JP2006200609A - スラストころ軸受 - Google Patents

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Shinji Oishi
真司 大石
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Abstract

【課題】 保持器の強度を維持するために十分な板厚および、ころと、ころ止め部の適正な遊隙量を確保することにより、耐久性に優れたスラストころ軸受を提供する。
【解決手段】 保持器11は、円環状の板材で、軸受回転軸線に対して交差する面に、ころを収容する複数のポケット12を有する。ポケット12の壁面には、ころ16の外周面に対面する壁面ころ16の上方への抜けを防止する第1ころ止め部13aと、その加工面にころ16の回転を案内する第1ころ案内面13bとを有する第1ころ接触部13と、ころ16の下方への抜けを防止する第2ころ止め部14aと、その加工面にころ16の回転を案内する第2ころ案内面14bとを有する第2ころ接触部14とが設けられている。また、ころ接触部13,14から後退した位置に非接触部15が設けられている。
【選択図】 図6

Description

この発明は、オートマチックトランスミッションやコンプレッサ等に使用されるスラストころ軸受に関するものである。
自動車のオートマチックトランスミッションやコンプレッサ等に使用されるスラストころ軸受は、例えば、特開2000−192965号公報(特許文献1)に記載されている。同公報に記載されているスラストころ軸受は、ころと、図1に示すような円環状の円周面にころを収容するポケット2を複数有する保持器1とを備え、あるいはさらに軌道輪を有している。
保持器1のA−A´での断面は、図2に示すように、円環状の板材をプレス加工によりW形状とし、ポケット2を打ち抜き形成する。ポケット2には、打ち抜き形成時に、ころ5の脱落を防止する複数のころ止め部3と、ころ5の回転を案内するころ案内面4とが形成される。
隣接するころ止め部3は、軸受回転軸線方向およびころ5の自転軸線方向の位置をずらして設けられる。図2では、ポケット2の中央部上側と、両端部下側とにころ止め部3が形成されている。また、ころ案内面4は、隣接するころ止め部3の間の傾斜部に設けられる。
ここで、軸受回転軸線とは、軸受回転時のころの公転軌道の中心を通る仮想軸線を示す。また、ころの自転軸線とは、軸受回転時のころ各々の自転軌道の中心を通る仮想軸線を示す。
ころ止め部3は、図3に示すように、ポケット2の壁面より突出しており、スラストころ軸受の停止時にころ5の脱落を防止する。一方、スラストころ軸受の回転時においては、図4に示すように、ころ5は、ころ止め部3と遊隙量dの間隔を維持して接触せず、ころ案内面4に案内されて回転する。
上記のようなスラストころ軸受は、ころと、転動面とが線接触するので、軸受投影面積が小さい割りに高負荷容量と高剛性が得られるという利点がある。
特開2000−192965号公報
近年、オートマチックトランスミッションやコンプレッサ等のコンパクト化が進んでおり、それに伴って、これらの機器に使用されるスラストころ軸受の軸方向の厚み削減の要望が強くなっている。
一般的に、図4に示したようなスラストころ軸受をサイズダウンする場合、通常は、図5(a)に示すように、ころ径、W型保持器の厚み寸法、W型保持器の板厚をそれぞれφ>φ、w>w、t>tと所定の比率だけ縮小する。
ただし、W型保持器の強度を維持するために、W型保持器の板厚tをあまり薄くすることができない。
そこで、図5(b)に示すように、ころ径φおよびW型保持器の厚み寸法Wを変更せずに、W型保持器の板厚tをt<tとなるように設定すると、ころ5の脱落を防止するためには、遊隙量dを小さくしなくてはならない。遊隙量dが小さくなると、ころ止め部3でころ5の外周面の潤滑油を掻き落とすことになり、回転不良を招く恐れがある。
また、適正な遊隙量を確保するために、ころ止め部3のポケット2の端面からの突出量を減らし、間口を広くすれば、ころ5の脱落を防止することができない。
一方、図5(c)に示すように、板厚tをt>tとなるように設定した場合には、遊隙量dを十分に確保することは可能となるが、保持器の強度がさらに低下する。
さらに、従来からの問題点として、打ち抜き形成されるころ案内面4は、その一部に破断面を含む。その結果、表面の粗い案内面4と、ころ5との接触抵抗が高くなり、磨耗による鉄粉が発生する。また、特に、希薄潤滑下においては、油膜切れ等の潤滑不良により、軸受が破損する恐れがあった。
