以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例としての現金自動取引装置100の外観を概略的に示す概略斜視図、図2はこの現金自動取引装置100の内部構成を概略的に示すブロック図、図3は本実施例の現金自動取引装置100における要部構成であるシャッタ周辺の構成を概略的に示す説明図である。
現金自動取引装置100は、金融機関等に設置され、顧客の操作によって現金の入金や出金等の取引を行う自動取引装置であり、図1に示すように、装置前面に立つ顧客に対面する前面パネル102と、顧客側に迫り出した操作テーブル104とを有する。現金自動取引装置100は、前面パネル102に、通帳取扱機構110とシャッタ機構120と取扱可否ランプ140とを備え、操作テーブル104に、硬貨入出金機構150と紙幣入出金機構160と操作パネル170と顧客検知センサ180とを備える。この他、現金自動取引装置100は、前面パネル102の内側に、カード取引機構130を内蔵し、当該取引機構を、前面パネル102に形成されたカード挿入孔106と共にシャッタ機構120で覆っている。
通帳取扱機構110は、通帳挿入孔112から顧客が挿入した通帳の受け取り・排出の機能の他、通帳に形成済みの磁気ストライプの記録内容のリード・ライト機能、通帳への印字機能などを果たす。取扱可否ランプ140は、現金自動取引装置100による取引が実行可能な状態にあるとき点灯し、顧客に取引可能・不能を通知する。硬貨入出金機構150は、硬貨の入金や出金の入出金機能、現金自動取引装置100の内部の図示しない硬貨収納部への硬貨搬送機能を担い、現金(硬貨)の管理を行なう。紙幣入出金機構160は、紙幣の入金や出金の入出金機能、現金自動取引装置100の内部の図示しない紙幣収納部への紙幣搬送機能を担い、現金(紙幣)の管理を行なう。顧客検知センサ180は現金自動取引装置100の前に利用者(顧客)が立っているかを検知するセンサであり、そのセンサ結果は、後述の制御部200に送られ、制御部200により操作パネル170の点灯表示制御や、シャッタ機構120における後述のシャッタ122の駆動制御に用いられる。操作パネル170は、入力キーの画面表示機能、キー入力検知機能を果たし、主に現金自動取引装置100の顧客が取引を行う際、取引操作の誘導画面を表示したり、顧客による暗証番号等のキー入力を受付ける。カード取引機構130は、カード挿入孔106から顧客が挿入したカードの受け取り・排出の機能の他、カードに記録済みの情報のリード・ライト機能、カードエンボス部分のイメージの読取り機能などを果たすと共に、カードを用いた取引内容の明細票への印字機能、その明細書の排出機能を果たす。カードへの情報記録は、磁気ストライプへの磁気データ記録、ICチップへのデータ記録があるが、本実施例では、下面に磁気ストライプを有するカードを取扱対象としているので特段の言及がない限り、カード下面の磁気ストライプにおける情報のリード・ライトを行うものとして説明する。
現金自動取引装置100は、装置内部に制御部200を備え、図2に示すように、この制御部200は上記した各機構と接続されている。制御部200は、論理演算を実行するCPU、後述するプログラム等を記録するROM、データの一時的な読み書きを行うRAM等を有するコンピュータを用いて構成され、上記した各機器を統括的に制御する。なお、この制御部200は、シャッタ122の開放動作完了を検知するシャッタ開センサ127と、シャッタ122の閉鎖動作完了を検知するシャッタ閉センサ128と、カード挿入孔106へのカード挿入の有無を検知するカード挿入センサ129とも接続され、これらセンサ出力を後述のカード読み取りプロセス等に用いる。
次に、シャッタ機構120とカード取引機構130の概略的な構成について、図2を用いて説明する。図示するように、シャッタ機構120は、シャッタ122とその駆動モータ124とモータドライバ126とを備え、制御部200の制御を受けたモータドライバ126により駆動モータ124を正逆回転させ、カード挿入孔106を開放または閉鎖するようシャッタ122を駆動させる。カード取引機構130は、カード搬送ローラ132とその駆動モータ134とモータドライバ136とを備え、制御部200の制御を受けたモータドライバ136により駆動モータ134を正逆回転させ、カード挿入孔106から挿入されたカードの排出・払出を行う。また、このカード取引機構130は、カード下面の磁気ストライプに記録済みの情報のリード・ライトを行うリード・ライトユニット138を、カード挿入孔106からカード搬送ローラ132を経由する搬送経路下方に備える他、既述したイメージ読み取り機能や明細票への印字・排出の機能実現のため、図示しないイメージセンサや印字排出ユニットを備える。
次に、カード挿入孔106に対するシャッタ機構120とカード取引機構130の関係について、図3を用いて説明する。シャッタ機構120のシャッタ122は、図における前面パネル102の右側、即ち装置内側の図示しないシャッタレールに係合され、当該レールの軌道に沿って、前面パネル102のシャッタ孔103から前面パネル102の前面に出入りして、カード挿入孔106を開放・閉鎖する。シャッタ122は、図中実線で示した位置にある場合のシャッタ姿勢がシャッタ原姿勢(挿入孔閉鎖姿勢)であり、挿入孔開放時には、図示するように装置内に総て引き込まれた挿入孔開放姿勢となるよう移動する。
