JP5196401B2 - 液晶素子材料とそれを用いた液晶素子と液晶素子材料の製造方法 - Google Patents

液晶素子材料とそれを用いた液晶素子と液晶素子材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高速度応答が可能でありながら、動作電圧の上昇あるいは電圧保持率の低下を生じることのない液晶素子材料とそれを用いた液晶素子とその液晶素子材料の製造方法に関するものである。
表示装置として用いられる液晶素子材料は、液晶分子を電気的に動作させることで液晶分子が持つ屈折率異方性を利用して表示を可能とするが、粘性や弾性によってその特性が支配されており、応答時間が長いことや温度依存性が存在するなどの実使用において不安定要素が存在する。
このような課題を解決するために、例えば、特許文献1に開示される発明では、「高速度応答液晶素子及び駆動方法」として、液晶分子保護金属ナノ粒子を液晶に添加する液晶表示素子に関する技術を用いている。
この特許文献1に開示される発明では、液晶層にナノ粒子からなる核とその周囲に設けられた液晶分子または液晶様分子とから構成される液晶相溶性粒子が溶解もしくは分散されていることを特徴とするものである。
このように液晶層に液晶分子または液晶様分子で保護されたナノ粒子を分散添加することにより、電気光学応答に広範囲の周波数依存性を持たせることができ、印加電界の周波数を切り換えることにより、高速の電気応答を得ることができるのである。
また、特許文献2では、「液晶電気光学素子、液晶電気光学素子材料、液晶電気光学素子材料の製造方法、及び液晶電気光学素子の使用方法」として、液晶層が、液晶母体と、その中に分散している直径数ナノメータから数100ナノメータの金属超微粒子からなる混合系からなり、基板の積極的配向構造に印加する信号の周波数を変化させることにより、または電圧を変化させることにより、液晶電気光学素子の光の透過率を制御する技術が開示されている。
本特許文献2に開示される発明においては、金属超微粒子の周囲には液晶分子あるいは液晶様分子は存在していないものの、特許文献1と同様の効果を発揮しうるものである。
特開2004−347618号公報 特開2005−148705号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された従来の技術では、確かに、電気光学応答の高速化や低温における温度依存性の改善は可能であるものの、これらの文献に開示される方法では、液晶素子の動作電圧の上昇や電圧保持率の低下を招いてしまうという課題があった。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、本願発明者が鋭意研究を実施した結果として、液晶素子の高速度応答や温度依存性の改善を可能としながら、動作電圧の上昇及び電圧保持率の低下を抑制可能な液晶素子材料とそれを用いた液晶素子とその液晶素子材料の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である液晶素子材料は、液晶母体に高分子化合物で保護したナノ粒子を分散させた液晶素子材料であって、前記高分子化合物は、PVP又はPVPを含む共重合体であり、前記ナノ粒子は、1又は複数の金属原子又は酸化物又は半導体、あるいは1又は複数の金属原子、酸化物、半導体のうち少なくとも2種類の複合系からなる核を構成することを特徴とするものである。
このように構成された液晶素子材料では、高分子化合物であるPVP又はPVPを含む共重合体で保護されたナノ粒子の液晶母体中での分散が、液晶素子の高速度応答の改善に作用する。また、電気的に中性のPVP又はPVPを含む共重合体でナノ粒子を保護することで、ナノ粒子のキャリアー的性質が緩和され、液晶母体が存在する液晶層において電圧が印加された場合でも、ナノ粒子の移動を抑制し、よって印加電界を乱すことがないという作用を有する。
また、ナノ粒子は、単体である必要や一種類の粒子である必要はなく、1つあるいは複数の金属原子又は酸化物又は半導体である場合、あるいは金属原子、酸化物、半導体のうち少なくとも2種類の複合系からなる核を構成してよい。複数の金属原子又は酸化物又は半導体は、一種類で複数の金属原子又は酸化物又は半導体の場合と複数種類の金属原子又は酸化物又は半導体である場合の2通りを含む概念である。なお、ナノ粒子の平均粒子径は、1nm以上100nm以下であることが望ましい。その理由は、液晶素子の電極間距離が狭くなって、今や2μm(2,000nm)のものまで現われはじめており、ナノ粒子が大きすぎるとこのギャップ間に均一に分散させることが困難になるからである。一方、ナノ粒子が小さすぎると、不安定になり原子に近づくので、ナノ粒子特有の性質を示さなくなるので、少なくとも0.5nm以上、好ましくは1nm以上のものがよい。
請求項に記載の発明である液晶素子材料は、請求項に記載の発明において、前記ナノ粒子における金属原子はパラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、金(Au)のうちいずれか1つの金属原子であり、前記酸化物は酸化亜鉛(ZnO)、二酸化珪素(SiO)、酸化チタン(TiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)のうちいずれか1つの酸化物であり、前記半導体は硫化カドミウム(CdS)又はセレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)、テルル化銅(CuTe)のうち、いずれか1つのカルコゲナイドであるものである。
このように構成された液晶素子材料においても、請求項に記載の発明と同様の作用有する。
請求項に記載の発明である液晶素子材料は、請求項1又は請求項2に記載の液晶素子材料において、前記液晶母体は、ネマティック液晶、スメクテック液晶、カイラルネマティック液晶、カイラルスメクテック液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶のうち少なくとも1つの液晶分子からなるものである。
このように構成される液晶素子材料においては、請求項1又は請求項2に記載の発明と同様の作用を有する。
請求項に記載の発明である液晶素子材料は、液晶母体に高分子化合物のみからなるナノ粒子を分散させ液晶素子材料であって、前記高分子化合物は、PVP又はPVPを含む共重合体であるものである。
請求項に記載の発明は、請求項が高分子化合物であるPVP又はPVPを含む共重合体で保護されたナノ粒子を液晶母体に分散させたものであるのに対して高分子化合物であるPVP又はPVPを含む共重合体のみからなるナノ粒子を分散させたものである。
このように構成された液晶素子材料では、核となるナノ粒子を含まないため、このナノ粒子を介して高分子化合物が結合することがないため、液晶層における粘性を増加させる作用については請求項における作用に比較して劣るものの、高分子化合物であるPVP又はPVPを含む共重合体のみからなるナノ粒子であることから、粘性をある程度高めることができ、液晶中のイオン等の夾雑物の移動を抑制し、液晶層での印加電界の乱れを防止するという作用を有する。
請求項に記載の発明である液晶素子は、一対の平行な基板と、これらの基板の対向する内側面にそれぞれ設けられた導電膜と、これら導電膜の対向する内側面に設けられる液晶分子配向膜と、これら液晶分子配向膜の間に形成される液晶層と、を有する液晶素子であって、前記液晶層は、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載された液晶素子材料から構成されるものである。
