〔実施の形態1〕
本発明は、微粒子および該微粒子を含む液晶組成物並びにその利用に関するものである。まず、本実施の形態にかかる微粒子について以下に説明する。
図1(a)および図1(b)は、本実施の形態にかかる微粒子の構成を模式的に示す図である。図1(a)は有機成分からなる有機微粒子を示し、図1(b)は表面が有機層で覆われた無機微粒子を示している。
本実施の形態にかかる微粒子51は、図1(a)および図1(b)に示すように、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する基(以下、説明の便宜上、基(W)と記す)を、少なくとも当該微粒子51の表層部に備えている。本実施の形態において、上記基(W)は、結合基(以下、説明の便宜上、結合基(Z)と記す)を介して上記表層部に共有結合している。
上記微粒子51が備える上記液晶類似構造および液晶中間体構造としては、特に限定されるものではない。上記液晶類似構造および液晶中間体構造そのものは、各種文献等により従来公知であり、十分に当業者の理解の範囲内である。
したがって、本実施の形態では、上記液晶類似構造および液晶中間体構造に関する詳細な説明については省略するが、本実施の形態にかかる上記微粒子51に必須の構造である上記液晶類似構造および液晶中間体構造のうち液晶類似構造としては、例えば、ネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶、リオトロピック液晶、あるいはディスコチック液晶等の液晶の分子構造と同一または類似した分子構造が挙げられる。
また、本実施の形態において、上記液晶中間体構造とは、上記液晶類似構造を有する化合物(以下、「液晶類似構造含有化合物」と記す)を合成するに際し、用いることができる化合物の構造を示す。
本実施の形態にかかる上記微粒子51の好ましい液晶類似構造あるいは液晶中間体構造としては、好適には、下記一般式(1)
−(A−Y1)m−B…(1)
で示される構造が挙げられる。
上記一般式(1)においてAで示される置換基は、基(W)毎に独立して、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、または1,4−フェニレン基を表し、各基(W)で同一でも異なっていてもよい。また、上記したように環を形成しているAで示される置換基を構成する任意の−CH2−基は、−O−基、−S−基、または−CO−基で置換されていてもよく、任意の−CH2CH2−基は、−CH=CH−基で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基における任意の−CH=基は−N=基で置換されていてもよく、A中、任意の水素原子は、ハロゲン原子、−CF3基、−CHF2基、−CH2F基、−OCF3基、−OCHF2基、または−OCH2F基で置換されていてもよい。また、上記Y1で示される置換基は、基(W)毎に独立して、単結合、炭素数1〜4のアルキレン基、−O−基、−S−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、−C≡C−基、−N=N−基、−N(O)=N−基、−CO−基、またはそれらの任意の組み合わせを表し、Y1中、任意の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Y1もまた、A同様、各基(W)で同一でも異なっていてもよい。さらに、Bで示される置換基は、基(W)毎に独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子、−C≡C−CN基、−CN基、−OCF3基、または−OCHF2基を表し、上記アルキル基において任意の−CH2−基は、−O−基、−S−基、−CO−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、または−C≡C−基で置換されていてもよい。さらに、B中、任意の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、Bもまた、各基(W)で同一でも異なっていてもよい。また、mは、基(W)毎に独立して、1〜4の整数を表す。つまり、式(1)中、mで示される繰り返し単位は、基(W)毎に独立して、1、2、3または4である。
上記一般式(1)で示される構造を有する化合物としては、具体的には、例えば、下記構造式(4)〜(69)で示される化合物およびその誘導体の分子骨格を分子中に有する化合物が一例として挙げられる。
なお、下記構造式(4)〜(69)において、RおよびR’は各々独立してアルキル基を表し、RORはアルコキシアルキル基を表し、Dは重水素を表す。また、構造式(36)は、アゾキシ基の一方の窒素原子が酸素原子に配位していることを示している。
また、以下に示す各構造式において、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、ハロゲン基、シアノ基等の官能基が、任意の数、任意の位置に導入あるいは置換されてもよいことは、言うまでもない。
また、本実施の形態において用いられる上記結合基(Z)は、上記基(W)を、上記微粒子の表層部に、共有結合により化学的に結合させることができるものであれば、特に限定されるものではない。
すなわち、本実施の形態にかかる上記微粒子51は、少なくとも、その表面に、
−Z−W
で示される構造を有していればよいが、下記一般式(3)
−Z−(A−Y1)m−B…(3)
で示すように、基(W)が、前記一般式(1)で示される構造を有し、かつ、この一般式(1)で示される構造を有する基(W)が、結合基(Z)を介して、共有結合により化学的に結合されていることが好ましい。
上記結合基(Z)としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の2価基を用いることができるが、これら結合基(Z)のなかでも、窒素原子および酸素原子のうち少なくとも一方を含む極性結合基が好ましい。
上記極性結合基としては、具体的には、例えば、エーテル結合、エポキシ尿素結合、カルボジイミド結合、イミド結合、チオ尿素結合、イソウレア結合、カルバモイルアミド結合、グアニジン結合、ウレタン結合、尿素結合、アミド結合、エステル結合、チオウレタン結合、チオエステル結合等が挙げられる。
そして、これら極性結合基の中でも、結合に必要な化合物の種類並びに手法が豊富であり、容易に得ることができるとともに、極性的にも比較的電荷が強い、ウレタン結合、尿素結合、アミド結合、エステル結合、チオウレタン結合、チオエステル結合、または、これら結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合を含む2価の結合基が好ましく、ウレタン結合、尿素結合、アミド結合、エステル結合、チオウレタン結合、およびチオエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合基が特に好ましい。
また、上記微粒子51のコアは、液晶類似構造および液晶中間体構造を有さない化合物に由来する構造を含む構成体からなり、上記基(W)は、この構成体の表層部に、結合基(Z)を介して共有結合している。
より具体的には、上記微粒子51は、例えば、(i)少なくともコアが、液晶(組成物)中で立体的構造(架橋構造、または、液晶材料に溶解しない有機成分や無機成分)を有しているか、または、(ii)少なくとも液晶構造(液晶類似構造および液晶中間体構造)を有さない化合物(有機化合物または無機化合物)を含む構成体において立体的構造を有している。つまり、本実施の形態において、上記液晶類似構造および液晶中間体構造を有さない化合物とは、架橋性化合物や無機化合物を意味し、上記微粒子51は、液晶類似構造および液晶中間体構造を有さない化合物に由来する構造を含む構成体として、コアが、架橋構造を有している構成を有していてもよく、コアが、溶解しない有機構造あるいは無機構造を有していてもよい。
したがって、図1(a)および図1(b)に示すように、本実施の形態にかかる上記微粒子51は、有機成分のみからなる有機微粒子であってもよく、表面が有機層51bで覆われた無機微粒子(以下、「無機成分含有微粒子」と記す)であってもよい。すなわち、本実施の形態にかかる上記微粒子51は、当該微粒子51のコアとなる構成体、つまり、核粒子51aが、有機成分からなる有機微粒子であってもよく、無機成分からなる無機微粒子であってもよい。勿論、これら有機成分または無機成分の何れか一方を主成分とする複合微粒子等であってもよい。
以下、まず、本実施の形態にかかる上記微粒子51の製造方法として、上記微粒子51が、コアとなる有機成分からなる有機微粒子(つまり、有機成分からなる核粒子51a、以下、説明の便宜上、「有機微粒子(h)」と記す)の表面に、表面層として有機層が形成された有機微粒子(以下、説明の便宜上、「有機微粒子(H)」と記す)である場合を例に挙げて説明する。
〔有機微粒子(H)〕
上記微粒子51が有機微粒子(H)である場合、核粒子51aとしての上記有機微粒子(h)としては、例えば、架橋または非架橋の樹脂粒子、有機顔料、ワックス類等を挙げることができる。
上記架橋および非架橋の樹脂微粒子としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、スチレン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子、メタクリル系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂粒子、エポキシ系樹脂粒子、ポリビニルブチラール系樹脂粒子、ロジン系樹脂粒子、テルペン系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子、グアナミン系樹脂粒子、カルボジイミド系樹脂粒子等が挙げられる。
これら樹脂微粒子は、単独で使用してもよく、二種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、これら樹脂微粒子に限らず、上記例示の核粒子51aは、何れも、単独で使用してもよく、二種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
また、上記核粒子51a並びにこれら核粒子51aに使用される有機材料は、市販品があればそれをそのまま用いてもよく、これらの市販品を予めシード法等により表面修飾したものを使用してもよい。
特に、ベースとなる上記核粒子51aを構成する樹脂は、液晶材料(液晶化合物)中への溶解による弊害を考慮すると、架橋性の成分を有していることが好ましく、上記微粒子51を構成する上記核粒子51aは、架橋構造を有していることが好ましい。
本実施の形態にかかる上記有機微粒子(H)は、有機質からなる上記有機微粒子(h)の少なくとも表面(表面、または、表面および内部)に、液晶類似構造含有化合物および液晶中間体構造含有化合物のうち少なくとも一方の化合物に由来する構造単位、すなわち、前記基(W)を、結合基(Z)を介して共有結合により化学的に結合させることで得ることができる。
液晶材料中に高分散・高充填が可能な目的の有機微粒子(H)を得るための好ましい方法としては、以下の(i)、(ii)に示す方法が挙げられる。
(i)反応性官能基を含む有機微粒子(h)を、有機溶媒等の溶液中(溶媒中)に分散させ、該有機微粒子(h)と、該有機微粒子(h)が有する反応性官能基と反応可能な官能基を有する液晶性モノマーとを化学的に結合させることで、有機微粒子(h)が上記液晶性モノマーにより表面修飾された有機微粒子(H)を得る方法。
(ii)有機溶媒等の溶液中(溶媒中)で、反応性官能基を含む重合性化合物と、該重合性化合物が有する反応性官能基と反応可能な官能基を有する液晶類似構造含有化合物および/または液晶中間体構造含有化合物とを共重合させて微粒子化することにより、表面、または、表面および内部が液晶類似構造および/または液晶中間体構造で修飾された有機微粒子(H)を得る方法。
本実施の形態によれば、このように、有機微粒子(h)に液晶性モノマーを化学的に結合させるか、あるいは、有機微粒子(h)となる成分モノマーとしての上記反応性官能基を含む重合性化合物と、液晶性モノマーとを共重合させることで、液晶材料中に高分散・高充填可能な目的の有機微粒子(H)を得ることができる。
なお、本実施の形態において、上記液晶性モノマーとは、「液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有し、かつ、重合性基を有する化合物」を意味する。また、「有機微粒子(h)に液晶性モノマーを化学的に結合させる」とは、官能基を有する有機微粒子(h)と官能基を有する液晶性モノマーとを反応させて有機微粒子(H)に結合基(Z)を導入(形成)することを意味し、「有機微粒子になる成分モノマー(架橋成分)と液晶性モノマーとを共重合させる」とは、結合基(Z)を有した成分を用いて合成を行うことを意味する。
上記有機微粒子(H)の作製に用いられる上記反応性官能基を含む重合性化合物(つまり、上記有機微粒子(h)となる成分モノマー)としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビニル基含有化合物、アミノ基含有化合物、エポキシ基含有化合物、水酸基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、メルカプト基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。
また、上記重合性化合物としては、一分子中に、上記例示の化合物が有する各官能基、すなわち、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基からなる群より選ばれる二種以上の官能基を有する化合物等を用いることもできる。
本実施の形態によれば、上記した方法のなかでも、ナノレベルの微粒子を効率良く得ることができ、液晶材料中に、微粒子をより高充填・高分散させることができることから、前記(ii)に示すように、反応性官能基を含む重合性化合物と、有機微粒子(h)が有する反応性官能基と反応可能な官能基を有する液晶類似構造含有化合物および/または液晶中間体構造含有化合物とを共重合させて有機微粒子化する方法が好ましい。
また、液晶材料中で、コアとなる微粒子(核粒子)が溶解し、液晶物性を低下させたり、目的の液晶ドメイン化を阻害させたりする等の液晶組成物への影響を考慮すると、前記したように、核粒子、すなわち、上記有機微粒子(h)が、架橋性化合物により架橋されていることがより好ましい。
上記有機微粒子(h)が架橋構造を有していることで、液晶類似構造含有化合物および/または液晶中間体構造含有化合物に由来する前記基(W)が側鎖となり、微粒子表面の安定化と同時に、微粒子同士の近接に対する立体的障害を与えることから、上記有機微粒子(H)の液晶組成物中での分散性(液晶材料中での分散性)に大きく寄与し、目的の物性を維持することができる。
本実施の形態において用いられる上記架橋性化合物としては、特に限定されるものではないが、好適には、多官能ビニル基含有化合物、多官能アミノ基含有化合物、多官能エポキシ基含有化合物、多官能水酸基含有化合物、多官能カルボキシル基含有化合物、多官能メルカプト基含有化合物、多官能イソシアネート基含有化合物、多官能オキサゾリン基含有化合物、多官能カルボジイミド基含有化合物、および、これら化合物が有する官能基が、一分子中に二つ以上共存している化合物等が挙げられる。
上記多官能ビニル基含有化合物としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼン;ジビニルビフェニル;ジビニルナフタレン;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,7−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオール系ジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート;テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート;プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート;1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート;1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート;ジアリルフタレートおよびその異性体;トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体;等の多官能ビニル基含有モノマー等が挙げられる。
また、上記多官能ビニル基含有化合物(多官能ビニル基含有モノマー)としては、新中村化学工業株式会社製のNKエステル「A−TMPT−6P0、A−TMPT−3E0、A−TMM−3LMN、A−GLYシリーズ、A−9300、AD−TMP、AD−TMP−4CL、ATM−4E、A−DPH」(何れも製品名)等が挙げられる。
上記例示の多官能ビニル基含有化合物の中でも、比較的安価であり、かつ、ナノレベルの粒子径制御が容易であることから、ジビニルベンゼン;(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオール系ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;から選ばれる少なくとも一種のモノマー(架橋性モノマー)を含むモノマー成分(モノマーもしくはモノマー組成物)を用いることが好ましい。
特に、上記有機微粒子(H)を、エステル系液晶化合物を含む液晶組成物中に分散させて用いる場合には、上記多官能ビニル基含有化合物のなかでも、上記エステル系液晶化合物との相溶性が良いジ(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを、架橋性モノマー(架橋性化合物)として用いることが好ましい。
また、上記多官能アミノ基含有化合物としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン;ジエチレントリアミン;1,4−シクロヘキサンジアミン;イソホロンジアミン;トリレンジアミン;cis−1,3ジアミノシクロブタン;ピペラジン;ヘキサメチレンジアミン;m−キシリレンジアミン;アミノエチルピペラジン等の脂肪族多官能アミン;芳香族多官能アミン;異節環状多官能アミン;アミノアルキル異節環状多官能アミン;等の多官能アミノ基含有モノマーが挙げられる。
また、多官能エポキシ基含有化合物のうち、多官能エポキシ基含有モノマー(架橋性モノマー)としては、具体的には、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル類;等が挙げられる。
さらに、上記多官能エポキシ基含有化合物のうち、多官能エポキシ基含有ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのグリシジルエーテル類;ポリエステル樹脂系のポリグリシジル化物;ポリアミド樹脂系のポリグリシジル化物;ビスフェノールA系のエポキシ樹脂;フェノールノボラック系のエポキシ樹脂;エポキシウレタン樹脂;等が挙げられる。
また、多官能水酸基含有化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物;その他の二価のアルコールまたはソルビトール;1,2,3,6−ヘキサンテトロール;1,4−ソルビタン;ペンタエリスリトール;ジペンタエリスリトール;トリペンタエリスリトール;1,2,4−ブタントリオール;1,2,5−ペンタントリオール;グリセロール;ジグリセロール;2−メチルプロパントリオール;2−メチル−1,2,4−ブタントリオール;トリメチロールエタン;トリメチロールプロパン;1,3,5−トリヒドロキシベンゼン;等の多官能水酸基含有モノマー等が挙げられる。
多官能カルボキシル基含有化合物としては、例えば、マレイン酸;フマル酸;シトラコン酸;イタコン酸;グルタコン酸;フタル酸;イソフタル酸;テレフタル酸;シクロヘキサンジカルボン酸;コハク酸;アジピン酸;セバチン酸;アゼライン酸;マロン酸;n−デセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類;アルキルコハク酸類;これら例示の酸の無水物またはアルキルエステル;等の2価カルボン酸(多官能カルボキシル基含有モノマー)であってもよく、これら例示の2価カルボン酸以外の2価カルボン酸であってもよい。
