JP2006220228A - スラストころ軸受の保持器の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 保持器強度を維持するために十分な板厚および、ころと、ころ止め部との適正な遊隙量を確保し、耐久性に優れたスラストころ軸受の保持器の製造方法を提供する。
【解決手段】 コイル材(工程a)から、打ち抜き加工により円環状部材を取り出し(工程b)、円環上部材をプレス加工により、円環状部材の中央部に凸状部を形成し(工程c)、両端部を持ち上げて断面をW形状とし(工程d)、保持器の内外径を所定の寸法および形状に仕上げる(工程e,f)。次に、打ち抜き加工により、ころを収容する複数のポケット(工程g)と、ポケットの壁面に第1ころ接触部および第2ころ接触部を形成し、ころ接触部に、面押し加工によりころ止め部を形成する(工程h)。
【選択図】 図11
【解決手段】 コイル材(工程a)から、打ち抜き加工により円環状部材を取り出し(工程b)、円環上部材をプレス加工により、円環状部材の中央部に凸状部を形成し(工程c)、両端部を持ち上げて断面をW形状とし(工程d)、保持器の内外径を所定の寸法および形状に仕上げる(工程e,f)。次に、打ち抜き加工により、ころを収容する複数のポケット(工程g)と、ポケットの壁面に第1ころ接触部および第2ころ接触部を形成し、ころ接触部に、面押し加工によりころ止め部を形成する(工程h)。
【選択図】 図11
Description
この発明は、オートマチックトランスミッションやコンプレッサ等に使用されるスラストころ軸受の製造方法に関するものである。
自動車のオートマチックトランスミッションやコンプレッサ等に使用されるスラストころ軸受は、例えば、特開2000−192965号公報(特許文献1)に記載されている。同公報に記載されているスラストころ軸受は、ころと、図1に示すような円環状の円周面にころを収容するポケット2を複数有する保持器1とを備え、あるいはさらに軌道輪を有している。
保持器1のA−A´での断面は、図2に示すように、円環状の板材をプレス加工によりW形状とし、ポケット2を打ち抜き形成する。ポケット2には、打ち抜き形成時に、ころ5の脱落を防止する複数のころ止め部3と、ころ5の回転を案内するころ案内面4とが形成される。
隣接するころ止め部3は、軸受回転軸線方向およびころ5の自転軸線方向の位置をずらして設けられる。図2では、ポケット2の中央部上側と、両端部下側とにころ止め部3が形成されている。また、ころ案内面4は、隣接するころ止め部3の間の傾斜部に設けられる。
ここで、軸受回転軸線とは、軸受回転時のころの公転軌道の中心を通る仮想軸線を示す。また、ころの自転軸線とは、軸受回転時のころ各々の自転軌道の中心を通る仮想軸線を示す。
ころ止め部3は、図3に示すように、ポケット2の壁面より突出しており、スラストころ軸受の停止時にころ5の脱落を防止する。一方、スラストころ軸受の回転時においては、図4に示すように、ころ5は、ころ止め部3と遊隙量d0の間隔を維持して接触せず、ころ案内面4に案内されて回転する。
上記のようなスラストころ軸受は、ころと、転動面とが線接触するので、軸受投影面積が小さい割りに高負荷容量と高剛性が得られるという利点がある。このため、希薄潤滑下や高速回転下での運転など、過酷な使用条件で使用する軸受として好適である。
特開2000−192965号公報
近年、オートマチックトランスミッションやコンプレッサ等のコンパクト化が進んでおり、それに伴って、これらの機器に使用されるスラストころ軸受の軸方向の厚み削減の要望が強くなっている。
一般的に、図4に示したようなスラストころ軸受をサイズダウンする場合、通常は、図5(a)に示すように、ころ径、W型保持器の厚み寸法、W型保持器の板厚をそれぞれφ0>φ1、w0>w1、t0>t1と所定の比率だけ縮小する。
ただし、W型保持器の強度を維持するために、W型保持器の板厚t1をあまり薄くすることができない。
そこで、図5(b)に示すように、ころ径φ1およびW型保持器の厚み寸法W1を変更せずに、W型保持器の板厚t2をt1<t2となるように設定すると、ころ5の脱落を防止するためには、遊隙量d2を小さくしなくてはならない。遊隙量d2が小さくなると、ころ止め部3でころ5の外周面の潤滑油を掻き落とすことになり、回転不良を招く恐れがある。
また、適正な遊隙量を確保するために、ころ止め部3のポケット2の端面からの突出量を減らし、間口を広くすれば、ころ5の脱落を防止することができない。