このように構成される液晶素子では、それぞれ請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載される液晶素子材料を構成要素に含むことから、それぞれの作用を有するものである。
請求項に記載の発明である液晶素子材料の製造方法は、PVP又はPVPを含む共重合体のいずれかの高分子化合物を含む溶液中で、Pd,Pt,Rh,Ru,Ag,Auのうち少なくともいずれか1種類の金属のイオンを還元することによって、少なくともいずれか1種類の前記金属の原子からなる核を構成するナノ粒子の周囲に前記高分子化合物を結合させて高分子化合物保護ナノ粒子を形成させ、この高分子化合物保護ナノ粒子を含む前記溶液を分画分子量5,000以上のフィルターでろ過し、ろ過精製後の前記高分子化合物保護ナノ粒子を液晶母体に分散させることを特徴とするものである。
このように構成される液晶素子材料の製造方法においては、PVP又はPVPを含む共重合体のいずれかの高分子化合物を含む溶液中での還元が、Pd,Pt,Rh,Ru,Ag,Auのうち少なくともいずれか1種類の金属原子からなる核を構成するナノ粒子を先の高分子化合物で保護する作用を有し、また、分画分子量5,000以上のフィルターでろ過して、これ以上の分子量を備えた高分子化合物保護ナノ粒子を得て、これを液晶母体に分散させるため、液晶層で粘性を発揮して印加電界の乱れを抑制可能な高分子化合物保護ナノ粒子を分散させる作用を有し、さらに、液晶層での印加電界の乱れを生じさせてしまう金属イオン等の荷電粒子や夾雑物が混入することをも抑制する作用を有する。
本発明の液晶素子材料とそれを用いた液晶素子と液晶素子材料の製造方法では、高分子化合物で保護されたナノ粒子あるいは高分子化合物のみからなるナノ粒子を液晶母体中で分散させることによって、ナノ粒子の移動を抑制するので、印加電界を撹乱することがなくナノ粒子を安定して分散させることができるという効果を発揮する。
その結果、液晶素子の高速度応答や温度依存性の改善を可能にしながら、電圧保持率の低下や動作電圧の上昇を抑制することができるという優れた効果を発揮することができる。
以下に、本発明の最良の実施の形態に係る液晶素子材料について図1乃至図11を参照しながら説明する。
図1(a)は、第1の実施の形態に係る液晶素子材料に係る高分子化合物保護ナノ粒子の構造を示す概念図であり、(b)は液晶配向膜間に形成された液晶層を構成する液晶素子材料を示す概念図である。
図1(a),(b)において、液晶層2を構成する液晶素子材料15の高分子化合物保護ナノ粒子10は、核となるナノ粒子12としてパラジウム(Pd)金属原子よりなるナノ粒子を備えており、その周囲に高分子化合物14が複数結合している。この周囲に結合した高分子化合物14によって保護層13を形成している。
高分子化合物14としては、PVP、PVPを含む共重合体又はポリシクロデキストリンが採用され、これらの分子量は5,000以上となっている。高分子化合物14が5,000以上の分子量を備えることで、図1(a)に示されるようにひも状に形成され、多点で核となるナノ粒子12に結合させることができる。多点で結合することで、核となるナノ粒子12との結合力が増加してより安定した保護層13を備えた高分子化合物保護ナノ粒子10を提供することができる。分子量が5,000以下の高分子化合物の場合には、核となるナノ粒子12との結合箇所数が少なくなり、保護層13の安定性が薄れてしまうため望ましくない。
高分子化合物14のうち、例えばPVPあるいはPVPを含む共重合体であれば、窒素原子(N)あるいは酸素原子(O)を含む官能基が備わっており、この官能基とパラジウム(Pd)などの金属ナノ粒子とが配位結合する。また、ポリシクロデキストリンのような高分子化合物14の場合にはOH基を備えており、このOH基を含む官能基とPdなどの金属原子が配位結合している。
図1(a)中、Pdナノ粒子の数は、特に1つであることを必要としているのではなく、複数でもよいし、Pdなどの金属原子に加えて酸化物や半導体を利用してもよい。
図1(b)は、図1(a)に示した高分子化合物保護ナノ粒子10を液晶配向膜4a,4b間に形成される液晶層2内に液晶素子材料15として液晶分子11間に分散させている状態を示している。
図1(a),(b)に示すように核となるナノ粒子12を形成するパラジウム金属ナノ粒子は高分子化合物14と結合することで、周囲に保護層13を備えて、これが液晶層2内で粘性を発揮して、液晶層2内で移動しないように働くので、印加電界が乱れることなく、液晶層2内での高分子化合物保護ナノ粒子10の安定な分散を実現するのである。さらに、液晶素子の高速度応答や温度依存性の改善を可能にしながら、電圧保持率の低下や動作電圧の上昇を抑制することができる。
本実施の形態においては、高分子化合物としてPVPを用い、核を形成するナノ粒子としてパラジウム金属原子によるナノ粒子を用いたが、分子量が5,000以上の高分子化合物であって、窒素原子(N),酸素原子(O),リン原子(P),イオウ原子(S)のいずれかを含む官能基を備えた高分子化合物であれば、金属ナノ粒子あるいは金属酸化物、あるいは半導体によって形成される核を備えたナノ粒子であっても配位結合、水素結合あるいは疎水結合などによって核を保護する層を形成することが可能であり、特に限定するものではない。なお、前述のとおり、PVP及びPVPを含む共重合体は窒素原子(N)及び酸素原子(O)を含む官能基を備えており、ポリシクロデキストリンは、OH基を含む官能基を備えている。
なお、窒素原子(N),酸素原子(O),リン原子(P),イオウ原子(S)のいずれかを含む官能基の例としては、NH基、OH基、CO基、NHCO基(アミド基)、SH基、リン酸エステル基などの特性基を含む官能基が挙げられる。
また、金属ナノ粒子の場合には、パラジウム(Pd)の他、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、金(Au)のうちいずれか1つの金属原子を用いることが望ましい。その理由は、これらの金属原子のナノ粒子が化学的にも安定であり、これらを用いることで液晶素子の動作寿命や安定性の点で優れるためである。
さらに、液晶層2を形成する液晶母体は、ネマティック液晶、スメクテック液晶、カイラルネマティック液晶、カイラルスメクテック液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶のうち少なくとも1つの液晶分子から構成されている。このうち、特に、ネマティック液晶が現状では好ましい。
液晶分子11としては、ペンチルシアノビフェニル(5CB)などが代表的であるが特に限定するものではない。また、高分子化合物保護ナノ粒子10の添加濃度としては、0.01wt%〜10wt%であることが望ましい。0.01wt%以下である場合には、その効果が少なくなり、10wt%以上となると、液晶母体への分散が困難だからである。
これらの金属ナノ粒子、液晶母体、液晶分子等の種類については、以下の他の実施の形態に係る液晶素子材料等においても同様である。
本実施の形態においては、パラジウム(Pd)という金属原子を、核となるナノ粒子12に採用したが、金属原子の他にも酸化物や半導体であってもよいし、金属原子と酸化物と半導体のうち少なくとも2種類を用いた複合系のナノ粒子でもよい。本願でいうこの2種類とは、金属原子や酸化物あるいは半導体同士であって種類の異なるものの場合と、金属原子と酸化物、酸化物と半導体、半導体と金属原子のように異なるカテゴリーのものであって異なる2種類のものという2通りの意味を含めるものである。
