JP4998691B2 - 金属帯被覆脱硫用ワイヤー及び溶鉄の脱硫処理方法 - Google Patents

金属帯被覆脱硫用ワイヤー及び溶鉄の脱硫処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶銑や溶鋼などの溶鉄の脱硫処理に使用する金属帯被覆脱硫用ワイヤー及び該金属帯被覆脱硫用ワイヤーを用いた溶鉄の脱硫処理方法に関するものである。
近年、鋼の高付加価値化及び鉄鋼材料の使用用途拡大化に伴う材料特性の向上のために、鋼の高純度化に対する要求が従来にも増して強くなり、これに伴って鋼中の不純物を除去する技術開発が盛んに行われている。鋼の低硫化も、この要求に応えるための重要な1つの条件である。通常、低硫鋼は、転炉での脱炭精錬工程の前に溶銑段階で脱硫処理を施すことによって製造されているが、高級電磁鋼板や高級ラインパイプ用鋼板などの硫黄(S)濃度が0.0010質量%以下である所謂極低硫鋼は、溶銑段階での脱硫処理のみでは不十分であり、転炉から出鋼後の溶鋼段階でも更に脱硫処理を施すことによって製造されている。尚、本発明では溶銑及び溶鋼をまとめて溶鉄と称している。
溶銑及び溶鋼の脱硫剤としては、石灰(以下、「CaO」と記す)系脱硫剤、カルシウムカーバイド系脱硫剤、ソーダ灰系脱硫剤、金属Mgなどが従来から使用されており、これらの脱硫剤を、上置き添加、インジェクション(吹き込み)添加、吹き付け(投射)添加などして脱硫処理が行われてきた。しかし、これらの脱硫剤には何れも長所と短所がある。
CaO系脱硫剤は最も安価であるが、滓化を促進する目的でフッ化カルシウム(CaF2 )などの滓化促進剤が少量添加されており、近年、フッ素の環境への影響が問題視されており、フッ素を含有しない脱硫剤が望まれている。また、フッ化カルシウムの侵食作用によって処理容器の耐火物が溶損するという問題点もある。カルシウムカーバイド系脱硫剤は、強力な脱硫能力を有しているが、脱硫処理後の脱硫スラグの後処理において、アセチレンガスが発生するなどの安全上の問題点がある。また、高価であり、危険物でもあるため、取り扱いが極めて困難である。ソーダ灰系脱硫剤は、比較的安価であるが、強アルカリ性であるため、処理炉及び処理容器の耐火物への影響が大きい。また、排ガス中にはNaが含まれるため、その除去処理が必要である。更に、スラグ中のNa2Oの含有量が高くなるため、セメントなどへの再利用に制約があり、環境への影響からも望ましくない。金属Mgは、溶鉄中のSと容易に反応してMgSを形成するが、沸点が1100℃と低いため、溶鉄中では激しく気化し、溶鉄を飛散させる危険性があり、また、発生したMg蒸気は、十分に脱硫反応に寄与せずに大気中に放散してしまうため、効率が悪い。しかも、金属Mg自体が非常に高価であるという問題点がある。
そこで、特許文献1では、従来の脱硫剤に代わるものとして、10〜90質量%の金属Mgと90〜10質量%のCaOとを含有する脱硫剤が金属質の被覆材で被覆された金属帯被覆脱硫用ワイヤーを用い、該金属帯被覆脱硫用ワイヤーをワイヤーフィーダー法により溶銑中に投入すると同時に、CaO系脱硫剤を溶銑中にインジェクションして溶銑の脱硫処理を行うことを提案している。特許文献1によれば、金属帯被覆脱硫用ワイヤーを用いても脱硫処理末期の低S領域では脱硫効率が低下するが、CaO系脱硫剤を溶銑中にインジェクションすることによって溶銑の攪拌が強化され、金属帯被覆脱硫用ワイヤー中の金属Mgから発生する気化したMg蒸気が溶銑中に行き渡り、低S領域においても迅速な脱硫反応が可能になるとしている。
特開平9−194924号公報