一方、図5(c)に示すように、板厚t3をt1>t3となるように設定した場合には、遊隙量d3を十分に確保することは可能となるが、保持器の強度がさらに低下する。
さらに、従来からの問題点として、打ち抜き形成されるころ案内面4は、その一部に破断面を含む。その結果、表面の粗い案内面4と、ころ5との接触抵抗が高くなり、磨耗による鉄粉が発生する。また、特に、希薄潤滑下においては、油膜切れ等の潤滑不良により、軸受が破損する恐れがあった。
本発明の目的は、保持器強度を維持するために十分な板厚および、ころと、ころ止め部との適正な遊隙量を確保し、耐久性に優れたスラストころ軸受の保持器の製造方法を提供することである。
この発明に係るスラストころ軸受の保持器の製造方法は、鋼板からプレス加工により円環状部材を取り出し、円環状部材の軸受回転軸線に対して交差する面には、ころを収容する複数のポケットと、ポケットの壁面に、軸受回転軸線方向およびころの自転軸線方向に見てずれた位置関係に、第1ころ接触部および第2ころ接触部とを打ち抜き加工により形成する。
第1ころ接触部には、ころの接触側の角部を面押し加工により、ころの一方方向への抜けを防止する第1ころ止め部を形成し、第2ころ接触部には、ころの接触側の角部を面押し加工により、ころの他方方向への抜けを防止する第2ころ止め部を形成する。
上記の方法でスラストころ軸受の保持器を製造することにより、保持器の板厚を薄くすることなく、ころと、ころ止め部との適正な遊隙量を確保することができる。その結果、耐久性および静粛性に優れたスラストころ軸受を得ることができる。
なお、本明細書中で「面押し加工」とは、加工品表面を塑性加工により、所望の形状とする加工法を指すものとする。この加工法によると、加工品表面は平滑な面となり、また、加工工具の形状によって種々の形状とすることができる。
好ましくは、スラストころ軸受の保持器の製造方法はトランスファプレスによって行う。これにより、各工程を連続的に行うことができるので、生産性を高めることができ、結果としてスラストころ軸受の製品価格を抑えることができる。
なお、本明細書中で「トランスファプレス」とは、複数の加工工程を必要とする場合に、各工程を行うステージを必要数分設け、搬送装置によって材料を移動させながら、各ステージで加工を行う方法を指すものとする。
面押し加工は、例えば、第1ころ接触部と、第2ころ接触部とを別工程で加工する。これにより、工具の形状を簡素化することができる。
面押し加工は、例えば、バニシ加工である。なお、本明細書中で「バニシ加工」とは、加工品表面に工具を押し付けて滑らせ、表面を平滑にする加工法を指すものとする。
本発明は、ころ径の小さなスラストころ軸受に使用する場合でも、保持器の板厚を薄くすることなく、ころと、ころ止め部の適正な遊隙量を確保することができるスラストころ軸受の保持器を製造することができる。
図6〜図8を参照して、この発明に係る製造方法により製造された、スラストころ軸受の一実施形態を説明する。
このスラストころ軸受は、ころ16と、保持器11とを備える。保持器11は、図6に示すように、例えば、円環状の板材をプレス加工によりW形状に成型して作られたW型保持器であり、軸受回転軸線に対して交差する面に、ころ16を収容する複数のポケット12を有する。
ポケット12の壁面には、図7に示すように、ころ16の外周面に対面する壁面から突出した複数のころ接触部13,14と、ころ接触部13,14から後退した位置に設けられたころ非接触部15とを備える。
隣接するころ接触部13,14は、軸受回転軸線方向およびころの自転軸線方向の位置をずらして複数個所に設けられる。図6に示す実施形態では、ポケット12の中央部上側に第1ころ接触部13と、両端部下側に第2ころ接触部14とが形成されている。
図8に示すように、第1ころ接触部13は、ころ16の上方への抜けを防止する第1ころ止め部13aと、その加工面にころ16の回転を案内する第1ころ案内面13bとを有し、第2ころ接触部14は、ころ16の下方への抜けを防止する第2ころ止め部14aと、その加工面にころ16の回転を案内する第2ころ案内面14bとを有する。
上記構成の保持器とすることにより、軸受の強度を維持するために必要な板厚tを確保すると同時に、ころ止め部13a,14aの突出量を調整することにより、適正な遊隙量dを確保することも可能となる。
また、ころ接触部13,14の加工面をころ案内面13b,14bとすることにより、従来、ころ案内面としていた打抜加工時の切断面部分をころ非接触部15とすることができる。
