以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
まず、構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載した車両の概略ブロック構成図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る車両10は、動力源としてのエンジン11と、エンジン11において発生した動力を伝達するとともに車両10の走行状態に応じた変速段を形成する自動変速機(A/T:Automatic Transmission)20と、A/T20を油圧により制御するための油圧制御装置30と、プロペラシャフト25によって伝達された動力を伝達するディファレンシャル機構40と、ディファレンシャル機構40によって伝達された動力を用いて回転することにより車両10を駆動させる駆動輪45L、45Rと、を備えている。
さらに、車両10は、A/T20におけるシフトポジションを切り替えるためのシフトレバー17と、車両10の全体を制御するための車両用電子制御装置としてのECU100と、各種センサを備えている。各種センサは、検出した検出信号を、ECU100に出力するようになっている。ここで、後述するように、シフトポジションとは、前進、後進等の動力の伝達方向を決定する位置(ポジション)を示し、変速段とは、1速、2速等のA/T20の入出力間の変速比を決定するギヤ段を示す。
エンジン11は、ガソリンまたは軽油等の炭化水素系の燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させることによって動力を出力する公知の動力装置により構成されている。エンジン11は、燃焼室内で混合気の燃焼を断続的に繰り返すことによりシリンダ内のピストンを往復動させ、ピストンと動力伝達可能に連結されたクランクシャフト15を回転させることにより、A/T20に動力を伝達するようになっている。
なお、エンジン11は、動力を出力するものであればよく、上記公知の動力装置に限られるものではない。また、エンジン11に用いられる燃料は、エタノール等のアルコールを含有するアルコール燃料であってもよい。
A/T20は、後述する複数の遊星歯車装置を備えている。これらの遊星歯車装置は、油圧アクチュエータによって係合制御される複数の摩擦係合要素としてのクラッチおよびブレーキを有している。
また、これらのクラッチおよびブレーキは、油圧制御装置30が有するトランスミッションソレノイドおよびリニアソレノイドの励磁、非励磁や、マニュアルバルブによって切り替えられる油圧回路の状態に応じて、係合状態および解放状態の間で作動するようになっている。したがって、A/T20は、これらのクラッチおよびブレーキの係合状態および解放状態の組み合わせに応じた変速段を形成するようになっている。
このような構成により、A/T20は、エンジン11の動力として入力されるクランクシャフト15の回転を所定の変速比γで減速あるいは増速してプロペラシャフト25に伝達する有段式の変速機であり、車室内に設けられたシフトレバー17の切替位置のうちのいずれかのシフトポジションに応じた変速段を形成し、各変速段に対応した回転速度の変換がなされるようになっている。
また、A/T20は、走行状態に応じてECU100に制御されることにより、変速段を変更するようになっている。さらに、A/T20は、ECU100がシフトセンサ81によって入力された検出信号に基づいて検出したシフトレバー17の切替位置に応じて、シフトポジションの変更に伴う変速段の変更を行うようになっている。なお、A/T20は、シフトレバー17の切替位置が駐車レンジ(Pレンジ)である場合には、図示しないパーキングロック機構によって、プロペラシャフト25の回転を機械的に禁止するように構成されている。
シフトレバー17は、A/T20における動力伝達状態またはシフトポジションの切替時に、運転者によって切替操作されるようになっている。シフトレバー17は、運転者に、前進位置(Dレンジ)、後進位置(Rレンジ)、駐車位置(Pレンジ)、および中立位置(Nレンジ)のいずれかの切替位置(シフト)を選択させるように構成されている。
シフトレバー17の切替位置は、シフトセンサ81によって検出され、ECU100に入力される。ECU100は、シフトセンサ81によって入力される検出信号が表すシフトレバー17の切替位置に基づいて、後述するマニュアル弁の切替位置を切り替えるようになっている。マニュアル弁は、この切替位置に応じて、図示しないオイルポンプから供給される油圧を、油圧経路を切り替えて、油圧制御装置30に供給するようになっている。
油圧制御装置30は、油圧回路を有し、その油圧回路に複数のトランスミッションソレノイドおよびリニアソレノイドを有している。また、油圧制御装置30は、ECU100によって制御され、油圧を利用してA/T20を制御するとともに、A/T20の各潤滑部に対して潤滑油を供給するようになっている。
また、油圧制御装置30は、複数のトランスミッションソレノイドおよびリニアソレノイドの作動状態に応じて、油圧経路の選択および流量を制御し、ライン圧を元圧とする油圧により、A/T20の複数の摩擦係合要素が選択的に係合あるいは解放されるようになっている。油圧制御装置30は、A/T20に、これらの摩擦係合要素の係合および解放の組み合わせに応じて、クランクシャフト15とプロペラシャフト25との回転数の比を変更させ、所望の変速段を形成させるようになっている。
ディファレンシャル機構40は、車両10がカーブ等を走行する場合に、駆動輪45Lの回転数と駆動輪45Rの回転数との差を許容するものである。ディファレンシャル機構40は、プロペラシャフト25の回転により伝達された動力を、ドライブシャフト43L、43Rを回転させることによって駆動輪45L、45Rに伝達するようになっている。なお、ディファレンシャル機構40は、駆動輪45L、45Rの回転数の差を制限する状態(デフロック状態)をとることができるものであってもよい。
駆動輪45L、45Rは、ドライブシャフト43L、43Rによって伝達された動力により回転し、路面との摩擦作用によって、車両10を駆動させるようになっている。なお、駆動輪45L、45Rは、車室内に設けられた図示しないフットブレーキペダルによって操作されるフットブレーキ(以下、「FB」という)47L、47Rによって、制動されるようになっている。また、駆動輪45L、45Rは、車室内に設けられた図示しないパーキングブレーキペダルによって操作されるパーキングブレーキ(以下、「PKB」という)によって制動されるようになっていてもよい。
ECU100は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)と、入出力インターフェース回路(いずれも図示しない)と、を有している。
さらに、ECU100は、シフトセンサ81と、油圧センサ82と、ロックアップセンサ83と、フットブレーキセンサ(以下、「FBセンサ」という)84と、パーキングブレーキセンサ(以下、「PKBセンサ」という)85と、マニュアル弁センサ86(図3参照)と、に接続されている。
シフトセンサ81は、シフトレバー17が、複数の切替位置のうちいずれの切替位置にあるかを検出し、シフトレバー17の切替位置を表す検出信号をECU100に出力するようになっている。なお、ECU100は、シフトセンサ81によって入力された検出信号に基づいて、シフトレバー17の切替位置が表すシフトポジションを判定する。
油圧センサ82は、A/T20における各クラッチおよびブレーキを制御するための図示しない油圧アクチュエータにかかる油圧を検出し、油圧アクチュエータの油圧を表す検出信号をECU100に出力するようになっている。なお、ECU100は、油圧センサ82によって入力された検出信号に基づいて、各クラッチおよびブレーキが係合状態であるか解放状態であるかを判定するようになっている。
ロックアップセンサ83は、クランクシャフト15の回転数と、トルクコンバータ21に連結されているA/T20の入力軸であるインプットシャフト22(図2参照)の回転数とを検出し、クランクシャフト15の回転数およびインプットシャフト22の回転数を表す検出信号をECU100に出力するようになっている。なお、ECU100は、ロックアップセンサ83によって入力された検出信号に基づいて、クランクシャフト15の回転数とインプットシャフト22の回転数とが等しい状態であるロックアップ状態が成立しているか否かを判定する。
FBセンサ84は、車室内に設けられた図示しないフットブレーキペダルのストロークを検出し、フットブレーキペダルのストロークを表す検出信号をECU100に出力するようになっている。なお、FBセンサ84は、駆動輪45L、45Rに設けられたブレーキシリンダの油圧を検出し、ブレーキシリンダの油圧を表す検出信号をECU100に出力するようにしてもよい。
PKBセンサ85は、図示しないパーキングブレーキペダルのストロークを検出し、パーキングブレーキペダルのストロークを表す検出信号をECU100に出力するようになっている。なお、パーキングブレーキ機構がペダル式ではなくレバー式である場合には、PKBセンサ85は、パーキングブレーキレバーのストロークを検出し、パーキングブレーキレバーのストロークを表す検出信号をECU100に出力するようにしてもよい。
マニュアル弁センサ86は、後述するマニュアル弁の切替位置を検出し、この切替位置を表す検出信号を、ECU100に出力するようになっている。
次に、A/T20の詳細な構成について、図2に基づいて説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係るA/Tの構成を説明するための概要図である。図2(a)は、本実施の形態に係るA/Tの構成を示すスケルトン図であり、図2(b)は、本実施の形態に係るA/Tにおける各シフトポジションおよび各変速段に対応する摩擦係合要素の作動状態を表す作動状態対応マップである。
図2(a)に示すように、A/T20は、エンジン11からクランクシャフト15を介して伝達された動力を、作動油を介して伝達するトルクコンバータ21と、変速装置23と、を備えている。
トルクコンバータ21は、エンジン11と変速装置23との間に配置されており、コンバータカバー21kを介してクランクシャフト15に連結されたポンプインペラ21iと、変速装置23のインプットシャフト22に連結されたタービンランナ21tと、一方向の回転が禁止されているステータ21sと、クランクシャフト15とインプットシャフト22とを一体的に回転させるためのロックアップ機構21cと、を有している。
