しかしながら、上記した特許文献1の熱交換器においては、エンド部材を第1及び第2ヘッダタンクの差し込み孔に差し込む構造としているので、エンド部材と差し込み孔の周縁部とのろう付け不良が発生した場合には、気密性が確保されないという問題がある。この問題に対し、エンド部材を第1及び第2ヘッダタンクに対し差し込まず別体構造として、第1及び第2ヘッダタンクに差し込み孔を形成しないようにすることが考えられる。これにより、第1及び第2ヘッダタンクの気密性を確保し易くなるとともに、各部品の組立作業も容易になる。
ところで、製造時においては、コア部は積層されたフィンとチューブの密着状態を保持するため、治具等により積層方向に圧縮されている。このため、熱交換器のコア部と、第1及び第2ヘッダタンクとを比べたとき、製造時の加熱中に、熱膨張に起因するコア部のチューブ及びフィン配列方向の寸法変化と、ヘッダタンクの同方向の寸法変化とが同じ様にならない。よって、エンド部材をヘッダタンクに差し込まず別体構造とした場合には、コア部に配設されているエンド部材と、ヘッダタンクの端部とは、ろう付け時に互いに異なる動きをすることになる。このとき、特許文献1の熱交換器では、第1ヘッダタンクの端部に取り付けられる流路構成部材が、エンド部材の側面で支持されるようになっているので、エンド部材とヘッダタンクの端部とが加熱中に異なる動きをすると、流路構成部材がエンド部材の側面にろう付け接合されなくなることが考えられ、流路構成部材の取付強度を十分に確保するのが困難になる。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンド部材をヘッダタンクに差し込まず別体構造にしてヘッダタンクの気密性の確保と組立作業を容易にする場合に、製造時の加熱中において、エンド部材とヘッダタンクの端部とが互いに異なる動きをしても、それを許容して流路構成部材とエンド部材とを確実にろう付け接合できるようにして、流路構成部材の取付強度を十分に確保できるようにすることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、エンド部材と流路構成部材との一方の部材に設けた突出部を他方に設けた挿入孔に挿入するようにして、加熱時に、突出部の挿入方向への移動を許容できるようにし、これら突出部と挿入孔の周縁部とをろう付けするようにした。
具体的には、請求項1の発明では、チューブ及びフィンが交互に配列されたコア部と、該コア部におけるチューブ及びフィンの配列方向外端部に設けられたエンド部材と、上記チューブ及びフィンの配列方向に延び、上記コア部のチューブ両端部にそれぞれ配置されて接続される第1及び第2ヘッダタンクと、該第1ヘッダタンクの端部に接続される熱交換媒体の流路を構成する流路構成部材とを備え、上記コア部、上記エンド部材、上記第1ヘッダタンク、上記第2ヘッダタンク及び上記流路構成部材がろう付け接合されてなる熱交換器において、上記エンド部材は、上記第1及び第2ヘッダタンクに対して別体構造とされ、上記流路構成部材は、上記第1ヘッダタンクの端部から上記第2ヘッダタンク側へ向けて突出するように配置され、上記エンド部材と上記流路構成部材との間に所定の隙間が形成され、上記エンド部材及び上記流路構成部材の一方の部材には、他方の部材へ向かって上記第1ヘッダタンクの延びる方向に突出する突出部が形成され、他方の部材には、上記突出部が挿入される挿入孔が形成され、該挿入孔は、ろう付け中において上記エンド部材と上記流路構成部材とが上記ヘッダタンクの延びる方向に異なる動きをした場合に該突出部の突出方向への移動を許容することによって上記エンド部材と上記流路構成部材との相対的な動きを許容するように形成され、該突出部が該挿入孔の周縁部にろう付け接合されている構成とする。
