本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーは、樹脂成分として、常温液体のポリオールを構成成分とするポリウレタンアイオノマーを含有し、前記ポリウレタンアイオノマー中のハードセグメント含有率は、24質量%〜35質量%であることを特徴とする。
まず、本発明のゴルフボールのカバーの樹脂成分として使用されるポリウレタンアイオノマーについて説明する。本発明で使用するポリウレタンアイオノマーとしては、常温液体のポリオールを構成成分とし、ウレタン結合を分子内に複数有するポリウレタンであって、前記ポリウレタンが有する酸性基が中和されてイオン化されており、ポリウレタンアイオノマー中のハードセグメント含有率が、24質量%〜35質量%であるものであれば、特に限定されない。
ここで、「ポリウレタン」とは、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによって、ウレタン結合が分子内に形成された生成物であり、必要に応じて、さらに低分子量のポリオールやポリアミンなどによって鎖長延長反応させることにより得られるものである。また、「ポリウレタンアイオノマー中のハードセグメント含有率」とは、ポリウレタンアイオノマー中のポリイソシアネート成分および鎖長延長剤成分の含有率を示すものとし、ハードセグメント含有率(質量%)=100×(ポリイソシアネート成分(g)+鎖長延長剤成分(g))/ポリウレタンアイオノマー総量(g)(ただし、分母のポリウレタンアイオノマー総量には、中和金属の質量を含まない。)で表すことができる。
前記ポリウレタンアイオノマー中のハードセグメント含有率は24質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは26質量%以上であり、35質量%以下、より好ましくは31質量%以下、さらに好ましくは27質量%以下である。ポリウレタンアイオノマー中のハードセグメント含有率が35質量%を超えると、カバーが固くなり過ぎてスピン量が減少し、耐擦過傷性が低下するおそれがあり、24質量%未満では、カバーが柔らかくなり過ぎて耐擦過傷性が低下するおそれがある。
ポリウレタンアイオノマー中のハードセグメント含有率を上記範囲内とすることにより、カバーの耐擦過傷性およびスピン性能が向上する理由は必ずしも明らかでないが、ポリウレタンアイオノマー中のハードセグメント含有率が上記範囲内であれば、ハードドメイン(ポリイソシアネート成分および鎖長延長剤成分)同士が連結されず、ハードドメイン間にソフトマトリックス(ポリオール成分)が介在するため、カバーが適度に柔らかくなり、打撃時にクラブと接触する面積が拡大し、摩擦力が高くなることでスピン性能が向上し、また、ハードドメインによるカバーの強度向上とソフトマトリックスによるカバーの伸びが、バランスよく両立されることにより、耐擦過傷性が向上すると考えられる。
前記ポリウレタンアイオノマーを構成するポリオール成分に含有される常温液体のポリオールは、ヒドロキシル基を複数有する高分子ポリオールであって、常温液体のものであれば特に限定されず、例えば、常温液体のポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール;およびアクリルポリオールなどが挙げられ、上述したポリオールの少なくとも2種以上の混合物であってもよい。ここで、常温液体とは、1気圧、23℃において、液体であることを示す。
これらの中でも、常温液体のポリオール成分としてポリカーボネートポリオールが好適に用いられる。ここで、「ポリカーボネートポリオール」とは、当業者には周知であるが、低分子量のジオール成分などがカーボネート結合で結合されている末端ヒドロキシル基を複数有する化合物である。また、ポリカーボネートポリオールの中でも、繰返し構成単位として、下記式(1)で表される繰返し単位(A)と、(A)とは異なる構造を有する下記式(2)で表される繰返し単位(B)とを有するものが好ましい。
(式中、R
1は、炭素数が4〜6個のジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基を表す)
(式中、R
2は、炭素数が4〜6個のジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基を表す)
前記繰返し単位(A)と繰返し単位(B)との好ましい含有量比は、(A)/(B)のモル比率が30/70〜70/30であり、より好ましくは(A)/(B)のモル比率が40/60〜60/40であり、さらに好ましくは(A)/(B)のモル比率が50/50である。前記(A)/(B)の一方のモル比率が高くなりすぎると、ポリカーボネートポリオールの結晶性が高くなりすぎて、得られるウレタンカバーの耐擦過傷性が低下するからである。
前記繰返し単位(A)のR1と繰返し単位(B)のR2は、それぞれ炭素数が4〜6個のジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基であって、異なるものであれば良い。R1とR2の構造として異なる構造を採用することによって、ポリカーボネートポリオールの結晶性が抑制される。
前記炭素数が4〜6個のジオールとしては、例えば、炭素数が4個のジオールとして、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールを挙げることができ、炭素数が5個のジオールとして、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,1−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオールなどを挙げることができ、炭素数が6個のジオールとして、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロへサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、エチルブタンジオール、トリメチルプロパンジオール、メチルエチルプロパンジオールなどを挙げることができる。これらの中でも好ましいのは、R1が、1,5−ブタンジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基であり、R2が1,6−ヘキサンジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基であるポリカーボネートポリオールである。
