JP4175025B2 - 含フッ素樹脂層形成方法、含フッ素樹脂層及び物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素樹脂塗料組成物から耐摩耗性、非粘着性及び引張伸びに優れた含フッ素樹脂層を形成し得る含フッ素樹脂層形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
OA機器分野における印刷機、複写機等の画像形成装置は、トナーを紙等の転写材に定着させ画像を形成するための定着装置を有している。定着装置は、通常、転写材を挟持するロール、ベルト等の定着部材を含むものであり、定着部材は、ドラム状、ベルト状等の定着部材の形状を形作る基体からなるものである。
【0003】
定着部材は、従来、耐熱性であるとともに、表層に耐摩耗性と非粘着性とを有することが求められてきた。このため、定着部材としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕等の含フッ素樹脂からなる含フッ素樹脂層を表面に形成させたものが用いられている。
【0004】
定着部材表面の含フッ素樹脂層としては、従来、コーティング又はチューブが適用されてきた。コーティングは、塗料組成物から得られる被覆材であり、チューブと比較して、薄膜の形成が容易であること、折り目がないこと、適度な除電性を有すること等の点で優れるので、適用することが好ましい。
【0005】
しかしながら、コーティングは、用いる材料の分子量に関わりなく押出チューブ加工機等を使用して物理的に平滑面を形成することができるチューブとは異なり、
材料自体の溶融流動性のみにより平滑面を形成する必要があることから、チューブ材料よりも低分子量の材料を用いざるを得なかった。その結果、コーティングは、チューブよりも耐摩耗性に劣る問題があった。
【0006】
コーティングは、また、比較的低分子量の材料を用いることに起因して、トナーが高温下で溶融する際に定着部材表層に付着する最低の温度であるホットオフセット温度が低いこと等により、非粘着性に劣る問題があった。
【0007】
耐磨耗性と非粘着性とを向上させるためにコーティング材料の分子量を高くすることが考えられるが、コーティングは、基体材料の耐熱温度以下の温度で塗布し焼成を行う必要があり、この限られた温度で含フッ素樹脂を充分に溶融させて層中に欠陥がなく平滑な面を有する含フッ素樹脂層とするためには、含フッ素樹脂の分子量をあまり高くすることはできない。
【0008】
このように、従来、定着部材のコーティング材料として用い得る分子量の含フッ素樹脂からなる含フッ素樹脂塗料組成物から、耐摩耗性と非粘着性とに優れた含フッ素樹脂層を形成することは不可能であった。
【0009】
コーティングは、また、トナー粒子の大きさや、紙の厚みを吸収しても破断しないだけの伸びが求められるので、引張伸びに優れていることが必要である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の現状に鑑み、含フッ素樹脂塗料組成物から耐摩耗性、非粘着性及び引張伸びに優れた層を形成し得る含フッ素樹脂層形成方法並びに含フッ素樹脂層及び物品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、含フッ素樹脂からなる含フッ素樹脂塗料組成物を被塗装物に塗布し、次いで焼成したのち、冷却処理をして含フッ素樹脂層を形成することよりなる含フッ素樹脂層形成方法であって、上記含フッ素樹脂は、340℃において荷重を5kgfとして測定したメルトフローレートが5〜50g/10分であるテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であり、上記含フッ素樹脂層は、200℃における引張強度が10MPa以上であり、200℃における引張伸びが450%以上であり、厚みが1〜50μmであることを特徴とする含フッ素樹脂層形成方法である。
【0012】
本発明の含フッ素樹脂層形成方法は、含フッ素樹脂塗料組成物を被塗装物に塗布し、次いで焼成したのち、冷却処理をして含フッ素樹脂層を形成することよりなるものである。
【0013】
上記含フッ素樹脂塗料組成物は、含フッ素樹脂からなるものである。
上記含フッ素樹脂は、340℃において荷重を5kgfとして測定したメルトフローレート〔MFR〕が5〜50g/10分であるものである。50g/10分を超えると、加工方法を制御しても所望の引張強度及び引張伸びが得られない場合があり、5g/10分未満であると、上記含フッ素樹脂層中に欠陥が生じたり平滑な面を有する含フッ素樹脂層を形成しなかったりする場合がある。好ましい下限は、10g/10分であり、好ましい上限は、30g/10分である。
【0014】
上記MFRは、上記範囲内にあれば、得られる含フッ素樹脂層の表面が平滑となることから、非粘着性に優れた層を形成することができ、さらに含フッ素樹脂層の表面が平滑で欠陥がないことから、耐摩耗性に優れた層を形成することができる。
【0015】
上記MFRは、一定温度及び一定加重の条件下、規定の直径及び長さの筒から押し出される上記含フッ素樹脂の流出速度であり、ASTM D 3159に準拠して測定して得られる値である。上記MFRの値は、上記含フッ素樹脂の分子量の大きさを反映する。上記MFRは、通常、分子量が小さいほど大きい値となり、分子量が大きいほど小さい値となる。
【0016】
上記含フッ素樹脂は、上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布して得られる皮膜に、耐久性、特に高温での耐久性と、非粘着性とを付与するために用いられる。