この構成によれば、エンド部材を、第1及び第2ヘッダタンクに対して差し込まず別体構造としたので、これらヘッダタンクに差し込み孔や固定構造を設けずに済む。よって、第1及び第2ヘッダタンクの気密性の確保及び組立作業が容易になる。また、熱交換器の製造時には、エンド部材と流路構成部材との一方の突出部を他方の挿入孔に挿入しておくことが可能になる。これにより、加熱炉での加熱中に、コア部のチューブ及びフィン配列方向の寸法変化と第1ヘッダタンクの同方向の寸法変化とが互いに異なることに起因して、コア部に設けられたエンド部材と、第1ヘッダタンクの端部に配置された流路構成部材とが異なる動きをした場合に、突出部が挿入孔内をその突出方向に移動することになり、そのようなエンド部材と流路構成部材との異なる動きを許容することが可能になる。よって、突出部が挿入孔の周縁部に確実にろう付け接合されることになる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、突出部及び挿入孔は、第1ヘッダタンクから第2ヘッダタンク側へ離れて配置されている構成とする。
この構成によれば、流路構成部材の第1ヘッダタンクから離れた部位をエンド部材で支持することが可能になる。
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、流路構成部材に突出部が形成され、エンド部材に挿入孔が形成されている構成とする。
この構成によれば、流路構成部材の突出部をエンド部材の挿入孔に挿入した状態で、流路構成部材がエンド部材に支持される。
請求項4の発明では、請求項3の発明において、突出部は、流路構成部材の流路に対応する部位よりも外側に配置されている構成とする。
すなわち、流路構成部材の熱交換媒体の流路に対応する部位は、熱交換媒体の圧力が変動した際に、その圧力変動の影響を直接受けるので変形し易く、一方、流路構成部材の流路に対応する部位よりも外側は、熱交換媒体の圧力が変動しても変形し難い。この変形し難い部位に突出部を設けたことで、熱交換器の使用中に熱交換媒体の圧力変動によって突出部が無理に変位し難くなる。
請求項5の発明では、請求項3または4の発明において、エンド部材は、板状に形成され、その中心を対称の中心とした点対称な形状とされている構成とする。
この構成によれば、エンド部材の組み付け方向の自由度が向上する。
請求項6の発明では、請求項3から5のいずれか1つの発明において、エンド部材には、コア部におけるチューブ及びフィン配列方向の外端面から浮くように形成された浮き上がり部が設けられ、上記浮き上がり部に挿入孔が形成されている構成とする。
この構成によれば、挿入孔がコア部の外端面から離れて位置することになるので、突出部をコア部に接触させることなく、挿入孔へ深く挿入することが可能になる。
請求項7の発明では、請求項6の発明において、浮き上がり部は、エンド部材の縁部まで連続して形成されている構成とする。
この構成によれば、突出部が挿入孔に挿入されているか否かを、組立作業者がエンド部材の外側から見ることが可能になる。
請求項8の発明では、請求項1から7のいずれか1つの発明において、挿入孔は、スリット形状である。
この構成によれば、製造公差等によって突出部の位置が挿入孔の長手方向に若干ずれている場合にも、突出部を挿入孔に挿入することが可能になる。
請求項9の発明では、請求項8の発明において、突出部は、挿入孔の長手方向に長く延びる形状である。
この構成によれば、突出部を挿入孔に挿入した状態で、突出部と挿入孔の周縁部との接触面積が広く確保され、ろう付け面積が広くなる。
請求項10の発明では、請求項1から9のいずれか1つの発明において、突出部の形状は、挿入孔に圧入される形状とされている構成とする。
この構成によれば、突出部を挿入孔に挿入した状態で、突出部と挿入孔の周縁部とが確実に接触する。これにより、加熱中に溶融したろう材が突出部と挿入孔の周縁部との間に行き渡るようになる。
請求項11の発明では、請求項1から10のいずれか1つの発明において、突出部には、挿入孔の周縁部に係合して該挿入孔への挿入量が所定量以上となるのを規制する係合部が設けられている構成とする。
この構成によれば、流路構成部材の突出部を挿入孔に挿入していく際、その挿入量が所定量に近づくと、突出部の係合部が挿入孔の周縁部に係合するようになる。これにより、突出部が挿入孔に挿入し過ぎになることはなく、流路構成部材が正規の状態で組み付けられる。
