JP5007684B2 - ラジアル軸受 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば自動車用変速機(主として手動変速機)に組み込まれて、所定長さの軸方向移動を可能としつつ、回転を可能にするラジアル軸受の改良に関する。例えば、転動体として玉を使用して、両方向の変位を何れも転動体の転がりにより可能とする、スライドボール軸受、或いは転動体としてニードルを使用して、回転を転がりにより可能とするニードル軸受が対象となる。
自動車用変速機には、例えば特許文献1〜3に記載されている様に、所定長さの軸方向移動を可能としつつ、回転を可能にするラジアル軸受が組み込まれている。図11〜16は、この様な目的で従来から広く使用されているラジアル軸受の2例を示している。先ず、図11〜13に示した第1例は、上述したスライドボール軸受で、外輪1と、保持器2と、それぞれが転動体である複数個の玉3、3とから成る。このうちの外輪1は、軸受鋼、肌焼鋼等の硬質金属製で全体を円筒状に形成されており、軸方向両端部に内向フランジ状の鍔部4a、4bを形成している。又、上記保持器2は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂を射出成形する事により一体に構成したもので、1対のリム部5、5と複数本の柱部6、6とを備える。これら両リム部5、5は、互い同径の円環状で、互いに間隔をあけて同心に配置されている。又、上記各柱部6、6は、それぞれが直線状で、上記両リム部5、5同士の間に、それぞれの両端部をこれら両リム部5、5の互いに対向する内側縁に連続させた状態で、円周方向に間隔をあけた状態で互いに平行に配置されている。そして、円周方向に隣り合う柱部6、6と上記両リム部5、5とにより四周を囲まれた部分を、それぞれポケット7、7としている。
上記各玉3、3は、これら各ポケット7、7内に、これら各ポケット7、7毎に複数個ずつ、転動自在に保持している。又、上記外輪1の軸方向両端部に設けた上記両鍔部4a、4bの内側面同士の間隔D は、上記保持器2の軸方向長さL よりも十分に大きく(D ≫L )している。従って、この保持器2は上記外輪1の内径側に、上記各玉3、3の転動に基づき、回転及び軸方向の移動自在に支持されている。例えば手動変速機への組み付け状態では、上記外輪1を内嵌固定したハウジングの内径側に、上記各玉3、3の内径側に挿通した軸を、回転及び軸方向に関する所定量(D −L )の変位を自在に支持する。
一方、図14〜16に示した第2例はニードル軸受で、外輪1と、保持器2と、それぞれが転動体である複数個のニードル8、8とから成る。このうちの外輪1及び保持器2の構造は、上述した第1例の構造の場合と同様である。但し、これら外輪1と保持器2とを、軸方向に関して相対変位させる事は考慮していない為、外輪1の軸方向両端部に設けた1対の鍔部4a、4bの内側面同士の間隔は、上記保持器2の軸方向長さよりも少し大きいだけである。又、本例の場合には、この保持器2、2のポケット7、7内に上記各ニードル8、8を、これら各ポケット7、7毎に1本ずつ保持している。従って、上記保持器2は上記外輪1の内径側に、上記各ニードル8、8の転動に基づいて回転可能に支持されている。例えばハウジングへの組み付け状態では、上記外輪1を内嵌固定した、このハウジングの内径側に、上記各ニードル8、8の内径側に挿通した軸を、回転自在に支持する。
前述の様なスライドボール軸受或いは上述した様なニードル軸受を組み立てるには、軸方向一端(図12、13、15、16の上端)にのみ鍔部4aを形成した、外輪素材を用意する。一方、上記保持器2のポケット7、7内に前記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8を組み込んで、サブ組立体としておく。そして、このサブ組立体を上記外輪素材の内径側に挿入してから、この外輪素材の軸方向他端部を内径側に折り曲げて、比較的薄肉の鍔部4bを形成する事により、この外輪素材を上記外輪1とし、上記サブ組立体がこの外輪1から抜け出る事を阻止する。
上記スライドボール軸受にしても、上記ニードル軸受にしても、上記各ポケット7、7から、前記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8が、上記保持器2の内径側に抜け出る事を防止する為の機構が必要である。この様な機構がないと、上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8が上記保持器2の内径側に抜け出て、上記軸受の組立作業や、組立完了後の軸受を上記ハウジングの内周面と上記軸の外周面との間に組み付ける作業が困難になる。又、軸受の運搬時等に、玉3、3或いはニードル8、8が脱落し、紛失してしまう可能性がある。