ポンプインペラ21iとタービンランナ21tとの間には、作動油が充填されており、クランクシャフト15の回転によりポンプインペラ21iが回転すると、作動油を介してポンプインペラ21iの回転がタービンランナ21tに伝達され、タービンランナ21tが回転させられる。したがって、トルクコンバータ21は、エンジン11からクランクシャフト15を介して伝達された動力を、作動油を介して変速装置23に伝達するようになっている。
ロックアップ機構21cは、インプットシャフト22と一体回転可能に連結されている。一般に、トルクコンバータ21は、作動油によってポンプインペラ21iの回転をタービンランナ21tに伝達するため、作動油のスリップ等が原因となり、伝達効率が小さくなる。そのため、ロックアップ機構21cは、伝達効率を増大させるため、クランクシャフト15とインプットシャフト22とを一体的に回転させることができるようになっている。
ロックアップ機構21cにおいては、車速が一定以上となって、ポンプインペラ21iとタービンランナ21tの回転数が近づくと、作動油が図中に点線矢印で示した方向に流れることとなる。作動油は、ロックアップピストン21pを図中左方向に移動させ、ロックアップピストン21pを、クランクシャフト15と連結されたコンバータカバー21kに押し当てる。これにより、ロックアップ機構21cは、クランクシャフト15とインプットシャフト22とを一体的に回転させることにより作動油のスリップを発生させないため、燃費を向上させることができる。なお、トルクコンバータ21の構造は、従来の構造と同様であるため、詳細な説明は省略する。
ロックアップセンサ83は、クランクシャフト15の回転数を検出する第1ロックアップセンサ83aと、インプットシャフト22の回転数を検出する第2ロックアップセンサ83bとを有しており、クランクシャフト15の回転数を表す検出信号と、インプットシャフト22の回転数を表す検出信号とを、ECU100に出力するようになっている。
変速装置23は、第1遊星歯車装置23aと、第2遊星歯車装置23bと、複数の摩擦係合要素としての第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2と、を有している。
第1遊星歯車装置23aは、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、複数個のインナーピニオンギヤP1aと、複数個のアウターピニオンギヤP1bと、第1キャリヤCA1と、を有している。
第1サンギヤS1は、A/T20のケース20aに回転不可能に固定されている。第1リングギヤR1は、第3クラッチC3を介して第1中間ドラムD1に一体回転可能または相対回転可能に支持されるとともに、第1クラッチC1を介して第2中間ドラムD2に一体回転可能または相対回転可能に支持されている。
複数個のインナーピニオンギヤP1aおよび複数個のアウターピニオンギヤP1bは、第1サンギヤS1と第1リングギヤR1とが対向することにより形成される環状空間に複数個介装されている。
それぞれのインナーピニオンギヤP1aは、第1サンギヤS1と、それぞれのアウターピニオンギヤP1bと、に噛合している。また、それぞれのアウターピニオンギヤP1bは、それぞれのインナーピニオンギヤP1aと、第1リングギヤR1と、に噛合している。また、各インナーピニオンギヤP1aおよび各アウターピニオンギヤP1bは、第1キャリヤCA1の支持軸部によって自転可能および公転可能に支持されている。これにより、各インナーピニオンギヤP1aおよび各アウターピニオンギヤP1bは、第1キャリヤCA1の支持軸を回転軸として自転することができるとともに、インプットシャフト22を回転軸として公転することができるようになっている。
なお、インナーピニオンギヤP1aおよびアウターピニオンギヤP1bの自転とは、第1キャリヤCA1の支持軸部を回転軸とした回転であり、公転とは、インプットシャフト22を回転軸とした回転をいうものとする。
第1キャリヤCA1は、各インナーピニオンギヤP1aと、各アウターピニオンギヤP1bとを、支持軸部によって自転可能および公転可能に支持するものである。また、第1キャリヤCA1は、中心軸部がインプットシャフト22に一体的に連結され、各インナーピニオンギヤP1aと、各アウターピニオンギヤP1bとを支持する支持軸部が第4クラッチC4を介して第1中間ドラムD1に一体回転可能または相対回転可能に支持されている。
第1中間ドラムD1は、第1リングギヤR1の外径側に回転可能に配置されており、第3クラッチC3を介して第1リングギヤR1を一体回転可能または相対回転可能に支持し、第4クラッチC4を介して第1キャリヤCA1を一体回転可能または相対回転可能に支持している。また、第1中間ドラムD1は、第1ブレーキB1を介してケース20aに回転不可能または相対回転可能に支持されている。
第2中間ドラムD2は、第1中間ドラムD1の内周側に設けられており、第1クラッチC1を介して第1リングギヤR1を一体回転可能または相対回転可能に支持している。
第2遊星歯車装置23bは、ラビニヨ型の遊星歯車装置を有しており、第2サンギヤS2と、第2サンギヤS2よりも小径の第3サンギヤS3と、第2リングギヤR2と、複数個のロングピニオンギヤP2と、複数個のショートピニオンギヤP3と、第2キャリヤCA2と、ワンウェイクラッチF1と、を備えている。
第2サンギヤS2は、第1中間ドラムD1に連結され、第3クラッチC3を介して第1リングギヤR1に一体回転可能または相対回転可能に連結されるとともに、第4クラッチC4を介して第1キャリヤCA1に一体回転可能または相対回転可能に連結されている。また。第2サンギヤS2は、インプットシャフト22を回転軸として回転可能となっている。
第3サンギヤS3は、第2中間ドラムD2に連結され、第1クラッチC1を介して第1リングギヤR1に一体回転可能または相対回転可能に連結されるとともに、インプットシャフト22を回転軸として回転可能となっている。
第2リングギヤR2は、プロペラシャフト25に連結されるとともに、インプットシャフト22を回転軸として回転可能になっている。
それぞれのロングピニオンギヤP2は、第2サンギヤS2と、それぞれのショートピニオンギヤP3と、第2リングギヤR2と、に噛合している。また、それぞれのショートピニオンギヤP3は、第3サンギヤS3と、それぞれのロングピニオンギヤP2と、に噛合している。
各ロングピニオンギヤP2と、各ショートピニオンギヤP3は、第2サンギヤS2および第3サンギヤS3が第2リングギヤR2と対向することによって形成される環状空間に複数個介装されるとともに、第2キャリヤCA2によって自転可能および公転可能に支持されている。これにより、各ロングピニオンギヤP2および各ショートピニオンギヤP3は、第2キャリヤCA2の支持軸部を回転軸として自転することができるとともに、インプットシャフト22を回転軸として公転することができるようになっている。
第2キャリヤCA2は、各ロングピニオンギヤP2および各ショートピニオンギヤP3を自転可能および公転可能に支持するようになっている。また、第2キャリヤCA2は、中心軸部が第2クラッチC2を介してインプットシャフト22に一体回転可能または相対回転可能に支持されるとともに、各ロングピニオンギヤP2および各ショートピニオンギヤP3を支持する支持軸部が、第1ブレーキB1を介してケース20aに回転不可能または相対回転可能に支持されている。
第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2は、オイルの粘性を利用した湿式多板型の摩擦係合要素によって構成されている。
第1クラッチC1は、第3サンギヤS3が第1リングギヤR1に対して一体回転可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
第2クラッチC2は、第2キャリヤCA2がインプットシャフト22に対して一体回転可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
第3クラッチC3は、第1リングギヤR1が第1中間ドラムD1に対して一体回転可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
第4クラッチC4は、第1キャリヤCA1が第1中間ドラムD1に対して一体回転可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
第1ブレーキB1は、第1中間ドラムD1がA/T20のケース20aに対して相対回転不可能となる係合状態、または相対回転可能な解放状態をとることができるようになっている。
第2ブレーキB2は、第2キャリヤCA2がケース20aに対して相対回転不可能となる係合状態、または相対回転可能となる解放状態をとることができるようになっている。
ワンウェイクラッチF1は、第2キャリヤCA2の一方向のみの回転を許容するようになっている。
ここで、図2(a)および図2(b)に基づいて、各シフトポジションおよび各変速段に対応する第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の作動状態および動力伝達経路について、シフトポジション(および変速段)が後進(R)およびシフトポジションが前進(D)で変速段が1速(1st)の場合を例に説明する。
まず、A/T20におけるシフトポジションが前進(D)で変速段が1速(1st)の場合について説明する。なお、変速段を述べれば、シフトポジションは一意に決定されるので、以下では、特にシフトポジションの説明が必要でない場合には、変速段についてのみ説明する。
図2(b)の作動状態対応マップ400に示すように、変速段が1stの場合には、第1クラッチC1が係合状態となっている。なお、第2ブレーキB2はエンジンブレーキ作動時にのみ係合状態となり、ワンウェイクラッチF1は駆動時にのみ係合状態となる。
まず、トルクコンバータ21を介してインプットシャフト22に入力されたエンジン11の動力は、インプットシャフト22を回転軸として第1キャリヤCA1を回転させる。
また、第1サンギヤS1はケース20aに回転不可能に固定されている。したがって、第1キャリヤCA1の支持軸部に支持されたインナーピニオンギヤP1aおよびアウターピニオンギヤP1bは、第1キャリヤCA1の回転に伴い、第1キャリヤCA1の支持軸を回転軸として自転を行うとともに、インプットシャフト22を回転軸として公転を行うこととなる。この場合、インナーピニオンギヤP1aおよびアウターピニオンギヤP1bの公転方向はインプットシャフト22の回転方向と同一となる。また、インナーピニオンギヤP1aの自転方向はインプットシャフト22の回転方向と同一になり、アウターピニオンギヤP1bの自転方向はインナーピニオンギヤP1aの自転方向とは逆になる。したがって、アウターピニオンギヤP1bは、インプットシャフト22の回転方向と逆の方向に自転することとなる。
