JP5005354B2 - 回転電機 - Google Patents

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Description

本発明は、乗用車やトラックなどに搭載される発電機、電動機および発電電動機などの回転電機に関するものである。
従来の車両用交流発電機では、嵌合用の断面L字状の切り欠きが円筒状の固定子鉄心の軸方向両端面の外周部に切削加工などによってリング状に形成されている。そして、一対の椀形状のフレームが軸方向の両側から固定子鉄心の切り欠きに圧入状態に嵌合され、固定子が一対のフレームにインロウ結合されている(例えば、特許文献1参照)。
また、他の従来の車両用交流発電機では、固定子鉄心は、帯状の鋼板を螺旋状に巻き取り積層して円筒状に作製されている。この固定子鉄心の外周部には、軸方向に延びる溝状の凹部が設けられている。また、固定子鉄心の軸方向両端面は平坦面に形成されている。そして、一対の椀形状のフレームが、軸方向の両側から固定子鉄心の軸方向両端面に宛われ、凹部に配置されている通しボルトにより締着されている。これにより、固定子鉄心が一対のフレームにより軸方向両側から加圧挟持されている(例えば、特許文献2参照)。
特開昭62−88442号公報 特開2002−186232号公報
従来の車両用交流発電機においては、固定子鉄心とフレームとがインロウ結合されているので、両者のインロウ部には、同一の真円度および同軸度が要求される。即ち、インロウ結合される固定子鉄心の外周部に形成される断面L字状の切り欠きの外周面とフレームの開口縁部の内周面とが同一の真円度および同軸度を有することが要求される。しかし、固定子鉄心の切り欠きの外周面とフレームの開口縁部の内周面とを同一の真円度および同軸度を有するように作製することは困難であった。そこで、固定子鉄心の切り欠きの外周面とフレームの開口縁部の内周面とのインロウ部には、微小の隙間が生じてしまっていた。
この種の車両用交流発電機においては、発熱部品である固定子コイルを冷却するために、排気穴が固定子コイルのコイルエンドに近接してフレームに形成されている。そこで、車両の走行時、排気穴からフレーム内に侵入した塩水や泥水が、固定子鉄心とフレームとのインロウ部の隙間に入り込む。そして、塩水や泥水がインロウ部の隙間に滞留して固定子鉄心の酸化を促進し、かつこのインロウ部が固定子コイルのコイルエンドに近接しているので、相電流を発生する固定子コイルとアースとなるフレームとの間にリークパスが形成されやすくなり、絶縁不良が発生しやすくなる。
上記の課題を解決するために、インロウ部のしめしろを増加することが考えられる。つまり、インロウ部のしめしろを増加することにより、固定子鉄心とフレームとの嵌合力が大きくなり、インロウ部の隙間が少なくなる。しかし、大きな嵌合力に耐えるフレームの剛性が必要となり、フレームの大型化、車両用交流発電機の大型化をもたらしてしまう。
また、他の従来の車両用交流発電機では、固定子鉄心が通しボルトの締着力により一対のフレームに加圧挟持されているので、固定子鉄心とフレームとの突き合わせ部には隙間が生じにくく、上述の絶縁不良の発生が抑制される。しかし、凹部が固定子鉄心の外周部に軸方向に延びるように形成されているので、磁気回路の磁気抵抗が大きくなり、出力低下をもたらしてしまうという課題があった。
また、車両用交流発電機においては、固定子の温度上昇が出力の低下につながることから、固定子コイルでの発熱を効率的に放熱する必要がある。しかし、上述の従来技術では、固定子コイルでの発熱を効率的に放熱して固定子の温度上昇を抑えることについて、何等考慮されていない。
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、出力を低下させることなく、固定子鉄心の酸化にともなう絶縁不良の発生を抑制するとともに、固定子コイルでの発熱を効率的にフレームに伝達して固定子の温度上昇を抑える回転電機を得ることを目的としている。