また、上記多官能カルボキシル基含有化合物としては、2価カルボン酸に限定されるものではなく、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸;2,5,7−ナフタレントリカルボン酸;1,2,4−ナフタレントリカルボン酸;1,2,4−ブタントリカルボン酸;1,2,5−ヘキサントリカルボン酸;1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン;テトラ(メチレンカルボキシル)メタン;1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸;エンポール三量体酸;これら例示の化合物の無水物やアルキルエステル、アルケニルエステル、アリールエステル;等の3価以上のカルボン酸(多官能カルボキシル基含有モノマー)であってもよく、勿論、その他の3価以上のカルボン酸であってもよい。
また、多官能メルカプト基含有化合物としては、具体的には、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオクリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリス(2−メルカプトエチル)イソシアヌレート、トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート等の脂肪族ジチオール類;1,2−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、4−メチルー1,2−ベンゼンジチオール、4−ブチルー1,2−ベンゼンジチオール、4−クロロー1,2−ベンゼンジチオール等の芳香族ジチオール類;等の多官能メルカプト基含有モノマーが挙げられるが、これに限定されるものではない。
上記多官能メルカプト基含有化合物としては、例えば、メルカプト基を有するポリビニルアルコール変性体等のメルカプト基を含有した高分子類等(多官能メルカプト基含有ポリマー)であってもよい。
また、多官能イソシアネート基含有化合物としては、例えば、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、粗トリレンジイソシアネート、粗メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメチレントリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、水添メチレンジフェニルジイソシアネート、m−フェニルジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の多官能イソシアネート基含有モノマー等が挙げられる。
多官能オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(5,5’−ジメチルオキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4,4’,4’−テトラメチル−2−オキサゾリン)、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,6−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ヘキサン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンセン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,2−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン等のビスオキサゾリン化合物;これらビスオキサゾリン化合物のオキサゾリン基2化学当量と多塩基性カルボン酸(例えばマレイン酸、琥珀酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、クロレンド酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等)のカルボキシル基1化学当量とを反応させて得られる末端オキサゾリン基を有する化合物;等の多官能オキサゾリン基含有モノマー等を挙げることができる。
多官能カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、多官能イソシアネート基含有化合物を、カルボジイミド化を促進する触媒の存在下において重合させることによって得られるポリカルボジイミド化合物等の多官能カルボジイミド基含有ポリマー等が挙げられる。
また、本実施の形態において、有機微粒子(h)が有する反応性官能基と反応可能な官能基を有する液晶類似構造含有化合物並びに液晶中間体構造含有化合物、すなわち、前記した基(W)を有する化合物(以下、説明の便宜上、「化合物(CW)と記す」)としては、前記例示の液晶類似構造含有化合物並びに液晶中間体構造含有化合物を用いることができる。
これら液晶類似構造および/または液晶中間体構造を有し、かつ重合性基を有する化合物(すなわち、液晶性モノマー)は、前記した重合性化合物、すなわち、有機微粒子(h)となる成分モノマーと直接共重合させてもよいし、別の化合物により結合基(Z)に置換した後、他の共重合可能な官能基を付与して液晶性モノマーとして使用してもよい。
つまり、本実施の形態において、前記した液晶類似構造含有化合物または液晶中間体構造含有化合物が、その分子中に重合性基を有する場合、該液晶類似構造含有化合物および液晶中間体構造含有化合物は、液晶性モノマーとして、上記有機微粒子(h)あるいは上記有機微粒子(h)となる成分モノマーと直接共重合させてもよい。
また、前記した液晶類似構造含有化合物または液晶中間体構造含有化合物は、一旦、別の化合物と反応させて上記液晶類似構造含有化合物または液晶中間体構造含有化合物が有する官能基を結合基(Z)に置換した後、他の共重合可能な官能基を付与して液晶性モノマーとし、該液晶性モノマーを、上記有機微粒子(h)あるいは上記有機微粒子(h)となる成分モノマーと共重合させてもよい。
上記液晶性モノマーの共重合に際し、特に好ましい反応性官能基、すなわち、上記重合性基あるいは共重合可能な官能基としては、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基、ビニル基、−M(T)3基が挙げられる。−M(T)3基のMは、Si原子、Ti原子、またはAl原子を表し、Tは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、不飽和構造を含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。これら−M(T)3基のなかでも、アルコキシド基が好ましい。
なお、上記ビニル基が有する水素原子は炭素数1〜12のアルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
これらの官能基を有する化合物は、重合開始剤、触媒、熱または光重合等の公知の手法により、容易に微粒子化することができる。
このような液晶類似構造あるいは液晶中間体構造を有し、共重合可能な化合物、つまり、本実施の形態にかかる上記液晶性モノマーとして好ましい化合物としては、
下記一般式(2)
Q−〔X〕n−(A−Y1)m−B…(2)
で示される構造が挙げられる。
上記一般式(2)においてQで示される置換基は、−OH基、−NH2基、−NCO基、−SH基、−COOH基、−CH=CH2基、−M(T)3基、エポキシ基、またはオキサゾリン基を表し、−CH=CH2基の水素原子は炭素数1〜12のアルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。また、上記−M(T)3基のMは、Si原子、Ti原子、またはAl原子を表し、Tは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、不飽和構造を含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。また、上記〔X〕で示される置換基は、結合基(Z)を含み、側鎖を有していてもよい2価の有機基を表し、nで示される繰り返し単位は、1、2、3、または4である。
なお、上記一般式(2)において、A、Y1、Bで示される置換基並びにmで示される繰り返し単位の説明は、前記一般式(1)におけるA、Y1、Bで示される置換基並びにmで示される繰り返し単位の説明と同じであるため、ここでは、その説明を省略する。
上記液晶性モノマーは、単独で用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。また、上記一般式(2)を満たす化合物は、市販品がある場合はそれを使用してもよいし、例えば置換基Qを含む官能基が2つ以上ある化合物と液晶類似構造あるいは液晶中間体構造(一般式(1)で示される構造)を含んだ化合物とを化学的に結合することにより目的の化合物を選択的に得ることができる。
以上のように、上記液晶類似構造あるいは液晶中間体構造は、少なくとも上記一般式(2)で示される構造を有する液晶類似構造含有化合物あるいは液晶中間体構造含有化合物を用いて得られることが好ましい。
また、本実施の形態にかかる上記液晶性モノマーとしては、上記有機微粒子(H)を表示素子用の液晶組成物に使用する場合、化合物の変色に伴う表示素子への影響を考慮すると、上記液晶性モノマーの中でも、ウレタン結合、尿素結合、エステル結合を含む液晶性モノマーが好ましい。
さらに、上記液晶性モノマーは、常温で液体であることが望ましい。これにより、上記有機微粒子(H)を液晶材料(液晶化合物)に分散させて使用する場合に、得られる液晶組成物の粘性が下がるとともに、液晶材料中での上記有機微粒子(H)の分散安定性を向上させることができる。したがって、さらなる高充填、高分散が期待できる。
なお、上記一般式(2)で示される化合物において、〔X〕で表される有機基が、上記結合基(Z)の少なくとも一方に、水素原子または酸素原子を含む炭素数2〜12の有機基を有していると、液化し易く、常温で液体の液晶性モノマーを容易に得ることができる。
上述した方法によって得られる本実施の形態にかかる上記有機微粒子(H)の中でも、後述するナノ微粒子製造に好適なビニル基によるラジカル重合によって得られる有機微粒子(H)が好ましく、そのなかでも、耐液晶溶解性や得られる粒子径の観点から、架橋性化合物として多官能ビニル基含有化合物を使用し、該多官能ビニル基含有化合物とビニル基を有する液晶性モノマーとを共重合することによって得られる架橋構造を有する有機微粒子(H)がより好ましい。なお、ビニル基が好ましい理由としては、得られる微粒子51の粒子径を小さくできることや、効率良く合成ができること等が挙げられる。
また、上記反応において用いられる多官能ビニル基含有化合物としては、反応性および粒子径制御性が良く、容易かつ効率に共重合させ易く、目的のナノレベルの微粒子が得られ易いとともに、安価であることから、ジビニルベンゼン;(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオール系ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;から選ばれる少なくとも一種のモノマー(架橋性モノマー)を含むモノマー成分(モノマーもしくはモノマー組成物)を用いることが好ましい。
本実施の形態において、上記架橋性化合物と液晶性モノマーとの合計量を10としたときの上記液晶性モノマーの混合割合(液晶性モノマー:架橋性化合物)は、1:9以上(つまり、架橋性化合物と液晶性モノマーとの合計量に対し、10wt.%以上)であることが好ましく、2:8以上(つまり、20wt.%以上)であることがより好ましく、3:7以上(つまり、30wt.%以上)であることがさらに好ましく、最良は4:6〜9.5:0.5(つまり、40wt.%以上、95wt.%以下)の範囲内である。
上記架橋性化合物と液晶性モノマーとの合計量に占める上記液晶性モノマーの割合が10wt.%未満である場合、分散性と、ナノレベルの粒子径および凝集の制御とを共に満足させることができない場合がある。一方、上記架橋性化合物と液晶性モノマーとの合計量に占める上記液晶性モノマーの割合が10wt.%以上であると、長期にわたってナノオーダーの粒子径を維持することができ、優れた分散安定性を得ることができる。そして、液晶性モノマーの混合割合が増えると、分散安定性が向上する。但し、立体形成させるためには、架橋性化合物が必要である。
また、上記反応、すなわち、上記架橋性化合物(好適には多官能ビニル基含有化合物)とビニル基を有する液晶性モノマーとの反応に際しては、物性を阻害しない範囲内で、必要に応じて、その他のビニル基含有化合物を適量使用してもよい。
上記その他のビニル基含有化合物としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3、4−ジクロルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチルアクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピレル等のフッ化アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;等が挙げられる。上記その他のビニル基含有化合物は、単独で用いてもよく、適宜、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本実施の形態にかかる上記有機微粒子(H)の製造方法、例えば上記架橋性化合物と液晶性モノマーとを共重合させて微粒子化する方法、あるいは、反応性官能基を含む前記重合性化合物と液晶性モノマーとを共重合させて微粒子化する方法、もしくは、反応性官能基を含む前記重合性化合物を重合させて核粒子となる有機微粒子(h)を製造する方法としては、例えば、懸濁重合法、分散重合法、シード重合法、乳化重合法等の重合法;粉砕法;スプレードライヤーを用いた造粒法;等が挙げられる。これらの方法の中でも、特に粒子径が揃ったナノサイズの微粒子が得られ易いことから、分散重合法または乳化重合法が好ましい。
上記分散重合法としては、少なくとも1種の重合性単量体(例えば、上記液晶性モノマー、あるいは、反応性官能基を含む前記重合性化合物)を、この重合性単量体は溶解するが、生成する重合体は溶解しない溶媒中で、必要に応じて高分子安定剤の共存下、重合開始剤を用いて重合させる方法が好適である。なお、重合温度および重合時間等は、使用する単量体や目的とする微粒子等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
また、上記乳化重合法としては、少なくとも1種の重合性単量体(例えば、上記液晶性モノマー、あるいは、反応性官能基を含む前記重合性化合物)を、水または水系媒体において、乳化剤または界面活性剤を用いてエマルジョン化し、必要に応じて高分子安定剤の共存下、重合開始剤を用いて重合させる方法が好適である。なお、重合温度および重合時間等は、使用する単量体や目的とする微粒子等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
なお、上記有機微粒子(H)の製造における重合開始剤等の具体的な重合条件については、後述する無機成分含有微粒子の製造における具体的な重合条件と併せて後述する。
本実施の形態にかかる上記微粒子が有機微粒子(H)の場合、前記した液晶類似構造および/または液晶中間体構造を、微粒子表面、または、微粒子表面および内部に付加し易く、また、液晶性モノマーの割合を任意に制御できることから、上記した液晶類似構造および/または液晶中間体構造の付加量、すなわち、上記有機微粒子(H)における液晶類似構造および/または液晶中間体構造の含有量も容易に調整可能である。このため、液晶中に、微粒子(有機微粒子(H))を安定的に分散させることが可能である。
また、得られる有機微粒子(H)は液晶組成物に近い比重であることから、沈降による物性低下の影響を低減することができるのも大きな特徴である。
次に、本実施の形態にかかる微粒子51の製造方法として、図1(b)に示すように、微粒子51が、コアとなる無機微粒子(つまり、無機成分からなる核粒子51a)の表面に、有機層51bを有し、該有機層51bが、液晶類似構造および/または液晶中間体構造を有する微粒子(無機成分含有微粒子)である場合を例に挙げて説明する。
〔無機成分含有微粒子〕
上記微粒子51が、無機成分含有微粒子である場合、核粒子51aとしての上記無機微粒子の材料としては、例えば、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、酸化鉄、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン、カーボンブラック、金、白金、パラジウム、銀、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉛、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、アンチモン、タングステン、等の金属;これら金属の合金;これら金属の金属酸化物;これら金属の水和金属酸化物;無機顔料、カーボン、セラミック、ガラス、等の粉末あるいは微粒子;等が挙げられる。これら無機材料は、単独で使用してもよく、二種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
また、核粒子51aとしての上記無機微粒子並びにこれら上記無機微粒子に使用される無機材料は、市販品があればそれをそのまま用いてもよく、これらの市販品を予めカップリング剤等の表面処理剤で表面修飾したものを使用してもよい。
特に、ベースとなる上記核粒子51aを構成する樹脂は、液晶材料中への溶解による弊害を考慮すると、架橋性の成分を有していることが好ましく、上記微粒子51を構成する核粒子51aは、架橋構造を有していることが好ましい。
本実施の形態にかかる上記無機成分含有微粒子は、コアとなる無機微粒子の少なくとも表面(表面、または、表面および内部)に、液晶類似構造含有化合物および液晶中間体構造含有化合物のうち少なくとも一方の化合物に由来する構造単位、すなわち、前記基(W)を、結合基(Z)を介して共有結合により化学的に結合させることで得ることができる。
液晶材料中に高分散・高充填可能な目的の無機成分含有微粒子を得るための好ましい方法としては、以下の(i)、(ii)に示す方法が挙げられる。
(i)無機微粒子を、有機溶媒等の溶液中(溶媒中)に分散させ、該無機粒子表面の官能基と、反応性官能基として、上記無機微粒子表面の官能基と反応可能な官能基を有する液晶性モノマーとを化学的に結合させることで、無機微粒子表面を上記液晶性モノマー(液晶類似構造および/または液晶中間体構造)で表面修飾し、コアとなる無機微粒子の表面に、表面層として有機層が形成された無機微粒子(以下、「表面修飾無機微粒子」と記す)を作製する方法。
(ii)(ii−1)有機溶媒等の溶液中(溶媒中)で、架橋性金属アルコキシドと、アルコキシド基をカップリング剤化した液晶性モノマーとを共重合させて微粒子化するか、あるいは、(ii−2)有機溶媒等の溶液中(溶媒中)で、架橋性アルコキシド基を有するカップリング剤化した液晶性モノマーを重合させて微粒子化することにより、少なくとも表面に、上記液晶類似構造および/または液晶中間体構造を有する微粒子(以下、「有機−無機複合微粒子」と記す)を作製する方法。
本実施の形態によれば、このように、無機質からなる無機微粒子の表面に液晶性モノマーを化学的に結合させるか、あるいは、無機微粒子となる無機成分(無機材料)と液晶性モノマーとを共重合させることで、表面が有機層で覆われた、液晶材料中に高分散・高充填可能な目的の無機成分含有微粒子を得ることができる。
上記微粒子51として無機成分含有微粒子を作製する場合においても、上記液晶類似構造含有化合物並びに液晶中間体構造含有化合物、すなわち、前記した基(W)を有する化合物(CW)としては、前記例示の液晶類似構造含有化合物並びに液晶中間体構造含有化合物を用いることができる。
また、上記液晶類似構造含有化合物または液晶中間体構造含有化合物は、一旦、別の化合物と反応させて上記液晶類似構造含有化合物または液晶中間体構造含有化合物が有する官能基を結合基(Z)に置換した後、他の共重合可能な官能基を付与して液晶性モノマーとしてもよい。
本実施の形態によれば、核粒子51aが無機微粒子である場合においても、核粒子51aが有機微粒子である場合と同様に、架橋性化合物により、コア部が架橋構造を有し、かつ、表面が有機層(有機層51b)で被覆された微粒子51を得ることができる。
上記した無機成分含有微粒子の作製において、上記(i)の方法を採用する場合、分散性、高充填性の観点から、上記液晶性モノマーは、前記一般式(2)で示される化合物であることが好ましい。
上記液晶性モノマーにおける特に好ましい反応性官能基としては、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基、ビニル基、および、前記−M(T)3基が挙げられ、−M(T)3基のなかでも、アルコキシド基が好ましい。