請求項12の発明では、請求項1から11のいずれか1つの発明において、流路構成部材とエンド部材との少なくとも一方は、ろう材がクラッドされている構成とする。
この構成によれば、加熱炉で加熱中に、突出部と挿入孔の周縁部との間にろう材を行き渡らせることが可能になる。
請求項1の発明によれば、エンド部材を第1及び第2ヘッダタンクに差し込まず別体構造としたので、ヘッダタンクの気密性を容易に確保でき、組立作業も容易にすることができる。そして、エンド部材及び流路構成部材の一方の部材に、第1ヘッダタンクの延びる方向に突出する突出部を形成し、他方の部材に挿入孔を形成したので、製造時の加熱中に生じるエンド部材と流路構成部材との異なる動きを許容して、突出部を挿入孔の周縁部に確実にろう付け接合でき、流路構成部材の取付強度を十分に確保することができる。
請求項2の発明によれば、突出部及び挿入孔を、第1ヘッダタンクから第2ヘッダタンク側へ離したので、流路構成部材の第1ヘッダタンクから離れた部位をエンド部材で支持することができ、流路構成部材を安定させることができる。
請求項4の発明によれば、突出部を、流路構成部材の流路に対応する部位よりも外側に配置したので、突出部が挿入孔の周縁部にろう付け接合された状態で、熱交換器の使用中に無理に変位し難くなり、破損等を抑制できる。
請求項5の発明によれば、エンド部材を点対称な形状としたので、組み付け方向の自由度を向上でき、組み付け作業性を良好にすることができる。
請求項6の発明によれば、エンド部材に、コア部の外端面から浮くように形成された浮き上がり部を設け、この浮き上がり部に挿入孔を形成したので、流路構成部材の突出部を、コア部に接触しないように挿入孔へ深く挿入できる。これにより、加熱中に生じるエンド部材と流路構成部材との動きが大きく異なっても、突出部を挿入孔に挿入した状態にでき、確実にろう付け接合できる。
請求項7の発明によれば、浮き上がり部をエンド部材の縁部まで連続させたので、突出部が挿入孔に挿入されているか否かをエンド部材の外側から容易に確認することができ、誤組付を防止できる。
請求項8の発明によれば、挿入孔をスリット形状としたので、突出部が正規の位置から挿入孔の長手方向に若干ずれている場合においても、突出部を挿入孔に挿入してろう付け接合することができる。
請求項9の発明によれば、突出部を挿入孔の長手方向に長く延びる形状としたので、突出部と挿入孔の周縁部とのろう付け面積を広くでき、しっかりとろう付け接合できる。
請求項10の発明によれば、突出部の形状を挿入孔に圧入される形状としたので、突出部と挿入孔の周縁部とを確実に接触させてろう材を行き渡らせることができ、よって、ろう付け不良を回避できる。
請求項11の発明によれば、突出部に、挿入孔の周縁部に係合して該挿入孔への挿入量が所定量以上となるのを規制する係合部を設けたので、流路構成部材を確実にかつ容易に正規の状態で組み付けることができる。
請求項12の発明によれば、流路構成部材とエンド部材との少なくとも一方は、ろう材がクラッドされているので、突出部と挿入孔の周縁部とを確実にろう付けできる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
本発明の実施形態にかかる熱交換器1は、車両用空調装置などの冷媒回路に接続されて蒸発器として機能するものである。上記熱交換器1は、図1に示すように、コア部4と、該コア部4における両端部(図1における上下端部)に配置された上側及び下側ヘッダタンク6,7と、該コア部4における両外端部(図1における左右端部)にそれぞれ配置されたエンドプレート(エンド部材)8とを備えている。