この為従来から、図17〜19に示す様に、上記保持器2を構成する前記各柱部6、6の円周方向両側面のうちで、前記両リム部5、5の径方向に関して内径側の端部に、互いに近付く方向に突出した係止突条部9、9を設ける事が行われている。これら各係止突条部9、9は、上記径方向に関して外径側の面を、外径側に向かう程上記各柱部6、6の円周方向中央部に近づく方向に傾斜した傾斜面10としている。言い換えれば、同一のポケット7の円周方向両内側面に互いに対向する状態で設けた係止突条部9、9の外径側の面を、径方向外側に向かう程互いに離れる方向に傾斜した傾斜面10、10としている。そして、上記各柱部6、6の自由状態で、上記各ポケット7、7を挟んで互いに対向する1対の係止突条部9、9の先端縁同士の間隔D を、上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8の外径Daよりも小さく(D <Da)している。この為、これら各玉3、3或いはこれら各ニードル8、8を、上記各ポケット7、7に、上記保持器2の外径側から装着(或いはこの保持器2を前記外輪1の内径側に組み込んだ後、上記各柱部6、6を弾性変形させつつ内径側から押し込んで装着)すれば、上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8が上記各ポケット7、7から抜け出る事はなくなる。
但し、従来構造の場合には、上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8が上記各ポケット7、7から抜け出る事を、必ずしも確実に防止できなかった。この理由は、主として次の(1)(2)の2通りであるが、以下、これらの理由に就いて、図17〜23を参照しつつ説明する。
(1) 上記各ポケット7、7の両内側面に設けた上記各係止突条部9、9の先端縁同士の間隔を十分に狭くできない。
(2) 各柱部6、6が円周方向に弾性変形し易くなり、上記各係止突条部9、9の先端縁同士の間隔が拡がり易くなる。
このうちの(1) の問題は、上記保持器2の内周面から上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8の一部が径方向内方に突出し得る量(所謂落ち量)の確保を考慮する事に伴って生じる。即ち、従来構造の場合に上記各係止突条部9、9は、図17〜19に示す様に、単に外径側の面を単一の傾斜面10としただけの、1段構造であった。上記落ち量とは、図19の寸法αである。この様な構造でこの落ち量αを確保しようとした場合、上記各ポケット7に設けた1対の係止突条部9、9の先端縁同士の間隔D を、上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8の外径Daに比べて十分に小さくできない。この為、上記各柱部6、6が僅かに弾性変形しただけでも、図20に鎖線で示す様に、上記各ポケット7内に保持した上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8が、前記保持器2の内径側に抜け出てしまう(ポケット7から脱落する)。
尚、上記落ち量αは、上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8の転動面を、前記スライドボール軸受或いは前記ニードル軸受の内径側に配置される軸の外周面である内輪軌道と確実に転がり接触させ、且つ、上記保持器2の内周面とこの軸の外周面との間に所定の隙間を確保する為に必要である。上記落ち量αの確保のみを考慮すれば、図21の右半部に示す様に、外径側の面が断面円弧状の凹曲面11とした係止突条部9aを採用する事で対応できる。ポケット7の内側面からの突出量を同じとした場合、上記凹曲面11とした係止突条部9aにより確保できる落ち量αは、図21の左半部に設けた、外径面が単なる傾斜面10である係止突条部9により確保できる落ち量βよりも大きく(α>β)できる。但し、上記外径側の面を凹曲面11とした係止突条部9aを合成樹脂の射出成形により造る場合、射出成形用の金型の形状が複雑になり、保持器の製造コストが嵩む。又、上記外径側の面を凹曲面11とした係止突条部9aは、曲げ剛性が低く、前記(2) の問題となる、前記各柱部6、6が曲がり方向に弾性変形する事を抑える機能が低い。