なお、上記ビニル基が有する水素原子は炭素数1〜12のアルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
これらの官能基を有する化合物は、重合開始剤、触媒、熱または光重合等の公知の手法により、容易に微粒子化することができる。
また、上記(i)の方法を採用する場合、前記した液晶類似構造含有化合物または液晶中間体構造含有化合物が、その分子中に、無機微粒子と直接反応可能な官能基を有する場合、該液晶類似構造含有化合物および液晶中間体構造含有化合物は、液晶性モノマーとして、上記無機微粒子と直接共重合させてもよい。また、上記無機微粒子を、一旦、予め反応可能な官能基を有するカップリング剤等で表面修飾した後、上述した液晶性モノマーで表面修飾してもよい。特に、無機微粒子は、反応性、効率の観点から、アルコキシド基を有するカップリング剤化した液晶性モノマーを使用することが好ましい。
一方、上記(ii)の方法を採用する場合、分散性、高充填性の観点から、上記したようにアルコキシド基を有するカップリング剤化した液晶性モノマーを用いることが好ましく、金属アルコキシドを適量添加することにより、ナノレベルの液晶性モノマーに被覆された微粒子を得ることができる。
本実施の形態で用いられる上記金属アルコキシドの例としては、例えば、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(O−n−C3H7)4、Si(O−i−C3H7)4、Si(O−n−C4H9)4、Si(O−i−C4H9)4、W(OC2H5)5、Hf(OCH3)4、Hf(OC2H5)4、Hf(O−i−C3H7)4、Sn(OC2H5)4、Sn(O−i−C3H7)4、Sn(O−n−C4H9)4、Ga(OCH3)3、Ga(OC2H5)3、Ga(O−n−C3H7)3、Ga(O−i−C3H7)3、Mo(OC2H5)5、Ta(OCH3)5、Ta(O−i−C3H7)5、Al(OCH3)3、Al(OC2H5)3、Al(O−n−C3H7)3、Al(O−i−C3H7)3、Al(O−n−C4H9)3、Al(O−i−C4H9)3、Mn(O−i−C3H7)2、Fe(OC2H5)3、Fe(O−i−C3H7)3、Fe(O−n−C3H7)3、Y(OCH3)3、Y(OC2H5)3、Y(O−i−C3H7)3、Zr(OCH3)4、Zr(OC2H5)4、Nb(OCH3)5、Nb(O−i−C3H7)5、Nb(O−i−C4H9)5、Sb(OCH3)3、Sc(O−i−C3H7)3、Sc(O−i−C3H7)3、VO(OCH3)3、Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Mg(OCH3)2、Mg(OC2H5)2、Mg(O−i−C3H7)2、Mg(O−n−C3H7)2、Ca(OCH3)2、Ca(OC2H5)2、Ca(O−i−C3H7)2、Ca(O−n−C3H7)2、Sr(OCH3)2、Sr(OC2H5)2、Sr(O−i−C3H7)2、Sr(O−n−C3H7)2、Ba(OCH3)2、Ba(OC2H5)2、Ba(O−i−C3H7)2、Ba(O−n−C3H7)2等が挙げられる。なお、反応性、効率、コスト、多種類という面から、Si、Ti、Alを有する金属アルコキシドがより好ましい。
また、上記反応に際しては、さらに、必要に応じて、無機−有機複合微粒子化前後で、公知の表面処理剤(カップリング処理剤)を適量使用してもよい。つまり、液晶性モノマーを結合させるために、無機微粒子にカップリング処理により官能基を付与し、この官能基と液晶性モノマーとを反応させることにより有機−無機複合微粒子を作製してもよいし、無機−有機複合微粒子とした後に、無機微粒子の未反応の部分を、カップリング処理により被覆してもよい。特に、液晶性モノマーの分子量よりも小さい表面処理剤を使用することで、より分散性を向上させることも可能である。
汎用的な表面処理剤としては、例えば、オレイン酸等の不飽和脂肪酸;オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸カリウム等の不飽和脂肪酸金属塩;脂肪酸エステル;脂肪酸エーテル;界面活性剤;メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、n−オクタデシルメチルジエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニル)エチルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類等のシランカップリング剤;チタネートカップリング剤;アルミニウムカップリング剤;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記無機成分含有微粒子中に占める有機成分の割合、すなわち、上記無機成分含有微粒子において有機成分と無機成分との合計量に占める有機成分の割合は、1.0wt.%以上、60.0wt.%以下であることが好ましく、3.0wt.%以上、50wt.%以下であることがより好ましく、4.0wt.%以上、30wt.%以下であることがさらに好ましく、5.0wt.%以上、15wt.%以下であることが特に好ましい。
上記有機成分の割合が1.0wt.%未満であると、上記無機成分含有微粒子の液晶組成物中での安定化が難しくなる。このため、上記無機成分含有微粒子を液晶組成物中に高充填させるに従い、上記無機成分含有微粒子の凝集を制御することが難しくなり、本発明の透過性の特徴を十分発揮できない場合がある。一方、上記有機成分の割合が60.0wt.%を超えると、無機成分含有微粒子としての特徴が得られにくく、その有用性が少なくなる。
微粒子51が無機成分含有微粒子である場合、液晶類似構造および/または液晶中間体構造を、確実に微粒子51表面に付与することができるとともに、核粒子51aとして用いられる無機微粒子には、汎用的なナノレベルの微粒子の種類が多く、核粒子51a表面から、比較的少ない量で上記有機成分をグラフトすることが可能であり、液晶組成物中に、微粒子を安定的に分散させることができる。これにより、微粒子51を液晶材料に分散させて液晶組成物としたときに、該微粒子51表面に形成される保護コロイド層(吸着層)による直接的な微粒子51同士の接触を回避することができ、また、媒体である液晶材料(液晶化合物)への吸着層(表面層)の溶解性を向上させることで、粒子の安定化を促進させることができる。
本実施の形態にかかる上記有機微粒子(H)並びに上記無機成分含有微粒子は、必要に応じて、開始剤および/または触媒の存在下で、光重合または熱重合により得ることができる。この場合、光重合を採用すれば、成型しながら微粒子51を形成することができる。また、熱重合を採用すれば、均一な微粒子51を合成することができる。
上記光重合時に使用できる光としては、紫外線(UV)、電子線、α線、β線、γ線、可視光線太陽光等が挙げられる。そのなかでも、紫外線、電子線や、可視光線の使用が好ましく、経済的理由から、特に紫外線(紫外光)の使用が推奨される。
上記紫外光の発生光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、エキシマーランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、光重合開始剤として用いられる開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等のケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルメチルケタール;ベンゾイルベンゾエート;α−アシロキシムエステル;チオキサンソン類;等を挙げることができる。
また、必要に応じて用いられるUV増感剤としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
また、熱重合開始剤として用いられる開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス−2−シアノプロパン−1−スルホン酸二ナトリウム等のアゾ系化合物;等の、各種油溶性、水溶性、イオン性の重合開始剤が挙げられる。
上記した各開始剤およびUV増感剤は、各々、単独で用いてもよく、適宜、二種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
上記開始剤の使用量は、得られる微粒子の物性に悪影響を及ぼさなければ、特に限定されるものではないが、通常、重合成分の合計量、すなわち、上記重合反応に用いられる単量体成分の合計量に対して、0.01wt.%〜50wt.%の範囲内で使用される。
また、上記したように、上記重合反応においては、得られる微粒子の用途等に応じて、触媒(反応促進剤)を配合することができる。
上記触媒としては、正触媒であれば特に限定されるものではなく、公知のものから適宜選択して使用することができる。
上記触媒としては、具体的には、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、トリフェニルアミン等の3級アミン類;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム化合物類;トリフェニルホスフィン、トリシクロホスフィン等のホスフィン類;ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム化合物類;2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアルキルマレート、ステアリン酸錫、オクチル酸錫等の有機錫系ウレタン化触媒;有機酸のアルカリ金属塩類;三塩化ホウ素、三弗化ホウ素、四塩化錫、四塩化チタン等の、ルイス酸性を示すハロゲン化物類またはその錯塩類;等の触媒が挙げられる。これら触媒は、単独で用いてもよいし、適宜、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記触媒の使用量は、得られる微粒子の物性に悪影響を及ぼさなければ、特に限定されるものではないが、通常、重合成分の合計量に対して、0.01wt.%〜50wt.%の範囲内、好適には、0.01wt.%〜20wt.%の範囲内で使用される。
また、上記重合反応における重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、前記した各種重合方法を採用することができるが、分散性、粒子径制御の観点から、好ましくは、媒体(溶媒)の存在下で溶液重合を行うことが好ましい。
本実施の形態において使用可能な溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレンブリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の脂肪族または芳香族炭化水素類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、ジメチルエーテル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類;ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル等の硫黄、窒素含有有機化合物類;イオン性液体;液晶等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
特に、有機微粒子(H)は、液晶中で重合を行うと効率良く液晶組成物が得られ、コスト面においても優位である。
液晶化合物(液晶材料)を上記重合反応における溶媒に用いる場合、溶媒として用いることができる液晶化合物の種類は特に限定されるものではなく、何れの液晶化合物も適格な材料として用いることができるが、より好ましい液晶化合物としては、その分子構造中に、−CH2−基、−O−基、−S−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、−C≡C−基、−N=N−基、−N(O)=N−基、または−CO−基を有する液晶化合物;分子末端がハロゲン原子、−C≡C−CN基、−CN基、−OCF3基、または−OCHF2基である液晶化合物;誘電率異方性(Δε)が3以上である液晶化合物;等が挙げられる。これら液晶化合物は、単独で用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して液晶材料(液晶組成物)として用いてもよい。
また、上記重合反応においては、重合方法に応じて、その他の(高分子)分散剤、安定剤、乳化剤(界面活性剤)等を、重合成分の合計質量に対して、0.01wt.%〜50wt.%の範囲内で配合することもできる。
上記分散剤および安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ビニルフェノール−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルフェノール−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリスチレン誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポチエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル誘導体;セルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル等のポリ酢酸ビニル誘導体;ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリ−2−メチル−2−オキサゾリン等の含窒素ポリマー誘導体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル誘導体;ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン誘導体;等の各種疎水性または親水性の分散剤および安定剤が挙げられる。これら分散剤および安定剤は、各々、単独で用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
また、上記乳化剤(界面活性剤)としては、特に限定されるものではないが、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド等のカチオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系乳化剤;等が挙げられる。これら乳化剤(界面活性剤)は、単独で用いてもよく、適宜、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
何れの微粒子51を作製する場合においても、反応温度、反応時間等の条件は特に限定されるものではないが、一般的には、反応温度は室温から200℃の範囲内であり、反応時間は2時間〜48時間の範囲内である。
なお、その他、反応条件も特に限定されないが、反応時間や反応温度(加熱温度)、架橋性化合物や液晶性モノマーの仕込み量、撹拌条件、濃度等の反応条件を調整することで、得られる微粒子51の粒径(粒度)を調整(制御)することができる。
本実施の形態にかかる上記微粒子51は、何れも、液晶材料(液晶化合物)に極めて高濃度に分散させることができ、これにより容易に液晶物性値を変化させることができる。
例えば、上記微粒子51を液晶材料に分散させることで、上記液晶材料のネマチック−等方相転移温度(NI点)を変化させることなく、屈折率異方性(Δn)を変化させることができる。また、本実施の形態によれば、プロセス条件により、ナノサイズの微粒子51を容易に作成することができ、かつ、液晶材料に高濃度分散させることができるため、その表面に液晶分子がランダム配向した、粒子径がナノメーターサイズの微小ドメインを複数形成させることができる。この結果、本実施の形態によれば、可視光に対して透明な等方性ネマチック液晶を実現することができる。
一般的に、溶液中での微粒子分散は、次のように考えることができる。図2(a)〜図2(d)は、媒体中での微粒子の凝集、分散を説明する図である。
一般的に、溶液中での微粒子表面の電荷は、その周囲の境界域におけるイオンの分布に影響し、微粒子表面に近い領域の対イオン(微粒子表面の電化と逆の極性のイオン)の濃度に影響を及ぼす。溶液中での微粒子の周囲の液体の層を2層に分けて考えると、図2(a)に示すように、表面にプラス(+)の電荷を帯びた微粒子101の周りには、微粒子101とともに動く液体の層(いわゆるStern層と称される内層102)と、溶液からなる外層103とからなる電気二重層が形成されている。この時、この電気二重層の最外殻の電位はゼロであり、内側に入る程、プラス(+)が強くなっていく。
この図2(a)に示すような2つの微粒子101・101が、図2(b)に示すように互いに近づいていくと、次第にファン・デル・ワールス(van der Waals)力が大きくなる。
そして、図2(c)に示すように、両微粒子101・101における互いの電気二重層が接した時から、プラス(+)電荷同士での反発が始まる。両微粒子101・101がさらに近づくと、より一層、電気的な反発が強くなるが、この電気的な反発よりもファン・デル・ワールス(van der Waals)力が勝ると、図2(d)に示すように微粒子101・101の凝集が起こる。そして、ファン・デル・ワールス力よりも電気的な反発力が勝ると、微粒子101・101は離れ、安定に分散したコロイド状態が得られる。
従って、液晶中での微粒子の安定した分散を達成するためには、静電気力による反発や、該微粒子に配列している液晶分子からなる層(吸着層、表面層)による立体障害の増大により斥力を増す必要がある。
従来、粒子径が1nm〜100nm程度のいわゆるナノ粒子と称される微粒子を液晶材料中に分散させる方法としては、例えば、(1)逆ミセル法、(2)ナノプール内での合成、(3)気相重合あるいは液相重合、(4)二次元ゾル−ゲル法、(5)ミセルテンプレート法、(6)中間層マイクロエマルジョン法等のように、合成と分散とを同時に行う方法の他、(7)微粒子表面の改質、(8)連続気泡を有する多孔質無機媒体やポリマーネットワークへの担持、(9)マイクロカプセル化、あるいは上記(1)〜(9)の方法の組み合わせ等が知られている。
液晶材料中に分散する微粒子に求められる要件としては、光学的性質のほか、液晶の配列を乱さないことや、液晶材料(液晶組成物)の抵抗(電圧保持率)を低下させないことが挙げられる。そのためには、凝集エネルギー密度の平方根で定義される溶解度パラメータSP(Solubility parameter)が、用いる液晶材料と同程度の微粒子(微粒子表面)を作り出す必要がある。
このような意味から、これまで、微粒子表面にシランカップリング剤等で液晶化合物と類似の構造を有する官能基を付けることが取り組まれてきた。しかしながら、実際の系では官能基による化学的な相互作用も無視できないため、溶解度パラメータの最適化だけでは充分な分散ができなかった。
これに対し、本実施の形態によれば、前記したように、上記微粒子51の少なくとも表層部に、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する基(W)が、結合基(Z)を介して共有結合していることで、液晶材料中への微粒子51の分散性を、例えば従来比10倍以上に高めることができる。
このように、本実施の形態にかかる微粒子51は、液晶材料(液晶化合物)に対する分散性が高く、その実用的価値は極めて高い。
特に、上記結合基(Z)として、前記したように、窒素原子および酸素原子のうち少なくとも一方を含む極性結合基が導入されている場合、上記液晶材料(液晶化合物)に対する微粒子51の分散性は、極めて高いものとなる。該微粒子51が、何故、液晶に良く分散するかは定かではないが、上記したように、結合基(Z)として、窒素原子および酸素原子のうち少なくとも一方を含む極性結合基を導入することにより、微粒子間の斥力が増すものと推測される。また、前記一般式(1)で示される基(W)が微粒子51表面に多く存在している場合、これも、液晶材料(液晶化合物)に対する微粒子51の分散性を向上させる一つの要因となると考えられる。
本実施の形態にかかる上記微粒子51が、前記した表面構造、好適には前記一般式(1)で示される基(W)を表層部に有していることで、下記に述べる凝集防止に大きく寄与する。
微粒子の凝集を防止するには、例えば、
(A1)前記した電気二重層による静電反発を利用すること、
(A2)保護コロイド層(吸着層)により直接的な微粒子同士の接触を回避すること、
(A3)媒体である液晶材料への微粒子表面の吸着層(表面層)の溶解性を向上させることで、媒体中での微粒子の安定化を促進させること、
が必要である。
一般的に、微粒子表面への付着水分、水素結合、ファン・デル・ワールス力等による微粒子の凝集力を回避するため、微粒子を有機物と混合する場合は、酸化物表面の親油化が必要となる。
