JP5000808B2 - カメラ用絞り機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルムやCCDなどの結像面に達する被写体光量を、開口面積を制限して変えられるようにしたカメラ用絞り機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近のカメラ用絞り機構は、構造や機能を単純化してコストを低減したいという観点から、露光用開口部よりも小さな絞り口径を一つだけ選択できるようにしたものが増えている。特に、デジタルカメラの場合には、そのような要求が比較的大きい。そして、そのような要求に応えることのできる絞り機構としては、2枚の絞り羽根を同時に相対的に回転させて、所定の口径が得られた位置で停止させるようにした構成のものと、予め所定の口径の開口部を形成した一つの絞り部材を設けておき、その開口部を露光用開口部内に進退させるようにした構成のものとが知られているが、本発明は、それらのうち、前者の構成の改良に関するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近のカメラは、低コスト化は勿論のこと、小型化に対する要求が大きいため、上記のように2枚の絞り羽根によって口径を規制するタイプの絞り機構に対しても、小型化の要求が極めて大きくなっている。そして、その小型化という場合には、絞り機構の占める平面面積、即ち光軸と直交する面に占める領域を如何に小さくするかが要求されている。ところが、上記の構成の絞り機構においては、2枚の絞り羽根が相対的に作動させられるようになっているため、露光用開口部を全開(最大口径)にしている場合には、少なくとも1枚の絞り羽根の約2倍の収容面積が必要になる。そのため、コストアップを覚悟の上で、各々の羽根を分割して枚数を増やした構成にでもしない限り、そのような要求に応えることが極めて困難であった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、2枚の絞り羽根によって一つの小口径の開口部を規制するように構成しているにもかかわらず、コストアップにならずに小型化することの可能なカメラ用絞り機構を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用絞り機構は、大口径の絞り開口を規制する露光用開口部を有した地板と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて各々が長穴と開口規制縁を有しており小口径制御状態においてはそれらの開口規制縁によって光軸を中心に小口径の絞り開口を形成する2枚の絞り羽根と、前記2枚の絞り羽根の両方の長穴に嵌合するピンを有していて往復作動することによって前記2枚の絞り羽根を同一方向へ互いに異なる角度で回転させて露光用開口部に進退させ大口径制御状態においては前記2枚の絞り羽根を露光用開口部の同一側方位置に重合させて収納する駆動手段と、を備えていて、前記2枚の絞り羽根の回転軸が、前記ピンの作動軌跡の同一側方の異なる位置に配置されているようにする。
【0007】
その場合、本発明のカメラ用絞り機構においては、前記駆動手段がモータであって、前記ピンが該モータの出力ピンであるようにすると、極めて好適な電動式の絞り機構が得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。この実施例は、絞り羽根をモータによって作動させる電動式の絞り機構として構成したものであって、フィルムを使用するカメラにもデジタルカメラにも用いることが可能なものである。尚、図1は大口径制御状態を示した本実施例の正面図であり、図2は図1の要部断面図であり、図3は図1の背面図である。また、図4は図1におけるモータを簡略化して示し、且つ絞り羽根の収納状態を理解し易く示した正面図であり、図5は小口径制御状態を図4と同じようにして示した正面図である。
【0009】
先ず、本実施例の構成を説明する。本実施例は、いずれも合成樹脂製の地板1とカバー板2とを相互に取り付け、両者の間に羽根室を構成している。そして、それらの取付け方は、地板1の背面側に形成された可撓性を有する二つのフック部1a,1bをカバー板2に引っ掛けるようにしている。また、両者の間隔を規制する部位は地板1に複数設けられているが、それらの部位については図示を省略してある。更に、地板1とカバー板2には、同じ大きさの円形の開口部1c,2aが形成され、それらを重ね合わせるように配置しているが、それらは、露光用開口部を規制するものであって、絞り機構にとっては最大絞り開口ということになる。尚、実際には、地板1に、カメラ本体への取付部が設けられるが、その図示は省略されている。
【0010】
そこで、次に、地板1の表面側(図2における上面側)に取り付けられているモータの構成を説明する。本実施例に採用されているモータは、特開2000−60088号公報などに記載のムービングマグネット型モータと称されている電流制御式のモータである。このモータの基枠3は合成樹脂製であって、地板1のフック部1dとビス4によって、地板1に取り付けられている。また、合成樹脂製のカバー枠5は、図2から分かるように、植木鉢を逆さまにしたような形状をしていて、フック部5aなどによって基枠3に取り付けられている。