又、上記(2) の問題は、前記スライドボール軸受或いは前記ニードル軸受の負荷容量を確保すべく、これら各軸受に組み込む上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8を多くする為に、上記各ポケット7、7の数を多くする事に伴って、上記各柱部6、6の円周方向の幅が小さくなる事で生じる。これら各柱部6、6の円周方向の幅が小さくなると、これら各柱部6、6が弾性変形し易くなる。しかも、従来構造の場合には、図17、18、22、23に示す様に、前記各係止突条部9、9を、上記各柱部6、6部分にのみ形成し、これら各係止突条部9、9の端部と前記両リム部5、5の内側面とを連続させてはいなかった。この為、これら両リム部5、5と上記各柱部6、6の端部との連続部の曲げ剛性が低く、円周方向に隣り合う柱部6、6同士の間に存在するポケット7の幅が、図23に示す様に拡がり易かった。そして、拡がった場合には、前述の図20に示す様に、上記各ポケット7内に保持した上記各玉3、3或いは上記各ニードル8、8がこれら各ポケット7から脱落する。この傾向は、転動体として玉3、3を使用するスライドボール軸受の場合に著しい。
特開平8−254269号公報 実願平4−34642号(実開平5−94528号)のCD−ROM 実願平5−23045号(実開平6−79627号)のCD−ROM 特開平8−326744号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、各転動体が各ポケットから抜け出る原因となる、前述の(1)(2)に示した2通りの理由の一方又は双方を解消して、優れた組み付け性を有し、しかも、転動体が欠けた状態で組み付ける可能性をなくす事により信頼性の確保を図れる構造を実現すべく発明したものである。
本発明のラジアル軸受は、外輪と、保持器と、複数個の転動体とから成る。
このうちの外輪は、内周面を円筒状の外輪軌道としている。
又、上記保持器は、合成樹脂製で、上記外輪の内径側に配置されたもので、円周方向複数個所にポケットを設けている。即ち、上記保持器は、互いに間隔をあけて同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部と、これら両リム部同士の間に、それぞれの両端部をこれら両リム部の互いに対向する内側縁に連続させた状態で、円周方向に間隔をあけた状態で互いに平行に配置された複数本の柱部とを備える。そして、円周方向に隣り合う柱部と上記両リム部とにより四周を囲まれた部分を、それぞれ上記各ポケットとしている。
又、上記各柱部の円周方向両側面のうちで上記両リム部の径方向に関して内径側の端部に、互いに近付く方向に突出した係止突条部を設けている。そして、上記各柱部の自由状態で、上記各ポケットを挟んで互いに対向する1対の係止突条部の先端縁同士の間隔は、上記各転動体の外径よりも小さい。
更に、上記各転動体は、上記各ポケット内に転動自在に保持されている。
特に、本発明のラジアル軸受に於いては、上記各係止突条部は、上記径方向に関して外径側の面を、外径側に向かう程上記各柱部の円周方向中央部に近づく方向に傾斜した傾斜面としている。又、上記各係止突条部は、上記径方向に関して外径側に位置する外径側段部と、同じく内径側に位置する内径側段部とから成る。そして、上記各ポケットを挟んで互いに対向する1対の係止突条部の上記外径側段部の先端縁同士の間隔は、上記各転動体の外径よりも小さい。同じく上記内径側段部の先端縁同士の間隔は、上記外径側段部の先端縁同士の間隔よりも更に小さい。そして、これら各内径側段部とこれら各外径側段部との外径側の面の、上記径方向に対する傾斜角度を比較した場合に、上記各内径側段部の外径側の面の傾斜角度が上記各外径側段部の外径側の面の傾斜角度よりも大きい。
この様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、上記各内径側段部の外径側の面の傾斜角度と上記各外径側段部の外径側の面の傾斜角度との差を、20度以上確保する。
又、好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、上記保持器の軸方向に関して、上記各係止突条部の両端部を、上記両リム部の内側面にまで達する状態として、これら各係止突条部の両端部とこれら両リム部とを連続させる。