上記含フッ素樹脂は、後述の焼成時及び用途により使用時に耐熱性を求められることから、150〜330℃の融点を有するものが好ましい。上記含フッ素樹脂としては、更に、上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布した後、後述の焼成の工程において、皮膜中で均一に分散することが求められることから、融点より50℃高い温度での溶融粘度が106kgm-1s-1以下のものが好ましい。
【0017】
上記含フッ素樹脂は、パーフルオロ樹脂であることが好ましい。パーフルオロ樹脂であると、焼成時及び使用時に求められる充分な耐熱性、並びに、非粘着性が得られやすい。
上記パーフルオロ樹脂としてはMFRが上記範囲内にあるものであれば特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔EPA〕等が挙げられる。
【0018】
上記パーフルオロ樹脂は、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であることが好ましい。上記テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体であると、非粘着性及び耐熱性に優れた含フッ素樹脂層を形成することができる。
【0019】
上記含フッ素樹脂の見掛け密度は、通常、0.3〜1.5g/mlであることが好ましい。見掛け密度が小さすぎると、上記含フッ素樹脂塗料組成物中における含フッ素樹脂の分散性が低下して泡の抱き込みやレベリング性不良が起こることがある。見掛け密度が大きすぎると、上記含フッ素樹脂が沈降しやすく上記含フッ素樹脂塗料組成物の分散安定性が低下することがある。より好ましい下限は、0.5g/mlであり、より好ましい上限は、1.0g/mlである。本明細書において、上記「見掛け密度」とは、JIS K 6391−5.3に準じて測定することにより得られる値を意味する。
【0020】
上記含フッ素樹脂の平均粒径としては、通常、1〜1000μmであることが好ましい。平均粒径が小さすぎると、後述の焼成時に皮膜にクラックが発生しやすくなり、充分な膜厚を有する含フッ素樹脂層が得られなくなる。平均粒径が大きすぎると、後述の含フッ素樹脂塗料組成物中で含フッ素樹脂が沈降しやすくなって分散状態が安定せず、均一な塗布が困難になることがある。より好ましい上限は、300μmであり、更に好ましい上限は、50μmである。
【0021】
上記含フッ素樹脂からなる上記含フッ素樹脂塗料組成物は、粉体塗料、液状塗料の何れであってもよいが、表面が平滑な含フッ素樹脂層を得るために液状塗料が好ましい。
上記粉体塗料としては特に限定されず、例えば、上記含フッ素樹脂を一旦ペレットの形態にしたのち、上記ペレットを粉砕してなるものが挙げられる。このような粉砕品の平均粒径は、5〜1000μmが好ましい。より好ましい上限は、300μmである。
【0022】
上記液状塗料としては特に限定されず、例えば、上記含フッ素樹脂を分散媒に分散させてなるものが挙げられる。上記分散媒としては、水、有機溶媒の何れであってもよいが、水と水溶性溶媒を含むものであることが好ましい。上記水溶性溶媒の分子は、上記含フッ素樹脂の微粒子に付着し、上記含フッ素樹脂の微粒子の表面エネルギーを下げることにより、上記含フッ素樹脂の微粒子を上記含フッ素樹脂塗料組成物中で均一に分散させることに寄与する。上記水溶性溶媒のなかでも、後述の高沸点有機溶媒は、上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布して得られる皮膜を乾燥する際に上記含フッ素樹脂の微粒子どうしをつなぎ、クラックの発生を防止する乾燥遅延剤として作用する。
【0023】
上記水溶性溶媒としては特に限定されず、例えば、沸点が100℃未満の低沸点有機溶媒としてメタノール、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等;沸点が100〜150℃の中沸点有機溶媒としてトルエン、キシレン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、n−ブタノール等;沸点が150℃を超える高沸点有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ケトシン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジメチルカルビトール、ブチルジカルビトール、ブチルセロソルブ、シクロヘキサノール、ジイソブチルケトン、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0024】
上記水溶性溶媒は、配合する場合、上記含フッ素樹脂塗料組成物にしめる水と水溶性溶媒との合計重量のうち、0.5〜50重量%が好ましい。より好ましい下限は、1重量%であり、より好ましい上限は、45重量%である。
【0025】
上記液状塗料は、特に上記水溶性溶媒を含む場合、界面活性剤を配合することが好ましい。
上記界面活性剤としては上記液状塗料中に上記含フッ素樹脂を均一に分散できるものであれば特に限定されず、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用でき、これらを単独又は組み合わせて用いてもよいし、それぞれを1種又は2種以上用いてもよい。なかでも、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましく、熱分解残量の少ないオキシエチレン鎖を有する非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0026】