酸化物の例としては酸化亜鉛(ZnO)、二酸化珪素(SiO)、酸化チタン(TiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)のうちいずれか1つの酸化物であるものである。以下、他の実施の形態に係る液晶素子材料においても同様である。
これらの酸化物や半導体が採用され得る理由は、本願に示す高分子化合物と多点で結合し、高分子を架橋する力を持つと共に液晶母体中のイオンなどの不純物、夾雑物を吸着する性質を持つからである。また、半導体としては、他の実施の形態も含めて、硫化カドミウム(CdS)やセレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)、テルル化銅(CuTe)等のカルコゲナイドをナノ粒子としてもよい。
以上のように説明した高分子化合物保護ナノ粒子を液晶母体に分散させることによって本実施の形態に係る液晶素子材料を得ることができる。
次に、図2(a)、(b)及び図3乃至図5を参照しながら、高分子化合物保護ナノ粒子の説明を追加する。
図2(a)は、核となるナノ粒子12としてパラジウム(Pd)金属原子を用いて、その周囲をPVPで保護した高分子化合物保護ナノ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真を示し、(b)はこのナノ粒子の粒径分布図を示している。
図2(a),(b)によれば、透過型電子顕微鏡では高分子保護層は観察され難いので本実施の形態に係る高分子化合物保護ナノ粒子中のナノ粒子が観察されているものと考えられるが、ナノ粒子の平均粒径は2.8nmであり、その標準偏差は1.0nmであることが理解される。
なお、図2(b)におけるR=0.5のRとは、PVPのモノマーユニットの金属原子数に対する比を意味している。実施例で示す実験では、PVP量を一定とするため、R=0.5の場合には、金属濃度が2重量パーセント(2wt%)で調製し、R=1の場合には、金属濃度が1wt%で調製している。図2(a)のTEM写真もR=0.5の場合を示しており、また、この図中には100nmのスケールを示している。
次に、第2の実施の形態として、図3に核となるナノ粒子12としてZnSを用いて、その周囲をPVPで保護した高分子化合物保護ナノ粒子のTEM写真を示す。図中のスケールは100nmを示している。図2(a)と同様に、高分子化合物保護ナノ粒子中のナノ粒子が観察されているものと考えられるが、ZnSナノ粒子の平均粒径は6nmであった。
また、第3の実施の形態として、図4に核となるナノ粒子12としてCdSを用いて、その周囲をPVPで保護した高分子化合物保護ナノ粒子のTEM写真を示す。図中のスケールは図3と同様に100nmを示している。また、CdSナノ粒子の平均粒径は8nmであった。
さらに、第4の実施の形態として、図5に核となるナノ粒子12としてCdS/ZnS複合系ナノ粒子を用いて、その周囲をPVPで保護した高分子化合物保護ナノ粒子のTEM写真を示す。図中のスケールは図3と同様に100nmを示している。また、CdS/ZnS複合系ナノ粒子の平均粒径は4nmであった。
図1乃至5に示されるような高分子化合物保護ナノ粒子10によれば、核となるナノ粒子12を構成する例えば金属原子や半導体などのようにイオン化されてしまう場合や、あるいは液晶分子によって金属原子や半導体などが保護された場合のようにキャリアー的性質を備えてしまう場合に、保護層13を構成する電気的に中性の高分子化合物14が結合することでイオン化を抑制したり、あるいは液晶分子とは異なりキャリアー的性質を備えないようにしながら、しかも液晶層2内で分散されることによって粘性を増すため、液晶に電圧が印加された場合であっても金属ナノ粒子や液晶分子保護のナノ粒子に比較して移動し難く、よって印加電界の擾乱を抑制することができる。また、半導体や酸化物は高分子化合物と多点で結合し、高分子を架橋する力を持つと共に、液晶母体中のイオンなどの不純物、夾雑物を吸着する性質を持っているので、このことによっても印加電界の擾乱を抑制することが可能である。従って、印加電圧(動作電圧)の上昇を抑制すると同時に電圧保持の機能を発揮することができる。
さらに、高分子化合物保護ナノ粒子10の核となるナノ粒子12の存在によれば、液晶分子の配列に欠陥を生じさせることが可能であるため、液晶に電圧が印加された場合に液晶分子が配列を変えようとするとその欠陥の部分から配列を変えやすくなるという効果が発生する。この効果は元に戻る際にも同様に発揮される。従って、欠陥が小さな乱れとなり、この乱れが存在する小さな範囲で分子が一斉に動けばよいため動きが早くなる。このような効果が発揮されることで、高速応答化を発揮することができる。
なお、高速応答化については、液晶分子の配列に欠陥を生じさせる目的でのナノ粒子であることから、そのナノ粒子として金属原子、酸化物や半導体であってもよいし、金属原子と酸化物と半導体のうち少なくとも2種類を用いた複合系のナノ粒子でもよい。
これらの効果、すなわち、印加電圧(動作電圧)の上昇抑制及び電圧保持機能に併せて高速応答機能が相互に発揮されることによれば、より高品位な液晶素子、液晶表示装置を実現することができる。
次に、図6乃至図11を参照しながら、第1の実施の形態に係る液晶素子材料に係る動作特性について説明する。
液晶としてはフッ素系実用液晶であるRDP−94561(DIC株式会社製)を用い、本実施の形態に係るPVPで保護したPdを含む10倍濃縮コロイド溶液(図13を参照しながらその製造方法については後述する。)と混合し、50℃で一晩減圧乾燥させたものを加熱撹拌してセルギャップ5μmのTN(ねじれネマティック)用空セルへ注入して、ねじれネマティックTN液晶セルとしてこれを使用した。
図6は、この液晶セルを使用して温度を−20℃、印加電圧の周波数を100Hzとして、液晶に高分子化合物保護ナノ粒子を分散させていない試料を用いた場合と、液晶に本実施の形態に係る高分子化合物としてPVPを用いてパラジウム(Pd)金属原子よりなるナノ粒子を保護したものを分散させた場合であってPdの全液晶に対するに対する割合を2重量%とした試料の場合の応答時間を測定して比較を行った結果を示すグラフである。
液晶表示において最も応答時間に対する光の透過率変化が緩やかとされる透過率が100%から90%に到達するまでの変化を示している。電圧を印加してから応答を開始するまでの遅れ時間が、PVPのみの場合に比較してPVP保護Pdナノ粒子の場合は圧倒的に短くなっており、さらに、透過率が変化量の90%から10%に変化する時間も添加していない場合が6.01secであるのに対して、PVP−Pd添加の場合は4.69secとなっており約22%の高速化が観測されている。
また、図中に示すとおり、PVP保護Pdを液晶に分散させた場合の透過率90%を可能とする動作電圧(印加電圧)は1.7Vと、高分子化合物保護ナノ粒子を分散せていない液晶の動作電圧(印加電圧)の1.85Vに比べると動作電圧の低下も同時に観測されている。
図7に、図6の測定で用いた液晶をそのまま用いて、温度を25℃と−10℃、周波数を100Hzとして、印加電圧をパラメータとして印加電圧−透過率変化のグラフを示す。図7(a)が温度25℃の場合で、(b)が温度−10℃の場合である。それぞれ、液晶に高分子化合物保護ナノ粒子を分散させていない試料を用いた場合(RDP−94561pure)、本実施の形態に係る高分子化合物としてPVPを液晶に分散させて核を備えていないナノ粒子とした試料を用いた場合(RDP−94561+PVPonly)、液晶に本実施の形態に係る高分子化合物としてPVP、保護されるナノ粒子の核としてパラジウム(Pd)を用いた場合であって、Pdの全液晶に対する割合を1重量%とした試料の場合(PVP−Pd R=1(1wt%))、同様に2重量%とした試料の場合(PVP−Pd R=0.5(2wt%))の4通りについて印加電圧に対する光の透過率を測定した結果を示している。