この発明は、内径側に開口するスロットが周方向に配列された円筒状の固定子鉄心および該スロットに巻装された固定子コイルを有する固定子と、それぞれ椀形状に形成され、かつ嵌合溝が椀形状の開口内周に全周にわたって形成されており、上記固定子鉄心の軸方向両端の外周部を該嵌合溝に嵌合させて挟持する一対のフレームと、上記固定子鉄心内に該固定子鉄心と同軸に配置されて上記一対のフレームに回転自在に支持された回転子と、上記固定子鉄心の外径側に軸方向を該固定子鉄心の軸心と平行にして周方向に複数配列され、該固定子鉄心を挟持する上記一対のフレームを締着一体化する通しボルトと、上記回転子の軸方向の少なくとも一端面に固着された冷却ファンと、を備えている。そして、吸気穴が上記一対のフレームの冷却ファン側の端面に穿設され、排気穴が上記一対のフレームの冷却ファン側の側面に穿設されている。さらに、上記固定子鉄心は、絶縁被膜を被覆していない磁性薄板を積層一体化して構成され、かつ円筒面の外周面を有し、上記嵌合溝は、上記固定子鉄心の軸心と直交する平坦面からなる円環状の軸方向面および該軸心を中心とする円筒面からなる径方向面からなる。さらにまた、上記固定子鉄心が軸方向両端の上記磁性薄板の金属面を上記一対のフレームの上記軸方向面のそれぞれに全周にわたって密接状態に挟持され、絶縁被膜層が、上記固定子鉄心の外周面の上記径方向面と嵌合する部位にのみ被覆されている。
この発明によれば、固定子鉄心が円筒面の外周面を有しているので、磁気回路を構成するコアバックの磁路断面積が減少されず、磁気抵抗の増大に伴う出力低下が抑制される。また、固定子鉄心の軸方向両端面が一対のフレームの嵌合溝の軸方向面のそれぞれに全周にわたって密接状態に加圧挟持されているので、固定子鉄心の端面と嵌合溝の軸方向面との間に隙間がなくなり、固定子鉄心の端面と嵌合溝の軸方向面との間への塩水や泥水の侵入が抑えられる。そこで、塩水や泥水が固定子鉄心の端面と嵌合溝の軸方向面との間に滞留することに起因する絶縁不良の発生が抑制される。また、固定子鉄心の端面と嵌合溝の軸方向面とが金属面同士で接触しているので、固定子コイルの熱が固定子鉄心を介してフレームに効率的に伝達される。そこで、固定子コイルでの発熱はフレームから効率的に放熱され、固定子の温度上昇が抑制される。
この発明の実施の形態1による車両用交流発電機を示す縦断面図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機に適用される固定子を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機における電気回路図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機における固定子の固定構造を説明する要部断面図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における帯状磁性薄板のプレス工程を説明する図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機に適用される固定子の製造過程で得られる帯状磁性薄板を示す平面図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機に適用される固定子の製造過程で得られる帯状磁性薄板の積層体を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機に適用される固定子の製造過程で得られる直方体の積層鉄心を示す斜視図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機に適用される固定子の製造過程で得られる巻線アッセンブリを示す側面図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機に適用される固定子の製造方法における積層鉄心の曲げ工程を説明する斜視図である。 この発明の実施の形態1による車両用交流発電機の実施態様を示す縦断面図である。 この発明の実施の形態2による車両用交流発電機における固定子の固定構造を説明する要部断面図である。 この発明の実施の形態3による車両用交流発電機における固定子の固定構造を説明する要部断面図である。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による車両用交流発電機を示す縦断面図、図2はこの発明の実施の形態1による車両用交流発電機に適用される固定子を示す斜視図、図3はこの発明の実施の形態1による車両用交流発電機における電気回路図、図4はこの発明の実施の形態1による車両用交流発電機における固定子の固定構造を説明する要部断面図である。
図1乃至図4において、車両用交流発電機100は、それぞれ略椀形状のアルミニウム製のフレームとしてのフロントブラケット1とリヤブラケット2とからなるケース3と、このケース3に回転自在に支持されたシャフト4と、ケース3のフロント側に延出するシャフト4の端部に固着されたプーリ5と、シャフト4に固定されてケース3内に収容された回転子6と、この回転子6の軸方向の両端面に固定されたファン7と、回転子6の外周を囲繞するようにケース3の内壁面に固定された固定子8と、シャフト4のリヤ側に固定され、回転子6に電流を供給するスリップリング9と、このスリップリング9に摺動するようにケース3内に配設された一対のブラシ10と、このブラシ10を収納するブラシホルダ11と、固定子8に電気的に接続され、固定子8で生じた交流を直流に整流する整流器12と、ブラシホルダ11に嵌着されたヒートシンク13と、このヒートシンク13に接着され、固定子8で生じた交流電圧の大きさを調整するレギュレータ14と、を備えている。