コア部4は、被処理空気の通気方向(図2及び図10に白抜きの矢印で示す)と略垂直な方向(図1の左右方向)に、複数のチューブ2及びフィン3が交互に配列されて構成されている。上記チューブ2は、上下方向が長手方向となる平板状に形成された扁平チューブである。そして、チューブ2の上端が上側ヘッダタンク6に接続される一方、その下端が下側ヘッダタンク7に接続されている。一方、フィン3は、図1に示すように、複数のチューブ2の間に介設されている(図1において一部のみ示す)。このフィン3は、被処理空気の上流側から視て波形状に形成されたコルゲートフィンである。そして、フィン3の波形部分における左端部が左側に隣接するチューブ2にろう付け接合される一方、波形部分における右端部が右側に隣接するチューブ2にろう付け接合されている。また、コア部4のチューブ2及びフィン3配列方向両外端部にはフィン3がそれぞれ位置している。コア部4の外端部に位置するフィン3に隣接してエンドプレート8が配置され、該エンドプレート8が該フィン3の波形部分にろう付け接合されている。
各エンドプレート8は、コア部4の側面を覆う略矩形状のアルミニウム合金製板材をプレス成形してなるものである。エンドプレート8の長手方向両端部は、上側及び下側ヘッダタンク6,7に差し込まれておらず、しかも、該ヘッダタンク6,7の周壁部から僅かに離れている。つまり、エンドプレート8は、上側及び下側ヘッダタンク6,7に対して別体構造とされている。
上記エンドプレート8は、図3に示す平面視で、その中心を対称の中心とした点対称な形状とされている。すなわち、エンドプレート8の4つの角部近傍には、コア部4から離れる方向、即ち、コア部4の外端面から浮き上がる方向へ膨出した膨出部(浮き上がり部)8aがそれぞれ設けられている。これら膨出部8aは、同じ形状とされ、エンドプレート8の縁部まで連続しており、エンドプレート8の長手方向に長くなっている。膨出部8aの膨出方向先端面は、略平坦に形成されている。各膨出部8aには、エンドプレート8の長手方向に長いスリット形状の挿入孔8bが、該エンドプレート8を厚み方向に貫通して形成されている。また、エンドプレート8の長手方向両端部には切欠部8cが形成されている。
図2に示すように、コア部4は、被処理空気の上流側に位置する上流側コア部4aと、被処理空気の下流側に位置する下流側コア部4bとで構成されている。具体的には、上流側コア部4aは、被処理空気の流れ方向上流側寄りに配列された複数のチューブ2及びフィン3(図2において図示省略)で構成され、下流側コア部4bは、被処理空気の下流側寄りに配列された複数のチューブ2及びフィン3(図2において図示省略)で構成されている。
上側ヘッダタンク6は、コア部4の上端部全域に亘って上記複数のチューブ2及びフィン3の配列方向に延びて形成された中空の筒状部材である。上側ヘッダタンク6は、図1に示すように、その下部に位置する第1ヘッダプレート10と、その上部に位置する第1タンクプレート11とを備えている。
第1ヘッダプレート10は、上方に開放するチャンネル形状をなしている。また、第1ヘッダプレート10における下端面には、上記複数のチューブ2の上端部が挿入保持される複数のチューブ挿入孔10aが形成されている。一方、第1タンクプレート11は、下方に開放するチャンネル形状をなしている。上記第1ヘッダプレート10及び第1タンクプレート11は、アルミニウム合金製の板材をプレス加工することによって成形される。第1タンクプレート11の開放部分の外側に第1ヘッダプレート10が嵌合するようになっており、第1タンクプレート11と第1ヘッダプレート10との接合部がろう付け接合されている。
上側ヘッダタンク6の内部には、図10に示すように、平板状の仕切板20が設けられている。この仕切板20は、上側ヘッダタンク6の長手方向一端から他端まで上記チューブ2及びフィン3の配列方向に延びて形成されている。仕切板20は、上側ヘッダタンク6の被処理空気の流れ方向略中央部に配置され、第1ヘッダプレート10の内面及び第1タンクプレート11の内面にろう付け接合されるようになっている。この仕切板20により、上側ヘッダタンク6の内部が、被処理空気の流れ方向上流側寄りの第1上流側空間41と下流側寄りの第1下流側空間42とに分割されている(図3参照)。
