JP5005714B2 - ネジの締付管理システム - Google Patents

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Description

本発明は、トルクレンチによるネジの締め付け状態を管理するネジの締付管理システムに関する。
周知のように、航空機などの組立工程(製造時および保守点検時の両方を含む。以下、同様。)では、トルクレンチを使用して、作業者が各構成部品をネジ(ボルトを含む。以下、同様。)によって適正なトルクまで締め付ける締付作業が大部分を占める。この際、ネジを適正なトルクまで締付けることが重要となることから、トルクレンチとしては、次のように構成されたプリセット型トルクレンチが利用される場合が多い。
すなわち、プリセット型トルクレンチは、予め設定トルクの値をセットすることができ、そのセットした設定トルクまでネジが締め付けられた段階でトルク解除機構が作動してネジへの締付トルクの付与が一時的に減少するように構成されている。そして、このトルク解除機構の作動した時に、トルク解除機構の一部がトルクレンチの本体内壁面に衝突し、その衝突時の“カチン”という音(以下、カチン音という)をもって作業者に報知するようになっている。
しかしながら、作業者がカチン音を見逃すおそれがあり、その場合には、作業者は、ネジの締付トルクが設定トルクに達したにも関わらず、ネジの締付作業を継続してしまう。上述したトルク解除機構は、一時的に締付トルクの付与が減少するように構成されているが、構造上トルク解除機構の一部がトルクレンチの本体内壁面に衝突した後も締付トルクを掛け続けると、再びネジに更に大きな締付トルクが付与されてしまう。そのため、このような事態が生じれば、ネジを設定トルク以上のオバートルクで締め付けてしまうという問題が生じ得る。
また、カッチン音が鳴る前に、作業者がネジの締付作業が完了したと誤認して作業を終了した場合には、設定トルクまでネジが締め付けられていないという問題が生じ得る。
したがって、作業者によるネジの締付作業によって、ネジが適正なトルクまで締め付けられた否かを正確に管理することが重要となる。
そこで、作業者のネジの締付作業を管理するために、例えば、特許文献1には、ネジに作用する締付トルクを検出するためにトルクレンチの本体外壁部の歪を測定する歪計(検出手段)と、トルク解除機構の一部がトルクレンチの本体内壁面に当接したときに締付完了状態を検出する締付完了信号取出しリミットスイッチ(完了状態検出手段)と、締付完了状態が検出されたときに検出された締付トルクの中で最大値を示す締付トルクを送信する送信手段とを備えたトルクレンチが開示されている。そして、同文献では、当該トルクレンチにより送信された締付トルクに基づいて、作業者のネジの締付作業を作業所管理コンピュータで管理するようにしている。
特開平7−164343号公報
ところで、特許文献1では、トルクレンチの送信手段において、歪計によって測定された測定値を締付トルクに換算して記憶し、締付完了信号取出しリミットスイッチがオンとなった状態で最大値を示す締付トルクのみを送信するようになっている。
しかしながら、単に最大値を示す締付トルクに基づいてネジの締付作業を管理しようとしても、ネジの締付状態を正確な管理することは困難となる。これは、次の2つの理由が挙げられる。
第1には、トルクレンチに生じる歪は、適正なネジの締付作業を行った場合には、設定トルクまで増加傾向を示した後にトルク解除機構の作動とともに減少傾向を示す(後述する図5を参照)が、不適正なネジの締付作業を行った場合(トルクレンチで無理に速いスピードでネジを回して締め付けた場合など)には、増加傾向を示した後に減少傾向を示さないことがあるためである。すなわち、この場合には、ネジの締付トルクが、適正に締め付けられていると判断してはならないにも関わらず、特許文献1では、締付トルクの変化の態様の減少傾向は判断対象ではないので、この場合でも締付トルクの最大値が許容範囲であればネジの締付状態が適正であると誤認してしまうおそれがある。
第2には、単に締付トルクの最大値を検出すると、歪計によって測定された測定値にノイズが瞬間的に加わった場合には、そのノイズが加わった時点が最大値と誤認され、実際の締付トルクと大きく異なった値でネジの締付状態を管理してしまうおそれがあるためである。
したがって、ネジの締付状態を適正に管理するという観点からは、単に締付トルクの最大値を検出するだけでは不十分であると言える。
以上の実情に鑑み、本発明は、ネジに作用する締付トルクの変化の態様に基づいて、ネジの締付状態を適正に管理することを技術的課題とする。
