JP3728870B2 - 鉄系溶融合金の脱硫方法および脱硫剤 - Google Patents
鉄系溶融合金の脱硫方法および脱硫剤 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱硫剤を用いて鉄系溶融合金を脱硫する鉄系溶融合金の脱硫方法および脱硫剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高級鋼製造に対する要請が増大するにつれ、低硫鋼の製造においては酸化精錬である転炉工程の前に鉄系溶融合金の脱硫処理を実施し、転炉に装入する鉄系溶融合金中の硫黄濃度を低減する方法が広く採用されるようになっている。さらに、硫黄濃度の極めて低い極低硫鋼では、転炉から出鋼後に取鍋中で脱酸し、脱硫する方法が広く行われている。
【0003】
鉄系溶融合金に用いられる脱硫剤としては、石灰系、カルシウムカーバイド系、ソーダ灰系、マグネシウム系のものが用いられている。これら脱硫剤を、反応容器としてのトーピードカー、溶銑鍋、転炉などに添加することによって脱硫がなされる。この場合、脱硫剤の添加方法としては、インジェクションまたは溶鋼上部投入後に機械攪拌する方法等が採用されている。
【0004】
これら脱硫剤において、硫黄との親和力は、石灰系に比較して、ソーダ灰系、カルシウムカーバイド系、マグネシウム系のほうが強い。そのため、例えば材料とプロセス,vol.6(1993),p.1070 にあるように、鉄系溶融合金の攪拌力が弱いトーピードカーなどにおいてはソーダ灰やカルシウムカーバイドが用いられている。
【0005】
しかし、ソーダ灰系を使用すると、発生するスラグ中のNa2O濃度が高くなるため、スラグをセメント材料や路盤材へ有効に利用することができなくなる。また、カーバイド系を使用すると、水と反応してアセチレンガスが発生するため、取り扱いが困難である。
【0006】
そのため、近年、硫黄との親和力が強く、優れた脱硫能を有する上、発生するスラグが少なくかつスラグの利用が容易なマグネシウム系の脱硫剤が用いられるようになってきている。
【0007】
例えば、特開昭52−107218号公報や特開昭52−115717号公報のように金属Mg単独あるいはCaOやCaCO3との混合物が鉄系溶融合金の脱硫剤として用いられている。
しかし、脱硫剤の費用としては石灰系が最も廉価で、マグネシウム系は高価である。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、取り扱いが容易で、廉価な脱硫剤を使用して高脱硫率で鉄系溶融合金の脱硫を行うことができ、しかも生成したスラグの利用が容易な鉄系溶融合金の脱硫方法および脱硫剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した特開昭52−107281号、特開昭52−115717号に開示されているように金属Mgは強力な脱硫能を有するが高価である。そこで、本発明では、廉価に入手することができる原料を用いて金属Mgを発生させ、そのMgを用いて鉄系溶融合金の脱硫を行い、金属Mgは補助的に少量用いるのみとする。そして、その脱硫の際に懸念される脱硫生成物の再酸化をも防止するものである。
【0010】
すなわち、本発明は、第1に、MgOおよび金属AlをMgO/Alの重量比が3.0以下となるように混合した混合物を含み、かつアルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物をAlに対して1〜10重量%含むフラックスと、前記フラックスとの合計量に対して20重量%以下の金属Mgとを鉄系溶融合金中に供給し、鉄系溶融合金中で前記フラックスから発生したMgおよび鉄系溶融合金中に供給された金属Mgにより脱硫を行い、さらにCaOまたはCaCO3を主成分とする復硫防止剤を前記フラックスと金属Mgの合計量に対して5重量%以上添加して、前記脱硫により生成する脱硫生成物の再酸化による復硫を防止することを特徴とする鉄系溶融合金の脱硫方法を提供するものである。
【0011】
第2に、鉄系溶融合金中に供給され、その脱硫を行う脱硫剤であって、MgOおよび金属AlをMgO/Alの重量比が3.0以下となるように混合した混合物を含み、かつアルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物をAlに対して1〜10重量%含むフラックスと、前記フラックスとの合計量に対して20重量%以下の金属Mgと、前記フラックスおよび金属Mgとは別個に該鉄系溶融合金中に供給され、前記フラックスと金属Mgの合計量に対して5重量%以上の、CaOまたはCaCO3を主成分とする復硫防止剤とを含有することを特徴とする脱硫剤を提供するものである。
【0012】