これにより、第1リングギヤR1は、第1キャリヤCA1の回転数からアウターピニオンギヤP1bの回転数を差し引いた分だけ、第1キャリヤCA1と同一の方向、すなわちインプットシャフト22と同一の方向に回転することとなる。
次に、第1クラッチC1は係合状態であるので、インプットシャフト22と同一の方向に回転する第1リングギヤR1と、第2中間ドラムD2とが一体的に回転することとなる。したがって、第3サンギヤS3が、第1リングギヤR1の回転方向と同一の方向、すなわち、インプットシャフト22と同一の方向に回転することとなる。
また、第3サンギヤS3と噛合するショートピニオンギヤP3は、第3サンギヤS3と逆の方向に自転し、ショートピニオンギヤP3と噛合するロングピニオンギヤ2が、第2キャリヤCA2の支持軸を回転軸として、ショートピニオンギヤP3の自転方向とは逆の方向に自転する。さらに、ワンウェイクラッチF1が係合状態であることから、第2キャリヤCA2は公転しない。
したがって、ロングピニオンギヤP2と噛合する第2リングギヤR2は、ロングピニオンギヤP2と同一の方向、すなわちショートピニオンギヤP3と逆の方向、言い換えれば、インプットシャフト22と同一の方向に回転することとなる。したがって、第2リングギヤR2の回転が1stに対応するエンジン11の動力として、プロペラシャフト25に出力されることとなる。
次に、A/T20における変速段がRレンジの場合について説明する。
図2(b)の作動状態対応マップ400に示すように、変速段がRレンジの場合には、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合状態となり、第4クラッチC4および第2ブレーキB2以外のクラッチおよびブレーキは解放状態となる。
まず、トルクコンバータ21を介してインプットシャフト22に伝達されたエンジン11の動力は、インプットシャフト22を回転軸として第1キャリヤCA1を回転させる。ここで、第4クラッチC4が係合状態であり、第3クラッチC3および第1ブレーキB1が解放状態であるため、第1キャリヤCA1とともに、第1中間ドラムD1がインプットシャフト22を回転軸として回転する。
また、第1クラッチC1および第3クラッチC3は解放状態であり、第1サンギヤS1はケース20aに回転不可能に固定されている。したがって、第1リングギヤR1および第1キャリヤCA1の支持軸部に支持されたインナーピニオンギヤP1aおよびアウターピニオンギヤP1bは、第1キャリヤCA1の回転に伴い、支持軸部を回転軸として自転を行うとともに、インプットシャフト22を回転軸として公転を行うこととなる。
第1中間ドラムD1がインプットシャフト22を回転軸として、インプットシャフト22と同一の方向に回転するため、第2サンギヤS2もインプットシャフト22を回転軸として、インプットシャフト22と同一の方向に回転することとなる。また、第2ブレーキB2が係合状態であるため、第2ブレーキB2と連結された第2キャリヤCA2は公転しない。
したがって、インプットシャフト22と同一の方向に回転する第2サンギヤS2の回転に伴い、第2サンギヤS2と噛合するロングピニオンギヤP2が第2サンギヤS2とは逆の方向に回転する。したがって、ロングピニオンギヤP2と噛合する第2リングギヤR2は、ロングピニオンギヤP2と同一の方向、すなわち、第2サンギヤS2と逆の回転方向、言い換えれば、インプットシャフト22と逆の方向に回転することとなる。
したがって、インプットシャフト22と逆の方向の回転が、Rレンジに対応するエンジン11の動力として、プロペラシャフト25に出力されることとなる。
なお、ロングピニオンギヤP2の回転により、ロングピニオンギヤP2と噛合するショートピニオンギヤP3が回転したとしても、ショートピニオンギヤP3と噛合する第3サンギヤS3は、第1クラッチC1が解放状態であることにより、第1リングギヤR1の回転に影響を与えることなく、インプットシャフト22を回転軸として回転する。
次に、図3に基づいて、本実施の形態に係る油圧制御装置30の構成について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る油圧制御装置の構成を表す概略ブロック構成図である。
図3に示すように、油圧制御装置30は、リニアソレノイド弁SL1〜SL5と、切替弁Sと、油圧制御回路とを備え、マニュアル弁31によりオイルポンプから供給される油圧の経路が切り替えられるようになっている。また、油圧制御装置30は、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の各作動状態を係合状態と解放状態との間で作動させるための油圧アクチュエータAC1〜AC4、AB1およびAB2を備えている。
ここで、マニュアル弁31は、シフトセンサ81によって入力される検出信号が表すシフトレバー17の切替位置に基づいて、ECU100によって制御されるようになっている。マニュアル弁31は、シフトレバー17の切替位置に対応するシフトポジションとしての、駐車レンジ(Pレンジ)、後進レンジ(Rレンジ)、中立レンジ(Nレンジ)および前進レンジ(Dレンジ)に応じた切替位置を有しており、ECU100によって切替位置を切り替えられることにより、図示しないオイルポンプから供給される油圧を、各シフトポジションに応じて、リニアソレノイド弁SL1〜SL5に供給するようになっている。
油圧制御装置30は、シフトセンサ81によって入力される検出信号および走行状況に応じてECU100に設定された変速段に基づいて、ECU100によって制御されるようになっている。したがって、ECU100は、リニアソレノイド弁SL1〜SL5、切替弁Sおよび図示しないソレノイド弁の作動を制御して、各油圧アクチュエータAC1〜AC4、AB1およびAB2の作動を制御するようになっている。
さらに、油圧制御装置30には、エンジン11(図1参照)により回転駆動させられる図示しないオイルポンプからマニュアル弁31を介して供給されるライン圧PLが供給されるようになっている。各油圧アクチュエータAC1〜AC4、AB1およびAB2に対して供給される油圧は、ライン圧PLが各リニアソレノイド弁SL1〜SL5および切替弁Sによって調圧されることにより、それぞれ油圧PC1、PC2、PC3、PC4、PB1およびPB2となっている。
リニアソレノイド弁SL1〜SL5および切替弁Sは、ECU100によって、互いに独立に励磁および非励磁が切り替えられることによって、開閉を切り替えるようになっている。
このような構成により、油圧制御装置30は、各油圧アクチュエータAC1〜AC4、AB1およびAB2に対する油圧PC1〜PC4、PB1およびPB2を制御することにより、A/T20(図2参照)における第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の係合状態および解放状態を切り替え、A/T20に所定の変速段を成立させることができる。
また、油圧制御装置30は、ECU100に接続された油圧センサ82a、82bおよび82cを有している。
油圧センサ82aは、アクチュエータAC1に供給される油圧PC1を検出する公知の油圧計により構成されている。また、油圧センサ82aは、油圧PC1を検出し、油圧PC1を表す検出信号をECU100に出力するようになっている。
油圧センサ82bは、アクチュエータAB2に供給される油圧PB2を検出する公知の油圧計により構成されている。また、油圧センサ82bは、油圧PB2を検出し、油圧PB2を表す検出信号をECU100に出力するようになっている。
油圧センサ82cは、アクチュエータAC4に供給される油圧PC4を検出する公知の油圧計により構成されている。また、油圧センサ82cは、油圧PC4を検出し、油圧PC4を表す検出信号をECU100に出力するようになっている。
なお、油圧制御装置30は、油圧PC1、油圧PB2および油圧PC4を検出する油圧センサ82a、82bおよび82cを有しているが、これらは単に例示であり、油圧センサの個数、配置箇所、性能等はこれに限定されない。
以下、本実施の形態に係る車両の制御装置の特徴的な構成について説明する。
油圧制御装置30は、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の作動状態を油圧によって制御するようになっている。また、油圧制御装置30は、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の作動状態を、油圧を供給することにより係合状態とし、油圧を解放することにより解放状態とするようになっている。すなわち、油圧制御装置30は、本発明における油圧制御手段を構成している。
ECU100は、シフトレバー17のシフトポジションと車両の走行状態とに基づいて変速段を設定するようになっている。具体的には、ECU100は、シフトセンサ81によって入力された検出信号に基づいて、シフトポジションを検出し、エンジン回転数センサ、車速センサ等によって入力された検出信号に基づいて、走行状態を検出して、この検出したシフトポジションと走行状態とよって変速段を設定するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における変速段設定手段を構成している。
ECU100は、設定した変速段に基づいて動力伝達経路を切り替えるよう油圧制御装置30を制御するようになっている。具体的には、ECU100は、油圧制御装置30を制御して、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の作動状態を変更させ、インプットシャフト22からプロペラシャフト25に至る動力伝達経路を切り替えるようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における変速制御手段を構成している。
ECU100は、第1クラッチC1、第4クラッチC4、第2ブレーキB2の作動状態を、油圧センサ82a、82c、82bから入力した検出信号に基づいて、判定するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における作動状態判定手段を構成している。
ECU100は、上記判定した第1クラッチC1、第4クラッチC4、第2ブレーキB2の作動状態と、シフトセンサ81によって検出されたシフトポジションに基づき設定した変速段における第1クラッチC1、第4クラッチC4、第2ブレーキB2の作動状態と、が対応しているか否かを、作動状態対応マップ400に基づいて判定するようになっている。