特許文献1による脱硫処理方法は、脱硫効率は高いものの、CaO系脱硫剤のインジェクション法による脱硫処理方法と、金属Mg及びCaOからなる脱硫剤を金属質の被覆材で被覆した金属帯被覆脱硫用ワイヤーのワイヤーフィーダー法による脱硫処理方法の2つの脱硫方法を組み合せた方法であり、2つの脱硫処理設備を必要とすることから設備費並びに運転費が高くなるという問題点がある。また、インジェクション法により添加するCaO系脱硫剤には滓化促進剤であるCaF2 が含まれており、フッ素の環境への影響が問題視されている現状においては望ましい脱硫方法とはいえない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、溶銑や溶鋼などの溶鉄を脱硫処理するに際し、溶鉄の攪拌のためのインジェクション法などを併用せずとも、且つCaF2 を配合しなくとも、金属帯被覆脱硫用ワイヤーによるワイヤーフィーダー法のみで効率良く脱硫処理することのできる金属帯被覆脱硫用ワイヤーを提供するとともに、該金属帯被覆脱硫用ワイヤーを用いた溶鉄の脱硫処理方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る金属帯被覆脱硫用ワイヤーは、CaO系フラックスと、金属Mg及び/またはMgOと、金属Alと、廃トナー粉と、を混合した粒状及び/または粉状の脱硫剤が金属質の帯材で被覆されていることを特徴とするものである。
また、第2の発明に係る溶鉄の脱硫処理方法は、第1の発明に記載の金属帯被覆脱硫用ワイヤーを溶銑中または溶鋼中に供給して脱硫処理することを特徴とするものである。
本発明によれば、金属帯被覆脱硫用ワイヤーで被覆される脱硫剤に廃トナー粉を配合しており、トナー粉の主成分は炭化水素で構成される樹脂であり、この樹脂は溶鉄中に供給されると水素、炭素及び炭化水素ガスなどに分解するので、溶鉄は生成する水素や炭化水素ガスによって激しく攪拌される。その結果、脱硫剤から発生するMgガスが溶鉄内に分散されてMgとSとの反応が促進されるとともに、MgとSとの反応により生成するMgSの浮上が促進されるので、高い脱硫効率で溶銑及び溶鋼を脱硫処理することができる。また、脱硫剤にはCaF2 などのフッ化物を配合していないので、脱硫処理容器の耐火物の溶損を抑制することが可能になると同時に、処理後のスラグにはフッ素が含有されないので、スラグの処理が極めて容易になる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明者等は、金属Mg及びCaOを含有する脱硫剤を金属質の帯材で被覆した金属帯被覆脱硫用ワイヤーのワイヤーフィーダー法による、溶銑または溶鋼への供給により、溶銑または溶鋼を脱硫処理するに当たり、脱硫効率を高めるべく、被覆される脱硫剤について研究・検討を実施した。その際に、脱硫剤には、フッ素の環境汚染対策、並びに脱硫処理容器の耐火物の溶損を抑制する観点から、CaF2 などのフッ化物を配合しないことを1つの条件とした。
金属Mg及びCaOを含有する脱硫剤を用いた脱硫反応は、先ず、Sとの親和力の強いMgと溶鉄中のSとが反応してMgSが形成され、次いで、このMgSと脱硫剤中のCaOとが、「MgS+CaO→CaS+MgO」の反応式により反応し、安定型のCaSが形成されることにより進行する。MgSは、酸化性雰囲気に曝されるとMgOが生成し、分解したSは溶鉄中に戻ってしまい(これを、「復硫」と呼ぶ)、非常に不安定であるが、安定型のCaSが形成されることにより、MgSの分解による復硫が防止され、安定した脱硫反応が進行する。つまり、金属Mg及びCaOを含有する脱硫剤であれば、CaF2 などのフッ化物を配合しなくとも、十分に脱硫処理することが可能となる。
