JP5009088B2 - 連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法 - Google Patents
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また、二次冷却帯では、鋳片の鋳造方向に隣り合うロール間に配置された複数の冷却用ノズル(スプレーノズルともいう)により、鋳片の凝固及び冷却を行っているが、冷却用ノズルに詰まりが生じるなど、異常が発生することがある。
これらの異常が発生すると、鋳片に内部割れ又は表面割れが発生して、鋳片の品質に悪影響を及ぼす。
そこで、例えば、特許文献1には、連続鋳造設備内を通過するダミーバーにロールアライメントの異常を検知するセンサーを設けた装置が開示されている。また、特許文献2には、連続鋳造設備内を通過するダミーバーに冷却用ノズルの異常を検出するセンサーを設けた装置が開示されている。
これにより、ロール又は冷却用ノズルの診断を作業者が行う必要がなく、連続鋳造設備の稼働率の向上が図れる。
このため、特許文献3には、ダミーバーのリンク部材に設けられたロール間隔測定装置の位置をトラッキングし、このロール間隔測定装置があるセグメント内のピンチロールの押し付けを解除する方法が開示されている。
これにより、センサーを保護することができ、その結果、センサーによる測定精度も向上できる。
特許文献1、2の技術は、連続鋳造設備内の異常をセンサーにより検知した後(いわゆる、空通しという)に、鋳片の製造を開始する方法であるため、これらの作業を個別に行わなければならず、作業性が悪い。
また、特許文献1、2の技術は、ダミーバーに1つのセンサーのみを設ける構成としているため、連続鋳造設備内の検査すべき多くの情報(ロールアライメントと冷却用ノズルの異常のみならず、ロール間隔、ロール転動、ロール摩耗、ロール亀裂、及びロール温度の各種情報)を同時に得ることができない。このため、上記した情報を得るには、各種検査を個別に実施しなければならず、連続鋳造設備の稼働率が低下するのは勿論のこと、作業性も悪くなる問題がある。
ダミーバー91の厚みは、ダミーバー91の厚み方向に配置されたロール間隔と比較して薄い。このため、センサー群が設けられたリンク部材90を、ピンチロール(図9の●)により複数のフリーロール(図9の○)が配置された基準面94側へ押し付け(加圧し)なければ、図9(A)に示すように、リンク部材90が反基準面95側(R内側)に引き寄せられる。
そして、図9(C)に示すように、ダミーバー91を鋳造方向に更に引き抜こうとすれば、リンク部材90は再度反基準面95側へ移動した後、図9(D)に示すように、センサー群が設けられたリンク部材90の重量で再度基準面94側へ移動する。
その結果、鋳型93内の湯面変動が連続的に発生し、ブレークアウトが発生し易くなると共に、介在物などの巻き込みに起因した鋳片品質の悪化を招く恐れもある。また、このように、リンク部材90がばたつくことで、センサー群がフリーロールに接触して損傷したり、また測定精度が低下する恐れもある。
全長Lの前記ダミーバーの上流端から0.2L以上0.6L以下の範囲内に位置する前記リンク部材には、前記連続鋳造設備の検査を行うセンサー群が設けられ、しかも該センサー群を取付けたリンク部材の上流側に隣り合って連続する2つの前記リンク部材のいずれか一方又は双方を、前記ピンチロールで押し付け、更に前記センサー群が設けられたリンク部材には、前記ピンチロールに接触可能な鉄床がばね材を介して設けられ、該リンク部材を該ばね材の力により前記フリーロールへ押し付けながら前記ダミーバーを搬送し、前記センサー群による検査を行いながら、前記鋳片の製造を開始する。
本発明に係る連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法において、前記センサー群は、ロール間隔測定センサー、ロールアライメント測定センサー、ロール転動検知センサー、冷却用ノズル異常検出センサー、ロール摩耗検出センサー、ロール亀裂検出センサー、及びロール温度検出センサーのいずれか2種以上で構成されていることが好ましい。
また、ピンチロールにより押し付けるリンク部材を特定することで、ダミーバーを鋳造方向へ搬送する際に発生するセンサー群が設けられたリンク部材のばたつき現象を抑制、更には防止できる。これにより、鋳型内の湯面変動を防止できるので、これに伴うブレークアウトを抑制できると共に、介在物の巻き込みによる鋳片の品質悪化を抑制できる。