上記界面活性剤は、配合する場合、固形分比で通常上記含フッ素樹脂の0.01〜50%であることが好ましい。0.01重量%未満であると、含フッ素樹脂が均一に分散せず、含フッ素樹脂の微粒子が一部浮上する場合がある。50重量%を超えると、皮膜に界面活性剤の分解残渣が多く残留して着色するほか、皮膜の耐熱性や非粘着性等の特性が低下する場合がある。より好ましい下限は、0.1重量%、より好ましい上限は、40重量%であり、更に好ましい下限は、0.2重量%、更に好ましい上限は、35重量%である。
【0027】
上記含フッ素樹脂は、上記含フッ素樹脂塗料組成物100重量部に対し、固形分で15〜80重量部であることが好ましい。上記含フッ素樹脂塗料組成物として上記液状塗料を用いる場合、上記含フッ素樹脂の配合量が少なすぎると、上記含フッ素樹脂塗料組成物の粘度が低くなり、後述の被塗装物に塗布しても液垂れしやすく、充分な膜厚を有する皮膜が得られない場合があり、上記含フッ素樹脂の配合量が多すぎると、上記含フッ素樹脂塗料組成物の流動性が低下して、塗装できなくなる場合がある。上記含フッ素樹脂の配合量としては、塗装法や膜厚の調製等を考慮して上記範囲内で適宜選定すればよいが、スプレー塗装やディップ塗装等の場合は比較的低濃度とし、押し付け塗装等の場合はペースト状となる50重量部以上とすることがよい。より好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は75重量部である。
【0028】
上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スプレー塗装、ロール塗装、ドクターブレードによる塗装、ディップ(浸漬)塗装、含浸塗装、スピンフローコート、カーテンフローコート等が挙げられる。なかでも、スプレー塗装が好ましい。
【0029】
本発明の含フッ素樹脂層形成方法において、上記含フッ素樹脂塗料組成物は、被塗装物に塗布する。本明細書において、上記「被塗装物」とは、上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布する対象を意味する。本明細書において、上記被塗装物は、上記含フッ素樹脂塗料組成物から得られる含フッ素樹脂層を有さず、上記含フッ素樹脂塗料組成物以外の塗料組成物から得られる層又は後述のプライマーから得られるプライマー層を有さないものである。
【0030】
上記被塗装物としては、上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布される物として用い得るものであれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム、耐熱性樹脂、金属等からなるものが挙げられる。上記被塗装物としては、被塗装物全体がシリコーンゴム、耐熱性樹脂又は金属でできているものであってよいし、上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布する面、又は、後述するプライマーを塗布する面がシリコーンゴム、耐熱性樹脂若しくは金属からなり、上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布しない部分又は後述するプライマーを塗布しない部分はその他の材料からなるものであってもよい。このような被塗装物としては、例えば、シリコーンゴム、耐熱性樹脂及び/又は金属が2層以上の多層をなしているもの等が挙げられる。
【0031】
上記耐熱性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラバン酸、ポリパラベンゾビスイミダゾール、ポリパラベンゾビスオキサゾール、ポリパラベンゾビスチアゾール等が挙げられ、耐熱性樹脂を2種以上積層させてなる複層品であってもよい。
上記金属としては特に限定されず、例えば、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。
【0032】
上記被塗装物は、所望により弾性層を形成してなるものであってもよい。上記弾性層は、通常ゴム弾性層である。上記ゴム弾性層は、耐熱性及び上記含フッ素樹脂層との接着性の点で、フッ素ゴムからなるものであることが好ましい。
【0033】
上記被塗装物は、後述の含フッ素樹脂層を形成する際、焼成を行うことから、焼成温度以上の耐熱温度を有することが求められる。後述のように焼成は、上記含フッ素樹脂の融点以上の温度で行うものであることから、上記被塗装物の耐熱温度は、通常、350℃以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の含フッ素樹脂層形成方法は、上述の含フッ素樹脂塗料組成物を上記被塗装物に塗布するものである。
本明細書において、上記被塗装物に上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布することにより上記被塗装物に形成された層であって、後述の焼成を行っていないものを、「含フッ素樹脂塗布膜」ということがある。上記含フッ素樹脂塗布膜は、後述の焼成の前に所望により乾燥を行ってもよい。上記乾燥は、上記含フッ素樹脂の融点未満の温度で行うものであり、通常、室温〜120℃で5〜60分間程度行うものである。
【0035】
本発明の含フッ素樹脂層形成方法において、上記含フッ素樹脂塗布膜は、次いで焼成する。上記焼成は、通常、含フッ素樹脂の融点以上、上記被塗装物の耐熱温度以下である温度で行うものである。