しかしながら、ガス状のMgが反応することから、生成するMgSは極めて小さく、大半のMgSは粒径が10μm以下となる。粒径が10μm以下であるMgSの溶銑中及び溶鋼中の浮上速度は遅く、脱硫処理容器での鉄浴深さが3〜4m程度の場合には浮上に60分以上を要することになる。一方、CaO粒子は数百μm程度であるので、MgSに比べて比較的速く浮上する。つまり、生成したMgSが、安定型のCaSにならず、溶鉄中に懸濁した状態で残留する。この状態のままの溶銑を次工程の転炉に装入して脱炭精錬のための酸素吹錬を行うと、溶銑中に懸濁したMgSは分解して復硫し、脱硫効率は低下する。同様に、転炉から出鋼後の溶鋼段階で脱硫処理した場合、MgSが懸濁したままの溶鋼を次工程の連続鋳造工程で鋳造すると、懸濁したMgSはそのまま鋳片に残留し、脱硫効率は低下する。
そこで、本発明者等は、生成したMgSの浮上を促進させるべく検討した。従来から、ガスインジェクション法或いは機械式攪拌法などによって溶鉄を攪拌すれば、溶鉄中に懸濁した非金属介在物の浮上が促進されることは知られている。しかしながら、ガスインジェクション法或いは機械式攪拌法などを採用して攪拌しようとすると、ガスインジェクション法では、攪拌用ガスの供給管やガス吹き込み用ランスが必要であり、また、機械式攪拌法では、攪拌羽根や攪拌羽根を旋回させるための電動機などが必要になり、設備費などから合理的ではない。
これらの理由から、本発明では脱硫剤にガス発生物質を配合し、これによる溶鉄の攪拌を利用して、生成したMgSの浮上を促進することとした。安価なガス発生物質としてはCaCO3 、プラスチックなどが知られている。しかしながら、CaCO3から発生するガスは酸化性ガスのCO2 であり、還元反応である脱硫反応を阻害する。プラスチックは、炭素、水素及び酸素を主成分としており、高温下では水素、炭素及び炭化水素ガスなどに分解するので攪拌は期待できるが、余りに大きな径のガス気泡が発生すると、脱硫剤がガス気泡に取り込められ、溶鉄と反応しないまま溶鉄湯面に浮上してしまう恐れがある。従って、粒径の小さいプラスチックが最適であるが、粒径を微細化するべく調製すると廃プラスチックといえども高価になる。
このようなことを踏まえ種々検討した結果、廃トナー粉がガス発生物質として最適であるとの結論を得た。トナー粉はプリンターなどで印字用に使用されており、使用済のトナーにはトナー粉が残留する。1つのトナーから発生する廃トナー粉は少量であるが、近年のIT技術の発展によって多数のトナーが使用済となり、使用済みトナーから集められた廃トナー粉は産業廃棄物として廃棄処分されている。また、トナー粉は、成分的には炭化水素から構成される樹脂を主体としており、マグネタイト(磁鉄鉱:FeO・Fe23 )を含有するものの、ガス発生物質としてプラスチックと同等の効果を有している。つまり、廃トナー粉は、安価でしかも微粉であり、本発明で使用する脱硫剤に配合するガス発生物質として最適であることが分かった。
ところで、金属Mg及びCaOを含有する脱硫剤の欠点として、金属Mgが高価であることにより、脱硫剤のコストが高くなるという点がある。これを防止するために種々検討した結果、MgO(酸化マグネシウム)が金属Alによって還元されて生成するMgガスによる脱硫反応を併用することにより、コストを低減しながら、脱硫効率を高められることが分かった。また、金属Mgのみを用いた場合にも、雰囲気中や溶鉄中の酸素、水分などとの反応による金属Mgの酸化を防止する上で、脱硫剤中に金属Alを共存させることが望ましいことが分かった。
本発明に係る金属帯被覆脱硫用ワイヤーは、これらの知見に基づいてなされたものであり、CaO系フラックスと、金属Mg及び/またはMgOと、金属Alと、廃トナー粉と、を混合した粒状及び/または粉状の脱硫剤が金属質の帯材で被覆されていることを特徴とする。