このように両姿勢を推移するよう移動することで、シャッタ122は、前面パネル102に対する相対的な位置関係を変更する。こうしたシャッタ122の移動は、制御部200の制御を受けたシャッタ機構120のモータドライバ126による駆動モータ124の正逆駆動にてなされる。シャッタ122はセンサ検知片123を有するので、シャッタ開センサ127およびシャッタ閉センサ128によるこの検知片の検知により、シャッタ122が挿入孔閉鎖姿勢にあること、およびシャッタ122が挿入孔開放姿勢にあることが検知される。
前面パネル102は、カード挿入孔106の直下に、顧客側に向かう棚部102aと垂下部102bを備え、この棚部と垂下部の繋ぎ箇所をシャッタストッパ102cとする。つまり、シャッタ122は、シャッタストッパ102cに当接することで挿入孔閉鎖姿勢を維持し、この挿入孔閉鎖姿勢に装置内の挿入孔開放姿勢から推移するよう移動することで前面パネル102に対する相対的な位置関係を変更し、挿入孔106へのカード挿入側領域であってカード挿入孔106の周囲における前面パネル102の前方領域への入り込みを起こす。つまり、シャッタ122は、挿入孔閉鎖姿勢に推移する際、カードCがカード挿入孔106に挿入される場合のカード経路(カード搬送経路)を横切り、シャッタ先端をこのカード搬送経路より下側のシャッタストッパ102cに当接させる。棚部102aと垂下部102bの形成の様子については後述する。
カード挿入孔106の近傍には、前面パネル102の内側にカード挿入センサ129が配設されている。このカード挿入センサ129は、近接センサとして構成され、カード挿入孔106からカードCが進入してくると、カード挿入ありの旨のセンサ出力を制御部200に出力する。
カード取引機構130は、その有するカード搬送ローラ132をカード挿入孔106の延長線上に位置するように備え、カード搬送ローラ132は、カード挿入孔106から挿入されたカードCをリード・ライトユニット138まで搬送する。カード搬送ローラ132は、カードCがローラ間に噛み込まれたことでカード搬送を開始する。そして、リード・ライトユニット138の下流側の搬送ローラ133と協働して、カード搬送ローラ132は、カードCの磁気ストライプ情報がリード・ライトユニット138にて総て読み取られるようカード往復動を行うと共に、カードCをカード挿入孔106から顧客に返却する返却搬送も行う。
ここで、カード挿入孔106の形成された前面パネル102から顧客側に向かう棚部102aと垂下部102bとカード取引機構130のカード搬送ローラ132との関係について説明する。図3に示すように、通常、顧客は、カードCの挿入に際して自身の指でカードCをカード上下方向から摘む。顧客は、カードCをこのように指で摘んだまま、カード挿入孔106に挿入する。本実施例では、カードCの顧客のカード摘み代を、最大でも、カードCの挿入方向に沿った全長CLの1/4の長さに設定した。そして、このように摘まれたカードCがカード挿入孔106から挿入されれば、カード取引機構130のカード搬送ローラ132による上記したカード搬送が開始される、カード搬送ローラ132の位置を次のように規定した。
図4はカードを摘んだ顧客によるカード挿入の様子を示す説明図である。この図4にも示すように、上記の摘み代でカードを摘んだ顧客がカードCをカード挿入孔106に挿入する場合、カード挿入孔106からのカード挿入長さは、顧客の指が垂下部102bの手前に達したときが最長となり、その長さは、上記の摘み代をカード全長CLから控えた長さ、即ちカード全長CLの3/4となる。よって、顧客の指がカード挿入に際して干渉する垂下部102bの前面とカード取引機構130におけるカード搬送ローラ132のカード噛み込み位置との隔たりRDがカードCの挿入方向に沿った全長CLの3/4となるよう、カード搬送ローラ132、詳しくはカード取引機構130を現金自動取引装置100に内蔵設置した。このようにカード搬送ローラ132の位置を規定した理由については後述する。棚部102aについては、カード挿入孔106の下端周縁との間隔を数mm程度となるようにしたので、棚部102aの上面に何らかの異物が載置されればカード挿入孔106へのカード挿入が不能となるようにした。つまり、棚部102aの上面への異物載置の余地をなくすようにした。
次に、顧客がカードCを用いて本実施例の現金自動取引装置100にて行う現金取引の際のカード読み取りプロセスについて説明する。図5は現金自動取引装置100の制御部200が行うカード読み取りプロセスの前半部分を示すフローチャート、図6はカード読み取りプロセスの後半部分を示すフローチャート、図7はカード取引処理におけるシャッタ122の挙動を説明する説明図である。
このカード読み取りプロセスは、取扱可否ランプ140にて現金自動取引装置100の取扱ができるとされている間に繰り返し実行され、まず、制御部200は、顧客検知センサ180をスキャンし(ステップS100)、顧客検知の有無を判定する(ステップS110)。スキャン結果から顧客が現金自動取引装置100の前面にいないとなれば、それ以降の処理を行うことなく本ルーチンを一旦終了する。一方、センサスキャンの結果、顧客を検知すればシャッタ122の開放動作を実行する(ステップS120)。つまり、制御部200は、シャッタ122を図3に示す挿入孔閉鎖姿勢から前面パネル102の側に引き込んだ挿入孔開放姿勢に移動させるべく、シャッタ機構120のモータドライバ126に制御信号を送出するので、このモータドライバ126は、駆動モータ124を正転させる。これにより、シャッタ122は、図3の挿入孔閉鎖姿勢から図7の挿入孔開放姿勢に推移駆動する。