この図7から、25℃及び−10℃のいずれであっても、すなわち作動温度に無関係に、PVPやPVP保護パラジウムナノ粒子を液晶にドープ、分散させても、光の透過率を変化させるという本来の性能に対して動作電圧の上昇といった悪影響を及ぼしていないことが示された。
すなわち、PVPあるいはPVP保護の金属原子等のナノ粒子を添加しても25℃においては動作電圧には影響がないことが理解される。あるいは図6に示される結果からすれば、むしろ動作電圧は低下することも理解される。
次に、図8(a),(b)及び図9を参照しながら本実施の形態に係る液晶素子材料を用いた液晶の電圧保持率の測定を行ったのでその結果について説明する。
図8(a)は液晶のRDP−94561を用いた場合、(b)は液晶のMO26(フッ素系高屈折率異方性の実用液晶、DIC株式会社製)を用いて電圧保持率を測定した結果を示している。また、図9は、比較例として図8と同じ液晶のRDP−94561を用いつつ、高分子化合物で保護していない銀(Ag)とパラジウム(Pd)の複合系のナノ粒子をドープして分散させた場合の電圧保持の測定結果を示したものである。
図8(a),(b)ともに、(1)それぞれ液晶に高分子化合物保護ナノ粒子を分散させない場合、(2)高分子化合物としてPVPを液晶に分散させるもののナノ粒子を用いていない場合、(3)液晶に高分子化合物としてPVP、保護されるナノ粒子としてパラジウム(Pd)を用いた場合であって、Pdの全液晶に体する割合を1重量%とした場合、(4)(3)と同様であって2重量%とした場合の4通りについて印加電圧を5Vとして電圧保持率の測定を実施した。
図8(a)では、時間の経過によって保持される電圧値がほぼ一定であり、(1)から(4)のいずれの場合もほぼ98%という高い保持率を維持している。
一方、図8(b)に示される液晶MO26では、液晶のみで高分子化合物保護ナノ粒子を分散させない場合には、90.1%という高い電圧保持率を維持可能であるものの、高分子化合物保護ナノ粒子あるいは高分子化合物のみをドープして分散させた場合には、液晶のみの場合よりも電圧保持率が低下している。
また、(a)ではほぼ同じだった電圧保持率は、(b)では、高分子化合物のみを分散させた場合が最も電圧保持率が高く87.6%となり、高分子化合物保護ナノ粒子を用いた場合で、しかもその濃度(重量%)が高いR=1の方が、電圧保持率が低下して77.3%となっていることが理解できる。
一方、図9に示すように高分子化合物による保護がないナノ粒子においては、5Vの電圧の印加から0.005秒に至るまでの間に既に1Vの電圧保持もできておらず、逆に負側の−5Vの電圧印加からも0.005秒経過するまでに−1Vの電圧保持もできていない。
従って、図8(a),(b)に示される高分子化合物保護によるナノ粒子の電圧保持率の高さは際立っていることが理解できる。
このことから、図1及び図2を参照しながら説明したとおり、高分子化合物保護ナノ粒子によれば、核を構成する今回のPdなどのような導電性を備えてイオン化可能な金属原子であっても、保護層を構成する電気的に中性の高分子化合物が、金属原子のキャリアー的性質を緩和しながら、液晶層内で分散されることによって粘性を増すため、液晶に電圧が印加された場合であっても金属ナノ粒子に比較して移動し難く、よって印加電界の擾乱を抑制することができると考えられる。よって、より高い電圧保持機能を発揮することができると考えられる。
次に、表1乃至表3を参照しながら、本発明に係る液晶素子材料の第2の実施の形態乃至第4の実施の形態における動作特性について説明する。
第2の実施の形態に係る液晶素子材料(PVP保護のZnSナノ粒子)に対し、液晶としては第1の実施の形態と同様にフッ素系実用液晶であるRDP−94561(DIC株式会社製)を用いた。
PVPを保護剤としたZnSナノ粒子分散液(本ZnSナノ粒子分散液の製法については後述する。)から、ZnS 1.005mg相当分を分取し、これを先のフッ素系液晶RDP−94561 200mgに加えてよく攪拌後、高真空下60℃で24時間処理することにより、0.5wt%ドープしたPVP−ZnS/RDP−94561液晶を得た。これをセル厚5μmのTN型液晶セルに注入し、LCD5200液晶評価装置(大塚電子株式会社製)により、矩型波100Hzの交流を印加して電気光学測定を行った。
本実施の形態に係る液晶素子材料を注入した液晶セルでは、いずれも電圧保持率が90%以上であった。3サンプルの平均値でVsat(10%透過率での印加電圧)における立ち上がり速度tおよび立ち下り速度tを25℃で求めた結果を表1に示す。表1から理解されるように、0.5wt%でtでは無添加のRDP−94561に比べ17%加速が認められたが、tではわずかに4%の改善にとどまった。なお、表1の立ち上り時間tは、明表示から暗表示に変化するときの光の透過率が全変化量の90%から10%にまで変化するに要する時間であり、立下り時間tは、暗表示から明表示に変化するときの光の透過率が全変化量の10%から90%まで変化するに要する時間である。以下、同様である。
同様に、1.0wt%ドープのPVP−ZnS/RDP−94561液晶を得て、測定を行った結果、無添加のRDP−94561時に比べ、tでは14%の加速となったものの、tでは17%の減速が認められた。
また、第3の実施の形態に係る液晶素子材料(PVP保護のCdSナノ粒子)に対し、液晶としては第1及び第2の実施の形態における液晶素子材料と同様に、フッ素系実用液晶であるRDP−94561(DIC株式会社製)を用いた。
PVPを保護剤としたCdSナノ粒子分散液(本CdSナノ粒子分散液の製法については後述する。)から、CdS 1.010mg相当分を分取し、これを先のフッ素系液晶RDP−94561 100mgに加えてよく攪拌後、高真空下60℃で24時間処理することにより、1.0wt%ドープしたPVP−CdS/RDP−94561液晶を得た。これをセル厚5μmのTN型液晶セルに注入し、LCD5200液晶評価装置(大塚電子株式会社製)により、矩型波100Hzの交流を印加して電気光学測定を行った
本実施の形態に係る液晶素子材料を注入した液晶セルでは、いずれも電圧保持率が90%以上であった。3サンプルの平均値でVsatにおける立ち上がり速度tおよび立ち下り速度tを25℃で求めた結果を表2に示す。表2から理解されるように、無添加のRDP−94561時に比べ、1.0wt%添加時にtで32%減速となったが、tでは12%の加速が認められた。
同様に、0.5wt%ドープのPVP−CdS/RDP−94561液晶を得て測定を行った結果、無添加のRDP−94561時に比べ、tでは25%の減速となったものの、tでは14%の加速が認められた。
さらに、第4の実施の形態に係る液晶素子材料(PVP保護のCdS/ZnS複合ナノ粒子)に対し、第1乃至第3の実施の形態と同様にフッ素系実用液晶であるRDP−94561(DIC株式会社製)を用いた。
PVPを保護剤としたCdS/ZnSナノ粒子分散液(本CdS/ZnSナノ粒子分散液の製法については後述する。)から、CdS/ZnS 1.010mg相当分を分取し、これを先のフッ素系液晶RDP−94561 100mgに加えてよく攪拌後、高真空下60℃で24時間処理することにより、1.0wt%ドープしたPVP−CdS/ZnS/RDP−94561液晶を得た。これをセル厚5μmのTN型液晶セルに注入し、LCD5200液晶評価装置(大塚電子株式会社製)により、矩型波100Hzの交流を印加して電気光学測定を行った。