回転子6は、電流を流して磁束を発生する界磁巻線18と、この界磁巻線18を覆うように設けられ、その磁束によって磁極が形成される一対の第1および第2ポールコア19,20とを備えている。
固定子8は、円筒状の固定子鉄心15と、固定子鉄心15に巻装された固定子コイル16とを備えている。固定子鉄心15には、軸方向に延びるスロット15aがその開口を内周側に向けて毎極毎相当たり2の割合で周方向に等角ピッチで設けられている。そして、インシュレータ17がスロット15a内に装着され、固定子鉄心15と固定子コイル16との間の絶縁を確保している。また、固定子コイル16は、それぞれ3つの相巻線161をY結線してなる2つの三相交流巻線160から構成されている。そして、2つの三相交流巻線160がそれぞれ整流器12に接続されている。
また、フロントブラケット1およびリヤブラケット2の開口縁部の内周には、断面L字状の嵌合溝21が円環状に形成されている。そして、フロントブラケット1およびリヤブラケット2の開口縁部の外周には、複数のフロント側鍔部22およびリヤ側鍔部23が対向して外径方向に突設されている。フロント側鍔部22にはボルト穴22aが設けられ、リヤ側鍔部23にはネジ穴23aが設けられている。なお、断面L字状の嵌合溝21は、シャフト4の軸心と直交する平坦面からなる円環状の軸方向面21aと、シャフト4の軸心を中心とする円筒面からなる径方向面21bと、を有する。
そして、固定子鉄心15の軸方向両端が軸方向両側からフロントブラケット1およびリヤブラケット2の開口縁部の嵌合溝21に嵌合され、ボルト穴22aに通された通しボルト24をネジ穴23aに締着して、固定子8がケース3に加圧挟持されている。この時、固定子鉄心15の軸方向両端面の外周縁部は、通しボルト24の締着力の推力Fと反力Rとの拘束力により、全周に渡って嵌合溝21の軸方向面21aに密接される。また、固定子鉄心15の外周面の軸方向両端縁部は、嵌合溝21の径方向面21bに係合し、径方向移動を規制されている。
ついで、固定子8の組立方法について図5乃至図10を参照しつつ説明する。
まず、図5に示されるように、帯状磁性薄板31が例えば0.3mmの板厚の圧延鋼板30を矢印A方向に移動しつつピッチpで打ち抜かれる。この帯状磁性薄板31は、図6に示されるように、長方形の平面形状を有し、ティース部31bがコアバック部31cから幅方向一側に延出して長手方向に所定のピッチで形成されている。そして、スロット部31aが帯状磁性薄板31の幅方向一側に開口するように、ティース部31b間に形成されている。また、長手方向の両端部のティース部31bの幅は、他のティース部31bの幅の半分となっている。この帯状磁性薄板31の長さは、固定子鉄心15の周方向長さに一致している。
ついで、打ち抜かれた帯状磁性薄板31を、スロット部31a、ティース部31bおよびコアバック部31cを重ね合わせて、固定子鉄心15の軸方向厚さの厚さに積層して、図7に示される直方体の積層体32Aを作製する。ついで、積層体32Aの長手方向を、例えば4等分する位置で、積層体32Aの積層方向の一端から他端に至るように帯状磁性薄板31のコアバック部31cの外壁面を例えばレーザ溶接し、積層された帯状磁性薄板31を一体化する。さらに、積層体32Aの長手方向の両端から2番目のティース部31bに対向する位置で、積層体32Aの積層方向の一端から他端に至るように各帯状磁性薄板31のコアバック部31cの外壁面を例えばレーザ溶接し、積層された帯状磁性薄板31を一体化する。これにより、図8に示されるように、積層された帯状磁性薄板31が5条の薄板連結溶接部33により一体化されて、直方体の積層鉄心32が作製される。
また、図9に示される巻線アッセンブリ40が作製される。この巻線アッセンブリ40は、例えば、断面円形の銅線を絶縁被覆してなる12本の連続導体線41を巻線成形装置(図示せず)に同時に連続して供給して作製される。そして、12本の連続導体線41は、巻線成形装置により、1スロットピッチで配列された状態で一括して折り曲げ成形される。この巻線アッセンブリ40は、図9中紙面と直交する方向に隣接する直線状のスロット収納部42の対が、1スロットピッチでスロット数分配列され、6スロット離れたスロット収納部42の端部同士がターン部43で連結されて構成されている。