本発明で使用する常温液体のポリオールは、数平均分子量が、1,000以上、より好ましくは1,500以上、さらに好ましくは2,000以上であって、4,000以下、より好ましくは3,500以下、さらに好ましくは3,000以下であることが望ましい。なお、ポリオール成分の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSK−GEL SUPERH2500(東ソー株式会社製)2本を用いて測定すればよい。また、本発明で使用する常温液体のポリオールは、1気圧における融点が15℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは−5℃以下であるものが望ましい。
前記の常温液体のポリオール、特に数平均分子量が1000以上の常温液体の高分子ポリオールは、一般的に結晶性が低い非晶性ポリオールであり、ポリウレタンアイオノマーの構成成分として用いた場合に結晶化しにくいものである。そのため、ポリウレタンアイオノマーの構成成分として、このような非晶性ポリオールを用いることにより、イソシアネート成分と鎖長延長剤成分とからなるハードセグメントと、非晶性ポリオールからなるソフトセグメントとの相分離が一層明確になり、ポリウレタンアイオノマーの機械的特性を向上させることができ、耐擦過傷性に優れるカバーが得られる。
前記ポリウレタンアイオノマーを構成するポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートなどのうちの1種、または、2種以上の混合物などである。
耐擦過傷性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。芳香族ポリイソシアネートを使用することにより、得られるポリウレタンの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られる。また、耐候性を向上するという観点からは、ポリウレタンのポリイソシアネート成分として、非黄変性のポリイソシアネート(TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI、H12MDIなど)を使用することが好ましく、さらに好ましくは4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を使用する。4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)は剛直な構造を有しており、得られるポリウレタンアイオノマーの機械的特性が向上し、耐擦過傷性に優れるカバーが得られるからである。
本発明で使用するポリウレタンアイオノマーは、さらに必要に応じて、ポリウレタンアイオノマーを構成する鎖長延長剤成分として、低分子量のポリオールやポリアミンを含有することもできる。鎖長延長剤成分として使用できる低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。また、鎖長延長剤成分として使用できる低分子量のポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族系ポリアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式系ポリアミン、および、芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
前記芳香族ポリアミンは、少なくとも2以上のアミノ基が芳香環に直接または間接的に結合しているものであれば、特に限定されない。ここで、間接的に結合しているとは、アミノ基が、例えば低級アルキレン基を介して芳香環に結合していることをいう。前記芳香族ポリアミンとしては、例えば、1つの芳香環に2以上のアミノ基が結合している単環式芳香族ポリアミンでもよいし、少なくとも1つのアミノ基が1つの芳香環に結合しているアミノフェニル基を2個以上含む多環式芳香族ポリアミンでもよい。
前記単環式芳香族ポリアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどのアミノ基が芳香環に直接結合しているタイプ;キシリレンジアミンのようなアミノ基が低級アルキレン基を介して芳香環に結合しているタイプなどが挙げられる。また、前記多環式芳香族ポリアミンとしては、少なくとも2つのアミノフェニル基が直接結合しているポリ(アミノベンゼン)でもよいし、少なくとも2つのアミノフェニル基が低級アルキレン基やアルキレンオキシド基を介在して結合していてもよい。これらのうち、低級アルキレン基を介して2つのアミノフェニル基が結合しているジアミノジフェニルアルカンが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよびその誘導体が特に好ましい。
これらの鎖長延長剤成分として使用される低分子量のポリオールやポリアミンなどの分子量は、800以下が好ましく、より好ましくは600以下、さらに好ましくは400以下が望ましい。
前記ポリウレタンアイオノマー中に酸性基を導入する方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、前記ポリオール成分の一部として酸性基を有するポリオールを使用する態様、または前記鎖長延長剤成分の一部または全部として酸性基を有する鎖長延長剤を使用する態様、前記ポリオール成分の一部および前記鎖長延長剤成分の一部または全部に酸性基を有するポリオールおよび鎖長延長剤を使用する態様が挙げられる。なお、前記ポリウレタンアイオノマー中に導入される酸性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、無水酸基などを挙げることができ、これらの中から少なくとも1種を導入すればよい。