上記被塗装物の耐熱温度は、上述のように通常、350℃以上である。即ち、上記焼成は、含フッ素樹脂の融点以上、350℃未満である温度で行うものであることが好ましい。
【0036】
本明細書において、このように被塗装物に上記含フッ素樹脂塗料組成物を塗布したのち、所望により乾燥を行った後に行う焼成を「塗布後の焼成」ということがある。上記塗布後の焼成は、上記被塗装物に塗布した上記含フッ素樹脂塗料組成物を初めて焼成するもの、即ち、通常、上記含フッ素樹脂の融点以上の温度に初めておくものである。上記塗布後の焼成は、このように初めて焼成するものである点で、後述の冷却方法(II)において初めて焼成したのち再度加熱することによる焼成を含まない概念である。なお、本明細書において、以下、単に「焼成」というときは、上記初めての焼成、即ち、上記塗布後の焼成と、上記冷却方法(II)において再度加熱することによる焼成とを含む概念である。
【0037】
本発明の含フッ素樹脂層形成方法は、上記塗布後の焼成ののち、冷却処理をすることを特徴とするものである。
上記冷却処理は、上記含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度についての降温速度が50℃/分以下となるように行うものであることが好ましい。
【0038】
本明細書において、上記冷却処理についての「含フッ素樹脂塗料組成物からなる層」とは、上述のように被塗装物に含フッ素樹脂塗料組成物を塗布することにより上記被塗装物に形成された層であって、上記塗布後の焼成の後、上記冷却処理を終了する前におけるものを意味する。上記含フッ素樹脂塗料組成物からなる層は、上記冷却処理を行っている最中におけるもの、及び、後述の冷却方法(II)において上記塗布後の焼成の後、冷却処理を開始する前におけるものを含む概念である。
【0039】
上記冷却処理は、上記範囲内の降温速度を常に維持するように漸次行う方法を用いてもよいし、上記範囲内の降温速度である温度にまで下げ、その温度で一定時間、例えば、2〜20分間程度保持したのち、再度降温を開始する方法を用いてもよい。後者の方法における一定時間保持する温度としては特に限定されないが、例えば、90〜110℃程度であってよく、100℃付近が好ましい。
【0040】
上記冷却処理は、上記含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度が焼成の温度から100℃に降温するまで5分以上かかるように行うものであってもよい。
上記表面は、上記含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の内部、及び、上記含フッ素樹脂塗料組成物からなる層と上記被塗装物との接触面とは概念上異なるものである。上記含フッ素樹脂塗料組成物からなる層が、熱容量の大きい被塗装物の上に形成されている場合、上記含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面は、含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の内部に比べてやや温度が低いと考えられる。
【0041】
上記冷却処理は、上述の塗布後の焼成に引き続いて行う方法(以下、「冷却方法(I)」という。)により行うことが、工程の簡便化等の点から好ましい。上記冷却処理は、通常、上記冷却方法(I)により行う。
【0042】
上記冷却処理は、上記冷却方法(I)の代わりに、上述の塗布後の焼成ののち、含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度を一旦降温させたのち、再度加熱してから行う方法(以下、「冷却方法(II)」という。)により行うこともできる。
【0043】
上記冷却方法(II)は、上述の塗布後の焼成ののち、上記含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度を含フッ素樹脂の結晶化が開始する温度以下の温度(以下、「温度A」という。)にまで下げたのち、含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度を含フッ素樹脂の結晶化度が変化し得る温度以上の温度(以下、「温度B」という。)になるように加熱してから上述の冷却処理を行うものであることが好ましい。
【0044】
上記温度Aは、通常、上記含フッ素樹脂の融点未満の温度である。このような温度としては、例えば、上記含フッ素樹脂の融点よりも50℃以上低い温度であってもよく、通常、室温程度である。
【0045】
上述の塗布後の焼成を行った温度から上記温度Aにまで下げる降温の方法としては特に限定されず、例えば、本発明における冷却処理と同様に行ってもよいが、上記冷却方法(II)においては、通常、本発明における冷却処理によらない従来の冷却方法によるものであってよい。このような従来の冷却方法としては、例えば上記冷却処理における降温速度よりも速い速度で行う冷却等が挙げられ、風乾等により行われてきた通常の急冷であってもよい。
【0046】
上記温度Bは、通常、上記含フッ素樹脂の融点よりも50℃低い温度以上の温度である。上記温度Bは、上記含フッ素樹脂の融点以上の温度であってもよいが、上記含フッ素樹脂の結晶化度が変化し得るのであれば上記含フッ素樹脂の融点ににまで昇温させる必要はない。上記結晶化度は、上述の冷却処理後における含フッ素樹脂層全体に占める結晶部の割合である。上記結晶部は、非晶部でない部分であり、結晶領域と称されることもある。一般に、含フッ素樹脂が充分に結晶化するほど、上記含フッ素樹脂からなる層の力学的性質は向上する。上記力学的性質の向上の例としては、耐摩耗性の向上、引張強度の増加、引張伸びの増加等が挙げられる。