ここで、図9中スロット収納部42の対が、上層のスロット収納部42と、下層のスロット収納部42とから構成されているとすると、各連続導体線41は、6スロット離れた上層のスロット収納部42と下層のスロット収納部42とをターン部43により上端同士と下端同士とを交互に連結する波形状に構成されている。そして、12本の連続導体線41の端部41aが、巻線アッセンブリ40の両側両端に6本ずつ延出されている。また、折り曲げ成形時に、所定の時点で該当する連続導体線41の供給量を多くして、後工程で曲げ成形される導体端部44を巻線アッセンブリ40のターン部43から延出させている。
ついで、インシュレータ17が直方体の積層鉄心32の各スロット部32a内に装着される。そして、3つの巻線アッセンブリ40が、直方体の積層鉄心32の各スロット部32a内にスロット収納部42の対を収納させて、スロット深さ方向に3層に重ねて装着される。
ついで、積層鉄心32が、巻線アッセンブリ40を装着した状態で、図10に示されるように、スロット部32aの開口を内周側に向けて円筒状に曲げられ、積層鉄心34を得る。ついで、曲げられた積層鉄心34の両端面を突き合わせ、その突き合わせ部46の外周部を例えばレーザ溶接により溶接し、円筒状の固定子鉄心15を得る。
巻線アッセンブリ40の両端両側に延出する連続導体線41の端部41aは、固定子鉄心15の突き合わせ部46の軸方向両側に互いに隣接した状態に延出される。そして、連続導体線41の端部41a同士が結線され、付随結線部45が突き合わせ部46の軸方向両側に形成される。ついで、導体端部44が結線されて、図2に示される固定子コイル16が形成される。この固定子コイル16は、3つの相巻線161をY結線してなる2つの三相交流巻線160から構成される。そして、各相巻線161は、連続導体線41が固定子鉄心15の端面側のスロット15aの外で折り返されて、6スロット毎のスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互にとるように波巻きに巻装された6つの巻線から構成される。また、連続導体線41が固定子鉄心15の端面側のスロット15aの外で折り返されてなるターン部43が、固定子鉄心15の軸方向両端側に、径方向に3列となって周方向に1スロットピッチで整然と配列されて固定子コイル16のコイルエンド16aを構成している。
このように作製された固定子鉄心15では、帯状磁性薄板31のスロット部31a、ティース部31bおよびコアバック部31cが軸方向に重なってスロット15a、ティース15bおよびコアバック15cを構成している。
このように構成された車両用交流発電機100では、バッテリ25からブラシ10およびスリップリング9を介して電流が界磁巻線18に供給される。これにより、磁束が発生し、第1ポールコア19がN極に励磁され、第2ポールコア20がS極に励磁される。一方、エンジンによってプーリ5が回転駆動され、回転子6がシャフト4とともに回転する。これにより、回転磁界が固定子コイル16に与えられ、起電力が発生する。この交流の起電力は、整流器12を通って直流に整流されると共に、その電圧値の大きさがレギュレータ14によって調整されて、バッテリ25に充電される。
また、回転子6の回転に同期してファン7が回転される。そして、空気がフロントブラケット1およびリヤブラケット2の端面に形成された吸気穴1a,2aからケース3内に吸気される。ケース3内に吸気された空気は、軸方向に回転子6まで流れ、ファン7により遠心方向に曲げられ、フロントブラケット1およびリヤブラケット2の側面に、固定子コイル16のコイルエンド16aに近接して形成された排気穴1b,2bから外部に排出される。この空気の流れにより、整流器12、レギュレータ14および固定子コイル16などの発熱部品が冷却される。
ここで、車両用交流発電機100では、N極に励磁された第1のポールコア19から出た磁束が、回転子6と固定子8との間のエアギャップを介して固定子鉄心15のティース15bに入り、コアバック15cを通って隣接するティース15bに入り、エアギャップを介してS極に励磁された第2のポールコア20に入る閉磁気回路となる。この時、磁気回路に流れて発電機の出力を決定する磁束の量は、回転子6による回転磁界の起磁力と磁気回路の磁気抵抗とによって決まる。この実施の形態1では、固定子鉄心15の外周面が円筒状に形成されているので、通しボルトを通すための凹部が外周面に形成されている従来の固定子鉄心に比べて、磁気回路におけるコアバック15cでの磁路断面積が凹部のない分大きくなり、磁気抵抗が小さくなり、出力を高めることができる。