本発明の目的は、保持器の強度を維持するために十分な板厚および、ころと、ころ止め部との適正な遊隙量を確保することにより、耐久性に優れたスラストころ軸受を提供することである。
この発明に係るスラストころ軸受は、ころと、円環状部材で、軸受回転軸線に対して交差する面に、ころを収容する複数のポケットを有する保持器とを備える。また、ころの外周面に対面するポケットの壁面には、軸受回転軸線方向およびころの自転軸線方向に見てずれた位置関係に、第1ころ接触部および第2ころ接触部が設けられている。
第1ころ接触部は、ころの一方方向への抜けを防止する第1ころ止め部と、ころの回転を案内する第1ころ案内面とを有し、第2ころ接触部は、ころの他方方向への抜けを防止する第2ころ止め部と、ころの回転を案内する第2ころ案内面とを有することを特徴とする。
上記構成とすることにより、保持器の板厚を薄くすることなく、ころと、ころ止め部との適正な遊隙量を確保することができる。その結果、保持器の強度およびスラストころ軸受の潤滑性能の低下を防止することができる。
好ましくは、ころ止め部およびころ案内面は、ころ接触部のころ接触側の角部を面押し加工して形成されている。これにより、平滑な案内面を得ることができるので、案内面ところとの接触抵抗を緩和し、磨耗による鉄粉の発生を抑制することができる。また、希薄潤滑下においても、油膜切れ等を起こさず、高い潤滑性能を維持することができる。その結果、耐久性および静粛性に優れたスラストころ軸受を得ることができる。
なお、本明細書中で面押し加工とは、加工品表面を塑性加工により、所望の形状のとする加工法を指すものとする。この加工法によると、加工品表面は平滑な面となり、また、加工工具の形状によって種々の形状とすることができる。
好ましくは、第1ころ接触部と、前記第2ころ接触部との間に、ころ案内面よりも後退して位置するころ非接触部を備えるとよい。これにより、ころと、保持器との間の隙間が大きくなり、軸受内部への通油性が高まる。その結果、潤滑性能の高いスラストころ軸受を得ることができる。
本発明は、ころ径の小さなスラストころ軸受に使用する場合でも、保持器の板厚を薄くすることなく、ころと、ころ止め部の適正な遊隙量を確保することができる。その結果、保持器の強度を維持すると同時に、スラストころ軸受の潤滑性能の低下を防止することができる。
さらに、ころ案内面を平滑な面とし、ころと、保持器との非接触部を設けることにより、耐久性および静粛性に優れたスラストころ軸受を得ることができる。
図6〜図8を参照して、この発明に係るスラストころ軸受の一実施形態を説明する。
この発明に係るスラストころ軸受は、ころ16と、保持器11とを備える。保持器11は、例えば、図6に示すように、円環状の板材をプレス加工によりW形状に成型して作られたW型保持器であり、軸受回転軸線に対して交差する面に、ころ16を収容する複数のポケット12を有する。
ポケット12の壁面には、図7に示すように、ころ16の外周面に対面する壁面から突出した複数のころ接触部13,14と、ころ接触部13,14から後退した位置に設けられたころ非接触部15とを備える。
隣接するころ接触部13,14は、軸受回転軸線方向およびころの自転軸線方向の位置をずらして複数個所に設けられる。図6に示す実施形態では、ポケット12の中央部上側に第1ころ接触部13と、両端部下側に第2ころ接触部14とが形成されている。
図8に示すように、第1ころ接触部13は、ころ16の上方への抜けを防止する第1ころ止め部13aと、その加工面にころ16の回転を案内する第1ころ案内面13bとを有し、第2ころ接触部14は、ころ16の下方への抜けを防止する第2ころ止め部14aと、その加工面にころ16の回転を案内する第2ころ案内面14bとを有する。
上記構成の保持器とすることにより、軸受の強度を維持するために必要な板厚tを確保すると同時に、ころ止め部13a,14aの突出量を調整することにより、適正な遊隙量dを確保することも可能となる。
また、ころ接触部13,14の加工面をころ案内面13b,14bとすることにより、従来、ころ案内面としていた打抜加工時の切断面部分をころ非接触部15とすることができる。
ころ非接触部15は、ころ案内面13b,14bから大きく後退させることができるので、図7に示すように、ころ非接触部15と、ころ16との間隔を大きくすることが可能となる。これにより、軸受内部への通油性が高まり、潤滑性能の高いスラストころ軸受を得ることができる。