【0047】
上記温度Aと上記温度Bとは、それぞれ上述の範囲内の温度であれば同じ温度である必要はない。上記温度Aは、含フッ素樹脂の融点よりも50℃以上低い温度であり、かつ、上記温度Bは、上記含フッ素樹脂の融点よりも50℃低い温度以上の温度であることが好ましい。
【0048】
上記温度Bを上記含フッ素樹脂の融点以上の温度にする場合、上述の塗布後の焼成ののち、第2の焼成を行うことと同等のこととなる。この場合、上記温度Bからの降温は、上述のように本発明における冷却処理により行うものであり、上述の含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度についての降温速度が50℃/分以下となるように行うものであってもよいし、上述の含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度が上記第2の焼成の温度から100℃に降温するまで5分以上かかるように行うものであってもよい。
【0049】
上記冷却方法(II)は、上述のように、含フッ素樹脂塗料組成物を用いて本発明における冷却処理によらない通常の冷却を経て形成した層であっても、再度加熱して上記冷却処理を行うことにより、後述の範囲内の引張強度と引張伸びとを有する含フッ素樹脂層を得ることができるものであるので、本発明の含フッ素樹脂層形成方法を幅広く適用できる点から好ましい。
【0050】
本発明の含フッ素樹脂層形成方法において、上記冷却処理をすることにより含フッ素樹脂層を形成する。本明細書において、上記「含フッ素樹脂層」は、含フッ素樹脂塗料組成物を上記被塗装物に塗布することにより形成された層であって、上記冷却処理を経て得られるものを意味する。上記含フッ素樹脂層は、このように上記冷却処理を終了したものである点で、上述の被塗装物に形成された層であって上述の焼成を行っていない層である上述の含フッ素樹脂塗布膜、及び、上述の塗布後の焼成の後、上記冷却処理を終了する前のものである上述の含フッ素樹脂塗料組成物からなる層とは概念上異なるものである。
【0051】
上記含フッ素樹脂層は、200℃における引張強度が10MPa以上であるものである。Lancaster,J.K.は、Wear,14,223(1969)において、引張強度と耐摩耗性との間に相関があることを示唆しており、引張強度が10MPa未満であると、耐摩耗性に劣る場合がある。好ましい下限は、14MPaである。
【0052】
上記含フッ素樹脂層は、上述のように200℃における引張強度が10MPa以上であるとともに、200℃における引張伸びが450%以上であるものである。450%未満であると、トナー粒子の大きさや、紙の厚みを吸収しきれずに破断する場合がある。好ましい下限は、550%である。上記引張強度及び上記引張伸びは、JIS K 6251(1993年)に準拠して測定することにより得られる値である。
【0053】
上記含フッ素樹脂層は、厚みが1〜50μmであることが好ましい。1μm未満であると、含フッ素樹脂層の耐摩耗性、表面平滑性ひいては非粘着性が低下する場合があり、50μmを超えると、クラックが生じる場合がある。より好ましい下限は、3μmであり、より好ましい上限は、45μmである。
【0054】
本発明の含フッ素樹脂層形成方法は、上述の冷却処理を行うものであるので、上述のように優れた引張強度と引張伸びとを有する含フッ素樹脂層を得ることができる。本発明の含フッ素樹脂層形成方法がこのように優れた効果を奏する機構としては明確ではないが、次のように考えられる。即ち、上述の含フッ素樹脂塗布膜の焼成時に溶融状態にある含フッ素樹脂は、冷却される際に、分子鎖がエネルギー的に安定な形態をとろうとして結晶化が進む。従来の皮膜形成方法において冷却工程は、焼成を行った温度から直ちに常温へ冷却する方法が一般的であったが、この場合、分子鎖が充分に安定な形態をとる前に、急激な温度低下により分子鎖の動きが制限され、結晶化が不充分になりやすかったのに対し、本発明の含フッ素樹脂層形成方法は、冷却工程として徐冷するものである上記冷却処理を採用しているので、分子鎖がより安定な形態をとれるだけの時間的余裕があり充分に結晶化することが可能となる。従って、含フッ素樹脂層は、少なくとも表面が充分に結晶化し、この結晶化が耐摩耗性等の力学的性質の向上に寄与しているものと考えられる。
【0055】
含フッ素樹脂層の少なくとも表面が充分に結晶化しているということは、非粘着性の向上にも寄与する。即ち、結晶化した含フッ素樹脂ほど、融点以上の温度にする際に大きな吸収熱が必要となり、含フッ素樹脂層が用いられる高温条件下においても、含フッ素樹脂層の表面は溶融しにくく高い表面張力を有し、他の物質と接着しにくい性質を有することになる。充分に結晶化した含フッ素樹脂層を、例えば、オフィスオートメーション機器〔OA機器〕の定着部材表層等に用いる場合、ホットオフセット温度が高くなりトナー等に対する非粘着性を向上することができる。
【0056】
上述の含フッ素樹脂塗料組成物は、上記含フッ素樹脂層と上記被塗装物との接着性を向上するため、上記被塗装物上にプライマーを塗布してから塗布することが好ましい。
本明細書において、上記「被塗装物上に塗布する」とは、上記被塗装物に直接接触するように塗布することを意味する。
【0057】
上記プライマーとしては、上記被塗装物がシリコーンゴムからなるものである場合、例えば、アルコキシシランモノマー重合体を含む組成物、含フッ素重合体を含む組成物、官能基含有含フッ素エチレン性重合体粒子の分散組成物等が挙げられる。なかでも、官能基含有含フッ素エチレン性重合体粒子の分散組成物が好ましい。