上記第1上流側空間41は、上記上流側コア部4aにおける複数のチューブ2の流路と連通している。また、この第1上流側空間41は、上側ヘッダタンク6の長手方向における中間位置に設けられる上流側バッフル板21によって、図10における左右に2つに仕切られている。一方、第1下流側空間42は、上記下流側コア部4bにおける複数のチューブ2の流路と連通している。また、この第1下流側空間42は、上側ヘッダタンク6の長手方向における中間位置に設けられる下流側バッフル板22によって、同様に2つに仕切られている。さらに、第1上流側空間41における左側と、第1下流側空間42における左側との間に位置する上記仕切板20には、図示しない連通孔が形成されており、第1上流側空間41における左側と第1下流側空間42における左側とが、この連通孔を介して連通している。
一方、図1に示すように、下側ヘッダタンク7は、上述した上側ヘッダタンク6と同様に構成されたものである。この下側ヘッダタンク7は、その上部に位置する第2ヘッダプレート13と、その下部に位置する第2タンクプレート14とを備えている。そして、第2ヘッダプレート13における上端面には、複数のチューブ2の下端部が挿入保持される複数のチューブ挿入孔13aが形成されている。さらに、下側ヘッダタンク7の内部には、上側ヘッダタンク6と同様にして、仕切板20が設けられている。そして、下側ヘッダタンク7の内部が、上流側寄りの第2上流側空間43と下流側寄りの第2下流側空間44とに分割されている。上記第2上流側空間43は、上記上流側コア部4aにおける複数のチューブ2aの流路と通連している。一方、第2下流側空間44は、上記下流側コア部4bにおける複数のチューブ2bの流路と連通している。
上側ヘッダタンク6の左端部の開口は、第1キャップ30で覆われている。また、下側ヘッダタンク7の左右両端の開口も第1キャップ30でそれぞれ覆われている。上側ヘッダタンク6の右端部の開口は、第2キャップ31で覆われている。この第2キャップ31には、第1上流側空間41及び第1下流側空間42にそれぞれ連通する2つの貫通孔(図示せず)が形成されている。
上側ヘッダタンク6には、第2キャップ31を介して流路構成部材50が取り付けられている。この流路構成部材50は、第1下流側空間42と、冷媒(熱交換媒体)を供給する供給配管37(図10にのみ示す)とを接続し、第1上流側空間41と、冷媒を排出する排出配管38(図10にのみ示す)とを接続するためのものであり、内部には、冷媒の流路として通路部53が形成されている。流路構成部材50は、図4及び図5に示すように、コア部4側に位置する板状の内側部材51と、内側部材51に嵌合して保持される外側部材52とを備えている。図6にも示すように、流路構成部材50のコア部4と反対側には、供給配管37及び排出配管38用のコネクタ部54が取り付けられている。上記内側部材51及び外側部材52は、アルミニウム合金製の板材をプレス成形してなり、互いにろう付け接合されている。
図7に示すように、内側部材51は、全体として平板状をなしており、第2キャップ31の外面を覆う形状の本体部51aと、下側に延びた延長部51bとを有している。この内側部材51の本体部51aには、被処理空気の上流側に位置する貫通孔51cと、被処理空気の下流側に位置する貫通孔51dとが形成されている。これら貫通孔51c、51dは、第2キャップ31の貫通孔にそれぞれ接続され、貫通孔51cが、上側ヘッダタンク6における第1上流側空間41と連通し、貫通孔51dが、上側ヘッダタンク6における第1下流側空間42と連通するようになっている。
貫通孔51c、51dの周縁部には、上記第2キャップ32の貫通孔に嵌入する嵌入部51h、51hが外側部材52とは反対側へ突出するように形成されている。また、内側部材51には、この内側部材51に対して垂直に折り曲げられた接続部側嵌合部51eが、間隔を空けて内側部材51のほぼ全周に設けられている。