本実施の形態に係る液晶素子材料を注入した液晶セルでは、いずれも電圧保持率が90%以上であった。3サンプルの平均値でVsatにおける立ち上がり速度tおよび立ち下り速度tを25℃で求めた結果を表3に示す。表3から理解されるように、無添加のRDP−94561時に比べ、1.0wt%添加時にtで43%加速となった他、tでも32%の加速が認められた。
同様に、0.5wt%ドープのPVP−CdS/ZnS/RDP−94561液晶を得て測定を行った結果、無添加のRDP−94561時に比べ、tでは44%の加速となり、tでも30%の加速が認められた。
従って、PVP保護のZnSナノ粒子あるいはPVP保護のCdSナノ粒子では小さな加速効果しか認められなかった一方、複合系のPVP保護CdS/ZnSナノ粒子では、非常に大きな加速効果が発揮されており、複合系が極めて有効であることが理解された。
以上、第2乃至第4の実施の形態に係る高分子化合物保護ナノ粒子によっても、電圧保持率が90%と高い値を示したことから、保護層を構成する電気的に中性の高分子化合物が、半導体のキャリアー的性質を緩和しながら、液晶層内で分散されることによって粘性を増すため、液晶に電圧が印加された場合であっても半導体粒子に比較して移動し難く、よって印加電界の擾乱を抑制することができ、より高い電圧保持機能を発揮することができると考えられる。さらに、ナノ粒子を保護する高分子化合物によって液晶母体中のイオンなどの不純物や夾雑物が吸着されるため、このことによっても印加電界の擾乱が抑制され、電圧保持機能を発揮可能であると考えられる。
また、立ち上がり速度tおよび立ち下り速度tは、半導体(ZnS,CdS)をナノ粒子として用いる第2、第3の実施例でも限定的でありながらも高速応答化が見られたが、特に高速応答化の効果が著しく発揮されたのは、ZnSとCdSそれぞれの半導体の複合ナノ粒子であり、この複合ナノ粒子が特に有効であることが示された。
次に、図10及び図11を参照しながら、本発明に係る液晶素子材料の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態では、保護層として用いる高分子化合物にポリシクロデキストリン(PβCyD)を採用し、これによって保護されるナノ粒子の核として、酸化物である二酸化珪素(SiO)を採用している。
図10はマトリクス液晶としてペンチルシアノビフェニル(5CB)を用いて、これを液晶母体として、PβCyD保護SiOナノ粒子の添加、分散に伴う印加電圧(動作電圧)と光の透過率の関係を示すグラフであり、図11(a)はマトリクス液晶として前出のTFT用実用液晶RDP−94561を用い、薄膜トランジスタ(TFT)液晶ディスプレイとして同様の試験を行った結果を示すグラフであり、(b)は同じくTN用実用液晶のRDP−98342(DIC株式会社製)を用いてネマティック液晶ディスプレイとして同様の試験を行った結果を示すグラフである。
図10、図11(a),(b)に示されるグラフから、本実施の形態においては高分子化合物保護ナノ粒子の添加、分散によって、動作電圧が低下していることが示されている。具体的には、図10において、透過率が50%の際の動作電圧を無添加(undoped)の場合と添加の場合を比較すると、0.17Vの動作電圧低下が検出され、これは12.6%の動作電圧低下に相当する。
実用液晶を用いた図11(a),(b)においても同様であり、それぞれ0.16V(11.9%)と0.15V(11.1%)の動作電圧低下が検出されている。
本実施の形態では、先に図7を参照しながら説明した高分子化合物にPVPを用い、ナノ粒子の核としてパラジウム金属原子を用いた第1の実施の形態において動作電圧が変化しなかったことに比較すると、液晶素子としてはより好適な結果を実用液晶も含めて得ることができた。
以上説明したとおり、本実施の形態に係る高分子化合物保護ナノ粒子では、高分子化合物にPVPとは異なるポリシクロデキストリンを採用し、また、ナノ粒子の核としてPdとは異なるSiOのような酸化物を用いているが、このような場合においても、核を構成する今回の酸化物に保護層を構成する高分子化合物を結合させて液晶層内で分散されることによって粘性を増すため、液晶に電圧が印加された場合であっても移動し難く、印加電界の擾乱を抑制することができると考えられる。よって、動作電圧の上昇を招くどころか、高分子化合物保護ナノ粒子を添加しない場合に比較して動作電圧を低くすることができるという優れた効果を発揮し得ると考えられる。
本発明の第6の実施の形態に係る液晶素子材料について表4及び表5を参照しながら説明する。
本実施の形態では、保護層として用いる高分子化合物に第5の実施の形態と同様にポリシクロデキストリン(PβCyD)を採用し、これによって保護されるナノ粒子の核として、ロジウム(Rh)を採用している。
表4は、マトリクス液晶として実用液晶である前出のRDP−94561を用い、薄膜トランジスタ(TFT)液晶ディスプレイとして第3の実施の形態に係る高分子化合物保護ナノ粒子の添加濃度に対する応答速度の変化について測定を行ったものである。本測定では、印加電圧を6Vとして高分子化合物保護ナノ粒子を添加しない場合と添加した場合はRh量が全液晶中0.025wt%、0.05wt%、0.075wt%と濃度をパラメータとして実施している。また、表4において、tとは前述のとおり立ち上り時間、即ち明表示から暗表示に変化するときの光の透過率が全変化量の90%から10%にまで変化するに要する時間であり、tも前述のとおり立下り時間、即ち暗表示から明表示に変化するときの光の透過率が全変化量の10%から90%まで変化するに要する時間である。これらの時間は高分子化合物保護ナノ粒子を添加した場合は、すべて添加しない場合の応答時間よりも短縮化されており、高分子化合物保護ナノ粒子を添加することによって動作電圧の印加時に透過率が変動する際の応答速度が速くなっていることが示されている。
さらに、それぞれ高分子化合物保護ナノ粒子の添加の濃度が0.05wt%の場合が最も応答時間が短縮され、0.025wt%の場合あるいは0.075wt%の場合に比較して効果が高いことが理解される。
一方、表5は、表4における測定と同じくマトリクス液晶として実用液晶であるRDP−94561を用い、薄膜トランジスタ(TFT)液晶ディスプレイとして第6の実施の形態に係る高分子化合物保護ナノ粒子をR=1(0.05wt%)の添加濃度に調整し、印加電圧の周波数変化に対する応答速度の変化について測定を行ったものである。本測定においても印加電圧を6Vとし、その周波数を50Hz,100Hz,200Hzとパラメータとして、高分子化合物保護ナノ粒子を添加しない場合と前述のとおり0.05wt%添加した場合について実施している。
表5によれば、いずれの周波数においても高分子化合物保護ナノ粒子の添加・無添加間においてはt及びtの変動はあるものの、高分子化合物保護ナノ粒子を添加した場合、高分子化合物保護ナノ粒子を添加しない場合それぞれの条件においては、周波数を変化させてもt及びtの変動はなかった。すなわち、印加電圧に対する周波数依存性はないことが明らかとなった。