この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、上記各係止突条部の両端部先端縁と上記両リム部の内側面との連続部を、曲率半径が0.1〜0.5mmの円弧状の凹曲面とする。
又、本発明を実施する場合に、例えば請求項5、6に記載した発明の様に、前記外輪を、軸方向両端部にそれぞれ内向フランジ状の鍔部を設けたものとする。又、これら両鍔部の内側面同士の間隔を、保持器の軸方向寸法よりも大きくする。
そして、請求項5に記載した発明の様に、前記転動体である玉を、上記保持器に設けた複数のポケット毎に複数個ずつ設ける。
或いは、請求項6に記載した発明の様に、転動体であるニードルを、上記保持器に設けた複数のポケット毎に1本ずつ設ける。
上述の様な構成を有する本発明のラジアル軸受によれば、前述の(1)(2)に示した2通りの理由のうちの少なくとも(1)を、更に請求項3に記載した発明によれば(1)(2)の両方を解消して、優れた組み付け性を有し、しかも、転動体が欠けた状態で組み付ける可能性をなくす事により信頼性の確保を図れる構造を実現できる。
即ち、本発明の場合には、各係止突条部を、突出量が少なく外径側面の傾斜角度が緩い外径側段部と、突出量が多く外径側面の傾斜角度が急である内径側段部とから構成している。この為、上記外径側段部の外径側面と各転動体の転動面とが当接する迄これら各転動体を保持器の内径側に変位させれば、これら各転動体の一部を、この保持器の内周面よりも十分径方向内方に突出させられる。即ち、各ポケット内に保持した各転動体の落ち量を確保できる。この様に、これら各転動体の転動面と上記外径側段部の外径側面とが当接するまで、これら各転動体を上記保持器の内径側に変位させた状態でも、これら各転動体の転動面と上記内径側段部とが当接する事はない。この内径側段部は、上記各係止突条部全体としての高さ寸法を確保して、これら各係止突条部を設けた各柱部の曲げ剛性を高くする役目と、万一、上記各転動体が上記外径側段部よりも内径側に変位する傾向になった場合にこれら各転動体を抑えて、これら各転動体が上記保持器の内径側に抜け出る(脱落する)のを防止する役目とを有する。従って、上記各ポケット内に保持した上記各転動体が、上記保持器の内径側に抜け出る事を確実に防止して、ラジアル軸受の組立作業時に転動体が保持器の内径側に抜け出たり、組立後に転動体が保持器の内径側に抜け出たりする事を確実に防止できる。この様な作用・効果は、請求項2に記載した発明の様に、上記各内径側段部の外径側の面の傾斜角度と上記各外径側段部の外径側の面の傾斜角度との差を、20度以上確保すれば、十分に得られる。又、これら各外径側段部と上記各内径側段部とから成る、上記各係止突条部を射出成形する為の金型の加工は容易で、上記保持器の製造コストが嵩む事もない。
又、請求項3に記載した発明の様に、上記各係止突条部の両端部を両リム部の内側面にまで達する状態として、これら各係止突条部の両端部とこれら両リム部とを連続させれば、これら両リム部と各柱部の両端部との連続部の曲げ剛性を高くできる。この為、円周方向に関する、これら各柱部の弾性変形を抑える事ができる。この結果、これら各柱部に設けた上記各係止突条部の高さ寸法を徒に大きくしなくても、これら各係止突条部の先端縁同士の間隔が、上記各転動体の外径よりも大きくなる事を防止できる。そして、上記各ポケット内に保持した転動体の落ち量を確保しつつ、これら各転動体が保持器の内径側に抜け出る事を防止できる。この結果、上記落ち量の確保と、上記各転動体の脱落防止とを、より確実に図れる。
更に、請求項4に記載した発明の様に、上記各係止突条部の両端部先端縁と上記両リム部の内側面との連続部を、曲率半径が0.1〜0.5mmの円弧状の曲面とすれば、これら各連続部と転動体(特にニードル)との干渉を防止しつつ、これら各連続部の曲げ剛性を確保できる。
[実施の形態の1例]
図1〜4は、請求項1、2、5、6に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例を含めて本発明の特徴は、合成樹脂製の保持器2aに設けた各ポケット7、7内に保持した転動体(玉3、3或いはニードル8、8)の落ち量を確保しつつ、この転動体が上記各ポケット7、7から内径側に抜け出る事を確実に防止すべく、上記保持器2aの一部の形状を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図11〜13に示したスライドボール軸受、或いは、前述の図14〜16に示したニードル軸受と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