例えば、変速段が1速(1st)であるときに、第4クラッチC4の作動状態が、油圧センサ82cから入力した検出信号によると係合状態であったとすると、作動状態対応マップ400を参照すると、1速(1st)における第4クラッチC4は解放状態でなければならないので、対応していないと判定する。また、変速段がRレンジであるときに、第1クラッチC1の作動状態が、油圧センサ82aから入力した検出信号によると係合状態であったとすると、作動状態対応マップ400を参照すると、Rレンジにおける第1クラッチC1は解放状態でなければならないので、対応していないと判定する。すなわち、ECU100は、本発明における作動状態対応判定手段を構成している。
ECU100は、第1クラッチC1、第4クラッチC4、第2ブレーキB2の検出値による作動状態と、作動状態対応マップ400上の作動状態と、が対応していないと判定した場合に、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の作動状態を切り替えてプロペラシャフト25の回転を阻止させるように油圧制御装置30を制御するようになっている。
例えば、変速段がNレンジであるときに、第1クラッチC1の作動状態が係合状態であり、作動状態対応マップ400上の作動状態である解放状態と対応していない場合、この第1クラッチC1の係合状態に加え、第3クラッチC3と第4クラッチC4を油圧制御装置30により係合状態として、プロペラシャフト25の回転を阻止させるようにする。
なお、以下では、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の作動状態を切り替えてプロペラシャフト25の回転を阻止することを内部ロックという。
さらに、ECU100は、シフトセンサ81によって検出されたシフトポジションに対応する切替位置と、マニュアル弁センサ86によって検出された切替位置と、が対応していないと判定した場合に、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1および第2ブレーキB2の作動状態を切り替えて、プロペラシャフト25の回転を阻止させる内部ロックとなるように油圧制御装置30を制御するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における係合制御手段を構成している。
ロックアップ機構21cは、A/T20における動力伝達経路に設けられ、係合状態と解放状態との間で作動状態を切り替えることによって動力の伝達状態を切り替えるようになっている。すなわち、ロックアップ機構21cは、本発明におけるロックアップ機構を構成している。
ロックアップセンサ83は、ロックアップ機構21cの作動状態を検出するようになっている。すなわち、ロックアップセンサ83は、本発明における作動状態検出手段を構成している。
ECU100は、ロックアップセンサ83によって検出されたロックアップ機構21cの作動状態が係合状態である場合には、油圧制御装置30による内部ロックを禁止するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における係合禁止手段を構成している。
FB47L、47R(またはPKB)は、A/T20が搭載された車両10の移動を制限するようになっている。すなわち、FB47L、47R(またはPKB)は、本発明における制動手段を構成している。
ECU100は、FB47L、47R(またはPKB)の制動状態に基づいて、車両10の移動が制限されているか否かを判定するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における制動判定手段を構成している。
ECU100は、車両10の移動がFB47L、47R(またはPKB)によって制限されていると判定した場合には、内部ロックを解除するよう油圧制御装置30を制御するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における係合解除手段を構成している。
マニュアル弁31は、A/T20に設けられ、複数のシフトポジションにそれぞれ対応する複数の切替位置を有し、ECU100により切替位置を切り替えられることによって、油圧制御装置30に供給される油圧を切り替えるようになっている。すなわち、マニュアルバルブ31は、本発明における油圧切替手段を構成している。
シフトセンサ81は、シフトレバー17のシフトポジションを検出するようになっている。すなわち、シフトセンサ81は、本発明におけるシフトポジション検出手段を構成している。
マニュアル弁センサ86は、マニュアル弁31の切替位置を検出するようになっている。すなわち、マニュアル弁センサ86は、本発明における油圧切替位置検出手段を構成している。
ECU100は、シフトセンサ81によって検出されたシフトポジションに対応する切替位置と、マニュアル弁センサ86によって検出された切替位置とが一致しているか否かを判定するようになっている。すなわち、ECU100は、本発明における油圧切替位置判定手段を構成している。
次に、本発明の実施の形態に係る車両の制御装置の動作について、図面を参照して説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態に係る車両の制御処理を示す第1のフローチャートである。
なお、図4に示すフローチャートは、ECU100のCPUによって、RAMを作業領域として実行される車両の制御処理のプログラムの実行内容を表す。この車両の制御処理のプログラムはECU100のEEPROMに記憶されている。また、この車両の制御処理は、ECU100のCPUによって、例えば変速段の切替時に実行される。
図4に示すように、まず、ECU100のCPUは、シフトレバー17(図1参照)の位置が表すシフトポジションおよび車両10の走行状態に基づいて設定した変速段を抽出する(ステップS11)。ここで、ECU100は、シフトセンサ81によって入力された検出信号に基づいて、上記シフトポジションを検出し、図示しないエンジン回転数センサ、車速センサ等によって入力された検出信号に基づいて、上記走行状態を検出する。
次に、ECU100のCPUは、油圧センサ82aによって入力された検出信号に基づいて、第1クラッチC1の作動を油圧により制御するアクチュエータAC1に供給される油圧PC1を検出する(ステップS12)。
次に、ECU100のCPUは、設定した変速段と、油圧センサ82aによって入力された検出信号に基づいて検出した油圧PC1と、に基づいて、第1クラッチC1がON故障の状態であるか否かを判定する(ステップS13)。
具体的には、ECU100のCPUは、シフトセンサ81によって入力された検出信号に基づいて検出したシフトポジションおよび車両10の走行状態によって設定した変速段に基づいて、例えば図2(b)に示す作動状態対応マップ400により、設定した変速段に対応する第1クラッチC1の作動状態を判定する。そして、設定した変速段に対応する第1クラッチC1の作動状態が解放状態である場合に、油圧センサ82aによって入力された検出信号に基づいて検出した油圧PC1が、係合状態に対応する油圧と略等しい場合には、第1クラッチC1はON故障の状態であると判定する。
ECU100のCPUは、第1クラッチC1がON故障の状態ではないと判定した場合には(ステップS13でNo)、本処理を終了する。
一方、ECU100のCPUは、第1クラッチC1がON故障の状態であると判定した場合には(ステップS13でYes)、設定した変速段がNレンジであるか否かを判定する(ステップS14)。この処理ステップでは、上記判定を、シフトセンサ81によって入力された検出信号に基づいて検出したシフトポジションで、Nレンジであるか否かを判定するようにしてもよい。
ECU100のCPUは、シフトセンサ81によって入力された検出信号に基づいて検出した変速段がNレンジではないと判定した場合には(ステップS14でNo)、本処理を終了し、Nレンジであると判定した場合には(ステップS14でYes)、本処理を継続する。
ここで、ECU100のCPUが、設定した変速段がNレンジであると判定した場合に(ステップS14でYes)、本処理を継続するのは、以下の理由による。
すなわち、作動状態対応マップ400に示すように、変速段がNレンジである場合には、係合状態となっているクラッチおよびブレーキは存在しない。しかし、運転者がシフトレバー17によって変速段をNレンジに入れていたとしても、本来解放状態であるべきC1が係合状態のまま保持されると、1stの変速段が成立してしまう。そうすると、運転者はNレンジであると認識しているにもかかわらず、エンジン11の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまうおそれがある。したがって、このような車両の挙動の乱れを、後述する内部ロック操作により防止するため、変速段がNレンジである場合に、本処理を継続することとしている。
ECU100のCPUは、設定した変速段がNレンジであると判定した場合には(ステップS14でYes)、ロックアップ機構21c(図2参照)が、解放状態であるか否かを判定する(ステップS15)。
ECU100のCPUは、ロックアップ機構21cが解放状態ではないと判定した場合には(ステップS15でNo)、本処理を終了し、ロックアップ機構21cが解放状態であると判定した場合には(ステップS15でYes)、本処理を継続して、次のステップ(ステップS16)に進む。
具体的には、ECU100のCPUは、ロックアップセンサ83によって入力された検出信号に基づいて検出したクランクシャフト15の回転数およびインプットシャフト22の回転数に基づいて、ロックアップ機構21cが解放状態であるか否かを判定する。すなわち、インプットシャフト22の回転数がクランクシャフト15の回転数よりも所定量だけ小さい場合には、ロックアップ機構21cにおけるロックアップピストン21pは、コンバータカバー21kに完全には押し当てられておらず、ロックアップ機構21cは解放状態であると判定する。
ここで、ECU100のCPUが、ロックアップ機構21cが解放状態であると判定した場合に(ステップS15でYes)、本処理を継続するのは、以下の理由による。
すなわち、後述する内部ロックを行った場合には、A/T20における動力の伝達が禁止され、インプットシャフト22の回転が禁止されることとなる。インプットシャフト22の回転が禁止された場合に、ロックアップ機構21cが係合状態であると、コンバータカバー21kがロックアップピストン21pの係合によりインプットシャフト22と一体的に連結されているので、クランクシャフト15に出力されたエンジン11の動力は、伝達先であるコンバータカバー21kを回転させることができず、エンジン11が停止してしまう。
したがって、ECU100のCPUは、エンジン11を停止させることなく内部ロックを行うために、ロックアップ機構21cが解放状態であると判定した場合に(ステップS15でYes)、本処理を継続することとしている。