【0011】
カバー枠5の中空部には、径方向に2極に着磁された永久磁石製の回転子6が配置されている。この回転子6には、径方向に張出部6aが形成されており、その先端には、回転子6の回転軸と平行になるようにして駆動ピン(即ち、出力ピン)6bが形成されているが、それらの回転軸と、張出部6aと、駆動ピン6bとは、いずれも合成樹脂製であって、アウトサートの成形加工によって形成されている。そして、この回転子6は、基枠3とカバー枠5に形成された二つの孔によって軸受けされており、駆動ピン6bを、地板1に形成された長孔1eから羽根室内に挿入し、その先端を、カバー板2の長孔2bに挿入させている。
【0012】
また、基枠3とカバー枠5で構成された固定子枠には、回転子6の二つの軸受け部を覆うようにしてコイル7が巻回されており、そのコイル7を包むようにして、カバー枠5の外周面に、円筒形のヨーク8を嵌合させている。そして、棒状の五つの磁性体部材9,10,11,12,13が、カバー枠5の孔に圧入され、回転子6の周面に対向させられている。
【0013】
次に、羽根室内の構成を説明する。羽根室内には、2枚の絞り羽根14,15が配置されている。このうち、絞り羽根15よりも地板1側に配置されている絞り羽根14は、軸部14aと、開口規制縁14bと、長孔14cとを有していて、軸部14aを地板1の孔に回転可能に嵌合させている。また、絞り羽根15は、絞り羽根14の開口規制縁14bと共に小口径の開口部を形成する開口規制縁15aと、長孔15bと、孔とを有していて、その孔を、地板1に設けられた軸部1fに回転可能に嵌合させている。そして、その軸部1fの先端は、カバー板2の孔にも嵌合している。また、地板1の羽根室側には、絞り羽根14の当接するストッパ1gと、絞り羽根15の当接するストッパ1hが設けられている。
【0014】
次に、本実施例の作動を説明する。周知のように、絞り機構の作動方法は、カメラの仕様によって様々である。しかし、本実施例の場合には、大口径の開口と小口径の開口のいずれかを選択できるだけであるから、如何なる場合であっても、大口径制御状態か小口径制御状態のいずれかになっていることになる。また、本実施例のように電動式の絞り機構の場合には、カメラを使用していないときには、自動的にいずれか一方の特定の口径制御状態となっているようにするのが普通であるが、一般的には、大口径の制御状態にしておく方が多い。そのため、本実施例の作動説明においては、カメラの不使用時と、電源をオンにしただけのときには、大口径の制御状態が維持されていて、実際に撮影をするときだけ、必要に応じて小口径の絞り開口が選択される場合で説明する。
【0015】
図1は、カメラの不使用時か、電源を単にオンにしただけの状態を示したものであって、絞り羽根14,15は大口径制御状態となっている。このとき、コイル7には電流が供給されていないが、それでも本実施例の絞り羽根14,15は確実にこの状態を維持できるようになっている。即ち、図1から分かるように、回転子6のN極と三つの磁性体部材10,11,12との間には、夫々吸引力が働いているが、着磁方向の中心線を境にして、一方の領域には磁性体部材10が存在しているだけであり、しかも、上記の中心線までの距離は磁性体部材11の場合より離れているため、回転子6には時計方向への回転力が作用している。
【0016】
他方、回転子6のS極に対向している二つの磁性体部材9,13は、磁性体部材13の方が、磁性体部材9の場合よりも上記の中心線までの距離が離れているので、やはり、回転子6には時計方向への回転力が作用していることになる。従って、非通電状態であっても、回転子6には時計方向の回転力が付与されているが、絞り羽根14がストッパ1gに接触しているために回転することができず、この大口径制御状態が維持されている。
【0017】
そこで、撮影に際して絞り制御回路を機能させると、被写体光が比較的暗い場合には、コイル7に通電されず、絞り羽根14,15は、図4に示された大口径制御状態を維持したままで撮影が行なわれる。そして、撮影後もその状態は変わらない。しかし、被写体光が比較的明るい場合には、コイル7に対して電流が順方向に供給され、回転子6が、図4において反時計方向へ回転させられる。そのため、絞り羽根14,15が駆動ピン6bによって回転させられるが、絞り羽根14,15の回転軸は、両方とも駆動ピン6bの作動軌跡の同じ側方領域に配置されているため、それらの回転方向は、いずれも時計方向となる。
【0018】
しかしながら、この駆動ピン6bの作動中には、絞り羽根14の回転軸から駆動ピン6bまでの距離が、常に、絞り羽根15の回転軸から駆動ピン6bまでの距離よりも短いため、絞り羽根14の角度変化の方が絞り羽根15よりも大きく、全体として早く回転させられることになる。そのため、図4の状態に重合されていた絞り羽根14,15は、開口規制縁14b,15aによって開口部を形成し始め、その大きさを徐々に大きくしていく。そして、その開口部が円形になったとき、絞り羽根15がストッパ1hに当接して、回転子6と絞り羽根14,15の回転が停止させられ、図5の状態となるが、この状態が小口径の制御状態である。