上記保持器2aを構成する各柱部6、6の円周方向両側面の内径側端部に、それぞれ係止突条部9b、9bを形成している。これら各係止突条部9b、9bはそれぞれ、図4に詳示する様に、上記保持器2aの径方向に関して外径側に位置する外径側段部12と、同じく内径側に位置する内径側段部13とから成る。このうちの各内径側段部13は、上記各外径側段部12の内径側端部から、上記各ポケット7、7の幅方向(円周方向)中央側に突出する状態で形成されている。
又、上記各ポケット7、7を挟んで互いに対向する、これら各ポケット7、7毎に1対ずつの係止突条部9b、9bの各外径側段部12の先端縁同士の間隔D12は、上記各転動体(玉3、3或いはニードル8、8)の外径Daよりも小さい。同じく上記各内径側段部13の先端縁同士の間隔D13は、上記各外径側段部12の先端縁同士の間隔よりも更に小さい(Da>D12>D13)。又、これら各外径側段部12と各内径側段部13との外径側の面は、それぞれ外径側に向かう程上記各ポケット7、7の幅方向中央側から離れる方向に傾斜した傾斜面10a、10bとしている。これら両傾斜面10a、10bの傾斜角度は互いに異なり、上記各内径側段部13の外径側の面である各傾斜面10bの傾斜角度θbを、上記各外径側段部12の外径側の面である各傾斜面10aの傾斜角度θaよりも大きく(θb>θa)している。両傾斜角度θa、θbを、上記各ポケット7、7の円周方向中央部での直径方向との為す角度とした場合に、本例の場合、上記各外径側段部12に関する各傾斜面10aの傾斜角度θaを30度とし、上記各内径側段部13に関する傾斜面10bの傾斜角度θbを50度としている。尚、これら各内径側段部13に関する各傾斜面10bの傾斜角度θbの最大値は90度とする。
上述の様な構成を有する本例の構造によれば、優れた組み付け性を有し、しかも、転動体が欠けた状態で組み付ける可能性をなくす事により信頼性の確保を図れる構造を実現できる。即ち、上記各係止突条部9b、9bを、突出量が少なく外径側面である傾斜面10aの傾斜角度θaが緩い外径側段部12と、突出量が多く外径側面である傾斜面10bの傾斜角度θbが急である内径側段部13とから構成している。この為、傾斜角度θaが緩い、上記各外径側段部12の外径側面である各傾斜面10aと各転動体の転動面とが当接する迄、これら各転動体を前記保持器2aの内径側に変位させれば、これら各転動体の一部を、この保持器2aの内周面よりも十分径方向内方に突出させられる。即ち、上記各ポケット7、7内に保持した各転動体の落ち量を確保できる。
この様に、これら各転動体の転動面と上記各外径側段部12の外径側面である各傾斜面10aとが当接するまで、これら各転動体を上記保持器2aの内径側に変位させた状態でも、これら各転動体の転動面と上記各内径側段部13の外径側側面である各傾斜面10bとが当接する事はない。これら各内径側段部13は、上記各係止突条部9b、9b全体としての高さ寸法H を確保して、これら各係止突条部9b、9bを設けた前記各柱部6、6の曲げ剛性を高くする機能と、万一、上記各転動体が上記各外径側段部12よりも内径側に変位する傾向になった場合にこれら各転動体を抑えて、これら各転動体が上記保持器2aの内径側に抜け出る(脱落する)のを防止する役目を有する。従って、前記各ポケット7、7内に保持した上記各転動体が、上記保持器2aの内径側に抜け出る事を確実に防止して、ラジアル軸受の組立作業時に転動体がこの保持器2aの内径側に抜け出たり、組立後に転動体がこの保持器2aの内径側に抜け出たりする事を確実に防止できる。
図3は、右半部に本例の構造を、左半部に、本例の場合と同程度の抜け止め防止効果を得られる様にした(係止突条部全体としての高さ寸法を同じにした)従来構造を、それぞれ示している。右半部に示した本例の構造の場合、上記各転動体の落ち量αを十分に確保できるのに対して、左半部に示した従来構造の場合には、落ち量βを確保できない。特に本例の場合には、上記各内径側段部13の外径側の面である傾斜面10bの傾斜角度θbを、上記各外径側段部12の外径側の面である傾斜面10aの傾斜角度θaよりも20度大きくしているので、上記各ポケット7、7からの上記各転動体の抜け止めと、これら各転動体の落ち量の確保とを、高次元で両立させられる。尚、上記各外径側段部12と上記各内径側段部13とから成る、上記各係止突条部9b、9bを射出成形する為の金型の加工は容易で、上記保持器2aの製造コストが嵩む事もない。