しかしながら、液晶材料の場合は、通常の等方性媒体とは異なり、ポリマー類を溶解し難い性質を有している(つまり、貧溶媒である)ため、凝集傾向が高い。このため、液晶材料中に微粒子を高充填で均一に分散させるためには、従来よりもさらに上記(A2)・(A3)に示す性能を強化する必要がある。
ここで、液晶材料中での本実施の形態にかかる微粒子51の凝集、分散について、図2(a)を参照して以下に説明する。
本実施の形態にかかる微粒子51も含め、一般的に、微粒子(微粒子51・101)と共に動く液体層(内層52・102)と溶液からなる外層(外層53・103)との境界層は、滑り面(流体力学的ずれ表面)と称され、この滑り面に存在する電位がゼータ電位となる。この電位が大きくなり、ファン・デル・ワールス力より勝れば、微粒子51・101は、安定的に分散する。この時、電気二重層は、通常、大きくなると考えられる。しかしながら、電気二重層は、媒体により変化し、イオンとして存在し易いか否かが問題となる。例えば、ナノシリカでも、水や他の極性溶媒であれば、pHを変化させることで、電気二重層を変化させることが可能であり、ナノ分散させることができる。
一般的に、トルエンや他の無極性溶媒等では、イオンとしての存在自体が難しくなるため、電気二重層の構造を上手く作り出すことができない。このような状態では、前記したように、ファン・デル・ワールス力が、微粒子同士の電気的な反発よりも勝り、この結果、微粒子が凝集する。このとき、粒子径が小さければ小さい程、凝集力が増幅される。
液晶も水と馴染まないことから、無極性溶媒と同様の傾向を示す。したがって、上記凝集を防止するためには、ファン・デル・ワールス力に負けない力(ファン・デル・ワールス力と逆の力)が必要になる。
本実施の形態において、この手助けをしているのが、前記した液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する基(W)である。そして、微粒子51・51同士が再度引き寄せられようとする力に負けないブロッキング力(立体障害)を上記微粒子51に与えているのが、液晶性モノマーの構造である。
つまり、本実施の形態によれば、前記(A2)に示したように微粒子51・51同士の接触を回避すべく、微粒子51に立体的障害を与えている。また、本実施の形態によれば、前記(A3)に示す性能を向上させるために、上記微粒子51の表層部に、使用する液晶材料に溶解し易い構造として、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を導入している。
また、ナノレベルの微粒子では、単分散化を維持するために、安定化を促進させ、立体的障害を与えることで接触を回避し、かつ表面電荷による反発を与えることが有効である。本実施の形態では、この液晶材料中での安定化のための安定化剤として作用するものが、上記液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造(基(W))であり、立体障害を与えるものが、結合基(Z)を含む、上記液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する化合物基(−Z−W基)であり、電荷による反発の機能を有するものが、前記した極性結合基である。
このように、本実施の形態にかかる微粒子51は、前記したように、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する基(W)が、結合基(Z)を介して当該微粒子51の表層部、より具体的には、前記した核粒子51aの表面に共有結合していることで、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する基(W)が、液晶材料に溶解し、当該微粒子51が、上記液晶材料に安定して分散する。
すなわち、本実施の形態では、上記微粒子51の電気二重層の大きさ(広がり)は定かではないが、核粒子51aの表面から結合基(Z)のあたりが、液晶材料中での上記微粒子51の表面層になると考えられ、該液晶材料中では、上記微粒子51表面に結合している液晶性モノマーの部分が、理想的な保護コロイド層を形成していると考えられる。
また、本実施の形態によれば、上記微粒子51は、上記基(W)が、結合基(Z)を介して当該微粒子51の表層部に共有結合していることで、上記基(W)は、上記表層部に強固に結合している。このため、上記基(W)が物理的負荷で剥がれることがなく、液晶材料中での安定した微粒子51の分散を実現することができるとともに、例えば、上記微粒子51を含む液晶組成物を液晶表示素子に使用した場合に、上記基(W)が、上記液晶表示素子内で剥がれ、不純物として悪影響を及ぼすことがない。なお、上記基(W)が、上記液晶表示素子内で剥がれて凝集すると、高分散、高充填化が達成できなくなるので、望ましくない。
また、本実施の形態において、表面の電気的な反発をできるだけ強化・維持するためには、前記したように、上記結合基(Z)が上記したように極性を有する結合基(Z)、つまり、極性結合基であることが好ましい。
極性を有する結合基(Z)は、上記微粒子51が無機成分含有微粒子(特に、シリカ等のように、表面がマイナス(−)電荷を帯び易いもの)である場合、微粒子51表面に引き寄せられ易い。特に、上記結合基(Z)が、尿素結合、アミド結合、ウレタン結合のように窒素原子による結合をもたらすものである場合、特に微粒子51表面に引き寄せられ易く、微粒子51、つまり、上記無機成分含有微粒子の表面処理量を増加させる作用を奏する。よって、極性を有する結合基(Z)を、微粒子51表面に多く有している(核粒子51a表面に多く結合させる)ことで、立体的障害が増し、微粒子51同士の接触をさらに回避し、上記微粒子51の分散性を、より一層向上させることができる。
また、上記微粒子51の液晶材料への分散の安定化のためには、引力と斥力とのバランス、具体的には、上記結合基(Z)による電気的反発と、液晶類似構造および/または液晶中間体構造(液晶類似骨格)による液晶材料に対する相溶性向上および微粒子間接触の回避とのバランスが保たれていることが望ましく、ウレタン結合、尿素結合、アミド結合、エステル結合、チオウレタン結合、およびチオエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合を含む基(すなわち、ウレタン結合、尿素結合、アミド結合、エステル結合、チオウレタン結合、チオエステル結合、またはこれら結合を少なくとも一つ含む2価の有機基)は、これらのバランスを保つ上で、非常に有効である。
本実施の形態において、上記基(W)を有する化合物(CW)(例えば前記一般式(1)で示される基(W)を有する化合物)は、高分子化した化合物であり、使用液晶に溶解する成分であることが好ましく、その分子量は、200〜10,000の範囲内であることが好ましく、250〜2000の範囲内であることがより好ましく、300〜1000の範囲内であることが特に好ましい。
上記化合物(CW)の分子量が200未満の場合、得られる微粒子51の表面の立体的障害が少なくなり、安定的に分散できない場合がある。また、上記化合物(CW)の分子両が10,000を超える場合、液晶材料への溶解性が低下するとともに、得られる液晶組成物の粘度が上昇するおそれがあるため、物性的にも好ましいとは言えない。
また、上記微粒子51の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、上記微粒子51を、液晶材料に分散させて液晶表示素子における表示媒体(光学変調層)に使用する場合、上記微粒子51の平均粒子径は、1nm、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上、50nm以下である。
上記微粒子51の平均粒子径が1nm未満であると、目的の液晶のドメイン形成が難しく、表面に液晶分子がランダム配向した微小ドメインを複数形成させることが困難になる場合がある。
一方、上記微粒子51の平均粒子径が100nmを超えると、可視光に対して透明性を維持できなくなり、目的とする液晶組成物の特性が得られなくなるおそれがある。
一般的に、溶液中に分散された微粒子は、その粒径が光の波長よりも大きい時はミュー散乱を起こす。一方、微粒子の粒径が光の波長よりも小さいときにはレーリー散乱を起こし、その時の散乱係数は、粒径の5乗に比例し、入射光波長の4乗に反比例する。すなわち、溶液中に分散された微粒子の粒径が大きければ大きいほど、また、光の波長が短ければ短いほど、光は散乱される。このことは、溶液中の微粒子について当てはまることは勿論であるが、液晶層(光学変調層)中に形成される微小ドメインについても当てはまる。
図3は、可視光下限である380nmの光に対する、散乱係数と微粒子径(液晶の微小ドメインに置き換えてもよい)との関係を示すグラフである。
図3に示す結果から、微粒子径が40nm以下になると380nmの光は殆ど散乱せず、実質上、透明になることが判る。なお、380nmよりも長波長の光に対しても透明であることは言うまでもない。なお、上記測定には、微粒子51として酸化珪素(SiO2)からなる微粒子を使用し、該微粒子をイソプロピルアルコール中に分散させて用いたが、上記の結果は、上記微粒子にのみ特有のものではなく、微粒子の種類を変更しても、同様の結果が得られるものである。
また、ネマチック液晶中に微粒子51を分散させ、系全体を透明にするため、いわゆる等方性ネマチックを実現するためには、微粒子51を核とした微小ドメイン、あるいは隣接する微粒子51・51間に形成される微小ドメインのサイズについても、微粒子径同様、40nm以下にすることが望ましい。
図4は、液晶材料中に均一分散された微粒子51・51間の距離をパラメータとして、微粒子51の微粒子径と分散濃度との関係を示すグラフである。
図4に示す結果から、微粒子径が小さければ小さいほど、液晶材料中に分散する微粒子51の割合を減らすことができることが判る。
本実施の形態によれば、1nm以下の微粒子51も製造可能である。しかしながら、粒径が小さくなればなるほど微粒子51が凝集し易くなるため、実用的には、3nm以上、40nm以下の粒径を有する微粒子51が好ましい。言い換えれば、互いに隣接する上記微粒子51・51間の距離の平均値は、3nm以上、40nm未満であることが好ましい。
〔液晶組成物〕
本実施の形態にかかる液晶組成物は、上記微粒子51と、少なくとも一種の液晶化合物とを含んでいる。本実施の形態にかかる液晶組成物の一例としては、上記微粒子51と、少なくとも一種の液晶化合物とからなる液晶組成物が挙げられる。
上記液晶組成物に用いられる液晶化合物としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の液晶化合物を用いることができる。
本実施の形態で用いられる上記液晶性モノマーは、該液晶性モノマーが、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有していることから、上記液晶組成物に使用される母液晶としての液晶材料(液晶化合物)との相溶性に優れている。
上記微粒子51は、前記したように、その表面(表層部)に、この液晶性モノマーに由来する液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する基(W)を備えている。このため、上記微粒子51は、前記したように、該微粒子51の表層部の基(W)が、上記母液晶としての液晶材料(液晶化合物)に溶解し、該液晶材料中で安定的に分散する。
勿論、個々の液晶化合物に対する溶解性の優劣はある。しかしながら、ネマチック液晶は他のネマチック液晶に溶解することから、その組み合わせは、限定されない。但し、母液晶と類似した骨格の液晶性モノマーを使用することや、母液晶に溶解する液晶性モノマーを使用することがより好ましいことは言うまでもない。
本実施の形態にかかる上記微粒子51は、液晶に対して、高分散かつ高充填可能であるという特徴を有している。本実施の形態にかかる上記液晶組成物における上記微粒子51の含有率、つまり、上記微粒子51と液晶化合物との合計量に占める上記微粒子51の割合は、特に限定されるものではないが、上記した微粒子51の物性効果を十分に発揮させる上で、5wt.%以上、70wt.%以下であることが好ましく、10wt.%以上、60wt.%以下であることがより好ましく、20wt.%以上、50wt.%以下であることがさらに好ましい。
上記微粒子51の混合割合が5wt.%未満であると、目的の液晶のドメイン形成が不十分であり、超高速、広視野角の特徴を十分発揮できない場合がある。一方、上記微粒子51の混合割合が70wt.%を超えると、高粘度化してしまい、上記液晶組成物を、液晶表示素子用の液晶組成物として使用する場合、液晶表示素子内部への注入が困難になる可能性がある。
また、本実施の形態によれば、得られる液晶組成物内のドメインの大きさを安定させるために、使用する液晶化合物に溶解可能な液晶類似骨格を有した高分子化合物を、上記液晶組成物の物性が損なわれない範囲内で、適量添加しても構わない。これら液晶化合物に溶解可能な液晶類似骨格は、微粒子51表面に滞在する有機成分と同一骨格であることが望ましい。
〔液晶表示素子〕
本実施の形態にかかる上記液晶組成物は、例えば液晶表示素子に好適に用いることができる。本実施の形態では、本実施の形態にかかる上記微粒子の利用用途の一つとして、上記微粒子を含む上記液晶組成物を表示媒体として用いた液晶表示素子を例に挙げて説明するものとする。
以下に、本実施の形態にかかる液晶表示素子の構成の一例について簡単に説明する。本実施の形態にかかる液晶表示素子(液晶セル)のセル構造としては、従来公知の種々のセル構造を採用することができ、特に限定されるものではない。
図5は、本実施の形態にかかる一液晶表示素子の要部の概略構成を示す断面図である。
図5に示す液晶表示素子10は、TN型の液晶表示素子であり、少なくとも一方が透明な一対の基板(以下、各々、「対向基板11」、「画素基板12」と称する)間に、スペーサ5を介して、液晶層(光学変調層)として、TN型の液晶組成物からなる層13が挟持された構造を有している。
上記対向基板11は、ガラス基板等の透明な基板2の一方の面に偏光板1が設けられているとともに、他方の面に、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明電極からなる対向電極3が設けられている構造を有している。なお、上記対向電極3上には、ラビング処理が施された配向膜4(誘電体薄膜)が、必要に応じて設けられている。
一方、上記画素基板12は、ガラス基板等の透明な基板8の一方の面に偏光板9が設けられているとともに、他方の面に、上記液晶組成物からなる層13に電圧を印加するためのITO等の透明電極からなる画素電極7が設けられている構造を有している。該画素電極7においても、画素電極7上には、ラビング処理が施された配向膜6(誘電体薄膜)が、必要に応じて設けられている。
なお、本実施の形態において、上記配向膜4・6(配向補助材、誘電体薄膜)は、水平配向膜であってもよく、垂直配向膜であってもよい。水平配向膜および垂直配向膜は、例えば周囲温度が低く、電源投入時に、上記液晶組成物からなる層13中の液晶材料CLが、本来駆動されるべき温度に達しておらず、液晶材料CLに用いられる液晶性化合物の物理的状態が、本来の駆動時の状態と異なっている場合であっても、上記液晶材料CL中の液晶分子を配向させることができるので、上記液晶性化合物(物理的状態が、本来の駆動時の状態と異なる液晶性化合物)による光学的寄与を消失させることができ、上記表示素子の温度が上昇するまでにおいても、良好な表示を実現することが可能になる。
また、上記配向膜4・6として水平配向膜を用いることで、上記液晶組成物からなる層23における上記配向膜4・6との界面付近における液晶分子の配向方向を、基板面内方向に規定することができる。このため、上記の構成によれば、上記液晶組成物からなる層13に液晶相(すなわちネマチック液晶相)を発現させた状態において、上記液晶組成物からなる層13中の液晶材料CLを構成する液晶分子を、基板面内方向に配向させることができる。これにより、電圧印加時における光学的異方性の発現を、確実かつ効率良く促進させることができる。特に、水平配向膜は、上記誘電率異方性(Δε)が負の液晶材料CL(液晶化合物)を用いた場合に、より効果的である。
本実施の形態によれば、例えば、上記液晶組成物中の微粒子51の含有量を変更することで、上記液晶組成物からなる層13の実効的屈折率を任意に変化させることができる。そして、本実施の形態にかかる上記液晶表示素子10は、上記したように、上記液晶組成物中に、従来よりも多量の液晶性モノマーを混合・分散させることができるので、その利用価値が極めて大きい。
次に、以下に、本実施の形態にかかる液晶表示素子の構成の一例について簡単に説明する。本実施の形態にかかる液晶表示素子(液晶セル)のセル構造としては、従来公知の種々のセル構造を採用することができ、特に限定されるものではない。
また、図6は、本実施の形態にかかる他の液晶表示素子の要部の概略構成を示す断面図である。
図6に示す液晶表示素子20は、IPS型の液晶表示素子であり、図6に示すように、少なくとも一方が透明な一対の基板(以下、各々、「対向基板21」、「画素基板22」と称する)間に、スペーサ26を介して、液晶層(光学変調層)として、液晶組成物からなる層23が挟持された構造を有している。
上記対向基板21は、ガラス基板等の透明な基板25の一方の面に偏光板24が形成された構成を有し、他方の面には、ラビング処理が施された配向膜15(誘電体薄膜)が必要に応じて形成された構造を有している。
一方、上記画素基板22は、ガラス基板等の透明な基板28の一方の面に偏光板29が設けられ、他方の面に、上記液晶組成物からなる層23に電圧を印加するためのITO等の透明電極からなる櫛歯電極27が設けられている構造を有している。また、上記櫛歯電極27を有する基板28上には、ラビング処理が施された配向膜16(誘電体薄膜)が、必要に応じて設けられている。上記液晶表示素子20において、原理的には配向膜は不要であり、配向膜を設けることで、駆動電圧をアップさせることにも繋がるが、表示品位向上の観点から、配向膜を使用する場合がある。
図7は、本実施の形態にかかる液晶表示素子20における上記櫛歯電極27による電界印加方向と上記偏光板24・29の偏光軸方向(吸収軸方向)との関係を示す図である。
図7に示すように、両基板25・28に各々設けられた偏光板24・29は、互いの偏光軸24a・29aが直交するように配設されている。また、各偏光板24・29における偏光軸24a・29aと上記櫛歯電極27の電極伸長方向(櫛歯部分の伸長方向)とは45度の角度をなすように形成されている。このため、各偏光板24・29における偏光軸24a・29aは、上記櫛歯電極27の電界印加方向に対して、45度の角度をなすように形成されている。
なお、本実施の形態において、上記配向膜15・16(配向補助材、誘電体薄膜)は、水平配向膜であってもよく、垂直配向膜であってもよい。水平配向膜および垂直配向膜は、例えば周囲温度が低く、電源投入時に、上記液晶組成物からなる層23中の液晶材料CLが、本来駆動されるべき温度に達しておらず、液晶材料CLに用いられる液晶性化合物の物理的状態が、本来の駆動時の状態と異なっている場合であっても、上記液晶材料CL中の液晶分子を配向させることができるので、上記液晶性化合物(物理的状態が、本来の駆動時の状態と異なる液晶性化合物)による光学的寄与を消失させることができ、上記表示素子の温度が上昇するまでにおいても、良好な表示を実現することが可能になる。
また、上記配向膜15・16として水平配向膜を用いることで、上記液晶組成物からなる層23における上記配向膜15・16との界面付近における液晶分子の配向方向を、基板面内方向に規定することができる。このため、上記の構成によれば、上記液晶組成物からなる層23に液晶相(すなわちネマチック液晶相)を発現させた状態において、上記液晶組成物からなる層23中の液晶材料CLを構成する液晶分子を、基板面内方向に配向させることができる。これにより、電圧印加時における光学的異方性の発現を、確実かつ効率良く促進させることができる。特に、水平配向膜は、上記誘電率異方性(Δε)が負の液晶材料CL(液晶化合物)を用いた場合に、より効果的である。
なお、図6に示す液晶表示素子20においては、画素基板22に櫛歯電極27を設けた場合(つまり、基板28上に櫛歯電極を設けた場合)を例に挙げて説明したが、本実施の形態にかかる液晶表示素子はこれに限定されるものではなく、少なくとも一方の基板に櫛歯電極27が形成されている構成を有していてもよい。例えば、上記対向基板21および画素基板22の各々に、櫛歯電極27が形成されている構成を有していてもよい。
また、図8は、本実施の形態にかかるさらに他の液晶表示素子の要部の概略構成を示す断面図である。
図8に示す液晶表示素子30は、垂直配向型のアクティブマトリクス型の液晶表示素子であり、図8に示すように、少なくとも一方が透明な一対の基板(以下、各々「カラーフィルタ基板31」、「アレイ基板32」と称する)間に、スペーサ33を介して、液晶層(光学変調層)として、垂直配向型の液晶組成物からなる層34が挟持された構造を有している。