上記アルコキシシランモノマー重合体は、アルコキシシランモノマーの重縮合体であり、例えば、特開昭51−36226号公報、特公平1−37737号公報、特公平5−1313号公報等に開示されているものを用いることができる。
【0058】
上記プライマーとしては、上記被塗装物が耐熱性樹脂又は金属からなるものである場合、例えば、耐熱ポリマー及び含フッ素重合体からなる組成物、シラン化合物若しくは官能基含有含フッ素エチレン性重合体粒子の分散組成物等が挙げられる。なかでも、官能基含有含フッ素エチレン性重合体粒子の分散組成物が好ましい。
【0059】
本明細書において、上記「含フッ素重合体」とは、主鎖を構成する炭素原子に直接結合しているフッ素原子を有する重合体であって、上記プライマーに配合されるものを意味する。上記含フッ素重合体としては、上述の含フッ素樹脂と同じものであっても異なるものであってもよいが、上述の含フッ素樹脂層との相溶性と接着性とを高めるため、上述の含フッ素樹脂と同一又は類似の組成をもつものが好ましい。また、上記耐熱ポリマーは、主に上記被塗装物との接着性を向上する目的で用いられ、上述の耐熱性樹脂と同一又は類似の組成をもつものが好ましい。
【0060】
本明細書において、上記「官能基含有含フッ素エチレン性重合体」とは、官能基として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、塩を形成しているカルボキシル基、アルコキシカルボニル基及び/又はエポキシ基を有する重合体であって、炭素原子に直接結合するフッ素原子を有するエチレン性不飽和化合物を重合して得られるものを意味する。本明細書において、上記官能基含有含フッ素エチレン性重合体が有する官能基をプライマー官能基ということがある。上記プライマー官能基は、上記被塗装物との接着性を高める効果を有する。上記プライマー官能基の種類や組合せは、上記被塗装物の材料の種類、目的や用途により適宜選択されるが、耐熱性の点でヒドロキシル基を有するものが好ましい。
【0061】
上記塩を形成しているカルボキシル基は、1価又は2価以上の陽イオンを形成することができる原子又は原子団がカルボキシル基の水素の代わりに結合したものである。上記塩を形成しているカルボキシル基は、上述のプライマーの分散媒が水を含む場合、上記分散媒中でイオン化するものであってもよい。上記陽イオンを形成することができる原子又は原子団としては特に限定されず、例えば、K、Na、Ca、Fe、NH4等が挙げられる。
【0062】
上記エポキシ基は、通常、炭素鎖によって結合している2原子の炭素と1原子の酸素が架橋して結合したものである。上記エポキシ基としては、反応性が高く、上記被塗装物、更に上述の含フッ素樹脂層との化学的結合に寄与しやすい点から、1,2−エポキシ基、1,3−エポキシ基が好ましく、1,2−エポキシ基がより好ましい。
【0063】
上記官能基含有含フッ素エチレン性重合体は、上記プライマー官能基を有する官能基含有含フッ素エチレン性単量体及び上記プライマー官能基を含有しない官能基非含有含フッ素エチレン性単量体を重合することにより得られるものであり、例えば、WO98/50229号公報で開示されたものを用いることができる。
【0064】
上記官能基含有含フッ素エチレン性単量体の含有率は、上記官能基含有含フッ素エチレン性重合体中の単量体成分の全量の0.05〜30モル%であることが好ましい。
【0065】
上記プライマーを塗布する方法としては、上述の含フッ素樹脂塗料組成物を塗布する方法と同様の方法が挙げられる。
上記被塗装物上に上記プライマーを塗布して形成された層(以下、「プライマー層」という。)は、所望により乾燥を行ったものであってよい。上記プライマー層に対して行う乾燥に要する温度及び時間の目安は、100℃で20分程度である。
上記プライマー層の厚みは、1〜20μmであることが好ましい。
【0066】
上記含フッ素樹脂層形成方法により形成されたものであることを特徴とする含フッ素樹脂層もまた、本発明の一つである。
上記含フッ素樹脂層を有することを特徴とする物品もまた、本発明の一つである。
本発明の物品は、上記被塗装物の表面の少なくとも一部が含フッ素樹脂層に被覆されてなるものであり、上記被塗装物の表面の全部が上記含フッ素樹脂層に被覆されてなるものであってもよい。
上記物品は、オフィスオートメーション機器用ベルト、オフィスオートメーション機器用フィルム、オフィスオートメーション機器用ロールであることが好ましい。
【0067】
上記物品がOA機器用ベルト又はOA機器用ロールである場合、例えば、図1の模式的断面図に示すように基材1、プライマー層2、含フッ素樹脂層3からなるもの等が挙げられる。基材1は、通常、耐熱性樹脂又は金属製のベルトである。ベルトは、フィルムと表現されることもあり、この場合、上記OA機器用ベルトはOA機器用フィルムと称されることがある。また、基材1は金属製の芯金上にシリコーンゴム層が配置されたロールであってもよい。このようなベルト又はロールからなる基材1上にプライマー層2が形成され、さらにその上部に含フッ素樹脂層3が形成された積層構造を有している。プライマー層2及び/又は含フッ素樹脂層3は、それぞれ単層であってもよいし、2層以上の多層であってもよい。
【0068】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
製造例1 官能基含有含フッ素エチレン性重合体粒子の分散組成物の調製
