JP4998922B2 - 綴じ具の取付構造及びファイル - Google Patents

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本発明は、ファイル用綴じ具を表紙体に取り付ける構造に関する。
紙葉類を綴じ止めるためのファイルは種々存在するが、その多くは、合成樹脂製または紙製の表紙体に、金属製または合成樹脂製の綴じ具を取り付けているものである。多数枚の紙葉類を綴じてもその重量に耐え得るよう、通常はリベットを使用して綴じ具を表紙体に固定する。
製造物をリサイクルまたは廃棄処理する際には、部材を素材毎に分別することが求められる。ファイルであれば、綴じ具を表紙体から取り外してそれらを別々に回収できることが望ましい。下記特許文献には、綴じ具を簡便に取り外せるように工夫されたファイルが開示されている。具体的に説明すると、小径部と大径部とが連続した取付孔を表紙体の所定領域に穿設し、その取付孔の小径部に重なる挿通孔を綴じ具のベースに穿設した上、これら小径部及び挿通孔にリベットを挿入してかしめている。綴じ具を取り外すには、ベースを表紙体に対し相対的にスライドさせ、リベットを小径部から大径部に移動させて抜出すればよい。
特許第2701542号公報
上述の如き取付構造を採用したファイルでは、落下等の衝撃による強い外力が作用した場合に、綴じ具のベースが不意に移動してリベットが大径部を介して抜出し、綴じ具が脱落してしまうおそれがある。故に、上記特許文献の例では、ベースから表紙体に向けて突出ないし膨出するストッパ片を成形し、これを表紙体に係止せしめることでベースの不意の移動を阻止し、綴じ具の脱落を予防している。
しかしながら、突出ないし膨出したストッパ片をベースに成形するためには複数回のプレスを行わなければならないので、工数が増すとともに金型やプレス器等の設備への投資が不可避となり、製造コストの騰貴を招くきらいがあった。
以上の問題に鑑みてなされた本発明は、綴じ具を表紙体から簡便に取り外すことのできるファイルを比較的低コストで実現することを所期の目的とする。
本発明では、綴じ具のベースを表紙体の所定領域に接合した状態に取り付けるべく、表紙体とベースとのうち一方に穿たれ小径部と大径部とが連続した第一の取付孔、及び小径部と大径部とが連続しかつ小径部から見て大径部の存在する方向が第一の取付孔とは相反している第二の取付孔と、表紙体とベースとのうち他方に穿たれ第一の取付孔の小径部及び第二の取付孔の小径部にそれぞれ重なる複数の挿通孔と、重なり合う小径部及び挿通孔にそれぞれ挿入される複数のリベット等の止着具と、表紙体とベースとのうち他方に設けられ、第一の取付孔または第二の取付孔の少なくとも何れかの大径部に重なりこれを閉鎖して止着具が小径部から大径部に移動することを阻む舌片とを具備してなり、舌片を変形させまたは破壊して大径部を開放し止着具を大径部を介して抜出することにより綴じ具を表紙体から取り外すことができる取付構造を採用した。
第一の取付孔の向きと第二の取付孔の向きとが不一致であるため、正方向の外力に対しても逆方向の外力に対しても何れかの側の小径部が止着具及びベースを係止し、止着具の小径部から大径部への移動を阻止できる。従って、ベースにストッパ片を敢えて成形する必要性から解放されるので、工数の削減及び設備投資の軽減を図り得る。
前記第一の取付孔の小径部、大径部、前記第二の取付孔の小径部及び大径部が略一直線上に並んでいれば、外力に対してより堅固になり、綴じ具が脱落するおそれがさらに低減する。また、前記第一の取付孔、前記第二の取付孔、前記挿通孔、前記止着具及び前記舌片の組が複数設けられることも有効である。
前記舌片における、前記大径部に重なる箇所に棒状物を挿入可能な透孔が穿たれていれば、その透孔が大径部に連通している状態となり、綴じ具を取り外すにあたって棒状物を深く差し込んで舌片を塑性変形させる、即ち曲げることが容易で、綴じ具の取り外し作業の簡便化に資する。
前記舌片の周縁が略部分円弧状に切り抜かれ、その中心付近に前記透孔が穿たれていれば、舌片の強度が担保される。