以上説明したとおり、本実施の形態に係る高分子化合物保護ナノ粒子では、高分子化合物にPVPとは異なるポリシクロデキストリンを採用し、また、ナノ粒子の核としてPdとは異なるRh金属原子を用いているが、このような場合においても、イオン化可能なRh金属原子に対して、保護層を構成する電気的に中性の高分子化合物がRh金属原子のキャリアー的な性質を緩和しながら、液晶層内で分散されることによって粘性を増すため、液晶に電圧が印加された場合であっても金属ナノ粒子に比較して移動し難く、よって印加電界の擾乱を抑制することができると考えられる。よって、高分子化合物保護ナノ粒子を添加しない場合に比較して、より短い応答時間で動作させることができる、すなわちより高速に動作させることができると考えられる。
また、前述のとおりナノ粒子の存在によれば、液晶分子の配列に欠陥を生じさせることが可能であるため、液晶に電圧が印加された場合に液晶分子が配列を変えようとするとその欠陥の部分から小さな乱れが発生し、配列を変えやすくなるという効果が発生し、この乱れが存在する小さな範囲で分子が一斉に動けばよいため高速に動作させることができると考えられる。
次に、図12(a),(b)を参照しながら本実施の形態に係る液晶素子について説明する。図12(a)及び(b)は、本実施の形態に係る液晶素子の断面の概念図である。
図12(a)において、一対の平行な基板1a,1bと、その内側面に透明導電膜3a,3bが設けられ、透明導電膜3a,3bの対向する内側面に液晶配向膜4a,4bが設けられ、これら液晶配向膜4a,4bの間に液晶層2が配置されている。
本実施の形態に係る液晶層2では、液晶分子11を配するマトリクス液晶に金属原子又は酸化物又は半導体あるいはこれらのうち少なくとも2種類の複合系から構成される核からなるナノ粒子とその周囲に結合して保護する高分子化合物を備える高分子化合物保護ナノ粒子10が分散されている。この高分子化合物保護ナノ粒子10には、先に液晶素子材料の実施の形態として説明した高分子化合物保護ナノ粒子10を採用しているが、その内容は既に第1乃至第6の実施の形態において説明しているので本実施の形態の説明では省略する。
マトリクス液晶としては、シアノビフェニル類、コレステリルエステル類、炭酸エステル類、フェニルエステル類、シッフ塩基類、ベンジジン類、アゾキシベンゼン類、キラル基を持つ強誘電性液晶、液晶高分子等を挙げることができる。
高分子化合物保護ナノ粒子10は、既に図1を参照しながら説明したとおり、パラジウム(Pd)等の金属原子、酸化物、半導体、あるいはこれらのうち少なくとも2種類の複合系からなる核となるナノ粒子12とその周囲に設けられた高分子化合物14からなる保護層13とから構成されている。
基板1a,1bは、少なくとも一方が透明であることが好ましく、厚さ1mm程度のガラス又は透光性樹脂から構成される。
透明導電膜3a,3bは、可視光の透過率及び電気伝導度の高いものが好ましい。具体的には、ITO、ZnO、In−ZnOなどの材料が用いられ、スパッタリング法などにより成膜されて形成される。
液晶配向膜4a,4bは、液晶素子の動作モードにより、プレティルト角を伴った水平配向又は垂直配向を与えるように処理されており、2枚の基板1a,1bのうち、少なくとも一方の基板に設けられればよい。液晶配向膜4a,4bは、例えばポリイミド等を塗布焼成するなど通常の公知の方法により形成される。図12(a)に示す本実施の形態においては、液晶配向膜4a,4b間のセルギャップは5μm程度であり、このセルギャップは封止部材16によって封止されている。
次に、図12(b)では、アクティブマトリクス方式によって駆動する液晶素子を例示している。図12(b)において、図12(a)と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図12(b)においても一対の平行な基板1a,1bと、その内側面に透明導電膜3a,3bが設けられ、透明導電膜3a,3bの対向する内側面に液晶配向膜4a,4bが設けられ、これら液晶配向膜4a,4bの間に液晶層2が配置されて、液晶層2には、高分子化合物保護ナノ粒子10が分散されている。
また、本実施の形態においては、基板1aには、薄膜トランジスタ(TFT)7と画素電極8(透明導電膜3a)が配置されている。上方の基板1bには液晶層2と接する側にはブラックストライプ9が配置されており、基板1bと液晶配向膜4bの間には透明導電膜3b、カラーフィルタ5が配置されている。また、両基板1a,1bの外側には2枚の偏光板6a,6bが配置されている。
透明導電膜3a,3bは液晶素子の電極として機能するものであるが、本実施の形態に係る液晶電気光学素子をアクティブマトリクス方式により駆動させる場合には、下方の基板1aの内側面に設けられた透明導電膜3aは、薄膜トランジスタ7などのスイッチング素子の二次元アレイと画素電極8とする。
さらに、上方の基板1bの液晶層2と接する側に配置されたブラックストライプ9は、外部光線を吸収してスクリーンからの反射光を少なくし、背面からの光はレンチキュラーレンズにより、効率良くスクリーン前面に透過させるものである。ブラックストライプ9は、例えば樹脂ブラックや比較的反射率の低いクロムなどの金属からなり、カラーフィルタ5のR、G、Bの各色素層の間(境界)を区画するように設けられている。
基板1a,1bの両側には偏光板6a,6bが設けられているが、反射型で用いるときは下側の基板1aの上に光反射板を配し、偏光板は一枚でよい。
以上の説明においては、液晶層2では、液晶分子11を配するマトリクス液晶に金属原子又は酸化物又は半導体あるいはこれらのうち少なくとも2種類の複合系から構成されるナノ粒子からなる核とその周囲に結合して保護する高分子化合物を備える高分子化合物保護ナノ粒子10が分散されているとしたが、この高分子化合物保護ナノ粒子10に代えて、保護している高分子化合物のみをナノ粒子として分散させてもよい。高分子化合物は、液晶中で疎水性を発揮してナノ粒子のように固まって存在している可能性が高いためである。
このように構成される本実施の形態に係る液晶素子においては、液晶層に先に第1乃至第6の実施の形態において説明した液晶素子材料を添加、分散させることで、ナノ粒子の移動を抑制するので、印加電界を撹乱することがなくナノ粒子を安定して分散させることができるという効果を発揮する。さらに、ナノ粒子の存在によれば、液晶分子の配列に欠陥を生じさせ、この欠陥から小さな乱れを発生させることが可能であるため、液晶に電圧が印加された場合に液晶分子の配列を変えやすくなり高速に動作させることができるという効果を発揮する。
その結果、液晶素子の高速度応答や温度依存性の改善を可能にしながら、電圧保持率の低下や動作電圧の上昇を抑制することができるという優れた効果を発揮することができる。
次に、図13を参照しながら、第1の実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法について説明する。
図13は、本実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法の工程を示すフローチャートである。
まず、ステップS1では、PVP(ポリ−N−ビニル−2−ピロリドン)を二口フラスコに7.34mg(0.066mmol)を量り取る。これに水40mlを加えて(ステップS2)、マグネチックスターラーで30分間から1時間攪拌し、溶解させる。これに酢酸パラジウム29.63mg(0.132mmol)を加える(ステップS3)。このステップS3までで、パラジウムに対するPVPの単位ユニットのモル比は0.5となる(R=0.5)。モル比を1とする場合は、ステップS1で先の2倍の量を量り取り、ステップS2で水40mlを加える。
ステップS4では、先に酢酸パラジウムを加えた溶液にエタノールを160ml加えて、全体で水:エタノール=1:4の比率とし、合計200mlの溶液とする。これを3回窒素置換することで窒素雰囲気下とした後(ステップS5)、100℃で2時間加熱還流する(ステップS6)と溶液の色は黒褐色となり、PVP保護パラジウムナノ粒子コロイド分散液を得る(ステップS7)。