上記カラーフィルタ基板31は、ガラス基板等の透明な基板35の一方の面に偏光板36が設けられ、他方の面に、カラーフィルタ37およびブラックマトリックス38を介して、ITO等の透明電極からなる対向電極39が設けられている構造を有している。また、上記対向電極39上には、該対向電極39を覆うように、ラビング処理が施された配向膜40(誘電体薄膜)が、必要に応じて設けられている。
一方、上記アレイ基板32は、ガラス基板等の透明な基板41の一方の面に偏光板46が設けられ、他方の面に、マトリクス状に配置され、液晶組成物からなる層34に電圧を印加するためのITOからなる画素電極43と、該画素電極43を駆動するためのアクティブ素子であるTFT(薄膜トランジスタ)素子44と、ソース配線45とが設けられている構造を有している。また、上記アレイ基板32表面には、これら画素電極43、TFT素子44、ソース配線45を覆うように、ラビング処理が施された配向膜40(誘電体薄膜)が、必要に応じて設けられている。
また、上記カラーフィルタ基板31とアレイ基板32との対向面には、スペーサ33が配置されている。さらに、上記カラーフィルタ基板31とアレイ基板32との対向部分の端部には、ガラスビーズ47とシール材48とが、上記液晶組成物からなる層34を封止するために設けられている。
さらに、上記アレイ基板32の透明な基板41の端部には、画素電極43を駆動するための駆動回路(図示せず)を実装させるための実装端子49が設けられている。
このように、本実施の形態にかかる液晶表示素子30は、駆動回路とともに液晶表示装置に配されて用いられる。勿論、前記した液晶表示素子10および液晶表示素子20も同様である。
すなわち、本実施の形態にかかる液晶表示装置は、このように、例えば、画素がマトリクス状に配された上記した各液晶表示素子と、駆動回路としてのソースドライバおよびゲートドライバと、電源回路等とを備えている。
なお、上記アクティブ素子としては、TFTに限定されるものではなく、例えばFET(電界効果型トランジスタ)等を用いることもできる。
上記したように、本実施の形態にかかる液晶組成物は、TNモ−ドや、STNモード、IPSモード、VAモード等、種々の表示方式を用いた従来公知の液晶表示素子において、その光学変調に好適に用いることができる。
本実施の形態にかかる微粒子51は、前記したように、液晶中に高密度(高濃度)分散させることができるため、液晶温度範囲(MR)、屈折率異方性(Δn)、誘電率異方性(Δε)、粘性(η)、弾性定数(k11,k22,k33)等の液晶材料に求められる各種液晶物性値を、ネマチック−等方相転移温度(NI点)や電圧保持率(VHR)を低下させることなく調整することができる。
特に、二次の電気光学効果(いわゆるカー効果)を利用した液晶表示素子は従来公知ではあるが、ネマチック液晶相の幅広い温度範囲で上記効果を発現させるためには、ナノサイズの微粒子を高密度に分散させることが必要であるのに対し、従来、液晶相での微粒子の分散性は極めて低く、このような液晶表示素子の実用化には至っていない。
これに対し、本実施の形態によれば、上記液晶組成物からなる層13が含有する微粒子として、本実施の形態にかかる微粒子51を用いることで、上記液晶組成物からなる層13に使用されるネマチック液晶(液晶材料CL)中に、微粒子(微粒子51)を高分散、高充填することが可能であり、これにより、はじめて微粒子分散型カー効果デバイスの実用化が可能となる。
なお、カー効果は、入射光に対して透明な媒質中で観測される。このため、カー効果を示す物質は、透明媒質として用いられる。通常、液晶性物質(液晶化合物)は、温度上昇に伴って、短距離秩序を持った液晶相から、分子レベルでランダムな配向を有する等方相に移行する。つまり、液晶性物質のカー効果は、ネマチック相ではなく、液晶相−等方相転移温度以上の等方相状態の液体に見られる現象であり、この場合、上記液晶性物質は、透明な誘電性液体として使用される。
以上のように、本実施の形態にかかる液晶表示素子は、対向して設けられた一対の基板間に、上記液晶組成物からなる層が挟持されている構成を有している。上記液晶表示素子は、上記一対の基板のうち少なくとも一方の基板に電極が配設されているとともに、少なくとも一方の基板の表面に配向膜が配設されている構成を有していてもよい。上記配向膜は、水平配向膜であってよいし、垂直配向膜であってもよい。なお、上記液晶表示素子が、上記一対の基板のうち少なくとも一方の基板上に櫛歯電極を備え、かつ、上記基板上に配向膜を配設する場合、配向膜は、少なくとも電極間(櫛歯電極における各電極間)に配設される。勿論、上記配向膜は、基板上部全面に配設されていても構わない。
〔上記微粒子のその他の利用〕
また、上記微粒子51は、上記したように、液晶中に高密度(高濃度)分散させることができるため、例えば、(1)微粒子による光の散乱・透過の制御、(2)着色微粒子による色表示(電気泳動法)、(3)誘電率・抵抗値制御による、液晶層への実効印加電圧増大、(4)強誘電性液晶特許によく見られるようなイオン性不純物の捕捉等にも有効である。
さらに、本実施の形態にかる上記微粒子51は、前記したように、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する基(W)を表層部に備え、かつ、該基(W)が微粒子表面に、結合基(Z)を介した共有結合により強固に固定されていることで機械的物性にも優れていることから、上記した以外にも、種々の用途に好適に用いることができる。
特に、液晶表示性能の向上に当たっては、各種の光制御板が用いられることがあり、この光制御板には光学的に等方的な性質が求められるが、押し出し成型、キャスト等の製造プロセスでは、延伸作用により複屈折性が発現し、例えば透過偏光の偏光状態が変化してしまう等の問題を引き起こす。しかしながら、本実施の形態によれば、上記微粒子51を、上記光制御板に混入することで、これら製造プロセスに起因する複屈折性を解消することができる。したがって、上記微粒子51を、上記光制御板に混入することで、透過偏光の偏光状態の変化を防止することができ、液晶表示性能を向上させることができる。よって、上記微粒子51は、液晶表示素子の光学変調層や光制御板の材料等、液晶表示素子における各種用途に特に好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例および比較例に記載の各種物性等は、以下の方法で測定した。
(a)分散溶液中における微粒子の平均粒子径(分散粒子平均径)
微粒子を、測定可能な濃度になるように、和光純薬工業株式会社製のTHF(テトラヒドロフラン)で希釈し、日機装株式会社製の粒度分布計マイクロトラック「UPA−EX150」(製品番号)を用いて測定した。
(b)表面カバレッジの測定
微粒子並びに該微粒子における核粒子に用いた処理前のシリカを、SII社製の示差熱熱重量同時測定装置「EXSTAR6000 TG/DTA6200」(製品番号)を使用して500℃まで10℃/1minで昇温した時の、上記微粒子の重量減少と、核粒子に用いた処理前のシリカの重量減少との差(すなわち、無機微粒子を覆っている有機表面層の重量%)を、表面カバレッジと規定した。
(c)構造解析
赤外吸収スペクトル(IR)の測定には、島津製作所製「FTIR−8900」を使用した。また、核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定には、日本電子株式会社製の「JNM−AT400」を使用した。
(d)液晶組成物中の微粒子の分散状態
微粒子を、(I)液晶(液晶化合物)に混合・分散した直後、並びに、(II)液晶(液晶化合物)に混合・分散させてから40℃にて1000時間経過した時の、各々のタイミングにおける上記微粒子の平均粒子径および粒度分布並びに外観から評価した。上記(I)のタイミングと(II)のタイミングとで、上記微粒子の平均粒子径、粒度分布、および外観に変化がない場合を「◎」とし、ほぼ同程度の粒度分布が得られる場合を「〇」とし、凝集による粒度分布のピークの山がややシフトする場合を「△」とし、上記微粒子が液晶相と分離(沈降)した場合を「×」とした。なお、以降の説明においては、説明の便宜上、上記(I)のタイミングにおける上記微粒子の平均粒子径を、「分散直後粒子径」と記す。また、上記(II)のタイミングにおける上記微粒子の平均粒子径を、「1000時間経過時粒子径」と記す。
〔実施例1〕
(表面修飾無機微粒子の作製)
温度計および攪拌装置等を備えた反応容器に、p−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール(関東化学株式会社製)16.0gと、6−クロロ−1−ヘキサノール(アルドリッチ社製)10.4gとを仕込んで加熱溶解させた。次いで、上記反応容器中に、10Nの水酸化カリウム水溶液30mlを添加して120℃で3時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を酢酸エチルで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、18.2gの反応生成物を得た。
以上のようにして得られた反応生成物について、1H−NMRおよび赤外吸収スペクトル(IR)を測定することにより、物質の同定を行った。この結果、上記反応生成物が、下記構造式(70)
で示される化合物(m1)(収率81.2%)であることを確認した。上記反応生成物の1H−NMRチャートを図12に、IRスペクトルを図13にそれぞれ示す。
次に、このようにして得られた化合物(m1)5.19gと、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(アヅマックス株式会社製)3.08gとを反応容器に仕込み、60℃で10時間反応させることにより、下記構造式(71)
で示される液晶性モノマー(以下、「液晶性モノマー(M1)」と記す)を得た。
得られた液晶性モノマー(M1)についてIRを測定したところ、2300cm−1付近のイソシアネート結合のピークは消失し、1710cm−1付近にウレタン結合のピークを確認した。得られた液晶性モノマー(M1)は、25℃において液体であった。得られた液晶性モノマー(M1)のIRスペクトルを図14に示す。
次いで、このようにして得られた液晶性モノマー(M1)3.0gと、テトラヒドロフラン(THF)450mlとを反応容器に仕込み、上記液晶性モノマー(M1)をTHFに溶解させた後、上記反応容器内に、メタノールシリカゾル(日産化学工業株式会社製、粒径10nm〜20nm)50gを加えて60℃で12時間反応させた。
反応終了後、上記反応容器内の反応溶液250mlを濃縮し、残存溶液を、12000rpmで遠心分離した。続いて、得られた沈殿物をメタノールで十分に洗浄することにより、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P1)を得た。前述の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P1)の表面カバレッジは5.8%であった。また、上記表面修飾無機粒子(P1)のIRを測定したところ、1700cm−1付近に、ウレタン結合のピークを確認した。
本発明にかかる上記表面修飾無機粒子(P1)のIRスペクトルを図15に示す。また、比較のために、上記液晶性モノマー(M1)による表面修飾を行っていない、未処理の上記無機微粒子(すなわち、上記した日産化学工業株式会社製のメタノールシリカゾル)のIRスペクトルを図16に示す。
次いで、上記表面修飾無機粒子(P1)を、メルク社製液晶「ZLI−2293」(商品名)に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合し、超音波ホモジナイザーにて分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C1)を得た。
この液晶組成物(C1)中の表面修飾無機粒子(P1)の分散状態を前述の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(P1)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(C1)中の表面修飾無機粒子(P1)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔実施例2〕
(表面修飾無機微粒子の作製)
実施例1において、液晶性モノマー(M1)3.0gをTHF450mlに溶解させ、さらに、メタノールシリカゾル(日産化学工業株式会社製、粒径10nm〜20nm)50gを加えて60℃で12時間反応させた後、さらに、メトキシトリメチルシラン(信越化学工業株式会社製)3.0gを添加し、60℃で12時間反応させた以外は、実施例1と同じ条件で実施例1と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P2)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P2)の表面カバレッジは6.3%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(P2)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C2)を得た。
この液晶組成物(C2)中の表面修飾無機粒子(P2)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(P2)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(C2)中の表面修飾無機粒子(P2)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔実施例3〕
(表面修飾無機微粒子の作製)
温度計および攪拌装置等を備えた反応容器に、trans−4−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキサンカルボン酸(岩城製薬株式会社製)3.15gと、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン3.08gとを仕込み、150℃で12時間反応させることにより、下記構造式(72)
で示される液晶性モノマー(以下、「液晶性モノマー(M2)」と記す)を得た。
得られた液晶性モノマー(M2)についてIRを測定したところ、2300cm−1付近のイソシアネート結合のピークは消失し、1640cm−1付近にアミド結合のピークを確認した。
次いで、このようにして得られた液晶性モノマー(M2)3.0gと、THF450mlとを反応容器に仕込み、上記液晶性モノマー(M2)をTHFに溶解させた後、上記反応容器内に、TiO2微粒子(シーアイ化成株式会社製、粒径20nm〜30nm)50gを加えて60℃で12時間反応させた。
反応終了後、上記反応容器内の反応溶液250mlを濃縮し、残存溶液を、12000rpmで遠心分離した。続いて、得られた沈殿物をメタノールで十分に洗浄することにより、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P3)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P3)の表面カバレッジは5.1%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(P3)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C3)を得た。
この液晶組成物(C3)中の表面修飾無機粒子(P3)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(P3)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(C3)中の表面修飾無機粒子(P3)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔実施例4〕
(表面修飾無機微粒子の作製)
実施例3において、trans−4−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキサンカルボン酸の代わりに4−アミノベンゾトリフルオリド(メルク株式会社製)を使用し、反応温度を、150℃から40℃に変更した以外は、実施例3と同じ条件で実施例3と同様の反応・操作を行って、下記構造式(73)
で示される液晶性モノマー(以下、「液晶性モノマー(M3)」と記す)を得た。
得られた液晶性モノマー(M3)についてIRを測定したところ、2300cm−1付近のイソシアネート結合のピークは消失し、1650cm−1付近に尿素結合のピークを確認した。得られた液晶性モノマー(M3)は25℃において液体であった。
次いで、実施例1において、液晶性モノマー(M1)に代えて液晶性モノマー(M3)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で実施例1と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P4)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P4)の表面カバレッジは4.9%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(P4)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C4)を得た。
この液晶組成物(C4)中の表面修飾無機粒子(P4)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(P4)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(C4)中の表面修飾無機粒子(P4)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔実施例5〕
(表面修飾無機微粒子の作製)
実施例1において、液晶性モノマー(M1)の使用量を、3.0gから0.5gに変更した以外は、実施例1と同じ条件で実施例1と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P5)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P5)の表面カバレッジは1.2%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(P5)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C5)を得た。
この液晶組成物(C5)中の表面修飾無機粒子(P5)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(P5)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(C5)中の表面修飾無機粒子(P5)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔実施例6〕
(表面修飾無機微粒子の作製)
実施例1において、液晶性モノマー(M1)の使用量を、3.0gから0.4gに変更した以外は、実施例1と同じ条件で実施例1と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P6)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P6)の表面カバレッジは0.8%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(P6)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C6)を得た。
この液晶組成物(C6)中の表面修飾無機粒子(P6)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(P6)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(C6)中の表面修飾無機粒子(P6)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔実施例7〕
(表面修飾無機微粒子の作製)
温度計および攪拌装置等を備えた反応容器に、4’−(4−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキサノール(関東化学株式会社製)16.3gと、6−クロロ−1−ヘキサノール(アルドリッチ社製)10.4gとを仕込んで加熱溶解させた。次いで、上記反応容器中に、10Nの水酸化カリウム水溶液30mlを添加して120℃で2時間反応させた。反応終了後、得られた反応液を酢酸エチルで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、下記構造式(74)