ころ非接触部15は、ころ案内面13b,14bから大きく後退させることができるので、図7に示すように、ころ非接触部15と、ころ16との間隔を大きくすることが可能となる。これにより、軸受内部への通油性が高まり、潤滑性能の高いスラストころ軸受を得ることができる。
なお、上記の実施形態では、ころ案内面13b,14bの形状をテーパ面としたが、これに限ることなく、図9に示すように、ころ案内面23b,24bをころ26の外周面に沿う湾曲面としてもよい。また、図10に示すように、ころ接触部33,34をバニシ加工によりころ止め部33a,34aおよびころ案内面33b,34bを形成することとしてもよい。
上記の各実施形態では、ころと、保持器とを備えるスラストころ軸受の例を示したが、これに限ることなく、さらに軌道輪を備えるスラストころ軸受としてもよい。
次に、図11を参照して、図8に示すような保持器11を本発明に係る保持器の製造方法により製造する手順を説明する。
この発明では、図11に示すようなコイル材(工程a)から、打ち抜き加工により円環状部材を取り出す(工程b)。コイル材の材質としては、冷間圧延鋼板等が使用される。
次に、円環状部材をプレス加工により、円環状部材の断面をW形状に形成する。プレス加工は、上下一対の金型(図示せず)を用いて、数段階に分けて行うとよい。この実施形態では、まず、円環状部材の中央部に凸状部を形成し(工程c)、両端部を持ち上げて断面をW形状とする(工程d)。その後、保持器の内外径のつかみ代を切り離して(工程e)、内外径部を所定の形状に加工する(工程f)。
次に、打ち抜き加工により、保持器の軸受回転軸線に対して交差する面に、ころを収容する複数のポケットを形成する(工程g)。また、ポケットの形成と同時に、ポケットの壁面に第1ころ接触部および第2ころ接触部を形成する。
打ち抜き加工は、1〜数箇所のポケットを部分的に加工してもよいが、全てのポケットを同時に形成することとしてもよい。これにより、ポケットの位置ずれの発生を抑制することが可能となる。
次に、第1ころ接触部および第2ころ接触部に、ころ止め部およびころ案内面を形成する(工程h)。ころ止め部の形成は、後述する面押し加工、または、バニシ加工により行う。
上記の各工程(a〜h)は、それぞれ別々の工程として行ってもよいが、トランスファプレスによって行うこととしてもよい。これにより、各工程を連続的に行うことができるので、生産性を高めることができ、結果としてスラストころ軸受の製品価格を抑えることができる。
または、上記の各工程(a〜h)を順送プレスによって行ってもよい。なお、本明細書中で「順送プレス」とは、プレス内に複数の加工工程を持ち、材料をプレス入口のフィーダにより各工程を移動させることによって、材料を連続的に加工する方法を指すものとする。
最後に、保持器は、熱処理、例えば浸炭焼入れおよび焼戻し、または、これらに代えて、浸炭窒化処理や軟窒化処理等をして、完成品となる。
次に、図12を参照して、図8に示す第2ころ接触部14に第2ころ止め部14aおよび第2ころ案内面14bを形成する手順を説明する。
図8に示すような第2ころ止め部14aおよび第2ころ案内面14bは、図12に示すように面押し加工により形成する。具体的には、図12(a)に示すように、第2ころ接触部14を加工台17上に載置し、第2ころ接触部14の角部14cに工具18のテーパ面18aを押し当てることにより行う。
面押し加工を行うと、図12(b)に示すように、その加工面に第2ころ案内面14bと、第2ころ止め部14aとが形成される。
面押し加工は、せん断加工と異なり圧縮加工であるので、第2ころ案内面14bは平滑な面となり、案内面ところとの接触抵抗を緩和し、磨耗による鉄粉の発生を抑制することができる。また、希薄潤滑下においても、油膜切れ等を起こさず、高い潤滑性能を維持することができる。その結果、耐久性および静粛性に優れたスラストころ軸受を得ることができる。
また、大きなころ案内面を形成する場合には、図13(a)に示すように、加工台17に工具18の先端をガイドするガイド部17aを設けて加工することにより、図13(b)に示すように、工具18を深く挿入することができる。これにより、大きなころ案内面14bを形成することが可能となる。
上記の実施形態では、図8に示すような、第2ころ案内面14bの形状がテーパ面となる面押し加工の手順を説明したが、工具18のテーパ面18aを凸状の湾曲面とすることにより、図9に示すような湾曲形状のころ案内面13b,14bを形成することも可能である。