また、固定子鉄心15の両端面が通しボルト24の締着力によりフロントブラケット1およびリヤブラケット2の嵌合溝21の軸方向面21aに加圧挟持されているので、固定子鉄心15の端面が完全な平面度を有していなくとも、また固定子鉄心15の端面と軸方向面21aとが完全に平行となっていなくとも、固定子鉄心15の両端面と軸方向面21aとを密接状態にできる。そこで、図4中矢印Bで示されるように、塩水や泥水が排気穴1b,2bから侵入しても、固定子鉄心15の端面と軸方向面21aとの間には入り込めない。そこで、塩水や泥水がコイルエンド16aに近接する嵌合部(固定子鉄心15の端面と軸方向面21aとの嵌合部)に滞留することに起因する絶縁不良の発生を抑制することができる。
また、固定子鉄心15の外周面と嵌合溝21の径方向面21bとの間には微小な隙間が生じる。しかし、図4に示されるように、固定子鉄心15の外周面と径方向面21bとの嵌合部とコイルエンド16aとの間の距離δは、固定子鉄心15の端面と軸方向面21aとの嵌合部とコイルエンド16aとの間の距離に比べて著しく長くなる。そこで、塩水や泥水が固定子鉄心15の外周面と径方向面21bとの嵌合部に滞留して固定子鉄心15の酸化を促進しても、リークパスがケース3とコイルエンド16aとの間に形成されない。
また、固定子鉄心15は、薄い帯状磁性薄板31を積層一体化して同時に円筒状に曲げ、その突き合わせ部46を溶接して作製されているので、精度の高い円筒度を有する固定子鉄心15が得られる。同時に、固定子鉄心15を構成する帯状磁性薄板31間に隙間が発生しにくくなり、塩水や泥水の帯状磁性薄板31間への侵入が防止される。
また、この固定子コイル16を構成する各相巻線161は、連続導体線41が固定子鉄心15の端面側のスロット15aの外で折り返されて、6スロット毎のスロット15a内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互にとるように波巻きに巻装された6つの巻線から構成されている。これにより、固定子鉄心15の端面側のスロット15aの外で折り返されてなるターン部43が、固定子鉄心15の軸方向両端側に、径方向に3列となって周方向に1スロットピッチで整然と配列されて固定子コイル16のコイルエンド16aを構成している。そこで、コイルエンド16aの外径形状が周方向に関して均一に構成されるので、コイルエンド16aとケース3との間の距離を一定に保たつことができ、コイルエンド16aの絶縁耐力が高められる。
また、固定子鉄心15が絶縁被膜を被覆していない帯状磁性薄板31を積層して作製されているので、固定子鉄心15の端面と嵌合溝21の軸方向面21aとが金属面同士で接触している。さらに、固定子鉄心15の端面と軸方向面21aとが通りボルト24の締着力により緊密状態となっている。そこで、固定子鉄心15の端面と軸方向面21aとの接触熱抵抗が著しく低減される。これにより、固定子コイル16で発生した熱が固定子鉄心15を介してケース3に効率的に伝達され、表面積の大きなケース3の表面から放熱されるので、固定子8の温度上昇を抑えることができる。
また、車両用交流発電機100においては、アースフロートにより無発電となる可能性がある。そして、通しボルト24とネジ穴23aとの螺着部における接触面積は少なく、塩水や泥水がその螺着部に侵入すると、螺着部の電気伝導性が低下し、アースフロートの要因となる。そこで、車両用交流発電機100は、フロントブラケット1およびリヤブラケット2に設けられた取付用フランジ部26,27を取付ボルト(図示せず)を用いて車両側接地部28に締着して、取り付けられる。これにより、フロントブラケット1とリヤブラケット2とが確実に接地され、アースフロートの発生が未然に防止される。
また、この実施の形態1では、固定子鉄心15が絶縁被膜を被覆していない帯状磁性薄板31を積層して作製され、固定子鉄心15が通しボルト24の締着力によりケース3に加圧挟持されているので、塩水や泥水が帯状磁性薄板31間や固定子鉄心15と軸方向面21aとの間に侵入せず、良好な電気伝導性が確保される。そこで、フロントブラケット1とリヤブラケット2とが固定子鉄心15を介して確実に電気的に接続されるので、取付用フランジ部26,27の両方を車両側接地部28に取り付ける必要はなく、車両用交流発電機100の取付自由度を増すことができる。例えば、図11に示されるように、取付用フランジ部27を無くし、フロントブラケット1に設けられた取付用フランジ部27を取付ボルト(図示せず)を用いて車両側接地部28に締着してもよい。この場合、アース側配線をリヤブラケット2に接続する必要はなく、車両配線の取り回しが容易となる。
実施の形態2.