第3に、鉄系溶融合金中に供給され、その脱硫を行う脱硫剤であって、MgOおよび金属AlをMgO/Alの重量比が3.0以下となるように混合した混合物を含み、かつアルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物をAlに対して1〜10重量%含むフラックスと、前記フラックスとの合計量に対して20重量%以下の金属Mgと、前記フラックスと金属Mgの合計量に対して5重量%以上の、CaOまたはCaCO3を主成分とする復硫防止剤とを含有することを特徴とする脱硫剤を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、基本的に、廉価に入手することができるMgOと金属Alを予めMgO/Alの重量比が3.0以下となるように混合し、さらにアルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物を含有させたフラックスを脱硫剤の主成分として鉄系溶融合金中に投入し、発生するMgを用いて鉄系溶融合金の脱硫を行う。この場合のフラックスの供給方法としては、インジェクション、ワイヤーフィーダー等を採用することができる。
【0014】
この際にMgは、以下の(1)式に示す反応に従って発生する。
MgO+1/2Al=3/4Mg+1/4MgO・Al2O3 ……(1)
この(1)式に示すように、MgOとAlとの当量比は2:1であるので、MgO/Alの重量比を3またはAl過剰の条件である3未満とすることにより、上記(1)式の反応を効率よく進行させることができる。
【0015】
ところで、本発明者らは、上記反応に従って金属Alの表面に生成したアルミナが上記(1)式の反応の進行を阻害することを見出した。これに対しては、アルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物をAlに対して1〜10重量%の割合でフラックス中に添加してアルミナを低融点化することで(1)式の反応進行の阻害を防止することができることを見出した。したがって、本発明では、フラックス中にアルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物をAlに対して1〜10重量%を含有させるのである。この場合に、アルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物は、単独の化合物であってもよいし、複数種類混合して用いてもよい。このような化合物としてはCaO,CaCl2が例示されるが、アルミナを低融点化することができれば特定の化合物に限定されるものではない。
【0016】
上記(1)式により発生したMgにより、以下の(2)式の反応に従って脱硫が進行する。
Mg+S=MgS ……(2)
上記(1)式、(2)式とも反応発熱反応であるため、処理される鉄系溶融合金の温度は高温であることが望ましい。
【0017】
本発明では、このように、MgOおよび金属AlをMgO/Alの重量比が3.0以下となるように混合した混合物を含み、かつアルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物の粉末をAlに対して1〜10重量%含むフラックスを脱硫剤の主成分として用いるが、このフラックスは嵩比重が約2と小さいため、金属Mg単独の場合と比較して、脱硫剤を添加してから脱硫が終了するまでの時間が長くなる。そのため、本発明では、処理時間を短くするために、上記フラックスの他に適量の金属Mgを添加する。処理時間を上記フラックス単独の場合より短縮するためには、次式に示すような量の金属Mgを配合することが有効である。
金属Mgの配合量(重量%)=
(短縮すべき処理時間/金属Mg20%配合時に短縮できる処理時間)×20
【0018】
ここで、金属Mg量はフラックスと金属Mgとの合計量に対して20重量%が上限となるが、これは金属Mgの配合量を20重量%より多くしてもMgが蒸気として散逸するため、脱硫に有効に作用しないことを見出したためである。また、金属Mgがこの程度の量であれば、価格的にも問題はない。
【0019】
ところで、上記(2)式により生成した脱硫生成物は、従来のマグネシウム系脱硫剤により知られているように容易に酸化され、(2)式の逆反応により鉄系溶融合金中に復硫することが知られている。そのため本発明においても、CaOまたはCaCO3を上記フラックスおよび金属Mgの合計量に対して5重量%以上添加し、上記(2)式により生成したMgSを、以下の(3)式に示す反応により、CaSに変え、Sを固定して復硫を防止する必要がある。
MgS+CaO=MgO+CaS ……(3)
CaO,CaCO3の量は多いほうが望ましいが、脱硫実験の結果から、これらが鉄系溶融合金の湯面を覆うことが可能となるためには、脱硫剤の5%以上必要であることが判明した。