次いで、制御部200は、シャッタ開センサ127のスキャン(ステップS130)とそのスキャン結果による開放動作完了の判定(ステップS140)とを行い、開放動作完了(肯定判定)の場合は、後述のステップS160に移行する。一方、開放動作未完了(否定判定)の場合は、ステップS150に移行して、今回の開放動作が3回目か否かを判定する。なお、この開放動作数は、開放動作実行の都度にカウントされ、開放動作の不良・不具合を判定するに十分な回数を3回として、カウント数が3となるとリセットされるようにされている。
ステップS150にて開放動作回数が3回目未満であると否定判定した場合、制御部200は、シャッタ122を図3の挿入孔閉鎖姿勢の側に一旦駆動させた上で、既述したステップS120に移行して、シャッタ122の開放動作を再開する。そして、ステップS140による開放動作未完了の判定・その後の開放動作再開が3回繰り返されると、制御部200は、シャッタ122の開放動作に何らかの異常があるとして、エラー報知をし(ステップS155)、このエラー報知を受けた保安員による異常復旧処置を待機して(ステップS157)、本ルーチンを一旦終了する。このエラー報知の一例として、操作パネル170に、カード取扱ができない旨の表示や、カードを間違って差したまま帰らないように注意喚起をする旨の表示、例えば、「申し訳ございませんがお取扱できなくなりました。カードをお忘れなくお持ち帰りください」等の表示を行うと共に、現金自動取引装置100の設置店舗の保安員へのエラー発生通知を行う。異常復旧後には、保安員によるシャッタ122の挿入孔閉鎖姿勢復旧を経た上で、ステップS100からの処理が行われる。このように、シャッタ122の開放動作未完了の場合は、カード挿入孔106へのカード挿入もないことと相俟って、制御部200は、カード搬送ローラ132によるカード搬送を行わない。
シャッタ122が正常に挿入孔開放姿勢まで移動すれば、カード挿入孔106が露出することから、顧客はこのカード挿入孔106からカードCを挿入できるようになる。よって、制御部200は、カード挿入センサ129のスキャン(ステップS160)とそのスキャン結果によるカード挿入の有無判定(ステップS170)とを、カード挿入ありと判定するまで行う。なお、ステップS140にてシャッタ122の開放動作が完了してからカード挿入ありとされるまでの経過時間が、通常のカード取引で想定される経過時間に比して長い場合には、顧客はカード取引を止めたと判定して、開放済みのシャッタ122を挿入孔閉鎖姿勢に移動させるようにすることもできる。
ステップS170でのカード挿入ありの肯定判定に続いては、制御部200は、カード挿入センサ129によるカード挿入ありとした時点からの経過時間計時を内蔵するタイマにて開始する(ステップS180)。そして、その計時期間と所定時間αとを対比しつつカード搬送ローラ132におけるカード噛み込みがこの所定時間αの時間内で行われたか否かを判定する(ステップS190)。そして、ステップS190で否定判定した場合、即ち、カード挿入孔106へのカード挿入がされてから所定時間αを経過してもカード搬送ローラ132でのカード噛み込みがない場合には、カード挿入に伴う何らかの異常があるとして、エラー報知をし(ステップS200)、このエラー報知を受けた保安員による異常復旧処置を待機して(ステップS205)、本ルーチンを一旦終了する。
ここで、ステップS190における判定について説明する。
既述したようにこのカード読み取りプロセスは、顧客が現金自動取引装置100の前面に立っていることを契機に開始され(ステップS100〜110)、その顧客はカード取引を所望していると云える。こうした顧客は、図3や図4でもってして説明したように、所望するカード取引を実行すべく、カードCをその上下から指で摘んでカード挿入孔106に挿入し、このカード挿入を、カードCがカード搬送ローラ132により噛み込まれてリード・ライトユニット138に搬送されるまで当然に継続する。そして、垂下部102bの前面とカード取引機構130におけるカード搬送ローラ132のカード噛み込み位置との隔たりRD(図4参照)に基づいたカード搬送ローラ132の設置状況から、カード挿入孔106の周辺に何の異物も装着されていないのであれば、図4に示すように、上記のカード挿入によりカードCは当然にカード搬送ローラ132に噛み込まれ、搬送されることになる。このような顧客のカード挿入動作は、通常、数秒、例えば5〜10秒程度で完了する。上記した所定時間αは、顧客のカード挿入動作に要する時間として規定されている。よって、この所定時間αの時間内でのカード搬送ローラ132での噛み込みがない場合、カードCは、通常ならカード噛み込みが起きているはずの所定時間αより長い時間が経過しているにも拘わらず、カード先端がカード搬送ローラ132に達していないことになる。
カード挿入孔106に挿入されたカードCが顧客に摘まれたままでカード搬送ローラ132に噛み込まれない挿入不良(異常)が起きる原因としては、次のことが想定される。図8はカード挿入孔106に挿入されたカードCが顧客に摘まれたままでカード搬送ローラ132に噛み込まれない挿入不良(異常)の一因を説明するための説明図である。この図8に示すように、カード挿入孔106の周囲における前面パネル102の前方領域Xは、何らかの異物S、例えばカード記録情報をカード挿入の仮定おいて不正に読み取ることを意図したスキミング装置の装着箇所となり得る。本実施例の現金自動取引装置100では、その取扱対象のカードCがカード裏面に磁気ストライプを有するカードであることから、垂下部102bの前面が異物Sの装着箇所となり易い。しかも、磁気ストライプの磁気情報を読み取る都合上、スキミング装置を装着させる場合には、カード挿入孔106に挿入されるカードCの裏面の磁気ストライプに接触若しくはカード裏面のごく近傍にスキミング箇所が来るように装着せざるを得ず、垂下部102bの前面の上方側が異物Sの装着箇所となり易い。