上記課題を解決するために創案された本発明は、設定トルクまでネジが締め付けられた段階でトルク解除機構が作動してネジへの締付トルクの付与が一時的に減少するトルクレンチによるネジの締付状態を管理するネジの締付管理システムであって、前記トルクレンチに取り付けられてネジに作用する締付トルク情報を検出する締付トルク情報検出手段と、前記トルクレンチに取り付けられて前記トルク解除機構の作動に基づいて締付完了情報を検出する締付完了情報検出手段と、該締付トルク情報検出手段で検出された前記締付トルク情報のピーク値を検出し且つ前記締付完了情報検出手段で前記締め付け完了情報が検出された時点で最後に検出された前記ピーク値を出力するピーク検出手段と、該ピーク検出手段から出力された前記ピーク値に基づいてネジの締付状態の適否を判断する判断手段と、該判断手段の判断結果を報知する報知手段とを備え、前記ピーク検出手段は、検出された前記締付トルク情報の変化の態様が増加後に2回以上の所定回連続して減少し、且つ、その減少量が減少量自体の大きさを判断するための減少量判定閾値よりも大きい場合に、前記増加から減少に転じた点を前記ピーク値として検出することに特徴づけられる。なお、締付トルク情報とは、締付トルクそのもの値を示すものに限らず、締付トルクと一定の関係にある値(例えば、トルクレンチに生じる歪の値)を示すものであってもよい。
このような構成によれば、ピーク検出手段で締付トルク情報のピーク値を検出する際に、その締付トルク情報の変化の態様が考慮される。特に、当該ピーク値の検出に際して、トルクレンチにより正常にネジの締付作業を行った場合に生じる締付トルク情報の減少傾向が考慮されるので、締付トルク情報が減少することなく単調増加したままトルク解除機構の作動を表す締付完了情報が検出された場合には、ピーク値は検出されない。したがって、この場合には、判断手段で不適当なネジの締付状態であると判断することができる。すなわち、作業者が不適正なネジの締付作業(トルクレンチによって不当に速いスピードでネジを回した場合など)を行った場合に、判断手段でこれを締付状態が不適当であると判断するとともに、報知手段により報知することができる。
さらに、ピーク検出手段から出力される締付トルク情報のピーク値は、締付完了情報が検出された時点で、最後に検出されたピーク値とされる。この最後に検出されたピーク値は、トルク解除機構が作動する直前の締付トルクを反映するものであるので、トルク解除機構が作動した後に、ネジに実際に作用している締付トルクを反映している。したがって、判断手段において、当該ピーク値に基づいてネジの締付状態の適否を判断することで、ネジの締付状態を適正に管理することが可能となる。また、最後に検出されたピーク値以前に、ノイズの影響で締付トルク情報が瞬間的に最大値を示したとしても、そのノイズの影響を受けた点がピーク値と判断されることはないので、ノイズの影響も受け難くなる。
なお、より具体的には次のように構成してもよい。すなわち、ネジの締付管理システムをトルクレンチと、該トルクレンチによるネジの締付状態を管理する管理装置とに区分し、前記トルクレンチが、ネジに作用する締付トルク情報を検出する締付トルク情報検出手段と、前記トルク解除機構の作動に基づいて締付完了情報を検出する締付完了情報検出手段と、前記締付トルク情報及び前記締付完了情報を送信する送信手段とを備え、前記管理装置が、前記締付トルク情報及び前記締付完了情報を受信する受信手段と、該受信手段で受信される前記締付トルク情報の変化の態様が増加傾向から減少傾向に転じる1又は複数のピーク値を検出し且つ前記締付完了情報が受信された時点で最後に検出された前記ピーク値を出力するピーク検出手段と、該ピーク検出手段が出力した前記ピーク値に基づいてネジの締付状態の適否を判断する判断手段と、該判断手段の判断結果を報知する報知手段とを備えるようにしてもよい。このようにすれば、トルクレンチ自体にピーク検出手段や判断手段などを設けなくて済むので、トルクレンチの小型化及び軽量化を同時に達成することができる。
以上のように本発明によれば、ネジに作用する締付トルクの変化の態様が適正に評価さることから、その変化の態様に基づいてネジの締付状態を適正に管理することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るネジの締付管理システムを示す概念図である。 本実施形態に係るトルクレンチの全体構成を示す断面図である。 図2に示すトルクレンチの設定トルクに達する前の状態を示す要部拡大断面図である。 図2に示すトルクレンチの設定トルクに達した後の状態を示す要部拡大断面図である。 締付トルク情報の締付作業を開始してからの変化の態様の一例を示すグラフである。 締付トルク情報の締付作業を開始してからの変化の態様の別の一例を示すグラフである。 ピーク検出手段におけるピーク検出手順を示すフローチャートである。 本実施形態に係るネジの締付管理システムを適用した航空機の組立工程の作業状況を示す図である。