で示される液晶性モノマー(以下、「液晶性モノマー(M4)」と記す)を得た。得られた液晶性モノマー(M4)は、1H−NMRおよびIRを測定することにより同定した。
次いで、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(チッソ株式会社製)3.0gと、THF450mlとを反応容器に仕込み、上記液晶性モノマー(M4)をTFTに溶解させた後、上記反応容器内に、メタノールシリカゾル(日産化学工業株式会社製、粒径10nm〜20nm)50gを加えて60℃で12時間反応させた。
反応終了後、上記反応容器内の反応溶液を、250mlまで濃縮し、この反応溶液に、上記液晶性モノマー(M4)2.0gおよびジラウリル酸ジブチル錫(和光純薬工業株式会社製)0.02gを加え、30℃で6時間反応させた。反応終了後、この反応溶液を、12000rpmで遠心分離した。続いて、得られた沈殿物をメタノールで十分に洗浄することにより、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P7)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P7)の表面カバレッジは5.6%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(P7)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C7)を得た。
この液晶組成物(C7)中の表面修飾無機粒子(P7)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(P7)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(C7)中の表面修飾無機粒子(P7)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔実施例8〕
(表面修飾無機微粒子の作製)
温度計および攪拌装置等を備えた反応容器に、実施例1と同様の方法で得られた前記構造式(70)で示される化合物(m1)10.1gと、ピリジン(関東化学株式会社製)3.45gと、TFT150mlとを仕込み、上記化合物(m1)とピリジンとを、TFTに溶解させた。さらに、上記反応容器内に、塩化チオニル(関東化学株式会社製)5.20gをゆっくり加え、室温で12時間攪拌した。反応終了後、得られた反応液を酢酸エチルで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、下記構造式(75)
で示される中間体化合物(m2)7.8g(収率74%)を得た。
次いで、この中間体化合物(m2)3.36gと、ジメチルホルムアミド(関東化学株式会社製)20mlとを反応容器に仕込み、上記中間体化合物(m2)をジメチルホルムアミドに溶解させた。さらに、上記反応容器内に、フタルイミドカリウム(関東化学株式会社製)2.05gを加え、100℃で3時間反応させた。反応終了後、得られた反応液をクロロホルムで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、下記構造式(76)
で示される中間体化合物(m3)3.64g(収率83%)を得た。
次に、上記中間体化合物(m3)2.0gと、エタノール150mlとを、温度計および還流管等を備えた反応容器に仕込み、上記中間体化合物(m3)をエタノールに溶解させた。さらに、上記反応容器内に、ヒドラジン一水和物(関東化学株式会社製)0.442gを加え、還流下で2時間反応した。反応完了後、得られた反応液を6N塩酸で酸性とし、30分間攪拌した後、濾過した。次いで、得られた濾液に5N水酸化カリウムを加えて塩基性とすることで得られた沈殿物を濾別した。その後、この濾別した沈殿物をヘキサンで洗浄して構造式(77)
で示される液晶性モノマー(以下、「液晶性モノマー(M5)」と記す)を得た。得られた液晶性モノマー(M5)は、1H−NMRおよびIRを測定することにより同定した。
次いで、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(チッソ株式会社製)3.0gと、THF450mlとを反応容器に仕込み、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランをTHFに溶解させた。さらに、上記反応容器内に、メタノールシリカゾル(日産化学工業株式会社製、粒径10nm〜20nm)50gを加え、60℃で12時間反応させた。
反応終了後、上記反応容器内の反応溶液を、250mlまで濃縮し、この反応溶液に、上記液晶性モノマー(M5)2.0gを加え、60℃で6時間反応させた。反応終了後、この反応溶液を、12000rpmで遠心分離した。続いて、得られた沈殿物をメタノールで十分に洗浄することにより、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P8)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P8)の表面カバレッジは4.86%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(P8)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C8)を得た。
この液晶組成物(C8)中の表面修飾無機粒子(P8)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(P8)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(C8)中の表面修飾無機粒子(P8)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔実施例9〕
(有機−無機複合粒子の作製)
温度計、滴下管、攪拌装置等を備えた反応容器に、メタノール20gとイオン交換水1.6gと28wt.%アンモニア水(和光純薬工業株式会社製)0.8gとを仕込んだ。
一方、テトラエトキシシラン(チッソ株式会社製)0.05gと、液晶性モノマー(M1)0.2gと、メタノール10gとを混合してなる混合液を、上記滴下管に仕込んだ。
次に、上記反応容器中の混合溶媒を60℃で30分間攪拌した後、この反応容器中に、上記滴下管から上記混合液を15分間かけて滴下した。その後、上記反応容器中の反応液を、60℃で12時間反応させた後、実施例1と同様にして遠心分離し、本発明にかかる微粒子として、有機−無機複合粒子(P9)を得た。
得られた有機−無機複合粒子(P9)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C9)を得た。
この液晶組成物(C9)中の表面修飾無機粒子(P9)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(P9)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(C9)中の表面修飾無機粒子(P9)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔比較例1〕
(比較用の無修飾無機微粒子の作製)
メタノールシリカゾル(日産化学工業株式会社製、粒径10nm〜20nm)を、12000rpmで遠心分離して、比較用の微粒子として、何ら修飾が施されていない無機微粒子(p1)を、沈殿物として得た。この比較用の無機微粒子(p1)、すなわち上記沈殿物を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、比較用の液晶組成物(c1)を得た。
この液晶組成物(c1)中の表面修飾無機粒子(p1)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果、前記(II)のタイミングでの上記表面修飾無機粒子(p1)の平均粒子径は、該表面修飾無機粒子(p1)が液晶相から分離(沈降)したため、測定することができなかった。上記液晶組成物(c1)中の表面修飾無機粒子(p1)の分散直後粒子径および1000時間経過時粒子径並びに分散状態を、測定・評価した結果をまとめて表1に示す。
なお、表1中、「F」は、上記したように、微粒子が液晶相から分離(沈降)し、該微粒子の平均粒子径が測定不可能であったことを示す。
〔比較例2〕
(比較用の表面修飾無機微粒子の作製)
実施例1において、液晶性モノマー(M1)に代えて、n−ドデシルトリメトキシシラン(アヅマックス株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で実施例1と同様の反応・操作を行って、比較用の微粒子としての表面修飾無機粒子(p2)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(p2)の表面カバレッジは3.3%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(p2)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、比較用の液晶組成物(c2)を得た。
この液晶組成物(c2)中の表面修飾無機粒子(p2)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(p2)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(c2)中の表面修飾無機粒子(p2)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
〔比較例3〕
(比較用の表面修飾無機微粒子の作製)
実施例1において、液晶性モノマー(M1)に代えて、メトキシトリメチルシラン(アヅマックス株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で実施例1と同様の反応・操作を行って、比較用の微粒子としての表面修飾無機粒子(p3)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(p3)の表面カバレッジは2.5%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(p3)を、実施例1と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−2293」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合・分散させることにより、比較用の液晶組成物(c3)を得た。
この液晶組成物(c3)中の表面修飾無機粒子(p3)の分散状態を、実施例1と同様の方法により評価した。この結果を、上記表面修飾無機粒子(p3)の表面カバレッジ、並びに、上記液晶組成物(c3)中の表面修飾無機粒子(p3)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表1に示す。
表1に示す結果から、上記した各比較例においては微粒子が凝集し、上記した各液晶組成物を収容した容器の底部に微粒子の沈降が見られたが、上記実施例においては、何れも、微粒子の凝集が大幅に抑制され、その実用的価値が極めて大きいことが判る。また、表1に示す結果から、表面カバレッジ量が少なくなるほど粒子径の経時変化が大きく、高濃度の分散には適していないことが判る。また、表1に示す結果から、本発明にかかる構造を有する微粒子は、液晶化合物中での分散性に優れることが判る。これらの結果から、上記した本発明にかかる微粒子の構造が、液晶中における当該微粒子の分散性の向上に寄与していることは明らかである。
〔実施例10〕
(表面修飾無機微粒子の作製)
温度計および攪拌装置等を備えた反応容器に、「S810」(商品名、チッソ株式会社製の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)3.0gと、THF450mlとを反応容器に仕込み、上記「S810」をTHFに溶解させた。さらに、上記反応容器内に、メタノールシリカゾル(日産化学工業株式会社製、粒径10nm〜20nm)50gを加え、60℃で12時間反応させた。
反応終了後、上記反応容器内の反応溶液を、250mlまで濃縮し、この反応溶液に、下記構造式(78)
で示される化合物3.0gおよびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(関東化学株式会社製)0.05gを加え、30℃で12時間反応させた。反応終了後、この反応溶液を、12000rpmで遠心分離した。続いて、得られた沈殿物をメタノールで十分に洗浄することにより、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P10)を得た。得られた表面修飾無機粒子(P10)の平均粒子径は28nmであり、実施例1と同様の方法により測定した表面カバレッジは6.2%であった。また、得られた表面修飾無機粒子(P10)についてIRを測定したところ、1680cm−1付近にチオエステルのピークを確認した。
次いで、実施例1において、メルク社製液晶「ZLI−2293」に代えて、液晶化合物としてメルク社製液晶「ZLI−4792」を使用するとともに、液晶組成物中の微粒子分が20wt.%となるように、液晶(液晶化合物)に対する微粒子の混合割合を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、本発明にかかる液晶組成物(C10)を得た。この液晶組成物(C10)の分散状態の経過観察を行ったところ、1000時間経過後でも上記表面修飾無機粒子(P10)の分散・沈降は認められなかった。
〔実施例11〕
実施例1において、メタノールシリカゾルに対する上記液晶性モノマー(M1)の混入割合を種々変更した以外は、実施例1と同じ条件で実施例1と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子として、表面カバレッジが各々異なる表面修飾無機粒子を得た。
次に、これら表面修飾無機粒子を、メルク社製液晶「ZLI−4792」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が、10wt.%、20wt.%、30wt.%となるように各々混合し、実施例1同様、超音波ホモジナイザーにて分散せしめることにより液晶組成物を得た。
その後、これら液晶組成物を各々0℃にて静置して、各液晶組成物中の微粒子の経時的な凝集の有無を観察した。
図9は、液晶(液晶化合物)に対する微粒子の混合割合をパラメータとして、本実施例で作製した各微粒子の表面カバレッジと、各微粒子が液晶組成物中で凝集(沈降)が認められるまでの時間との関係を示すグラフである。
図9から、微粒子を30wt.%以上の高濃度に分散させる場合には、表面カバレッジを5wt.%以上とすることが良いことが判る。
本実施例に示す結果から明らかなように、本発明によれば、液晶組成物中に、微粒子を高濃度で含有(分散)させることができ、その実用的価値は極めて大きい。
〔比較例4〕
(金属微粒子表面に液晶分子を配位させてなる無機微粒子の作製)
攪拌装置等を備えた反応容器中で、まず、過塩素酸銀(AlClO4)0.548gを、エタノール100mlに溶解させた。
その後、上記反応容器中に、液晶化合物である5CB(略称、4−シアノ−4’−ペンチルビフェニル)3.29gを加え、この反応容器中の反応液を撹拌しながら、該反応液に、500Wの紫外線照射装置を用いて紫外線を3時間照射することにより、比較用の無機微粒子として、表面に5CB分子が配位したAg粒子(以下、「無機微粒子(p4)」と記す)を得た。
続いて、この無機微粒子(p4)を濾別し、メルク社製液晶「ZLI−4792」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が5wt.%となるように混合し、実施例1同様、超音波ホモジナイザーを用いて分散させることにより、比較用の液晶組成物(c4)を得た。該液晶組成物を調製してから100時間経過後に該液晶組成物(c4)の分散状態を確認したところ、その大部分が、容器下部に沈降していた。
〔実施例12〕
(有機微粒子(H)の作製)
攪拌装置等を備えた反応容器に、実施例1と同様の方法で得られた前記構造式(70)で示される化合物(m1)17.4gと、塩化メタクリロイル(和光純薬工業株式会社製)5.6gと、ピリジン(関東化学株式会社製)4.4gと、TFT250mlとを仕込み、上記化合物(m1)と塩化メタクリロイルとピリジンとをTFTに溶解させ、室温で48時間攪拌することにより反応させて反応液を得た。
次いで、上記反応容器中の反応液を濾過後、クロロホルムで抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、反応生成物として、下記構造式(79)
で示される液晶性モノマー(M12)16.9g(収率81.1%)を得た。上記液晶性モノマー(M12)は、1H−NMRおよびIRを測定することにより同定した。上記液晶性モノマー(M12)、つまり、本実施例で得られた上記反応生成物の1H−NMRチャートを図17に、IRスペクトルを図18にそれぞれ示す。得られた液晶性モノマー(M12)は、25℃で液体であった。
次に、このようにして得られた液晶性モノマー(M12)0.9gと、ジ(メタ)アクリル酸エステル系モノマーである下記構造式(80)
で示される化合物(「NK ESTER N−HD」(商品名、新中村化学工業株式会社製1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート)0.1gと、α,α−アゾビスイソブチロニトリル(関東化学株式会社製)0.1gとを、イソプロピルアルコール(和光純薬工業株式会社製)9.0gに溶解し、60℃で10時間反応させて沈殿物を得た。
次いで、得られた沈殿物に対し、該沈殿物をTHFで溶解してはメタノールを添加して再沈殿させるという操作を繰り返すことで、上記沈殿物を洗浄した。これにより、本発明にかかる微粒子(有機微粒子(H))として、有機微粒子(P12)を得た。
次いで、上記有機微粒子(P12)を、メルク社製液晶「ZLI−1565」(商品名)に、得られた液晶組成物中の微粒子分が30wt.%となるように混合し、超音波発生装置を用いて超音波により分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C12)を得た。
この液晶組成物(C12)中の有機微粒子(P12)の分散状態を前述の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(C12)中の有機微粒子(P12)の「分散直後粒子径」、「1000時間経過時粒子径」、および、架橋性化合物の仕込み量と液晶性モノマーの仕込み量との合計に占める液晶性モノマーの仕込み量(以下、「モノマー仕込み比」と記す)と併せて表2に示す。
〔実施例13〕
(有機微粒子(H)の作製)
実施例12において、液晶性モノマー(M12)の使用量を0.9gから0.5gに変更するとともに、「NK ESTER N−HD」の使用量を0.1gから0.5gに変更した以外は、実施例12と同じ条件で実施例12と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子(有機微粒子(H))として、有機微粒子(P13)を得た。
次いで、上記有機微粒子(P13)を、実施例12と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−1565」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が30wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C13)を得た。
この液晶組成物(C13)中の有機微粒子(P13)の分散状態を、実施例12と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(C13)中の有機微粒子(P13)の「分散直後粒子径」、「1000時間経過時粒子径」、およびモノマー仕込み比と併せて表2に示す。
〔実施例14〕
(有機微粒子(H)の作製)
実施例12において、液晶性モノマー(M12)の使用量を0.9gから0.3gに変更するとともに、「NK ESTER N−HD」の使用量を0.1gから0.7gに変更した以外は、実施例12と同じ条件で実施例12と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子(有機微粒子(H))として、有機微粒子(P14)を得た。