なお、上記の実施形態では、ころ案内面13b,14bの形状をテーパ面としたが、これに限ることなく、図9に示すように、ころ案内面23b,24bをころ26の外周面に沿う湾曲面としてもよい。また、図10に示すように、ころ接触部33,34をバニシ加工によりころ止め部33a,34aおよびころ案内面33b,34bを形成することとしてもよい。
上記の各実施形態に示す保持器は、熱処理、例えば浸炭焼入れおよび焼戻し、または、これらに代えて、浸炭窒化処理や軟窒化処理等をして、完成品となる。
また、上記の各実施形態では、ころと、保持器とを備えるスラストころ軸受の例を示したが、これに限ることなく、さらに軌道輪を備えるスラストころ軸受としてもよい。
次に、図11を参照して、図8に示す第2ころ接触部14に第2ころ止め部14aおよび第2ころ案内面14bを形成する手順を説明する。
図8に示すような第2ころ止め部14aおよび第2ころ案内面14bは、図11に示すように面押し加工により形成する。具体的には、図11(a)に示すように、第2ころ接触部14を加工台17上に載置し、第2ころ接触部14の角部14cに工具18のテーパ面18aを押し当てることにより行う。
面押し加工を行うと、図11(b)に示すように、その加工面に第2ころ案内面14bと、第2ころ止め部14aとが形成される。
面押し加工は、せん断加工と異なり圧縮加工であるので、第2ころ案内面14bは平滑な面となり、案内面ところとの接触抵抗を緩和し、磨耗による鉄粉の発生を抑制することができる。また、希薄潤滑下においても、油膜切れ等を起こさず、高い潤滑性能を維持することができる。その結果、耐久性および静粛性に優れたスラストころ軸受を得ることができる。
また、工具18を深く挿入して、大きなころ案内面を形成する場合には、図12(a)に示すように、加工台17に工具18の先端をガイドするガイド部17aを設けて加工することにより、図12(b)に示すように、大きなころ案内面14bを得ることができる。
上記の実施形態では、図8に示すような、第2ころ案内面14bの形状がテーパ面となる面押し加工の手順を説明したが、工具18のテーパ面18aを凸状の湾曲面とすることにより、図9に示すような湾曲形状のころ案内面13b,14bを形成することも可能である。
また、上記の実施形態では、第2ころ接触部14に第2ころ止め部14aおよび第2ころ案内面14bを形成する方法を示したが、第1ころ接触部についても、工具18を下から当てることにより、同様の方法で第1ころ止め部13aおよび第1ころ案内面13bを形成することができる。
次に、図13および図14を参照して、図10に示すような、第2ころ接触部34に第2ころ止め部34aおよび第2ころ案内面34bを形成する手順について説明する。
図10に示すような第2ころ止め部34aおよび第2ころ案内面34bは、図13に示すようにバニシ加工により形成する。なお、本明細書中でバニシ加工とは、加工品表面に工具を押し付けて滑らせ、表面を平滑にする加工法を指すものとする。
具体的には、図13(a)に示すように、第2ころ接触部34を加工台37の端面から幅Lだけ後退した位置に載置し、工具38を第2ころ接触部34の端面から幅Lだけ重なる位置にセットする。そして、図13(b)に示すように、工具38の先端を加工台37のガイド部37aに沿って押し込むことにより、第2ころ止め部34aおよびころ案内面34bが形成される。
加工後の第2ころ接触部34に関しては、図14(a)および(b)に示すように、第2ころ案内面34bが、加工前の第2ころ接触部34の端面から幅Lだけ後退し、バニシ加工によって押し下げられた部分によって、第2ころ止め部34aが、加工前の第2ころ接触部34の端面から幅Lだけ突出して形成される。
バニシ加工は、工具38のテーパ部38aと、平坦部38bとで加工するので、第2ころ接触部34の加工面にも、テーパ面と、加工前の面と平行な面とが形成される。
上記のように、バニシ加工により第2ころ案内面34bを形成することにより、表面粗さの低い平滑なころ案内面が得られるので、案内面ところとの接触抵抗を緩和し、磨耗による鉄粉の発生を抑制することができる。また、希薄潤滑下においても、油膜切れ等を起こさず、高い潤滑性能を維持することができる。その結果、耐久性および静粛性に優れたスラストころ軸受を得ることができる。