ECU100のCPUは、ロックアップ機構21cが解放状態であると判定した後(ステップS15でYes)、A/T20において内部ロックを行う(ステップS16)。
ここで、内部ロックの実行処理(ステップS16)においては、第1クラッチC1がON故障の状態であり(ステップS13でYes)、設定した変速段はNレンジとなっている(ステップS14でYes)。したがって、作動状態対応マップを参照すると、実質的には、1stの変速段が成立していることとなる。
したがって、車両10を停止させるために、運転者はシフトレバー17(図1参照)によって変速段をNレンジに切り替えたつもりでも(ステップS14でYes)、第1クラッチC1がON故障の状態となることにより(ステップS13でYes)、1stの変速段が成立しているので、運転者の意図に反してエンジン11の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまうおそれがある。
ECU100のCPUは、このような車両10の挙動の乱れを防止するために、以下に述べる内部ロックを行うこととしている。
具体的には、ECU100のCPUは、油圧制御装置30を制御することによって、ON故障となっている第1クラッチC1を含めた少なくとも3つの係合要素を強制的に係合させる。
例えば、ECU100のCPUは、油圧制御装置30におけるリニアソレノイドSL3およびSL4を制御することにより、第3クラッチC3および第4クラッチC4(図3参照)を強制的に係合させる。
第3クラッチC3および第4クラッチC4が係合状態となることによって、結果として、第1クラッチC1、第3クラッチC3および第4クラッチC4が係合状態となる。
したがって、図2(a)において、第1クラッチC1、第3クラッチC3および第4クラッチC4が係合状態となっていることにより、第1キャリヤCA1と第1リングギヤR1とが一体的に回転することとなる。
第1キャリヤCA1と第1リングギヤR1とが一体的に回転すると、インナーピニオンギヤP1aおよびアウターピニオンギヤP1bは、第1キャリヤCA1および第1リングギヤR1に対して相対回転しない状態となる。すなわち、第1リングギヤR1とアウターピニオンギヤP1bとは、所定の位置でかみ合ったまま相対的に動かず、一体的に回転する。また、インナーピニオンギヤP1aは、同様に、第1リングギヤR1およびアウターピニオンギヤP1bと一体回転するため、インナーピニオンギヤP1aの第1サンギヤS1側の歯は、常に同一のものとなる。ここで、第1サンギヤS1は、A/T20のケース20aに回転不可能に固定されている。
したがって、第1キャリヤCA1および第1リングギヤR1が回転不可能となり、第2遊星歯車装置23bを介して第1キャリヤCA1および第1リングギヤR1の回転が伝達されるプロペラシャフト25は、回転しない。すなわち、ECU100のCPUは、油圧制御装置30を制御することにより、第3クラッチC3および第4クラッチC4を係合させ、プロペラシャフト25の回転を阻止させる内部ロックの状態とすることができる。
ECU100のCPUは、A/T20について内部ロックを行うことにより(ステップS16)、エンジン11の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されることを防止するので、変速段がNレンジであって(ステップS14でYes)、第1クラッチC1がON故障の状態である場合においても(ステップS13でYes)、運転者の意図に反するエンジン11の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまうことを防止することができる。
ECU100のCPUは、A/T20について内部ロックを行った後(ステップS16)、FBまたはPKBがONであるか否かを判定する(ステップS17)。
具体的には、ECU100のCPUは、車室内に設けられたフットブレーキペダルのストロークを、FBセンサ84によって入力された検出信号に基づいて検出し、FBセンサ84の検出信号が表すフットブレーキペダルのストロークが、予め定められた所定値以上であれば、FBがONであると判定する(ステップS17でYes)。あるいは、ECU100のCPUは、車室内に設けられたパーキングブレーキペダルのストロークを、PKBセンサ85によって入力された検出信号に基づいて検出し、PKBセンサ85の検出信号が表すパーキングブレーキペダルのストロークが、予め定められた所定値以上であれば、PKBがONであると判定する。
なお、FBまたはPKBがONか否かの判定処理(ステップS17)においては、プロペラシャフト25(図1参照)の回転を機械的に制限する図示しないパーキングロック機構がロック状態であるか否かを判定するようにしてもよい。
ECU100のCPUは、FBまたはPKBがONであると判定した場合には(ステップS17でYes)、次のステップ(ステップS18)に進み、FBおよびPKBがOFFであると判定した場合には(ステップS17でNo)、本処理を終了する。
ECU100のCPUは、FBまたはPKBがONであると判定した場合には(ステップS17でYes)、A/T20における内部ロックを解除して(ステップS18)、本処理を終了する。
ここで、ECU100のCPUが、FBまたはPKBがONであると判定した場合に(ステップS17でYes)、A/T20における内部ロックを解除するのは(ステップS18)、以下の理由による。
すなわち、ECU100のCPUがA/T20における内部ロックを行うのは(ステップS16)、変速段がNレンジである場合であって(ステップS14でYes)、第1クラッチC1がON故障の状態であるために(ステップS13でYes)、エンジン11の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されることによって、運転者の意図に反してエンジン11の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまうことを防止するためである。
したがって、FBまたはPKBによって、車両10の駆動が制限されていれば(ステップS17でYes)、内部ロックを解除してエンジン11の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまっても車両10の発進が防止される。そのため、ECU100のCPUは、FBまたはPKBがONであると判定した場合に(ステップS17でYes)、A/T20における内部ロックを解除することとしている(ステップS18)。
次に、シフトポジションがRレンジからDレンジに切り替えられた場合における、本実施の形態に係る車両の制御処理を図5に示す。図5は、本発明の第1の実施の形態に係る車両の制御処理を示す第2のフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、ECU100のCPUによって、RAMを作業領域として実行される車両の制御処理のプログラムの実行内容を表す。この車両の制御処理のプログラムはECU100のEEPROMに記憶されている。また、この車両の制御処理は、ECU100のCPUによって、例えば、シフトポジションの切替時に実行される。
図5に示すように、まず、ECU100のCPUは、シフトセンサ81(図1参照)によって入力された検出信号により検出したシフトレバー17の位置が表すシフトポジションおよび車両10の走行状態に基づいて設定した変速段を抽出する(ステップS21)。
次に、ECU100のCPUは、設定した変速段(ステップS21)が、Dレンジであるか否かを判定する(ステップS22)。
ECU100のCPUは、設定した変速段がDレンジではないと判定した場合には(ステップS22でNo)、本処理を終了する。
ECU100のCPUは、設定した変速段がDレンジであると判定した場合には(ステップS22でYes)、設定したDレンジが、予め定められた時間内にRレンジから切り替えられたものであるか否かを判定する(ステップS23)。
ECU100のCPUは、設定したDレンジが、予め定められた時間内にRレンジから切り替えられたものではないと判定した場合には(ステップS23でNo)、本処理を終了する。
ECU100のCPUは、設定したDレンジが、予め定められた時間内にRレンジから切り替えられたものであると判定した場合には(ステップS23でYes)、第4クラッチC4の作動を油圧により制御するアクチュエータAC4に供給される油圧PC4、および第2ブレーキB2の作動を油圧により制御するアクチュエータAB2に供給される油圧PB2を検出する(ステップS24)。
具体的には、ECU100のCPUは、油圧PC4を油圧センサ82cによって入力された検出信号に基づいて検出し、油圧PB2を油圧センサ82bによって入力された検出信号に基づいて検出する(図3参照)。
次に、ECU100のCPUは、設定した変速段と(ステップS21)、油圧センサ82cによって入力された検出信号に基づいて検出した油圧PC4および油圧センサ82bによって入力された検出信号に基づいて検出した油圧PB2と、に基づいて、第4クラッチC4および第2ブレーキB2がON故障の状態であるか否かを判定する(ステップS25)。
ECU100のCPUは、第4クラッチC4および第2ブレーキB2がON故障の状態ではないと判定した場合には(ステップS25でNo)、本処理を終了する。
ECU100のCPUは、第4クラッチC4および第2ブレーキB2がON故障の状態であると判定した場合には(ステップS25でYes)、ロックアップ機構21cが解放状態であるかを確認する(ステップS26)。
ECU100のCPUは、ロックアップ機構21cが解放状態であるか否かを確認する処理(ステップS26)以降の処理(ステップS26からステップS29)については、図4に示すフローチャートと同様の処理(ステップS15からステップS18)により、A/T20における内部ロックを行い、本処理を終了する。
ここで、ECU100のCPUが、変速段がDレンジであって(ステップS22でYes)、そのDレンジが、所定時間内にRレンジから切り替えられたレンジであって(ステップS23でYes)、かつ、第4クラッチC4および第2ブレーキB2がON故障の状態である場合に(ステップS25でYes)、A/T20における内部ロックを行うのは、以下の理由による。
すなわち、ECU100のCPUは、変速段がRレンジからDレンジに切り替えられた場合には、Rレンジにおいて係合状態であった第4クラッチC4および第2ブレーキB2を解放状態に移行させるとともに、Rレンジにおいて解放状態であった第1クラッチC1を係合状態に移行させる(図2(b)参照)。
したがって、第1クラッチC1が、解放状態から係合状態に到達するまでには、一定の時間がかかる。そのため、通常であれば、この時間においては、第1クラッチC1、第4クラッチC4および第2ブレーキB2がそれぞれ解放状態となり、動力の伝達は行われない。