また、上記の実施形態では、第2ころ接触部14に第2ころ止め部14aおよび第2ころ案内面14bを形成する方法を示したが、第1ころ接触部についても、工具18を下から当てることにより、同様の方法で第1ころ止め部13aおよび第1ころ案内面13bを形成することができる。
次に、図14および図15を参照して、図10に示すような、第2ころ接触部34に第2ころ止め部34aおよび第2ころ案内面34bを形成する手順について説明する。
図10に示すような第2ころ止め部34aおよび第2ころ案内面34bは、図14に示すようにバニシ加工により形成する。
具体的には、図14(a)に示すように、第2ころ接触部34を加工台37の端面から幅L1だけ後退した位置に載置し、工具38を第2ころ接触部34の端面から幅L2だけ重なる位置にセットする。そして、図14(b)に示すように、工具38の先端を加工台37のガイド部37aに沿って押し込むことにより、第2ころ止め部34aおよびころ案内面34bが形成される。
加工後の第2ころ接触部34に関しては、図15(a)および(b)に示すように、第2ころ案内面34bが、加工前の第2ころ接触部34の端面から幅L2だけ後退し、バニシ加工によって押し下げられた部分によって、第2ころ止め部34aが、加工前の第2ころ接触部34の端面から幅L1だけ突出して形成される。
バニシ加工は、工具38のテーパ部38aと、平坦部38bとで加工するので、第2ころ接触部34の加工面にも、テーパ面と、加工前の面と平行な面とが形成される。
上記のように、バニシ加工により第2ころ案内面34bを形成することにより、表面粗さの低い平滑なころ案内面が得られるので、案内面ところとの接触抵抗を緩和し、磨耗による鉄粉の発生を抑制することができる。また、希薄潤滑下においても、油膜切れ等を起こさず、高い潤滑性能を維持することができる。その結果、耐久性および静粛性に優れたスラストころ軸受を得ることができる。
また、加工時の幅L1,L2の値を変更することにより、ころと、ころ接触部との遊隙量を容易に調整することが可能となる。
上記の実施形態では、第2ころ止め部34aおよび第2ころ案内面34bを、バニシ加工により形成した例を示したが、これに限ることなく、しごき加工、または、つぶし加工によって形成してもよい。
また、上記の実施形態では、第2ころ接触部34に第2ころ止め部34aおよび第2ころ案内面34bを形成する方法を示したが、第1ころ接触部についても、工具38を下から当てることにより、同様の方法で第1ころ止め部33aおよび第1ころ案内面33bを形成することができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明は、オートマチックトランスミッションやコンプレッサ等に使用されるスラストころ軸受の製造方法に有利に利用される。
1,11 保持器、2,12 ポケット、3,13a,14a,23a,24a,33a,34a ころ止め部、4,13b,14b,23b,24b,33b,34b ころ案内面、5,16,26,36 ころ、13,14,23,24,33,34 ころ接触部、14c 角部、15,25,35 ころ非接触部、17,37 加工台、17a,37a ガイド部、18,38 工具、18a,38a テーパ部、38b 平坦部。
Claims (4)
- 鋼板からプレス加工により円環状部材を取り出し、
前記円環状部材の軸受回転軸線に対して交差する面に、ころを収容する複数のポケットと、前記ポケットの壁面に、前記軸受回転軸線方向および前記ころの自転軸線方向に見てずれた位置関係に、第1ころ接触部および第2ころ接触部とを打ち抜き加工により形成し、
前記第1ころ接触部には、前記ころの接触側の角部を面押し加工により、前記ころの一方方向への抜けを防止する第1ころ止め部を形成し、
前記第2ころ接触部には、前記ころの接触側の角部を面押し加工により、前記ころの他方方向への抜けを防止する第2ころ止め部を形成する、スラストころ軸受の保持器の製造方法。 - 前記スラストころ軸受の保持器の製造方法は、トランスファプレスによって行う、請求項1に記載のスラストころ軸受の保持器の製造方法。
- 前記面押し加工は、前記第1ころ接触部と、前記第2ころ接触部とを別工程で加工する、請求項1または2に記載のスラストころ軸受の保持器の製造方法。
- 前記面押し加工は、バニシ加工である、請求項1〜3のいずれかに記載のスラストころ軸受の保持器の製造方法。
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