図12はこの発明の実施の形態2による車両用交流発電機における固定子の固定構造を説明する要部断面図である。
図12において、絶縁被膜29が固定子鉄心15の外周面に被覆されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
この実施の形態2では、上記実施の形態1と同様に、帯状磁性薄板31を積層一体化して直方体の積層鉄心32を作製し、巻線アッセンブリ40が装着された積層鉄心32を円筒状に曲げ、円筒状に曲げられた積層鉄心34の両端面を突き合わせて溶接して固定子鉄心15を作製する。ついで、例えばエポキシ系樹脂からなる絶縁性樹脂を固定子鉄心15の外周面に塗布して、絶縁被膜29が外周面の全面に被覆された固定子鉄心15を作製している。
ここで、絶縁被膜29が固定子鉄心15の外周面に被覆されていないと、固定子鉄心15の外周面と嵌合溝21の径方向面21bとの嵌合部において、固定子鉄心15の金属面が露出する。そこで、塩水や泥水が固定子鉄心15の外周面と径方向面21bとの間に滞留すると、固定子鉄心15の酸化を促進される。そして、固定子鉄心15の酸化物が固定子鉄心15Aの外周面と径方向面21bとの間に形成されると、固定子鉄心15が内径側に押圧され、最悪の場合には、固定子鉄心15が内径側に変位し、回転子6と干渉する事態が発生する。
この実施の形態2では、固定子鉄心15の外周面と嵌合溝21の径方向面21bとの嵌合部において、固定子鉄心15の金属面が露出していないので、塩水や泥水が固定子鉄心15の外周面と嵌合溝21の径方向面21bとの間に滞留しても、固定子鉄心15の酸化が抑制される。従って、固定子鉄心15の外周面と径方向面21bとの嵌合部に固定子鉄心15の酸化物が形成されることに起因する固定子鉄心15と回転子6との干渉を未然に防止できる。
なお、上記実施の形態2では、絶縁被膜29が固定子鉄心15の外周面の全面を覆うように被覆されているものとしているが、絶縁被膜29は固定子鉄心15の外周面の少なくとも嵌合溝21の径方向面21bと相対する領域を覆うように形成されていればよい。
実施の形態3.
図13はこの発明の実施の形態3による車両用交流発電機における固定子の固定構造を説明する要部断面図である。
図13において、固定子鉄心15Aは、例えば0.3mmの板厚(t1)の帯状磁性薄板31を所定枚積層し、さらに例えば1.0mmの板厚(t2)の帯状磁性薄板31Aを帯状磁性薄板31の積層体の両端に積層し、帯状磁性薄板31,31Aの積層体を溶接一体化した後、円筒状に曲げ、両端面の突き合わせ部を溶接して作製されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
この実施の形態3では、厚板からなる帯状磁性薄板31Aが円筒状に曲げる積層体の両端に配置されているので、積層体の剛性が高められる。そこで、積層体を円筒状に曲げる際に、両端面に発生する波打ち現象が抑制される。これにより、固定子鉄心15Aの両端面の平坦度が増し、固定子鉄心15Aの端面と嵌合溝21の軸方向面21aとが隙間無く密着される。そこで、塩水や泥水が固定子鉄心15Aの端面と軸方向面21aとの間に滞留することに起因する絶縁不良の発生を一層抑制することができる。
ここで、塩水や泥水が固定子鉄心15Aの外周面と嵌合溝21の径方向面21bとの間に滞留し、固定子鉄心15Aの酸化を促進されると、固定子鉄心15Aの酸化物が固定子鉄心15Aの外周面と径方向面21bとの間に形成される。この固定子鉄心15Aの酸化物の形成は、固定子鉄心15Aを内径側に押圧するように作用する。この実施の形態3では、厚板からなる帯状磁性薄板31Aが固定子鉄心15Aの両端に配置されているので、固定子鉄心15Aの径方向の変位に対する剛性が高められる。そこで、固定子鉄心15Aの酸化物が固定子鉄心15Aの外周面と径方向面21bとの間に形成されても、固定子鉄心15Aの内径側への変位が阻止され、回転子6と固定子鉄心15Aとの干渉が防止される。