仮に、この図8に示すように異物Sが垂下部102bの前面に装着されていると仮定すると、カード挿入を行おうとする顧客は、カードを上下で摘んだ指が異物Sに届くまでしか、カードCをカード挿入孔106から挿入できない。よって、異物Sがカード挿入方向に沿って占める長さSLの分だけカード挿入孔106からカード搬送ローラ132の側へのカードCの挿入長さは短くなり、カードCは、顧客に指で摘まれたままでカード先端がカード搬送ローラ132に達しないことになる。このため、異物装着が仮にあった場合には、カード挿入孔106へのカード挿入後の上記の経過時間は所定時間αより長くなる。つまり、垂下部102bに異物Sが装着されたことで起きるカードCの挿入状況と、ステップS190にて下した否定判定でのカードCの挿入状況とは一致することから、ステップS190にて垂下部102bへの異物Sの装着の有無が判定できると云える。
こうしたことから、ステップS190で否定判定した場合には、制御部200は、既述したようにカード挿入に伴うエラー報知(ステップS200)と、異常復旧処置待機(ステップS205)に移行する。この際のエラー報知にあっても、既述したように「申し訳ございませんがお取扱できなくなりました。カードをお忘れなくお持ち帰りください」等の表示を操作パネル170にて行うと共に、現金自動取引装置100の設置店舗の保安員へのエラー発生通知を行う。異常復旧後には、保安員による異物S除去並びにシャッタ122の挿入孔閉鎖姿勢復旧を経た上で、ステップS100からの処理が行われる。このように、カード挿入時間超過の場合は、異物S装着が予想されることと相俟って、制御部200は、カード搬送ローラ132によるカード搬送を行わない。
ここで、上記した異物Sがスキミング装置であった場合の当該スキミング装置における情報読み取りについて説明する。図8に示すように、顧客は、カードを上下で摘んだ指が異物S(スキミング装置)に届くまでカードCを挿入するので、その挿入の間においては、スキミング装置による不正なカード情報の読み取りが行われる、とも云える。しかしながら、顧客が指で摘んでいる範囲(カード全長の1/4の範囲)のカード裏面の磁気ストライプは、スキミング装置による読み取り箇所には達することはないので、スキミング装置での不正な情報読み取りの読み取り範囲は制限されることになる。通常、カード裏面の磁気ストライプへ情報記録は、カード全長に亘って行われ、カード全長に亘る情報が総て揃って始めて有効な情報(顧客情報)となる。よって、上記したようにスキミング装置での読み取り範囲を制限することは、カードCの全長に亘る磁気ストライプに記録した情報の漏洩抑制に有益となる。
所定時間αの時間内でのカードCの噛み込みが行われれば(ステップS190の肯定判定)、制御部200は、カード搬送を行う(ステップS210)。つまり、制御部200は、カード取引機構130のモータドライバ136にカード搬送の制御信号を送出するので、このモータドライバ136は、駆動モータ134を正転させる。これにより、カードCは、リード・ライトユニット138に向けて搬送されるので、リード・ライトユニット138は、カードC下面の磁気ストライプに記録済みの情報のリード・ライトを行う。この際、モータドライバ136は、搬送ローラ133についても回転駆動させ、カードCがその全長に亘ってリード・ライトユニット138の通過するようにする。
次に、制御部200は、リード・ライトユニット138のカード情報の読み取り状況を入力し、磁気情報の読み取り可否を判定する(ステップS220)。ここで、読み取り不可と否定判定すれば、後述のカード返却処理(ステップS240)に移行し、読み取り可能であれば、操作パネル170にて顧客が操作した取引内容に即したカード取引処理(例えば、紙幣払出、硬貨・紙幣の払出、明細票印刷等)を行う(ステップS230)。次いで、制御部200は、カード返却処理を行う(ステップS240)。つまり、制御部200は、カード取引機構130のモータドライバ136にカード返却の制御信号を送出するので、このモータドライバ136は、駆動モータ134を逆転させる。これにより、それまでのカード搬送によりリード・ライトユニット138を越えて搬送済みのカードCは、カード挿入孔106に向けて搬送され、顧客に返却される。この際、モータドライバ136は、カード搬送ローラ132と搬送ローラ133とを回転駆動させる。
このカード返却処理によりカードCはカード挿入孔106から顧客側に払い出されていることから、顧客によるカード取り出しが可能な状態となる。よって、制御部200は、カード挿入センサ129をスキャンして(ステップS250)、そのスキャン結果によりカード取出完了の判定(ステップS260)を行う。ここで、顧客によるカード取り出しがなされていないと、即ちカード挿入センサ129のセンサ出力が「カードあり」のままであると、顧客にカード取り出しを促すべく、エラー報知をし(ステップS270)、ステップS250に移行する。つまり、このエラー報知を受けた顧客によるカード取り出しを待機することになる。このエラー報知の一例として、操作パネル170に、カードを間違って差したまま帰らないように注意喚起をする旨の表示、例えば、「カードをお忘れなくお持ち帰りください」等の表示を行う。