従って、センサー群により連続鋳造設備の検査を行いながら、鋳片の製造を安定に開始できるため、検査作業と鋳造作業を個別に行う必要がなく、作業性が良好である。
また、センサー群が設けられたリンク部材を、このリンク部材に設けたばね材が取付けられた鉄床を介して、ピンチロールでフリーロールへ押し付けるので、センサー群が設けられたリンク部材自体の位置決めができる。これにより、鋳型内溶鋼の湯面変動を抑制でき、更に良好な品質の製品を製造できると共に、センサー群による測定精度も更に向上できる。
請求項3記載の連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法は、センサー群が、各種センサーのいずれか2以上で構成されることで、センサー群が設けられたリンク部材の重量が重くなり、リンク部材のばたつき現象が激しくなるため、本願発明の効果がより顕著に現れる。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法の説明図、図2は同連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法に使用するダミーバーの平面図、図3はブレークアウト発生時におけるダミーバーの汚染状況を示す説明図、図4はダミーバーを鋳型に挿入する際のダミーバーのふらつき状況を示す説明図、図5はダミーバーにセンサー群を設ける適正位置を示す説明図、図6は変形例に係るダミーバーの説明図、図7はダミーバーの押し付け位置と鋳型内の湯面変動との関係を示す説明図である。
まず、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法を適用する連続鋳造設備10とダミーバー12について説明した後、連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法について説明する。
連続鋳造設備としては、垂直曲げ型よりも鋳片の曲げ量が小さい(曲率半径が大きい)湾曲曲げ型の連続鋳造設備を使用することもできる。
以上に示した基準面側と反基準面側のロールの配置は、これに限定されるものではない。
なお、基準面14側のフリーロール間と、反基準面15側のフリーロール及びピンチロールの間には、それぞれダミーバー12(鋳造時においては鋳片13)の幅方向に並べて配置され、鋳片13を冷却する多数の冷却用ノズル(図示しない)が設けられている。
このダミーバー12の全長をLとした場合、ダミーバー12の上流端であるリンク部材19の上端から0.2L以上0.6L以下の範囲内に位置するリンク部材18(本実施の形態では、図2の斜線位置)には、センサー群が設けられている。なお、ダミーバー12の全長Lは、連続鋳造設備の規模に応じて異なるが、例えば、5〜20m(本実施の形態では、12m)程度である。
センサー群を設ける位置を、ダミーバー12の上流端(鋳型11側)に近づけ過ぎる場合、例えば、ブレークアウトが発生した際、漏れ出した溶鋼(図3参照)がセンサー群にかかり、センサー群が損傷し、またこれに伴ってセンサー群の測定精度が低下する恐れがある。
一方、センサー群を設ける位置を、ダミーバー12の下流端(矯正点X)に近づけ過ぎる場合、以下の問題がある。
図4に示すように、ダミーバー12を鋳型11内に挿入するに際しては、ダミーバーカーと呼ばれる台車21により、ダミーバー12を鋳型11近傍まで搬送した後、ダミーバー12のリンク部材17〜19を、鋳型11の上方から鋳型11内へ順次入れる。なお、最上流端のリンク部材19を除くリンク部材17、18の厚みは、ダミーバー12の厚み方向に配置されたロール間隔と比較して薄くなっているため、下流側のリンク部材17、18が、ロール間でぶらぶらと揺れる。
これにより、各種データが、ふらついた状態のリンク部材に設けられたセンサー群より得られるため、正確な測定データを得ることができず、また測定データの精度も低下する問題がある(実際には、0.5mm未満の測定精度が必要)。
そこで、ダミーバーを構成するリンク部材へのセンサー群の取付け位置を変えながら、ブレークアウト時に溶鋼で汚染される領域と、ダミーバーを鋳型内へ挿入する際の測定精度を調査した結果について、図5を参照しながら説明する。
ここで、溶鋼汚染指数とは、ブレークアウトの発生回数と、各位置が溶鋼により汚染された回数との比である。また、測定精度指数とは、ΔL/Lの比が0.25のときの値を1.0とした場合の測定精度の変化の比である。なお、センサーリンクとは、センサー群が設けられるリンク部材を意味する。
以上のことから、ダミーバー12の上流端から0.2L以上0.6L以下の範囲内に位置するリンク部材18にセンサー群を設けたが、下限を0.25Lとすることが好ましく、また上限を0.5Lとすることが好ましい。