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るネジの締付管理システムの概略構成を示す図である。同図に示すように、このネジの締付管理システム1は、トルクレンチ2と、トルクレンチ2によるネジの締付状態を管理する管理装置3とを備えている。
トルクレンチ2は、図2に示すように、管状の本体4を備えている。この本体4には、先端部を外方に突出させた状態でヘッド5が挿入されている。このヘッド5は、本体4内部に取り付けられたヘッドピン6によって揺動可能に軸支されている。本体4から外方に突出したヘッド5の先端部には、ラッチャット機構を備え且つネジの頭部に外嵌可能な嵌合部5aが形成されている。ヘッド5の基端部にはトグル7を介してスラスター8の先端部が連結されている。このヘッド5の基端部と、スラスター8の先端部には、それぞれ傾斜面5b,8aが形成されており、その傾斜面5b,8a同士が互いに当接可能となっている。一方、スラスター8の基端部と、本体4のハンドル4aに回転可能に取付けられた設定ネジ9との間には、スプリング10が収容されている。このスプリング10は、設定ネジ9の回転によって伸縮して、その復元力が調整可能となっている。すなわち、この設定ネジ9によってスプリングの復元力を調整することで、設定トルクを設定できるようなっている。なお、設定した設定トルクは、窓11を介してメモリ12を読み取ることで視認可能となっている。
そして、ヘッド5の嵌合部5aを締付対象となるネジの頭部に嵌合させた状態で、本体4のハンドル4aに力を加えて、嵌合部5aを中心としてトルクレンチ2全体を図中の矢印A方向に回転させてネジを締付けると、トルクレンチ2は次のように動作するように構成されている。
すなわち、ネジに作用する締付トルクが設定トルク未満である場合には、図3に示すように、ヘッド5の傾斜面5bからスラスター8の傾斜面8aに加わる締付トルクの反力よりも、スプリング10の復元力によりスラスター8がヘッド5側に進出する力の方が大きくなり、ヘッド5の傾斜面5bとスラスター8の傾斜面8aとは互いに当接状態を維持する。そのため、ヘッド5の図中上方への移動(ヘッドピン6を中心とした回転を伴う移動)が規制され、本体4のハンドル4aに加えた力がスラスター8を介してヘッド5に伝達され、ネジに締付トルクが付加される。
一方、ネジに作用する締付トルクが設定トルクに達すると、図4に示すように、ヘッド5の傾斜面5bからスラスター8の傾斜面8aに加わる締付トルクの反力が、スプリング10の復元力によりスラスター8がヘッド5側に進出する力を上回り、ヘッド5が図3の状態から図中の上方に移動する。このヘッド5の移動に伴って、トグル7を介してスラスター8がスプリング10の復元力に抗して設定ネジ9側に後退し、ヘッド5の傾斜面5bとスラスター8の傾斜面8aとの互いの当接状態が解除され、ヘッド5が本体4の内壁面に衝突し、カッチン音が鳴る。すなわち、ヘッド5の傾斜面5bと、スラスター8の傾斜面8aとの当接状態を解除する一連の機構が、トルク解除機構として機能する。
また、図2に示すように、ヘッド5の両側面には、ネジの締付時に作用する曲げ応力によって生じるヘッド5の歪を測定する歪ゲージ13が取り付けられており、この歪ゲージ13が締付トルク情報検出手段として機能するようになっている。すなわち、この歪ゲージ13によって測定される歪の値は、ネジに実際に作用する締付トルクと一定の関係性を有するため、当該歪の値そのものを締付トルク情報としたり、或いは歪の値をトルクに換算した値を締付トルク情報とすることができる。なお、歪ゲージ13によって検出された締付トルク情報は、有線で本体4に取り付けられた送信手段14に入力されるようになっている。
さらに、ヘッド5が本体4の内壁面と衝突する位置には、締付完了情報検出手段として機能する検出スイッチ15が設けられている。この検出スイッチ15は、ヘッド5が本体4の内壁面に衝突した段階でON状態となり、この時点で締付完了情報を検出するとともに、この締付完了情報を有線で送信手段14へ入力するようになっている。なお、この実施形態では、締付完了情報検出手段を構成する検出スイッチ15として、近接スイッチを使用しているが、その他にも、例えば機械的な接触によりON・OFFが切り替わる押ボタン式スイッチや、光電スイッチなど、各種スイッチが使用できる。