顧客によるカード取り出しが行われると、制御部200は、シャッタ122の閉鎖動作を実行する(ステップS280)。つまり、制御部200は、シャッタ122を図7に示す挿入孔開放姿勢から図3の挿入孔閉鎖姿勢に移動させるべく、シャッタ機構120のモータドライバ126に制御信号を送出するので、このモータドライバ126は、駆動モータ124を逆転させる。これにより、シャッタ122は、図7の挿入孔開放姿勢から図3の挿入孔閉鎖姿勢に推移駆動する。
次いで、制御部200は、シャッタ閉センサ128のスキャン(ステップS290)とそのスキャン結果による閉鎖動作完了の判定(ステップS300)とを行い、閉鎖動作完了(肯定判定)の場合は、本ルーチンを一旦終了する。一方、閉鎖動作未完了(否定判定)の場合は、ステップS310に移行して、今回の閉鎖動作が3回目か否かを判定する。なお、この閉鎖動作数は、閉鎖動作実行の都度にカウントされ、閉鎖動作の不良・不具合を判定するに十分な回数を3回として、カウント数が3となるとリセットされるようにされている。
ステップS310にて閉鎖動作回数が3回目未満であると否定判定した場合、制御部200は、シャッタ122を図7の挿入孔開放姿勢の側に一旦駆動させた上で、既述したステップS280に移行して、シャッタ122の閉鎖動作を再開する。そして、ステップS300による閉鎖動作未完了の判定・その後の閉鎖動作再開が3回繰り返されると、制御部200は、シャッタ122の閉鎖動作に何らかの異常があるとして、エラー報知をし(ステップS320)、このエラー報知を受けた保安員による異常復旧処置を待機して(ステップS330)、本ルーチンを一旦終了する。このエラー報知の一例として、操作パネル170に、カード取扱ができない旨の表示、例えば、「申し訳ございませんがお取扱できなくなりました。」等の表示を行うと共に、現金自動取引装置100の設置店舗の保安員へのエラー発生通知を行う。異常復旧後には、保安員によるシャッタ122の挿入孔閉鎖姿勢復旧を経た上で、ステップS100からの処理が行われる。
ここで、シャッタ122の閉鎖動作が未完了となる現象について説明する。図9はシャッタ122の閉鎖動作未了が起きる一因を説明するための説明図である。シャッタ122が図3の挿入孔閉鎖姿勢に推移しない現象の原因としては、シャッタ122自体の駆動不良、例えばシャッタレールとの係合不良や、モータの回転不良といった機器駆動不良の他、挿入孔閉鎖姿勢に達するよう正常に駆動しているシャッタ122の動きを物理的に妨げることが挙げられる。こうしたシャッタ122の物理的な妨げは、図9に示すように、カード挿入孔106の周囲における前面パネル102の前方領域Xにおいてシャッタ122の移動軌跡と干渉するよう装着された何らかの異物S、例えばスキミング装置の存在によって起きる。
本実施例の現金自動取引装置100では、その取扱対象のカードCがカード裏面に磁気ストライプを有するカードであることから、既述したように垂下部102bの前面の上方側が異物Sの装着箇所となり易い。今、シャッタ122が挿入孔開放姿勢にあるときに、図9に示すように異物Sが垂下部102bの前面の上方側に装着されていると仮定する。すると、装着された異物Sはシャッタ122の移動軌跡と干渉するので、図7の挿入孔開放姿勢から挿入孔閉鎖姿勢となるよう移動しようとするシャッタ122は、前方領域Xに入り込んで異物Sと干渉することから、シャッタ122の閉鎖動作が未了となる。このため、ステップS310でのエラー報知は、異物S(スキミング装置)の装着がなされている旨のエラー報知となるので、保安員は、このエラー報知により異物装着の有無を調べて、異物装着があれば当該異物の除去、並びにシャッタ122の挿入孔閉鎖姿勢復旧を行う。つまり、シャッタ122が前面パネル102に対する相対的な位置関係を変更するよう挿入孔閉鎖姿勢に向けて移動することで、異物S(スキミング装置)の装着有無を検知できると共に、このシャッタ122と装着済み異物との干渉により、異物S(スキミング装置)の装着を阻害できると共に、装着済みの異物にあってはこれを脱落させることができる。そして、このように異物装着を阻害(脱落或いは除去)できることから、この異物Sが仮にスキミング装置であったとしても、カードCの記録情報の不用意な漏洩を未然に回避できる。
以上説明したように、本実施例の現金自動取引装置100では、シャッタ122の開放動作・閉鎖動作が未完了であれば、シャッタ自体の動作不良、或いは既述した異物Sの装着が起きているとして、エラー報知すると共に、それ以降のカードCの搬送も行わないようにした。よって、シャッタ122の開放動作・閉鎖動作が未完了である場合の速やかな復旧と、カードCの記録情報の不用意な漏洩が起きないようにできる。
また、本実施例の現金自動取引装置100では、顧客検知センサ180にて顧客が装置前面に立っていることを検知すると、シャッタ122を挿入孔開放姿勢に推移させる。よって、顧客は、カード挿入孔106に速やかにカードCの挿入できることになり、取引の利便性が高まる。