次いで、上記有機微粒子(P14)を、実施例12と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−1565」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が30wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C14)を得た。
この液晶組成物(C14)中の有機微粒子(P14)の分散状態を、実施例12と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(C14)中の有機微粒子(P14)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表2に示す。
〔実施例15〕
(有機微粒子(H)の作製)
実施例12において、液晶性モノマー(M12)の使用量を0.9gから0.1gに変更するとともに、「NK ESTER N−HD」の使用量を0.1gから0.9gに変更した以外は、実施例12と同じ条件で実施例12と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子(有機微粒子(H))として、有機微粒子(P15)を得た。
次いで、上記有機微粒子(P15)を、実施例12と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−1565」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が30wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C15)を得た。
この液晶組成物(C15)中の有機微粒子(P15)の分散状態を、実施例12と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(C15)中の有機微粒子(P15)の「分散直後粒子径」、「1000時間経過時粒子径」、およびモノマー仕込み比と併せて表2に示す。
〔実施例16〕
(有機微粒子(H)の作製)
実施例12において、「NK ESTER N−HD」に代えて、下記構造式(81)
で示されるジビニルベンゼン(和光純薬工業株式会社製)を使用した以外は、実施例12と同じ条件で実施例12と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子(有機微粒子(H))として、有機微粒子(P16)を得た。
次いで、上記有機微粒子(P16)を、実施例12と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−1565」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が30wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C16)を得た。
この液晶組成物(C16)中の有機微粒子(P16)の分散状態を、実施例12と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(C16)中の有機微粒子(P16)の「分散直後粒子径」、「1000時間経過時粒子径」、およびモノマー仕込み比と併せて表2に示す。
〔実施例17〕
(有機微粒子(H)の作製)
反応容器に、実施例12と同様の方法で得られた液晶性モノマー(M12)0.25gと、ジビニルベンゼン0.25gと、イオン交換水39gと、過硫酸アンモニウム(アルドリッチ製)0.025gと、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(関東化学株式会社製)0.08gとを仕込み、ホモジナイザーで攪拌しながら、窒素雰囲気下、80℃で12時間反応させて反応液を得た。
次いで、得られた反応液にアセトンを加えては12000rpmで遠心分離するという操作を5回繰り返すことにより、本発明にかかる微粒子(有機微粒子(H))として、有機微粒子(P17)を得た。この有機微粒子(P17)のIRを測定したところ、1720cm−1付近に、エステル結合のピークを確認した。上記有機微粒子(P17)のIRスペクトルを図19に示す。
次いで、上記有機微粒子(P17)を、実施例12と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−1565」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が30wt.%となるように混合・分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C17)を得た。
この液晶組成物(C17)中の有機微粒子(P17)の分散状態を、実施例12と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(C17)中の有機微粒子(P17)の「分散直後粒子径」、「1000時間経過時粒子径」、およびモノマー仕込み比と併せて表2に示す。
〔比較例5〕
(比較用の有機微粒子(H)の作製)
実施例12において、液晶性モノマー(M12)に代えて、メタクリル酸メチル(関東化学株式会社製)を用いた以外は、実施例12と同じ条件で実施例12と同様の反応・操作を行って、比較用の微粒子(有機微粒子(H))としての有機微粒子(p5)を得た。
次いで、上記有機微粒子(p5)を、実施例12と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−1565」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が30wt.%となるように混合・分散させることにより、比較用の液晶組成物(c5)を得た。
この液晶組成物(c5)中の有機微粒子(p5)の分散状態を、実施例12と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(c5)中の有機微粒子(p5)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表2に示す。
〔比較例6〕
(比較用の有機微粒子(H)の作製)
実施例12において、液晶性モノマー(M12)に代えて、スチレン(和光純薬工業株式会社製)と使用するとともに、「NK ESTER N−HD」に代えて、前記構造式(81)で示されるジビニルベンゼン(和光純薬工業株式会社製)を使用した以外は、実施例12と同じ条件で実施例12と同様の反応・操作を行って、比較用の微粒子(有機微粒子(H))としての有機微粒子(p6)を得た。
次いで、上記有機微粒子(p6)を、実施例12と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−1565」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が30wt.%となるように混合・分散させることにより、比較用の液晶組成物(c6)を得た。
この液晶組成物(c6)中の有機微粒子(p6)の分散状態を、実施例12と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(c6)中の有機微粒子(p6)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表2に示す。
〔比較例7〕
(比較用の有機微粒子(H)の作製)
攪拌装置等を備えた反応容器に、4,4’−ビフェニル(東京化成工業株式会社製)9.3gと、塩化メタクリロイル(和光純薬工業株式会社製)21.95gと、ピリジン(関東化学株式会社製)17.4gと、TFT250mlとを仕込み、4,4’−ビフェニルと塩化メタクリロイルとピリジンとをTFTに溶解させ、室温で4日間攪拌することにより反応させて反応液を得た。
次いで、上記反応容器中の反応液を濾過後、クロロホルムで抽出し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、反応生成物として、下記構造式(82)
で示される化合物(m4)を得た。該化合物(m4)は、1H−NMRおよびIRを測定することにより同定した。
次に、実施例17において、液晶性モノマー(M12)に代えて上記化合物(m4)を使用し、かつ、ジビニルベンゼンを使用しなかったことを除けば、実施例17と同じ条件で実施例17と同様の反応・操作を行って、比較用の微粒子(有機微粒子(H))としての有機微粒子(p7)を得た。
次いで、上記有機微粒子(p7)を、実施例17と同様にして、メルク社製液晶「ZLI−1565」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が30wt.%となるように混合・分散させることにより、比較用の液晶組成物(c7)を得た。
この液晶組成物(c7)中の有機微粒子(p7)の分散状態を、実施例12と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(c7)中の有機微粒子(p7)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表2に示す。
表2に示す結果から、上記した各比較例においては微粒子が凝集し、上記した各液晶組成物を収容した容器の底部に微粒子の沈降が見られたが、上記実施例においては、何れも、微粒子の凝集が大幅に抑制され、その実用的価値が極めて大きいことが判る。また、表2に示す結果から、架橋性化合物の仕込み量と液晶性モノマーの仕込み量との合計に占める液晶性モノマーの仕込み量を10wt.%以上とすることにより、微粒子の凝集をより抑制することができ、長期的な安定性を維持することができ、液晶中への分散性が良くなることが判る。なお、上記した各実施例では、モノマー仕込み比を調整することにより得られる微粒子の粒径(粒度)を調整(制御)したが、撹拌条件、加熱温度、濃度、反応時間等を調整(制御)することによっても粒度を調整(制御)することができることは言うまでもない。
〔実施例18〕
実施例12と同様にして作製した有機微粒子(P12)を、メルク社製液晶「ZLI−4792」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が、5wt.%、10wt.%、20wt.%、30wt.%となるように各々混合し、実施例12同様、超音波にて分散せしめることにより、本発明にかかる液晶組成物(C18−1)〜(C18−3)を各々調製した。
上記液晶に分散させた直後の上記有機微粒子(P12)の粒径は何れも約20nmであったが、液晶組成物(C18−1)が不透明(白濁)であったのに対し、液晶組成物(C18−2)〜(C18−4)は透明であった。本現象は、次のように考えることができる。
すなわち、液晶組成物中の微粒子の配位を立方格子と考えた場合、液晶組成物(C18−1)では微粒子濃度が低いため、当該液晶組成物(C18−1)中の有機微粒子(P12)の単位格子長は約48nmとなるが、液晶組成物(C18−2)の場合には、上記単位格子長は約38nmとなり、可視域の光に対して透明になったと推測される。同様に考えれば、液晶組成物(C18−3)、液晶組成物(C18−4)の計算された単位格子長は、各々、30nm、25nmであり、何れも透明状態が観察された。
本実施例から明らかなように、本発明にかかる液晶組成物は、等方性ネマチック相を達成することができ、カー効果を利用するディスプレイ、および光学デバイスに好適に応用することができる。
〔実施例19〕
(有機微粒子(H)の作製)
攪拌装置を備えた反応容器(フラスコ)に、実施例12と同様にして作製した液晶性モノマー(M12)0.9gと、「NK ESTER N−HD」0.1gと、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(東京化成工業株式会社製)0.1gと、メルク社製液晶「ZLI−2293」(商品名)9.0gとを仕込んで混合し、暗室下で攪拌しながら、6Wブラックライトを上記フラスコから20cmの位置から5時間照射することにより、本発明にかかる微粒子(有機微粒子(H))としての有機微粒子(P19)を、上記液晶中で合成した。これにより、上記液晶中に有機微粒子(P19)が分散された、本発明にかかる液晶組成物(C19)を得た。
この液晶組成物(C19)中の有機微粒子(P19)の分散状態を前述の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(C19)中の有機微粒子(P19)の「分散直後粒子径」、つまり、上記合成反応完了直後の上記有機微粒子(P19)の平均粒子径と、上記合成反応の応完了時を起点とした「1000時間経過時粒子径」と、モノマー仕込み比と併せて表3に示す。
〔実施例20〕
(有機微粒子(H)の作製)
実施例19において、液晶性モノマー(M12)の使用量を0.9gから0.2gに変更するとともに、「NK ESTER N−HD」の使用量を0.1gから0.8gに変更した以外は、実施例19と同じ条件で実施例19と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子(有機微粒子(H))としての有機微粒子(P20)を、上記液晶中で合成した。これにより、上記液晶中に有機微粒子(P20)が分散された、本発明にかかる液晶組成物(C20)を得た。
この液晶組成物(C20)中の有機微粒子(P20)の分散状態を、実施例19と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(C20)中の有機微粒子(P20)の「分散直後粒子径」、「1000時間経過時粒子径」、およびモノマー仕込み比と併せて表3に示す。
〔比較例8〕
(比較用の有機微粒子(H)の作製)
実施例19において、液晶性モノマー(M12)の代わりに、アクリル酸n−ブチル(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)を用いた以外は、実施例19と同じ条件で実施例19と同様の反応・操作を行って、比較用の微粒子(有機微粒子(H))としての有機微粒子(p8)を、上記液晶中で合成した。これにより、上記液晶中に有機微粒子(p8)が分散された、比較用の液晶組成物(c8)を得た。
この液晶組成物(c8)中の有機微粒子(P20)の分散状態を、実施例19と同様の方法により評価した。この結果を、上記液晶組成物(c8)中の有機微粒子(p8)の「分散直後粒子径」および「1000時間経過時粒子径」と併せて表3に示す。
上記実施例および比較例の結果、液晶中で微粒子を合成することで、本発明にかかる微粒子の構造を有していない比較用の微粒子の作製においては微粒子の凝集が起こり、反応中に沈降が見られたが、本実施例では、このような微粒子の沈降は見られなかった。これより上記した本発明にかかる微粒子は、該微粒子を液晶中で合成する場合においても有用であることが判る。また、表3に示す結果から、液晶中で微粒子を合成する場合でも、モノマー仕込み比を調整することにより、得られる微粒子の粒径(粒度)を調整(制御)することができることが判る。
〔実施例21〕
(TN型液晶セルの作製)
ITOからなる対向電極3が表面に設けられたガラス基板(基板2)、並びに、ITOからなる画素電極7が表面に設けられたガラス基板(基板8)上に、各々、ポリイミド配向膜塗料「SE−4110」(商品名、日産化学工業株式会社製)を塗布し、乾燥硬化後、得られた配向膜4・6表面を、配向方向が互いに平行かつ逆向きとなるように、ラビング処理した。
次いで、上記基板2・8を、互いの電極形成面を対向させて、樹脂ビーズからなるスペーサ5を介して貼り合わせることにより、図5に示すTN型の液晶セル(液晶表示素子10)を作製した。上記スペーサ5には、積水化学工業株式会社製の粒径4μmの「ミクロパール」を使用した。
一方、実施12と同様にして作製した有機微粒子(P12)を、メルク社製液晶「ZLI−1565」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が、10wt.%、20wt.%となるように各々混合し、実施例12同様、超音波にて分散せしめることにより、本発明にかかる液晶組成物(C21−1)・(C21−2)を各々調製した。
この液晶組成物(C21−1)・(C21−2)を各々上記液晶セルに封入し、該液晶セルの室温での電圧−透過率特性を、定法に従い評価した。この結果を図10に示す。また、上記液晶組成物(C21−1)・(C21−2)に代えて、微粒子(本実施例においては上記有機微粒子(P12))を含まない母液晶、つまり、上記「ZLI−1565」を封入した液晶セルの室温での電圧−透過率特性を、比較例として、図10に併せて示す。
図10から明らかなように、液晶組成物中の液晶性モノマーの含有量、つまり、液晶性化に対する液晶性モノマーの混合割合を変更することで、液晶組成物からなる層13の実効的屈折率を任意に変化させることができることが判る。そして、本発明にかかる液晶セルは、上記したように、液晶組成物中に、従来よりも多量の液晶性モノマーを混合・分散させることができるので、その利用価値が極めて大きいことが判る。
〔実施例22〕
実施12と同様にして作製した有機微粒子(P12)を、液晶化合物「5CB」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合し、実施例12同様、超音波にて分散せしめることにより、本発明にかかる液晶組成物(C22)を調製した。
この液晶組成物(C22)のネマチック−等方相転移温度(NI点)、屈折率異方性(Δn)、電圧保持率(VHR)を、母液晶である「5CB」の物性と比較した。この結果を表4に示す。
表4から明らかなように、本発明にかかる液晶組成物は、NI点、VHRを低下させることなく、Δnを調整できることができる。従って、その実用的価値は大きい。
〔実施例23〕
(IPS型液晶セルの作製)
櫛歯電極27が表面に設けられたガラス基板(基板28)と、該基板28と対向配置されるガラス基板(基板25)とを、樹脂ビーズからなるスペーサ26を介して貼り合わせることにより、図6に示すIPS型の液晶セル(液晶表示素子20)を作製した。上記スペーサ26には、積水化学工業株式会社製の粒径5μmの「ミクロパール」(商品名)を使用した。
一方、実施12と同様にして作製した有機微粒子(P12)と、メルク社製液晶「ZLI−2293」とを、各々、有機微粒子(P12)が35wt.%、「ZLI−2293」が65wt.%の割合となるように混合し、実施例12同様、超音波にて分散せしめることにより、本発明にかかる液晶組成物(C23)を調製した。
この液晶組成物(C23)を上記液晶セルに封入し、測定温度を変化させながら、該液晶セル(以下、「液晶セル(E23)」と記す)の電圧−透過率特性を測定し、入射光量を100%変調するために要する半波長電圧Vπの温度依存性を求めた。この時の偏光板24・29における偏光軸24a・29aの配置は、図7に示した通りである。また、比較のために、上記液晶組成物(C23)に代えて、微粒子を含まない母液晶、つまり、上記「ZLI−2293」を封入した液晶セル(以下、「液晶セル(e23)」と記す)の半波長電圧Vπの温度依存性を、上記と同様にして測定した。
カー定数Bは、二次の電気光学効果の大きさを示す定数であり、カー定数Bと半波長電圧Vπとは、下記関係式(F1)
で示す関係を有している。なお、式中、dは櫛歯電極の電極間隔を表し、lは光路長を表す。
そこで、上記液晶セル(E23)・(e23)の半波長電圧Vπから、上記関係式(F1)を用いてカー定数Bを各々算出し、各々の液晶セル(E23)・(e23)におけるカー定数Bの温度依存性を調べた。この結果を図11に示す。
図11から明らかなように、本発明にかかる液晶組成物(C23)を用いた液晶セル(E23)は、等方相以上の温度に上げることなく、カー効果を利用した表示を行うことができる。さらに、該液晶セル(E23)は、カー定数Bの温度依存性が小さく、その実用的価値は非常に大きい。これは、微粒子表面(つまり、上記有機微粒子(P12)表面)に、上記「ZLI−2293」の液晶分子がランダムに配向することで、上記有機微粒子(P12)の周りには、前記した電気二重層が形成されており、かつ、この電気二重層が形成された微粒子51のサイズが、可視域の光の波長と比べて充分小さいことによるものである。
〔実施例24〕
(IPS型液晶セルの作製)
TFT素子44からなるTFTアレイ等が表面に設けられたガラス基板(基板41)並びにカラーフィルタ37等を表面に備えたガラス基板(基板35)上に、各々、ポリイミド配向膜塗料「SE−1211」(商品名、日産化学工業株式会社製)を塗布し、乾燥硬化後、得られた配向膜40・40表面を、配向方向が基板に垂直となるように、ラビング処理した。
次いで、上記基板41・35を、上記配向膜40・40が互いに対向するように、樹脂ビーズからなるスペーサ33を介して貼り合わせることにより、図8に示す垂直配向アクティブマトリクス型の液晶表示素子(液晶表示素子30)を作製した。上記スペーサ33には、積水化学工業株式会社製の粒径4μmの「ミクロパール」を使用した。