前記舌片が前記大径部側で前記ベースに連なり、前記小径部側に向かって延出しその先端が前記挿通孔の開口縁に臨むものであれば、舌片と止着具との係合を解除して舌片を塑性変形させる操作を行い易い。
本発明によれば、綴じ具を表紙体から簡便に取り外すことのできるファイルを比較的低コストで実現可能である。
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の取付構造を適用したファイルを、図1に示す。このファイルは、表紙体1の内面に複数枚の紙葉類を綴じ込むための綴じ具2を取り付けてなる。
表紙体1は、例えば、裏表紙11と、裏表紙11の側縁に連なる背表紙12と、背表紙12の側縁に連なる表表紙13とを備えた樹脂成形品である。
綴じ具2は、例えば、薄板状のベース21と、ベース21の両側縁に回動可能に枢着した一対の押さえ板22、23と、一方の押さえ板22から突出したパイプ状をなす複数本の綴じ桿221と、他方の押さえ板23から突出し各綴じ桿221に挿脱可能な同数本のスライドロッド231とを備えた金属主体の部材である。押さえ板22、23は、ベース21に対して任意に着脱することができる。押さえ板22、23をベース21に枢着する機構は既知のものと同様であり、ここでは説明を省く。
綴じ具2の取付構造に関して詳述する。本実施形態では、表紙体1の背表紙12の内向面に綴じ具2を取り付けることとしており、図2等に示すように、表紙体1に第一、第二の取付孔14、15を、ベース21に各取付孔14、15に対応した挿通孔24、25をそれぞれ穿設し、それら取付孔14、15及び挿通孔24、25を貫通する止着具たるリベット31、32を以て背表紙12とベース21とを締結している。
図3等に示すように、第一、第二の取付孔14、15はそれぞれ、内径の小さい小径部141、151と、内形の大きい大径部142、152とが連続したダルマ(または、ひょうたん)型をなす。第二の取付孔15の向きは、第一の取付孔14の向きとは不一致である。即ち、小径部141、151から見た大径部142、152の存在する方向が、第一の取付孔14と第二の取付孔15とで相反している。第一の取付孔14の小径部141、大径部142、第二の取付孔15の小径部151及び大径部152は、ファイルの表紙高さ方向に沿って略一直線上に並んでおり、第一の取付孔14と第二の取付孔15とは所定距離を隔てて正反対を向いて対向する。
図4等に示すように、挿通孔24、25は、取付孔14、15の小径部141、151に略等しい内径を有し、ベース21において小径部141、151に重なる箇所に位置する。
加えて、ベース21には舌片26、27を設けている。舌片26、27は、取付孔14、15及び挿通孔24、25と同数存在し、それぞれが取付孔14、15の大径部142、152に重なりこれを閉鎖する。舌片26、27は、基端が大径部142、152側にあってベース21に連なり、小径部141、151側に向かって延出しており、その先端が挿通孔24、25の開口縁に臨む。舌片26、27の先端縁は、リベット31、32の外周形状に略合致した凹円弧をなす。舌片26、27の周縁は略部分円弧状、換言すれば馬蹄状に切り抜き、その中心付近、大径部142、152に重なる箇所に透孔261、271を穿っておく。透孔261、271は、小径部141、151や挿通孔24、25よりも小径である。
挿通孔24、25及び舌片26、27は、板金材を素材とするベース21を金型で打ち抜くことで形成できる。
リベット31、32は、頭部と軸部とを備え、軸部の少なくとも先端部位がパイプ状をなしている周知のものである。
本実施形態では、上記の第一、第二の取付孔14、15、挿通孔24、25及び舌片26、27を背幅方向に離間させて複数組設けており、その各々にリベット31、32を止着する。より具体的には、図6等に示すように、ベース21を背表紙12の内向面に載置し、各取付孔14、15をそれぞれ対応する小径部141、151に重ね合わせ、背表紙12方(または、ベース21方)からリベット31、32の軸部を小径部141、151及び取付孔24、25に挿入した後、リベット31、32の先端部位をかしめて圧潰、拡開させる。リベット31、32の頭部(または、拡開した軸部の先端部位)は小径部の周縁に係合し、拡開した軸部の先端部位(頭部)は挿通孔24、25の周縁及び舌片26、27の先端縁に係合して、表紙体1及びベース21を両側から挟圧する。これにより、綴じ具2が表紙体1に固着する。