ここで、カルボキシル基は下記式(3)、スルホン酸基は下記式(4)、ホスホン酸基は下記式(5)、無水酸基は下記式(6)で表される基を意味する。
前記酸性基を有するポリオールとしては、例えば、酸性基を有するポリエステルポリオール;酸性基を有するポリエーテルポリオール;酸性基を有するポリカーボネートポリオール;および酸性基を有するポリアクリルポリオールなどが挙げられ、これらのポリオールは公知の方法で合成することができる。例えば、ポリエステルポリオールであれば、低分子量のポリオールと多塩基酸とを重縮合させて得ることができるが、低分子量のポリオールの少なくとも一部にジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸などの酸性基含有成分を用いるか、多塩基酸の少なくとも一部に無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの酸性基含有成分を用いるか、低分子量のポリオールおよび多塩基酸に酸性基含有成分を用いることによって、酸性基を有するポリエステルポリオールを合成することができる。
前記酸性基を有する鎖長延長剤成分としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸などのカルボキシル基を含有する成分;1,3−ジ(ヒドロキシメチル)−5−スルホ−ジイソフタレート、1,3−ジ(2−ヒドロキシエチル)−5−スルホ−ジイソフタレート、1,3−ジ(3−ヒドロキシプロピル)−5−スルホ−ジイソフタレート、1,3−ジ(4−ヒドロキシ−n−ブチル)−5−スルホ−ジイソフタレート、1,3−ジ(5−ヒドロキシ−n−ペンチル)5−スルホ−ジイソフタレート、1,3−ジ(6−ヒドロキシ−n−ヘキシル)−5−スルホ−ジイソフタレートなどのスルホン酸基を含有する成分などが挙げられる。これらの中でも、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボキシル基を含有する成分が好ましい。
本発明に用いられるポリウレタンアイオノマーは、ポリイソシアネート成分、前記常温液体のポリオールを含有するポリオール成分、および酸性基を有する鎖長延長剤成分から構成される態様が好ましい。特に、ポリイソシアネート成分として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリオール成分としてポリカーボネートポリオール、酸性基を有する鎖長延長剤成分としてジメチロールブタン酸を用いたポリウレタンアイオノマーが好適である。なお、鎖長延長剤成分として、さらに1,3−プロパンジオールなどの低分子ポリオールを含有させたものも好ましい態様である。
前記ポリウレタンアイオノマーの酸含量は、0.1×10‐4モル/g以上が好ましく、より好ましくは0.2×10‐4モル/g超、さらに好ましくは0.4×10‐4モル/g超であり、5.0×10‐4モル/g以下が好ましく、より好ましくは4.7×10‐4モル/g未満、さらに好ましくは4.0×10‐4モル/g未満、特に好ましくは3.5×10‐4モル/g未満、最も好ましくは2.3×10‐4モル/g未満である。酸性基を含有する成分の含有率が高くなりすぎると、耐久性が悪くなり、低くなり過ぎると、耐擦過傷性の改善効果が小さくなるからである。
ここで、本発明において「酸含量」とは、「ポリウレタンアイオノマー単位質量当たりに含有される酸性基の個数」であり、下記式で求めることができる。
なお、ポリウレタンアイオノマーが、複数種類の酸性基を含有する場合には、含有する酸性基の種類毎に上記式で種類別酸含量を求め、それら種類別酸含量の総和をポリウレタンアイオノマーの酸含量とすればよい。
また、本発明で使用するポリウレタンアイオノマーは、金属によって中和されていることが好ましい。前記金属としては、酸性基を中和できるものであれば特に限定されないが、例えば、原子半径が0.085nm〜0.154nmである金属が好ましい。原子半径が0.085nm〜0.154nmである金属は、酸性基を中和する際の発熱量が少なく、ポリウレタンアイオノマーの合成が容易になるからである。また、前記原子半径を、0.089nm〜0.136nmとすることもより好ましい態様である。原子半径が0.089nm〜0.136nmの金属を用いることによって、得られるゴルフボールの成形性が容易になる。原子半径が0.085nm〜0.154nmである金属としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)などを挙げることができる。また、ポリウレタンの酸性基を中和する際には、上記金属の酢酸塩、炭酸塩などを使用することが好ましく、例えば、酢酸マグネシウムが好適に用いられる。
本発明で使用するポリウレタンアイオノマーは、その中和度が、30モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。中和度を30モル%以上とすることによって、ポリウレタンアイオノマーのイオン結合による架橋密度が高まり、機械的物性に優れるポリウレタンアイオノマーが得られる。その結果、反発性、耐久性に優れるポリウレタンアイオノマーカバーが得られる。前記中和度の上限は、特に限定されるものではなく、100モル%とすることもできる。なお、2価の金属を用いてカルボキシル基を中和する場合には、1個の2価金属で2個のカルボキシル基が中和されることになる。
本発明で使用するポリウレタンアイオノマーは、そのイオン化度が、0.03×10‐4モル/g以上が好ましく、より好ましくは0.1×10‐4モル/g超、さらに好ましくは0.2×10‐4モル/g超であり、5.0×10‐4モル/g以下が好ましく、より好ましくは4.7×10‐4モル/g未満、さらに好ましくは4.0×10‐4モル/g未満、特に好ましくは3.5×10‐4モル/g未満、最も好ましくは2.3×10‐4モル/g未満である。イオン化度を上記範囲内とすることによって、耐擦過傷性とスピン量とをバランスよく設計することができる。