トルクレンチ2の本体4外壁面に取り付けられた送信手段14は、入力される締付トルク情報を図示しないAD変換器によりAD変換して管理装置に無線で順次送信するとともに、締付完了情報が入力された時点で締付完了情報を管理装置3に無線で送信するようになっている。
一方、管理装置3は、図1に示すように、管理コンピュータ16と、作業者が携行する携帯情報端末17とに大別され、詳細には以下のように構成されている。
管理コンピュータ16は、送受信手段18と、ピーク検出手段19と、判断手段20とを備えている。
ピーク検出手段19は、送受信手段18で受信された締付トルク情報の変化の態様に基づいてピーク値を順次検出するようになっている。ネジの締付作業が正常に行われた場合には、締付トルク情報(トルク値又は歪の値)は、図5に示すように時間の経過と共に増加した後、設定トルクに達してヘッド5の傾斜面5bとスラスター8の傾斜面8aとの当接状態が解除された時点で減少し始める。すなわち、同図に示すように、締付トルク情報の変化の態様が増加傾向から減少傾向に転じるピーク値P1が現れる。このピーク値P1がネジの締付作業完了後にネジに実際に作用する締付トルクを反映している。しかし、作業者がネジの締め付けを途中で止めた後、再度ネジの締め付けを再開した場合には、図6に示すように、ピーク値P1の前にも別のピーク値P2が現れることがある。加えて、ノイズが加わった場合には、図示は省略するが、実際の締付トルクとは無関係に瞬間的に値が増加し、ピーク値が現れることがある。
そこで、実際にネジに作用する締付トルクを反映したピーク値P1を正確に検出するために、ピーク検出手段19では、締付トルク情報の変化の態様が増加傾向から減少傾向に転じるピーク値を順次検出し、送受信手段18で締付完了情報が受信された時点で、最後に検出されたピーク値を出力するようになっている。その検出フローの詳細は次の通りである。
まず、図7に示すように、最初のステップS1で、送受信手段18で順次受信される締付トルク情報(Tn−1,T)を読み込み、次のステップS2で、読み込んだ締付トルク情報(Tn−1,T)を比較して増加傾向にあるか否かを判断し、増加傾向とあると判断されるまで、以上のフローが繰り返される。
ステップS1で増加傾向があると判断された場合には、ステップS3で増加傾向を示した締付トルク情報(T)と後続の締付トルク情報(Tn+1)を読み込み、次のステップS4で、その読み込んだ締付トルク情報(T,Tn+1)を比較して、減少傾向にあるか否かを判断し、締付トルク情報が増加傾向から減少傾向に変化したと判断されるまで、以上のフローが繰り返される。
ステップS4で締付トルク情報の変化の態様が増加傾向から減少傾向に変化したと判断された場合には、ステップS5で、増加傾向から減少傾向に転じた点を示す締付トルク情報(T)がピーク値と仮定される。これと共に、次のステップS6で後続のk個の締付トルク情報(Tn+1,Tn+2,…Tn+k)が読み込まれる。そして、ステップS7で、この締付トルク情報(Tn+1,Tn+2,…Tn+k)を比較して、その全てが減少傾向にあるか否かを判断する。その結果、全てが減少傾向にあると判断された場合には、ステップS8で、先にピーク値と仮定した締付トルク情報(T)と、この締付トルク情報(T)からk個後の締付トルク情報(Tn+k)とを比較し、その減少量が減少量判定閾値Lよりも大きいか否かを判断する。その結果、減少量が減少量判定閾値Lよりも大きいと判断された場合には、ステップS9でピーク値と仮定した締付トルク情報(T)をピーク値と確定して記憶する。そして、ステップS10において、送受信手段18で締付完了情報が受信されたか否かを判断するとともに、締付完了情報の受信がされたと判断された場合には、ステップS11で最後に記憶されたピーク値を出力し、この出力したピーク値をネジの締付完了時のトルク値を反映したデータとして処理する。
なお、ステップS7で締付トルク情報(Tn+1,Tn+2,…Tn+k)のいずれかに減少傾向がないと判断された場合、ステップS8で減少量判定閾値Lよりも小さいと判断された場合、及びステップS10で締付完了情報が受信されていないと判断された場合には、ステップS1に戻り、再度以上のフローを繰り返して別のピーク値を検出する。