なお、上記実施の形態3では、厚板からなる帯状磁性薄板31Aを固定子鉄心15Aの軸方向両端に配置するものとしているが、厚板からなる帯状磁性薄板31Aは必ずしも固定子鉄心15Aの軸方向両端に配置する必要はなく、固定子鉄心15Aの軸方向の一端にのみ配置してもよい。
また、上記各実施の形態では、ファンを回転子の軸方向両端に配設するものとしているが、ファンは必ずしも回転子の軸方向両端に配設される必要はなく、例えばファンを回転子のリヤ側にのみ配設してもよい。この場合、吸気穴および排気穴は少なくともリヤブラケットに形成されていればよい。
また、上記各実施の形態では、車両用交流発電機に適用するものとして説明しているが、本発明は、車両用発電電動機や車両用交流電動機の回転電機に適用しても同様の効果を奏する。
また、上記各実施の形態では、固定子スロットが毎極毎相当たり2の割合で作製された車両用交流発電機に適用するものとして説明しているが、この発明は、固定子スロットが毎極毎相当たりn(但し、nは2以上の整数)割合で作製された車両用交流発電機に適用することができる。
また、上記各実施の形態では、固定子コイルが2つの三相交流巻線から構成されているものとしているが、固定子コイルを1つの三相交流巻線で構成してもよい。また、各三相交流巻線が3つの相巻線をY結線して構成されているものとしているが、各三相交流巻線は3つの相巻線をΔ結線して構成してもよい。

Claims (4)

  1. 内径側に開口するスロットが周方向に配列された円筒状の固定子鉄心および該スロットに巻装された固定子コイルを有する固定子と、
    それぞれ椀形状に形成され、かつ嵌合溝が椀形状の開口内周に全周にわたって形成されており、上記固定子鉄心の軸方向両端の外周部を該嵌合溝に嵌合させて挟持する一対のフレームと、
    上記固定子鉄心内に該固定子鉄心と同軸に配置されて上記一対のフレームに回転自在に支持された回転子と、
    上記固定子鉄心の外径側に軸方向を該固定子鉄心の軸心と平行にして周方向に複数配列され、該固定子鉄心を挟持する上記一対のフレームを締着一体化する通しボルトと、
    上記回転子の軸方向の少なくとも一端面に固着された冷却ファンと、を備え、
    吸気穴が上記一対のフレームの冷却ファン側の端面に穿設され、排気穴が上記一対のフレームの冷却ファン側の側面に穿設されている回転電機において、
    上記固定子鉄心は、絶縁被膜を被覆していない磁性薄板を積層一体化して構成され、かつ円筒面の外周面を有し、
    上記嵌合溝は、上記固定子鉄心の軸心と直交する平坦面からなる円環状の軸方向面および該軸心を中心とする円筒面からなる径方向面からなり、
    上記固定子鉄心が軸方向両端の上記磁性薄板の金属面を上記一対のフレームの上記軸方向面のそれぞれに全周にわたって密接状態に挟持され、
    絶縁被膜層が、上記固定子鉄心の外周面の上記径方向面と嵌合する部位にのみ被覆されていることを特徴とする回転電機。
  2. 上記固定子鉄心の軸方向の少なくとも一端に位置する上記磁性薄板の板厚が、残る上記磁性薄板の板厚より厚いことを特徴とする請求項1記載の回転電機。
  3. 上記固定子鉄心は、上記磁性薄板の積層体の両端部を突き合わせることで円筒状になる上記軸心方向に延びた突き合わせ部を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の回転電機。
  4. 上記固定子コイルは、連続線が、上記固定子鉄心の端面側の上記スロット外で折り返されて、所定のスロット毎の上記スロット内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互にとるように巻装された巻線を複数有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回転電機。
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