ここで、ダミーバー12の上流端から0.2L以上0.6L以下の範囲内に位置するリンク部材18とは、本実施の形態であるダミーバー12のリンク部材の合計が10の場合、上流側のリンク部材19から数えて、3〜7台目のリンク部材18が相当する。なお、汎用されるダミーバーは、リンク部材の合計が例えば20程度であるため、上記した範囲内に位置するリンク部材は、上流側のリンク部材から数えて、5〜12台目程度のリンク部材が相当する。
このため、センサー群が設けられたリンク部材18の質量は、センサー群が設けられていないリンク部材の質量の1.3倍以上となり、大幅に重くなっている。
センサー群が設けられたリンク部材18の質量が1.3倍以上となることで、本発明の効果が顕著に現れる。一方、上限値については特に設けないが、センサー群をリンク部材に密に搭載した場合を考慮すれば、5.0倍程度である。
鉄床の幅は、リンク部材の幅と同等、又はそれより狭くなっており、リンク部材に1個設置してもよいが、リンク部材の幅方向に間隔をあけて複数個設置することが好ましい。なお、本実施の形態においては、鉄床22をリンク部材18の幅方向に3個設置しているが、このばね材23の設置個数は、各鉄床の幅に応じて適宜変更できる。
これにより、センサー群が設けられたリンク部材18自体の位置決めがなされる。
まず、図2に示すように、連続鋳造設備10の検査対象に応じて、ダミーバー12の上流端から0.2L以上0.6L以下の範囲内に位置するリンク部材18(本実施の形態では、上流側から3台目のリンク部材18)に、センサー群を取付ける。
次に、図4に示すように、台車21により、ダミーバー12を鋳型11近傍まで搬送した後、ダミーバー12のリンク部材17〜19を、鋳型11の上方から鋳型11内へ順次入れる。
このとき、センサー群が設けられたリンク部材18の下流側に位置するリンク部材17、18は、図1に示すように、反基準面15側に配置されたピンチロールにより、基準面14側の複数のフリーロールへ押し付けられながら、上流側のリンク部材19の上端部を鋳型11の底に配置し、鋳型11に栓をする。
このとき、センサー群が設けられたリンク部材18が、ピンチロールにより基準面14側へ押し付けられなければ、前記した図9(A)〜(D)に示したばたつき現象が起こる。
そこで、図1、図2に示すように、センサー群が設けられたリンク部材18の上流側に配置され、かつダミーバー12の長手方向に隣り合うピン20の間隔をPとした場合、リンク部材18の長手方向中央位置Yから上流側へ2.5P(好ましくは、1.5P)までの範囲内のリンク部材18、19をピンチロールで押し付ける。
ここで、ピンチロールで押し付けるリンク部材を、上記した範囲のリンク部材に限定した理由について、図7を参照しながら説明する。なお、図7の縦軸は、センサー群が設けられたリンク部材18の上流側に配置されたリンク部材18、19をピンチロールで押し付けなかった場合の鋳型内の湯面変動を「9」として、ピンチロールの押し付け位置を変えながら測定した湯面変動の比である。また、横軸は、ピンチロールの押し付け位置である。そして、ダミーバーの全長Lは12mであり、隣り合うピン20の間隔Pは、ダミーバー12の全体に渡って同一であり、0.6mである。
また、図6に示した鉄床22が設けられたリンク部材18については、センサー群を設けたリンク部材18を、確実に基準面14側へ押し付けることができるため、図7の「●」印から明らかなように、湯面変動を更に低減できることを確認できた。
このように、ピンチロールで押し付けるリンク部材を、隣り合うピン20の間隔で規定することなく、リンク部材で規定する場合は、ピン20の間隔(各リンク部材の長手方向の長さ)がダミーバーの全体に渡って異なる場合に有効である。
このように、鋳込み開始と共に、鋳片をダミーバーで案内し、鋳型11の下方へ引き抜くことで、センサー群による検査を行いながら、鋳片の製造を開始できる。
これにより、鋳造開始時に発生する鋳型内湯面変動により懸念されるブレークアウトを抑制すると共に、介在物などの巻き込みに起因した鋳片品質の悪化を抑制、更には防止できる。