本発明に関する参考例の第1例
図5〜7は、係止突条部9c、9cの形状の点で、本発明の技術的範囲からは外れるが、請求項3〜5に記載した発明を示唆する構造を含んだ、本発明に関する参考例の第1例を示している。本参考例の場合には、保持器2bの軸方向に関して、前記各係止突条部9c、9cの両端部を、上記両リム部5、5の内側面にまで達する状態として、これら各係止突条部9c、9cの両端部とこれら両リム部5、5とを連続させている。又、これら各係止突条部9c、9cの両端部先端縁とこれら両リム部5、5の内側面との連続部を、曲率半径が0.1〜0.5mmの円弧状の曲面14、14としている。
この様な本参考例の構造によれば、上記両リム部5、5と各柱部6、6の両端部との連続部の曲げ剛性を高くできる。即ち、上記各係止突条部9c、9cがこの連続部に存在して、一種の補強ビードとして機能する。この為、円周方向に関する、上記各柱部6、6の弾性変形を抑える事ができる。即ち、これら各柱部6、6が、前述の図23に誇張して示す様に弾性変形し、これら各柱部6、6の円周方向両側面内径寄り部分に形成した上記各係止突条部9c、9cの先端縁同士の間隔が拡がる事を抑えられる。この結果、上記各柱部6、6に設けたこれら各係止突条部9c、9cの高さ寸法を特に大きくしなくても、これら各係止突条部9c、9cの先端縁同士の間隔が、各転動体の外径よりも大きくなる事を防止できる。そして、各ポケット7、7内に保持した転動体の落ち量を確保しつつ、これら各転動体が保持器2bの内径側に抜け出る事を防止できる。
又、本参考例の場合には、上記各係止突条部9c、9cの両端部先端縁と上記両リム部5、5の内側面との連続部を、曲率半径が0.1〜0.5mmである円弧状の曲面14、14としているので、これら各連続部と各転動体との干渉を防止しつつ、これら各連続部の曲げ剛性を確保できる。特に、これら各転動体がニードルであり、このニードルの両端部外周縁の曲率半径が小さい場合には、上記各曲面14、14の曲率半径が大きい(0.5mmを上回る)と、これら各曲面14、14と上記ニードルの両端部外周縁とが干渉し、このニードルの転動が円滑に行えなくなったり、これら各曲面14、14の一部が強く押されて、これら各曲面14、14の一部が塑性変形する可能性がある。これに対して本参考例の場合には、上記曲率半径を適切に規制する事により、上記効果を得る様にしている。尚、本例の構造を実施する場合、上記各係止突条部9c、9cの形状は問わないが、好ましくは、前述した本発明の実施の形態の1例の如き形状とする。
本発明に関する参考例の第2例
図5〜7は、係止突条部9d、9dの形状の点で、本発明の技術的範囲からは外れるが、請求項3〜5に記載した発明を示唆する構造を含んだ、本発明に関する参考例の第2例を示している。本参考例の場合には、保持器2cに設けた各ポケット7、7の内径側端部に前記係止突条部9d、9dを、これら各ポケット7、7の全周に亙り設けている。言い換えれば、保持器2cの軸方向に関して、各係止突条部9d、9dの両端部を、上記両リム部5、5の内側面にまで達するまで形成し、更に、互いに対向する1対の係止突条部9d、9dの端部同士を、上記両リム部5、5の内側面内径寄り部分に形成した突条部により連続させている。この様な本例の構造によれば、上記両リム部5、5と各柱部6、6の両端部との連続部の剛性を、上述した参考例の第1例よりも、更に向上させられる。その他の部分の構成及び作用は、この参考例の第1例の場合と同様である。
本発明は、回転方向及び軸方向の相対変位を許容できる構造に限らず、回転方向の相対変位のみを許容する一般的なラジアル軸受にも適用できる。