【0020】
なお、CaO,CaCO3は単味であってもこれらの混合物であってもよいし、少量のCaF2,CaCl2などのハロゲン化物を含んでいてもよい。CaO,CaCO3の添加方法はいかなる方法でもよく、前記フラックスおよび金属Mgに混合してもよいが、溶銑の上方から粒状のものを上置添加するのが容易で工業的に有効な方法である。したがって、本発明に係る脱硫剤は、前記フラックスおよび金属Mgと前記復硫防止剤とが別個に添加されるものであってもよいし、予めこれら全てを含有しているものであってもよい。
【0021】
【実施例】
表1に示す条件により、図1に示すような溶銑鍋内で溶銑の脱硫処理を行った。図1中、参照符号1が溶銑鍋、2がその中に貯留された溶銑である。予め、内部にフラックス(金属Mgを除いた残分の脱硫剤)が装入された表1に示すようなワイヤーを作製し、ワイヤー供給装置を用いて図1に示すようにワイヤー3を供給した。また、ワイヤー供給前に、インジェクションランス4により復硫防止剤としての石灰および脱硫剤の一部としての金属Mgを溶銑中に吹き込んだ。
【0022】
この際のSの挙動の一例を図2に示す。この図に示すように、約10分間の脱硫によりSが0.001重量%まで到達した。またこの時に発生したスラグ量は約500kgすなわち3.3kg/Tであった。これは通常の石灰系脱硫剤が8kg/T必要であるのに比較すると、約40%に低減することができたこととなる。
このように、本発明の脱硫方法を用いることにより、高脱硫率を得ることができ、しかも生成するスラグを著しく低減できることが確認された。
【0023】
【表1】
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、安価なMg発生源を脱硫剤の主成分として使用してMgにより脱硫を行うので脱硫剤は安価であり、また取扱いの困難性を伴うことなく高効率で脱硫することができ、しかも生成するスラグ量は少なく、またスラグは再利用が可能なものとなる。また、少量の金属Mgを用いることにより、脱硫時間をより短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る脱硫方法の実施状態を示す図。
【図2】本発明の実施例に従って溶銑を脱硫した際の溶銑中のS濃度の時間による推移を示す図。
【符号の説明】
1……溶銑鍋
2……溶銑
3……ワイヤー
4……インジェクションランス
Claims (3)
- MgOおよび金属AlをMgO/Alの重量比が3.0以下となるように混合した混合物を含み、かつアルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物をAlに対して1〜10重量%含むフラックスと、前記フラックスとの合計量に対して20重量%以下の金属Mgとを鉄系溶融合金中に供給し、鉄系溶融合金中で前記フラックスから発生したMgおよび鉄系溶融合金中に供給された金属Mgにより脱硫を行い、さらにCaOまたはCaCO3を主成分とする復硫防止剤を前記フラックスと金属Mgの合計量に対して5重量%以上添加して、前記脱硫により生成する脱硫生成物の再酸化による復硫を防止することを特徴とする鉄系溶融合金の脱硫方法。
- 鉄系溶融合金中に供給され、その脱硫を行う脱硫剤であって、MgOおよび金属AlをMgO/Alの重量比が3.0以下となるように混合した混合物を含み、かつアルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物をAlに対して1〜10重量%含むフラックスと、前記フラックスとの合計量に対して20重量%以下の金属Mgと、前記フラックスおよび金属Mgとは別個に該鉄系溶融合金中に供給され、前記フラックスと金属Mgの合計量に対して5重量%以上の、CaOまたはCaCO3を主成分とする復硫防止剤とを含有することを特徴とする脱硫剤。
- 鉄系溶融合金中に供給され、その脱硫を行う脱硫剤であって、MgOおよび金属AlをMgO/Alの重量比が3.0以下となるように混合した混合物を含み、かつアルカリ土類金属またはアルカリ金属のハロゲン化物または酸化物をAlに対して1〜10重量%含むフラックスと、前記フラックスとの合計量に対して20重量%以下の金属Mgと、前記フラックスと金属Mgの合計量に対して5重量%以上の、CaOまたはCaCO3を主成分とする復硫防止剤とを含有することを特徴とする脱硫剤。
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JP14297797A JP3728870B2 (ja) | 1997-05-19 | 1997-05-19 | 鉄系溶融合金の脱硫方法および脱硫剤 |
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