得られたPVP保護パラジウムナノ粒子コロイド分散液を限外濾過装置(ADVANTEC FILTER HOLDER UHP−76K)にて分画分子量10,000以上のウルトラフィルター(ADVANTEC、Q0100 076E)で濾過洗浄をエタノールを溶媒として3回繰り返し、低分子量の副生物を取り除いて精製する(ステップS8)。
精製したナノ粒子の溶媒をロータリーエバポレーターにて完全に除去した後(ステップS9)、エタノール20mlに再分散させて(ステップS10)、10倍の濃縮コロイド溶液を得る。
この濃縮コロイド溶液の中に高分子化合物保護ナノ粒子(PVP−Pd)が存在している。
このようにして得られる濃縮コロイド溶液1.45mlに、液晶0.1gを量り取り加えると、金属重量が全液晶材料に対して1wt%になる。R=0.5のときには、2倍量(2.90ml)の濃縮コロイド溶液に、液晶0.1gを量り取り加えると、金属重量が全液晶材料に対して2wt%となる。このとき、PVPの重量は、いずれの場合も全液晶材料の1wt%となるようにした。これを減圧乾燥機を用いて、50℃で12時間以上減圧乾燥を行い、溶媒と揮発性物質を除去する。この後、マグネチックスターラー上で激しく攪拌しながら、液晶が等方相になるまで加熱し、その後室温まで冷ますことで、金属ナノ粒子添加液晶を得る。
これが本発明の第1の実施の形態に係る液晶素子材料である。
次に、第2の実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法について説明する。
まず、13.63mgのZnClと5.56mgのポリビニルピロリドン(PVP、K−30)を50mLの水に加え一晩攪拌して溶解して溶液Aを得る。同様に、別のフラスコ中で、7.80mgNaSと5.56mgのPVPを一晩かけて50mLの水に溶解して溶液Bを得る。溶液Aを室温で激しく攪拌しながら、この中に溶液Bを一滴ずつ滴下する。滴下終了後さらに30分間攪拌を続ける。この条件で半導体(ZnS)に対するPVPのモノマー単位のモル比Rは1である。これを限外濾過装置にて分画分子量10,000以上のウルトラフィルターで濾過し、3回水で洗浄して可溶性不純物を取り除いて精製する。このように精製されたPVP−ZnSナノ粒子分散液に水を加えて、所望の濃度のPVP−ZnSナノ粒子分散液を得る。このPVP−ZnSナノ粒子分散液を用いて、表1を参照しながら説明した第2の実施の形態に係るPVP−ZnSナノ粒子分散液を得た。また、このPVP−ZnSナノ粒子分散液を用いて液晶母体に分散させる方法は、第1の実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法において説明したとおりである。
次に、第3の実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法について説明する。
まず、9.17mgのCdClと2.78mgのポリビニルピロリドン(PVP、K−30)を50mLの混合溶媒(水/エタノール=1/9,v/v)に加え一晩攪拌して溶解して溶液Aを得る。同様に、別のフラスコ中で、3.90mgNaSと2.78mgのPVPを一晩かけて50mLの先の混合溶媒に溶解して溶液Bを得る。溶液Aを室温で激しく攪拌しながら、この中に溶液Bを一滴ずつ滴下する。滴下終了後さらに30分間攪拌を続ける。この条件で半導体(CdS)に対するPVPのモノマー単位のモル比Rは1である。これを限外濾過装置にて分画分子量10,000以上のウルトラフィルターで濾過し、3回先の混合溶媒で洗浄して可溶性不純物を取り除いて精製する。このように精製されたPVP−CdSナノ粒子分散液に水を加えて、所望の濃度のPVP−CdSナノ粒子分散液を得る。このPVP−CdSナノ粒子分散液を用いて、表3を参照しながら説明した第3の実施の形態に係るPVP−CdSナノ粒子分散液を得た。また、このPVP−CdSナノ粒子分散液を用いて液晶母体に分散させる方法は、第1の実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法において説明したとおりである。
最後に、第4の実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法について説明する。
まず、8.2mgのNaSと4.4mgのポリビニルピロリドン(PVP、K−30)を40mLの混合溶媒(水/エタノール=1/9,v/v)に溶解して溶液Aを得る。18.3mgのCdClと4.4mgのPVPを40mLの混合溶媒(水/エタノール=1/9,v/v)に溶解して溶液Bを得る。7.4mgのNaSと4.4mgのPVPを40mLの混合溶媒(水/エタノール=1/9,v/v)に溶解して溶液Cを得る。13.6mgのZnClと4.4mgのPVPを40mLの混合溶媒(水/エタノール=1/9,v/v)に溶解して溶液Dを得る。4.4mgのPVPを40mLの混合溶媒(水/エタノール=1/9,v/v)に溶解して溶液Eを得る。
溶液Aと溶液Bを室温で撹拌している溶液E中に、同時に一滴ずつゆっくりと滴下する。滴下終了後さらに30分間攪拌を続ける。この混合溶液中に、溶液Cと溶液Dを同時に一滴ずつゆっくりと滴下する。滴下終了後さらに30分間攪拌を続ける。この条件で半導体(CdS/ZnS)に対するPVPのモノマー単位のモル比Rは1である。これを限外濾過装置にて分画分子量10,000以上のウルトラフィルターで濾過し、3回先の混合溶媒で洗浄して可溶性不純物を取り除いて精製する。このように精製されたPVP−CdS/ZnS複合ナノ粒子分散液に水を加えて、所望の濃度のPVP−CdS/ZnS複合ナノ粒子分散液を得る。このPVP−CdS/ZnS複合ナノ粒子分散液を用いて、表4を参照しながら説明した第3の実施の形態に係るPVP−CdS/ZnS複合ナノ粒子分散液を得た。また、このPVP−CdS/ZnS複合ナノ粒子分散液を用いて液晶母体に分散させる方法は、第1の実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法において説明したとおりである。
なお、以上の実施の形態においては、分画分子量10,000以上のウルトラフィルターを用いたが、PVPが十分に高分子量であり、試験時に入手可能な分画分子量の仕様が10,000以上であることによるものであり、ポリシクロデキストリンの場合には分子量の大きいものが少なく、5,000以上の分画分子量の仕様を有するものを用いることが望ましい。
さらに、液晶セルの作製方法について説明を追加する。
まず、ねじれネマティックになるように配向処理されたセルギャップ5μmの液晶セルをホットプレート上で100℃に加熱し、同様に100℃まで加熱し、等方相になった金属ナノ粒子添加液晶を毛細管現象を利用して、セル中に注入することで液晶セルが作製可能である。
本発明の実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法によれば、保護層を構成する電気的に中性の高分子化合物(PVP)によって、ナノ粒子の持つキャリアー的性質を緩和しながら液晶層内で分散されることによって粘性を増加させることができ、印加電界の乱れを抑制可能な高分子化合物保護ナノ粒子とこれを分散させた液晶素子材料を製造することができる。また、これらの高分子化合物保護ナノ粒子とこれを分散させた液晶素子材料では、ナノ粒子の存在によって、液晶分子の配列に欠陥を生じさせ、この欠陥から小さな乱れを発生させることが可能であるため、液晶に電圧が印加された場合に液晶分子の配列を変えやすくなり高速に動作させることができるという効果を発揮させることができる。