攪拌機、バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた3リットルガラスライニング製オートクレーブに純水1500ml、パーフルオロオクタン酸アンモニウム9.0gを入れ窒素ガスで置換した後、真空にし、エタンガス20mlを仕込んだ。次いで、ヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体として、下記式(1)CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2OH (1)
で表されるパーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン−1−オール)3.8g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]18gを窒素ガスを用いて圧入し、系内の温度を70℃に保った。攪拌を行いながらテトラフルオロエチレン[TFE]を内圧が8.5kgf/cm2Gとなるように圧入した。次いで、過硫酸アンモニウム0.15gを水5.0gに溶かした溶液を窒素を用いて圧入して反応を開始した。
【0069】
重合反応の進行に伴って圧力が低下するので、7.5kgf/cm2Gまで低下した時点でTFEで8.5kgf/cm2Gまで再加圧し、降圧、昇圧を繰り返した。
【0070】
TFEの供給を続けながら、重合開始からTFEが約40g消費されるごとに、上記式(1)で表されるヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体1.9gを計3回(計5.7g)圧入して重合を継続し、重合開始よりTFEが約160g消費された時点で供給を止めてオートクレーブを冷却し、未反応モノマーを放出し、青みがかった半透明の水性分散体1702gを得た。
【0071】
得られた水性分散体中のポリマーの濃度は10.9%、動的光散乱法で測定した粒子径は70.7nmであった。
得られた水性分散体の一部を取って凍結凝析を行い、析出したポリマーを洗浄、乾燥して白色の固体を単離した。得られた含フッ素エチレン性重合体の組成は19F−NMR分析およびIR分析により、モル比として、TFE:PPVE:(上記式(1)で表されるヒドロキシル基を有する含フッ素エチレン性単量体)=97.7:1.2:1.1であった。IRスペクトルは3620〜3400cm-1に−OHの特性吸収が観測された。
DSC分析により、上記官能基含有含フッ素エチレン性重合体の融点[Tm]は310℃と検知された。
【0072】
調製例1 含フッ素樹脂塗料組成物の調製
イソプロピルアルコール4重量部、フッ素系界面活性剤DS−401(ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、純水20重量部、PFA樹脂粉末(ダイキン工業社製、340℃荷重5kgfでのMFR=14.4g/10分、平均粒径25μm、見掛け密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを含フッ素樹脂塗料組成物という。
【0073】
調製例2 比較用塗料組成物の調製
イソプロピルアルコール4重量部、DS−401(ダイキン工業社製)8重量部、トリエチレングリコール6重量部、エチレングリコール4重量部、純水20重量部、PFA樹脂粉末(ダイキン工業社製、340℃荷重5kgfでのMFR=4.3g/10分、平均粒径25μm、見掛け密度0.8g/ml)26重量部を混合、分散して均一な分散組成物を調製した。これを比較用塗料組成物という。
【0074】
実施例1
アルミ箔上に調製例1で得た含フッ素樹脂塗料組成物をスプレー塗装し、80〜100℃で15分間乾燥した後に焼成炉に入れ340℃で30分間焼成した。そして、焼成炉から取り出し、100℃の恒温槽中で5分間静置した後に、常温で静置して冷却し、膜厚約40μmの含フッ素樹脂層被覆アルミ箔を得た。この冷却を以下、徐冷という。
アルミ箔を塩酸で溶かし、得られた含フッ素樹脂層をASTM5号ダンベル形状に打ち抜き、引っ張り試験機(商品名:テンシロン、オリエンテック社製)を用いて、JIS K 6251(1993年)に準拠して200℃において、引張速度500mm/分にて引張試験を行った。
【0075】
比較例1
アルミ箔上に調製例1で得た含フッ素樹脂塗料組成物をスプレー塗装し、80〜100℃で15分間乾燥した後に焼成炉に入れ340℃で30分間焼成した。そして、直ちに焼成炉から取り出し常温で風乾し、膜厚約40μmの含フッ素材料被覆アルミ箔を得た。この冷却を以下、急冷という。
得られたアルミ箔を実施例1と同様の方法で処理し、引張試験を行った。
【0076】
比較例2
含フッ素樹脂塗料組成物に代えて調製例2で得た比較用塗料組成物を用いた以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0077】
比較例3
含フッ素樹脂塗料組成物に代えて調製例2で得た比較用塗料組成物を用いた以外は、比較例1の手順を繰り返した。
【0078】
実施例2
アルミニウム板上に、製造例1で得た官能基含有含フッ素エチレン性重合体粒子の分散組成物をスプレー塗装し、80〜100℃で15分間乾燥した。得られたプライマー層上に調製例1で得た含フッ素樹脂塗料組成物をスプレー塗装し、80〜100℃で15分間乾燥した後に焼成炉に入れ340℃で30分間焼成した。そして、100℃の恒温槽中で5分間静置した後に、常温で静置して冷却し、約40μmの膜厚を有する含フッ素樹脂層被覆アルミニウム板(以下、単に「被覆板」という。)を得た。この冷却を以下、徐冷という。
【0079】