ここで、脱硫剤を構成するCaO系フラックスとはCaOを主体とするものであり、従って、CaO系フラックスとしては、生石灰、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの溶鉄中で分解し、CaOを生成するものであれば、どのようなCaO源でも使用可能である。更には、ドロマイトは、CaO源とMgO源の両者を兼ね備えており、安価であることからも有効なフラックスである。ドロマイトとしては、生ドロマイト(鉱石としてのドロマイト(MgCO3 ・CaCO3 ))、生ドロマイトを焼成して得られる軽焼ドロマイト(生ドロマイトを1000〜1300℃で加熱焼成したもの)、焼成ドロマイト、及びこれらの混合物を用いることができる。MgO源としては、ドロマイトの他に、マグネシアクリンカーなどを使用することができる。
炭酸カルシウム、水酸化カルシウムや生ドロマイトなどは溶鉄中で分解することにより、溶鉄への攪拌を付与できるものであるから、混合することは望ましい。但し、分解反応は吸熱反応であり、大量に添加しすぎることは溶鉄温度の低下を招く原因ともなるため、その添加量は溶鉄温度や操業条件によって決められる。
金属Al源としては、安価に入手できることから、アルミニウムスクラップを溶解再生するときに発生するアルミドロス粉末(金属Alを30〜50質量%程度含有する)が好ましいが、アルミニウム融液をガスでアトマイズして得られるアトマイズAl粉末やアルミニウム合金を研磨・切削する際に発生する切削粉などを用いることもできる。
また、金属質の帯材としては、安価であることから鉄系帯材が好ましいが、Al系帯材で被覆しても構わない。但し、Al系帯材で被覆した場合には、鉄系帯材に比べて、高価である、或いは、被覆材の溶解速度が速くなるなどのことを考慮する必要がある。勿論、鉄及びAl以外の金属の帯材であっても構わない。
脱硫剤を構成する各物質は上記の機能を発揮する必要があることから、金属MgまたはMgO、金属Al、CaO系フラックス、廃トナー粉の配合には自ずと最適な範囲が存在する。即ち、金属Mg及びMgOは、発生するMgガス量が同じになるように添加することにより、お互いに代替することができる。つまり、下記の(1)式で示すように、MgOはAlで還元されてMgが生成される。
4MgO+2Al→3Mg+MgO・Al23 …(1)
この反応におけるMgOとMgとの当量比は4:3であるので、1モルのMgOから3/4モルのMgが発生する。これを質量に換算すると、MgOの分子量は40、Mgの分子量は24であるので、「MgO質量=(4/3)×(40/24)×Mg質量≒2.2×Mg質量」の関係となる。以上から、MgOで金属Mgを代替するには、その2.2倍のMgOが必要なことが分かる。
また、上記の(1)式から、1モルのMgOを還元するためには、1/2モルの金属Alが必要であることが分かる。これを質量に換算すると、MgOの分子量は40、Alの分子量は27であるので、「Al質量=(1/2)×(40/27)×MgO質量≒0.74×MgO質量」の関係となる。以上から、AlでMgOを還元するためには最低その0.74倍の金属Alが必要なことが分かる。
必要なCaO系フラックスの量は以下のようにして求めることができる。即ち、溶鉄中のSはMgによって下記の(2)式のように除去され、更に、下記の(3)式にしたがってCaOによりスラグ中に固定される。
Mg+S→MgS …(2)
MgS+CaO→CaS+MgO …(3)