なお、本実施の形態においては、高分子化合物としてPVPを用い、ナノ粒子の核としてPdやZnS、CdSあるいはCdS/ZnSなどの半導体を用いているものの、高分子化合物としてはPVPの他、PVPを含む共重合体又はポリシクロデキストリンを用いても可能であり、金属原子としてはPdの他にもPt,Rh,Ru,Ag,Auなどの金属を用いても可能であり、さらには、酸化物や上記以外の半導体、さらにはこれらの複合系であってもよい。
以上説明したように、本発明の請求項1乃至請求項9に記載された発明は、広く一般的な液晶素子材料と液晶素子、あるいは高速スイッチングが可能な液晶素子材料と液晶素子として、液晶ディスプレイなどに搭載可能である。さらに、低温になるなど駆動温度の変化に対しても安定的な動作特性を発揮しながら、電圧保持をも可能とするため高性能の液晶ディスプレイとして好適である。
(a)は、第1の実施の形態に係る液晶素子材料に係る高分子化合物保護ナノ粒子の構造を示す概念図であり、(b)は液晶配向膜間に形成された液晶層を構成する液晶素子材料を示す概念図である。 (a)は、核としてパラジウム(Pd)金属原子よりなるナノ粒子を用いて、その周囲をPVPで保護した高分子化合物保護ナノ粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)写真を示し、(b)はこの高分子化合物保護ナノ粒子の粒径分布図を示している。 第2の実施の形態に係る液晶素子材料に係る高分子化合物保護ナノ粒子であって、核としてZnS半導体よりなるナノ粒子を用いて、その周囲をPVPで保護した高分子化合物保護ナノ粒子のTEM写真である。 第3の実施の形態に係る液晶素子材料に係る高分子化合物保護ナノ粒子であって、核としてCdS半導体よりなるナノ粒子を用いて、その周囲をPVPで保護した高分子化合物保護ナノ粒子のTEM写真である。 第4の実施の形態に係る液晶素子材料に係る高分子化合物保護ナノ粒子であって、核としてZnS/CdS半導体よりなる複合ナノ粒子を用いて、その周囲をPVPで保護した高分子化合物保護ナノ粒子のTEM写真である。 温度が−20℃で、液晶に本実施の形態に係る高分子化合物保護ナノ粒子を分散させていない試料を用いた場合と液晶に本実施の形態に係る高分子化合物としてPVP、保護されるナノ粒子の核としてパラジウム(Pd)を用いた場合であって、Pdの全液晶に対する割合を1重量%とした試料の場合の応答時間を測定して比較を行った結果を示すグラフである。 (a)は25℃において、液晶のみと液晶に本実施の形態に係る高分子化合物としてPVPあるいは高分子化合物(PVP)で保護されたパラジウム(Pd)ナノ粒子を用いた場合を比較して、印加電圧と透過率の変化を測定した結果を示すグラフであり、(b)は同じく−10℃における結果を示すグラフである。 (a)は液晶のRDP−94561を用いた場合、(b)は液晶のMO26を用いた場合として、それぞれ本実施の形態に係る液晶素子材料の電圧保持率を測定した結果を示している。 図8と同じ液晶のRDP−94561を用いつつ、高分子化合物で保護していない銀(Ag)とパラジウム(Pd)の複合系のナノ粒子をドープして分散させた場合の電圧保持の測定結果を示したものである。 第5の実施の形態に係る液晶素子材料について、マトリクス液晶としてペンチルシアノビフェニル(5CB)を用いて、これを液晶母体として、PβCyD保護SiOナノ粒子の添加、分散に伴う印加電圧(動作電圧)と光の透過率の関係を示すグラフである。 (a)及び(b)はいずれも第5の実施の形態に係る液晶素子材料に係るグラフであり、(a)はマトリクス液晶として実用液晶である前出のRDP−94561を用い、薄膜トランジスタ(TFT)液晶ディスプレイとして同様の試験を行った結果を示すグラフであり、(b)は同じく実用液晶のRDP−98342を用いてネマティック液晶ディスプレイとして同様の試験を行った結果を示すグラフである。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る液晶素子の断面の概念図である。 第1の実施の形態に係る液晶素子材料の製造方法の工程を示すフローチャートである。
符号の説明
1a,1b…基板 2…液晶層 3a,3b…透明導電膜 4a,4b…液晶配向膜 5…カラーフィルタ 6a,6b…偏光板 7…薄膜トランジスタ 8…画素電極 9…ブラックストライプ 10…高分子化合物保護ナノ粒子 11…液晶分子 12…核となるナノ粒子 13…保護層 14…高分子化合物 15…液晶素子材料 16…封止部材

Claims (6)

  1. 液晶母体に高分子化合物で保護したナノ粒子を分散させ液晶素子材料であって、前記高分子化合物は、ポリビニルピロリドン(以下、PVPと略す。)又はPVPを含む共重合体であり、前記ナノ粒子は、1又は複数の金属原子又は酸化物又は半導体、あるいは1又は複数の金属原子、酸化物、半導体のうち少なくとも2種類の複合系からなる核を構成することを特徴とする液晶素子材料。
  2. 前記ナノ粒子における金属原子はパラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、金(Au)のうちいずれか1つの金属原子であり、前記酸化物は酸化亜鉛(ZnO)、二酸化珪素(SiO)、酸化チタン(TiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)のうちいずれか1つの酸化物であり、前記半導体は硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)、テルル化銅(CuTe)のうち、いずれか1つのカルコゲナイドであることを特徴とする請求項記載の液晶素子材料。
  3. 前記液晶母体は、ネマティック液晶、スメクテック液晶、カイラルネマティック液晶、カイラルスメクテック液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶のうち少なくとも1つの液晶分子からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液晶素子材料。
  4. 液晶母体に高分子化合物のみからなるナノ粒子を分散させ液晶素子材料であって、前記高分子化合物は、PVP又はPVPを含む共重合体であることを特徴とする液晶素子材料。
  5. 一対の平行な基板と、これらの基板の対向する内側面にそれぞれ設けられた導電膜と、これら導電膜の対向する内側面に設けられる液晶分子配向膜と、これら液晶分子配向膜の間に形成される液晶層と、を有する液晶素子であって、前記液晶層は、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載された液晶素子材料から構成されることを特徴とする液晶素子。
  6. PVP又はPVPを含む共重合体のいずれかの高分子化合物を含む溶液中で、Pd,Pt,Rh,Ru,Ag,Auのうち少なくともいずれか1種類の金属のイオンを還元することによって、少なくともいずれか1種類の前記金属の原子からなる核を構成するナノ粒子の周囲に前記高分子化合物を結合させて高分子化合物保護ナノ粒子を形成させ、この高分子化合物保護ナノ粒子を含む前記溶液を分画分子量5,000以上のフィルターでろ過し、ろ過精製後の前記高分子化合物保護ナノ粒子を液晶母体に分散させることを特徴とする液晶素子材料の製造方法。
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