ここで、本発明において、「中和度」とは「ポリウレタンアイオノマーが含有する酸性基のうち、どれだけの酸性基が中和されているかという比率(百分率)」、また、「イオン化度」とは「ポリウレタンアイオノマー単位質量当たりに含有されるイオン化された酸性基の個数」であり、それぞれ次式で求めることができる。
本発明で使用するポリウレタンアイオノマーの製造方法としては、例えば、ポリイソシアネートと常温液体のポリオールとを反応させてプレポリマーを作製し、得られたプレポリマーと酸性基を含有する鎖長延長剤とをさらに反応させて酸性基を含有するポリウレタンを得、得られたポリウレタンの酸性基を金属塩で中和するプレポリマー方法、あるいは、ポリイソシアネートとポリオールと酸性基を含有する鎖長延長剤とを反応させて酸性基を含有するポリウレタンを得、得られたポリウレタンの酸性基を金属塩で中和するワンショット方法などが挙げられる。また本発明では、酸性基を含有する高分子量のポリウレタンを一旦得てから、得られたポリウレタンの酸性基を金属塩で中和することが好ましい態様である。また、ポリウレタンアイオノマーの合成および中和には、触媒および溶剤などを適宜必要に応じて使用することができる。
なお、前記ポリウレタンは、いわゆる熱可塑性ポリウレタンや熱硬化性ポリウレタンのいずれの態様であってもよい。熱可塑性ポリウレタンとは、加熱により可塑性を示すポリウレタンであり、一般に、ある程度高分子量化された直鎖構造を有するポリウレタンを意味する。一方、熱硬化性ポリウレタン(二液硬化型ポリウレタン)は、低分子量のウレタンプレポリマーを一旦取り置き、カバーを成形する直前に、該プレポリマーと鎖長延長剤(硬化剤)とを反応させて高分子量化することにより得られるポリウレタンである。熱硬化性ポリウレタンには、使用するプレポリマーや鎖長延長剤(硬化剤)の官能基の数を制御することによって、直鎖構造のポリウレタンや3次元架橋構造を有するポリウレタンが含まれる。
本発明のゴルフボールのカバーは、常温液状のポリオールを構成成分として、ハードセグメント含有率が、24質量%〜35質量%であるポリウレタンアイオノマーを樹脂成分として含有するものであれば、特に限定されず、例えば、樹脂成分100質量部中、前記ポリウレタンアイオノマーを50質量部以上、より好ましくは60質量部以上、さらに好ましくは70質量部以上含有するものが望ましい。また、樹脂成分として、前記ポリウレタンアイオノマーのみを使用することも好ましい態様である。
前記ポリウレタンアイオノマーと併用し得る他の樹脂成分としては、従来公知のアイオノマー樹脂のほか、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFポリウレタンエラストマーズ社から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマーなどが挙げられる。
本発明のゴルフボールのカバーは、上述した樹脂成分のほか、酸化亜鉛、酸化チタン、青色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
前記白色顔料(酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する基材成分100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
本発明のゴルフボールのカバーは、上述したポリウレタンアイオノマーを樹脂成分として含有するカバー用組成物を用いて成形することにより作製される。カバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。上記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
本発明では、カバー用組成物をコア上に直接射出成形してカバーを成形することもできる。この場合、カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、上記ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、150℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
また、カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。さらに、カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、本発明のゴルフボールには、塗膜が設けられていることが好ましく、より好ましくは単層の塗膜が設けられている。塗膜を設けておくことによって、ゴルフボールの外観を向上させるとともに、ポリウレタンアイオノマーの劣化を防止することができる。前記塗膜としては、例えば、ポリウレタン系塗膜、エポキシ系塗膜などが好適である。
本発明のゴルフボールのポリウレタンアイオノマーカバーの厚みは、2.0mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましく、1.0mm以下がさらに好ましい。2.0mm以下とすることによって、コアの外径を大きくできるため、反発性能を向上させることができるからである。ポリウレタンアイオノマーカバーの厚みの下限は、特に限定されるものではないが、例えば、0.3mmである。0.3mm未満では、ウレタンカバーの成形が困難になるおそれがあるからである。
前記ポリウレタンアイオノマーカバーのスラブ硬度は、ショアD硬度で、20以上が好ましく、24以上がより好ましく、26以上がさらに好ましく、70以下が好ましく、66以下がより好ましく、60以下がさらに好ましい。カバー硬度が20未満では、ゴルフボールの反発性が低下して飛距離が低下する場合があるからである。一方、カバー硬度が70超では、得られるゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。前記カバーのスラブ硬度は、カバー用組成物を熱プレス成形により、厚み約2mmのシートに成形し、23℃で2週間保存し、このシートを測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を用いて測定することができる。