ここで、上記のkの値や、減少量判定閾値Lの値は、大きな値に設定するほど、締付トルク情報の減少傾向をより正確に捉えることができるので誤検知率を下げることができる。その一方で、これらの値を大きくしすぎると、ピーク値の検出率自体も低下してしまうため、これらの値は、トルクレンチ2の送信手段14で締付トルク情報をAD変換する際に使用されるサンプリング間隔(サンプリング周波数)を考慮して適宜設定することが好ましい。
判断手段20は、図1に示すように、予め設定すべき設定トルクの情報が格納されたデータベース21から対応した設定トルクを呼び出し、その呼び出した値とピーク検出手段19が出力したピーク値とを比較して、ネジの締付状態の適否を判断するようになっている。その結果、ピーク値が設定トルクから許容範囲内にある場合には、ネジの締付状態が適切であると判断し、許容範囲外である場合には、ネジの締付状態が不適切であると判断するようになっている。そして、この判断結果は、送受信手段18により携帯情報端末17に送信されるようになっている。
なお、ピーク検出手段19からネジの締付トルク情報のピーク値が出力される前に、送受信手段18でネジの締付完了情報を受信した場合には、判断手段20でネジの締付状態が不適当であると判断し、これを送受信手段18により携帯情報端末17に送信するようになっている。
携帯情報端末17は、図1に示すように、送受信手段22を備えており、この送受信手段22で管理コンピュータ16の判断結果が受信されるとともに、携帯情報端末17の表示部23にその判断結果が表示され、作業者に報知されるようになっている。すなわち、携帯情報端末17が、報知手段として機能するようになっている。なお、携帯情報端末17の表示部23への表示に代えて、或いはこれと併用して、携帯情報端末17から作業者に対して音声で判断結果を報知するようにしてもよい。
また、携帯情報端末17は、航空機(例えば、飛行機やヘリコプター)などの構成部品24などに付された識別コード25を読み取る読取手段としてのカメラ26を備えており、ネジの締付作業を行う前に、識別コード25をカメラ26で読み取り、送受信手段22により、読み取った識別情報を管理コンピュータ16へ送信するようになっている。一方、管理コンピュータ16は、識別情報を送受信手段18で受信すると、その識別情報に対応した設定トルクをデータベース21の中から呼び出して、その呼び出した設定トルクを携帯情報端末17に送信し、携帯情報端末17の表示部23に設定トルクを表示させるようになっている。
次に、以上のように構成されたネジの締付管理システム1を利用した航空機の組立工程における航空機の構成部品24のネジの締付作業の管理方法を、図8に示すヘリコプターの組立工程を例にとって説明する。
当該組立工程では、複数の作業者27によりネジの締付作業が並行して行われる。各作業者27は、トルクレンチ2と、携帯情報端末17とを携帯している。また、当該組立工程の現場は、上下2階に分離されており、高所で作業を行う作業者27は2階に、低所で作業を行う作業者27は1階にそれぞれ振り分けられている。一方、管理コンピュータ16は、組立工程の現場近傍(図示例では2階)に設けられた管理室28の内部に収容されており、各作業者27が携帯するトルクレンチ2との間、及び携帯情報端末17との間で電波を用いて通信(無線通信)するようになっている。
そして、当該組立工程に適用されるネジの締付作業の管理方法は、各構成部品24に対応した設定トルクにトルクレンチ2を設定するトルク値設定工程と、ネジの締め付け状態を管理する締付管理工程とに大別される。以下、図1に基づいて各工程を説明する。
トルク値設定工程では、まず、携帯情報端末17のカメラ26で、航空機の構成部品24に付された識別コード25を読み取り、読み取った識別コード情報を携帯情報端末17から管理コンピュータ16に送信する。次に、この識別情報を受信した管理コンピュータ16で識別情報に対応した設定トルクをデータベース21から呼び出し、その呼び出した設定トルクを管理コンピュータ16から携帯情報端末17に送信する。これにより、設定トルク情報を受信した携帯情報端末17の表示部23には設定トルクが表示され、作業者27がその表示された設定トルクにトルクレンチ2の設定ネジ9を調整する。
一方、締付管理工程では、まず、作業者27によりネジをトルクレンチ2で実際に締め付ける。このとき、トルクレンチ2の歪ゲージ13がネジに作用する締付トルク情報を検出し、送信手段14でその締付トルク情報を管理コンピュータ16に順次送信する。締付トルク情報を送受信手段18で受信した管理コンピュータ16は、上述の手順に従って、ピーク検出手段19により締付トルク情報のピーク値を検出した後、判断手段20でピーク検出手段19から出力されたピーク値と、データベース21から呼び出した設定トルクとを比較して、ネジが適正に締め付けられたか否かを判断する。そして、管理コンピュータ16は、判断手段20の判断結果を携帯情報端末17に送信し、携帯情報端末17の表示部23に判断結果を表示させ、作業者27に判断結果を報知する。