(3)式から、1モルのMgSを固定するためには、1モルのCaOが必要であることが分かる。これを質量に換算すると、MgSの分子量は56、CaOの分子量も56であるので、「CaO質量=MgS質量」となる。更に、(2)式から、1モルのMgから1モルのMgSが発生することが分かり、同様に質量に換算すると、Mgの分子量は24、MgSの分子量は56であるから、「MgS質量=(56/24)×Mg質量=2.3×Mg質量」となる。これらを合わせると、「CaO質量=MgS質量=2.3×Mg質量=1.05×MgO質量」となる。これらのことから、最低限必要なCaO質量はMg質量の2.3倍及びMgO質量の1.05倍であることが分かる。
廃トナー粉は0.5質量%以上の配合でその効果が表れてくるので、0.5質量%以上の配合とすることが好ましい。配合量の上限は特に規定する必要はないが、過剰に配合してもその効果は飽和してしまうので、上限は10質量%程度とすればよい。
以上の結果から、脱硫剤の最適な配合割合は、CaO系フラックスのCaO純分の配合量が、Mg配合量の2.3倍とMgO配合量の1.05倍との和以上になり、且つ、金属Alの配合量がMgO配合量の0.7倍以上となる条件を満たした上で、金属MgとMgOとの合計配合量を5〜35質量%、金属Alの配合量を30質量%以下、CaO系フラックスの配合量を35質量%以上、廃トナー粉の配合量を0.5〜10質量%とすることである。
以下、このようにして構成される本発明に係る金属帯被覆脱硫用ワイヤーを用いて溶鉄の脱硫処理を実施する場合について説明する。図1は、脱硫処理設備において、溶銑鍋に収容された溶銑に対して本発明に係る脱硫処理方法を実施する例を示す概略図である。
図1に示すように、脱硫処理設備1には、CaO系フラックスと、金属Mg及び/またはMgOと、金属Alと、廃トナー粉とを混合した粒状及び/または粉状の脱硫剤を鉄系帯材などで被覆した金属帯被覆脱硫用ワイヤー4のコイル4aと、このコイル4aを巻き戻して金属帯被覆脱硫用ワイヤー4を溶銑2に供給するためのワイヤーフィーダー5とが配置されている。ワイヤーフィーダー5の出口側には、金属帯被覆脱硫用ワイヤー4をガイドするための供給導管6が設置されている。
高炉から出銑された溶銑2を溶銑鍋7で受銑し、この溶銑鍋7を台車8で脱硫処理設備1に搬送する。受銑時に高炉スラグが溶銑鍋7に混入した場合や、出銑時に高炉鋳床で脱珪剤を投入して脱珪処理を実施した場合、或いは、受銑後この溶銑鍋7で脱燐処理を実施した場合など、溶銑鍋7にスラグが存在する場合には、脱硫反応を促進させるために、脱硫処理前にスラグを除去しておくことが好ましい。
溶銑鍋7が脱硫処理設備1の所定の位置で停止したなら、ワイヤーフィーダー法により、つまり、ワイヤーフィーダー5を作動させて、金属帯被覆脱硫用ワイヤー4を溶銑2に供給する。溶銑2に送り込まれた金属帯被覆脱硫用ワイヤー4の金属質被覆材が溶解し、脱硫剤が溶銑中に分散して、溶銑2の脱硫反応が進行する。即ち、脱硫剤中の金属MgまたはMgOの金属Alによる還元により生成するMgと溶銑中のSとが、前述した(2)式にしたがって反応してMgSが形成し、形成したMgSは、前述した(3)式にしたがって安定型のCaSとなり、スラグ3に移行し、溶銑2の脱硫反応が進行する。
その際に、溶銑2は、脱硫剤に配合した廃トナー粉の分解によって発生する水素ガスや炭化水素ガスによって攪拌されるので、Mgの溶銑浴内での分散が強化されて(2)式の反応が促進されるとともに、形成したMgSのスラグ3への浮上が促進される。浮上してスラグ3に到達したMgSは直ちにスラグ3に含有されるCaOと反応し安定型のCaSとなる。また、溶銑2を攪拌することで、溶銑中においてもMgSとCaOとの接触する頻度が増大し、安定型のCaSの生成が促進される。