次に、本発明のゴルフボールのコアの好ましい態様について説明する。
本発明のゴルフボールのコアの構造としては、例えば、単層のコア、センターと前記センターを被覆する単層の中間層とからなるコア、センターと前記センターを被覆する複数もしくは複層の中間層とからなるコアなどを挙げることができる。また、コアの形状としては、球状であることが好ましい。コアの形状が球状でない場合には、カバーの厚みが不均一になる。その結果、部分的にカバー性能が低下する箇所が生じるからである。一方、センターの形状としては、球状が一般的であるが、球状センターの表面を分割するように突条が設けられていても良く、例えば、球状センターの表面を均等に分割するように突条が設けられていても良い。前記突条を設ける態様としては、例えば、球状センターの表面にセンターと一体的に突条を設ける態様、あるいは、球状センターの表面に突条の中間層を設ける態様などを挙げることができる。
前記突条は、例えば、球状センターを地球とみなした場合に、赤道と球状センター表面を均等に分割する任意の子午線とに沿って設けられることが好ましい。例えば、球状センター表面を8分割する場合には、赤道と、任意の子午線(経度0度)、および、斯かる経度0度の子午線を基準として、東経90度、西経90度、東経(西経)180度の子午線に沿って設けるようにすれば良い。突条を設ける場合には、突条によって仕切られる凹部を、複数の中間層、あるいは、それぞれの凹部を被覆するような単層の中間層によって充填するようにして、コアの形状を球形とするようにすることが好ましい。前記突条の断面形状は、特に限定されることなく、例えば、円弧状、あるいは、略円弧状(例えば、互いに交差あるいは直交する部分において切欠部を設けた形状)などを挙げることができる。
本発明のゴルフボールのコアまたはセンターには、従来より公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を採用することができ、例えば、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤、および、充填剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
前記架橋開始剤は、基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。前記架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。0.2質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、3質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を増加する必要があり、反発性が不足気味になる。
前記共架橋剤としては、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、または、これらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムなどを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であって、50質量部以下、より好ましくは40質量部以下であることが望ましい。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために架橋開始剤の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が50質量部を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下するおそれがある。
コア用ゴム組成物に含有される充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの比重を1.0〜1.5の範囲に調整するための比重調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、2質量部以上、より好ましくは3質量部以上であって、50質量部以下、より好ましくは35質量部以下であることが望ましい。充填剤の配合量が2質量部未満では、質量調整が難しくなり、50質量部を超えるとゴム成分の質量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合することができる。
前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類を好適に使用することができる。前記ジフェニルジスルフィド類としては、例えば、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド,ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドなどのモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドなどのテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドなどのペンタ置換体などが挙げられる。これらのジフェニルジスルフィド類はゴム加硫体の加硫状態に何らかの影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドを用いることが好ましい。ジフェニルジスルフィド類の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