以上のように、本実施形態に係るネジの締付管理システム1によれば、ピーク検出手段19で締付トルク情報のピーク値を検出する際に、その締付トルク情報の変化の態様が考慮される。特に、締付トルク情報のピーク値を検出する際に、トルクレンチ2により正常にネジの締付作業を行った場合に生じる締付トルク情報の減少傾向が考慮されるので、締付トルク情報が減少することなく単調増加したまま締付完了情報が受信された場合には、上述のように、判断手段20で不適当なネジの締付状態であると判断することができる。すなわち、作業者が、不適正なネジの締付作業(トルクレンチによって不当に速いスピードでネジを回した場合など)を行った場合に、これを締付状態が不適当であると判断するとともに、携帯情報端末17に送信して作業者に確実に報知することができる。
また、ピーク検出手段19から出力される締付トルク情報のピーク値は、締付完了情報が受信された時点で最後に検出されたピーク値とされる。この最後に検出されたピーク値は、トルク解除機構が作動する直前の締付トルクを反映するものであるので、トルク解除機構が作動した後に、ネジに実際に作用している締付トルクを反映している。したがって、判断手段20において、当該ピーク値に基づいてネジの締付状態の適否を判断することで、ネジの締付状態を適正に管理することが可能となる。また、最後に検出されたピーク値以前に、ノイズの影響で締付トルク情報が瞬間的に最大値を示したとしても、そのノイズの影響を受けた点がピーク値としてピーク検出手段19から出力されることはないので、ノイズの影響も受け難くなる。
よって、ネジに作用する締付トルクの変化の態様に基づいて、ネジの締付状態を適正に管理することが可能となる。
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態では、管理装置3を、管理コンピュータ16と携帯情報端末17に分離し、これらの間で通信を行うように構成した場合を説明したが、管理装置3は、管理コンピュータ16の機能と、携帯情報端末17の機能とを有する単一の装置から構成してもよい。この場合には、管理装置3は、トルクレンチ2との間で通信することになるので、当該通信がトルクレンチ2から管理装置3への一方向通信である場合には、管理装置3は送受信手段(送信手段と受信手段を別々に備えている場合を含む)を備えている必要はなく、受信手段のみを備えていればよい。
1 締付管理システム
2 トルクレンチ
3 管理装置
4 本体
5 ヘッド
6 ヘッドピン
7 トグル
8 スラスター
9 設定ネジ
10 スプリング
11 窓
12 メモリ
13 歪ゲージ(締付トルク情報検出装置)
14 送信手段
15 スイッチ(締付完了情報検出装置)
16 管理コンピュータ
17 携帯情報端末(報知手段)
18 送受信手段
19 ピーク検出手段
20 判断手段
21 データベース
22 送受信手段
23 表示部
24 構成部品
25 識別コード
26 カメラ
27 作業者
28 管理室

Claims (1)

  1. 設定トルクまでネジが締め付けられた段階でトルク解除機構が作動してネジへの締付トルクの付与が一時的に減少するトルクレンチによるネジの締付状態を管理するネジの締付管理システムであって、
    前記トルクレンチに取り付けられてネジに作用する締付トルク情報を検出する締付トルク情報検出手段と、
    前記トルクレンチに取り付けられて前記トルク解除機構の作動に基づいて締付完了情報を検出する締付完了情報検出手段と、
    該締付トルク情報検出手段で検出された前記締付トルク情報のピーク値を検出し且つ前記締付完了情報検出手段で前記締め付け完了情報が検出された時点で最後に検出された前記ピーク値を出力するピーク検出手段と、
    該ピーク検出手段から出力された前記ピーク値に基づいてネジの締付状態の適否を判断する判断手段と、
    該判断手段の判断結果を報知する報知手段とを備え、
    前記ピーク検出手段は、検出された前記締付トルク情報の変化の態様が増加後に2回以上の所定回連続して減少し、且つ、その減少量が減少量自体の大きさを判断するための減少量判定閾値よりも大きい場合に、前記増加から減少に転じた点を前記ピーク値として検出することを特徴とするネジの締付管理システム。
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