一方、実施例2において、メタノールシリカゾルの代わりに、「MA−ST−S」(日産化学工業株式会社製、粒径7〜11nm)を用いた以外は、実施例2と同じ条件で実施例2と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P24)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P24)の表面カバレッジは5.8%であった。
次いで、上記表面修飾無機粒子(P24)を、メルク社製液晶「MLC−6609」に、得られた液晶組成物中の微粒子分が10wt.%となるように混合し、実施例2同様、超音波ホモジナイザーにて分散させることにより、本発明にかかる液晶組成物(C24)を得た。
この液晶組成物(C24)を上記液晶セルに封入し、該液晶セルの25℃での正面の電圧−透過率特性を、定法に従い測定した。この時、6V印加時と電圧無印加時との透過光量の比を求めたところ、1200:1のコントラスト比が得られた。
本実施例では、微粒子(本実施例では上記表面修飾無機粒子(P24))の粒径が極めて小さく、それ故、上記液晶組成物(C24)中に分散した状態での上記微粒子の粒径もまた極めて小さい。このため、上記微粒子が、該微粒子の散乱・反射等によって光の進行を遮ることがないため、高いコントラスト比が得られたものと考えられる。
〔実施例25〕
(低位相差プラスチック基板の作製)
実施例3において、trans−4−(trans−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキサンカルボン酸の代わりにトリフェニルメタノールを使用し、ラウリル酸ジブチル錫0.02gを加え、反応温度を30℃とした以外は、実施例3と同じ条件で実施例3と同様の反応・操作を行って、下記構造式(83)
で示される液晶性モノマー(M25)を得た。
得られた液晶性モノマー(M25)についてIRを測定したところ、2300cm−1付近のイソシアネート結合のピークは消失し、1710cm−1付近にウレタン結合のピークを確認した。
次いで、実施例1において、液晶性モノマー(M1)に代えて液晶性モノマー(M25)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で実施例1と同様の反応・操作を行って、本発明にかかる微粒子として、表面修飾無機粒子(P25)を得た。実施例1と同様の方法により測定した該表面修飾無機粒子(P25)の表面カバレッジは5.8%であった。
このようにして得られた上記表面修飾無機粒子(P25)を、「アクリペット」(商品名、三菱レイヨン製のPMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート))中に均一分散し、射出成型を行った。
得られたPMMA板(0.5mm厚)の位相差および線膨張係数を測定したところ、位相差は12nmであり、線膨張係数は2×10−3℃であった。また、比較例として微粒子を含まないPMMA(「アクリペット」)のみで同様にPMMA板(0.5mm厚)を作製し、その位相差および線膨張係数を測定したところ、位相差は150nmであり、線膨張係数は7×10−3℃であった。
なお、上記位相差は、シンテック社製汎用偏光解析装置「OptiPro」(商品名)を用いて、室温にて測定した。また、線膨張係数は、JIS K 7197にて測定した。
一般的に、射出成型では、PMMAは一方向に剪断応力がかかるため大きな位相差が発現する。しかしながら、本実施例に示すように、負の位相差を示すトリフェニルメタン誘導体構造を表面に有する微粒子をPMMAに混入することにより、射出成型によって生じる位相差が相殺され、低位相差プラスチック基板を得ることができる。液晶表示装置用基板や光デバイスでの基板には低位相差が求められる。よって、本発明の実用的価値は極めて大きい。
また、上記したように、PMMAに無機微粒子を混入することにより、PMMA基板の線膨張係数を大幅に低減させることができ、高い耐熱寸法安定性を達成することができる。このように、本発明にかかる微粒子は、位相差板の製造においても、大きな効果を発現する。
なお、エポキシ基、オキサゾリン基は汎用的な官能基であり、反応性も高いため、エポキシ基あるいはオキサゾリン基を有する化合物は、架橋剤、硬化剤としてよく使用されている。また、エポキシ基、オキサゾリン基が、熱や触媒作用により、水酸基やカルボキシル基と同様に反応性能が得られることは、従来より特許文献等、各種文献によって知られている。
以上のように、上記微粒子は、液晶類似構造および液晶中間体構造を有さない化合物に由来する構造を含む構成体の表層部に、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する基(W)が、結合基(Z)を介して共有結合している構成である。
また、以上のように、上記液晶組成物は、少なくとも一種の液晶化合物と、微粒子とを含み、上記微粒子は、液晶類似構造および液晶中間体構造を有さない化合物に由来する構造を含む構成体の表層部に、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する基(W)が、結合基(Z)を介して共有結合したものである。
上記基(W)は、下記一般式(1)
−(A−Y1)m−B…(1)
(式中、Aは、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、または1,4−フェニレン基を表し、A中、任意の−CH2−基は、−O−基、−S−基、または−CO−基で置換されていてもよく、任意の−CH2CH2−基は、−CH=CH−基で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基における任意の−CH=基は−N=基で置換されていてもよく、A中、任意の水素原子は、ハロゲン原子、−CF3基、−CHF2基、−CH2F基、−OCF3基、−OCHF2基、または−OCH2F基で置換されていてもよく、Y1は、単結合、炭素数1〜4のアルキレン基、−O−基、−S−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、−C≡C−基、−N=N−基、−N(O)=N−基、−CO−基、またはそれらの任意の組み合わせを表し、Y1中、任意の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、Bは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子、−C≡C−CN基、−CN基、−OCF3基、または−OCHF2基を表し、上記アルキル基において任意の−CH2−基は、−O−基、−S−基、−CO−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、または−C≡C−基で置換されていてもよく、B中、任意の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、mは、1〜4の整数を表す)
で示される構造を有していることが好ましい。
また、上記基(W)は、下記一般式(2)
Q−〔X〕n−(A−Y1)m−B…(2)
(式中、Qは、−OH基、−NH2基、−NCO基、−SH基、−COOH基、−CH=CH2基、−M(T)3基、エポキシ基、またはオキサゾリン基を表し、−CH=CH2基の水素原子は炭素数1〜12のアルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、−M(T)3基のMはSi原子、Ti原子、またはAl原子を表し、Tは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、不飽和構造を含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、〔X〕は、結合基(Z)を含み、側鎖を有していてもよい2価の有機基を表し、nは1〜4の整数を表し、Aは、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、または1,4−フェニレン基を表し、A中、任意の−CH2−基は、−O−基、−S−基、または−CO−基で置換されていてもよく、任意の−CH2CH2−基は、−CH=CH−基で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基における任意の−CH=基は−N=基で置換されていてもよく、A中、任意の水素原子は、ハロゲン原子、−CF3基、−CHF2基、−CH2F基、−OCF3基、−OCHF2基、または−OCH2F基で置換されていてもよく、Y1は、単結合、炭素数1〜4のアルキレン基、−O−基、−S−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、−C≡C−基、−N=N−基、−N(O)=N−基、−CO−基、またはそれらの任意の組み合わせを表し、Y1中、任意の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、Bは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子、−C≡C−CN基、−CN基、−OCF3基、または−OCHF2基を表し、上記アルキル基において任意の−CH2−基は、−O−基、−S−基、−CO−基、−CH=CH−基、−CF=CF−基、または−C≡C−基で置換されていてもよく、B中、任意の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、mは、1〜4の整数を表す)
で示される化合物に由来する基であることが好ましい。
液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造を有する上記基(W)は、液晶化合物との相溶性に優れている。
液晶類似構造または液晶中間体構造を有する、例えば上記一般式(2)で示される化合物は、液晶材料(ネマチック液晶)との相溶性が高く、液晶材料に溶解する。
このように、上記基(W)は、液晶材料中で溶解し、液晶材料中での安定化のための安定化剤として作用する。また、結合基(Z)を含む、液晶類似構造および液晶中間体構造のうち少なくとも一方の構造は、上記微粒子に、液晶材料中での立体障害を与える。このため、上記微粒子は、記液晶材料に安定して分散するとともに、例えば、従来比で約10倍もの高濃度分散が可能である。このため、上記の構成によれば、例えば、液晶材料の見かけの屈折率異方性を、等方相転移温度(NI点)の変化や液晶相の相変化を生じさせることなく容易に調整することができる。
したがって、上記の構成によれば、液晶との相溶性が高く、例えば液晶中での微粒子分散性に優れた微粒子を提供することができるという効果を奏する。
しかも、上記微粒子は、上記基(W)が、結合基(Z)を介して当該微粒子の表層部に共有結合していることで、上記基(W)は、上記表層部に強固に結合している。このため、上記基(W)が物理的負荷で剥がれることがなく、液晶材料中での安定した微粒子の分散を実現することができるのみならず、例えば、上記微粒子を含む液晶組成物を液晶表示素子に使用した場合に、上記基(W)が、上記液晶表示素子内で剥がれ、不純物として悪影響を及ぼすことがない。
上記の構成によれば、液晶材料中に、ナノサイズの微粒子を高濃度に分散させることによる等方性ネマチック相の実現が可能となる。よって、本発明によれば、幅広い温度範囲での超高速応答や広視野角を特徴とするカー効果ディスプレイ、あるいはカー効果デバイスの実用化が可能となるという効果を奏する。
また、上記微粒子は、上記基(W)が、液晶との相溶性に優れ、かつ、当該微粒子表面に強固に固定されていることで、種々の用途への応用も可能である。特に、液晶表示性能の向上に当たっては、各種の光制御板が用いられることがあり、この光制御板には光学的に等方的な性質が求められるが、押し出し成型、キャスト等の製造プロセスでは、延伸作用により複屈折性が発現し、例えば透過偏光の偏光状態が変化してしまう等の問題を引き起こす。しかしながら、本発明によれば、本発明にかかる上記微粒子を、上記光制御板に混入することで、これら製造プロセスに起因する複屈折性を解消することができるという効果を奏する。
また、上記微粒子における上記結合基(Z)は、窒素原子および酸素原子のうち少なくとも一方を含む極性結合基であることが好ましい。
上記の構成によれば、液晶材料中での電気的反発による立体的障害が増し、液晶材料中での分散性により一層優れた微粒子を得ることができるという効果を奏する。
また、上記極性結合基は、ウレタン結合、尿素結合、アミド結合、エステル結合、チオウレタン結合、およびチオエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合を含む基であることが好ましい。
微粒子の液晶材料への分散の安定化のためには、引力と斥力とのバランス、具体的には、上記結合基(Z)による電気的反発と、上記液晶類似構造や液晶中間体構造による液晶材料に対する相溶性の向上および微粒子間接触の回避とのバランスが保たれていることが望ましい。ウレタン結合、尿素結合、アミド結合、エステル結合、チオウレタン結合、およびチオエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合を含む基は、これらのバランスを保つ上で、非常に有効である。
また、上記一般式(2)で示される化合物は、常温で液体であることが好ましい。
なお、上記一般式(2)で示される化合物において、〔X〕で表される有機基が、上記結合基(Z)の少なくとも一方に、水素原子または酸素原子を含む炭素数2〜12の有機基を有していると、液化し易く、常温で液体の液晶性モノマーを容易に得ることができる。
上記液晶性モノマーが、常温で液体であると、上記微粒子を液晶材料に分散させて使用する場合に、得られる液晶組成物の粘性が下がるとともに、得られる液晶組成物中での上記微粒子の分散安定性を向上させることができる。したがって、さらなる高充填、高分散が期待できるという効果を奏する。
上記微粒子が、表面が有機層で覆われた無機微粒子である場合、つまり、液晶類似構造および液晶中間体構造を有さない化合物が無機化合物であり、上記構成体の表面が、有機層(基(W)を備えた有機成分(化合物(CW))からなる有機層)で覆われている場合、上記基(W)を、微粒子表面に確実に付与することができる。また、コアとなる上記構成体(核粒子)として用いられる無機微粒子には、汎用的なナノレベルの微粒子の種類が多く、上記構成体(核粒子)の表面から、比較的少ない量で上記有機成分をグラフトすることが可能であり、液晶組成物中に、微粒子を安定的に分散させることができるという利点を有している。
また、上記微粒子が有機成分のみからなる微粒子(有機微粒子)である場合、前記した液晶類似構造および/または液晶中間体構造を、微粒子表面、または、微粒子表面および内部に付加し易く、また、その付加量、すなわち、上記微粒子における液晶類似構造および/または液晶中間体構造の含有量も容易に調整することができる。さらに、有機微粒子は液晶組成物に近い比重であることから、沈降による物性低下の影響を低減することができるという利点を有している。
上記微粒子が、その表面が有機層で覆われた無機微粒子である場合、上記微粒子中の有機成分の割合、つまり、上記微粒子における有機成分と無機成分との合計量に占める有機成分の割合は、1.0wt.%以上、60.0wt.%以下の割合であることが好ましい。
上記有機成分の割合が1.0wt.%未満であると、得られる微粒子の液晶組成物中での安定化が難しくなる。このため、上記微粒子を液晶組成物中に高充填させるに従い、上記微粒子の凝集を制御することが困難となる。一方、上記有機成分の割合が60.0wt.%を超えると、本発明にかかる微粒子として上記したように表面が有機層で覆われた無機微粒子を用いることによる利点が得られ難く、その有用性が少なくなる。
また、液晶材料中で、コアとなる上記構成体が溶解し、液晶物性を低下させたり、目的の液晶ドメイン化を阻害させたりする等の液晶組成物への影響を考慮すると、上記微粒子は、架橋構造を有していることが好ましい。より具体的には、上記微粒子は、液晶類似構造および液晶中間体構造を有さない化合物に由来する構造を含む構成体が、架橋構造を有していることが好ましい。
特に、上記微粒子が、有機成分のみからなる微粒子である場合に、液晶類似構造および液晶中間体構造を有さない化合物に由来する構造を含む構成体が、架橋性化合物によって架橋されていることで、液晶類似構造含有化合物および/または液晶中間体構造含有化合物に由来する前記基(W)が側鎖となり、微粒子表面の安定化と同時に、微粒子同士の近接に対する立体的障害を与えることから、微粒子の液晶組成物中での分散性に大きく寄与し、目的の物性を維持することができる。
また、上記架橋性化合物は、多官能ビニル基含有化合物であることが好ましい。上記架橋性化合物として多官能ビニル基含有化合物を用いることで、得られる微粒子の粒子径を小さくすることができるとともに、目的の微粒子を、効率良く得ることができる。この場合、上記多官能ビニル基含有化合物が、ジビニルベンゼンおよびジ(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる群より選ばれる、少なくとも1種の化合物を含むことで、反応性、粒子径制御性が向上するとともに、上記微粒子を安価かつ効率良く得ることができる。
また、上記微粒子は、上記基(W)を有する化合物(CW)と、上記架橋性化合物とを共重合させてなり、かつ、上記化合物(CW)と架橋性化合物との合計量に占める上記化合物(CW)の割合が、10wt.%以上であることが好ましい。
上記化合物(CW)と架橋性化合物との合計量に占める上記化合物(CW)の割合が、10wt.%以上であると、長期にわたってナノオーダーの粒子径を維持することができ、優れた分散安定性を得ることができる。
また、上記液晶組成物において、上記微粒子の平均粒子径は、1nm以上、100nm以下の範囲内であることが好ましい。このように、上記微粒子の平均粒子径を1nm以上、100nm以下の範囲内とすることで、表面に液晶分子がランダム配向した、可視光に対して透明な微小ドメインを形成することができる。
また、上記液晶組成物において、上記微粒子の含有率は、5wt.%以上、70wt.%以下の範囲内であることが好ましい。
上記微粒子の含有率が5wt.%未満であると、上記微粒子を含む液晶組成物を、液晶表示素子における光学変調層に使用した場合、目的の液晶のドメイン形成が不十分であり、超高速、広視野角の特徴を十分発揮できない場合がある。一方、上記微粒子の含有率が70wt.%を超えると、高粘度化するおそれがある。よって、上記微粒子の含有率は、5wt.%以上、70wt.%以下の範囲内であることが好ましい。
また、上記液晶組成物において、互いに隣接する上記微粒子間の距離の平均値は、3nm以上、40nm未満であることが好ましい。
微粒子径は、小さければ小さいほど、液晶材料中に分散する微粒子の割合を減らすことができる。しかしながら、一方で、粒径が小さくなればなるほど微粒子が凝集し易くなる。このため、実用的には、上記液晶組成物において、互いに隣接する上記微粒子間の距離の平均値は、3nm以上、40nm未満であることが好ましい。
また、上記液晶組成物は、可視光に対して透明であることが好ましい。
カー効果は、入射光に対して透明な媒質中で観測される。上記の液晶組成物は、幅広い温度範囲での超高速応答や広視野角を特徴とするカー効果ディスプレイやカー効果デバイス等に好適に用いることができる。
このように、上記微粒子は、液晶表示素子用の微粒子として、特に好適に用いることができる。
すなわち、上記液晶表示素子は、以上のように、対向して設けられた一対の基板間に、本発明にかかる上記液晶組成物からなる層が挟持されている構成である。
上記液晶表示素子は、上記一対の基板のうち一方の基板上に櫛歯電極を備えていることが好ましい。
また、上記液晶表示素子は、上記一対の基板のうち少なくとも一方の基板に電極が配設されているとともに、少なくとも一方の基板の表面に配向膜が配設されている構成を有していてもよい。上記配向膜は、水平配向膜または垂直配向膜であることが好ましい。
さらに、上記液晶表示素子において、上記一対の基板のうち少なくとも一方の基板上には、アクティブ素子が形成されていることが好ましい。
上記液晶表示素子が、対向して設けられた一対の基板間に、本発明にかかる上記液晶組成物からなる層が挟持されている構成を有していることで、液晶材料に求められる各種液晶物性値を、ネマチック−等方相転移温度(NI点)や電圧保持率(VHR)を低下させることなく容易に調整することができる。
また、本発明によれば、液晶組成物中に、微粒子を高分散、高充填することが可能であることから、これまで困難であった微粒子分散型カー効果デバイスの実用化を可能とすることができるという効果を奏する。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。