前記老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成形条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130〜200℃で10〜60分間加熱するか、あるいは130〜150℃で20〜40分間加熱した後、160〜180℃で5〜15分間の2段階で加熱することが好ましい。
また、本発明のゴルフボールが、スリーピースゴルフボールやマルチピースゴルフボールの場合、中間層としては、例えば、ゴム組成物の硬化物、従来公知のアイオノマー樹脂の外、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン社から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマーなどが挙げられる。前記アイオノマー樹脂としては、特にエチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸の共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂、エチレンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、または、これらの混合物を挙げることができる。
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)など)」が挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、K、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
前記コアの直径は、30mm以上、より好ましくは32mm以上であって、41mm以下、より好ましくは40.5mm以下であることが望ましい。前記コアの直径が30mmよりも小さいと、中間層またはカバーを所望の厚さより厚くする必要があり、その結果反発性が低下する場合がある。一方、コアの直径が41mmを超える場合は、中間層またはカバーを所望の厚さより薄くする必要があり、中間層またはカバー層の機能が十分発揮されない。
前記コアは、直径30mm〜41mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、2.5mm以上、より好ましくは3.4mm以上であって、5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下であることが望ましい。前記圧縮変形量が、2.5mm未満では打球感が硬くて悪くなり、5.0mmを超えると、反発性が低下する場合がある。
前記コアとして、その中心と表面で硬度差を有するものを使用することも好ましい態様であり、JIS−C硬度による表面硬度と中心硬度との差は、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましい。前記硬度差が40より大きいと、耐久性が低下し、前記硬度差が10より小さいと、打球感が硬くて衝撃が大きくなる場合がある。前記コアの表面硬度は、JIS−C硬度で、好ましくは65以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは72以上であって、好ましくは85以下である。コアの表面硬度がJIS−C硬度で65より小さいと、柔らかくなり過ぎて反発性が低下し、飛距離が低下する。一方、コア表面硬度が85より大きいと、硬くなり過ぎて打球感が悪くなる場合がある。前記コアの中心硬度は、JIS−C硬度で、好ましくは45以上、より好ましくは50以上であって、好ましくは70以下、より好ましくは65以下である。前記コア中心硬度が45より小さいと、柔らかくなり過ぎて耐久性が低下する虞がある。前記コア中心硬度が70より大きいと、硬くなり過ぎて打球感が悪くなる場合がある。前記コアの硬度差は、コアの加熱成形条件を適宜選択することによって設けることができる。
本発明のゴルフボールは、コアと前記コアを被覆するカバーとを有するものであれば、特に限定されないが、好ましい態様としては、コアと前記コアを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボール;センターと前記センターを被覆する中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するスリーピースゴルフボール;センターと前記センターを被覆する複数もしくは複層の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するマルチピースゴルフボール;糸巻きコアと前記糸巻きコアを被覆する最外層カバーとを有する糸巻きゴルフボールが挙げられる。この中でも、本発明は、コアと前記コアを被覆するカバーとを有するツーピースゴルフボールに好適に適用できる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物を用いて、熱プレス成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(2)耐擦過傷性
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットに市販のサンドウエッジを取り付け、ヘッドスピードを36m/秒でボールの2箇所を各1回打撃し、打撃部を観察して、5段階で評価した。
評価基準
5点:傷がついていないか、ほとんど傷が目立たない。
4点:やや傷が見られるものの、ほとんど気にならない。
3点:表面がやや毛羽立っている。
2点:表面が毛羽立ったり、ディンプルが欠けたりしている。
1点:ディンプルが完全に削り取られてしまっている。
(3)スピン量
ゴルフラボラトリー社製スイングロボットM/Cに、アプローチウェッジ(SRIスポーツ社製、SRIXON I−302)を取り付け、ヘッドスピード21m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによってスピン速度(rpm)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて10回ずつ行い、その平均値をスピン速度とした。