内側部材51の延長部51bには、図5に示すように、上記エンドプレート8の挿入孔8bに挿入される突出部51fが、エンドプレート8側へ向けて第1ヘッダタンク6の長手方向に突出するように設けられている。図7に示すように、突出部51fの形成位置は、延長部51bの外縁部、つまり、内側部材51の熱交換媒体の流路に対応する部位の外側に設定されている。すなわち、内側部材51の中央寄りの部位は、熱交換媒体の流路に対応する部位であり、この部位は、熱交換媒体の圧力変動を直接受けることになり、変形し易い部位である。これに対し、内側部材51の流路に対応する部位の外側は、そのような熱交換媒体の圧力変動の影響を受けにくく、殆ど変形しない部位である。この部位に突出部51fを設けたことで、熱交換器1の使用中に熱交換媒体の圧力変動によって突出部51fが無理に変位し難くなっている。
突出部51fは、挿入孔8bの長手方向に延びる板状をなしている。突出部51fの厚み寸法は、挿入孔8bの幅寸法よりも若干長く設定されており、突出部51fは挿入孔8bに圧入されるようになっている。
図4に示すように、突出部51fの基端側は、先端側に比べて挿入孔8bの長手方向に長くなっている。このように突出部51fの基端側と先端側とで寸法を変えることにより、突出部51fの突出方向中間部には、段差部51gが形成されることになり、突出部51fを挿入孔8bに挿入していくと、段差部51gが挿入孔8bの周縁部に係合するようになっている。この段差部51bが係合することで、突出部51fが挿入孔8bにそれ以上挿入されなくなる。つまり、段差部51gは、本発明の挿入量が所定量以上となるのを規制する係合部を構成している。
上記内側部材51には、上記接続部側嵌合部51eをかしめることによって上記外側部材52が結合している。この外側部材52には、図8に示すように、内側部材51の貫通孔51cに対応して同じ内径の貫通孔52aが形成されている。外側部材52は、内側部材51に当接してろう付け接合される当接部52cと、内側部材51の貫通孔51dを覆う容器状の管路部52dとを備えている。この管路部52dと内側部材51とで挟まれた領域で、通路部53が形成されている(図4及び図6参照)。この通路部53は、内側部材51の貫通孔51dに連通している。また、通路部53の下部には、貫通孔52bが形成されている。
コネクタ部54は、図9に示すように、管路部52dの貫通孔52bに挿入される供給側管部54aと、この供給側管部54aよりも長く、上記貫通孔52a、51cに挿入される排出側管部54bとを備えている。コネクタ部54の供給側管部54aは、貫通孔52bの周縁部にろう付け接合され、排出側管部54bは、貫通孔52a、51cの周縁部にろう付け接合されている。そして、このコネクタ部54は、図2に示すように、上側ヘッダタンク6を長手方向に視たときに、コネクタ部54の外周部が熱交換器1から大きく飛び出さないように配置されている。このコネクタ部54の供給側管部54aに、熱交換器1を循環する冷媒が流入する供給配管37が接続され、下流側管部54bに、熱交換器1を循環した冷媒が流出する排出配管38が接続される。
流路構成部材50の内側部材51の延長部51bと、エンドプレート8との間には、間隙が設けられている。この隙間は、各部材をろう付けする際の熱膨張に起因して、流路構成部材50とエンドプレート8とが突出部51f以外の部位で接触しないようにするために設けたものである。
次に、本実施形態に係る熱交換器1の製造方法について説明する。
まず、ろう材がクラッドされたアルミニウム合金製の板材を用いて、チューブ2、ヘッダプレート10、13、タンクプレート11、14、エンドプレート8、内側部材51、外側部材52を得る。また、フィン3、仕切板20、バッフル板21、22、キャップ30、31、コネクタ部54も用意しておく。
そして、チューブ2及びフィン3を交互に配置して積層していきコア部4を構成し、このコア部4の両外端部にエンドプレート8をそれぞれ配置して一体化する。このとき、エンドプレート8が点対称な形状とされているので、組み付け方向の自由度が高く、組み付け作業が容易である。