既述したように、シャッタ122は挿入孔閉鎖姿勢に推移する際に前面パネル102の前方領域Xに入り込んで、装着済み異物と干渉するので、通常は、異物装着は阻害される。また、カード挿入孔106の開放・閉鎖のために移動するシャッタ122やその周辺はカード取扱の際に顧客が注視する箇所となるので、シャッタ122との干渉を避けた異物装着は、顧客に違和感を想起させ、非現実的であると云える。しかも、次のようにすれば、異物Sがシャッタ122との干渉を避けて装着された場合についても対処することができる。図10は異物Sがシャッタ122との干渉を避けて装着された場合の説明図である。
図10に示すように、シャッタ122は垂下部102bに装着された異物S(スキミング装置)と干渉しないものの、このように異物Sを装着する場合には、異物Sがカード挿入方向に沿って占める長さSLは、シャッタ122と干渉する場合よりも長くなる。よって、図8で説明した場合と同様、カードCはカード搬送ローラ132に噛み込まれないままとなるので、ステップS170〜205の処理により、こうした異物装着にあってもエラー報知、その後の復旧(異物除去)が可能であり、実害は生じない。
本実施例の現金自動取引装置100では、図5〜図6に示したカード読み取りプロセスにおけるステップS120以降の処理を、顧客が装置前面に立った場合において実行するようにしたが、次のようにすることもできる。つまり、ステップS120への以降タイミングである顧客検知タイミングを、1時間おきの定間隔タイミングや、12時、13時等の定時タイミングとする。具体的には、ステップS120〜330までの処理のうち、カード搬送・読み取りに関連したステップS160〜270までの処理を省略してシャッタ開閉に関連した処理からなるシャッタ開閉プロセスを、1時間おきの定間隔タイミングや定時タイミングで実行する。こうすれば、前面パネル102の前方領域Xへの入り込みを起こすシャッタ122の移動頻度が高まることから、異物装着阻害の実効性がより高まる。また、異物装着がされやすい夜間においては、5〜15分起きの頻度で、上記シャッタ開閉プロセスを実行するようにすることもできる。こうすれば、シャッタ122が停止している時間間隔が短くなるので、異物Sの装着もよりし難くでき、好ましい。
次に、他の実施例について説明する。図11は第2実施例の要部構成であるシャッタ機構120Aのシャッタ周辺の構成を概略的に示す説明図である。この実施例では、シャッタ機構120Aが有するシャッタ122aは、前面パネル102に対する相対的な位置関係をパネル前面側において上下に変更する。つまり、シャッタ122aは、図示しない上下のシャッタレールに係合されており、その駆動モータおよびモータドライブにより、カード挿入孔106を閉鎖する挿入孔閉鎖姿勢から、カード挿入孔106より上方位置の挿入孔上方側開放姿勢と、カード挿入孔106より下方位置の挿入孔下方側開放姿勢に推移移動する。そして、シャッタ122aは、上下の挿入孔開放姿勢から挿入孔閉鎖姿勢に推移移動することで、カード挿入孔106の周囲における前面パネル102の前方領域Xに入り込み、カードCがカード挿入孔106に挿入される場合のカード経路(カード搬送経路)に対して上下に移動する。
なお、このシャッタ122aにあっても、シャッタ122と同様、位置検出のためのセンサ検知片(図視略)を有し、シャッタ機構120Aは、挿入孔閉鎖姿勢と挿入孔上方側開放姿勢と挿入孔下方側開放姿勢に応じたセンサを備える。よって、これら各姿勢にシャッタ122aがあること、並びに各姿勢にシャッタ122aが推移移動する際のその動作の完了・未完を検知できる。
上記したシャッタ122aを有する第2実施例にあっても、カード挿入孔106の周囲における前面パネル102の前方領域Xへのシャッタ122aの入り込みを起こすので、異物S(スキミング装置)の装着阻害並びに情報漏洩回避といった既述した実施例と同様の効果を奏することができる。また、この実施例では、異物Sの装着が予想されるカード挿入孔106周囲の前面パネル102の前面形状を、前方領域Xへのシャッタ入り込みにより変更する。この点からも、異物S(スキミング装置)の装着阻害並びに情報漏洩回避の実効性が高まる。そして、この実施例では、挿入孔閉鎖姿勢からその上下の挿入孔開放姿勢までのシャッタ122aの移動距離を長くすることで(例えば、シャッタ交換)、異物装着の阻害範囲を簡単に拡張できる。
また、この第2実施例では、挿入孔閉鎖姿勢と挿入孔上方側開放姿勢との間のシャッタ推移と、挿入孔閉鎖姿勢と挿入孔下方側開放姿勢との間のシャッタ推移を起こす。よって、この第2実施例は、カード下面に磁気ストライプがあるカードCを取扱対象とする現金自動取引装置100のみならず、カード上面に磁気ストライプがあるカードCを取扱対象とする現金自動取引装置100についても適用できる。この場合、カード下面に磁気ストライプがあるカードCを取扱対象とする現金自動取引装置100であれば、シャッタ122aを挿入孔閉鎖姿勢と挿入孔下方側開放姿勢との間のシャッタ推移を起こすようにすればよい。同様に、カード上面に磁気ストライプがあるカードCを取扱対象とする現金自動取引装置100であれば、シャッタ122aを挿入孔閉鎖姿勢と挿入孔上方側開放姿勢との間のシャッタ推移を起こすようにすればよい。
更に、上記の第2実施例では、シャッタ122aを前面パネル102の前面において既述したように移動させれば良く、シャッタ122aの前面パネル102内部への引き込みを要しない。よって、構造の簡略化や小型化が可能となる。