ここで、図8(A)は従来例、図8(B)、(C)は実施例1、2である。なお、従来例は、センサー群が設けられたリンク部材の上流側に配置されたリンク部材をピンチロールで押し付けなかった場合の結果であり、実施例1は、センサー群が設けられたリンク部材から上流側に2Pの位置にあるリンク部材をピンチロールで押し付けた場合の結果であり、実施例2は、実施例1のセンサー群が設けられたリンク部材にばね材と鉄床を設けた場合の結果である。このダミーバーの全長Lは12mであり、隣り合うピンの間隔Pは0.6mである。また、センサー群が設けられたリンク部材は、ダミーバーの上流側から3台目のリンク部材(ダミーバーの上流端から0.2L以上0.6L以下の範囲内に位置するリンク部材)である。なお、センサー群が設けられたリンク部材の質量は、センサー群が設けられていないリンク部材の質量の1.8倍である。
また、図8(A)〜(C)は、縦軸に湯面変動指数をとり、横軸に鋳片の鋳造長さ(鋳造長)をとっている。ここで、湯面変動指数とは、図8(A)に示す鋳型内の湯面変動の平均値を「9」に合わせた値であり、図8(B)、(C)は、測定した湯面変動を図8(A)との比で示した値である。
一方、図8(B)に示すように、センサー群が設けられたリンク部材の上流側の所定位置をピンチロールで押し付けることにより、湯面変動を大幅に低減(±3.0程度)でき、安定した鋳造を実施できることを確認できた。
更に、図8(C)に示すように、鉄床とばね材を設けることで、センサー群が設けられたリンク部材自体の位置決めを確実にできるため、湯面変動を更に低減(±1.0程度)でき、安定した鋳造を実施できることを確認できた。
なお、センサー群が設けられたリンク部材の質量を、センサー群が設けられていないリンク部材の質量の1.2倍とした場合、図8(A)に示す条件で、湯面変動指数が±3.0程度となり安定した鋳造を実施できる場合があった。このため、センサー群が設けられたリンク部材の質量を、センサー群が設けられていないリンク部材の質量の1.3倍以上とすることで、本発明の効果が顕著に得られることも確認できた。
以上のことから、本発明を適用することで、鋳造開始時に発生する鋳型内湯面変動により懸念されるブレークアウトを抑制すると共に、介在物などの巻き込みに起因した鋳片品質の悪化を抑制、更には防止できることを確認できた。
また、前記実施の形態においては、センサー群が設けられたリンク部材の上流側に、2台以上のリンク部材が設けられた場合について説明したが、前記した条件を満足できれば、1台でも本発明は適用される。
Claims (3)
- 湾曲曲げ型又は垂直曲げ型の連続鋳造設備の鋳型内に、複数のリンク部材をピンで連結したリンク式のダミーバーを挿入して前記鋳型内に溶鋼を供給した後、該鋳型の下流側に間隔を有して配置される複数のフリーロールと、前記ダミーバーを該フリーロールに押し付け可能な複数のピンチロールにより、前記ダミーバーを厚み方向から挟み込んで搬送する連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法において、
全長Lの前記ダミーバーの上流端から0.2L以上0.6L以下の範囲内に位置する前記リンク部材には、前記連続鋳造設備の検査を行うセンサー群が設けられ、しかも該センサー群を取付けたリンク部材の上流側に隣り合って連続する2つの前記リンク部材のいずれか一方又は双方を、前記ピンチロールで押し付け、更に前記センサー群が設けられたリンク部材には、前記ピンチロールに接触可能な鉄床がばね材を介して設けられ、該リンク部材を該ばね材の力により前記フリーロールへ押し付けながら前記ダミーバーを搬送し、前記センサー群による検査を行いながら、前記鋳片の製造を開始することを特徴とする連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法。 - 請求項1記載の連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法において、前記センサー群が設けられたリンク部材の上流側に配置された前記リンク部材の前記ピンチロールによる押し付けは、該センサー群が設けられたリンク部材が、前記鋳型から前記鋳片の曲げ戻しを行う矯正点の範囲内に位置する際に行うことを特徴とする連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法。
- 請求項1又は2記載の連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法において、前記センサー群は、ロール間隔測定センサー、ロールアライメント測定センサー、ロール転動検知センサー、冷却用ノズル異常検出センサー、ロール摩耗検出センサー、ロール亀裂検出センサー、及びロール温度検出センサーのいずれか2種以上で構成されていることを特徴とする連続鋳造開始時の鋳型内湯面変動の防止方法。
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