また、加工時の幅L,Lの値を変更することにより、ころと、ころ接触部との遊隙量を容易に調整することが可能となる。
上記の実施形態では、第2ころ止め部34aおよび第2ころ案内面34bを、バニシ加工により形成した例を示したが、これに限ることなく、しごき加工、または、つぶし加工によって形成してもよい。
また、上記の実施形態では、第2ころ接触部34に第2ころ止め部34aおよび第2ころ案内面34bを形成する方法を示したが、第1ころ接触部についても、工具38を下から当てることにより、同様の方法で第1ころ止め部33aおよび第1ころ案内面33bを形成することができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明は、オートマチックトランスミッションやコンプレッサ等に使用されるスラストころ軸受に有利に利用される。
スラストころ軸受用保持器の概略平面図である。 従来のスラストころ軸受用保持器の図1におけるA−A´断面図である。 従来のスラストころ軸受用保持器のポケット部分の概略平面図である。 従来のスラストころ軸受用保持器の図2におけるB−B´断面図である。 ころ径を小さくしたスラストころ軸受用保持器の図2におけるB−B´断面図である。 この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受用保持器の図1におけるA−A´断面図である。 この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受用保持器のポケット部分の概略平面図である。 この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受用保持器の図6におけるC−C´断面図であって、ころ案内面をころの外周面に沿うテーパ面とした状態を示す図である。 この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受用保持器の図6におけるC−C´断面図であって、ころ案内面を湾曲面とした状態を示す図である。 この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受用保持器の図6におけるC−C´断面図であって、バニシ加工によりころ止め部およびころ案内面を形成した状態を示す図である。 ころ止め部およびころ案内面を面押し加工により形成する手順を示す図解的断面図である。 ころ止め部およびころ案内面を面押し加工により形成する手順を示す図であって、図11と比較して、工具をより深く挿入する状態を示す図である。 ころ止め部およびころ案内面をバニシ加工により形成する手順を示す図である。 ころ止め部およびころ案内面をバニシ加工により形成した前後のころ接触部の拡大断面図である。
符号の説明
1,11 保持器、2,12 ポケット、3,13a,14a,23a,24a,33a,34a ころ止め部、4,13b,14b,23b,24b,33b,34b ころ案内面、5,16,26,36 ころ、13,14,23,24,33,34 ころ接触部、14c 角部、15,25,35 ころ非接触部、17,37 加工台、17a,37a ガイド部、18,38 工具、18a,38a テーパ部、38b 平坦部。

Claims (3)

  1. ころと、
    円環状部材で、軸受回転軸線に対して交差する面に、前記ころを収容する複数のポケットを有する保持器とを備えたスラストころ軸受において、
    前記ころの外周面に対面する前記ポケットの壁面には、前記軸受回転軸線方向および前記ころの自転軸線方向に見てずれた位置関係に、第1ころ接触部および第2ころ接触部が設けられており、
    前記第1ころ接触部は、前記ころの一方方向への抜けを防止する第1ころ止め部と、前記ころの回転を案内する第1ころ案内面とを有し、
    前記第2ころ接触部は、前記ころの他方方向への抜けを防止する第2ころ止め部と、前記ころの回転を案内する第2ころ案内面とを有することを特徴とする、スラストころ軸受。
  2. 前記ころ止め部および前記ころ案内面は、前記ころ接触部のころ接触側の角部を面押し加工して形成されている、請求項1に記載のスラストころ軸受。
  3. 前記第1ころ接触部と、前記第2ころ接触部との間に、前記ころ案内面よりも後退して位置するころ非接触部を備える、請求項1または2に記載のスラストころ軸受。
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