に記載の条件に変更した以外は実施例1と同様にフッ素樹脂1の表面に着色塗膜を形成し、その塗膜の接着性を評価した。結果を表1にまとめた。加熱処理温度が本発明で規定する範囲より低い場合は、官能基(a)、(b)の反応が実質的に進行せず、強固な塗膜を得ることができない。
Figure 0005013242
〔実施例6〕
合成例3で得られた酸無水物基を有するフッ素樹脂2をプレス成形により厚み200μmのフィルム状に成形した。当該フッ素樹脂2のフィルムの表面に、合成例4で調製した官能基を有する着色塗料2(アミノシラン5.0質量%含有)を刷毛で塗布し、当該フッ素樹脂の融点より90℃低い温度である200℃に加熱したオーブン中で5分間加熱処理し、着色されたフッ素樹脂フィルムを得た。当該着色塗膜の接着性を、上記した方法により評価したところ、この塗膜は全く剥離せず、いずれも強固な塗膜が得られていることが確認された。
〔比較例4〕
実施例6のフッ素樹脂2を、酸無水物基のごとき官能基を有しないテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体(旭硝子社製、商品名 Fluon PFA P―62XP)に変更する以外は、実施例6と同様にして、当該フッ素樹脂の表面に着色塗膜を形成し、その接着性を評価した。当該皮膜は完全に剥離し、接着性はきわめて低かった。
本発明の着色されたフッ素樹脂成形体は、なんら特殊な表面処理等の工程を必要とせずに密着性に優れた強固な塗膜が形成されているものであり、種々の着色されたフッ素樹脂成形体、例えば着色フッ素樹脂電線、着色チューブ、着色パイプ、着色フィルム、着色ケース、着色バルブ、及び着色ボトル等を提供することができるので、その産業上の利用可能性は大きい。

Claims (11)

  1. 含フッ素モノマーと、酸無水物残基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、加水分解性シリル基、アルコキシカルボニル基、及び酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(a)を有するコモノマーを共重合させてなる、当該官能基(a)を含有するフッ素樹脂の成形体表面に、当該官能基と反応する官能基(b)を有する着色塗料を塗布し、当該フッ素樹脂の融点未満であって、上記官能基の反応が実質的に進行する温度で加熱処理して得られ、前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン系共重合体、又はエチレン/クロロトリフルオロエチレン系共重合体であることを特徴とする着色されたフッ素樹脂成形体。
  2. 前記着色塗料の官能基(b)が、アミノ基、イソシアナト基、水酸基、加水分解性シリル基、エポキシ基、酸無水物残基、アルコキシカルボニル基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
  3. 前記フッ素樹脂の官能基(a)が酸無水物残基、カルボキシル基、エポキシ基、又は酸ハライド基であり、前記着色塗料の官能基(b)がアミノ基である請求項1に記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
  4. 前記フッ素樹脂の官能基(a)が酸無水物残基、カルボキシル基、又は水酸基であり、前記着色塗料の官能基(b)がイソシアナト基である請求項1に記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
  5. 前記フッ素樹脂の官能基(a)が酸無水物残基、カルボキシル基、水酸基、又は加水分解性シリル基であり、前記着色塗料の官能基(b)が水酸基である請求項1に記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
  6. 前記フッ素樹脂の官能基(a)が水酸基又は加水分解性シリル基であり、前記着色塗料の官能基(b)が加水分解性シリル基である請求項1に記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
  7. 前記フッ素樹脂の官能基(a)が酸無水物残基又はカルボキシル基であり、前記着色塗料の官能基(b)がエポキシ基である請求項1に記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
  8. 前記フッ素樹脂の官能基(a)が水酸基又はエポキシ基であり、前記着色塗料の官能基(b)が酸無水物残基又はカルボキシル基である請求項1に記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
  9. 前記フッ素樹脂の官能基(a)がアルコキシカルボニル基であり、前記着色塗料の官能基(b)がアルコキシカルボニル基である請求項1に記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
  10. 前記着色塗料を塗布したフッ素樹脂成形体を、当該フッ素樹脂の融点未満であって、かつ、融点以下100℃までの温度で加熱処理する請求項1〜のいずれかに記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
  11. 着色されたフッ素樹脂成形体が、電線、チューブ、パイプ、フィルム、ケース、バルブ、又はボトルである請求項1〜10のいずれかに記載の着色されたフッ素樹脂成形体。
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