本発明の実施の形態の1例を示す、中心軸に直交する仮想平面に関する断面図。 本発明の実施の形態の1例の構造と従来構造とを比較して示す為に、一部を省略して示す、図1と同様の断面図。 図2のA部拡大図。 図3のB部拡大図。 本発明に関する参考例の第1例を、転動体を省略した状態で示す斜視図。 図5のC部拡大図。 本発明に関する参考例の第1例を構成する保持器のポケットを、保持器の径方向外方から見た図。 本発明に関する参考例の第2例を、転動体を省略した状態で示す斜視図。 図8のD部拡大図。 本発明に関する参考例の第2例を構成する保持器のポケットを、保持器の径方向外方から見た図。 従来構造の第1例を、外輪のみを切断した状態で示す斜視図。 同じく外輪に加えて保持器及び各玉を切断した状態で示す斜視図。 図12のE矢視図。 従来構造の第2例を、外輪のみを切断した状態で示す斜視図。 同じく外輪に加えて保持器及び各ニードルを切断した状態で示す斜視図。 図15のF矢視図。 従来構造から転動体を除き、外輪の一部を切断した状態で示す斜視図。 図17のG部拡大図。 従来構造に組み込まれるポケットの断面形状を示す、図3と同様の図。 保持器のポケットから玉が脱落する状態を説明する為の断面図。 先に考えた改良構造を説明する為の、図19と同様の図。 従来構造を構成する保持器のポケットを、保持器の径方向外方から見た図。 このポケットが弾性変形した状態を誇張して示す、図22と同様の図。
1 外輪
2、2a、2b、2c 保持器
3 玉
4a、4b 鍔部
5 リム部
6 柱部
7 ポケット
8 ニードル
9、9a、9b、9c、9d 係止突条部
10、10a、10b 傾斜面
11 凹曲面
12 外径側段部
13 内径側段部
14 曲面

Claims (6)

  1. 内周面を円筒面状の外輪軌道とした外輪と、この外輪の内径側に配置された、円周方向複数個所にポケットを設けた合成樹脂製の保持器と、これら各ポケット内に転動自在に保持された複数個の転動体とから成り、
    上記保持器は、互いに間隔をあけて同心に配置された、それぞれが円環状である1対のリム部と、これら両リム部同士の間に、それぞれの両端部をこれら両リム部の互いに対向する内側縁に連続させた状態で、円周方向に間隔をあけた状態で互いに平行に配置された複数本の柱部とを備え、円周方向に隣り合う柱部と上記両リム部とにより四周を囲まれた部分をそれぞれ上記各ポケットとしたものであり、
    上記各柱部の円周方向両側面のうちで上記両リム部の径方向に関して内径側の端部に、互いに近付く方向に突出した係止突条部を設けており、上記各柱部の自由状態で、上記各ポケットを挟んで互いに対向する1対の係止突条部の先端縁同士の間隔は、上記各転動体の外径よりも小さいラジアル軸受に於いて、
    上記各係止突条部は、上記径方向に関して外径側の面を、外径側に向かう程上記各柱部の円周方向中央部に近づく方向に傾斜した傾斜面としたものであり、且つ、上記各係止突条部は、上記径方向に関して外径側に位置する外径側段部と、同じく内径側に位置する内径側段部とから成るものであって、上記各ポケットを挟んで互いに対向する1対の係止突条部の外径側段部の先端縁同士の間隔は、上記各転動体の外径よりも小さく、同じく内径側段部の先端縁同士の間隔は、上記外径側段部の先端縁同士の間隔よりも更に小さく、これら各内径側段部とこれら各外径側段部との外径側の面の、上記径方向に対する傾斜角度を比較した場合に、各内径側段部の外径側の面の傾斜角度が各外径側段部の外径側の面の傾斜角度よりも大きい事を特徴とする
    ラジアル軸受。
  2. 各内径側段部の外径側の面の傾斜角度と各外径側段部の外径側の面の傾斜角度との差が20度以上である、請求項1に記載したラジアル軸受。
  3. 保持器の軸方向に関して、各係止突条部の両端部が、両リム部の内側面にまで達している、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したラジアル軸受。
  4. 各係止突条部の両端部先端縁と両リム部の内側面との連続部が、曲率半径が0.1〜0.5mmの円弧状の凹曲面である、請求項3に記載したラジアル軸受。
  5. 外輪が、軸方向両端部にそれぞれ内向フランジ状の鍔部を設けたものであって、これら両鍔部の内側面同士の間隔が保持器の軸方向寸法よりも大きく、転動体である玉が、この保持器に設けた複数のポケット毎に複数個ずつ設けられている、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載したラジアル軸受。
  6. 外輪が、軸方向両端部にそれぞれ内向フランジ状の鍔部を設けたものであって、これら両鍔部の内側面同士の間隔が保持器の軸方向寸法よりも大きく、転動体であるニードルが、この保持器に設けた複数のポケット毎に1本ずつ設けられている、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載したラジアル軸受。
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