JP5010895B2 - 往路・復路加工用の縦送り切削工具 - Google Patents

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Description

本願発明は、往路・復路加工用の縦送り切削工具に関する。
特許文献1には、丸チップを用いた往動と復動の両方で切削を行う回転工具及び切削方法が提案されている。
特開平8−39321号公報
本願発明は、往路・復路加工用の縦送り切削工具において、往路加工における粗加工能力を落とすことなく、復路の仕上げ加工を行う場合の切削性能を改善する。特に、復路加工時の切削性能を改善して、加工面精度と工具寿命を向上させた加工能率の高い往路・復路加工用の縦送り切削工具を提供することである。
本願発明は、インサートを着脱自在に装着できる刃先交換式の往路・復路加工用の縦送り切削工具において、該インサートは長方形又は平行四辺形で、上面(9)の4辺のうち、対向する平行な2辺を長辺、他の対向する平行な2辺を短辺及び対向する2つのコーナ部の刃先角(ε)を75度〜90度とし、該インサートは止めねじの穴を有し、該インサートを該切削工具に装着した状態で、該コーナ部はコーナ刃(1)、該短辺は往路加工用の底刃(2)を、該長辺は、往路・復路加工用の外周刃(3)を、該コーナ刃(1)から外周刃長さ(L3)で0.5から6mm設け、それに続いて、復路加工用の切れ刃(4)を、該外周刃(3)より工具軸心側に、工具軸心線の垂線方向の長さ(L4)で、該長辺の間隔(H)の0.03から0.15倍の長さに設けたことを特徴とする往路・復路加工用の縦送り切削工具である。上記の構成を採用することによって、往路加工における粗加工能力を落とすことなく、復路の仕上げ加工を行う場合の切削性能を改善できる。特に、復路加工時の切削性能を改善して、加工面精度と工具寿命を向上させた加工能率の高い往路・復路加工用の縦送り切削工具を提供することができる。
本願発明の往路・復路加工用の縦送り切削工具によって、往路加工における粗加工能力を落とすことなく、復路の仕上げ加工を行う場合の切削性能を改善できた。特に、復路加工時の切削性能を改善して、加工面精度と工具寿命を向上させた加工能率の高い往路・復路加工用の縦送り切削工具を提供することができた。
往路・復路加工用の縦送り切削工具を用いて、粗加工と仕上げ加工をより高能率に行うためには、粗加工を往路で行い、仕上げ加工を復路で行うことができれば高能率な加工となる。そこで本願発明は、往路加工用のコーナー刃、底刃及び外周刃、復路加工用の外周刃、切れ刃(4)を設けたインサートを装着した工具である。本願発明のインサートを着脱自在に装着できる往路・復路加工用の縦送り切削工具の工具本体に装着することにより、往路加工、復路加工ともに良好な切削加工が可能であるという特徴を有する。即ち、往路加工には、コーナ刃、底刃及び工具軸方向と略平行となる外周刃を形成し、復路加工には、該外周刃に続いて、復路加工用の切れ刃(4)を設けた。これにより、復路加工時の切削性能が改善され、加工面精度と工具寿命を向上させた加工能率の高い往路・復路加工用の縦送り切削工具を提供することができる。
往路加工用のコーナ刃、底刃及び外周刃とで粗加工を行った後、粗加工における送り方向切込み幅と径方向込み幅に対して、小さい送り方向切込み幅と径方向込み幅を与え、往路加工で形成された側面を復路加工用切れ刃(4)と外周刃によって仕上げ加工する縦送り加工方法を可能とした。本願発明の往路・復路加工用の縦送り切削工具によれば、往路加工用のコーナ刃、底刃及び外周刃と、復路加工用の外周刃、切れ刃(4)を設けてあるので、機械主軸と略平行な面を加工する場合に、往路加工による粗加工の性能を落とすことなく、復路加工も可能な工具となり、往復仕上げ加工の際の加工面粗さも改善できるので、加工能率の高い往路・復路加工用の縦送り切削工具を提供することができた。更に、本願発明の往路・復路加工用の縦送り切削工具は、粗加工を行った後、送り方向切込み幅、径方向込み幅を与え、往路加工で形成された側面の削り残し部を復路加工によって加工する縦送り加工方法も可能となるので、1コーナ当たりの工具寿命が長く、経済的な往路・復路加工用の縦送り切削工具とすることが出来た。