しかし、第4クラッチC4および第2ブレーキB2がON故障の状態である場合には(ステップS25でYes)、第1クラッチC1が係合状態に到達するまでの一定の時間において、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合状態となっていることから、実質的にはRレンジで動力の伝達が行われ得る状態となる。
したがって、第1クラッチC1が係合状態になるまでの間には、シフトレバー17によってシフトポジションをDレンジに変更したにもかかわらず、後進方向の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまうおそれがある。そのためECU100のCPUは、このような車両10の挙動の乱れを防止するために、第4クラッチC4および第2ブレーキB2がON故障の状態である場合に(ステップS25でYes)、例えば第3クラッチC3を強制的に係合状態にすることによってA/T20における内部ロックを行うこととしている。
また、シフトポジションがDレンジからRレンジに切り替えられた場合における、本実施の形態に係る車両の制御処理を図6に示す。図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両の制御処理を示す第3のフローチャートである。
なお、図6に示すフローチャートは、ECU100のCPUによって、RAMを作業領域として実行される車両の制御処理のプログラムの実行内容を表す。この車両の制御処理のプログラムはECU100のEEPROMに記憶されている。また、この車両の制御処理は、ECU100のCPUによって、例えば、シフトポジションの切替時に実行される。
図6に示すように、まず、ECU100のCPUは、シフトセンサ81(図1参照)によって入力された検出信号により検出したシフトレバー17の位置が表すシフトポジションおよび車両10の走行状態に基づいて設定した変速段を抽出する(ステップS31)。
次に、ECU100のCPUは、設定した変速段(ステップS31)が、Rレンジであるか否かを判定する(ステップS32)。
ECU100のCPUは、設定した変速段がRレンジではないと判定した場合には(ステップS32でNo)、本処理を終了する。
ECU100のCPUは、設定した変速段がRレンジであると判定した場合には(ステップS32でYes)、設定したRレンジが、予め定められた時間内にDレンジから切り替えられたものであるか否かを判定する(ステップS33)。
ECU100のCPUは、設定したRレンジが、予め定められた時間内にDレンジから切り替えられたものではないと判定した場合には(ステップS33でNo)、本処理を終了する。
ECU100のCPUは、設定したRレンジが、予め定められた時間内にDレンジから切り替えられたものであると判定した場合には(ステップS33でYes)、第1クラッチC1の作動を油圧により制御するアクチュエータAC1に供給される油圧PC1を検出する(ステップS34)。
具体的には、ECU100のCPUは、油圧PC1を油圧センサ82aによって入力された検出信号に基づいて検出する(図3参照)。
次に、ECU100のCPUは、設定した変速段と(ステップS31)、油圧センサ82aによって入力された検出信号に基づいて検出した油圧PC1と、に基づいて、第1クラッチC1がON故障の状態であるか否かを判定する(ステップS35)。
ECU100のCPUは、第1クラッチC1がON故障の状態ではないと判定した場合には(ステップS35でNo)、本処理を終了し、第1クラッチC1がON故障の状態であると判定した場合には(ステップS35でYes)、本処理を継続して、次のステップ(ステップS36)に進む。
ECU100のCPUは、第1クラッチC1がON故障の状態であると判定した場合には(ステップS35でYes)、ロックアップ機構21cが解放状態であるか否かを確認する(ステップS36)。
ECU100のCPUは、ロックアップ機構21cが解放状態であるか否かを確認する処理(ステップS36)以降の処理(ステップS36からステップS39)については、図4に示すフローチャートと同様の処理(ステップS15からステップS18)により、A/T20における内部ロックを行い、本処理を終了する。
ここで、ECU100のCPUが、変速段がRレンジであって(ステップS32でYes)、そのRレンジが、所定時間内にDレンジから切り替えられたレンジであって(ステップS33でYes)、かつ、第1クラッチC1がON故障の状態である場合に(ステップS35でYes)、A/T20における内部ロックを行うのは、以下の理由による。
すなわち、ECU100のCPUは、変速段がDレンジからRレンジに切り替えられた場合には、Dレンジにおいて係合状態であった第1クラッチC1を解放状態に移行させるとともに、Dレンジにおいて解放状態であった第4クラッチC4および第2ブレーキB2を係合状態に移行させる(図2(b)参照)。
ここで、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が、解放状態から係合状態に到達するまでには、一定の時間がかかる。そのため、通常であれば、この時間においては、第1クラッチC1、第4クラッチC4および第2ブレーキB2がそれぞれ解放状態となり、動力の伝達は行われない。
しかし、第1クラッチC1がON故障の状態である場合には(ステップS35でYes)、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合状態に到達するまでの間は、実質的にはDレンジが成立したままの状態となる。
したがって、第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合状態に到達するまでの一定の時間においては、シフトレバー17によってシフトポジションをRレンジに変更したにもかかわらず、前進方向の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまうおそれがある。そのためECU100のCPUは、このような車両10の挙動の乱れを防止するために、第1クラッチC1がON故障の状態である場合に(ステップS35でYes)、例えば第2クラッチC2および第3クラッチC3を強制的に係合状態にすることによってA/T20における内部ロックを行うこととしている。
なお、本実施の形態における、クラッチまたはブレーキのON故障の判定(ステップS13、ステップS25およびステップS35)においては、マニュアル弁センサ86の検出信号が表すマニュアル弁31の切替位置に対応するシフトポジションが、シフトセンサ81の検出信号が表すシフトレバー17の切替位置に対応するシフトポジションと異なるか否かを判定するようにしてもよい。
すなわち、シフトセンサ81の検出信号に基づくシフトポジションがNレンジであるにもかかわらず、マニュアル弁センサ86の検出信号に基づくシフトポジションがDレンジであるような場合には、実質的に、第1クラッチC1のON故障の場合(ステップS13、ステップS25およびステップS35でそれぞれYes)と同様の影響が生じることとなるためである。
以上のように、本実施の形態に係る車両の制御装置は、第1クラッチC1がON故障の状態であって、変速段がNレンジである場合に、A/T20における内部ロックを行うことができるので、変速段がNレンジであるにもかかわらずエンジン11の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまうといった運転者の意図しない車両の挙動の乱れを防止することにより、変速機の故障時におけるドライバビリティを向上させることができる。
また、本実施の形態に係る車両の制御装置は、シフトポジションがRレンジからDレンジに切り替えられた場合であって、第4クラッチC4および第2ブレーキB2がON故障の状態である場合には、A/T20における内部ロックを行うことができるので、シフトポジションがDレンジであるにもかかわらず後進方向の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまうといった運転者の意図しない車両の挙動の乱れを防止することにより、変速機の故障時におけるドライバビリティを向上させることができる。
また、本実施の形態に係る車両の制御装置は、シフトポジションがDレンジからRレンジに切り替えられた場合であって、第1クラッチがON故障の状態である場合には、A/T20における内部ロックを行うことができるので、シフトポジションがRレンジであるにもかかわらず前進方向の動力が駆動輪45L、45Rに伝達されてしまうといった運転者の意図しない車両10の挙動の乱れを防止することにより、変速機の故障時におけるドライバビリティを向上させることができる。
また、本実施の形態に係る車両の制御装置は、ロックアップ機構21cが解放状態であることを条件に、A/T20における内部ロックを行うことができるので、エンストを発生させずに内部ロックを行うことができる。
さらに、本実施の形態に係る車両の制御装置は、A/T20における内部ロックを行った後、FBまたはPKBがONであることを条件に、内部ロックを解除することができるので、運転者の意図しない車両10の挙動の乱れを防止することができるとともに、A/T20における内部ロックの状態が継続することによって、例えば、トルクコンバータ21の内部における作動油とポンプインペラ21iとの摩擦で作動油の温度が上昇し、作動油が劣化してしまうことを防止することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る車両の制御装置について、図面を参照して説明する。
まず、構成について説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態に係る車両の制御装置を搭載した車両の概略ブロック構成図である。本実施の形態は、本発明の車両の制御装置を、無段変速機を搭載した車両に適用したものである。
図7に示すように、車両210は、動力源としてのエンジン205と、エンジン205により出力された動力を伝達するトランスアクスル220と、車両210を駆動させる駆動輪275L、275Rと、車両210全体を制御するためのECU300と、トランスアクスル220内の各部の油圧を制御する油圧制御装置320と、を備えている。
エンジン205は、動力を出力し、出力した動力によりクランクシャフト206を回転させることにより、動力をトランスアクスル220に出力するようになっている。なお、エンジン205の構成は、上記実施の形態のエンジン11の構成と同様のものであるので、説明を省略する。