リベット31、32の軸部が小径部141、151内に存在している限り、リベット31、32を背表紙12方に抜出することも、ベース21方に抜出することもできない。リベット31、32を抜出し、綴じ具2を表紙体1から取り外すには、リベット31、32の軸部を小径部141、151から大径部142、152に移動させる必要がある。そのために、大径部142、152を閉鎖している舌片26、27を塑性変形させまたは破壊して、大径部142、152を開放する。例えば、図5ないし図7に示すように、舌片26、27の透孔261、271に棒状体、即ち押さえ板23のスライドロッド231やその他の工具類を挿入して舌片26、27を持ち上げるように操作し、先端をリベット31、32から脱離させて基端に向けて曲げる。あるいは、所要の工具類を使用して舌片26、27を破壊し、ベース21から取り除く。しかる後、リベット31、32を小径部141、151から大径部142、152に移動させ、大径部142、152から抜出する。全てのリベット31、32を抜出すれば、綴じ具2を取り外すことができる。
本実施形態によれば、綴じ具2のベース21を表紙体1の所定領域即ち背表紙12に接合した状態に取り付けるべく、表紙体1に穿たれ小径部141と大径部142とが連続した第一の取付孔14、及び小径部151と大径部152とが連続しかつ小径部141、151から見て大径部142、152の存在する方向が第一の取付孔14とは相反している第二の取付孔15と、ベース21に穿たれ第一の取付孔14の小径部141及び第二の取付孔15の小径部151にそれぞれ重なる複数の挿通孔24、25と、重なり合う小径部141、151及び挿通孔24、25にそれぞれ挿入される複数の止着具即ちリベット31、32と、ベース21に設けられ第一の取付孔14や第二の取付孔15の大径部142、152に重なりこれを閉鎖してリベット31、32が小径部141、151から大径部142、152に移動することを阻む舌片26、27とを具備してなり、舌片26、27を変形させまたは破壊して大径部142、152を開放しリベット31、32を大径部142、152を介して抜出することにより綴じ具2を表紙体1から取り外すことができる取付構造を構成しており、表紙高さ方向に沿って下向きの外力が綴じ具2に作用したときには第二の取付孔15の小径部151とリベット32との係合によりこれを受け止め、上向きの外力が作用したときには第一の取付孔14の小径部141とリベット31との係合によりこれを受け止める。従って、ベース21から突出ないし膨出したストッパ片を成形することなく、リベット31、32の大径部142、152への移動を確実に阻止できる。ベース21にストッパ片を成形する必要性から解放されるので、工数の削減及び設備投資の軽減を図り得る。
前記第一の取付孔14の小径部141、大径部142、前記第二の取付孔15の小径部151及び大径部152が略一直線上に並んでいるため、外力に対してより堅固になり、綴じ具2が脱落するおそれがさらに低減する。また、前記第一の取付孔14、前記第二の取付孔15、前記挿通孔24、25、前記リベット31、32及び前記舌片26、27の組が複数設けられていることも有効である。
前記舌片26、27における、前記大径部142、152に重なる箇所に棒状物を挿入可能な透孔261、271が穿たれているため、その透孔261、271が大径部142、152に連通している状態となり、綴じ具2を取り外すにあたって棒状物を深く差し込んで舌片26、27を曲げることが容易で、綴じ具2の取り外し作業の簡便化に資する。
前記舌片26、27の周縁が略部分円弧状に切り抜かれ、その中心付近に前記透孔261、271が穿たれており、舌片26、27の強度が担保されている。