[ポリウレタンアイオノマーの作製]
フラスコ中に、表1に示したポリオールと、ジイソシアネートとを投入し、窒素雰囲気下、60℃にて3時間撹拌することによりプレポリマーを作製した。続いて、酸性基含有成分としてジメチロールブタン酸と必要に応じてプロパンジオールとを、重量にして50倍のN,N−ジメチルアセトアミド(和光純薬社製N,N−ジメチルアセトアミド(脱水))に溶解し、これを前記プレポリマーに滴下ロートを用いて20分間で滴下した。その後、60℃にて2時間撹拌することにより鎖長延長反応を行い、カルボキシル基含有ポリウレタンを得た。酢酸マグネシウム四水和物(和光純薬社製酢酸マグネシウム四水和物)を重量にして10倍のメタノール(和光純薬社製メタノール、脱水)に溶解し、これを前記カルボキシル基含有ポリウレタンに滴下ロートを用い、1分間かけて滴下を行う。その後、1時間上記条件にて撹拌することにより、重合停止反応および中和反応を行い、ポリウレタンアイオノマーの溶液を得た。得られたポリウレタンアイオノマー溶液を真空オーブンで、90℃48時間真空乾燥してポリウレタンアイオノマーを得た。
MDI:住化バイエルウレタン社製、スミジュール(登録商標)44S
PCDLT5651:旭化成ケミカルズ社製、ポリカーボネートポリオール(1,5−ペンタンジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基と、1,6−ヘキサンジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基が、モル比50/50でランダムにカーボネート結合で結合されているヒドロキシル基末端のポリオール;数平均分子量1000;融点−5℃以下)
PCDLT5652:旭化成ケミカルズ社製、ポリカーボネートポリオール(1,5−ペンタンジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基と、1,6−ヘキサンジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基が、モル比50/50でランダムにカーボネート結合で結合されているヒドロキシル基末端のポリオール;数平均分子量2000;融点−5℃以下)
PCDLT6001:旭化成ケミカルズ社製、ポリカーボネートポリオール(1,6−ヘキサンジオールから2個の水酸基を除いた二価の残基がカーボネート結合で結合されているヒドロキシル基末端のポリオール;数平均分子量1000;融点40〜50℃)
DMBA:日本化成社製、ジメチロールブタン酸
PD:和光純薬社製、1,3−プロパンジオール
[スリーピースゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表2に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で140℃で30分間加熱プレスすることにより直径38.5mm、質量34.9gの球状のセンターを得た。
ポリブタジエンゴム:JSR社製のBR730(ハイシスポリブタジエン)
アクリル酸亜鉛:日本蒸留社製のZNDA−90S
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製の銀嶺R
ジクミルパーオキサイド:日本油脂社製のパークミルD
なお、酸化亜鉛は、得られるゴルフボールの質量が、45.4gとなるように適量加えた。
次いで、アイオノマー樹脂として、三井デュポンポリケミカル社製「ハイミラン1605」50質量部とデュポン社製「サーリン9945」50質量部とを二軸混練押出機によりミキシングしてペレット状の中間層用組成物を調製した。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行い、中間層用組成物は、押出機のダイの位置で150℃〜230℃に加熱された。得られた中間層用材料を上記センター上に直接射出成形することによりコアと中間層からなる多層コア(直径41.7mm)を作製した。
(2)カバー用組成物の調製
上記で合成したポリウレタンアイオノマーを用いて、表3に示した配合のカバー材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行った。
(3)ハーフシェルの成形
ハーフシェルの圧縮成形は、前述のようにして得たペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。圧縮成形は、成形温度180℃、成形時間5分間、および、成形圧力100kgf/cm2で行った。
(4)カバーの成形
(1)で得られた多層コアを(3)で得られた2枚のハーフシェルで被覆して、圧縮成形によりカバーを成形した。成形は、成形温度140℃、成形時間3分間、成形圧力100kgf/cm2で行った。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理をして、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.4gのゴルフボールを得た。
得られたゴルフボールについて、耐擦過傷性、スピン性能について評価した結果を併せて表3に示した。
ゴルフボールNo.1〜No.10は、コアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーは、樹脂成分として、常温液状のポリオールを構成成分とするポリウレタンアイオノマーを含有し、前記ポリウレタンアイオノマー中のハードセグメント含有率が、24質量%〜35質量%を満足する場合である。いずれの場合も、スピン性能および耐擦過傷性に優れていることが分かる。特に、ゴルフボールNo.10は、常温液状のポリオールの数平均分子量が1500以上であり、スピン量がより優れていることが分かる。なお、ゴルフボールNo.6は、イオン化度が小さいため、耐擦過傷性が若干劣っていることが分かる。