トランスアクスル220は、クランクシャフト206の回転により伝達されたエンジン205の動力を入力し、入出力間の変速を行って、駆動軸としてのドライブシャフト273L、273Rに動力を伝達するようになっている。トランスアクスル220の詳細については、後述する。
駆動輪275L、275Rは、駆動軸としてのドライブシャフト273L、273Rによって伝達された動力を利用して回転することにより、路面との摩擦作用によって車両210を駆動させるようになっている。なお、駆動輪275L、275Rは、車室内に設けられた図示しないフットブレーキペダルによって操作されるFB274L、274Rによって、制動されるようになっている。また、駆動輪275L、275Rは、車室内に設けられた図示しないパーキングブレーキペダルによって操作されるPKBによって制動されるようになっていてもよい。
油圧制御装置320は、複数のソレノイド弁を有し、ECU300によって制御され、トランスアクスル220内に設けられた後述する摩擦係合要素を、油圧により制御するとともに、トランスアクスル220内の各潤滑部に対して、潤滑油を供給するようになっている。また、油圧制御装置320には、油圧センサ282が設けられている。油圧センサ282は、後述する摩擦係合要素を制御するための油圧を検出して、この検出した油圧を表す検出信号をECU300に出力するようになっている。
トランスアクスル220の摩擦係合要素は、油圧制御装置320の各ソレノイド弁の作動状態に応じて、係合状態あるいは解放状態のいずれかに切り替えられるようになっている。これらの摩擦係合要素の係合状態および解放状態の組み合わせに応じて、後述するトランスアクスル220の前後進切替装置240の駆動状態が切り替えられ、前進方向の駆動状態と後進方向の駆動状態とが切り替えられるようになっている。さらに、上記ソレノイド弁は、ECU300の制御によって、トランスアクスル220の摩擦係合要素の係合力を決定する油圧の大きさも制御することができるようになっている。
ECU300は、図示しない中央演算処理装置としてのCPU、RAM、EEPROM、および入出力インターフェースを有している。また、ECU300は、シフトセンサ281、油圧センサ282、ロックアップセンサ283、FBセンサ284およびPKBセンサ285等に接続されている。なお、これらのセンサの構成については、第1の実施の形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
また、ECU300は、油圧制御装置320を制御することによって、トランスアクスル220の各部の油圧を制御するようになっている。
さらに、ECU300は、上記第1の実施の形態のECU100におけるA/T20の制御の代わりに、トランスアクスル220を制御するようになっており、他の機能については、上記実施の形態のECU100と同様の機能を有している。
トランスアクスル220は、エンジン205により出力された動力を、作動油を仲介して伝達させるトルクコンバータ230と、トルクコンバータ230から伝達された動力を前進方向の駆動状態と後進方向の駆動状態とに切り替える前後進切替装置240と、入出力間の変速を無段階で行うベルト式無段変速機(以下、単に「CVT」という)250と、CVT250で変速された回転を減速するファイナルギヤ260と、左右のトルク分配を行うディファレンシャル機構270と、を備えている。
トルクコンバータ230は、エンジン205と前後進切替装置240との間に配置されており、上記実施の形態と同様に、エンジン205から入力したエンジンの動力を、インプットシャフト241を介して、前後進切替装置240に伝達させるようになっている。なお、トルクコンバータ230の構成は、第1の実施の形態におけるトルクコンバータ21と同様であるため、詳細な説明は省略する。
前後進切替装置240は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置によって構成されており、サンギヤ242sはインプットシャフト241に連結され、キャリヤ242cはプライマリシャフト243に連結されている。
そして、キャリヤ242cとサンギヤ242sとの間に配設された前進クラッチ244が係合状態になると、インプットシャフト241がプライマリシャフト243と一体回転し、前進方向の駆動力が駆動輪275L、275Rに伝達される。なお、前後進切替装置240が前進方向の駆動力を伝達する状態に対応する変速段は、前進レンジ(Dレンジ)である。
また、リングギヤ242rとハウジング245との間に配設された後進ブレーキ246が係合状態になるとともに前進クラッチ244が解放状態になると、プライマリシャフト243はインプットシャフト241に対して逆回転させられ、後進方向の駆動力が駆動輪275L、275Rに伝達される。なお、前後進切替装置240が後進方向の駆動力を伝達する状態に対応する変速段は、後進レンジ(Rレンジ)である。また、前後進切替装置240において、前進クラッチ244および後進ブレーキ246のいずれもが解放状態である場合に対応する変速段は、中立レンジ(Nレンジ)である。
なお、前進クラッチ244は、例えば、第1の実施の形態における第1クラッチC1と同様の構成となっており、後進ブレーキ246は、例えば、第1の実施の形態における第1ブレーキB1と同様の構成となっている。
CVT250は、プライマリシャフト243に連結された有効径が可変のプライマリプーリ251と、セカンダリシャフト259に設けられた有効径が可変のセカンダリプーリ255と、プライマリプーリ251およびセカンダリプーリ255のそれぞれに形成されたV溝に巻き掛けられた伝動ベルト258と、を有している。また、CVT250は、動力伝達要素として機能する伝動ベルト258に対して、プライマリプーリ251およびセカンダリプーリ255のV溝の内壁面との間の摩擦力を利用して、動力を伝達するようになっている。
具体的には、プライマリプーリ251は、互いに対向して対向面によってV溝を形成する可動シーブ252aと、固定シーブ252bとを有しており、可動シーブ252aと固定シーブ252bとにより形成されるV溝に伝動ベルト258が巻き掛けられている。
また、セカンダリプーリ255は、互いに対向して対向面によってV溝を形成する可動シーブ256aと固定シーブ256bとを備えており、可動シーブ256aと固定シーブ256bとにより形成されるV溝に伝動ベルト258が巻き掛けられている。
プライマリプーリ251およびセカンダリプーリ255は、それぞれのV溝幅、すなわち伝動ベルト258の掛かり径を変更するための可動シーブ252aに形成された入力側油圧シリンダ253、および可動シーブ256aに形成された出力側油圧シリンダ257を有している。
CVT250は、可動シーブ252aの入力側油圧シリンダ253に供給、あるいは、入力側油圧シリンダ253から排出される作動油の流量が油圧制御装置320によって制御されることにより、プライマリプーリ251およびセカンダリプーリ255のV溝幅を変化させて、伝動ベルト258の掛かり径(有効径)を変更するようになっている。
したがって、本実施の形態におけるCVT250は、変速比γ(=プライマリシャフト243の実際の回転数NIN/セカンダリシャフト259の実際の回転数NOUT)を連続的、すなわち無段階に変化させることができる。
また、可動シーブ252aの入力側油圧シリンダ253内の油圧PBは、セカンダリプーリ255の伝動ベルト258に対する挟圧力および伝動ベルト258の張力にそれぞれ対応するものであって、伝動ベルト258の張力、すなわち、伝動ベルト258のプライマリプーリ251およびセカンダリプーリ255のV溝内壁面に対する押圧力に密接に関係しているので、ベルト張力制御圧、ベルト挟圧力制御圧、ベルト押圧力制御圧とも称され得るものであり、伝動ベルト258が滑りを生じないように、図示しない油圧制御回路内の挟圧力制御弁により調圧されるようになっている。
ファイナルギヤ260は、セカンダリシャフト259から動力を入力し、CVT250で変速された回転を減速して、ディファレンシャル機構270に伝達するようになっている。
ディファレンシャル機構270は、ファイナルギヤ260によって伝達された動力を、左右の駆動輪275L、275Rの回転速度差を吸収して、ドライブシャフト273L、273Rに伝達するようになっている。なお、ディファレンシャル機構270は左右の駆動輪275L、275Rの回転速度差を吸収しない状態、すなわちデフロック状態をとることができるものであってもよい。
次に、動作について説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る車両の制御処理を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、ECU300のCPUによって、RAMを作業領域として実行される車両の制御処理のプログラムの実行内容を表す。この車両の制御処理のプログラムはECU300のEEPROMに記憶されている。また、この車両の制御処理は、ECU300のCPUによって、例えば、シフトポジションの切替時に実行される。
なお、本実施の形態においては、上記第1の実施の形態の自動変速機のように、同一のシフトポジション(Dレンジ)において、摩擦係合要素(前進クラッチ244、後進ブレーキ246)の作動状態を切り替えて、変速段を変更することはないので、変速段の区別による制御は、シフトポジションの区別における制御と置き換えることができる。したがって、本実施の形態においては、変速段の区別による制御は、シフトポジションの区別における制御として行うものとする。
図8に示すように、まず、ECU300のCPUは、シフトセンサ281によって入力された検出信号に基づいて、図示しないシフトレバーの位置が表すシフトポジションを検出する(ステップS41)。
次に、ECU300のCPUは、油圧センサ282(図7参照)によって入力された検出信号に基づいて、前進クラッチ244の作動を油圧により制御する図示しないアクチュエータに供給される油圧PDおよび後進ブレーキ246の作動を油圧により制御する図示しないアクチュエータに供給される油圧PRを検出する(ステップS42)。
次に、ECU300のCPUは、シフトセンサ281によって入力された検出信号に基づいて検出したシフトポジションと、油圧センサ282によって入力された検出信号に基づいて検出した油圧PDおよび油圧PRと、に基づいて、前進クラッチ244がON故障の状態であるか否かを判定する(ステップS43)。
例えば、シフトセンサ281によって入力された検出信号に基づいて検出したシフトポジションがNレンジである場合には、前進クラッチ244は解放状態となっていることが必要であるが、油圧センサ282によって入力された検出信号に基づいて検出したPDに対応する前進クラッチ244の作動状態が係合状態である場合には、前進クラッチ244がON故障の状態であると判定する(ステップS43でYes)。