また、ヘッダプレート10、13、タンクプレート11、14、バッフル板21、22、仕切板20によって上側及び下側ヘッダタンク6,7を構成する。上側及び下側ヘッダタンク6,7のヘッダプレート10、13のチューブ挿入孔10a、13aにチューブ2の端部を挿入してコア部4とヘッダタンク6,7とを一体化する。コア部4のチューブ2及びフィン3は、図示しないが結束具によって結束して積層方向に圧縮しておく。
また、流路構成部材50の内側部材51に設けられた接続部側嵌合部51eを外側部材52にかしめて、内側部材51と外側部材52とを嵌合して保持する。また、この流路構成部材50の貫通孔52a、51cにコネクタ部54の排出側管部54bを挿入し、流路構成部材50の管路部52dの貫通孔52bにコネクタ部54の供給側管部54aを挿入し、コネクタ部54を流路構成部材50に保持する。
そして、流路構成部材50を上側ヘッダタンク6に組み付ける。すなわち、内側部材51の嵌入部51hを第2キャップ31の貫通孔に嵌入して流路構成部材50を上側ヘッダタンク6の端部に保持させるとともに、突出部51fをエンドプレート8の挿入孔8bに挿入する。このとき、段差部51gが挿入孔8bの周縁部に当たり、それ以上挿入方向に移動しなくなる。この突出部51fを挿入孔8bに挿入した状態では、エンドプレート8の膨出部8aがエンドプレート8の端部まで連続しているため、突出部51fが挿入孔8bに挿入されているか否かを組立作業者がエンドプレート8の外側から見ることが可能である。また、エンドプレート8の挿入孔8bをコア部4の外端面から浮き上がった膨出部8aに形成しているので、コア部4の外端面に接触しないように、突出部51fを挿入孔8bに深く挿入することが可能になっている。
流路構成部材50を上側ヘッダタンク6に組み付けた状態では、エンドプレート8と内側部材51の延長部51bとの間に間隙が設けられる。これにより、上側ヘッダタンク6から下側ヘッダタンク7側へ突出している延長部51bと、エンドプレート8とは当接しない。
上記のようにして各部品を一体化した後、ろう付け用加熱炉内へ搬送して加熱する。このとき、コア部4は、積層されたフィン3とチューブ2の密着状態を保持するため、結束具により積層方向に圧縮されている。よって、加熱による熱膨張に起因するコア部4のチューブ2及びフィン3配列方向の寸法変化と、ヘッダタンク6,7の長手方向の寸法変化とが同じ様にならない。その結果、コア部4に配設されているエンドプレート8と、ヘッダタンク6,7の端部とを見ると、ろう付け時に互いに異なる動きをする。
このため、ろう付け中、エンドプレート8と、上側ヘッダタンク6の端部に取り付けられた流路構成部材50とが異なる動きをすることになる。このような動きをした際には、流路構成部材50の突出部51fが、エンドプレート8の挿入孔8b内をその突出方向に移動することになり、そのようなエンドプレート8と流路構成部材50との動きを許容することが可能になる。
また、加熱炉内では、各部品のろう材や溶融して各部品の接合部に流れる。このとき、突出部51fを挿入孔8bに圧入するようにしているので、突出部51fと挿入孔8bの周縁部とが確実に接触しており、ろう材が流れ易い。
このようにして、突出部51fが挿入孔8bの周縁部に確実にろう付け接合され、流路構成部材50がエンドプレート8に支持された状態となる。
次に、本実施形態に係る熱交換器1における冷媒の循環動作について、図9を参照しながら説明する。
冷媒は、第2キャップ31の供給配管37から通路部53を通って熱交換器1の内部へ流入する。通路部53を流通した冷媒は、第2キャップ31の貫通孔を通過した後、上側ヘッダタンク6に形成された第1下流側空間42における右側へ流入する。そして、この冷媒は、下流側コア部4bにおけるチューブ2に分配されて、下方向へ流通する。各チューブ2を流通した冷媒は、下側ヘッダタンク7に形成された第2下流側空間44における右側で集合し、第2下流側空間44における左側へ流通する。そして、この冷媒は、下流側コア部4bのチューブ2に分配されて、上方向へ流通する。