この第2実施例にあっても、カード挿入孔106の開放・閉鎖のために移動するシャッタ122aやその周辺はカード取扱の際に顧客が注視する箇所となるので、シャッタ122aとの干渉を避けた異物装着は、顧客に違和感を想起させ、非現実的と云える。しかも、次のようにすれば、異物Sがシャッタ122aとの干渉を避けて装着された場合についても対処することができる。図12は異物Sがシャッタ122aとの干渉を避けて前面パネル102に装着された場合の説明図、図13は異物Sがシャッタ122a自体に装着された場合を想定した説明図である。
図示するように、シャッタ122aの前面とカード取引機構130におけるカード搬送ローラ132のカード噛み込み位置との隔たりRDを、カードCの挿入方向に沿った全長CLの3/4とする。こうすれば、図8でもって説明したように、カード挿入を行おうとする顧客は、カードを上下で摘んだ指が異物Sに届くまでしか、カードCをカード挿入孔106から挿入できない。よって、異物Sがカード挿入方向に沿って占める長さSLの分だけカード挿入孔106からカード搬送ローラ132の側へのカードCの挿入長さは短くなり、カードCは、顧客に指で摘まれたままでカード先端がカード搬送ローラ132に達しないことになる。このため、異物装着が前面パネル102の前面或いはシャッタ122a自体に仮にあったとしても、既述したようにカード搬送ローラ132でのカード噛み込みが起きないことにより異物装着の有無が判定できるので、磁気ストライプ情報の不用意な漏洩を回避できる。
この場合、異物Sが仮にシャッタ122a自体に装着された場合については、次のようにすることもできる。シャッタ122aは、異物Sを装着したまま移動することになるので、その駆動モータに掛かる負荷は、異物装着と共に増大する。よって、シャッタ移動時のモータ負荷を検知し、異物装着に伴うと想定される負荷増大をきたしたら、シャッタ移動の停止、カード搬送の停止、エラー報知等を行うようにする。こうすれば、シャッタ122a自体への異物装着を、挿入孔閉鎖姿勢から開放姿勢へのシャッタ122aの際に、即ち、カード取引に先立ち検知でき好ましい。
次に、また別の実施例について説明する。図14は第3実施例の要部構成を概略的に示す斜視図、図15はカード挿入孔106の周辺を断面視して概略的に示す説明図である。この実施例では、カード挿入孔106を開放・閉鎖するシャッタに代えてカード挿入孔106の周辺における前面パネル102の形状を変更する点に特徴がある。図示するように、この実施例では、カード挿入孔106の下方側に、スライドテーブル300を有する。このスライドテーブル300は、前面パネル102の前面といわゆる面一になる原位置から、前面パネル102の前面側に進出・後退可能とされている。つまり、スライドテーブル300は、この原位置から前方に進出することで、前面パネル102に対する相対的な位置関係についてはこれをカード搬送経路に沿って変更し、カード挿入孔106の周囲における前面パネル102の前方領域Xへの入り込みを起こす。
この実施例にあっても、既述した実施例と同様の制御部200を備え、制御部200は、スライドテーブル300の進出・後退のタイミング、および上記した原位置からの進出長さを決めた上でスライドテーブル300を進出・後退駆動させる。例えば、制御部200は、顧客検知センサ180による顧客未検知時には、スライドテーブル300を前面パネル102の前面と面一の原位置に位置させ、顧客検知センサ180による顧客検知時に、スライドテーブル300を原位置から最大進出長さの進出最前端に一旦進出させた後に原位置に復帰させる。こうすれば、仮に異物がカード挿入孔106の下方の前面パネル102前面に装着されていたとすると、上記のように原位置から進出・復帰するスライドテーブル300は、この異物に干渉するので、顧客によるカード取扱に先立ち、異物を脱落させることができる。
また、スライドテーブル300を進出最前端まで進出駆動させたはずが、進出最前端までのテーブル駆動が未了のままであれば、上記した実施例と同様、異物装着が危惧されるとしてのエラー報知や、保安員による異物除去等の対処を図ることができる。そして、この実施例では、スライドテーブル300の図15における上下幅を大きくすることで、異物装着の阻害範囲を簡単に拡張できる。更に、磁気ストライプ情報を異物であるスキミング装置で読み込むには、その読み込みヘッドを磁気ストライプに接触若しくは近接しなければならないので、スライドテーブル300とカード挿入孔106の下端側との隔たりを短くすれば、装着済み異物(スキミング装置)との干渉が起きる確度が高まるので、異物装着阻害やその脱落を図る上で好ましい。
また、制御部200は、顧客検知センサ180による顧客検知がなされない期間にあっては、例えば最後の顧客検知から10〜20分等の所定時間経過後には、時間経過と共に、原位置からの進出長さが上記した進出最前端での進出長さTMの1/4→1/3→1/2→2/3→3/4→1/1というように変化するよう、スライドテーブル300を進出させることもできる。こうすれば、異物の装着が予想されるカード挿入孔106下方の前面パネル102前面形状が時間経過と共に変化していくので、異物装着を阻害できる。或いは、仮にスライドテーブル300の進出長さがTM/4の時に異物が装着されたとすれば、その後の時間経過と共にTM/4から進出するスライドテーブル300をこの装着済み異物と干渉させることができるので、当該異物の脱落や上記したエラー報知・保安員による異物除去等の対処を図ることができる利点がある。スライドテーブル300の進出長さを順次変更するのではなく、ランダムな進出長さ(最大でTM)で時間経過と共にスライドテーブル300を原位置から進出・後退させるようにすることもできる。こうしても、異物装着の阻害、除去等が可能となる。なお、このように前進・後退するスライドテーブル300にあっても、制御部200は、スライドテーブル300の進出位置を、上記した実施例のシャッタ122と同様、位置検出のためのセンサ検知片(図視略)とその検知センサとにより把握できるので、制御した進出位置へのスライドテーブル300の推移移動動作の完了・未完を検知できる。