前記舌片26、27が前記大径部142、152側で前記ベース21に連なり、前記小径部141、151側に向かって延出しその先端が前記挿通孔24、25の開口縁に臨むものであることから、舌片26、27とリベット31、32との係合を解除して舌片を塑性変形させる操作を行い易い。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、第一の取付孔14、第二の取付孔15の双方に対応して舌片26、27を設けていたが、図8に示すように、何れか一方(図示例では、第一の取付孔14)に対応する舌片26のみを設けることとしてもよい。その場合、綴じ具2を表紙体1から取り外すには、舌片26を変形させまたは破壊して大径部142を開放し、その大径部142に止着具31を移動させてこれを抜出する。しかる後、残った止着具32を大径部152に移動させるべくベース21を表紙体1に対して相対的にスライドさせ、ベース21もろとも止着具32を大径部152から抜出する。
また、上記実施形態では、第一の取付孔の小径部、大径部、第二の取付孔の小径部及び大径部が略一直線上に並んでいたが、必ずしもこれらが略一直線上に並んでいる必要はない。よって、例えば、第一の取付孔の小径部、大径部、第二の取付孔の小径部及び大径部を略同一円周上に並ぶように配置しても構わない。
さらに、上記実施形態では、取付孔を表紙体に設け、挿通孔及び舌片を綴じ具のベースに設けていたが、これとは逆に、取付孔をベースに設け、挿通孔及び舌片を表紙体に設ける態様もとり得る。その場合、例えば、表紙体の一部に金属板部を設定し、そこに挿通孔や舌片を成形することが考えられる。
綴じ具のベースを背表紙以外の領域、例えば表表紙や裏表紙に接合してもよいことは言うまでもない。
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本実施形態の綴じ具の取付構造を採用したファイルを示す斜視図。 同ファイルの分解斜視図。 表紙体及び第一、第二の取付孔を示す要部平面図。 ベース及び挿通孔、舌片を示す要部平面図。 綴じ具の取り外しの過程を示す要部斜視図。 綴じ具の取り外しの過程を示す要部側断面図。 綴じ具の取り外しの過程を示す要部側断面図。 本発明の変形例の一を示す要部平面図。
符号の説明
1…表紙体
14…第一の取付孔
15…第二の取付孔
2…綴じ具
21…ベース
24、25…挿通孔
26、27…舌片
31、32…止着具

Claims (7)

  1. 綴じ具のベースを表紙体の所定領域に接合した状態に取り付ける構造であって、
    表紙体とベースとのうち一方に穿たれ小径部と大径部とが連続した第一の取付孔、及び小径部と大径部とが連続しかつ小径部から見て大径部の存在する方向が第一の取付孔とは相反している第二の取付孔と、
    表紙体とベースとのうち他方に穿たれ第一の取付孔の小径部及び第二の取付孔の小径部にそれぞれ重なる複数の挿通孔と、
    重なり合う小径部及び挿通孔にそれぞれ挿入される複数の止着具と、
    表紙体とベースとのうち他方に設けられ、第一の取付孔または第二の取付孔の少なくとも何れかの大径部に重なりこれを閉鎖して止着具が小径部から大径部に移動することを阻む舌片と
    を具備してなり、舌片を変形させまたは破壊して大径部を開放し止着具を大径部を介して抜出することにより綴じ具を表紙体から取り外すことができる綴じ具の取付構造。
  2. 前記第一の取付孔の小径部、大径部、前記第二の取付孔の小径部及び大径部が略一直線上に並んでいる請求項1記載の綴じ具の取付構造。
  3. 前記第一の取付孔、前記第二の取付孔、前記挿通孔、前記止着具及び前記舌片の組が複数存在している請求項1または2記載の綴じ具の取付構造。
  4. 前記舌片における、前記大径部に重なる箇所に棒状物を挿入可能な透孔が穿たれている請求項1、2または3記載の綴じ具の取付構造。
  5. 前記舌片の周縁は略部分円弧状に切り抜かれ、その中心付近に前記透孔が穿たれている請求項4記載の綴じ具の取付構造。
  6. 前記舌片は前記大径部側で前記ベースに連なり、前記小径部側に向かって延出しておりその先端が前記挿通孔の開口縁に臨む請求項1、2、3、4または5記載の綴じ具の取付構造。
  7. 請求項1、2、3、4、5または6記載の取付構造を用いて、表紙体に綴じ具を取り付けたファイル。
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