各チューブ2を流通した冷媒は、上側ヘッダタンク6に形成された第1下流側空間42における左側で集合し、図示しない連通孔を通過して、上側ヘッダタンク6の第1上流側空間41における左側へ流通する。そして、この冷媒は、上流側コア部4aのチューブ2に分配されて、下方向へ流通する。各チューブ2を流通した冷媒は、下側ヘッダタンク7に形成された第2上流側空間43における左側で集合し、第2上流側空間43における右側へ流通する。そして、この冷媒は、上流側コア部4aのチューブ2に分配されて、再び上方向へ流通する。この冷媒は、上側ヘッダタンク6に形成された第1上流側空間41における右側の空間で集合する。以上のようにして、熱交換器1における上流側、下流側コア部4a,4bを流通した冷媒は、第2キャップ31の貫通孔を通過した後、排出配管38を介して、熱交換器1の外部へ流出する。
一方、被処理空気は、熱交換器1に対して図10の白抜き矢印の方向に流れ、熱交換器1のコア部4を流通する。この被処理空気は、コア部4のチューブ2及びフィン3を介して冷媒と熱交換して冷却されながら、熱交換器1を通過する。
したがって、本実施形態の熱交換器1においては、エンドプレート8を上側及び下側ヘッダタンク6,7に差し込まない構造としたので、ヘッダタンク6,7の気密性を容易に確保することができる。そして、流路構成部材50に突出部51fを形成し、エンドプレート8に挿入孔8bを形成したので、製造時の加熱中に生じるエンドプレート8と流路構成部材50との異なる動きを許容することができる。これにより、突出部51fを挿入孔8bの周縁部に確実にろう付け接合して、流路構成部材50をエンドプレート8で支えることができ、取付強度を十分に確保することができる。
また、突出部51f及び挿入孔8bが、上側ヘッダタンク6から下側ヘッダタンク7側へ離れて配置されているので、流路構成部材50の上側ヘッダタンク6から離れた部位をエンドプレート8で支えることができ、流路構成部材50を安定させることができる。
また、突出部51fを、流路構成部材50の流路に対応する部位よりも外側に配置したので、突出部51fが挿入孔8bに周縁部にろう付け接合された状態で、熱交換器1の使用中に無理に変位し難くなり、破損等を抑制できる。
また、エンドプレート8を点対称な形状としたので、製造時に作業者による組み付け作業性を良好にすることができる。
また、エンドプレート8に、コア部4の外端面から浮くように形成された膨出部8aを設け、この膨出部8aに挿入孔8bを形成したので、流路構成部材50の突出部51fを、コア部4に接触しないように挿入孔8bへ深く挿入できる。これにより、加熱中にエンドプレート8と流路構成部材50との動きが大きく異なっても、突出部51fを挿入孔8bに挿入した状態にでき、確実にろう付け接合できる。
また、膨出部8aがエンドプレート8の縁部まで連続しているので、突出部51fが挿入孔8bに挿入されているか否かを、組付作業者がエンドプレート8の外側から容易に確認することができ、誤組付を防止できる。
また、挿入孔8bをスリット形状としたので、突出部51fが正規の位置から挿入孔8bの長手方向に若干ずれている場合においても、突出部51fを挿入孔8bに挿入してろう付け接合することができる。
また、突出部51fを挿入孔8bの長手方向に長く延びる形状としたので、突出部51fと挿入孔8bの周縁部とのろう付け面積を広くでき、しっかりとろう付け接合できる。
また、突出部51fの形状を挿入孔8bに圧入される形状としたので、突出部51fと挿入孔8bの周縁部とを確実に接触させてろう材を行き渡らせることができ、よって、ろう付け不良を回避できる。
また、突出部51fに、挿入量を規制するための段差部51gを設けたので、流路構成部材50を確実にかつ容易に正規の状態で組み付けることができる。
また、エンドプレート8と流路構成部材50との間に隙間を形成したので、加熱炉で加熱中に熱膨張によってエンドプレート8と流路構成部材50とが干渉することはなく、流路構成部材50を正規の位置で確実にろう付け接合できる。
また、流路構成部材50とエンドプレート8とはろう材がクラッドされているので、突出部51fと挿入孔8bの周縁部とを確実にろう付けできる。