【0019】
この状態になった後も、撮影が終了するまでの間は、コイル7に対して順方向の電流を供給し続けていても構わない。しかしながら、本実施例の場合には、通電を断ってもこの状態が維持されるようになっている。即ち、この状態においては、図1の状態とは異なり、回転子6のN極と対向しているのは磁性体部材10,11だけであり、磁性体部材12は磁性体部材9,13と共にS極に対向していることになる。そのため、図1の状態とは対称的な配置関係になっていて、詳述するまでもなく、回転子6には反時計方向へ回転する力が付与されているからである。
【0020】
このような小口径制御状態での撮影終了時には、この図5の状態において、コイル7に対して逆方向への電流を供給する。そのため、回転子6は上記とは逆に時計方向へ回転し、絞り羽根14,15は反時計方向へ回転させられる。そして、それらの絞り羽根14,15は、図4に示すように、絞り羽根14がストッパ1gに当接して停止させられるまで回転され、その停止後は、コイル7に対する通電が断たれることによって、一連の作動が終了する。
【0021】
以上のように、本実施例の場合は、大口径制御状態のとき、2枚の絞り羽根14,15が、露光用開口部の同じ側方領域に重合されて収容されるため、収容面積が従来の約1/2で済むようになる。そのため、従来の通常の絞り機構の場合には、図1,図3〜図5に二点鎖線で示したような円形の地板を設けるのが普通であったが、本実施例の地板1は平面面積が格段に小さなものとなっている。また、本実施例の場合には、このように小型化されているにもかかわらず、構成部材の数が多くなったり、特殊な形状になって加工が難しくなったりするようなことがないから、コストアップになってしまうようなことがない。
【0022】
尚、実施例の絞り機構は、駆動手段としてムービングマグネット型モータを採用しているが、本発明は、そのようなものに限定されず、ステップモータのような他のモータを採用してもよいし、電動式ではなく手動式であっても構わない。また、電動式にした場合であっても、実施例のように、回転子と一体の出力ピンによって、2枚の絞り羽根を直接作動させずに、回転子によって作動させられる仲介部材(開閉部材)を介して2枚の絞り羽根を作動させるようにしても差し支えない。
【0023】
また、2枚のシャッタ羽根には、長孔の代わりにピンを設け、駆動手段又は上記の仲介部材には、それらのピンに別々に嵌合する二つの長孔を設けるようにしても差し支えない。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、2枚の絞り羽根によって小口径の絞り開口を規制するカメラ用絞り機構において、従来よりも特別にコストアップとはならずに、光軸に対して直交する面の平面面積を著しく小さくできるという特徴を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】大口径制御状態を示した実施例の正面図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】図1の背面図である。
【図4】図1におけるモータを簡略化して示し、且つ絞り羽根の収納状態を理解し易く示した正面図である。
【図5】小口径制御状態を図4と同じようにして示した正面図である。
【符号の説明】
1 地板
1a,1b,1d,5a フック部
1c,2a 開口部
1e,2b,14c,15b 長孔
1f,14a 軸部
1g,1h ストッパ
2 カバー板
3 基枠
4 ビス
5 カバー枠
6 回転子
6a 張出部
6b 駆動ピン
7 コイル
8 ヨーク
9,10,11,12,13 磁性体部材
14,15 絞り羽根
14b,15a 開口規制縁

Claims (2)

  1. 大口径の絞り開口を規制する露光用開口部を有した地板と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて各々が長穴と開口規制縁を有しており小口径制御状態においてはそれらの開口規制縁によって光軸を中心に小口径の絞り開口を形成する2枚の絞り羽根と、前記2枚の絞り羽根の両方の長穴に嵌合するピンを有していて往復作動することによって前記2枚の絞り羽根を同一方向へ互いに異なる角度で回転させて露光用開口部に進退させ大口径制御状態においては前記2枚の絞り羽根を露光用開口部の同一側方位置に重合させて収納する駆動手段と、を備えていて、前記2枚の絞り羽根の回転軸が、前記ピンの作動軌跡の同一側方の異なる位置に配置されていることを特徴とするカメラ用絞り機構。
  2. 前記駆動手段がモータであって、前記ピンが該モータの出力ピンであることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用絞り機構。
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