図1は、本願発明に係る往路・復路加工用の縦送り切削工具(5)の概略構成説明図で、図1の工具本体(6)には、インサート(7)が止めねじ(8)によって、すくい面となる上面(9)より着脱自在に取付けられる。インサート(7)のコーナ部にはコーナ刃(1)を設け、該インサート(7)の短辺の稜線には往路へ送りを与えた際に切れ刃として作用する往路加工用の底刃(2)、該インサート(7)の長辺の稜線には工具軸方向に対して平行な加工面の粗さを向上させる為の外周刃(3)が設けられ、外周刃(3)に続いて、工具(5)がシャンク(10)側に戻る際に加工を可能とするために復路加工用の切れ刃(4)を設けた。
図2は、図1の左側面図で、往路加工用の底刃(2)に逃げ面(11)を、外周刃(3)に逃げ面(12)を設けた。図3は、図1におけるA矢視図であり、工具本体(6)に取付けたインサート(7)には軸方向すくい角(Ar)が与えられている。図4は本願発明に係るインサートの正面図で、インサート(7)は、長辺の間隔(H)、短辺の間隔(G)の平行四辺形の外観形状とし、往路加工用の底刃(2)のすかし角を設けるために刃先角(ε)は75度から90度とする。復路加工用切れ刃(4)は、工具径方向からの切削抵抗を低減すると共に切削性を考慮して復路加工用切れ刃(4)の切込み角度(κ)を−10度から45度に設定した。好ましくは、すかし角と対向する角度から30度であり、45度を超えると復路加工の際に接触する切れ刃が長くなり工具径方向からの切削抵抗が増大して工具が振動する。また、復路加工用切れ刃(4)の長さ(L4)は、インサートの強度を考慮して、工具軸心線の垂線方向の長さ(L4)で、長辺の間隔(H)の0.03から0.15倍の長さとする。更に、工具径方向からの切削抵抗及び工具の送り量に対する適切な仕上げ切れ刃長さを設けるために、外周刃長さ(L3)を0.5から6mmに設定する。図5は図4におけるB矢視図であり、厚さTのインサート(7)は、復路加工用切れ刃(4)に、逃げ角(θ)が0度から15度の逃げ面(13)を与え、復路加工時における逃げ面(13)の被削材との干渉を確実に排除した。
往路加工用のコーナ刃(1)、底刃(2)及び外周刃(3)と、復路加工用の外周刃(3)、切れ刃(4)を設けたことによって、機械主軸と略平行な加工面を往復加工する際の切削性能が改善できた。特に復路加工の切削性能が改善できたことによって、往復加工での加工面粗さを改善でき、結果的に粗加工の性能を落とすことなく、復路加工が可能な加工能率の高い往路・復路加工用の縦送り切削工具を提供することができた。
本発明例1は、刃先径32mm、シャンク径32mm、首下長さ(L1)160mm、シャンク長さ(L2)100mm、3枚刃を有し、SKD61相当材を用いて旋盤加工により外観形状を整えて表面硬度HRC44から46に調質した後、シャンク部を研磨加工により仕上げ、工具本体(6)を作製した。インサート固定部は、マシニングセンターにてフライス加工により形成した。インサートは、長辺の間隔(H):9.5mm、短辺の間隔(G):11mm、厚さ(T):3.18mm、コーナ刃(1)のR:0.4mm、外周刃長さ(L3):2mmとし、往路加工用の底刃(4)の逃げ面(11)及び外周刃の逃げ面(12)の逃げ角を、インサートの上面(9)に対して11度とし、往路加工用の底刃(4)の逃げ角(θ)は、軸方向すくい角(Ar)を5度、往路加工用の底刃(4)の切込み角(κ)を5度に設定したことを考慮して、5度に設定した。また、刃先角(ε)は、X、Y方向への切削、或は傾斜切込みを想定して、工具の軸心方向へ向ってシャンク側に切れ刃を後退させるすかし角を設けられるようにするために87度とした。
切削評価を実施するに当たり、本発明例1の往路・復路加工用の縦送り切削工具と、本発明例2として、復路加工用切れ刃(4)の切込み角(κ)を45度とした以外は、本発明例1と同形状で同材質のインサートを作成した。比較のために、従来例として、復路加工用切れ刃(4)を設けていない他は同形状で同材質のインサートを用意した。
往路・復路加工用の縦送り切削工具を工具保持具であるミーリングチャックへ取付けた後、フライス盤の主軸に装着した。下記の切削条件1を用いて、本発明例1、2は往復の縦送り加工、従来例は、往路加工のみを行い加工面粗さの比較を行った。評価は、送り方向の加工面粗さを測定した数値とした。判断結果等を図6に示す。
(切削条件1)
被削材:S50C
切削速度:300m/min
主軸の回転数:2984min−1
送り方向切込み幅:0.7mm
1刃の送り:0.1mm
テーブル送り:895mm/min
径方向切込み幅:0.15mm
加工方法:乾式切削加工