また、脱硫剤に含まれるCaO自体も溶銑中のSと反応して脱硫反応に貢献する。金属Alは脱硫剤に配合されるMgOの還元剤として機能するほか、溶銑2の酸素ポテンシャルを低下させ、脱硫反応を促進させる。これは、脱硫反応は還元反応であるので、酸素ポテンシャルが下がることで、脱硫反応が促進するからである。
このようにして、溶銑2は効率良く脱硫処理される。
転炉から出鋼され、取鍋に収容された溶鋼に対して本発明に係る脱硫処理方法を適用する場合も、上記に準じて本発明方法を適用することができる。溶鋼段階で本発明に係る脱硫処理方法を実施する場合、図1に示す脱硫処理設備1のみならず、取鍋精錬炉やRH真空脱ガス装置でも、ワイヤーフィーダー5が設置されている限り、本発明方法を適用することができる。例えば、RH真空脱ガス装置で適用する場合、真空脱ガス処理中に、真空脱ガス槽の下部に設置した浸漬管の邪魔のならない位置でワイヤーフィーダー法により金属帯被覆脱硫用ワイヤー4を溶鋼に供給すればよい。
溶鋼段階で脱硫処理を実施する鋼種は、一般的にS濃度の目標値が0.0010質量%以下の極低硫鋼や、S濃度の目標値が0.002質量%以下ないし0.004質量%以下の低硫鋼であるので、溶鋼段階における脱硫処理の負荷を軽減する観点から、当該溶鋼を製造するための溶銑に対しても溶銑段階で予め脱硫処理を施しておくことが好ましい。また、一般的に、取鍋内の溶鋼上には出鋼時に転炉から流出した転炉スラグが存在しており、転炉スラグは酸化性であることから脱硫反応を阻害するので、溶鋼段階で脱硫処理する場合には、取鍋内の転炉スラグにAlなどの脱酸剤を添加して転炉スラグを予め還元しておくことが好ましい。
脱硫処理設備1やRH真空脱ガス装置など、本発明方法を何れの場所で実施する場合においても、脱硫剤の添加速度、つまり金属帯被覆脱硫用ワイヤー4の供給速度を速くしすぎた場合には、Mgガス発生速度が速くなりすぎ、系外に流出するMgガス比率が高くなり、脱硫に寄与するMgガス量が低下してしまう恐れがあり、一方、金属帯被覆脱硫用ワイヤー4の供給速度を遅くしすぎると金属帯被覆脱硫用ワイヤー4が充分に溶鉄中に浸漬しないうちに、つまり溶鉄表面で脱硫反応が生じることになり、溶鉄中での脱硫反応が充分に進行しない。このことから、脱硫剤の供給速度は、遅すぎても速すぎても好ましくなく、脱硫効率を高める観点からは0.1〜1.0kg/min・tの範囲とすることが望ましい。適切な添加速度は、金属帯被覆脱硫用ワイヤー4の金属質被覆材の溶解速度によっても異なるため、処理容器の深さ方向で真中より下方の位置で金属質被覆材の溶解が進み、脱硫剤が溶鉄中に放出されるように添加速度を調整することが望ましい。
このようにして溶鉄を脱硫処理することで、滓化促進剤としてCaF2 などのフッ化物を配合しなくても、高い脱硫効率で溶鉄を脱硫処理することができる。また、フッ化物を使用していないので、溶銑鍋7の耐火物や真空脱ガス設備の耐火物の溶損を抑制することが可能になる。また更に、本発明に係る金属帯被覆脱硫用ワイヤー4を添加することにより、溶鉄は強攪拌されるので、溶鉄の攪拌装置を別途設けることは不要である。
図1に示す脱硫処理設備において、脱硫剤に廃トナー粉を配合した金属帯被覆脱硫用ワイヤー及び廃トナー粉を配合しない金属帯被覆脱硫用ワイヤーを用いて、溶銑鍋に収容された約300トンの溶銑に対して脱硫処理試験を実施し、両者を比較した。廃トナー粉を配合しない金属帯被覆脱硫用ワイヤーを用いた場合には、所定時間の脱硫処理後、インジェクションランスを溶銑に浸漬させて窒素ガスを溶銑に吹き込み、溶銑を攪拌する試験も実施した。
つまり、水準1:本発明に係る金属帯被覆脱硫用ワイヤーを用いた脱硫処理方法(本発明例)、水準2:廃トナー粉を配合しない金属帯被覆脱硫用ワイヤーを用いた脱硫処理方法(比較例1)、水準3:水準2の方法で脱硫処理した後に窒素ガスで溶銑を攪拌した脱硫処理方法(比較例2)の3つの水準で脱硫処理試験を実施した。脱硫剤の原単位は0.4〜1.0kg/tで実施した。