一方、前進クラッチ244の作動状態が、検出したシフトポジションに対応する作動状態と一致している場合には、ECU300のCPUは、前進クラッチ244がON故障の状態であるとは判定しない(ステップS43でNo)。
ECU300のCPUは、前進クラッチ244がON故障の状態ではないと判定した場合には(ステップS43でNo)、本処理を終了する。
ECU300のCPUは、前進クラッチ244がON故障の状態であると判定した場合には(ステップS43でYes)、シフトセンサ281によって入力された検出信号に基づいて検出したシフトポジションがNレンジであるか否かを判定する(ステップS44)。
ECU300のCPUは、検出したシフトポジションがNレンジではないと判定した場合には(ステップS44でNo)、本処理を終了し、Nレンジであると判定した場合には(ステップS44でYes)、本処理を継続して次のステップ(ステップS45)に進む。
ここで、ECU300のCPUが、検出したシフトポジションがNレンジであると判定した場合に(ステップS44でYes)、本処理を継続するのは、以下の理由による。
すなわち、シフトポジションがNレンジである場合には、前進クラッチ244および後進ブレーキ246が解放状態となっていると考えられる。しかし、図示しないシフトレバーによって運転者がシフトポジションをNレンジに入れていたとしても、本来解放状態であるべき前進クラッチ244が係合状態のまま保持されると、Dレンジが成立してしまう。そうすると、運転者はNレンジであると認識しているにもかかわらず、前進方向の動力が駆動輪275L、275Rに伝達されてしまうおそれがある。したがって、このような車両の挙動の乱れを、内部ロック操作により防止するため、シフトポジションがNレンジである場合に、本処理を継続することとしている。
ECU300のCPUは、検出したシフトポジションがNレンジであると判定した場合には(ステップS44でYes)、ロックアップ機構(図2(a)参照)が、解放状態であるか否かを判定する(ステップS45)。
ECU300のCPUは、ロックアップ機構が解放状態ではないと判定した場合には(ステップS45でNo)、本処理を終了し、ロックアップ機構が解放状態であると判定した場合には(ステップS45でYes)、本処理を継続して、次のステップ(ステップS46)に進む。
具体的には、ECU300のCPUは、ロックアップセンサ283によって入力された検出信号に基づいて検出したクランクシャフト206の回転数およびインプットシャフト241の回転数に基づいて、ロックアップ機構が解放状態であるか否かを判定する(ステップS45)。すなわち、インプットシャフト241の回転数がクランクシャフト206の回転数よりも所定量だけ小さい場合には、ロックアップ機構におけるロックアップピストンは、コンバータカバーに完全には押し当てられておらず、ロックアップ機構は解放状態であると判定する。
ここで、ECU300のCPUが、ロックアップ機構が解放状態であると判定した場合に(ステップS45でYes)、本処理を継続するのは、以下の理由による。
すなわち、内部ロックを行った場合には前後進切替装置240における動力の伝達が禁止されるので、インプットシャフト241の回転が禁止されることとなる。インプットシャフト241の回転が禁止された場合に、ロックアップ機構が係合状態であると、コンバータカバーがロックアップピストンの係合によりインプットシャフト241と一体的に連結されているので、クランクシャフト206に出力されたエンジン205の動力は、伝達先であるコンバータカバーを回転させることができず、エンジン205が停止してしまう。したがって、ECU300のCPUは、ロックアップ機構が解放状態であると判定した場合に(ステップS45でYes)、本処理を継続することとしている。
ECU300のCPUは、ロックアップ機構が解放状態であると判定した後(ステップS45でYes)、前後進切替装置240において内部ロックを行う(ステップS46)。
ここで、内部ロックを行う処理(ステップS46)においては、前進クラッチ244がON故障の状態であり(ステップS43でYes)、検出したシフトポジションはNレンジとなっている(ステップS44でYes)。したがって、実質的には、Dレンジが成立していることとなる。
したがって、車両210を停止させるために、運転者はシフトレバーによってシフトポジションをNレンジに切り替えたつもりでも(ステップS44でYes)、前進クラッチ244がON故障の状態となって(ステップS43でYes)、Dレンジが成立しているので、運転者の意図に反して前進方向の動力が駆動輪275L、275Rに伝達されてしまうおそれがある。
ECU300のCPUは、このような車両210の挙動の乱れを防止するために、以下に述べる内部ロックを行うこととしている。
具体的には、ECU300のCPUは、油圧制御装置320を制御することによって、ON故障となっている前進クラッチ244および、解放状態である後進ブレーキ246を強制的に係合させる。
前進クラッチ244および後進ブレーキ246が係合状態である場合には、サンギヤ242sはインプットシャフト241と一体回転し、キャリヤ242cは前進クラッチ244を介してインプットシャフト241から伝達される動力によりインプットシャフト241と一体回転する。したがって、インプットシャフト241、サンギヤ242s、前進クラッチ244、キャリヤ242c、リングギヤ242r、およびリングギヤ242rとサンギヤ242sとの間に介装される複数のインナーピニオンギヤおよび複数のアウターピニオンギヤは、一体回転することとなる。
しかし、後進ブレーキ246が係合状態であることによって、リングギヤ242rの回転が禁止されているので、インプットシャフト241、サンギヤ242s、前進クラッチ244、キャリヤ242c、リングギヤ242r、およびリングギヤ242rとサンギヤ242sとの間に介装される複数のインナーピニオンギヤおよび複数のアウターピニオンギヤは、回転することができず、内部ロックの状態となる。
ECU300のCPUは、前後進切替装置240について内部ロックを行うことにより(ステップS46)、エンジン205の動力が駆動輪275L、275Rに伝達されることを防止するので、シフトポジションがNレンジであって(ステップS44でYes)、前進クラッチがON故障となっている場合においても(ステップS43でYes)、運転者の意図に反してエンジン205の動力が駆動輪275L、275Rに伝達されてしまうおそれを排除することができる。
ECU300のCPUは、前後進切替装置240について内部ロックを行った後(ステップS46)、FBまたはPKBがONであるか否かを判定する(ステップS47)。
具体的には、ECU300のCPUは、車室内に設けられた図示しないフットブレーキペダルのストロークを、FBセンサ284によって入力された検出信号に基づいて検出し、FBセンサ284の検出信号が表すフットブレーキペダルのストロークが、予め定められた所定値以上であれば、FBがONであると判定する(ステップS47でYes)。または、ECU300のCPUは、車室内に設けられたパーキングブレーキペダルのストロークを、PKBセンサ285によって入力された検出信号に基づいて検出し、PKBセンサ285の検出信号が表すパーキングブレーキペダルのストロークが、予め定められた所定値以上であれば、PKBがONであると判定する(ステップS47でYes)。
ECU300のCPUは、FBまたはPKBがONであると判定した場合には(ステップS47でYes)、次のステップ(ステップS48)に進み、FBおよびPKBがOFFであると判定した場合には(ステップS47でNo)、内部ロックを行う処理(ステップS46)に戻る。
ECU300のCPUは、FBまたはPKBがONであると判定した場合には(ステップS47でYes)、前後進切替装置240における内部ロックを解除して(ステップS48)、本処理を終了する。
ここで、ECU300のCPUが、FBまたはPKBがONであると判定した場合に(ステップS47でYes)、前後進切替装置240における内部ロックを解除するのは(ステップS48)、以下の理由による。
すなわち、ECU300のCPUが前後進切替装置240における内部ロックを行うのは(ステップS46)、シフトポジションがNレンジである場合であって(ステップS44でYes)、前進クラッチ244がON故障の状態であることにより(ステップS43でYes)、エンジン205の動力が駆動輪275L、275Rに伝達されるおそれを排除するためである。
したがって、FBまたはPKBによって、車両210の駆動が制限されていれば(ステップS47でYes)、内部ロックを解除してエンジン205の動力が駆動輪275L、275Rに伝達されてしまっても車両210の発進等が防止される。そのため、ECU300のCPUは、FBまたはPKBがONであると判定した場合に(ステップS47でYes)、前後進切替装置240における内部ロックを解除することとしている(ステップS48)。
なお、本実施の形態に係る車両の制御処理は、図5および図6に示すように、DレンジからRレンジへの切替時、およびRレンジからDレンジへの切替時における前後進切替装置240の内部ロックについても適用することができることはいうまでもない。
以上のように、本実施の形態に係る車両の制御装置は、前進クラッチ244がON故障の状態であって、変速段がNレンジである場合に、前後進切替装置240における内部ロックを行うことができるので、運転者の意図に反してエンジン205の動力が駆動輪275L、275Rに伝達されてしまうおそれを排除することにより、変速機の故障時におけるドライバビリティを向上させることができる。
また、本実施の形態に係る車両の制御装置は、ロックアップ機構が解放状態であることを条件に、前後進切替装置240における内部ロックを行うことができるので、ロックアップ機構が係合状態である場合にエンジン205の動力がインプットシャフト241に伝達できないことによるエンストの発生を防止することができる。
さらに、本実施の形態に係る車両の制御装置は、前後進切替装置240における内部ロックを行った後、FBまたはPKBがONであることを条件に、内部ロックを解除することができるので、運転者の意図しない車両210の挙動の乱れを防止することができるとともに、前後進切替装置240における内部ロックの状態が継続することにより、例えば、トルクコンバータ230の内部における作動油とポンプインペラとの摩擦によって作動油の温度が上昇し、作動油が劣化してしまうことを防止することができる。
以上に説明したように、本発明に係る車両の制御装置は、変速機の故障時におけるドライバビリティを向上させることができるという効果を有し、シフトバイワイヤ方式の車両の制御装置として有用である。