図6に示すように本発明例1、2は、送り方向の加工面粗さRyが、10.70μm、15.17μm、であるのに対して、従来例では同一条件において面粗さが20.45μmの結果であった。マイクロスコープを用いた目視による観察においても本発明例1、2によれば、往路加工と復路加工の加工軌跡が安定していた。確認のために、切削抵抗測定器を使用して復路加工時の工具が加工面より離される方向の抵抗値を測定すると、本発明例1、2は60N、75Nであった。このことからも復路加工用切れ刃(4)の切込み角(κ)が切削抵抗と相関しており工具のたわみと密接に関係している事が判った。
次に、図7に示す削り残し部の加工において、加工方法の違いによる工具寿命比較を行った。加工テストは、本発明例1、2の工具を用いて往路加工で粗加工を行った後、径方向切込み幅を与え、往路加工で形成された側面の削り残し部を復路加工により加工する方法を第1の往復加工方法とした。これとは別に、従来例の工具を用いて、往路加工で粗加工を行った後、往路加工で形成された側面の削り残し部を再度往路加工で加工して加工面を整える加工方法を第2の加工方法として、両者を実施した。切削試験には下記の切削条件2を用いた。
(切削条件2)
被削材:S50C
切削速度:300m/min
主軸の回転数:2984min−1
1刃の送り:0.1mm
テーブル送り:895mm/min
送り方向切込み幅:5mm、
径方向切込み幅:3mm
加工方法:乾式切削加工
切削条件2を用いた第1の往復加工方法では、第2の加工方法による工具が戻る際のエアーカットを削減できた。結果は、加工時間が10%短縮出来ると共に、往路加工用の底刃(2)、コーナ刃(1)の摩耗幅が約30%減少した。
本願発明の往路・復路加工用の縦送り切削工具によれば、往路加工による粗加工の性能を落とすことなく、復路加工も可能な工具となり、往復縦送り加工の際の加工面粗さが良好である。また、切削に関与する切れ刃を往路加工と復路加工とで分けた事により1コーナで加工できる切削長が長く工具寿命が向上した。更に、本願発明の往路・復路加工用の縦送り切削工具は、粗加工を行った後、径方向切込み幅を与え、往路加工で形成された側面の削り残し部を復路加工によって加工する縦送り加工方法も可能となるので、工具が戻る際のエアーカットを省け加工能率が高い往路・復路加工用の縦送り切削工具とすることが出来た。
図1は、本発明例1に係わる正面図を示す。 図2は、図1における左側面図を示す。 図3は、図1の矢印A方向より見た場合を示す。 図4は、本発明例1に係わるインサートの正面図を示す。 図5は、図4の矢印B方向より見たインサートの図である。 図6は、切削テストの結果を示す。 図7は、加工状況を示す。
1:往路加工用のコーナ刃
2:往路加工用の底刃
3:往路・復路加工用の外周刃
4:復路加工用の切れ刃
5:縦送り切削工具
6:工具本体
7:インサート
8:止めねじ
9:上面
10:シャンク
11:底刃(2)の逃げ面
12:外周刃(3)の逃げ面
13:復路加工用切れ刃(4)の逃げ面
L1:首下長さ
L2:シャンク長さ
L3:外周刃長さ
L4:復路加工用切れ刃(4)の工具軸心線の垂線方向の長さ
Ar:軸方向すくい角
G:短辺の間隔
H:長辺の間隔
T:厚さ
κ:復路加工用切れ刃(4)の切込み角
θ:復路加工用切れ刃(4)の逃げ角
ε:刃先角

Claims (2)

  1. インサートを着脱自在に装着できる刃先交換式の往路・復路加工用の縦送り切削工具において、
    該インサートは、長方形又は平行四辺形で、上面(9)の4辺のうち、対向する平行な2辺を長辺、他の対向する平行な2辺を短辺及び対向する2つのコーナ部の刃先角(ε)を75度〜90度とし、該インサートは止めねじの穴を有し、
    該インサートを該切削工具に装着した状態で、該コーナ部はコーナ刃(1)、該短辺は往路加工用の底刃(2)を、該長辺は、往路・復路加工用の外周刃(3)を、該コーナ刃(1)から外周刃長さ(L3)で0.5から6mm設け、
    それに続いて、復路加工用の切れ刃(4)を、該外周刃(3)より工具軸心側に、工具軸心線の垂線方向の長さ(L4)で、該長辺の間隔(H)の0.03から0.15倍の長さに設けたことを特徴とする往路・復路加工用の縦送り切削工具。
  2. 請求項1記載の往路・復路加工用の縦送り切削工具において、該復路加工用の切れ刃(4)の切込み角(κ)を−10度から45度、に設けたことを特徴とする往路・復路加工用の縦送り切削工具。
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