本発明例では、金属Mg:15質量%、CaO粉:75質量%、アルミドロス粉末8質量%、廃トナー粉2質量%からなる脱硫剤の充填された金属帯被覆脱硫用ワイヤーを使用し、比較例1,2では、金属Mg:15質量%、CaO粉:75質量%、アルミドロス粉末10質量%からなる脱硫剤の充填された金属帯被覆脱硫用ワイヤーを使用した。この脱硫試験では、処理前後の溶銑中S濃度から求められる脱硫率、処理中の溶銑温度の降下量及びガス攪拌時間を含めた総処理時間を調査した。表1に脱硫剤の組成、及び、脱硫剤の原単位が0.4kg/tのときの脱硫率、総処理時間、溶銑温度の降下量を示す。
Figure 0004998691
表1に示すように、本発明例と比較例1とを比較すると、総処理時間は同等であるが、比較例1では脱硫率が低く、十分に脱硫反応が進行していないことが分かった。一方、本発明例と比較例2とを比較すると、脱硫率に差はないものの、比較例2ではガス攪拌処理が必要であることから、総処理時間が長くなり、ガスを吹き込むことと処理時間が長くなることによって、溶銑の温度降下が大きいことが確認できた。
また図2は、脱硫処理後の溶銑からサンプルを採取し、サンプルのT.Mg濃度及びS濃度を分析し、横軸をT.Mg濃度、縦軸をS濃度として、T.Mg濃度とS濃度との関係をプロットし、本発明例と比較例1,2とでどの程度まで脱硫反応が進行しているかを比較・調査した図である。ここで、T.Mg濃度とは、溶銑に溶解しているMgと、溶銑中にMgSなどの非金属介在物の形態で存在しているMgとを合計した濃度である。尚、図2中の破線は、Speerの研究結果による1260℃におけるMg(g)−MgSの平衡曲線であり、この線上にプロット点があれば、Mgによる脱硫がほぼ100%進行していることを表すことになる。また、図2では、本発明例、比較例1及び比較例2を含めて、Mgの添加原単位が0.4kg/tの試験群及びMgの添加原単位が0.8kg/tの試験群を破線で囲んで示している。
図2に示すように、比較例1ではT.Mg濃度に対してS濃度が高く、つまり、T.Mg濃度とS濃度との関係がMg(g)−MgSの平衡曲線と乖離しており、脱硫処理終了時点では溶銑中に多量のMgSが懸濁した状態で存在していることが分かる。
図2中に示す比較例2の3点は、水準2の方法で脱硫処理した処理終了時点のS濃度も表示しており、脱硫処理後に実施するガス攪拌処理によって溶銑中のMgSが溶銑から分離し、ほぼMg(g)−MgSの平衡に達していることが分かる。但し、比較例2では前述したように別途ガス攪拌処理が必要であり、効率的な脱硫方法とはいえない。
これに対して本発明例では、脱硫処理終了時に、すでにほぼMg(g)−MgSの平衡に達しており、効率的に脱硫処理できることが確認できた。
溶銑鍋に収容された溶銑に対して、本発明の脱硫処理方法を適用する例を示す概略図である。 脱硫処理後の溶銑のT.Mg濃度とS濃度との関係を示す図である。
符号の説明
1 脱硫処理設備
2 溶銑
3 スラグ
4 金属帯被覆脱硫用ワイヤー
5 ワイヤーフィーダー
6 供給導管
7 溶銑鍋
8 台車

Claims (2)

  1. CaO系フラックスと、金属Mg及び/またはMgOと、金属Alと、廃トナー粉と、を混合した粒状及び/または粉状の脱硫剤が金属質の帯材で被覆されていることを特徴とする金属帯被覆脱硫用ワイヤー。
  2. 請求項1に記載の金属帯被覆脱硫用ワイヤーを溶銑中または溶鋼中に供給して脱硫処理することを特徴とする、溶鉄の脱硫処理方法。
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