また、この第3実施例では、カード下面に磁気ストライプを有するカードCを取扱対象としているので、スライドテーブル300をカード挿入孔106の下方に設けたが、カード上面にカード下面に磁気ストライプを有するカードCを取扱対象とする場合には、スライドテーブル300をカード挿入孔106の上方側に設ければよい。また、スライドテーブル300をカード挿入孔106の上下に設けるようにでき、こうすれば、磁気ストライプがカード下面にあってもカード上面にあっても対応できる。
この第3実施例にあっても、カード挿入孔106や、その直ぐ下方において進出・後退するスライドテーブル300とその周辺はカード取扱の際に顧客が注視する箇所となるので、スライドテーブル300との干渉を避けた異物装着は、顧客に違和感を想起させるので、非現実的ではある。しかも、次のようにすれば、異物Sがスライドテーブル300との干渉を避けて装着された場合についても対処することができる。図16は異物Sがスライドテーブル300との干渉を避けて前面パネル102に装着された場合の説明図、図17は異物Sがスライドテーブル300自体に装着された場合を想定した説明図である。
まず、この実施例では、顧客検知センサ180による顧客検知があったカード取扱の当初では、スライドテーブル300を原位置からその最大進出長さTMだけスライドテーブル300を進出させる。そして、図示するように、最大進出長さTMで進出したスライドテーブル300の前面とカード取引機構におけるカード搬送ローラ132のカード噛み込み位置との隔たりRDを、カードCの挿入方向に沿った全長CLの3/4とする。こうすれば、図8や図12および図13でもって説明したように、カード挿入を行おうとする顧客は、カードを上下で摘んだ指が異物Sに届くまでしか、カードCをカード挿入孔106から挿入できない。よって、異物Sがカード挿入方向に沿って占める長さSLの分だけカード挿入孔106からカード搬送ローラ132の側へのカードCの挿入長さは短くなり、カードCは、顧客に指で摘まれたままでカード先端がカード搬送ローラ132に達しないことになる。このため、異物装着が前面パネル102の前面或いはスライドテーブル300自体に仮にあったとしても、既述したようにカード搬送ローラ132でのカード噛み込みが起きないことにより異物装着の有無が判定できるので、磁気ストライプ情報の不用意な漏洩を回避できる。
この場合、異物Sが仮にスライドテーブル300自体に装着された場合については、次のようにすることもできる。スライドテーブル300は、異物Sを装着したまま移動することになるので、その駆動モータに掛かる負荷は、異物装着と共に増大する。よって、シャッタ移動時のモータ負荷を検知し、異物装着に伴うと想定される負荷増大をきたしたら、シャッタ移動の停止、カード搬送の停止、エラー報知等を行うようにする。こうすれば、スライドテーブル300自体への異物装着を、原位置から最大進出長さTMまでのスライドテーブル300の際に、即ち、カード取引に先立ち検知でき好ましい。
また、上記の実施例ではスライドテーブル300を進出・後退させるようにしたが、テーブル状のものに限るものではない。図18は第3実施例の変形例を示す説明図である。この図18に示すように、カード挿入孔106の上下の前面パネル102に、パネル全面と面一の位置から進出・後退が可能な複数のシャフト310を設置する。そして、それぞれのシャフト310を、スライドテーブル300のように進出・後退するようにしても良い。この場合には、各々のシャフト310を総て同時に進出・後退するようにできるほか、任意のシャフト310を個別に進出・後退させたり、カード挿入孔106に近いシャフト310を当初進出させ、その後、カード挿入孔106から離れたシャフト310を進出させたりもできる。勿論、この逆にカード挿入孔106から離れた側のシャフト310から進出させるようにすることもできる。
なお、本発明は上記した実施例や変形例の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、上記した実施例およびその変形例では、現金自動取引装置100にて磁気ストライプ形成済みのカードCを取り扱う場合について説明したが、カード形状以外の記録媒体を取扱対象とする種々の装置に適用できる。また、現金取引に先立つ記録情報の読み取りだけを行う装置にも適用できる。また、上記した第3実施例とその変形例では、カード挿入孔106の周囲の前面パネル102の前面を一部範囲においてスライドテーブル300やシャフト310で形状変化を起こすようにしたが、カード挿入孔106周囲の広い範囲、例えば、カード取引機構130とカード挿入孔106とを含むモジュールを現金自動取引装置100に組み込むことを想定した場合のモジュール前面の全領域においてスライドテーブル300やシャフト310で形状変化を起こすようにすることもできる。また、図14や図15で説明したスライドテーブル300を前面パネル102の一構成部品として、当該テーブルにカード挿入孔106を形成し、このテーブルをカード挿入孔106ごとカード挿入孔106周囲の前面パネル102の前方領域Xに入り込むようにすることもできる。