被覆板の摩耗性をテーバー摩耗試験機(商品名:No.101特型テーバー式アブレーションテスター、安田精機製作所社製)を用いて以下のように評価した。初めに、200℃に加熱した被覆板表面を、荷重1kg、回転速度60rpmにおいてテーバー摩耗輪CS−17で1000回転摩耗させることにより被覆板表面を平滑化し、この時の被覆板の重量を測定した。その後、同様にして1000回転摩耗させるごとに被覆板の重量を測定し、摩耗による重量減少を評価した。この操作を10回繰り返しその平均値を求め、平均摩耗量とした。
なお、含フッ素樹脂層の引張強度及び引張伸びは、含フッ素樹脂層の形成条件が実施例1と同じであることから、実施例1と同じ値を示すものと考えられる。
【0080】
比較例4
アルミニウム板上に、官能基含有含フッ素エチレン性重合体粒子の分散組成物をスプレー塗装し、80〜100℃で15分間乾燥した。得られたプライマー層上に調製例1で含フッ素樹脂塗料組成物をスプレー塗装し、80〜100℃で15分間乾燥した後に焼成炉に入れ340℃で30分間焼成した。そして、直ちに焼成炉から取り出し常温で風乾し、約40μmの膜厚を有する比較用被覆アルミニウム板を得た。この冷却を以下、急冷という。得られた比較用被覆アルミニウム板の摩耗性を、実施例2と同様にして評価した。
なお、引張強度及び引張伸びは、比較用塗料組成物からなる層の形成条件が比較例1と同じであることから、比較例1と同じ値を示すものと考えられる。
【0081】
比較例5
含フッ素樹脂塗料組成物に代えて調製例2で得た比較用塗料組成物を用いた以外は、実施例2の手順を繰り返した。
なお、引張強度及び引張伸びは、比較用塗料組成物からなる層の形成条件が比較例2と同じであることから、比較例2と同じ値を示すものと考えられる。
【0082】
比較例6
含フッ素樹脂塗料組成物に代えて調製例2で得た比較用塗料組成物を用いた以外は、比較例4の手順を繰り返した。
なお、引張強度及び引張伸びは、比較用塗料組成物からなる層の形成条件が比較例3と同じであることから、比較例3と同じ値を示すものと考えられる。
結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1から、含フッ素樹脂のMFRが14.4g/10分であり、徐冷を行った実施例1及び実施例2は、急冷を行った比較例1、比較例3、比較例4及び比較例6よりも、これらの比較例のMFRが14.4g/10分、4.3g/10分の何れであっても、引張り強度及び引張伸びが高く、平均摩耗量が少ないことがわかった。また、何れも徐冷を行ったものである実施例1、実施例2、比較例2及び比較例5から、MFRが14.4g/10分であると、MFRが4.3g/10分であるものに比べて平均摩耗量は若干多いものの引張り強度と引張伸びが高いことがわかった。
【0085】
含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度の測定
【0086】
実施例1及び比較例1の冷却過程における含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度の経時変化を測定した。結果を図2に示す。
【0087】
【発明の効果】
本発明の含フッ素樹脂層形成方法は、上述の構成を有するので、含フッ素樹脂塗料組成物から耐摩耗性、非粘着性及び引張伸びに優れた含フッ素樹脂層を形成することができる。
【0088】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、OA機器用ロール又はOA機器用ベルトの積層構造の模式的断面図である。
【図2】図2は、実施例1と比較例1の冷却に伴う含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面温度の変化を表すグラフである。
【符号の説明】
1 基材
2 プライマー層
3 含フッ素樹脂層
Claims (8)
- 含フッ素樹脂からなる含フッ素樹脂塗料組成物を被塗装物に塗布し、次いで焼成したのち、冷却処理をして含フッ素樹脂層を形成することよりなる含フッ素樹脂層形成方法であって、
前記含フッ素樹脂は、340℃において荷重を5kgfとして測定したメルトフローレートが5〜50g/10分であるテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であり、
前記含フッ素樹脂層は、200℃における引張強度が10MPa以上であり、200℃における引張伸びが450%以上であり、厚みが1〜50μmである
ことを特徴とする含フッ素樹脂層形成方法。 - 焼成は、含フッ素樹脂の融点以上、被塗装物の耐熱温度以下である温度で行うものである請求項1記載の含フッ素樹脂層形成方法。
- 被塗装物の耐熱温度は、350℃以上である請求項2記載の含フッ素樹脂層形成方法。
- 冷却処理は、含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度についての降温速度が50℃/分以下となるように行うものである請求項1、2又は3記載の含フッ素樹脂層形成方法。
- 冷却処理は、含フッ素樹脂塗料組成物からなる層の表面の温度が焼成の温度から100℃に降温するまで5分以上かかるように行うものである請求項1、2、3又は4記載の含フッ素樹脂層形成方法。
- 請求項1、2、3、4又は5記載の含フッ素樹脂層形成方法により形成されたものであることを特徴とする含フッ素樹脂層。
- 請求項6記載の含フッ素樹脂層を有することを特徴とする物品。
- オフィスオートメーション機器用ベルト、オフィスオートメーション機器用フィルム又はオフィスオートメーション機器用ロールである請求項7記載の物品。
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